JP3576657B2 - 反射型液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、反射型液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子(以下LCDと略称)は、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、投影形TV、小型TV等に広く利用されている。
【0003】
近年、バックライト不要の反射型LCDが注目されている。反射型LCDは、OA機器等の表示においてバックライトを必要としないため、消費電力の低減が実現でき、携帯用に適している。反射型LCDは、外光の光を利用しているため、LCD自体の反射率が高くないと実用上問題となる。
【0004】
反射型LCDを、LCD自体の反射率の観点から分類すると、偏光板を2枚用いる表示モード、1枚用いる表示モード、用いない表示モードの3つに分類できる。
【0005】
偏光板を2枚用いる表示モードとしては、例えば図1に示すTN型LCDがある。このTN型LCDでは、上下基板1,2は透明電極3,4をそれぞれ有しており、これら基板間に液晶組成物層5を挟持している。上下基板1,2外面に偏光板6a,6bが貼付され、下基板2側の偏光板6b外面に、拡散反射板7が貼付されている。このTN型LCDの光路Lは、偏光板を4回、基板を4回通過する。これらの透過率のうち、偏光板の透過率は1回分の通過では、原理的に50%以下であり、実数は40数%である。他の偏光板や基板においてもそれ自身の吸収があるので、反射率は著しく低い。
【0006】
偏光板を1枚用いる表示モードとしては、例えば図2に示す偏光板6のみをもつ偏光板1枚モードECB型LCDがある。前記図1のTN型LCDと比較して、光路は、偏光板を2回、基板も2回しか通過しない。なお、以下、各図において同符号の部分は同様部分を示す。前記TN型LCDと同様、偏光板の透過率は少なくとも1回分は、原理的に50%以下であり、実際は40数%である。しかしながら光路は、偏光板2回分、基板2回分の光吸収を削減できることから、前記TN型LCDよりは、若干反射率が高い。
【0007】
これらと比較して偏光板を用いない表示モードは、例えば図3に示すゲストホスト液晶の液晶組成物層5aをもつ高分子ポリマーPC−GH型LCD、図4に示すゲストホスト液晶組成物層5bをもつGH−HOMO型LCD、および図5に示す2層のゲストホスト液晶組成物層5bを共通基板8を介して重ねた2層型GH−HOMO型LCD等がある。
【0008】
図3〜5に示すいずれの方式も偏光板を用いないので、前記した偏光板を用いる表示モードのように透過率が少なくとも1回の透過分は、透過率が原理的に50%以下であり実際は40数%である偏光板を用いない分、明るくなる。また、前記偏光板1枚モードのECB型LCDと同様に、反射板をセル内面に設ければ、基板2回分の光吸収を削減することができる。従って、前記偏光板を用いる表示モードと比較して、反射率が著しく高くなる。
【0009】
また、図6に示す反射型LCDは、図4に示すGH−HOMO型LCDの反射板7と液晶セルの間に4分の1波長板9を挿入したものであり、液晶セルを通過した入射光が、4分の1波長板9を透過し、反射板7で反射され、再び4分の1波長板9を透過することによって、位相を2分の1波長ずらされ、再び液晶セルに入射する機能を得るものである。
【0010】
この構造は図5に示す2層型GH−HOMO型LCDと同様の光制御が1層の液晶層、1層の液晶セルで得られるものである。
【0011】
さて、これら反射型LCDはディスプレーであり、一般的には電極を用いて液晶層に電圧を印加する、若しくは電流を流す、磁界を印加するなどして表示を行っている。電極を用いるので、必ず絶縁領域(電極のないところ)が必要となる。特に、種々の文字や絵、映像などのパターンを表示する素子の場合、マトリクス状に電極を形成する。マトリクス状に電極を形成した場合、一般的には前記液晶層に電圧を印加する等の目的とした電極以外に配線も必要となる。マトリクスに電極を形成しない場合でもパターンがある程度複雑な場合(例えば、電卓、時計等に応用されている7セグメント表示)は配線が必要となる。このようにLCDは液晶層に電圧を印加する等の目的とした電極及び絶縁領域(電極のないところ)及び場合によっては配線の3つの領域から形成されている。
【0012】
本明細書では、液晶層に電圧を印加する等の目的とした電極により液晶が応答し光反射層が変調する領域を変調部と称し、それ以外の領域を非変調部と称し、この非変調部のうち、前記絶縁領域をスペース部と称し、前記配線の設けられた領域を配線部と称することとする。
【0013】
ちなみに透過型LCDにおいては、前記非変調部に遮光層を設けることが多い。この遮光層はマトリクス表示素子の場合、一般的にブラックマトリクス(BM)と呼ばれる。この遮光層は表示のコントラスト比特性を向上させる目的で設けられているものである。LCDの表示モードを表示制御の観点から分類すると(透過型、反射型に限らず)、電圧等を印加していない状態で明状態を得るノーマリーホワイトモード(NWモードと称す)と、逆に電圧等を印加した状態で明状態で得るノーマリーブラックモード(NBモードと称す)とに大別できる。
【0014】
NWモードの場合、前記非変調部は変調部の状態に拘らず、大略、常時明状態となる。よって、前記遮光層を設けない場合、全体(変調部と非変調部)として、暗状態の輝度は、前記遮光層を設けた場合より高い。よってコントラスト比(明状態の輝度/暗状態の輝度)は遮光層を設けることによって向上する。NBモードの場合、前記非変調部は変調部の状態に拘らず、大略、常時暗状態となる。よって、NWモードと比較すれば、全体(変調部と非変調部)としての暗状態の輝度は暗くなる。しかしながら、一般に知られるNBモードの暗状態は十分暗い表示が得られていない。このため、遮光層を設けることによって、非変調部の輝度を確実にゼロにし、高いコントラストを得ているのである。
【0015】
しかしながら、この遮光層を設けることは、全体の表示輝度(明るさ)を低下させることとなる。これは欠点となるが、透過型LCDの場合、バックライトを用いているので、このバックライトの輝度を向上させることにより、表示輝度(明るさ)を保つことができる。このように、コントラストを得るために遮光層を設けることが多いわけである。
【0016】
これに対し、反射型LCDでは、用いる光が外光であり、ディスプレー側では、入射光量を制御できない。したがって、前記遮光層を反射型に適用すると、表示輝度を著しく低下させてしまうため、一般的には用いられていない(駆動素子としてのTFTは光により影響されるので、その影響を防止する目的で、非変調部のうち必要な部分にだけ遮光層を設けることがある。)。そもそも、反射型LCDの場合、用いる光は外光であり、ディスプレー側では入射光量を制御できないから、最も重要視される特性は明るさ(輝度)とされている。これらのことから、一般的な従来の反射型LCDは、非変調部に遮光層を設けていない。
【0017】
しかしながら、遮光層がなくても、従来の反射型LCDの表示輝度は十分な値が得られていない。NWモードの場合、非変調部は大略常時明状態となるため、全体の表示輝度はある程度得られるが、反射型LCDは、いずれも暗状態を得るために偏光板や染料を用いており、実際には明状態に対してもある程度の光吸収が避けられない。よって結果的には十分な明るさは得られない。NBモードの場合は、非変調部は大略常時暗状態となるため、全体の表示輝度は当然暗い。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の反射型液晶表示素子は、ディスプレーとして用いる場合、非変調部においても反射率が低く、特にノーマリーブラックモードの場合、その影響は著しく、全体の表示輝度を著しく低下させていた。
【0019】
本発明の目的は、ノーマリーブラックモード、ノーマリーホワイトモードに関することなく、全体の反射率を高くする新規な反射型液晶表示素子を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明(請求項1)は、観察される側に配置され、一方の主面に第1の電極が形成された第1の基板と、
前記第1の基板の前記第1の電極が形成された主面に対向して配置され、その対向主面に第2の電極を有する第2の基板と、
前記第1及び第2の基板間に挟持された液晶組成物層と、
前記第1の電極に対応する領域であって、前記第1及び第2の電極間に印加された電圧により前記液晶組成物が応答し、入射する光の反射量を変調する変調部と、
この変調部以外の領域である非変調部と、
前記第1の基板の前記第1の電極が形成された主面に形成された光拡散層と、
前記光拡散層上の、前記非変調部に対応する領域の少なくとも一部に形成された第1の反射層と
を具備する反射型液晶表示素子を提供する。
【0025】
以下、本発明の液晶表示素子の構成及び作用について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同符号の部分は、同様の部分を示す。
【0026】
本発明の第1の態様に係る液晶表示素子は、非変調部の一部又は全部の領域に、白色反射層を設けたことを特徴とする。
【0027】
かかる特徴を有する本発明の第1の態様に係る液晶表示素子の具体的態様としては、以下のものが挙げられる。
【0028】
(1)白色反射層は、第1の基板の前記第1の電極が形成されている主面に形成されている反射型液晶表示素子。
【0029】
(2)白色反射層が、白色顔料を分散したレジスト材料からなる反射型液晶表示素子。
【0030】
(3)(2)において、白色顔料が、TiO2 を主成分としたものからなる反射型液晶表示素子。
【0031】
(4)第1及び第2の基板の少なくとも一方はカラーフィルターを有しており、このカラーフィルターの着色層以外の部分に対応する、基板の電極が形成されている主面の側に、白色反射層が設けられている反射型液晶表示素子。
【0032】
(5)液晶組成物が、2色性染料を含有する反射型液晶表示素子。
【0033】
(6)液晶組成物が、黒色染料を含有する正の誘電異方性を示すネマティック液晶であり、前記第1及び第2の基板間においてホモジニアス分子配列しており、前記第2の基板の側に、4分の1波長板及び第2の反射板が配置されている反射型液晶表示素子。
【0034】
(7)白色反射層が、第1及び第2の基板の間隙を制御する基板間隙材を兼ねることを特徴とする反射型液晶表示素子。
【0035】
図7は、非変調部の一部または全部の領域に前記白色反射層を設けた液晶セル構造を説明したものである。すなわち、観測側の上基板11は内面に白色反射層20とストライプ状透明電極13を有し、対向基板である下基板12は、面上にMIMスイッチング素子18をもつ画素電極14を多数配列している。両基板の電極側の面には配向膜16,17が形成され、基板間に液晶層15が挟持されている。さらに下基板12の外面に拡散反射板30が貼付されて、反射型液晶表示素子10が構成される。
【0036】
電極領域は、印加電圧により液晶が応答し、光反射量を変調する領域であり、変調部Aを構成する。その他の部分は光反射量を制御できない領域であり、非変調部Bを構成する。この非変調部Bは、電極間の間隙であるスペース部21と電極13を動作させる配線部22の占める領域である。白色反射層20がこの非変調部Bの上基板内面のストライプ状電極13間に設けられる。
【0037】
白色反射層20は、例えばMgOを主成分とした白色顔料であり、いわゆる完全拡散反射に近い反射特性を示すものが望ましい。完全拡散反射とは、入射光Liの入射角度によらず、反射光Lrが種々の角度に均等に反射する反射特性のことを言い、環境(入射光の方位別隔たり)によらず、どのような角度においても高輝度を得る反射特性のことを言う。つまり、本発明の液晶表示素子の非変調部の一部または全部の領域に用いる白色反射層は従来の反射型LCDの非変調部(遮光層を設けるか、何も設けない(配線や液晶層がその領域を占める))より、高い反射率を得ることとなる。
【0038】
前述したように、反射型LCDに最も要求される性能は、明るさ、つまり反射率である。従来、透過型LCDにおいては、コントラスト比特性を高めるために、非変調部には遮光層を設けるといったことを行っているが、反射型LCDにおいて、この非変調部に対し、明るさ、つまり反射率特性を高めるような策は取られていなかった。このため、変調部と非変調部を合わせた全体の反射率は、低かった。
【0039】
これに対し、本発明では前記非変調部に反射率の著しく高い白色反射層を設けており、非変調部では、変調部の状態に拘らず、常に高い反射を得る。よって、全体の反射率は、前記白色反射層を設けない場合と比較して著しく向上する。
【0040】
白色反射層は、前述したように従来の反射型LCDの非変調部より高い反射率を得るように層厚や配置を構成すれば、前述した効果が得られる。例えば、図8に示すように、比較的表示パターンの大きい7セグメント23からなるキャラクター表示に応用する場合、非変調部Bの観察側基板11の外面に十分な完全拡散反射特性が得られる層厚で白色反射層20を設ければ良い。しかしながら、表示パターンが基板11の板厚より、微細な高精細パターンであるものにおいては、基板厚による視差を防ぐために、図7に示すように基板内面に白色反射層20を設けることが望ましい。
【0041】
前述したように、本発明の効果は従来の反射型LCDの非変調部より高い反射率を得るように白色反射層の層厚や配置を構成すれば、層厚に関わりなく得られるものであるので、層厚は液晶層厚(基板間隙)に及ぶ必要はなく、前記白色反射層を基板作成工程にて一方の基板に形成する製造方法とする場合、液晶層での光吸収を避けるために観察側の基板内面に設けた方が良い。特に液晶層にて光吸収量の多い染料添加型反射型LCDにおいては、前記構成とする効果が大きく、中でも電圧無印加時に暗状態を示すNBモードでは、液晶層での光吸収量が極めて高いので、その効果は大である。
【0042】
また、本発明をマトリクス型LCDに応用する場合、前記非変調部Bには、必然的に配線が設けられることとなる。ここに配線とは、変調部に電圧等を印加するためにセル外部と変調部の電極を接続するために設けられた導電体である。例えば単純マトリクス構造の電極構成の場合、図9に示すように、一画素を構成する領域24内の電極パターンのうち、上下電極13,14の交差部(変調部A)以外の導電体領域131 ,141 のことを指す。
【0043】
前述した全体の反射率を最も向上させるには、前記白色反射層は、平面的に見て、表示領域内の非変調部B全域に設ければ良いこととなる。
【0044】
しかしながら、図10に示すような、MIM素子18付きマトリクス基板11を用いる場合、一般的には配線22には遮光性のある導電物(例えばAl)を用いる。このように配線に遮光性のある材料を用い、この基板に白色反射層20を表示領域内の非変調部B全域に機能するように設けるためには、前記配線の下層に白色反射層を設けなければならない。
【0045】
しかしながら、前記配線の下層に設けるには、白色反射層20の上に配線層22を形成する必要があり、配線のパターン形成工程において、白色反射層材料への耐性が求められる。したがって、マトリクス型LCDにおいては、実用的に図10に示すように、表示領域内の非変調部B(画素電極13以外の領域)の内、配線部22以外の領域すなわちスペース部21にのみ、前記白色反射層20を設けた構造とすると、配線のパターン形成工程での白色反射層材料への耐性を必要としなくなる。
【0046】
また、本発明に用いる白色反射層は、強い拡散反射が得られるものであれば、効果が得られることは言うまでもない。こうした、強い拡散反射が得られる材料としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、前述したMgO(酸化マグネシウム)等が適用できるが、特に材料として白色顔料を分散したレジスト材料を用いれば、前記白色反射層のパターン形成工程において、前記白色反射層材料そのものを露光、現像するだけで形成できる。したがって、別途レジスト材料を用いて露光、現像したのちに、エッチングを必要とする材料に比べ、工程が簡略化できる。この白色顔料に用いる材料としては、分散性の点でTiO2 が特に優れる。本発明の白色反射層に白色顔料を分散したレジスト材料を用いる場合も、同様にTiO2 が特に優れる。
【0047】
また、カラーフィルターを用いてカラー表示を行う反射型LCDに本発明を適用する場合、変調部とほぼ同形の着色層を形成し、この着色層以外の領域に前記白色反射層を設ければ、前記着色層の層厚により生じる表面段差を、前記白色反射層で解消することが可能となる。また、白色反射層を白色顔料を分散したレジスト材料にて形成する場合、前記着色層自体をフォトマスクとして裏面露光によりパターニングすることも可能となる。また、着色層以外の領域に白色反射層を設けることにより、前述した全体の反射率を向上させる効果の他、非変調部の色付きを防止できる効果も得られる。
【0048】
本発明の第1の態様の効果は、種々の反射型LCDにおいて得られるが、特に、液晶層に染料が添加されている方式(液晶材料に染料を添加することから一般的にゲストホスト(GH)型LCDと呼ばれる)に応用すれば、その効果は大きい。液晶層に染料が添加されている方式は、液晶層での光吸収度合いが、染料が添加されている分、高いからである。
【0049】
前述したように図3、4にも示した従来のGH型LCDは、1層の液晶層(1枚のセル)で、高いコントラスト比が得られ、且つ液晶層1層で表示を得る機能をもっているので、変調部の反射率も高い。よって、染料として黒色の染料を用い、4分の1波長板として可視光波長全域に対して、各波長の4分の1波長の位相差が得られる4分の1波長板(例えば異なる2種の材料からなる延伸フィルムを光軸をずらして積層し、それぞれの位相差の波長依存性をくみあわせて、すべての波長に対し4分の1波長の位相差が得られるようにすればいい。)を用いれば、変調部では極めて高いコントラスト比と反射率が得られる。
【0050】
この表示モードの場合、非変調部は、変調部の状態に拘らず、常時、暗状態である。つまり、NBモードである。よって、本発明のように非変調部に白色反射層を設けると、全体の反射率は著しく向上する。
【0051】
図10に示す本発明の構成は、観察側の基板11としてMIM素子付きドットマトリクス基板を用い、配線部、変調部以外の領域、つまりスペース部21全域に白色反射層20を設けているが、この白色反射層20付き基板11を図11(a)〜図12(c)に示す製法で作成する。
【0052】
工程(I) 観測側基板11の一表面にMIM素子18および配線22を形成する(図11(a))。
【0053】
工程(II) スパッタリング法によりインジウムすず酸化物(ITO)膜13aを基板表面に成膜する。このITO膜13a上にレジスト膜25aを塗布により被着する(図11(b))。
【0054】
工程(III ) レジスト膜25aをマスクパターン26を介して紫外線UVで露光し、後工程で画素電極13となるITO膜上のレジスト膜23のみを残して現像する(図11(c))。
【0055】
工程(IV) 次にレジスト膜25をマスクとしてITO膜13aをエッチングして画素電極部分のみからなる電極パターンを形成する(図12(a))。
【0056】
工程(V) 基板全面にTiO2 を混入したレジスト膜20aを塗布により被着する(図12(b))。
【0057】
工程(VI) 画素電極13上のレジスト膜25を剥離し、同時に画素電極上に塗布されたTiO2 を混入したレジスト膜20aを取り除く。この結果、画素電極13上を除く領域すなわち非変調部Bに白色反射層20が形成される(図12(c))。
【0058】
このように、配線22や、画素電極13のパターン形成は、フォトリソグラフィーにておこなっており、用いているレジストはポジ型(紫外線が照射された領域のみが現像工程で除去されるタイプのレジスト)である。図11(a)〜12(c)に示す製法の特徴は、配線部、変調部のパターン形成工程に用いたレジストを剥離せず、この上に、白色反射層の材料を塗布し、しかる後、前記配線部、変調部のパターン形成工程に用いたレジストを剥離することにより、前記配線部、変調部のパターン形成工程に用いたレジスト上の白色反射層のみを前記レジストと同時に剥離することにより、配線部、変調部以外の領域に前記白色反射層をパターン形成することができる。
【0059】
以上のように他のパターン形成工程に用いたレジストを剥離せずその上に膜形成を行い、前記レジストを剥離することによりその上に形成した膜のパターン形成を行うことを、一般的にはリフトオフ法と呼ばれている。本発明の第1の態様に係る液晶表示素子において、この方法を用いて前記白色反射層を形成すれば、白色反射層のパターン形成のための現像、露光工程が必要なくなるため、安い製造コストにて製造できるようになる。また、前記白色反射層のパターンと変調部、配線部との合わせ精度も十分に得られる。これは、個々に現像、露光工程をおこなっていないからである。このリフトオフ法は変調部以外の全域に白色反射層のパターン形成を行う場合や、カラーフィルターの着色層以外の領域にパターン形成を行う場合であっても、変調部やカラーフィルターの着色層がポジ型レジストを用いたフォトリソグラフィー法にて行うものであれば、同様の作用、効果が得られる。
【0060】
また、図13に示すように、本発明に用いる白色反射層20をセル内面に形成し、前記白色反射層の層厚を所望の液晶組成物15の層厚とすれば、前記白色反射層は基板間隙材の機能を得る。この場合、基板間隙材としていわゆる粒状スペーサーを基板全域に散布する方式と比較して、工程が簡略化できる上、変調部への影響が防止できる。
【0061】
以上、本発明の第1の態様に係る液晶表示装置の作用について、構成の一例等を用いて説明してきたが、本発明の第1の態様の作用、効果はこれらの一例にとらわれることがなく、本発明の第1の態様の特徴を得る構成、材料、製法であれば、同様の作用、効果が得られることは言うまでもない。例えば、用いる基板としては、TFT素子の付いたドットマトリクス基板でも、同様の作用、効果が得られる。また、白色反射層は多少色みがかっていても、変調部の明状態の反射率または従来技術の非変調部より高い反射率を得るものであれば、一定の効果が得られることは本発明の作用から明白である。本発明の第1の態様は、従来技術として代表的に説明した種々の型の液晶表示素子に適用することができるものである。
【0062】
以上説明したように、非変調部に白色の反射層、つまり拡散反射層を設けることにより、素子の反射率及びコントラスト比は向上するが、拡散反射層を分離して、光拡散層と反射層とに分離したのが、第2及び第3の態様である。これらの態様では、コントラスト比が更に向上し、視角特性も向上する。
【0063】
このうち、観察側(第1の)基板に光拡散層を設け、対向側(第2の)基板に鏡面反射層を設けたのが、第2の態様であり、観察側(第1の)基板に光拡散層と鏡面反射層を設けたのが、第3の態様である。
【0064】
本発明の第2の態様に係るGH型液晶表示素子において、液晶組成物は、2色性黒色系染料を含有する誘電率異方性を有するネマティック液晶であるが、この液晶分子が、暗状態を得るとき、反射層または反射板により反射し、1/4波長位相差板により直線偏光となった光を吸収する検光子としての機能を果たすので、明暗のコントラストの高い表示が得られる。また、液晶セルの表示観察側に光拡散板が配置されるとともに、表示観察側から見て後方に光散乱性のない鏡面反射層または反射板が配置されているので、表示画面への背景の写り込みが大幅に低減される。
【0065】
また、液晶層と光拡散板との間に偏光板を1枚だけ配置する場合、2枚の偏光板が使用された従来の液晶表示素子に比べて、光の利用効率が高く、明るい表示画面が得られるうえに、反射板として光散乱性のない鏡面反射層または鏡面反射板が用いられているので、液晶セル内で偏光の乱れが生じず、コントラストの高い表示が実現される。また、液晶セルの表示観察側に光拡散板が配置されているので、画面への背景の写り込みが大幅に低減され、視角依存性のない表示が得られる。
【0066】
更に、偏光板と液晶層(液晶セル)との間または液晶層と鏡面反射層等との間に、位相差板が配置さした場合には、位相差板のリタデーション値を液晶セルのそれと適切に組合わせることにより、白黒表示を実現することができる。
【0067】
次に、本発明の第2及び第3の態様に係る液晶表示装置の具体的態様としては、以下のものが挙げられる。
【0068】
(1)第2の基板のいずれかの主面に形成された第2の反射層を更に具備する反射型液晶表示素子。
【0069】
(2)(1)において、第2の反射層は、第2の基板の第2の電極が形成されている主面の少なくとも一部に形成されている反射型液晶表示素子。
【0070】
(3)(2)において、第2の反射層は、第2の電極が兼ねている反射型液晶表示素子。
【0071】
(4)(1)において、第2の反射層は、第2の電極上に形成されている反射型液晶表示素子。
【0072】
(5)(1)において、第2の反射層は、第2の基板の第2の電極が形成されている主面とは反対側の主面の少なくとも一部に形成されている反射型液晶表示素子。
【0073】
(6)(1)において、第2の反射層は、Al又はAgを主成分として含む反射型液晶表示素子。
【0074】
(7)第1及び第2の基板のいずれか一方の電極が形成されている側に、カラ−フィルタ−を具備する反射型液晶表示素子。
【0075】
(8)前記カラ−フィルタ−は、前記光拡散層上に配置され、前記反射層は前記カラ−フィルタ−上に配置されている反射型液晶表示素子。
【0076】
(9)光拡散層は、屈折率の異なる第1及び第2の透明屈折率媒体からなる反射型液晶表示素子。
【0077】
(10)(9)において、第1の透明屈折率媒体は、ポリスチレン、SiO2 、及びポリイミドからなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、前記第2の透明屈折率媒体は、前記第1の透明屈折率媒体の溶媒であるアクリル系材料を主成分として含有する反射型液晶表示素子。
【0078】
(11)(9)において、第1及び第2の透明屈折率媒体は、前記液晶組成物の平均屈折率±10%の範囲内の屈折率を有する反射型液晶表示素子。
【0079】
(12)(11)において、第1の透明屈折率媒体は、前記液晶組成物の常光屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有し、第2の透明屈折率媒体は、液晶組成物の異常屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有する反射型液晶表示素子。
【0080】
(13)(11)において、光拡散層は、第1及び第2の透明屈折率媒体を略平面的に配置してなる回折格子である反射型液晶表示素子。
【0081】
(14)(13)において、回折格子は、第1及び第2の透明屈折率媒体をチェック状に配置してなる反射型液晶表示素子。
【0082】
(15)(11)において、第1の透明屈折率媒体は、ポリスチレン、SiO2 、及びポリイミドからなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、液晶組成物の常光屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有し、第2の透明屈折率媒体は、ITO及び窒化珪素からなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、第2の透明屈折率媒体の屈折率と第1の透明屈折率媒体との差δnと光拡散層の層厚Dを乗じた値δnDが0.1μm〜0.4μmであり、光拡散層は、第1及び第2の透明屈折率媒体を平面的にチェック状に配置してなる回折格子である反射型液晶表示素子。
【0083】
(16)(1)において、第2の反射層は、Al又はAgを主成分として含み、光拡散層は、2種類の透明な屈折率媒体からなる反射型液晶表示素子。
【0084】
(17)液晶組成物は、二色性染料を含有する反射型液晶表示素子。
【0085】
(18)液晶組成物が、黒色染料を含有する正の誘電異方性を示すネマティック液晶であり、第1及び第2の基板間においてホモジニアス分子配列しており、第2の基板の側に、4分の1波長板及び第2の反射板が配置されている反射型液晶表示素子。
【0086】
(19)(17)において、4分の1波長板及び第2の反射板は、第2の基板の第2の電極が形成されている主面の側に配置されている反射型液晶表示素子。(20)液晶組成物は、光反射機能を有し、第1の反射層を兼ねる反射型液晶表示素子。
【0087】
(21)(20)において、液晶組成物は、高分子分散型液晶組成物である反射型液晶表示素子。
【0088】
(22)(21)において、高分子分散型液晶組成物は、エマルジョン型高分子分散型液晶組成物である反射型液晶表示素子。
【0089】
(23)薄膜タランジスタ及び薄膜ダイオ−ドのいずれか一方を有するアクティブマトリックス型液晶表示素子である反射型液晶表示素子。
【0090】
(24)(23)において、第1の反射層は、薄膜タランジスタ及び薄膜ダイオ−ドのいずれか一方の配線機能を有する反射型液晶表示素子。
【0091】
(25)第2の基板の第2の電極が形成されている主面とは反対側には、凹面鏡反射レンズからなる反射板が配置されている反射型液晶表示素子。
【0092】
次に、本発明の第2及び第3の態様の原理について説明する。
【0093】
光拡散層は、入射した光を拡散させるためのものである。入射した光を拡散させるためには、図35に示すように2種類以上の屈折率媒体を3次元的に配置し、媒体間の屈折率の差によって光を折り曲げればよい。この3次元的な配置構成を多方位(ランダム)にすればするほど、拡散性は高まる。また、媒体間の屈折率差がおおきいほど、光はおおきく折り曲がるので、拡散性が高まる。拡散性が高いほど、液晶表示素子の視角特性は高まる。但し、明るさは平均化されるので、一方位から観察した場合の明るさは、低下する場合がある。
【0094】
このように、2種以上の屈折率媒体を3次元的に配置し、媒体間の屈折率差によって光を折り曲げる光拡散方法(屈折効果)を実行する例としては、主成分がポリスチレン、SiOx、ポリイミド、ITO、SiNx等からなる微粒子を、屈折率の異なる媒体(例えばアクリル樹脂)に分散させる手法がある。また、他の例としては、PDLC等の高分子ポリマーに液晶を分散させる手法がある。
【0095】
一方、光を拡散させる別の手法として、2種類以上の屈折率媒体を2次元的に配置し、媒体間で光の回折現象を発生させる方法がある。例えば、図36に示すように、2種の媒体間で位相が1ピッチずれるように層厚と媒体の屈折率を制御すれば、回折格子効果により光は拡散する。
【0096】
この回折格子効果による拡散については、平面的(2次元的)な屈折率分布形状により光の拡散方位が決定される。分布が2次元的に多方位であるほど、拡散方位は多方位となる。よって、図37(a)〜(c)に示すような、3角形、4角形を最小構成単位としたチェック状の配置が好ましい。具体的な例としては、前述した2種以上の屈折率媒体を3次元的に配置し、媒体間の屈折率差によって光を折り曲げる光拡散方法と同様に部材をパターン形成し、これと屈折率の異なる媒体を膜として、その上に形成すればよい。
【0097】
これら光拡散層は、光を拡散させる機能を得ればよいもので、この拡散層で光が反射するとコントラスト比が低下してしまう。液晶層による表示の制御に関係なく光が反射すると、黒表示の輝度が上がってしまい、結果的にコントラスト比が低下するためである。従って、光拡散層を設計するには、反射が極力生じないよう設計するのが好ましい。
【0098】
図38、図39は、前述した2種の光拡散方法における光反射作用を説明したものである。図38は屈折効果によるのもである。図39は回折効果によるものである。光の反射作用は、いずれの場合も屈折率の異なる媒体間の屈折率が大きい程、大きくなる。
【0099】
前記光拡散層は、観察基板の内外に配置されることとなる。観察基板の内側(液晶層側)に配置した方が、光制御層(液晶層)との距離が近くなるので表示のボケ(にじみ)がなくなるので好ましい。この場合、前記屈折率の異なる媒体間の一つとして液晶層と光拡散層間が生じ得る。反射を低減するためには双方の屈折率差が小さいほどよい。
【0100】
ところで、図38にしめす屈折効果による光拡散方法では、3次元的に2種類の屈折率媒体を分散させ、屈折率差により光を拡散させている。このことは、前述した反射成分の度合いが屈折率差に依るものであることから、この方式は、光拡散性と反射成分の度合い(=コントラスト比)がトレードオフになることを意味する。
【0101】
これに対し、図39に示す回折効果による光拡散方法は、光入射方向に屈折率差を設ける必要がないので、光拡散性と反射成分の度合いは直接関連性がない。よって、回折効果による光拡散方法のほうが、より好ましい光拡散層となる。
【0102】
前述した光反射作用は光拡散層と他の部材、つまり液晶層や配向膜、基板との間でも発生する。ここでの光反射作用も小さい方が好ましい。前述したように、光反射作用は、双方の屈折率が異なる程大となるので、光拡散層と他の部材の屈折率差は小さいほどよい。光拡散層は、2種類以上の屈折率媒体からなり、拡散効果を得るためには屈折率を必要とする。必要な屈折率差の値については後述するが、最も好ましいのは、光拡散層と隣接する部材(液晶層や配向膜、基板)が光拡散層の2種の屈折率媒体の屈折率の平均率に等しくなった時である。
【0103】
なお、図38に示す屈折率効果による光拡散方法によると、観察基板の内側(液晶層側)に配置した構成では、光拡散層と他の部材(=液晶層)の屈折率差は、我々の実刑結果では液晶組成物の平均屈折率の±10%以内にしないと反射成分が高くなりすぎることがわかった。
【0104】
図39に示す回折効果による光拡散方法を用いる場合、その光拡散性は、次式(1)により決定される。Iの値が大きい程、光拡散性が高まる。
【0105】
I〜sin2 (π・δn・D/λ)………………(1)
I:光拡散性。
【0106】
δn:光拡散層(回折格子層)の2層の屈折率媒体の屈折率差
D:光拡散層(回折格子層)の層厚
λ:入射光波長
入射する光、必要な光は可視光全域である。従って、δn・Dの設定は、可視光中心波長に合わせた設計にすればよい。λを550nmに設定すれば、式(1)の値が25%以上となる(このことは入射光の25%以上が拡散することを意味する)δn・Dの値は、0.1μm乃至0.4μmとなる。本発明者らは、δn・Dがこの範囲の値となれば、反射層が鏡面反射を得る反射層であっても、光拡散機能が十分であることを実験により確認した。
【0107】
なお、反射層が拡散反射の場合、より光拡散機能は高くなるので、δn・Dがこの範囲の値であれば光拡散機能が十分となるのは明らかである。
【0108】
また回折格子を形成する際、一方の屈折率媒体を透明な導電物とすれば、媒体自身を電極に用いることができる。具体例としては、ITO、SnOxなどである。
【0109】
こうした光拡散層と反射層を分離した構成とした場合、図39に示すように、非変調部の少なくとも一領域の、光拡散層と液晶層の間に反射層を設ければ、前述した白色の反射層を非変調部の少なくとも一領域に設けた構成と同等の効果を得ることができる。この場合、前述した光拡散層と反射層を分離した構成の効果も同時に得られるので、双方の効果を得ることができる。
【0110】
以下、本発明の種々の実施例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0111】
実施例1
図14乃至図17に、本実施例の液晶表示素子を示す。
【0112】
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、図14(a)及び(b)に示すように、一方の観察側の上基板11に、MIM素子18をもつ電極13のパターンを作成した。図14(a)は一画素の電極形状を示しており、一画素は縦横180μm×180μmの寸法を有している。図14(b)は上基板11の有効表示領域の形状を示しており、各画素がマトリクス状に配列される。57.6mm×86.4mm内に画素数480×320が配列される。
【0113】
図15に示すように、観察側の上基板11にはMIM素子18と配線22および透明電極13が形成され、透明電極13を除く領域、非変調部Bの位置に白色反射層20が形成される。
【0114】
一方、対向側の下基板12には複数のストライプ状透明電極14が前記画素電極に対応させて平行にならべて形成される。これら電極13,14上に配向膜16,17が被着され、液晶組成物層15が基板間に挟持される。
【0115】
本実施例に係る液晶表示装置は、次のようにして製造される。
【0116】
即ち、まず、図14(a)に示す上基板11上に表面を酸化させた第1のTa層18a(表面に膜厚1000オングストロームのTaO2 膜が設けられている)を図示するようなパターンで形成し、しかる後、第2のTa層22(膜厚1000A)を図示するように一部が第1のTa膜18aにかかる配線パターンの形に形成した。
【0117】
その後、基板全面にITOを2000Aの膜厚に成膜し、レジスト材料としてポジ型のレジスト材料(OFPR−5000、(株)東京応化製)を全面に塗布し、60℃で30分の仮焼成を施した後、画素電極パターンが形成できるようにマスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、図14(a)の参照数字13で示すITO膜の上にのみレジストパタ−ンが被覆した構成とした。
【0118】
次に、このレジストパタ−ンをマスクとして用いて、塩酸・硝酸水溶液(混合比塩酸10・硝酸1・水10)によりITOのエッチングを行った。しかる後、前記レジストパタ−ンを剥離せずに、図14(b)の基板に示す有効表示領域11a全面にTiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液:(株)日本合成ゴム製)を膜厚2000Aとなるように印刷し、100℃で30分仮焼成した後、図14Aに示すITO膜13の上にのみ被覆したレジストをST10溶液((株)東京応化製)にて剥離した。
【0119】
その結果、TiO2 を分散したレジスト材料膜のうち、ITO膜13上のレジストの上にある部分はレジストとともに除去され、それ以外の領域にのみレジスト材料膜のパターンが形成できた。次いで、前記TiO2 を分散したレジスト材料を完全に硬化させる目的で、基板を180℃にて30分焼成し、基板裏面から見て、有効表示領域内の画素電極(図14AのITO膜13)およびMIM18、配線部22以外の領域すなわち非変調部Bの一部に、本発明の第1の態様の特徴である白色反射層20を形成できた。
【0120】
また、対向する基板12として図14(c)及び14(d)に示すITOストライプパターン電極14を形成した基板を作成した。ここで、図14(c)は,一画素に該当するパターン形状を示しており、図14(d)は、有効表示領域12aの形状を示している。
【0121】
こうして得られた2枚の基板の有効表示領域に、配向剤(AL−1051、(株)日本合成ゴム製)を印刷、焼成して配向膜16,17を形成し、これら配向膜16,17を前記ITOストライプパターンと平行であり、且つ対向する基板同士で向きが180°逆となる方向にラビングした。
【0122】
次いで、観察側基板に粒径5μmの基板間隙材(ミクロパールSP、(株)積水ファインケミカル製)を散布密度100/mm2 にて散布し、対向基板の有効表示領域周辺に5mm幅の開口部を設けた周辺シールパターンをスクリーン印刷法にて形成した。ここで用いたシール材料は、1液性エポキシ樹脂(XN−21、三井東圧化学(株)製)である。
【0123】
次に、前記2枚の基板11,12を電極13,14面が対向するようにして重ね合わせて、基板間隙が前記基板間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成し、本実施例の液晶表示素子に用いる空セルを得た。しかる後、前記空セルに液晶材料として正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料ZLI−2293((株)メルクジャパン製)151に黒色の染料LA103/4((株)三菱化成製)152を2.0wt%添加したものを減圧注入法にて注入し、液晶組成物層15とした。
【0124】
その後、前記周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂UV−1000((株)ソニーケミカル製)にて封止し、本実施例の液晶表示素子に用いる液晶セルを得た。しかる後、図15に示すように、基板12に4分の1波長板31、反射板30を張り合わせ、本実施例の液晶表示素子を得た。ここで用いた反射板30は、Al蒸着タイプの拡散反射板であるMタイプ拡散反射板((株)日東電工製)であり、4分の1波長板31は、積層タイプの全波長域4分の1波長板((株)日東電工製)であり、それぞれ糊付きのものを用いた。
【0125】
本実施例の液晶表示素子の構造は、観察側基板11のスペース部に白色反射層20を有し、その材料はTiO2 からなる白色顔料のレジスト材料を用いている。その製造方法は、画素ITO電極のパターン形成工程に用いたレジストパターンを利用したリフトオフ法によるものである。
【0126】
また、液晶表示モードとしては、染料を添加した液晶組成物を用いたGH型のものであり、且つ4分の1波長板を加えた図16(a)及び16(b)に示す構成の表示モードである。即ち、電圧無印加状態では、図16(a)に示すように,非偏光の入射光Liは液晶組成物層15を通過して直線偏光となり、4分の1波長板31で円偏光となって,反射板30に至り,円偏光のまま反射され、再び4分の1波長板31を通過するが,このときの直線偏光の方向が入射時にたいして90°回転するため、液晶組成物層15に遮られ,反射光Lrは遮断される。一方、電圧印加時は、図16(b)に示すように、入射光Liの非偏光光は、液晶組成物層15を通過して直線偏光となり、4分の1波長板31で円偏光となって,反射板30に至り,円偏光のまま反射され、再び4分の1波長板31を通過するのは電圧無印加状態と同様であるが、4分の1波長板31を通過した反射光Lrは、液晶組成物層15をそのまま通過する。
【0127】
さて、以上により得られた本実施例の液晶表示素子の反射率およびコントラスト比を図17に示す測定装置で測定した。測定は、サンプルの中央から法線方向の位置に距離30cmに輝度計40を配置し、ほぼ同じ高さに前記法線方向と30°の角度をなす方向に図示するように赤緑青3波長に発光する高演色形蛍光灯41,42を2灯、配置して、サンプル43部分の照度が580ルクスとなるようにして、標準拡散板(MgO板)の輝度を測定し、この輝度を反射率100%とし、サンプルの反射率およびコントラストを測定した。
【0128】
その結果を、後に示す他の実施例と合わせて下表に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
液晶層への印加電圧が4VとなるようMIM素子を用いて全面(全画素)に電圧を印加した場合の反射率は、80%と極めて高い値であり、また、液晶層への印加電圧が0Vと4VとなるようMIM素子を用いて全面(全画素)に電圧を印加してコントラスト比を測定したところ、上記表に示すように、8:1と極めて高い値であった。
【0131】
比較例1
実施例1において白色反射層の無い構造の液晶表示素子を作成した。構造上は白色反射層を設けないこと以外同一とし、材料、製法も実施例1同様にして作成した。実施例1同様にして反射率及びコントラスト比を測定したところ、反射率は60%と実施例1と比較して著しく低い値であった。また、コントラスト比も9:1であり、実施例1の本発明の液晶表示素子は白色反射層を設けても十分な値を得ていることがわかった。
【0132】
実施例2
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、一方の下基板12に図18(a)、18(b)に示すようなMIM素子18付き基板を作成した。図18(a)は,一画素の電極形状を示し、180μm×180μmの一画素領域にイエロー用の電極14Y、マゼンタ用の電極14M、シアン用の電極14Cが配置される。図18(b)は有効表示領域12bの形状を示している。画素数は480(×3)×320である。この基板12は観察側基板の対向基板として用いる。本実施例では、いずれのパターンもリフトオフ法は用いず、各々レジストを剥離することにより形成した。
【0133】
次いで、観察側基板11として、図18(c)、18(d)に示すカラーフィルター付き基板を作成した。図18(c)、18(d)に示すようなイエロー27Y、マゼンタ27M、シアン27Cの3着色層からなるカラーフィルター27付き基板を用い、この基板全面にITO膜を膜厚2000Aにて成膜した。カラーフィルターの膜厚はいずれも18000Aである。
【0134】
次に、レジスト材料としてポジ型のレジスト材料(OFPR−5000、(株)東京応化製)を全面に塗布し、60℃、30分の仮焼成を施した後、図18(c)に図示する形状のITO膜13にパターン形成できるようにマスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、図18(c)に示すITO膜13の上をのみ被覆したレジストパタ−ンを形成した後、このレジストパタ−ンをマスクとして用いて、塩酸・硝酸水溶液(混合比塩酸10・硝酸1・水10)でエッチングを行った。
【0135】
その後、図18(d)に示す有効表示領域全面にTiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液、(株)日本合成ゴム製)を、膜厚20000Aと成るように印刷し、100℃で30分仮焼成した後、前記図18(c)のITO膜13の上にのみ被覆したレジストパタ−ンをST10溶液((株)東京応化製)にて剥離した。その結果、TiO2 を分散したレジスト材料のうち、ITO膜13の上にある部分はレジストともに除去され、それ以外の領域にのみレジスト材料膜のパターンが形成できた。
【0136】
次いで、前記TiO2 を分散したレジスト材料を完全に硬化させる目的で基板を180℃にて30分焼成し、基板裏面から見て、有効表示領域内のカラーフィルターの着色部以外の領域に本発明の第1の態様の特徴である白色反射層20を形成できた。
【0137】
この基板の有効表示領域では、白色反射層の膜厚もカラーフィルターの着色部の膜厚(カラーフィルターの膜厚+ITOの膜厚)もともに20000Aであり、表面の段差は生じていない。このように、本実施例では、白色反射層はカラーフィルターの着色部とそれ以外の領域間の段差を解消する構成となっている。
【0138】
こうして得られた2枚の基板を図19のように実施例1と同様の材料、製法にてセル化し、実施例1と同様の、材料、製法にて4分の1波長板31、反射板30を貼付し、液晶表示素子を得た。
【0139】
こうして得られた本実施例の液晶表示素子の反射率およびコントラスト比を実施例1同様の方法にて測定したところ、反射率は、カラーフィルターでの吸収があるにも拘らず50%と極めて高い値であり、また、コントラスト比を測定したところ、5:1と極めて高い値であった。
【0140】
比較例2
実施例2において白色反射層の無い構造の液晶表示素子を作成した。構造上は白色反射層を設けないこと以外同一とし、材料、製法も実施例2同様にして作成した。実施例1同様にして反射率及びコントラスト比を測定したところ、反射率は25%と実施例2と比較して著しく低い値であった。また、コントラスト比も6:1であり、実施例2の本発明の液晶表示素子は、白色反射層を設けても十分な値を得ていることがわかった。
【0141】
(実施例3)
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、一方の基板11に図20(a)、20(b)に示すようなTFT18付き基板を作成した。図20(a)は一画素の電極形状を示し、図20(b)は有効表示領域の形状を示す。一画素は180μm×180μm、画素数は480×320である。この基板11は観察側基板として用いる。
【0142】
まず、図14(a)に示すと同様に、基板11上にTFTスイッチング素子18を形成し、しかる後、基板全面にITO膜を膜厚2000Aにて成膜し、レジスト材料としてポジ型のレジスト材料:OFPR−5000((株)東京応化製)を全面に塗布し、60℃30分の仮焼成を施した後、図示する正方形形状にパターン形成できるようにマスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、電極として残すITO膜13の上にのみレジストパタ−ンが被覆した構成とした。
【0143】
次に、このレジストパタ−ンをマスクとして用いて、塩酸・硝酸水溶液(混合比塩酸10・硝酸1・水10)でITOのエッチングを行った。しかる後、前記レジストパタ−ンを剥離せずに、図20(b)に示す基板11の有効表示領域11c全面にTiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液:(株)日本合成ゴム製)を膜厚2000Aと成るように印刷し、100℃で30分仮焼成した後、前記図20AのITO膜13の上にのみ被覆したレジストパタ−ンをST10溶液((株)東京応化製)にて剥離した。
【0144】
その結果、前記TiO2 を分散したレジスト材料膜のうち、ITO膜13上のレジストの上にある部分はレジストとともに除去され、それ以外の領域にのみレジスト材料膜のパターンを形成できた。次いで、前記TiO2 を分散したレジスト材料を完全に硬化させる目的で、基板を180℃にて30分焼成し、基板裏面から見て、有効表示領域内の画素電極(図20(a)のITO膜13)および配線部(ゲート線、信号線)22、TFT素子18以外のスペース領域に本発明の第1の態様の特徴である白色反射層20を形成できた。
【0145】
更に、対向基板としてITOベタ電極を有する基板(図示せず)を用い、配向膜としてAL−1051((株)日本合成ゴム製)を有効表示領域に印刷、焼成し、対向する基板同士で向きが180°逆となる方向にラピングして、しかる後、観察側基板に基板間隙材として粒径8μmのミクロパールSP((株)積水ファインケミカル製)を散布密度100/mm2 にて散布し、対向基板の有効表示領域周辺に5mm幅の開口部を設けた周辺シールパターンをスクリーン印刷法にて形成した。ここで用いたシール材料は1液性エポキシ樹脂であるXN−21(三井東圧化学(株)製)である。
【0146】
次に、前記2枚の基板を電極面が対向するようにして重ね合わせて、基板間隙が前記基板間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成し、本実施例の液晶表示素子に用いる空セルを得た。しかる後、前記空セルに液晶材料として正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料(ZLI−2293、(株)メルクジャパン製)に、カイラル材(S1011、(株)メルクジャパン製)を2wt%と、黒色の染料(LA103/4、(株)三菱化成製)を2.0wt%添加したものを減圧注入法にて注入し、前記周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂UV−1000((株)ソニーケミカル製)にて封止し、本実施例の液晶表示素子に用いる液晶セルを得た。
【0147】
本実施例にて作成した液晶表示素子は、PC−GH型LCDであり、用いた液晶材料のヘリカルピッチは1.4μmに設定(前記カイラル材の添加量で制御)してある。ヘリカルピッチが液晶層厚(設定8μm)より、十分に短いため、螺旋軸は法線方向からずれ、電圧を印加していない状態では実用的に染料分子の方位がランダムとなり、十分な光吸収効果(暗状態を得る効果)が得られる。
【0148】
こうして得られた液晶セルの対向基板外面に実施例1同様、Mタイプ拡散反射板((株)日東電工製)を貼り、本実施例の液晶表示素子を得た。
【0149】
この液晶表示素子の反射率及びコントラスト比を実施例1同様の方法にて測定したところ、液晶層への印加電圧が14VとなるようTFT素子を用いて全面(全画素)に電圧を印加して反射率は80%と極めて高い値であり、また、液晶層への印加電圧が0Vと14VとなるようTFT素子を用いて全面(全画素)に電圧を印加してコントラスト比を測定したところ、9:1と極めて高い値であった。ここで、コントラスト比が実施例1より、さらに高くなったのは、スイッチング素子としてTFT素子を用いていることによるもので、本発明の作用とは無関係である。
【0150】
(実施例4)
実施例3において、白色反射層を形成する白色顔料に用いる顔料として、MgOを用いたことを除いて、実施例3と同じ材料、製法、構成にて本実施例に係る液晶表示素子を作成した。
【0151】
この液晶表示素子について、実施例3に係る液晶表示素子と同様、駆動電圧14Vで、反射率およびコントラスト比を実施例1に記載したのと同様の方法により測定したところ、反射率は78%と、実施例3と比べても極めて高い値であり、コントラスト比を測定したところ、9:1と極めて高い値であった。
【0152】
(比較例3)
実施例3において、白色反射層の無い構造の液晶表示素子を作成した。構造上は白色反射層を設けないこと以外、実施例3と同一とし、材料、製法も実施例3と同様にして作成した。実施例1と同様にして反射率及びコントラスト比を測定したところ、反射率は60%と実施例3、4と比較して著しく低い値であった。また、コントラスト比も10:1であり、実施例3、4の本発明の液晶表示素子は、白色反射層を設けても十分な値を得ていることがわかった。
【0153】
(実施例5)
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、一方の基板に図20(a)、20(b)に示すようなTFT素子付き基板を作成した。図20(a)は一画素の電極形状を示し、図20(b)は有効表示領域の形状を示す。画素数は480×320である。この基板は観察側基板の対向基板として用いる。また、観察側基板として、白色反射層をパターン形成し、その上にITOベタ電極を形成した基板を作成した。
【0154】
この観察側基板は、まず、基板上にアルミナ(Al2 O3 )を膜厚1000Aにて蒸着成膜し、しかる後、これをフォトリソグラフィー法にて対向基板のスペース部および配線の位置する非変調部領域に形成されるようにパターニングし、しかる後、アルミナ膜を形成した基板全面にITOを成膜することにより得ている。
【0155】
こうして得られた2枚の基板を用い、実施例3、4同様の材料、製法、構造にて本発明の液晶表示素子を得た。
【0156】
本実施例は実施例3、4と比較して、パターン形成を従来のフォトリソグラフィー法により得ている点が異なる。これは白色反射層を観察側基板に設け、(例えば素子の実装上の制約により)TFT基板を対向基板とする必要がある場合に取り得る実施例である。パターン形成に従来のフォトリソグラフィー法が必要となる反面、非変調部全域に前記白色反射層を設けることが容易になり、その分高い反射率を得ることができる。
【0157】
実施例3と同様、駆動電圧14Vにて、反射率及びコントラスト比を実施例1同様の方法にて測定したところ、反射率は85%と実施例3、4以上に極めて高い値であり、コントラスト比を測定したところ、9:1と極めて高い値であった。
【0158】
(実施例6)
2枚の0.7mm厚のガラス基板11,12を用い、図21(a)にセグメント電極パターン14を形成した対向基板12、図21(b)にITO膜の電極パターン13を形成した観察側基板11を示す。これら基板の電極面に、図22に示すように配向膜16,17として、AL−1051((株)日本合成ゴム製)を有効表示領域に印刷、焼成し、図21(a),21(b)に図示する矢印方向r1、r2(互いに対向する基板間で向きが180°逆となる方向)にラビングして、しかる後、観察側基板11に基板間隙材として粒径2.5μmの間隙剤(ミクロパールSP、(株)積水ファインケミカル製)を散布密度100/mm2 にて散布し、対向基板12の有効表示領域周辺に5mm幅の開口部を設けた周辺シールパターンをスクリーン印刷法にて形成した。ここで用いたシール材料28は1液性エポキシ樹脂(XN−21、三井東圧化学(株)製)である。
【0159】
しかる後、図21(c)に示すように、前記2枚の基板11,12を電極面が対向するようにして重ね合わせて、基板間隙が前記基板間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成し、本実施例の液晶表示素子に用いる空セルを得た。次に、前記空セルに液晶材料として正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料(ZLI−2293、(株)メルクジャパン製)を液晶組成物15として減圧注入法にて注入し、前記周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂(UV−1000、(株)ソニーケミカル製)にて封止し、本実施例の液晶表示素子に用いる液晶セルを得た。しかる後、図22に示す構造となるよう、偏光板32としてLLC298−18SF((株)サンリッツ製)を、観察側基板11外面に前記ラビング方向と45°の角度をなす方向に吸収軸が来るように張り付け、反射板30としてMタイプ拡散反射液((株)日東電工製)を対向基板12外面に張り付け、しかる後、前記偏光板32表面に、TiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液:(株)日本合成ゴム製)をセグメント電極が見える開口窓を形成して膜厚2000Aとなるように印刷し、70℃で120分焼成し、平面的にみて非変調部である領域で、断面的に見て前記偏光板表面に白色反射層20を形成し、本実施例の液晶表示素子を得た。
【0160】
本実施例は画素単位の表示パターンではないため、変調部と非変調部を一つの表示単位とみなして観察することはできないので、変調部と非変調部を合わせたコントラスト比は議論の価値がない。よって、本実施例では、実施例1と同様の方法にて反射率のみを測定した。電圧を印加しない状態では、反射率50%と偏光板を用いているにも拘らず極めて高い値であった。また、5Vの電圧を印加して変調部を暗状態としたところ、極めて視認性の良い表示であった。
【0161】
(比較例4)
実施例6において、偏光板上の白色反射層を設けないことを除いて、実施例6と同様の液晶表示素子を、実施例6と同様の条件、製法にて作成した。実施例6同様に反射率を評価したところ、電圧を印加しない状態では、反射率35%と実施例6に係る液晶表示素子より著しく低い値であった。
【0162】
(実施例7)
図23に、本実施例に係る液晶表示素子を示す。
【0163】
実施例1に用いた2枚の電極付き基板11,12を用いた。観察側基板11の電極13周囲には白色反射層20を有している。電極13,14面に配向膜(AL−1051、(株)日本合成ゴム製)16,17を有効表示領域に印刷、焼成し、2枚の基板11,12を電極面が対向するよう重ね合わせたときラビング方向が90°の角度をなすようにラビングして、しかる後、観察側基板に基板間隙材として粒径4.5μmのミクロパールSP((株)積水ファインケミカル製)を散布密度100/mm2 にて散布し、対向基板の有効表示領域周辺に5mm幅の開口部を設けた周辺シールパターンを、スクリーン印刷法にて形成した。
【0164】
ここで用いたシール材料は、1液性エポキシ樹脂XN−21(三井東圧化学(株)製)である。
【0165】
その後、前記2枚の基板を電極面が対向するようにして重ね合わせて、基板間隙が前記基板間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成し、本発明の液晶表示素子に用いる空セルを得た。次いで、前記空セルに液晶材料として正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料ZLI−2293((株)メルクジャパン製)を減圧注入法にて注入し、液晶組成物層15を形成し、前記周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂(UV−1000、(株)ソニーケミカル製)にて封止し、本実施例の液晶表示素子に用いる液晶セルを得た。
【0166】
次に、偏光板(LLC298−18SF、(株)サンリッツ製)32,33を2枚の基板外面に、吸収軸が前記ラビング方向と平行となるように張り付け、反射板30としてMタイプ拡散反射板((株)日東電工製)を対向基板の偏光板外側に張り付け、本実施例の液晶表示素子を得た。
【0167】
実施例1と同様、駆動電圧4Vにて、反射率およびコントラスト比を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、偏光板を2枚も用いているにも拘らず、反射率は40%と極めて高い値であり、コントラスト比を測定したところ、13:1と極めて高い値であった。
【0168】
(比較例5)
実施例7において、セル内面の白色反射層を設けないことを除いて、実施例7と同様の液晶表示素子を、実施例7と同様の条件、製法にて作成した。実施例7と同様、駆動電圧4Vにて、反射率及びコントラスト比を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、反射率は30%と実施例7に係る液晶表示素子より著しく低い値であり、コントラスト比を測定したところ、15:1であり、実施例7の本発明の液晶表示素子は、白色反射層を設けても十分な値を得ていることがわかった。
【0169】
(実施例8)
図24に示すように、0.7mm厚のガラス基板11,12を2枚用い、一方の基板12に図14(a),(b)に示すようなMIM素子付き基板を作成した。この基板12は、図14(a)の基板と異なり,観察側基板の対向基板として用いる。
【0170】
すなわち、本実施例は図14に示す実施例1の構成で、セルの逆の面を観察側とするものである。
【0171】
観察側基板11として、図14(c)、14(d)に示すITOストライプパターン電極基板を作成した。本実施例では、いずれのパターンもリフトオフ法は用いず、各々レジストを剥離しておこなった。次いで、図14(c),14(d)に示すITOストライプパターン電極基板表面に,図14(d)に示す有効表示領域全面にTiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液:(株)日本合成ゴム製)を膜厚2000Aと成るように印刷し、60℃30分の仮焼成を施した後、対向基板12の画素電極14(図14(a)のITO膜13)以外の領域が対向する図14(c)の観察基板の該当領域にパターン形成できるよう(すなわち非変調部Bにのみパターン形成できるよう)マスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、観察側基板の非変調部全域に、本発明の白色反射層20を形成した。
【0172】
こうして得られた2枚の基板を用い、実施例1と同様の材料、製法にて液晶セルを作成し、図24に示すような構成となるように実施例1と同様の4分の1波長板31、反射板30を対向基板12外面に貼付し、本実施例の液晶表示素子を得た。
【0173】
本実施例は、白色反射層20のパターン形成にリフトオフ法を用いず、フォトリソグラフィー法を用いていることにおいて、実施例1と相違する。製造プロセスは増加するが、白色反射層を非変調部全域に容易に設けることができ、さらなる反射率の向上が期待できるものである。
【0174】
また、実施例1と同様、駆動電圧4Vにて、反射率及びコントラスト比を実施例1と同様の方法にて測定したところ、反射率は85%と実施例1に係る液晶表示素子が示す以上に極めて高い値であり、コントラスト比を測定したところ、7:1と極めて高い値であった。
【0175】
(実施例9)
実施例5に用いた観察側基板を用い、対向基板として図25(a),25(b)に示すようなTFT素子付き基板12を作成した。
【0176】
まず、ガラス基板12の上にゲート配線22a、信号線配線22b、TFT素子18を形成し、しかる後基板全面にAlを2000Aの膜厚にて成膜し、表面を陽極酸化法にて酸化してアルミナ層を形成した後、図示の方形形状の画素電極14となるように、Al導電層34およびアルミナ層35をエッチングする。このようにして画素電極14aがAl導電層34の上にアルミナ層35が形成された構造を有する拡散反射板の機能を持つ対向基板を得た。
【0177】
こうして得られた2枚の基板を用い、実施例5と同様の材料、製法にて液晶セルを作成し、反射板等を貼らないで本実施例の液晶表示素子を得た。本実施例は本発明を反射板の機能をセル内面の画素電極に設けた構造の液晶セルに適用した例であり、画素電極に反射板の機能を設ける手間がかかるものの、光路は、基板を1枚しか通過しないで反射板で反射できることから、反射板を対向基板外面に張り付ける他の構成より、反射率の向上を達成することができるものである。
【0178】
実施例5と同様、駆動電圧14Vにて、反射率及びコントラスト比を実施例1と同様の方法にて測定したところ、反射率は90%と実施例5以上に極めて高い値であり、コントラスト比を測定したところ、10:1と極めて高い値であった。
【0179】
(比較例6)
セル内面の白色反射層を設けないことを除いて、実施例9と同様の液晶表示素子を、実施例9と同様の条件、製法にて作成した。実施例9と同様、駆動電圧14Vにて、反射率及びコントラスト比を、実施例1と同様の方法にて測定したところ、反射率は70%と実施例9に係る液晶表示素子より著しく低い値であり、コントラスト比を測定したところ、11:1であり、実施例9の本発明の液晶表示素子は、白色反射層を設けても十分な値を得ていることがわかった。
【0180】
(実施例10)
図26(a)は対向基板12、26(b)は観測側基板11、26(c)はセル断面をそれぞれ示す。対向基板12は、MIM素子18を有するITO画素電極14をマトリクス配列したもので、上下に配列された画素電極14間には行方向に延長された配線22があり、全面を配向膜17で被覆されている。
【0181】
観察側基板11は、ITOからなり、列方向に延長された複数のストライプ電極13を有し、各ストライプ電極13を隔てる間隙に白色反射層20が形成される。この白色反射層20は、基板間隙材を兼ねており、液晶組成物15の層厚をきめる厚さを有している。さらに、この上に基板全面にわたり配向膜16が被着される。
【0182】
白色反射層20の形成は、ストライプ電極13を形成した基板11の上に、TiO2 を分散したレジスト材料(TiO2 分散液:(株)日本合成ゴム製)を膜厚5μmとなるように印刷し、60℃30分の仮焼成を施した後、図26(b)に示す、部分的に切れた棒状パターン形状となるようマスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、150℃120分の焼成を行い、観察側基板の非変調部の一部に基板間隙材の機能を有する本発明の白色反射層20を形成した。
【0183】
こうして得られた2枚の基板を用い、実施例1と同様の材料、製法にて液晶セルを作成し、図26(c)に示すような構成となるように,実施例1と同様の4分の1波長板31、反射板30を対向基板外面に張り付け、本実施例の液晶表示素子を得た。
【0184】
実施例1と同様、駆動電圧4Vにて、反射率及びコントラスト比を実施例1と同様の方法にて測定したところ、反射率は45%と高い値であり、コントラスト比を測定したところ、6:1と極めて高い値であった。
【0185】
また、液晶層厚を干渉膜厚計で測定したところ、セル全面のバラツキは±0.05μmと殆ど均一なセル厚となっていることがわかった。
【0186】
以上説明した、本発明の第1の態様にかかる液晶表示素子は、暗状態において非変調部が白色反射層になっていることにより、変調部の暗さ、黒さは際立って見え、さらに明状態においても非変調部が白色反射層となっていることにより、明るさが向上し、実際に見た目に感じられるコントラスト比が顕著に高く、明るい反射型液晶表示素子が得られる。
【0187】
以下、本発明の第2の態様に係る実施例について説明する。
【0188】
(実施例11)
図27に示すように、厚さ0.7mmのガラス基板51上にMIM(Metal−Insulator−Metal)素子52を形成し、画素数が480×320のMIM素子付き下基板を作製した。また、厚さ0.7mmのガラス基板53上にITOストライプパターン電極54を形成し、ITO透明電極付き上基板を作製した。
【0189】
次いで、こうして得られた上下基板51,53の電極形成面に、それぞれポリイミド材(商品名AL−1051、(株)日本合成ゴム社製)を塗布、焼成して配向膜55を形成し、ラビング処理を行った後、上基板にスペーサ(間隙材)として粒径8μmのミクロパールSP((株)積水ファインケミカル社製)を散布密度100/mm2 にて散布し、次いで、下基板の周辺に5mm幅の開口部を除いて、1液性エポキシ樹脂(商品名XN−21、三井東圧化学(株)社製)からなる周辺シールパターンをスクリーン印刷により形成した。
【0190】
そして、これらの基板を各電極形成面が対向するようにして重ね合わせ、基板間隙が間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成した後、この空セル内に、正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料(商品名ZLI−4801−100、(株)メルクジャパン社製)に2色性の黒色染料(商品名LA103/4、(株)三菱化成社製)を2.0wt%添加したものを減圧注入法により注入し、周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂(商品名UV−1000、(株)ソニーケミカル社製)により封止して基板間で液晶層56を挟持し、液晶セル57を作製した。
【0191】
次いでこうして得られた液晶セル57の下面に、積層タイプの全波長域1/4波長位相差板((株)日東電工社製)58と、ガラス基板表面に常温でAlを300nmの厚さに蒸着した鏡面反射板59を順に貼着した。一方、ガラス基板60の表面にスプレー法によりSnO2 を凹凸状に被膜した後、その上にこれよりも屈折率の低いSnO2 の層61をスパッタリングにより形成することにより、拡散効果を有すると同時に入射光の減衰を防止する光拡散板62を形成した。そして、この光拡散板62を前記液晶セル57の上に設置し、液晶表示素子を作製した。
【0192】
図28(a)及び28(b)は、こうして得られた本実施例の液晶表示素子の動作を説明するものである。電圧無印加の暗状態では、図28(a)に示すように、非偏光入射光Liが、液晶層56を通過することにより一方向直線偏光となり、次いで1/4波長位相差板58を通過して円偏光となり、鏡面反射板59で反射された後、再び1/4波長位相差板58を通過することにより、最初の直線偏光に対して偏光方向が90°ずれた直線偏光となる。そのため、再び液晶層56を通過するときに、この直線偏光がゲスト染料(黒色染料)により吸収され、反射光として出射されない。
【0193】
一方、図28(b)に示すように、電圧が印加された明状態では、液晶層56のゲスト染料分子を含む液晶分子配列が、基板の法線方向に平行となるため、基板の法線方向に入射された入射光Liは、偏光されず、1/4波長位相差板58をそのまま通過して、鏡面反射板59で反射される。そのため、再び液晶層56を通過する際に、染料分子により吸収されることなく、反射光Lrとして出射される。ここで、このまま反射光Lrが出射すると、液晶表示素子の輝度は基板の法線方向にのみ高くなってしまうが、表面が凹凸状に形成された光拡散板62を通過することにより、反射光Lrが拡散されるので、視角依存性が無く、明るい表示が得られる。
【0194】
次に、このような動作により光制御する本実施例の液晶表示素子について、反射率およびコントラスト比を、標準拡散板(MgO板)の輝度を反射率100%として常法により測定した。液晶層56への印加電圧が4Vとなるように、全表示画素のMIM素子に電圧を印加したところ、反射率が86%と極めて高い値が得られた。また、液晶層56への印加電圧が0Vと4Vとなるように、MIM素子を用いて全画素に電圧を印加してコントラスト比を測定したところ、20:1と極めて高い値であった。
【0195】
さらに、本実施例の液晶表示素子に、1ライン置きに白黒を反転させたストライプパターンと、30画素×30画素の正方形形状を黒表示させたパターンと、逆に前記正方形形状を白表示させたパターンの3種のパターンを表示させ、これを正面から観察したところ、視差は殆ど気にならない程度のものであった。
【0196】
(実施例12)
図29に示すように、厚さ1.1mmのガラス基板63上にAlを300nmの厚さに蒸着した後、線幅300μm、線間10μm、ライン長さ240mm、ライン数480本になるようにストライプ状にパターニングし、鏡面反射板を兼ねた電極(走査電極)64を形成した。また、厚さ1.1mmのガラス基板65上にITO被膜を形成し、線幅300μm、線間10μm、ライン長さ150mm、ライン数640本でストライプ状にパターニングし、ITOからなる透明電極(信号電極)66を形成した。
【0197】
次いで、Alからなる電極64が形成された第1の基板(下基板)とITO透明電極66が形成された第2の基板(上基板)の電極形成面に、それぞれ一塩基性クロム錯体を塗布して配向膜67を形成し、ラビング処理を行った後、これらの基板をAl電極64とITO透明電極66とが互いに直交するように対向させ、実施例11と同様にしてシール部68とスペーサ69をそれぞれ設けるとともに、上下基板間に液晶組成物を挟持して液晶層70(厚さd 3.4μm)とし、駆動液晶セル71を作製した。
【0198】
ここで、第1および第2基板のラビングは、矢印aおよびa′で示すように平行かつ反対向きに施し、液晶層70の液晶分子は基板表面においてプレチルト角約89°の垂直配向となっているようにした。また、基板間に挟持される液晶として、負の誘電異方性を示すZLI−2585((株)メルクジャパン社製)を使用した。この液晶のΔn(屈折率異方性)は波長550nmで0.039であり、液晶セル71における液晶層20のΔnと層厚dを乗じたリタデーション値は、0.132μm(132nm)である。なお、波長550nmは、色感度的に目立つものを波長の代表的数値として挙げたものである。
【0199】
次いで、こうして得られた液晶セル71の上に、図30に示すように、偏光板72を、その吸収軸bがラビング方向a、a′に対して45°をなすように配置した。一方、ガラス基板の表面にスプレー法によりSnO2 を凹凸状に被膜した後、その上にこれよりも屈折率の低いSnO2 の層をスパッタリングにより形成することにより、拡散効果を有すると同時に入射光の減衰を防止する光拡散板73を形成した。そして、この光拡散板73を前記偏光板72の上に設置し、液晶表示素子を作製した。
【0200】
このようにして得られた液晶表示素子を1/240dutyマルチプレクス駆動したところ、電圧無印加時には液晶セル71のリタデーションがほぼ0となることから白表示、電圧印加時には液晶セル71のリタデーションがほぼ1/4波長となることから黒表示となり、コントラスト比が10対1、反射率が30%と視認性に優れた液晶表示素子が実現できた。
【0201】
(実施例13)
液晶層70として、(株)メルクジャパン社製の液晶ZLI−4850を用いる以外は実施例12と同様な構成で、駆動液晶セル71を作製した。この液晶のΔnは波長550nmで0.208、液晶層70の厚さdは4.2μmであり、液晶セル71の液晶のΔnと層厚dを乗じたリタデーション値は、0.874μm(874nm)である。
【0202】
次いで、こうして得られた液晶セル71の上に、位相差板74と偏光板72とを図31に示すような配置で組み合わせた。すなわち、液晶セル71の上に、ポリカーボネイトを延伸してなるリタデーション値が125nm(1/4波長)の位相差板74を、延伸軸cがラビング方向a、a′に対して直交するように配置し、さらにそのうえに、実施例12で使用したと同じ偏光板72と光拡散板73を順に設置して、液晶表示素子を作製した。
【0203】
このようにして得られた液晶表示素子を1/240dutyマルチプレクス駆動したところ、電圧無印加時には位相差板74と液晶セル71のリタデーションの差がほぼ1/4波長となることから黒表示、電圧印加時に位相差板74と液晶セル71のリタデーションの差がほぼ3/2波長となることから白表示となる。そして、コントラスト比が13対1と実施例12に比べてより大きく、反射率が28%と視認性に優れた液晶表示素子が得られた。
【0204】
(実施例14)
位相差板74のリタデーション値を250nmとした以外は、実施例13と同様の構成で液晶表示素子を作製した。
【0205】
このようにして得られた液晶表示素子を1/240dutyマルチプレクス駆動したところ、電圧無印加状態で位相差板74と駆動液晶セル71とのリタデーションの差がほぼ1/2波長となることから白表示、電圧印加状態で位相差板74と液晶セル71とのリタデーションの差が5/4波長となることから黒表示となり、コントラスト比が10対1、反射率が35%と視認性に優れた液晶表示素子が得られた。
【0206】
なお、以上の実施例では、光拡散板として、ガラス基板上にSnO2 の凹凸被膜を形成したものを用いたが、入射光の減衰がなくかつ拡散効果の得られるものであれば、それ以外にも使用することができる。すなわち、エッチングにより表面を粗面化したガラス板等を好適に用いることができる。
【0207】
また、実施例12〜14においては、反射板を兼ねたAl電極を走査電極とし、ITO透明電極を信号電極としてマルチプレクス駆動を行ったが、電極構成を反対にしても良い。さらにこれらの実施例では、垂直配列させたECBモードの液晶セルを用いたが、水平配列のECBモード、STN(Super Twisted Nematic)モードの液晶セル等を使用しても、同様の効果を達成することができる。また、駆動方式としてMIMやTFT(薄膜トランジスタ)からなるスイッチング素子を用いた液晶表示素子や、カラーフィルタを用いたカラー液晶表示素子においても、本発明の構成を採ることにより同様の効果を上げることができる。
【0208】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の態様によれば、反射率およびコントラスト比が高く視認性に優れた反射型の液晶表示素子を実現することができる。
【0209】
以下、本発明の第3の態様に係る実施例について詳細に説明する。
【0210】
実施例15
図32〜34、及び実施例1の説明で参照した図14(a)〜14(d)、図15(a)〜図17を参照して、本実施例の液晶表示素子を示す。
【0211】
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、一方の観察側の上基板11に、SiOX 層19を600nmの厚さに蒸着し、図32に示すパタ−ンAの形状にパタ−ニングし、その上に、図14(a)及び14(b)に示すように、MIM素子18をもつ電極13のパターンを作成した。図14(a)は一画素の電極形状を示しており、一画素は縦横180μm×180μmの寸法を有している。図14(b)は上基板11の有効表示領域の形状を示しており、各画素がマトリクス状に配列される。57.6mm×86.4mm内に画素数480×320が配列される。
【0212】
図33に示すように、観察側の上基板11にはMIM素子18と配線22および透明電極13が形成される。図34に示すように、SiOX 層19とITO層13は、二次元的に分布している。それぞれの屈折率は、SiOX が1.50、ITOが1.90であり、屈折率差δnは、0.40である。双方の層厚Dは、600nmであるので、δnDは、0.24μmとなり、この部分が回折格子となり、光拡散層として作用する。
【0213】
また、ITO層は画素電極であり、必須のものである。前述したように、ITOの屈折率は1.90と高く、他の層との界面で不要の反射を生ずる(例えば、ガラス基板、配向膜は、屈折率が1.90であり、屈折率差が大きいため、界面反射を生じ易い。しかし、本実施例では、ITO層の表面は凹凸状であるので、前記反射成分は拡散され、表示のコントラストへの影響は、従来よりも低減される。
【0214】
一方、対向側の下基板12には、複数のストライプ状透明電極14が、前記画素電極に対応させて平行にならべて形成される。これら電極13,14上に配向膜16,17が被着され、液晶組成物層15が基板間に挟持される。
【0215】
本実施例に係る液晶表示装置は、次のようにして製造される。
【0216】
即ち、まず、図14(a)に示す上基板11上に表面を酸化させた第1のTa層18a(表面に膜厚100nmのTaO2 膜が設けられている)を図示するようなパターンで形成し、しかる後、第2のTa層22(膜厚100nm)を図示するように一部が第1のTa膜18aにかかる配線パターンの形に形成した。
【0217】
その後、基板全面にITOを200nmの膜厚に成膜し、レジスト材料としてポジ型のレジスト材料(OFPR−5000、(株)東京応化製)を全面に塗布し、60℃で30分の仮焼成を施した後、画素電極パターンが形成できるようにマスクを用いて露光し、NMD3溶液((株)東京応化製)で現像し、図14(a)の参照数字13で示すITO膜の上にのみレジストパタ−ンが被覆した構成とした。
【0218】
次に、このレジストパタ−ンをマスクとして用いて、塩酸・硝酸水溶液(混合比塩酸10・硝酸1・水10)によりITOのエッチングを行った。しかる後、前記レジストパタ−ンを剥離した。
【0219】
また、対向する基板12として図14(c)及び14(d)に示すITOストライプパターン電極14を形成した基板を作成した。ここで、図14(c)は,一画素に該当するパターン形状を示しており、図14(d)は、有効表示領域12aの形状を示している。
【0220】
こうして得られた2枚の基板の有効表示領域に、配向剤(AL−1051、(株)日本合成ゴム製)を印刷、焼成して配向膜16,17を形成し、これら配向膜16,17を前記ITOストライプパターンと平行であり、且つ対向する基板同士で向きが180°逆となる方向にラピングした。
【0221】
次いで、観察側基板に粒径5μmの基板間隙材(ミクロパールSP、(株)積水ファインケミカル製)を散布密度100/mm2 にて散布し、対向基板の有効表示領域周辺に5mm幅の開口部を設けた周辺シールパターンをスクリーン印刷法にて形成した。ここで用いたシール材料は、1液性エポキシ樹脂(XN−21、三井東圧化学(株)製)である。
【0222】
次に、前記2枚の基板11,12を電極13,14面が対向するようにして重ね合わせて、基板間隙が前記基板間隙材の粒径と等しくなるよう加圧しながら180℃で2時間焼成し、本実施例の液晶表示素子に用いる空セルを得た。しかる後、前記空セルに液晶材料として正の誘電異方性を示すネマティック液晶材料ZLI−2293((株)メルクジャパン製)15aに黒色の染料LA103/4((株)三菱化成製)15bを2.0wt%添加したものを減圧注入法にて注入し、液晶組成物層15とした。
【0223】
その後、前記周辺シールパターンの開口部を紫外線硬化樹脂UV−1000((株)ソニーケミカル製)にて封止し、本実施例の液晶表示素子に用いる液晶セルを得た。しかる後、図33に示すように、基板12に4分の1波長板31、反射板30を張り合わせ、本実施例の液晶表示素子を得た。ここで用いた反射板30は、Al蒸着タイプの鏡面反射板である((株)日東電工製)。4分の1波長板31は、積層タイプの全波長域4分の1波長板((株)日東電工製)であり、それぞれ糊付きのものを用いた。
【0224】
さて、以上により得られた本実施例の液晶表示素子の反射率およびコントラスト比を図17に示す測定装置で測定した。測定は、サンプルの中央から法線方向の位置に距離30cmに輝度計40を配置し、ほぼ同じ高さに前記法線方向と30°の角度をなす方向に図示するように赤緑青3波長に発光する高演色形蛍光灯41,42を2灯、配置して、サンプル43部分の照度が580ルクスとなるようにして、標準拡散板(MgO板)の輝度を測定し、この輝度を反射率100%とし、サンプルの反射率およびコントラストを測定した。
【0225】
その結果、反射率80%、コントラスト比20:1であった。
【0226】
実施例16
0.7mm厚のガラス基板を2枚用い、一方の観察側の上基板11に、SiOX 層19を600nmの厚さに蒸着し、図32に示すパタ−ンAの形状にパタ−ニングし、その上に、SiNX 層を600nmの厚さに蒸着した。このSiNX 層は除去せずに、この上に、図14(a)及び14(b)に示すように、MIM素子18をもつ電極13のパターンを作成した。
【0227】
図14(a)は一画素の電極形状を示しており、一画素は縦横180μm×180μmの寸法を有している。図14(b)は上基板11の有効表示領域の形状を示しており、各画素がマトリクス状に配列される。57.6mm×86.4mm内に画素数480×320が配列される。
【0228】
図33に示すように、観察側の上基板11にはMIM素子18と配線22および透明電極13が形成される。図34に示すように、SiOX 層19とITO層13は、二次元的に分布している。それぞれの屈折率は、SiOX が1.50、SiNX が2.10であり、屈折率差δnは、0.60である。双方の層厚Dは、600nmであるので、δnDは、0.36μmとなり、この部分が回折格子となり、光拡散層として作用する。
【0229】
更に、光拡散層の上(観察面からみた場合、奥の方)には、MIMの配線としてTaのパタ−ンが形成されており、これが前述した白色の反射層と同等の効果が得られるようになっている。
【0230】
以下、実施例15と同様にして、本実施例に係る液晶表示素子を得た。この液晶表示素子について、実施例15と同様にして評価したところ、反射率85%、コントラスト比20:1であった。
【0231】
以上の説明から明らかなように、本発明の第3の態様によれば、明るく、コントラスト比が高い、優れた反射型の液晶表示素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の偏光板2枚を具備する反射型TN−LCDを示す断面図。
【図2】従来の偏光板1枚を具備する反射型ECB−LCDを示す断面図。
【図3】従来の反射型GH−PC−LCDを示す断面図。
【図4】従来の反射型GH−HOMO−LCDを示す断面図。
【図5】従来の2層型反射型GH−HOMO−LCDを示す断面図。
【図6】従来の4分の1波長板を用いた反射型GH−HOMO−LCDを示す断面図。
【図7】本発明の液晶表示素子の一例を示す断面図。
【図8】本発明の液晶表示素子の他の例を示す平面図。
【図9】本発明の液晶表示素子の変調部と非変調部の一例を示す平面図。
【図10】本発明の液晶表示素子の他の例を示す平面図。
【図11】本発明の液晶表示素子の製造工程を示す断面図。
【図12】本発明の液晶表示素子の製造工程を示す断面図。
【図13】本発明の液晶表示素子の他の例を示す断面図。
【図14】本発明の実施例1に係る基板の電極構造を示す平面図。
【図15】本発明の実施例1に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図16】本発明の実施例の液晶表示素子の表示原理を説明する図。
【図17】液晶表示素子の反射率の測定系を示す図。
【図18】本発明の実施例2に用いた基板の電極構造およびカラーフィルターの平面構造を示す平面図。
【図19】本発明の実施例2に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図20】本発明の実施例3に用いた基板を示す平面図。
【図21】本発明の実施例6に用いた基板の電極を示す平面図。
【図22】本発明の実施例6に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図23】本発明の実施例7に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図24】本発明の実施例8に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図25】本発明の実施例9に用いた基板の電極の平面図及び断面図。
【図26】本発明の実施例10に用いた基板の電極の平面図及び液晶表示素子の断面図。
【図27】本発明の実施例11に係る液晶表示素子を示す断面図。
【図28】実施例11の液晶表示素子の動作を説明する図。
【図29】本発明の液晶表示素子の実施例12〜14に使用する液晶セルの断面図。
【図30】実施例12に係る液晶表示素子の構成を概略的に示す図。
【図31】実施例13および14に係る液晶表示素子の構成を概略的に示す図。
【図32】実施例15に係る液晶表示素子のSiOX 層のパタ−ンの形状を示す図。
【図33】実施例15に係る液晶表示素子を示す図。
【図34】実施例15に係る液晶表示素子におけるSiOX 層とITO層とが二次元的に分布して回折格子を構成している光拡散層を示す断面図。
【図35】2種の屈折率媒体を3次元的に配置した光拡散層を示す断面図。
【図36】2種の屈折率媒体を2次元的に配置した光拡散層の回折現象示す図。
【図37】2種の屈折率媒体の種々の分布形状を示す図。
【図38】2種の屈折率媒体を3次元的に配置した光拡散層の光反射現象を示す図。
【図39】2種の屈折率媒体を2次元的に配置した光拡散層の光反射現象を示す図。
【図40】光拡散層と反射層を分離した液晶表示素子の構成を示す断面図。
【符号の説明】
1,11…上基板、2,12…下基板、3,13…透明電極、4,14…画素電極、5,15…液晶組成物、16,17…配向膜、18…MIMスイッチング素子、20…白色反射層、22…配線、30…反射板、31…4分の1波長板、A…変調部、B…非変調部。
Claims (25)
- 観察される側に配置され、一方の主面に第1の電極が形成された第1の基板と、
前記第1の基板の前記第1の電極が形成された主面に対向して配置され、その対向主面に第2の電極を有する第2の基板と、
前記第1及び第2の基板間に挟持された液晶組成物層と、
前記第1の電極に対応する領域であって、前記第1及び第2の電極間に印加された電圧により前記液晶組成物が応答し、入射する光の反射量を変調する変調部と、
この変調部以外の領域である非変調部と、
前記第1の基板の前記第1の電極が形成された主面に形成された光拡散層と、 前記光拡散層上の、前記非変調部に対応する領域の少なくとも一部に形成された第1の反射層と
を具備する反射型液晶表示素子。 - 前記第2の基板のいずれかの主面に形成された第2の反射層を更に具備する請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、前記第2の基板の前記第2の電極が形成されている主面の少なくとも一部に形成されている請求項2に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、前記第2の電極が兼ねている請求項3に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、前記第2の電極上に形成されている請求項3に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、前記第2の基板の前記第2の電極が形成されている主面とは反対側の主面の少なくとも一部に形成されている請求項2に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、Al又はAgを主成分として含む請求項2に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第1及び第2の基板のいずれか一方の電極が形成されている側に、カラ−フィルタ−を具備する請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記カラ−フィルタ−は、前記光拡散層上に配置され、前記反射層は前記カラ−フィルタ−上に配置されている請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記光拡散層は、屈折率の異なる第1及び第2の透明屈折率媒体からなる請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第1の透明屈折率媒体は、ポリスチレン、SiO2 、及びポリイミドからなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、前記第2の透明屈折率媒体は、前記第1の透明屈折率媒体の溶媒であるアクリル系材料を主成分として含有する請求項10に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記及び第2の透明屈折率媒体は、前記液晶組成物の平均屈折率±10%の範囲内の屈折率を有する請求項10に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第1の透明屈折率媒体は、前記液晶組成物の常光屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有し、前記第2の透明屈折率媒体は、前記液晶組成物の異常屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有する請求項12に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記光拡散層は、前記第1及び第2の透明屈折率媒体を略平面的に配置してなる回折格子である請求項12に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記回折格子は、前記第1及び第2の透明屈折率媒体をチェック状に配置してなる請求項14に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第1の透明屈折率媒体は、ポリスチレン、SiO2 、及びポリイミドからなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、前記液晶組成物の常光屈折率とほぼ等しいか又は近似する屈折率を有し、前記第2の透明屈折率媒体は、ITO及び窒化珪素からなる群から選ばれた材料を主成分として含有し、前記第2の透明屈折率媒体の屈折率と前記第1の透明屈折率媒体との差δnと前記光拡散層の層厚Dを乗じた値δnDが0.1μm〜0.4μmであり、前記光拡散層は、前記第1及び第2の透明屈折率媒体を平面的にチェック状に配置してなる回折格子である請求項12に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の反射層は、Al又はAgを主成分として含み、前記光拡散層は、2種類の透明な屈折率媒体からなる請求項2に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記液晶組成物は、二色性染料を含有する請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記4分の1波長板及び第2の反射板は、前記第2の基板の前記第2の電極が形成されている主面の側に配置されている請求項18に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記液晶組成物は、光反射機能を有し、前記第1の反射層を兼ねる請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記液晶組成物は、高分子分散型液晶組成物である請求項20に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記高分子分散型液晶組成物は、エマルジョン型高分子分散型液晶組成物である請求項21に記載の反射型液晶表示素子。
- 薄膜トランジスタ及び薄膜ダイオ−ドのいずれか一方を有するアクティブマトリックス型液晶表示素子である請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第1の反射層は、前記薄膜トランジスタ及び薄膜ダイオ−ドのいずれか一方の配線機能を有する請求項23に記載の反射型液晶表示素子。
- 前記第2の基板の前記第2の電極が形成されている主面とは反対側には、凹面鏡反射レンズからなる反射板が配置されている請求項1に記載の反射型液晶表示素子。
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