JP3579261B2 - 混成集積回路モジュールの製造方法 - Google Patents

混成集積回路モジュールの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に固化時間が短い熱可塑性樹脂を採用した混成集積回路モジュール、例えばICカード等の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ICカードは、最近色々な所で活用されてきている。例えばクレジットカードから始まり、スキー場のリフト券、電車のチケット、またはスイミングプールの回数券等にも要求があり、過酷な条件でも使用できることが望ましい。
【0003】
しかし封止方法としては、一般に、2種類の方法がコストメリットの点から採用されている。1つは、半導体素子等の回路素子が実装された絶縁性基板の上に蓋をかぶせるような手段、一般にはケースと呼ばれているものを採用して封止しているものがある。この構造は、中空構造やこの中に別途樹脂が注入されている。
【0004】
2つ目は、半導体ICのモールド方法として有名なトランスファーモールドである。このトランスファーモールドは、一般に熱硬化性樹脂を採用し、金型を約180度まで上昇させ、この温度を維持して硬化(以下熱で反応して重合し固化する現象を指す。)させ、その後金型から取り出し封止体としている。ここでリードフレームへのICチップ実装には、半田が使用されるが、一般に高温半田であり、半田溶融の問題はない。
【0005】
しかしながら、ケース材を使った封止構造は、ケース材と中の素子が接触しないように基板にマージンを取ったりして外形サイズが大きくなる問題があった。
【0006】
一方、トランスファーモールドは、前述の説明からも判るとおり、熱を加えながら硬化させるために、この工程に長い時間が必要となり、生産性を向上させることができない問題があった。
【0007】
そこで本出願人は、時間がそれほどかからない熱可塑性樹脂に着目した。これは硬化反応をせず、熱を加えることで溶融し、冷やせば固化(以下反応せずに固まる現象を指す。)するものである。従って注入後、冷やせば固化し、短時間で封止が実現できる。しかし熱可塑性樹脂を例えばインジェクションモールドで封止する場合、注入する際の樹脂温度が約300度と高く、半田が溶けて、絶縁性基板に実装された回路素子の電気的接続に不良を発生する問題があった。
【0008】
ここで、高温半田を使用すればよいが、導電パターン下の絶縁樹脂の劣化を考えると、低融点半田が好ましい。そこで本発明は、180度〜250度程度の半田を採用することを前提に以下述べてゆく。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
一般には、絶縁性基板の裏面が露出するものであり、絶縁性基板と取り付けシャーシー(ICカード用モジュールの取り付け体)との絶縁性に問題があった。また露出される絶縁性基板裏面とその周囲を封止した熱可塑性樹脂との界面に於いて、湿気の浸入による耐湿性に問題があった。
【0010】
また熱伝導性の劣る基板、例えばプリント基板、フレキシブルシート、ガラス基板またはセラミック基板等を用いると半田が溶け出す問題があった。
【0011】
更にはトランスファモールドを用いたフルモールドの際は、前記絶縁性基板裏面に樹脂を回り込ませるため、基板裏面と金型との間に間隔を設けていた。そのため、ピンを用いたり、金型で挟んで前記間隔を設けていたが、熱可塑性樹脂を用いるインジェクションモールドでは、射出圧力が50〜200Kg/cm2と高いため、絶縁性基板が曲がったり、ボンディングワイヤーが切断する等の問題があった。
【0012】
またピンで支えた所にピンの跡が残り、外観が悪くなる問題があった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記従来の欠点に鑑み成されたもので、第1に、表面が絶縁処理され、この上に設けられた導電パターンと、この導電パターンと電気的に接続された半導体素子または受動素子とを有する基板を用意し、
前記基板が実装された熱可塑性樹脂より成る第1の支持部材をその裏面が一方の金型に当接するように保持し、
前記一方の金型と他方の金型により形成される空間に、溶融された熱可塑性樹脂を注入し、この溶融された熱により前記第1の支持部材の露出部を溶融して一体成型する混成集積回路モジュールの製造方法に於いて、
前記第1の支持部材を、ガラス転移温度以下で成型し、前記溶融された熱可塑性樹脂を、ガラス転移温度よりも高い温度で溶融し、一体成型することで解決するものである。
【0014】
第2に、表面が絶縁処理され、この上に設けられた導電パターンと、この導電パターンと電気的に接続された半導体素子または受動素子とを有する基板を用意し、
前記基板が実装された熱可塑性樹脂より成る第1の支持部材をその裏面が一方の金型に当接するように保持し、
前記一方の金型と他方の金型により形成される空間に、溶融された熱可塑性樹脂を注入し、前記第1の支持部材の反りが防止できるように、前記第1の支持部材の厚みよりも薄く成るように一体成型する混成集積回路モジュールの製造方法に於いて、
前記第1の支持部材を、ガラス転移温度以下で成型し、前記溶融された熱可塑性樹脂を、ガラス転移温度よりも高い温度で溶融し、一体成型することで解決するものである。
【0015】
第3に、前記第1の支持部材には、フィラーを混入し、溶融された熱可塑性樹脂には、ガラス繊維が混入されることで解決するものである。
【0016】
熱可塑性樹脂は、或る温度に達すると溶け、冷えると固化する材質であるため、予め金型に配置された熱可塑性樹脂より成る第1の支持部材は、注入される熱可塑性樹脂の熱を受けて溶け、一体化される。従って第1の支持部材と注入される熱可塑性樹脂で一体モールドされ、基板裏面を覆うことができ、耐電圧特性および耐湿性を向上させることができる。
【0017】
ガラス転移温度以下で成型したものは、結晶化を殆どしていないため、二次成型時に溶融された熱可塑性樹脂が注入された時、この溶融樹脂の熱で一次成型品の表面が溶融しやすく、融着し易くなる。
【0018】
特に、フィラーを混入することで熱伝導性が向上し、基板の半田の溶融を防止できる。またガラス繊維を混入することで、流動性が高くなり、部品に与えるストレスを減らすことが出来る。
【0019】
また、第1の支持部材と前記封止部材の厚みは、前記第1の支持部材の反りが防止できるように、前記封止部材の厚みを薄くすることで解決するものである。
【0020】
溶融された熱可塑性樹脂が固化する際収縮しても、第1の支持部材の強度により本モジュールの反りを防止できる。
【0021】
また予め第1の支持部材を用意しておくため、部品裏面に空間を設けて配置するような複雑な構造を取り入れなくても良い。従って樹脂の高射出圧力により絶縁性基板やコイル等にかかる圧力により発生する不良が防止できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず本発明の実施の形態の一例としてICカードで説明して行く。しかし本発明は、少なくとも表面が絶縁性を有する混成集積回路基板を熱可塑性の第1の支持部材に固定し、これを熱可塑性樹脂で一体成型するものである。
【0023】
では、ICカードについて簡単に説明する。一般には、薄いプラスチックカードの中に、フラッシュメモリ等の記憶装置とその周辺回路がICチップまたはハイブリッドの形で封止されているものである。またはメモリなしのICが封止されているものがある。メモリが含まれているものは、データを書き換えて保存するもの、データを処理装置に与えるものがある。
【0024】
またカードは、処理装置との信号のやりとりで電極が露出されているもの、コネクタが取り付けられているもの、またコイルが封止され電極が露出されていないものがある。
【0025】
ここでは最後のコイルが実装されているもので説明してゆくが、電極が露出されるもの、コネクタが取り付けられているものでも実施できることは言うまでもない。
【0026】
では熱可塑性樹脂でモールドする場合の着目点を簡単に説明する。
【0027】
▲1▼射出成型時間
トランスファモールドで用いるエポキシ樹脂は、金型の中で熱硬化反応する間放置する必要があるが、熱可塑性樹脂は、たんに樹脂を冷やせばよく、成型時間の短縮ができる。
文献では、エポキシの1サイクルが30〜180秒に対して、PPSの熱可塑性樹脂では10〜20秒である。
【0028】
▲2▼樹脂の歩留まり
熱硬化型は、再利用できないが、熱可塑性は、熱を加えれば再利用でき、ランナー等にある樹脂を回収、再利用することで収率を向上できる。
【0029】
▲3▼射出成型条件
シリンダー温度:樹脂の溶融温度と実質同じであり、約290〜320度である。
【0030】
金型温度:固化させるために約140〜150度である。
【0031】
射出圧力:50〜200Kg/cm2
つまり▲3▼による問題点をクリアできれば、▲1▼、▲2▼によりコストの大幅な低減ができる。
【0032】
▲4▼PPS(ポリフェニレンサルファイド):熱可塑性樹脂の一つ
この樹脂は、親水基が無いため吸水率はエポキシ樹脂の半分であるが、リードや素子との密着性は、エポキシ樹脂から比べると劣る。
【0033】
ここで従来のトランスファーモールドでは、基板の裏面に樹脂を回り込ませるために、基板裏面と金型の間に隙間を設けなくてはならない。しかしこのようにして熱可塑性樹脂を成型する場合、射出圧力により基板が反る問題があり、そのため、図1のように第1の支持部材1を予め成型しておき、この上に絶縁性基板2を載置し、この絶縁性基板2が載置された第1の支持部材1を金型に配置し、再度熱可塑性樹脂3でモールドした。注入された高熱の溶融している熱可塑性樹脂3は、第1の支持部材1と当たり、当たった部分は、その表面が溶け出す。従って基板2裏面を覆ったフルモールドが可能となる。
【0034】
以下で本発明の第1の実施形態に係るモジュールについて図1〜図5を参照しながら説明する。
【0035】
図1は、ICカード用絶縁性基板2とコイル4が第1の支持部材1に実装された状態を示し、図2は、図1のA−A線の断面図を示す。また図3は、図2に於いて熱可塑性樹脂から成る封止部材3が設けられた状態を示す。
【0036】
まず第1の支持部材1は、予め熱可塑性樹脂により成型され、この上にはコイル4と絶縁性基板(少なくとも導電パターンが形成される表面が絶縁処理されている基板を指す。)2が少なくとも実装されている。これらの実装部品は、裏面に接着剤等が塗布され固定されても良いが、ここでは第1の溝5、第2の溝6が第1の支持部材1の成型時に形成され、第1の溝5には絶縁性基板2が、第2の溝6にはコイル4が装着され、熱硬化型の樹脂、例えばエポキシ樹脂7が塗布され保護固定されている。コイル4は、絶縁性基板2の電極8と半田を介して接続されており、このコイルの導出部9を形成するために、第1の溝5と第2の溝6は、この導出部9を介して連続している。
【0037】
またコイルは、磁束を発生して相手に信号を送るのか、磁束を受けて信号をとるのかでコイルの大きさ(中空部も含めた全体の平面的面積)が異なる。つまりここでは信号をコイルで受けるため、コイルを示す一点鎖線で成るリンクのサイズが磁束を通過する量が増えるため信号を取りやすくなる。そのため、実質矩形の第1の支持部材1に、できるだけ大きなサイズのコイルが載置できるように溝もコイルも構成されている。第1の支持部材の様に角部が直角であるとコイルの被覆絶縁膜がやぶれやすいので、角部をいくつかに面取りした形状にしてある。ここでは角部の面取りを一回して有るため、八角形と成っている。
【0038】
ここでICカード用絶縁性基板は、セラミック、金属、プリント基板、ガラス基板またはフレキシブルシート等が考えられる。
【0039】
特にICカード用絶縁性基板2として、金属基板やこの金属基板の熱伝導性に近い絶縁基板を採用すると、熱可塑性樹脂2の注入温度が高いために、金型内で基板温度が上昇するが、ヒートシンクとして作用するため、ICカード用絶縁性基板2上の温度上昇を抑制し絶縁性基板2上に形成される半田の溶融を防止できる。
【0040】
また図面では省略しているが、絶縁性基板2上に例えばCuより成る導電パターンが形成され、トランジスタやIC等の能動素子、チップ抵抗、チップコンデンサ等の受動素子が半田を介して実装され、所定の回路が実現されている。ここで一部半田を採用せず、銀ペースト等で電気的に接続されても良い。また前記半導体素子等がフェイスアップで実装される場合は、ボンデイングにより金属細線を介して接続されても良い。
【0041】
また本装置を通常の混成集積回路装置として使用する場合は、コイルが省略され、そのかわりに絶縁性基板にリードが取り付けられる。従ってコイル固定用の第2の溝は省略される。
【0042】
続いて、図2の状態のものを金型に装着し、溶融した熱可塑性樹脂3を注入してモールドする。ここで封止用の熱可塑性樹脂3は、例えばインジェクション成型で実現され、樹脂の注入温度が約300度と非常に高く、半田で実装された回路素子を有するICカード用絶縁性基板2を金型にインサートして一体成形する場合、注入される高温の樹脂により半田が溶けて素子の半田不良が発生する問題がある。特に樹脂ベースのプリント基板は、熱伝導率が低いため顕著である。しかし本願では、熱硬化性樹脂7で覆われているため、半田への熱伝達を抑制し、この半田の溶融を防止できる。しかもエポキシ樹脂を用いれば、金属細線のスリップ防止もできる。この件については後述する。
また第1の支持部材1の成型の際に、熱可塑性樹脂の中に熱伝導を向上させるフィラーを入れれば、この第1の支持部材1自身がヒートシンクとして熱を吸収したりするため、更に半田の溶融を防止できる。
【0043】
ここで熱可塑性樹脂として採用したものは、PPS(ポリフェニルサルファイド)と呼ばれるものである。金型温度は、トランスファーモールドの金型温度よりかなり低く、約130度またはそれ以下であり、この金型に300度の液状樹脂を注入し、低い温度の金型により素早く冷却固化される。このサイクルは、およそ10〜20秒程度で、トランスファーモールドのサイクル(30〜180秒)から比べれば大幅に短縮が可能である。
【0044】
また前述したが回路素子を実装したICカード用絶縁性基板2を熱可塑性樹脂3で成型する場合、予め半田の接合部、ボンデイングワイヤーとベアチップを熱硬化性樹脂7(例えばエポキし樹脂)でポッティングすると良い。更にはこの熱硬化性樹脂は、ICカード用絶縁性基板の熱膨張係数と同等のものが好ましい。
【0045】
つまり前述した対策は、熱可塑性樹脂3の成型時、注入樹脂圧により、特に金属細線(100μm以下)が倒れたり、断線したりするのを防止する効果がある。一般に、封止材として熱可塑性樹脂を用いるのなら、ポッティング樹脂も熱可塑性樹脂でと考えるのが普通であるが、熱可塑性樹脂3は、成型後ICカード用絶縁性基板2に密着しているだけであり、基板と反応して接着していない。そのため冷熱衝撃で、熱可塑性樹脂3と実装部品、ICカード用絶縁性基板2 と熱可塑性樹脂3の熱膨張係数のミスマッチにより、半田接続部、細線および太線も含めたワイヤー接続部に応力が発生し、特にワイヤへは、熱可塑性樹脂と反応していないので、基板の反りからワイヤのスリップが発生し、断線等が発生するが、このポッティング樹脂7としてエポキシ樹脂を採用すると、エポキシ樹脂自身が封止の中身と強固に反応して接着しているのでスリップを抑制し、これらの問題を解決することができる。また成型時、溶融した熱可塑性樹脂2が直接半田と接触しないため、半田の部分の温度上昇を抑制することができる。前述したように金属基板を採用した際は、ヒートシンクとしての作用があるが、更に半田の上に樹脂が被覆されていれば、半田の溶融は更に確実に防ぐことができる。また導電性の劣るプリント基板、セラミック基板等では、半田の上に樹脂を被覆し、この樹脂の厚みの調整、樹脂注入温度の調整によりやはり半田の溶融を防止することができ、これらの基板の実装を可能とする。
【0046】
また熱硬化性樹脂7は、以下のメリットも有する。つまり溝にこの樹脂7が設けられていないと熱可塑性樹脂3で成型した際、溝に対応する成型部材3の表面に凹みを発生し、いわゆるヒケと呼ばれる現象が発生し外観不良となる。また第1の支持部材1の強度が落ちる。つまり、溶融した熱可塑性樹脂3が注入されて固化する際、収縮により装置全体が反る問題を発生する。しかし溝が熱硬化性樹脂で覆われているので、ヒケも抑制でき且つ強度が向上し、これらの問題が解決できる。またヒケが発生し、見苦しい時は、ヒケの発生する一側面全域を梨地にすることで、目視での判断をしずらくしている。
【0047】
また図2で明らかなように、第1の支持部材1裏面の周囲に段差9を設けたが、これは注入された熱可塑性樹脂3との接着性を向上させるものである。
【0048】
更には下金型の側面と当接する第1の支持部材1には、面、線または点接触する手段が設けられている。図3では、半円球の当接手段10が設けられている。この当接手段10は、二つのメリットがある。一つは、第1の支持部材の側面と金型の側面の間に隙間を形成し、段差9および側面も含めた封止に於いて、良好な樹脂注入通路を確保するメリットを有する。二つ目は、当接手段がないと、隙間が形成できないばかりか、側面に熱可塑性樹脂が被覆されない。つまり当接手段を設けずに封止すると第1の支持部材と熱可塑性樹脂より成る封止部材3との界面はdとなり、耐湿性に問題を残す。しかし図3のように、点、線で金型と当接するようにすれば、第1の支持部材の側面がほとんど封止部材で覆われるため湿気の通路を延長でき耐湿性を向上させることができる。図4で示す11は、封止部材3で封止した後の、当接手段の跡を誇張して示したものである。完全に球で有れば実質点で露出している。これは隙間を若干形成すれば点で露出している部分も薄くカバーできる。
【0049】
図5は、第1の支持部材1の当接手段を3種類示したものである。10Aは、直方体の形状であり、金型とは面接触するものである。10Bは、この立方体を半分に切り側面が三角形になったもので、線接触するものである。また10Cは、10Bの角を切って若干面接触にしたものである。
【0050】
どちらにしても当接手段が無ければ、側面や段差9に樹脂を形成できない。つまり、当接手段を省略して隙間を形成しようとすれば、第1の支持部材1は、金型に配置した際ガタを発生し、樹脂注入圧力の高さのため良好な成型ができない。
【0051】
また第1の支持部材1と封止部材3との厚みも問題となる。第1の支持部材1は前もって形成されているが、封止部材3は、金型内で第1の支持部材1と当接し固化する。この固化の際に、封止部材が収縮するため、第1の支持部材がこの収縮に負けて反らないようにその厚みを厚くする必要がある。逆に言えば封止部材3を薄くする必要がある。
【0052】
またガラス転移温度以下で成型したものは、結晶化を殆どしていないため、二次成型時に溶融された熱可塑性樹脂が注入された時、この溶融樹脂の熱で一次成型品の表面が溶融しやすく、融着し易くなる。
【0053】
またフィラーを混入することで熱伝導性が向上し、基板の半田の溶融を防止できる。
【0054】
一方、フィラー入りの熱可塑性樹脂を、二次成型時に使用する場合、流動性が悪く、粘度が高いために、部品へストレスが加わる事が判った。しかし、ガラス繊維を混入することで、流動性が高くなり、部品に与えるストレスを減らすことができた。
【0055】
続いて、第2の実施の形態を図6と図7を参照して簡単に説明する。前者は支持部材1の形状を示し、図7は、これにコイル4、IC7を実装し、熱可塑性樹脂で封止したものである。第1の実施の形態では、断面が実質直方体の第1の溝と第2の溝を形成したものであるが、本実施の形態では、あたかも城壁の如き突出壁20を設けて溝を形成している。この様な凹凸のある形状で有れば、封止樹脂との接触面が広くなり封止強度、耐湿性を向上できる。しかし凹凸があるため、ヒケが発生し、これを防止するためには、全面に熱硬化性樹脂を塗布する必要がある。
【0056】
両実施例に言えることであるが、段差部9が設けられることで、注入される樹脂との接着性が向上するが、この第1の支持部材1が熱可塑性樹脂でできているため、金型に取り付け樹脂注入をすると、ここの段差部に隙間があるため変形してしまう問題を発生することがある。従って、第1の支持部材裏面と同一平面を有する突起部、つまり反り防止手段を段差部に取り付ければ解決される。またサイズ、形状および個数等は、ICカード用モジュールのサイズ、射出圧力等が考慮されて決定される。
【0057】
また、第1の支持部材には、特に外部の放熱性を要するものへの対応は、注入樹脂3による基板の温度上昇を考慮して、熱伝導性を向上させるフィラーが混入されても良い。例えばアルミナ、Si等が混入されている。またトランジスタチップのトランスファモールドのように、トランジスタに固着されたアイランドの裏面にも樹脂を回しているが、この第1の支持部材1をICカード用絶縁性基板2と金型で一緒に一体成型しようとして裏面に隙間を設け第1の支持部材用の樹脂を注入すると、熱伝導性が優れ成型時に熱が金型に吸収され、基板裏面全体に回らない問題もある。従って第1の支持部材を予め用意し、これに実装部品を装着することが重要である。また注入樹脂3は、この問題もあり、逆にフィラーが混入されない熱可塑性樹脂が使われる。注入樹脂3の熱が金型により奪われ、ICカード用絶縁性基板の途中で固化してしまうからである。
【0058】
最後に図4を参照して金型モールドについて簡単に説明する。上の図は、完成されたICカード用モジュールの透視図であり、下の図は、面押し構造の突き出しピンで押し出された図を示すものである。符号30は、下金型であり、第1の支持部材に取り付けられている当接手段10が金型側面31に当接している。そして図示していない上金型が閉じられ、封止空間が形成され、ここに溶融された熱可塑性樹脂が注入される。この注入樹脂は、当接手段10と10の間から段差部9まで射出され、金型の温度により固化される。押し出しピンは、細いピンであると跡が残るため、面押し構造のピン32とした。また当接手段10は、半円球形状としたため若干跡が残るが、梨地仕上げにすることで、その跡を目立たなくすることができる。また凹み33は、ユーザーが使用するシール等を貼る部分である。
【0059】
図8は、図1の絶縁性基板2の載置領域を第1の支持部材の角部に配置したもので、絶縁性基板に折り曲げの力が掛からないような構造としてある。例えば完成モジュールをお尻のポケットに入れて置けば折れ曲がり、大体が中央部で曲がろうとする。従ってコイルの内側の領域の1/4(×印で示す四角の領域)に、この1/4よりも小さく絶縁性基板を配置できれば、モジュールが仮に折れ曲がっても回路基板である絶縁性基板には影響を与えない。40は、半導体チップを覆ったポッティング樹脂、41は、コイルの導出領域を覆ったポッティング樹脂、42は導出されたコイルのショートを防止するためのガイドである。また43はコイルの移動を規制したストッパーである。
【0060】
図9は、図8のA−A線断面図であり、ポッティング樹脂40が半導体チップ45を覆い、溝が更にエポキシ樹脂44で覆われているものである。ここでエポキシ樹脂44が完全にポッティング樹脂40を覆わないと、熱可塑性樹脂を封止する時、矢印の部分でインジェクション特有の圧力がかかり、半導体チップが割れてしまう現象が発生する。つまり矢印の部分のポッティング部に集中して圧力が加わるからであり、エポキシ樹脂44でポッティング部を完全に覆うと、圧力がポッティグ部にのみ集中しないため、チップの割れを防止できた。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、熱可塑性樹脂は、或る温度に達すると溶け、冷えると固化する材質であるため、予め金型に配置された熱可塑性樹脂により成型された第1の支持部材は、注入される熱可塑性樹脂の熱を受けて溶け、一体化される。従ってICカード用絶縁性基板は、第1の支持部材と注入される熱可塑性樹脂で一体モールドされ、基板裏面を覆うことができ、耐電圧特性および耐湿性を向上させることができる。
【0062】
熱可塑性樹脂は、或る温度に達すると溶け、冷えると固化する材質であるため、予め金型に配置された熱可塑性樹脂より成る第1の支持部材は、注入される熱可塑性樹脂の熱を受けて溶け、一体化される。従って第1の支持部材と注入される熱可塑性樹脂で一体モールドされ、基板裏面を覆うことができ、耐電圧特性および耐湿性を向上させることができる。
【0063】
ガラス転移温度以下で成型したものは、結晶化を殆どしていないため、二次成型時に溶融された熱可塑性樹脂が注入された時、この溶融樹脂の熱で一次成型品の表面が溶融しやすく、融着し易くなる。
【0064】
特に、フィラーを混入することで熱伝導性が向上し、基板の半田の溶融を防止できる。またガラス繊維を混入することで、流動性が高くなり、部品に与えるストレスを減らすことが出来る。
【0065】
また、第1の支持部材と前記封止部材の厚みは、前記第1の支持部材の反りが防止できるように、前記封止部材の厚みを薄くすることで解決するものである。
【0066】
溶融された熱可塑性樹脂が固化する際収縮しても、第1の支持部材の強度により本モジュールの反りを防止できる。
【0067】
また予め第1の支持部材を用意しておくため、部品裏面に空間を設けて配置するような複雑な構造を取り入れなくても良い。従って樹脂の高射出圧力により絶縁性基板やコイル等にかかる圧力により発生する不良が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であり、第1の支持部材に実装部品が取り付けられた状態を説明する図である。
【図2】図1のA−A線の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態であり、図2に於ける第1の支持部材を封止部材で成型した混成集積回路モジュールを説明する図である。
【図4】第1の支持部材の金型装着状態を説明する図である。
【図5】当接手段を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態であり、第1の支持部材を説明する図である。
【図7】図6の第1の支持部材を用いた混成集積回路モジュールの図である。
【図8】図1の第1の支持部材を若干修正した支持部材を説明する図である。
【図9】半導体チップのポッティング構造で発生する問題を説明する図である。
【符号の説明】
1 第1の支持部材
2 絶縁性基板
3 封止部材
4 コイル
5 第1の溝
6 第2の溝
7 熱硬化性樹脂
8 絶縁性基板上の電極
9 コイルの導出部
10 当接手段
11 当接手段の痕跡
40 ポッティング樹脂

Claims (3)

  1. 表面が絶縁処理され、この上に設けられた導電パターンと、この導電パターンと電気的に接続され半導体素子または受動素子とを有する基板と、前記基板と金属細線で電気的に接続される電気部品とを用意し、
    予め熱硬化性樹脂で一体的に保護固定される前記基板、金属細線及び電気部品とが実装され第1の熱可塑性樹脂をガラス転移温度以下で成型された支持部材をその裏面が一方の金型に当接するように保持し、
    前記一方の金型と他方の金型により形成された空間に、ガラス転移温度よりも高い温度で溶解した第2の熱可塑性樹脂を注入し、前記溶融された熱により前記第1の熱可塑性樹脂で成型した支持部材の露出部を溶融して一体成型するとき、前記基板、電気部品及び金属細線を予め熱硬化性樹脂で一体的に保護固定したことにより、前記基板、金属細線及び電気部品とのスリップを防止したことを特徴とする混成集積回路モジュールの製造方法。
  2. 表面が絶縁処理され、この上に設けられた導電パターンと、この導電パターンと電気的に接続され半導体素子または受動素子とを有する基板と、前記基板と金属細線で電気的に接続される電気部品とを用意し、
    予め熱硬化性樹脂で一体的に保護固定される前記基板、金属細線及び電気部品とが実装され第1の熱可塑性樹脂をガラス転移温度以下で成型された支持部材をその裏面が一方の金型に当接するように保持し、
    前記一方の金型と他方の金型により形成された空間に、ガラス転移温度よりも高い温度で溶解した第2の熱可塑性樹脂を注入し、前記溶融された熱により前記第1の熱可塑性樹脂で成型した支持部材の露出部を溶融して、前記支持部材より薄く成るようされた第2の熱可塑性樹脂で一体成型するとき、前記基板、金属細線及び電気部品を予め熱硬化性樹脂で一体的に保護固定することにより、前記記基板、金属細線及び電気部品とのスリップを防止したことを特徴とする混成集積回路モジュールの製造方法。
  3. 前記支持部材を成型する第1の熱可塑性樹脂は、フィラーが混入され、熱伝導性が向上され、溶融された第2の熱可塑性樹脂は、ガラス繊維が混入された請求項1または請求項2記載の混成集積回路モジュールの製造方法。
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