JP3579437B2 - 2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、化学的方法及び殊に2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製法に関する。
【0002】
いくつかの2−ヒドロキシアリールアルデヒドは、香料工業及び農業化学工業における有用な生成物として公知であり、かつ殊に、金属抽出剤として使用される相応するオキシムのための中間体として公知である。
【0003】
【従来の技術】
2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製造のために記載された方法の場合には、特に、適当なオルト選択触媒の存在下でホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド遊離化合物を使用することによるフェノールのオルトホルミル化が行なわれ、この場合、反応は通常、無水有機溶剤中で高められた温度で行なわれた。この反応のための触媒には、触媒促進剤としての窒素塩基の付加的な使用をしばしば伴う、錫化合物、クロム化合物、鉄化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びアルミニウム化合物が含まれる。これに関しては英国特許第2163157号明細書、米国特許第4231967号明細書、欧州特許出願公開第0077279号明細書及び欧州特許出願公開第0106653号明細書を参照することができる。これらの方法によってヒドロキシ−アルデヒドの良好な収率が得られる一方で、使用される触媒及び/又は促進剤の多くが、工業的規模で特別な処理を必要とする高価な物質及び/又は毒性物質である。その上、いくつかの方法では圧力の使用が必要とされる。
【0004】
J.C.S. Perkin I、1978、313ではCasiraghi他によって、2,2−ジヒドロキシジフェニルメタンを得るためのホルムアルデヒドとアリールオキシマグネシウムブロミドとの反応並びに2−ヒドロキシベンズアルデヒドを得るためのホルムアルデヒドとアリールオキシマグネシウムブロミド−ヘミサメチルホスホルアミドの1:1錯体との反応が記載されており、この場合、反応は還流ベンゼン中で実施される。この方法によって2−ヒドロキシベンズアルデヒドが高い収率及び選択性で得られる一方で、Casiraghi他は続いての文書(J.C.S. Perkin I、1980、1862)で、「著量の毒性ヘキサメチルホスホルアミドを使用する必要があるということ」は大量生産への該方法の応用を著しく制限する要素であることを認めている。
【0005】
欧州特許出願公開第0434249号明細書には、1,3−ジメチル−3,4,5,6−2(1H)−ピリミドンの存在下で4−メチルフェノキシマグネシウムブロミドをパラホルムアルデヒドと反応させることによって5−メチルサリチルアルデヒドを得る方法が記載されており、この場合、1,3−ジメチル−3,4,5,6−2(1H)−ピリミドン(DMPUとしても公知である)は文献(例えばHelv. Chim. Acta、65、385、1982及びChem. Ber.、115、1705、1982)で、発癌性ヘキサメチルホスホルアミドのより安全な代替物として特に推奨されている。
【0006】
アリールオキシマグネシウムハリドからの2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製造にヘキサメチルホスホルアミドもしくはDMPUの代りにその他の安価かつ低い毒性の極性溶剤を使用できることが見出された。
【0007】
【発明の構成】
このようにして本発明によれば、フェノール性ヒドロキシ基に対する少なくとも1つの空いているオルト位を有するフェノールから誘導されたアリールオキシマグネシウムハリドをホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド遊離化合物と、本質的に無水条件下でヘキサメチルホスホルアミド又は1,3−ジメチル−3,4,5,6−2(1H)−ピリミドンを除く極性有機溶剤の存在下で反応させることを特徴とする、2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製法が提供される。
【0008】
【作用】
本発明による方法の基礎となる反応は有利に、約60℃〜約130℃の範囲内の温度、例えば80〜120℃で実施される。幾分より低い反応温度を使用することもできるが、しかし、結果として反応時間が通常長くなり、また一方では高い反応温度によって副反応の増加がもたらされ、従って、生成物の純度の低下がもたらされる。反応は有利に大気圧で実施されるが、しかし、必要に応じてより低い圧力を使用することもできるし、より高い圧力を使用することもできる。反応の副生成物、例えばメタノール、蟻酸メチル及びメチラールは、副生成物が形成された際に反応混合物から常法によって除去することができる。
【0009】
反応の際に必要とされる本質的に無水である条件は有利に、本質的に無水である反応成分を本質的に無水である溶剤系及び外来性の水分を除去するための常用の技術、例えば蒸留と合わせて使用することによって得ることができる。適当な溶剤系には典型的に、上記の極性有機溶剤と共用される不活性の無極性もしくは低い極性の有機溶剤が含まれる。
【0010】
適当な不活性溶剤は反応温度で液体であり、かつアリールオキシマグネシウムハリドのための溶剤として作用する。有利に該溶剤によって、1つもしくはそれ以上の揮発性の副生成物を蒸留で除去させることができる。適当な不活性溶剤の例には、芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、クメン、シメン、テトラリン、特にトルエン、並びに塩素化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼンが含まれる。不活性溶剤の混合物は、使用することができる。
【0011】
適当な極性溶剤は反応温度で液体であり、かつマグネシウム原子についての配位子として作用することができる化合物を含む。このような化合物には、極性非プロトン性溶剤、例えばジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルアセトアミド、N−ホルミルピペリジン、N−メチルピロリジノン、テトラメチル尿素及び、特にジメチルホルムアミド、第三級塩基、例えばトリエチルアミン、トリ−オクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン及びピリジン、エーテル、例えばジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、グリム、ジグリム、トリグリム、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン及びクラウンエーテル及びその他の極性溶剤、例えば「ポリメグ(”Polymeg”)」1000及び「セロソルブ(”Cellosolve”)」などが含まれる。特に有用な極性溶剤には、低級アルカノール、例えばエタノール及び特にメタノールが含まれる。極性溶剤の混合物は、使用することができる。
【0012】
本発明による方法に使用することができるアリールオキシマグネシウムハリドは、常法で得ることができる。特に有用なアリールオキシマグネシウムハリドには、フェノキシ基が未置換であってもよいし、又は2位と6位の両方を除くいずれかの位置もしくは全ての位置で、反応の進行を妨げずかつ有利に電子反発性又は弱い電子吸引性である置換基で置換されていてもよいフェノキシマグネシウムクロリド、フェノキシマグネシウムブロミド及びフェノキシマグネシウムヨージドが含まれる。
【0013】
本発明は特に、式:
【0014】
【化3】
【0015】
〔式中、R1、R2、R3及びR4のそれぞれは独立して水素原子又はハロゲン原子又はアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルカリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基もしくはヒドロキシ基を表す〕で示されるフェノールから誘導されたフェノキシマグネシウムハリドを式:
【0016】
【化4】
【0017】
で示される2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製造に使用することに関する。
【0018】
R1、R2、R3及びR4で表わされる種々のヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基及びアシル基のそれぞれは有利に、36個までの炭素原子、例えば5〜22個の炭素原子を有する。
【0019】
殊に、式:
【0020】
【化5】
【0021】
〔式中、R5は水素原子又はC1〜C22−アルキル基を表す〕で示されるフェノールから誘導されたフェノキシマグネシウムハリドに言及され、この場合、該化合物は式:
【0022】
【化6】
【0023】
で示される2−ヒドロキシアリールアルデヒドの製造に使用される。
【0024】
有利にR5は、特にヒドロキシル基に対して4位のC7〜C12−アルキル基である。
【0025】
本発明による方法に使用されるホルムアルデヒドは、遊離ガス状ホルムアルデヒド又は無水溶剤中の溶液又はホルムアルデヒド遊離化合物の形であってもよく、このホルムアルデヒド遊離化合物は本発明による方法に使用される条件下でホルムアルデヒドを遊離することができる化合物のことである。適当なホルムアルデヒド遊離化合物には、ホルムアルデヒドの重合形、例えばパラホルムアルデヒドが含まれる。ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド遊離化合物を溶剤系中のアリールオキシマグネシウムハリドに徐々に(連続的もしくは非連続的に)添加することは、有利である。
【0026】
ホルムアルデヒドもしくはホルムアルデヒド遊離化合物は通常、ホルムアルデヒド(HCHO)として表わして、アリールオキシマグネシウムハリド1モルにつき少なくとも2モルの量で本発明による方法に使用される。典型的な比率は、アリールオキシマグネシウムハリド1モルにつきホルムアルデヒド2.5〜5モル、特に2.5〜4モルである。極性溶剤は有利に、アリールオキシマグネシウムハリド1モルにつき1〜2モルの量で使用されるが、しかし、必要に応じてより多い量を使用することができる。メタノールは反応の副生成物であるため、極性溶剤/アリールオキシマグネシウムハリドの比を最適水準に維持するために反応進行中に蒸発によって該メタノール及び他の全ての揮発性副生成物を除去することによって、変換率及び収率を最大限にすることができる。
【0027】
反応の終了の際に2−ヒドロキシアリールアルデヒド生成物を反応混合物から常法を使用することによって単離することができる。例えば、冷却された反応混合物を低温の希酸に浸漬することができ、さらにこの水性混合物を適当な有機溶剤、例えばトルエンで抽出することができ、さらにこの有機溶剤は、粗製2−ヒドロキシアリールアルデヒドを残留させる蒸留によって除去することができ、さらに必要に応じてこの残留物に通常の精製を行なうことができる。
【0028】
本発明による方法は、式:
【0029】
【化7】
【0030】
〔式中、R5は先に定義されたとおりである〕で示される5−アルキルサリチルアルデヒドを相応する4−アルキルフェノキシマグネシウムハリドから製造する際に使用されることに特に適当である。例えば、4−ノニルフェノール(フェノール及びプロピレン三量体から誘導された異性体の混合物)を相応する4−ノニルフェノキシマグネシウムハリドに変換することができ、この化合物は、金属抽出剤である5−ノニルサリチルアルドキシムを得る場合の中間体である5−ノニルサリチルアルデヒドを得るための本発明による方法に使用することができる。
【0031】
次に、本発明を例につき詳説するが、本発明はこの例によって限定されるものではない。
【0032】
【実施例】
例 1
ジエチルエーテル(100ml)及び4−ノニルフェノール(11.2g)を乾燥した容器に装入し、窒素雰囲気下で撹拌し、かつ0℃に冷却した。エチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中の3モルの溶液18ml)を注射器から徐々に添加し、この場合、温度を10℃未満に維持した。さらに反応混合物を室温に加熱しながら1/2時間撹拌した。ジエチルエーテルを留去し、トルエン(100ml)を添加し、かつ内部温度105℃が達成されるまで蒸留を持続した。
【0033】
反応混合物を90℃に冷却した後にトリエチルアミン(30ml)を添加し、引き続き、トルエン(12ml)中のパラホルムアルデヒド(6g)のスラリを徐々に添加し、この場合、温度を95℃で維持した。
【0034】
95〜100℃で4時間撹拌した後に反応混合物を低温の水(500ml)と98%の硫酸(12g)の混合物に浸漬した。混合物を2時間撹拌し、さらに濾過し、かつ有機相を水性相から分離した。さらに有機相を酸不含になるまで水で洗浄し、かつトルエンを回転蒸発器中で除去し、この場合、5−ノニルサリチルアルデヒド(濃度76%で13.2g、収率80.9%)が残留した。
【0035】
例 2
トリエチルアミン(30ml)をピリジン(30ml)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒド(濃度87.3%で12.4g、収率87.3%)を含有していた。
【0036】
例 3
トリエチルアミン(30ml)をジグリム(30ml)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒド(濃度67.0%で12.5g、収率67.5%)を含有していた。
【0037】
例 4
トリエチルアミン(30ml)をテトラメチルエチレンジアミン(30ml)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒド(濃度83.4%で12.7g、収率85.4%)を含有していた。
【0038】
例 5
トリエチルアミン(30ml)をN−メチルピロリジノン(30ml)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒドを高い収率で含有していた。
【0039】
例 6
トリエチルアミン(30ml)をジメチルホルムアミド(11.1g)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒドを収率65.5%で含有していた。
【0040】
例 7
トリエチルアミン(30ml)をメタノール(30ml)で置換した以外は例1に記載された方法を繰り返した。生成物は、5−ノニルサリチルアルデヒド(濃度64.6%で13.3g、収率69.3%)を含有していた。
【0041】
例 8
エチルマグネシウムブロミド(ジエチルエーテル中の3モルの溶液18ml)をジエチルエーテル(100ml)中の4−ノニルフェノール(11.2g)の撹拌溶液に窒素雰囲気下で0℃〜10℃で滴加した。撹拌を10℃で30分間持続し、混合物を周囲温度に加熱し、ジエチルエーテルの大部分を蒸留によって除去し、トルエン(100ml)及びメタノール(6.5g)を添加し、かつジエチルエーテル及び遊離した(Mgに配位していない)メタノールの除去を混合物の温度が100℃〜105℃に上昇するまで強力な撹拌下で分留によって持続した。混合物を95℃に冷却し、かつトルエン(12ml)中のパラホルムアルデヒド(6g)のスラリを20分間にわたって滴加し、この場合、揮発性副生成物を蒸留によって除去しながら反応混合物の温度を95℃〜100℃に維持した。撹拌を95℃〜100℃で2時間持続し、混合物を水(500ml)中の硫酸(濃度98%の物質12g)の低温の撹拌溶液に10℃で添加し、得られた混合物を20〜30℃で2時間撹拌し、混合物を濾過し、かつ上の有機相を下の水性相から分離した。有機相を水(50ml×3)で洗浄し、かつ溶剤を減圧下で蒸発で除去することによって粗製2−ヒドロキシ−5−ノニルベンズアルデヒドが得られた。
Claims (4)
- 極性有機溶剤を不活性の無極性もしくは低い極性の有機溶剤と共用する、請求項1記載の方法。
- 極性有機溶剤に極性非プロトン性溶剤又は低級アルカノールが含まれている、請求項1又は2記載の方法。
- フェノキシマグネシウムハリドが4−ノニルフェノキシマグネシウムハリドである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
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