JP3579294B2 - 電極の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物系III−V族化合物半導体の一つであるp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体に対し、オーミック接触が得られる電極の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、青色発光素子等の窒化物系III−V族化合物半導体装置には、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体が一般的に用いられている。この半導体用の電極材料としては種々のものが検討されており、Auが最も一般的に用いられている(”P−GaN/N−InGaN/N−GaN double−heteros tructure blue−light−emitting diodes”,S.Nakamura et al.,Jpn. J.Appl.Phys.(1993)p.L8)。また、特開平5−291621号公報には、Au以外の電極材料として、Ni、PtおよびAgが挙げられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電極材料にAuを用いた場合は、オーミック接触の接触抵抗が相当高く、また、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層との密着性が悪いので物理的強度が弱いという問題があった。
【0004】
また、電極材料にNiを用いた場合には、密着性の点でAuよりも優れており、良好なオーミック特性を示す。しかし、Ni電極を用いて発光ダイオードを作製した場合、電流電圧特性の電流値10mAにおける微分抵抗が十数Ωとなる。また、この電極金属を用いてレーザ素子を作製した場合、レーザ素子の電極面積が小さいことから接触抵抗が増大し、電流−電圧特性の微分抵抗がさらに大きくなる。このため、素子動作電圧の低減化が困難となる。以上のことは、Ni以外のPtやAgにおいても同様である。よって、接触抵抗をさらに小さくして動作電圧を低減するためには、Ni、PtおよびAg以外の電極材料を必要とする。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体に対して良好なオーミック接触が得られる電極の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電極の製造方法は、水素を含み、Mgを含んだp型AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層上に、電極としてSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Pdのいずれかである水素貯蔵金属を堆積し、前記電極に前記半導体層中に存在する水素を引き寄せて前記半導体層中に存在するMgのアクセプタとしての活性を高めることを特徴とするので、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
本発明の電極の製造法において、前記水素貯蔵金属を堆積した後300℃〜1000℃の範囲で熱処理すること、前記水素貯蔵金属の堆積は堆積中の真空度が5×10 −7 Torr以下で行なわれることまたは窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下の金属の堆積と同一タイミングで行なわれることを特徴とすることにより、さらに好適に上記目的が達成される。
【0010】
本発明にあっては、図6に示すように、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層61の上に、金属性窒化物および金属水素化物の混合した層構造、または金属性窒化物層および金属水素化物層を含む層構造となっている電極62が形成された構成をとる。
【0011】
このような構成とする理由は、以下のとおりである。半導体層61の形成時、その構成元素である窒素が半導体層の表面から離脱し易いことにより、化学量論比を満足する結晶を作製することが困難となる。また、窒素の離脱による窒素原子の空孔形成により半導体層の伝導型がn型となり、p型伝導を得る上で好ましくない。
【0012】
そこで、本発明では、金属性窒化物または金属性窒化物層を存在させている。この金属性窒化物または金属性窒化物層により、半導体層61中に存在する窒素原子が半導体層61の金属窒化物層形成側表面に引き寄せられる。このため、半導体層61の形成時に窒素原子空孔が形成されても、半導体層61の表面近傍では引き寄せられた窒素原子が空孔を埋めて化学量論比を満足する結晶が半導体層61と電極62との間にまず形成される。よって、半導体層61の表面近傍を、p型伝導を得る上で好ましい結晶状態とすることができるからである。
【0013】
また、一般に、p型伝導を得べく半導体層にアクセプタ不純物であるMg元素が添加される。ところが、MOCVD法によりp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体を成長させた場合、半導体層中に多量の水素が存在し、更に、この水素原子の一部がアクセプタ不純物であるMg原子を結合しており、Mg原子が有効なアクセプタとして働かなくなる。このため、このような半導体層に対し、電子線照射を行うか、または窒素雰囲気中でアニールを施し、Mg原子がアクセプタ不純物として活性になっているp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体を得ている。しかし、得られた半導体層は、そのキャリア濃度がコンタクト層として用いるのに不十分であり、さらに高いキャリア濃度を必要とする。
【0014】
そこで、本発明では、金属水素化物または金属水素化物層を存在させている。この金属水素化物または金属水素化物層により、半導体層61中に存在する水素が引き寄せられて、Mg原子の活性化が助けられる。金属性窒化物または金属性窒化物層による化学量論比を満足する結晶の形成、及び金属水素化物または金属水素化物層によるMg原子の活性化によって、半導体層61と電極62との界面でのキャリア濃度をコンタクト層として十分な高キャリア濃度層63を形成することができる。よって、半導体層61と電極62との界面での電位障壁の幅を著しく減少でき、トンネル電流の急増を図れるからである。その結果、半導体層61と電極62との間に接触抵抗の極めて小さいオーミック接触が実現できることとなる。
【0015】
なお、金属性窒化物層および金属水素化物層は、半導体層側からこの順に形成しても逆の順に形成してもよい。
【0016】
このような電極構造は、半導体層61上に、窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下である金属および水素貯蔵金属を順次あるいは同時に堆積して電極62を形成することにより得ることができる。または、半導体層61上に、窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下である金属および水素貯蔵金属を含む金属間化合物を堆積して電極62を形成することにより得ることができる。
【0017】
窒化物生成自由エネルギーが0kcal/mol以下の金属を半導体層61上に堆積すると、半導体層61の表面に半導体層61中の窒素原子と金属との反応により金属性窒化物層が形成される。一方、水素貯蔵金属を半導体層61上に堆積すると、半導体層61の表面に水素原子と金属との反応により金属水素化物層が形成される。更に、このような金属および水素貯蔵金属を含む金属間化合物を半導体層61上に堆積しても、同様に金属性窒化物層や金属水素化物層が形成される。
【0018】
このようにして得られる電極構造は、半導体層と金属層との反応による結合を有しているので、従来用いられている電極よりもさらに強固で物理的にも化学的にも優れた電極構造とすることができる。
【0019】
また、上記金属および水素貯蔵金属、または金属間化合物を堆積した後に熱処理を行うと、界面での反応、Mgの活性化を促進するため、オーミック特性をさらに改善することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0021】
本発明において形成される金属性窒化物としては、例えばScN、TiN、VN、CrN、ZrN、NbN、LaN、TaNが挙げられる。また、金属水素化物としては、例えばScH、YH、LaH、CeH、PrH、NdH、SmH、EuH、YbH、TiH、ZrH、HfH、VH、NbH、TaH、PdHが挙げられる。
【0022】
本発明に用いられる窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下の金属としては、例えばSc、Ti、V、Cr、Zr、Nb、La、Taが挙げられる。また、水素貯蔵金属としては、例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Pdが挙げられる。
【0023】
尚、Sc、Ti、V、Zr、Nb、La、Taは窒化物生成自由エネルギー変化ΔGが0kcal/mol以下である金属であり、かつ水素貯蔵金属である。しかし、これらの金属を堆積しただけではp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層に対する良好なオーミック接触を得ることができない。これらの金属がp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層上に堆積された場合、膜中の窒素原子と、Mg原子と結合している水素原子との絶対量が異なることから、金属性窒化物のみが形成され、水素貯蔵金属としての役割が果たされない。従って、Sc、Ti、V、Zr、Nb、La、Taは金属性窒化物形成のために用いて、水素貯蔵金属としてはY、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb、Hf、Pdを用いるのが好ましい。
【0024】
p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層の伝導型は、p型伝導とすることができるMg等のアクセプタ不純物を添加することにより制御することができる。
【0025】
電極構造は、図6に示すような高キャリア濃度な半導体層(p−AlGaIn1−x−yN:Si)63が、金属性窒化物および金属水素化物の混合した層構造、または金属性窒化物層および金属水素化物層を含む層構造となっている電極62とp型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層61との間に形成された構造となる。
【0026】
なお、金属性窒化物層および金属水素化物層は、どちらが半導体層側であってもよい。また、金属性窒化物層および金属水素化物層は、一方が1層または2層以上であり、他方が1層または2層以上である組合せ層構造であってもよい。このような金属性窒化物層および金属水素化物層は、半導体層61表面に形成され、窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下の金属を堆積すると金属性窒化物層が、水素貯蔵金属を堆積すると金属水素化物層が各々形成される。また、同時に堆積した場合や金属間化合物を堆積した場合には金属性窒化物と金属水素化物との両方を含む層が形成される。
【0027】
本発明の電極構造においては、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層の表面近傍では化学量論比の取れた結晶が形成され、p型伝導を得る上で好ましい結晶状態となる。また、高キャリア濃度な半導体層63は、コンタクト層として十分なキャリア濃度となり、接触抵抗の極めて小さいオーミック接触が実現できる。さらに、得られた電極構造は、半導体層と金属層との反応による結合を有しているので、強固で物理的にも化学的にも優れたものとすることができる。
【0028】
(実施例1)
図1は、本発明の一実施例である電極構造を示す断面概要図である。この電極構造はサファイア基板1上に作製され、膜厚50nmのGaNバッファ層2、膜厚3μm、キャリア濃度1×1018cm−3のMg添加p型GaN層3、および電極4から構成されている。
【0029】
電極4は、直径500μm、電極中心間距離1mmの2つの円電極4、4となっており、図2に示すように、Mg添加p型GaN層3の上に、電子ビーム蒸着法により到達真空度1×10−7Torr以下、堆積中真空度5×10−7Torr以下でPd層5とTi層6とを堆積して形成されている。Pd層5およびTi層6からなる電極とGaN層3との界面、つまりPd層5とGaN層3との界面については、堆積中の反応により、堆積されたPd層5に含まれるPdと水素とが化合してなる金属水素化物PdH部分と、堆積されたTi層6に含まれるTiと窒素とが化合してなる金属性窒化物TiN部分とが混合する状態となる。または、Pd層5とGaN層3との間における全界面の一部または複数部分が金属水素化物PdH層からなり、その全界面の一部または複数部分が金属性窒化物TiN層からなる状態や、もしくは、Pd層5とGaN層3との間に金属水素化物PdH層と金属性窒化物TiN層とが積層された状態になる。もしくは、Tiと窒素とが化合してなる金属性窒化物TiNと、Pdと水素とが化合してなる金属水素化物PdHとが、更に化合して層状になった状態となる。最後に示した状態は、Pd層5とTi層6とをタイミングを別にして形成する場合よりも、後述するようにPdとTiとを同一タイミングで形成する場合の方が起こり易い。なお、以上説明した種々の状態は、堆積中の反応に限らず、堆積後に行う熱処理によっても形成される。
【0030】
図3に、2つの円電極4、4間の電流−電圧特性を示す。また、比較のために電極金属としてNiを用いた場合の電流−電圧特性も併せて示す。この図から理解されるように、PdおよびTiを堆積して電極4を形成した本実施例の電極構造は、特開平5−291621号公報において最も良好なオーミック特性を示したNiを用いた場合よりも良好なオーミック特性を示している。
【0031】
さらに、この電極構造に対して、電気炉アニールを用いてアニール温度100℃〜500℃でアニールを10分間行った。図4に、その場合における電極構造の電流−電圧特性のアニール温度依存性を示す。また、室温(R.T.)で放置してアニールを行わなかった電極層の電流−電圧も併せて示す。
【0032】
この図から理解されるように、300℃以上のアニールにより急激にオーミック特性が改善されている。また、得られた電極構造は、半導体層と金属(窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下の金属および水素貯蔵金属)との反応による結合を有しているので、強固で物理的にも化学的にも優れたものであった。
【0033】
(実施例2)
この実施例では、p型半導体層としてGaN層3の代わりにキャリア濃度5×1017cm−3のAl0.3Ga0.7Nまたはキャリア濃度5×1017cm−3のIn0.2Ga0.8Nを形成し、Pd層5およびTi層6の代わりにHfとNbとの金属間化合物を堆積した以外は実施例1と同様の電極構造を作製した。また、この金属間化合物の堆積中の反応あるいは堆積後の熱処理により、半導体層の上には金属水素化物HfH層および金属性窒化物NbN層が形成される。
【0034】
図5に、2つの円電極間の電流−電圧特性を示す。この図から理解されるように、HfとNbとの金属間化合物を堆積して電極を形成した本実施例の電極構造は、Al0.3Ga0.7N半導体層およびIn0.2Ga0.8N半導体層のいずれ場合でも良好なオーミック特性を示している。
【0035】
上記実施例においては、電子ビーム蒸着法により窒化物生成自由エネルギー変化ΔGが0kcal/mol以下である金属と水素貯蔵金属とを堆積したが、スパッタ法を用いてもよい。また、窒化物生成自由エネルギー変化ΔGが0kcal/mol以下である金属と、水素貯蔵金属とは、同時に蒸着してもよく、交互に積層して堆積してもよい。
【0036】
半導体層および金属を熱処理する工程は、電気炉アニールによる以外にRTA(Rapid Thermal Anneal)法を用いてもよい。アニールは100℃〜500℃まで行ったが、室温以上であればよい。好ましくは、Mg原子と水素原子との結合が切断され易くなる300℃以上である。また、熱処理温度の上限は、水素貯蔵金属の融点に依存するが、800℃〜1000℃程度である。
【0037】
半導体層の混晶比は適宜変更することができ、半導体層と金属との組み合わせも上記実施例に示したものに限られない。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明から明かなように、本発明によれば、化学量論比を満足する結晶を作製することができ、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層の表面をp型伝導を得る上で好ましい結晶状態とすることができる。また、半導体層と電極との界面でのキャリア濃度をコンタクト層として十分な高キャリア濃度とすることができ、p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層と電極との間に接触抵抗の極めて小さいオーミック接触が得られる。よって、本発明の電極構造を用いることにより、従来の電極構造を用いた素子よりも低い動作電圧を有する青色発光素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である電極構造の断面概要図である。
【図2】実施例1の電極の断面図である。
【図3】実施例1および比較例の電極構造の電流−電圧特性を示す図である。
【図4】実施例1の電極構造の電流−電圧特性のアニール温度依存性を示す図である。
【図5】実施例2の電極構造の電流−電圧特性を示す図である。
【図6】本発明の電極構造を示す図である。
【符号の説明】
1 サファイア基板
2 GaNバッファ層
3 Mg添加p型GaN層
4 電極
5 Pd層
6 Ti層
61 p型AlGaIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層
62 電極
63 半導体層(p−AlGaIn1−x−yN:Si)

Claims (4)

  1. 水素を含み、Mgを含んだp型Al x Ga y In 1-x-y N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)半導体層上に、電極としてSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Yb、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Pdのいずれかである水素貯蔵金属を堆積し、前記電極に前記半導体層中に存在する水素を引き寄せて前記半導体層中に存在するMgのアクセプタとしての活性を高めることを特徴とする電極の製造方法
  2. 前記電極の製造方法は、前記水素貯蔵金属を堆積した後、300℃〜1000℃の範囲で熱処理することを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
  3. 前記水素貯蔵金属の堆積は、堆積中の真空度が5×10 -7 Torr以下で行なわれることを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
  4. 前記水素貯蔵金属の堆積は、窒化物生成自由エネルギー変化が0kcal/mol以下の金属の堆積と同一タイミングで行なわれることを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
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