JP3577544B2 - ガスセンサおよび金属酸化物薄層表面状態制御方法。 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスセンサおよびガスセンサ表面状態制御方法に関し、特に酸化スズ薄膜の微細構造を任意に制御することにより得られる高感度ガスセンサおよび金属酸化物表面状態制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化スズなどの半導体酸化物を利用したガスセンサは、高価な機器を必要としないで作製できることから、陶磁器産業、電気機械産業、化学工業を含む多くの分野における環境関連産業の新しい技術ニーズとなっている。このため、各種ガスに対する選択性の向上や低ガス濃度における応答感度の向上など、半導体薄膜ガスセンサの高感度化技術は、その重要性が増している。
従来、酸化スズを用いたガスセンサとして、平均一次粒子径が 35〜70nm の酸化スズを 10〜50μm の厚さに形成し、さらに鉛またはランタンのいずれか一種以上を添加してなるガスセンサが知られている(特開平7−260729)。このガスセンサは、四塩化スズ水溶液にアンモニア水を加えて得られる水酸化スズの沈殿物を乾燥後、焼成して得られる酸化スズを水で練ってペースト状にする。このペーストを白金薄膜の櫛形電極とヒータを備えたアルミナ基板の電極部分に塗布して乾燥、焼成して酸化スズの厚膜を得てガスセンサとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、半導体酸化物を利用したガスセンサは酸化物表面へのガスの吸着による抵抗変化を読みとるため、従来のガスセンサは、センサ部分となる出発物質が粉末であると、反応面積が小さく高い感度を得ることが困難であるという問題がある。特に低濃度のガスの場合における感度が十分ではないという問題がある。このため、増感剤等を用いると、その分散性が問題となり、また、センサ表面に第2層を積層した積層構造のセンサとした場合であっても十分な性能を発揮するに至っていない。
【0004】
また、成膜の方法として、転写印刷においては従来粉末とスキージオイルを混合したものを印刷用ペーストとして塗布していたが、粒径の粗さおよび接着強度の低さが問題となっていた。また、スキージオイルを使用するために使用後の洗浄にもトルエン等の芳香族炭化水素系有機溶媒が必要なことも問題視されていた。
【0005】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、成膜性に優れ、センサ部分の薄膜化とその微細表面状態を制御することにより、希薄ガスでも感度が向上するガスセンサ、およびガスセンサに好適な金属酸化物薄層表面状態制御方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のガスセンサは、基板と、この基板上に形成された酸化スズ膜とを備えてなるガスセンサであって、前記酸化スズ膜が、溶液中で化学修飾される、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドと、該塩化スズまたはスズテトラアルコキシドに化学修飾できるポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つとを含む溶液より成膜した後、酸素含有雰囲気中で焼成して得られることを特徴とする。
本発明において、化学修飾とは、スズ化合物と有機高分子化合物とが溶媒中において、単なる混合でなく、例えば配位結合、共有結合等、何等かの化学的相互作用、あるいは化学的変化が生じている状態をいう。
【0007】
また、上記ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つの数平均分子量が100 〜5,000,000 であることを特徴とする。
また、上記溶液は、溶媒中に、上記塩化スズまたはスズテトラアルコキシド 100 重量部と、上記ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つ 5〜100重量部とを含有してなることを特徴とする。その溶液の 25℃における粘度が 0.1〜10Pa・sであることを特徴とする。
上記酸化スズ膜上にヒドロキシアパタイトが被覆されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明のガスセンサの金属酸化物薄層表面状態制御方法は、基板上に半導体酸化物センサを形成できる、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドを含む層を形成する成膜工程と、成膜された該塩化スズまたはスズテトラアルコキシドを含む層を焼成する焼成工程とを備えてなり、上記成膜工程は、溶液中で化学修飾される、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドと、該塩化スズまたはスズテトラアルコキシドに化学修飾できるポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つとを含む溶液を用いて塗布、乾燥する工程であり、上記焼成工程は、乾燥された薄膜を酸素含有雰囲気中で焼成することを特徴とする。
【0009】
酸化スズなどの半導体酸化物を利用した半導体ガスセンサは、半導体酸化物表面へのガスの吸着による抵抗変化等を読みとるため、その表面積が大きいほど高感度になる。
本発明は、スズ化合物とこのスズ化合物に化学修飾できる有機高分子化合物を含む溶液より成膜・焼成することにより、化学修飾した有機高分子化合物が焼成時に分解揮散するので、表面積が大きい薄膜が形成できる。特に、有機高分子化合物の数平均分子量と配合量とを調節することにより、酸化スズの表面微細孔が数ナノから数ミクロンオーダーまで任意に制御可能となる。
また、成膜時の粘度を所定の範囲にすることにより、転写印刷に用いるペーストとしての利用が容易となる。
上記酸化スズセンサ薄膜上に、ヒドロキシアパタイトを被覆することにより被検ガスの吸着性能を向上させ、結果としてセンサの感度が向上する。
【0010】
本発明の金属酸化物薄層表面状態制御方法は、金属化合物と、該金属化合物に化学修飾できる有機高分子化合物とを含む溶液を用いて塗布、乾燥する成膜工程と、乾燥または予備焼成された薄膜を酸素含有雰囲気中で焼成する焼成工程とを有することにより、従来公知の技術を組み合わせることで金属酸化物薄層の表面状態を制御できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のガスセンサを図1により説明する。図1はガスセンサの検出部の断面図である。ガスセンサ1は、基板4上に白金電極3、3が設けられ、この白金電極3、3と電気的に接続して酸化スズ膜2が形成されている。基板4の裏面には加熱手段のヒータ5が設けられている。
基板4としては、ガラス基板、シリコン基板、アルミナ基板、酸化マグネシウム基板等、ガスセンサに公知の基板を用いることができる。また、白金電極3、3間の電気的特性、例えば電気抵抗値の変化を検出することにより、ガス濃度が測定される。
【0012】
酸化スズ膜2は、スズ化合物と、該スズ化合物に化学修飾できる有機高分子化合物とを少なくとも含む溶液を調整して、この溶液より成膜された薄膜を酸素含有雰囲気中で焼成して得られる。
本発明で用いることのできるスズ化合物は、後述する有機高分子化合物と溶液中で化学修飾できる化合物であればよい。例えば、塩化スズ、硝酸スズ、硫酸スズなどの無機スズ化合物、スズテトライソプロポキシド、スズテトラエトキシドなどのスズテトラアルコキシド類、2−エチルヘキサン酸スズ、ナフテン酸スズ等の有機スズ化合物が挙げられる。これらの中でも成膜性に優れる有機スズ化合物が好ましい。
【0013】
有機高分子化合物は、溶液中でのスズ化合物に化学修飾できる官能基を有する化合物であればよく、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ等の酸素含有高分子類、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもスズ化合物を化学修飾しやすい酸素含有高分子類が好ましい。
【0014】
スズ化合物に化学修飾する有機高分子化合物の分子量の大きさにより焼成後の酸化スズ膜の表面状態が制御される。分子量が大きくなると、焼成後の微細孔の直径が大きくなる。有機高分子化合物の数平均分子量は、有機高分子化合物の種類によっても異なるが、100 〜5,000,000 であることが好ましい。数平均分子量が100 未満であると、微細孔の直径が小さくなる。一方、数平均分子量が5,000,000 をこえると、成膜が困難になる場合があり、均一な酸化スズ膜が得られない場合がある。
【0015】
スズ化合物と有機高分子化合物とを溶解あるいは分散させる溶媒としては、有機溶媒、水、または有機溶媒と水との混合溶媒を用いることができる。
特に有機スズ化合物と酸素含有高分子類とを溶解することができる有機溶媒が好ましく、酸素含有高分子類の溶解と有機スズ化合物との化学修飾が生じやすい、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、などのアルコキシアルコール類が特に好ましい。
【0016】
スズ化合物と有機高分子化合物とを含んだ溶液は、溶媒中に、スズ化合物 100重量部と有機高分子化合物 5〜100重量部とを配合する。有機高分子化合物の分子量にもよるが、有機高分子化合物の配合量が100重量部をこえると、焼成後の表面状態が均一にならず、また 5 重量部未満であると、望みとする表面粗さが得られない。
溶液中におけるスズ化合物の濃度は、0.1〜20mol/l 、好ましくは0.25〜1mol/l である。0.1mol/l 未満では酸化スズ膜が島状となり連続性がなくなる。また 20mol/l をこえると、有機高分子化合物の溶解性が悪くなる。
【0017】
スズ化合物と有機高分子化合物とを含んだ溶液には、通常塗膜生成に用いられる各種添加剤、例えば、レベリング剤、粘度付与剤、安定剤等を添加することができる。
特に、転写印刷においては印刷用ペーストとして塗布する場合には、粘度付与剤を添加して溶液の 25℃での粘度を0.1Pa・s〜10Pa・s、好ましくは 2〜6 Pa・sに調整することにより、転写印刷に直接利用できる溶液由来のペーストが作製できる。なお、この粘度は上記有機高分子化合物の配合量でも調節することができる。
【0018】
酸化スズ膜の成膜方法について説明する。
1)上記粘度および濃度に調整したスズ化合物と有機高分子化合物とを含んだ溶液を基板上に塗布する。塗布方法は、公知の塗布方法を採用できる。例えばスピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷、パット印刷などの印刷コート法、電着コート法等が挙げられる。
2)空気中 100〜150℃の温度で乾燥する。次いで、上記1)の方法にしたがい再度溶液を塗布する。その後 100〜150℃の温度で乾燥し、この工程を所定の膜厚となるまで複数回、例えば 2〜20回繰り返す。なお、 100〜150℃の温度で乾燥後、あるいは塗布直後に予備焼成を行なうことができる。予備焼成温度としては、 250〜350℃の温度である。
3)最後に酸素含有雰囲気中で、350℃をこえ、1000℃以下の温度、好ましくは500 〜800℃の温度範囲で焼成する。なお、予備焼成した場合は、その予備焼成温度より高い温度で焼成する。焼成温度が350 ℃以下であると、酸化スズの結晶化が十分でなくなる。また、1000℃をこえる温度では、酸化スズ膜のシンタリングなど生じやすくなり、表面粗さが小さくなる。なお、酸素含有雰囲気としては、空気中が好ましい。
4)得られた酸化スズ膜は、1μm 以下の厚さで薄膜表面にナノメータ単位での細孔が出現し、表面積が増大する。その結果、高感度センサが得られる。
【0019】
上記酸化スズ膜の表面にさらに数nm〜10nm程度のヒドロキシアパタイト層を形成することにより、より高感度な 2 重積層型高感度センサが得られる。表面被覆ヒドロキシアパタイト層により被検ガスがより吸着するために、センサ表面にガスが集中することになり、結果として低いガス濃度の検知が可能になる。
ヒドロキシアパタイト層の形成方法としては公知の方法でよく、例えば、カルシウムイオン濃度を 0.1〜50mmol/l、リン酸イオン濃度を 0.1〜20mmol/lに調整した疑似体液に 2 時間以上浸漬する方法が挙げられる。
ここで、疑似体液はリン酸カルシウム化合物を形成できる加工液であり、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、リン酸水素カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、純水等から調製される。
【0020】
本発明の金属酸化物薄層表面状態制御方法は、上記酸化スズ膜の成膜方法と同様の方法を用いることができる。すなわち、酸化スズ以外の半導体酸化物センサを形成できる金属酸化物薄層にも適用して、薄層表面の細孔径サイズを数ナノメータから数マイクロメータの間で変化させる可能となり、ガスセンサに用いられる金属酸化物薄層の表面状態を制御できる。
半導体酸化物センサを形成できる金属としては、例えば亜鉛、ジルコニウム、タングステン、インジウム、ガリウム、ランタン、ストロンチウム、コバルト、鉄、銀等が挙げられる。
また、化学修飾方法、成膜方法、焼成方法はスズの場合と同様の方法で行なうことができる。
【0021】
【実施例】
実施例1
スズ化合物としてスズテトライソプロポキシド(Sn(O−iC3H7)4)を、溶媒として2メトキシエタノール(CH3OC2H4OH)を、有機高分子化合物としてポリエチレングリコール(数平均分子量 2000)を準備した。塗布溶液の調製は乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で行ない、0.25mol/l の濃度に調製したスズ化合物の2メトキシエタノール溶液にポリエチレングリコールをスズ化合物の 20 重量%添加し、50 ℃において 1 時間加熱撹拌を行なうことにより均一な塗布溶液を得た。この溶液を、目の粗さが 0.2 μm のナイロンフィルターを通過させることにより不純物を取り除いた。
【0022】
スズテトライソプロポキシドにポリエチレングリコールが化学修飾している様子をフーリェ変換赤外スペクトル(FT−IR)測定により調べた。その結果を図2に示す。図2はFT−IRスペクトラムである。図2に示すように、ポリエチレングリコール(図中、PEGで示す)単独でのスペクトラムにおいてみられた−C−O−伸縮振動に起因するピーク(図中、△で示す)が、乾燥塗膜(図中Sn−Gel with PEGで示す)においては、消滅、あるいはブロードとなり、新しいピーク(図中、星印で示す)が出現している。ポリエチレングリコール分子の極性部分とスズテトライソプロポキシドとが、配位結合等の相互作用をしていることが分かる。
【0023】
基板として白金電極を櫛形にスクリーン印刷したアルミナ(Al2O3)基板(縦 13mm×横 8mm×厚さ 1mm)を準備した。この基板上に上記塗布溶液をスピンコーティング法(2000rpm 、 20sec)により塗布して成膜した。成膜後すぐに 350 ℃において予備焼成を行なった。このスピンコーティング・予備焼成処理を 15 回繰り返えして、その後、800 ℃温度で 1 時間焼成を行なって、酸化スズ(SnO2)薄膜を得た。
【0024】
焼成温度と有機物存在、結晶化の過程を図3および図4にそれぞれ示す。
図3は基板上に塗布された塗膜の乾燥および焼成温度とFT−IRスペクトラムで、 300 ℃以上の温度で、有機化合物にみられる伸縮振動や変角振動に基づくピークが消滅していることが分かる。
図4は塗膜の乾燥および焼成温度の相違によるエックス線回折(XRD)結果であり、 300 ℃の温度では、酸化スズ結晶の(110)、(101)、(211)結晶面に基づくピークが小さく結晶化が完全に進んでいないことを示しているが、 400 ℃の温度では、酸化スズ結晶が生成していることが分かる。
図5は 800℃の温度で基板を焼成した後のエックス線回折(XRD)結果であり、酸化スズ結晶に基づくピーク(図中、Sで示す)が基板のアルミナ(図中、Cで示す)、電極の白金(図中、Ptで示す)とともにみられ、酸化スズ(SnO2)の結晶化が確認された。
【0025】
得られた酸化スズ薄膜の深さ方向の形状を図6に示す。図6は原子間力顕微鏡(AFM)により得られた一辺の長さ 1000nm の立体表面図であり、図6(a)は実施例1で得られた酸化スズ薄膜を、図6(b)は比較例1として示したもので、ポリエチレングリコールを用いない以外は実施例1と同一の条件方法で作製した酸化スズ薄膜である。
酸化スズ薄膜上に形成された凹凸部における最大高さと最小高さの差(Zmax)は、実施例1が 28.02nm であり、比較例1が 25.16nm であった。また、隣接する凹凸部における深さ方向高さの差(Zdepth)は、実施例1が 6〜12nm であり、比較例1が 3〜4nm であった。このことより、実施例1は深さ方向において比較例1よりも 2 倍以上凹凸が激しくなることが観察された。これは、ポリエチレングリコールの添加による燃焼・発泡が、粒径だけでなく深さ方向の凹凸の微細化(高表面積化)に寄与することを示している。
【0026】
得られた酸化スズ薄膜を用いて図1に示すガスセンサを作製して、一酸化炭素(CO)ガスに対する検出感度を評価した。用いたCOガスの濃度は 392ppm(窒素希釈)とし、測定温度は 500 ℃とした。白金櫛形電極が形成されたアルミナ基板上に成膜された酸化スズ薄膜の厚さは約 900nm であった。測定スケジュールは、(イ)清浄空気( 5分)、(ロ)COガス( 20 分)、(ハ)清浄空気( 75 分)を順次流して、その合計 100分を 1 サイクルとした。測定結果を図7に示す。なお、比較例1は、上記ポリエチレングリコールを添加しないため、深さ方向厚さが3 〜4nm の酸化スズ薄膜を用いた例である。
実施例1の酸化スズ薄膜のCOガスに対する感度(Sair/co)は、1.493 であったのに対して比較例1の感度(Sair/co)は 1.418 となり、実施例1の感度が増大することが確認された。また、実測された抵抗値も比較例1よりも実施例1が増大した。以上の結果は、添加した有機高分子の燃焼・発泡により薄膜の表面積が大きくなったためと考えられる。
【0027】
【実施例2】
実施例1で得られた塗布溶液に、さらにポリエチレンオキサイドを添加して、その粘度を 2Pa・s〜6 Pa・sに調整した。この溶液を用いて転写印刷法により薄膜を成膜した。その後、実施例1と同様の方法で酸化スズ薄膜を得て、ガスセンサを作製した。得られたガスセンサは実施例1と同様の高感度を示した。
【0028】
【実施例3】
実施例1および実施例2で得られた酸化スズ薄膜を、ナトリウムイオン(Na+)濃度を 139.0mmol/l、カリウムイオン(K+)濃度を 2.8mmol/l、カルシウムイオン(Ca2+)濃度を 1.8mmol/l、マグネシウムイオン(Mg2+)濃度を 0.5mmol/l、塩素イオン(Cl−)濃度を 144.0mmol/l、リン酸イオン(PO4 3+)濃度を 1.1mmol/lとなるように調製した疑似体液に 2 時間以上浸漬して、酸化スズ薄膜表面にヒドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)層を約 10nm
被覆した。
実施例1と同様のガスセンサを作製した。得られたガスセンサは、COガスの濃度が 10ppm(窒素希釈)であっても図7に示す感度は実施例1と同様の高感度を示した。
【0029】
【発明の効果】
本発明のガスセンサは、スズ化合物と、該スズ化合物に化学修飾できる有機高分子化合物とを少なくとも含む溶液より成膜した後、酸素含有雰囲気中で焼成して得られる酸化スズ膜を用いるので、有機高分子化合物により焼成後の微細表面状態を、数ナノから数ミクロンオーダーまで任意に制御可能な表面微細孔を有する構造とできる。その結果、希薄ガスでも優れた感度を有するガスセンサが得られる。
【0030】
上記スズ化合物が有機スズ化合物であるので、また、上記有機高分子化合物の数平均分子量が100 〜5,000,000 であるので、また、その配合比率をスズ化合物 100 重量部に、有機高分子化合物を 5〜100重量部とするので、成膜性に優れた塗布液が得られ、また、微細表面状態の制御がより容易となる。
【0031】
塗布液を0.1〜10Pa・s( 25℃)の粘度に調整するので、転写印刷に用いるペーストとしての利用が容易となる。
また、酸化スズ膜上にヒドロキシアパタイトが被覆されているので、被検ガスの吸着性能を向上し、センサの感度がより向上する。
【0032】
本発明のガスセンサの金属酸化物薄層表面状態制御方法は、金属化合物と、該金属化合物に化学修飾できる有機高分子化合物とを含む溶液を用いて塗布、乾燥する成膜工程と、乾燥された薄膜を酸素含有雰囲気中で焼成する焼成工程とを備えてなるので、高価な機器を必要とせず、従来の技術で金属酸化物薄層の表面状態を制御できる。その結果、高感度のガスセンサを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガスセンサの検出部の断面図である。
【図2】FT−IRスペクトラム図である。
【図3】塗膜の乾燥および焼成温度とFT−IRスペクトラム図である。
【図4】塗膜の乾燥および焼成温度と酸化スズ薄膜結晶化の過程を示す図である。
【図5】焼成後のエックス線回折(XRD)結果図である。
【図6】原子間力顕微鏡(AFM)による立体表面図である。
【図7】COガスに対する検出感度を示す図である。
【符号の説明】
1 ガスセンサ
2 酸化スズ膜
3 白金電極
4 基板
5 ヒータ
Claims (6)
- 基板と、この基板上に形成された酸化スズ膜とを備えてなるガスセンサであって、
前記酸化スズ膜は、溶液中で化学修飾される、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドと、該塩化スズまたはスズテトラアルコキシドに化学修飾できるポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つとを含む溶液より成膜した後、酸素含有雰囲気中で焼成して得られることを特徴とするガスセンサ。 - 前記ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つの数平均分子量が100 〜5,000,000 であることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
- 前記溶液は、溶媒中に、前記塩化スズまたはスズテトラアルコキシド 100 重量部と、前記ポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキサイド 5〜100重量部とを含有してなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のガスセンサ。
- 前記溶液は、0.1〜10Pa・s( 25℃)の粘度に調整されてなることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
- 前記酸化スズ膜上にヒドロキシアパタイトが被覆されてなることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
- 基板上に半導体酸化物センサを形成できる、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドを含む層を形成する成膜工程と、前記塩化スズまたはスズテトラアルコキシドを含む金属化合物層を焼成する焼成工程とを備えてなるガスセンサの金属酸化物薄層表面状態制御方法であって、
前記成膜工程は、溶液中で化学修飾される、塩化スズまたはスズテトラアルコキシドと、該塩化スズまたはスズテトラアルコキシドに化学修飾できるポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキサイドから選ばれた少なくとも一つとを含む溶液を用いて塗布、乾燥する工程であり、
前記焼成工程は、乾燥された薄膜を酸素含有雰囲気中で焼成することを特徴とする金属酸化物薄層表面状態制御方法。
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