JP3576318B2 - 核酸関連物質含有栄養組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、栄養組成物に関し、更に詳細には、生体膜における各種生体成分を改善する作用を有する、核酸関連物質含有栄養組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、n−3系列の多価不飽和脂肪酸であって、日本人母乳中には、脂肪酸組成として0.63±0.24%含まれており(米久保他、小児保健研究、46、349(1987))、乳児の脳や網膜中に脂質成分としてこれらの発達の上で重要な役割を果たしている(Kanazawa他:Lipids 1991; 26;53−57)。
そして、このような重要性に鑑み、DHAを強化した調製粉乳が現実に市販されている。
【0003】
一方、動物の成長や皮膚への影響から、従来、必須脂肪酸はn−6系列の多価不飽和脂肪酸であるリノール酸だけであると考えられてきたが、アラキドン酸も、胎児及び新生児の発育や、生体でのエイコサノイドとしての役割又は膜脂質における構造機能に関係して発育促進効果を有することなどから、生体にとって必須な脂肪酸であることが認められてきた(Crawford他、The role of Rats in Human Nutrition; edited by Vergrosssen and Crawford, Academic Press, 1989)。
しかしながら、アラキドン酸を強化した育児用調製乳は市販されていないのが現状である。
【0004】
そして、このアラキドン酸に関しては、DHAを魚油の形で強化した調製粉乳で哺育された低生体重児の赤血球膜リン脂質中のDHAレベルは母乳栄養児並になるものの、アラキドン酸レベルは母乳栄養児よりも下回る傾向であると指摘されている(大元:日本小児科学会雑誌 1990; 94; 224−234)。
また、魚油とコレステロールが強化された系では、血漿中及び組織中のアラキドン酸の含有量低下が観察されている(Garg他; Lipids 1989; 24, 226−270)。
【0005】
このように、アラキドン酸、DHA及び/叉はコレステロールの同時強化に成功した例は知られていないのが技術の現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した技術の現状に鑑みてなされたものであって、新生児期には、n−3系列とn−6系列の多価不飽和脂肪酸を血漿中に強化する必要があり、しかもそのバランス、つまりn−3系列/n−6系列脂肪酸比率(ω−3多価不飽和脂肪酸/ω−6多価不飽和脂肪酸の比)も重要であるが、本発明者らは、この点について更に検討した結果、血漿中のみでなく赤血球膜等生体膜中においてもその重要性をはじめて認識し、DHAとアラキドン酸を赤血球膜中にバランスよく増加させることを技術課題として設定した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した技術課題を解決する目的でなされたものであって、各種検討の結果、DHA及びアラキドン酸を含有した魚油、コレステロールを含有した油脂に、更にヌクレオチドを配合強化した食品が、赤血球膜のPC、PEにおける多価不飽和脂肪酸(n−3及びn−6)とモノ不飽和脂肪酸を増加させることをはじめて見出した。
【0008】
本発明者らは、この有用新知見に基づき更に検討の結果、核酸/DHA/アラキドン酸/コレステロールを強化することにより、赤血球膜のほか、小腸粘膜、肝臓生体膜等の生体膜において、不飽和脂肪酸やコリン含有リン脂質、PC、PEといった脂質や蛋白質、コレステロール(Chということもある)、DNA等の有用生体物質が増加するという従来未知の有用新知見を得、遂に本発明の完成に至ったものである。
【0009】
すなわち本発明は、核酸、DHA、アラキドン酸(AAということもある)及びコレステロールを有効成分として含有することを特徴とする生体膜における脂質、蛋白質、コレステロール及び/又は核酸増加作用を有する栄養組成物を基本的技術思想とするものである。
以下、本発明を具体的に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る栄養組成物は、核酸/DHA/アラキドン酸/コレステロールを有効成分とするものであるが、核酸としては、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸(RNA、DNA)、その構成成分である塩基が1種又は2種以上適宜使用される。
【0011】
(1)ここでいう塩基は、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、シトシン、ウラシル、チミンのことである。
(2)ここでいうヌクレオシドは、ウリジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、リボチミジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシウリジン、デオキシシチジン、チミジン、イノシン、キサントシンのことである。
(3)ここでいうヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分にリン酸がエステル結合で結合している化合物のことで、結合するリン酸の位置はどこでもよく、結合するリン酸の数もいくつでもよい。また、例えば、1つのリン酸が5′、3′位の両方で結合する化合物もヌクレオチドに含める。この場合も結合するリン酸の数や位置はどこでもよい。
(4)ここで言う核酸は、DNA、RNAなどのポリヌクレオチドや上記(3)のヌクレオチドが結合したポリヌクレオチドのことである。
なお、以下において、核酸としてはヌクレオチドを例にとって本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明に係る栄養組成物を調製するには、各有効成分を所要量配合強化する必要があるが、有効成分は、精製物が使用できることはもとより、組成物や含有物も使用することができ、また、こ(れら)の乾燥物〜ペースト状物〜液状ないし懸濁状物〜希釈物等各種処理物も使用することができる。
本発明に係る組成物を調製するには、各有効成分をそれぞれ所要量配合してもよいし、有効成分を含有した含有物を使用してもよい。
【0013】
有効成分含有物としては、食用油脂が例示され、これにヌクレオチドを配合することによって、本発明に係る組成物を調製することができる。
食用油脂としては、動植物由来の液状、半固体状、固体状の油脂がすべて使用可能であり、また、水素添加処理、分子蒸留処理、分別処理等各種処理した油脂も使用することができる。
食用油脂の非限定例としては、次のものが挙げられる;魚油、牛脂、豚脂、乳脂、羊脂、馬油、肝油、卵油、大豆油、コーン油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、米油、菜種油、綿実油、シソ油、ゴマ油、紅花油、落花生油等。
【0014】
これらの食用油脂は、いずれも本発明において使用できるが、DHAやコレステロール含量の高い魚油は特に好適な食用油脂の1例である。
本発明に用いる魚油としては、一般に使用されている魚油でよく、例えば、マグロ油、カツオ油、イワシ油、サバ油、サンマ油、スケトウダラ油等が使用され、また、これらの混合油または濃縮油を用いることができるが、乳児用調製乳へはDHA含量が高いマグロ油やカツオ油が好ましい。
【0015】
このような食用油脂は、1種類または2種類以上をヌクレオチドとともに使用する。食用油脂としては、DHA、コレステロール、アラキドン酸含量の高い油脂が好適であるが、これらのすべてに富んだ油脂がない場合には、各成分の1つあるいは2つの含量の高い油脂を選択し、これらを併用してもよい。
また、必要のある場合には、食用油脂を濃縮、分子蒸留、分別等の処理に付して、各成分含量を高め、このようにして処理した食用油脂を使用してもよい。
【0016】
例えば、魚油等の油脂を常法にしたがって分子蒸留したり分別処理したりしてDHA濃度を高めたり、炭酸ガス等の超臨界ガスを用いて魚油のコレステロールを濃縮したりすること(特開昭61−261398号公報)も可能であるし、各成分を直接添加して油脂の強化を行うことももちろん可能である。この場合、各成分は精製品を直接添加してもよいし、アラキドン酸の場合には大豆レシチンを使用するといったように各成分の含有物を添加使用してもよい。
【0017】
食用油脂におけるこれらの各成分の含有量は、粉体100g当たり、アラキドン酸4.9〜60mg、DHA 24.5〜250mg、コレステロール56〜90mgとするのが良い。
含有量の調節は、その添加量、使用油脂における本来の含有量、濃縮処理条件のコントロール等によって適宜行うことができる。
【0018】
このような食用油脂はヌクレオチドとともに配合するが、ヌクレオチドとしては、シチジン−モノリン酸(CMP)、ウリジン−モノリン酸(UMP)、アデノシン−モノリン酸(AMP)、グアノシン−モノリン酸(GMP)、イノシン−モノリン酸(IMP)の1種類以上を含んでなるヌクレオチド混合物が使用される。もちろん各ヌクレオチドを個々に所要量配合してもよい。
その配合量は、粉体100g中に、CMP 5〜10mg、UMP 2〜4mg、AMP 0〜4mg。GMP 1〜3mg及び/又はIMP 2〜4mgとするのが良い。
【0019】
このようにして調製した食用油脂及びヌクレオチドは、これを各種の飲料、食品に配合することにより、乳児用食品を包含する飲食品タイプの栄養組成物を自由に製造することができる。
本発明に係る栄養組成物(飲料も包含される)は、風味、食感、外観等において問題はなく、調製乳等の乳製品のほか、離乳食、健康食、健康ドリンク等各種の形態とすることができ、乳幼児はもとより、成人、健常者、病弱者、老人等の飲食品としても有利に利用できる。
【0020】
本発明に係る乳児用食品として調製乳を調製するには、例えば次のようにして行えばよい。
すなわち、脱脂乳、牛乳カゼイン、牛乳脱塩ホエイタンパク質、乳糖、オリゴ糖、ショ糖およびデキストリンを温湯に溶解混合後、ビタミン・ミネラル類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、L−アスコルビン酸ナトリウム、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、クエン酸第一鉄ナトリウム、硫酸第一鉄もしくはピロリン酸第二鉄、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウムもしくは塩化マグネシウム、硫酸銅、硫酸亜鉛など)を溶解した水溶液を加え、水相部とする。
この溶液に、アラキドン酸/DHA/コレステロール高含有油脂及びヌクレオチドを加え、ホモミキサーにて混合し、ホモジナイザーで均質化する。得られた乳化液を常法により殺菌、濃縮、噴霧乾燥して調製粉乳とする。この調製粉乳を温湯に溶解し約6〜8倍に希釈して調乳する。
【0021】
本発明に係る組成物は、上記の乳児用食品として利用できるほか、例えば、ヒト又は動物用の医薬品、飲食品、調製粉乳、経腸栄養剤、健康飲食品、飼餌料添加物、培養細胞の培地添加物等各種タイプの組成物として実用に供することができる。
【0022】
有効成分の配合量は、任意でよいが、使用目的(予防、保健、又は治療)、患者の年令、投与方法、剤型等に応じて適宜定めればよく、通常、0.0001〜10%の範囲が適当である。しかしながら、長期間に亘って保健上ないし健康維持の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよいし、また本有効成分は、安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に使用しても一向にさしつかえない。現にマウスを用いた10日間の急性毒性試験の結果、1000mg/kgの経口投与でも死亡例は認められなかった。
【0023】
ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸(RNA、DNA)またはその構成成分である塩基の由来は、酵母、細菌、乳、魚介類、動物、植物など制限はない。また、核酸(RNA、DNA)やヌクレオチド、ヌクレオシドまたはその構成成分である塩基の精製方法についても制限はなく、完全に精製されてないものを用いてもよい。
したがって、既述したように、精製物のほか、粗製物、含有物等も自由に使用することができ、乾燥品〜ペースト状物〜液状ないし懸濁状物にした処理物も広く使用することができる。
【0024】
飲食品タイプの組成物として使用する場合には、本有効成分(その処理物)をそのまま、使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして適宜常法にしたがって使用できる。本有効成分を用いる本発明に係る組成物は、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状ないし懸濁状のいずれでもよいが、甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化すると好適である。
【0025】
医薬品タイプの組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態としては例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与をあげることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。その使用量は症状、年令、体重、投与方法および剤形等によって異なるが、通常は、成人に対して、1日当たり、静脈投与の場合は、体重1kg当たり、0.01mg〜1000mgを投与することができ、筋肉投与の場合は同じく0.01mg〜1000mgを投与することができ、また、経口投与の場合には同じく0.5〜2000mg、好ましくは1〜1000mgの範囲内で投与するのがよい。
【0026】
本発明によれば、後記するところから明らかなように、例えば次のようなすぐれた作用が奏される。
(1)核酸、DHA、AAおよびコレステロールを強化したとき、赤血球膜のPC、PEにおける多価不飽和脂肪酸n−3とn−6及びモノ不飽和脂肪酸は増加し、また、赤血球膜に結合する蛋白質含量は増加する。
(2)核酸添加により、小腸粘膜におけるDNA含量が増加することが確認される。
(3)核酸、DHA、AAおよびコレステロールを強化したとき、肝臓生体膜におけるch含量、コリン含有リン脂質(P−choline)含量、ch/P−cholineモル比率は、核酸だけを強化したときと比較して、増加する。
【0027】
したがって、本発明に係る組成物は、各種生体膜における脂質、蛋白質、コレステロール及び/又は核酸の増加作用、バランス改善作用といったすぐれた作用を有するものである。
【0028】
本発明において、脂質は、脂肪酸、脂肪、グリコリピッドを包含するものである。脂肪酸としては、各種の飽和、不飽和脂肪酸が広く含まれ、例えば、DHAやEPAといったn−3系列の多価不飽和脂肪酸、AAといったn−6系列の多価不飽和脂肪酸、及び、オレイン酸といったモノ不飽和脂肪酸が例示される。
脂肪は、グリセリンが3分子の脂肪酸とエステル結合してなるトリグリセリドであり、また、グリセロホスホリピッド(グリセロリン脂質)は、脂肪を構成する一部の脂肪酸がリン酸(エステル)で置換されたものであって、P−choline、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)等が例示される。
【0029】
本発明に係る組成物は、生体膜において各種のすぐれた作用を奏するが、各有効成分の具体的配合強化例としては次のものが挙げられる。
粉体100g中にシチジン−モノリン酸5〜10mg、ウリジン−モノリン酸2〜4mg、アデノシン−モノリン酸0〜4mg、グアノシン−モノリン酸1〜3mg及び/又はイノシン−モノリン酸2〜4mgと、アラキドン酸を粉体100gあたり4.9〜60mg、DHAを24.5〜250mg及びコレステロールを56〜90mg含有した食用油脂を配合してなる組成物。
【0030】
また、次のような配合も好適例のひとつである。
粉体100g中にシチジン−モノリン酸5〜10mg、ウリジン−モノリン酸2〜4mg、アデノシン−モノリン酸0〜4mg、グアノシン−モノリン酸1〜3mg及びイノシン−モノリン酸2〜4mgからなるヌクレオチド混合物と、アラキドン酸を粉体100gあたり4.9〜60mg、DHAを24.5〜250mg及びコレステロールを56〜90mg含有した食用油脂を配合してなる組成物。
【0031】
以下、本発明の実施例について述べる。
【0032】
【実施例1】
核酸関連物質強化が成長と脂質代謝に及ぼす影響について、以下により検討した。
【0033】
(1)3週齢ラットを、対照群(I)、DHA、AA、コレステロール強化群(II)、核酸強化群(III)及び核酸、DHA、AA、コレステロール強化群(IV)の4つの群に分け、各群6匹ずつ、3週間飼育した。III群とIV群の飼料では、ヌクレオチドを添加し、この添加量は人乳におけるヌクレオチドの含量と種類および比率に近い。II群とIV群の飼料では、DHA、AA、コレステロールを添加した(表1)。なお、表中、Controlは対照、AAはアラキドン酸、DHAはドコサヘキサエン酸、chはコレステロール、Nはヌクレオチドをそれぞれ示す。
【0034】
【表1】
【0035】
なお以下において、コレステロール、コリン含有リン脂質、グリコーゲンは酵素法にて測定し、脂肪酸はガスクロマトグラフィーにて測定した。
得られた結果を下記表2、表3に示す。なお、各数値は全脂肪酸のパーセントの平均値を示す(±SD、各群ともn=6)。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
上記結果から明らかなように、赤血球膜のホスファチジルコリン(PC)の脂肪酸組成について、IV群の18:1,18:2 n−6、20:4 n−6、22:5 n−3は他の三群と比較して高値であった。IV群の22:6 n−3は他の三群に比較して、高い傾向が見られたが、その差は有意ではなかった。
赤血球膜のホスファチジルエタノールアミン(PE)の脂肪酸組成について、IV群の18:1,18:2 n−6、18:3 n−3、20:4 n−6、20:5 n−3、22:5 n−3は他の三群と比較して有意に高値であった。
【0039】
また、赤血球膜における不飽和脂肪酸のパーセンテージを図1に示す(図中、monounsaはモノ不飽和脂肪酸、PUFAは多価不飽和脂肪酸を示す。)。
この結果から明らかなように、IV群の赤血球膜PCとPEにおけるモノ不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸n−3とn−6は他の三群と比較して、有意に増加した。
核酸とDHA、AA及びコレステロール同時強化により、赤血球膜のPCとPEにおける多価不飽和脂肪酸n−3とn−6及びモノ不飽和脂肪酸は増加し、生体の多価不飽和脂肪酸の合成と脂肪酸の不飽和化作用を促進することが充分に示唆された。
【0040】
赤血球膜におけるヌクレオチド、DHA、AA、コレステロールの添加効果を図2に示す。
この結果から明らかなように、赤血球膜の脂質組成について、II群の赤血球膜における蛋白質あたりのchとP−cholineの含量は、III群とIV群より有意に高値であった。赤血球膜のch/P−cholineのモル比は4群間に有意差が見られなかった。IV群の赤血球膜における蛋白質/脂質はI群とII群より有意に高値であった。
核酸とDHA、AA及びコレステロール同時強化により、赤血球膜に結合する蛋白質の含量は増加し、その蛋白質の合成を促進すると考えられた。
【0041】
(2)(I)〜(IV)群のラットについて、小腸粘膜におけるRNA及びDNA含有量をSTS法にて分析した。得られた結果を図3に示す。
この結果から明らかなように、小腸について、IV群のRNA含量は他の三群と比較して、高い傾向が見られたが、その差は有意ではなかった。III群及びIV群の小腸粘膜におけるDNA含量はI群と比較して、有意に高値であった。核酸添加により、小腸粘膜DNAの合成を促進することが確認された。
【0042】
(3)(I)〜(IV)群のラットについて、小腸microvillus膜(MVM)の流動性を蛍光偏光解消法にて分析した。得られた結果を図4に示す。
この結果から明らかなように、膜の異方性r値は膜の流動性を表す指標であり、この値が低い程、流動性は増加することを意味する。II群とIV群の小腸microvillus膜における15、25、37℃時の異方性r値はIII群より有意に低値であり、両群の小腸microvillus膜の流動性は増加したことが示された。
II群とIV群の小腸microvillus膜におけるch/P−cholineモル比はIII群より有意に低値であった。小腸microvillus膜の異方性r値は膜のch/P−cholineモル比と同様な傾向で変化することが見られた。核酸とDHA、AA強化は小腸microvillus膜の脂質組成と流動性に及ぼす影響が与えられた。
【0043】
(4)(I)〜(IV)群のラットについて、肝臓中におけるRNA、DNA、蛋白質、コレステロール(ch)、コリン含有リン酸質(P−choline)、グリコーゲンを測定した。得られた結果を下記表4に示す。なお各数値は平均値±SDを示す(各群ともn=6、対照群に比して有意差あり、*P<0.05)。
その結果から明らかなように、肝臓の組成について、I群の肝臓におけるRNA、ch、P−cholineの含量は、他の三群と比較して、高値であった。
【0044】
【表4】
【0045】
(5)(I)〜(IV)群のラットについて、肝臓のミトコンドリア膜及びミクロソーム膜における各組成分析を行った。得られた結果を図5に示す。
この結果から明らかなように、II群とIV群の肝臓mitochondria膜における蛋白質当たりのchとP−cholineの含量はIII群と比較して、有意に高値であった。IV群の肝臓microsome膜における蛋白質当たりのch含量はIII群と比較して、有意に高値であった。IV群の肝臓mitochondriaとmicrosome膜におけるch/P−cholineモル比はIII群と比較して、有意に高値であった。
【0046】
核酸だけ強化のとき、肝臓全体における脂質含量と肝臓生体膜における蛋白質当たりの脂質含量及びch/P−cholineモル比は減少することが示唆された。核酸とDHA、AA及びコレステロール同時強化のとき、肝臓全体における脂質含量は減少した。しかし、生体膜における脂質含量とch/P−cholineモル比は増加した。核酸とDHA、AA及びコレステロール同時強化は、肝臓の生体膜における脂質含量と肝臓の生体膜以外の組織における脂質含量に異なる影響を与えると考えられた。
【0047】
【実施例2】
製品粉体100g当たり、アラキドン酸4.9mg、DHA 24.5mg、コレステロール56.0mg、更に、CMP 6.01mg、UMP 3.85mg、AMP 0.21mg、GMP 1.55mg、IMP 3.07mgとなるように、市販の育児用調製粉乳の原料精製魚油25gを強化し、強化魚油を調製した。
脱脂乳80g、カゼイン4g、乳清蛋白質18g、糖質40g、ミネラル0.7g、ビタミン0.7gを添加混合し、pH調整後、殺菌、濃縮した液に、油脂として上記した強化魚油25gを混合し、均質化後、噴霧乾燥して乾燥製品を得た。
また、均質化後、噴霧乾燥することなく、液状製品を調製した。
【0048】
【発明の効果】
本発明に係る栄養組成物を投与することにより、各種生体膜において、脂質、蛋白質、ch、RNA、DNAの含量を増加させたり、そのバランスを改善したりする作用が奏される。
したがって本発明によれば、乳幼児の成長、特に離乳期の成長が促進されるほか、ヒトや動物の健康維持や栄養状態の改善が有効に行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】赤血球膜における不飽和脂肪酸量を示す。
【図2】赤血球膜におけるヌクレオチド、DHA、AA、chの添加効果を示す。
【図3】小腸粘膜におけるRNA及びDNA量を示す。
【図4】小腸microvillus膜の流動性を示す。
【図5】肝臓膜におけるヌクレオチド、DHA、AA、chの添加効果を示す。
Claims (9)
- 粉体100g中にシチジン−モノリン酸5〜10mg、ウリジン−モノリン酸2〜4mg、アデノシン−モノリン酸0〜4mg、グアノシン−モノリン酸1〜3mg及び/又はイノシン−モノリン酸2〜4mgと、アラキドン酸を粉体100gあたり4.9〜60mg、DHAを24.5〜250mg及びコレステロールを56〜90mg含有した食用油脂を配合してなること、を特徴とする脂質、蛋白質、コレステロール及び/又は核酸増加作用を有する栄養組成物。
- 粉体100g中にシチジン−モノリン酸5〜10mg、ウリジン−モノリン酸2〜4mg、アデノシン−モノリン酸0〜4mg、グアノシン−モノリン酸1〜3mg及びイノシン−モノリン酸2〜4mgからなるヌクレオチド混合物と、アラキドン酸を粉体100gあたり4.9〜60mg、DHAを24.5〜250mg及びコレステロールを56〜90mg含有した食用油脂を配合してなること、を特徴とする脂質、蛋白質、コレステロール及び/又は核酸増加作用を有する栄養組成物。
- 食用油脂に魚油が包含されること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の栄養組成物。
- 脂質が脂肪酸及び/又はグリセロホスホリピッドであること、を特徴とする請求項3に記載の栄養組成物。
- 脂肪酸がモノ及び/又は多価不飽和脂肪酸であり、グリセロホスホリピッドがコリン含有リン脂質、ホスファチジルコリン(PC)及び/又はホスファチジルエタノールアミン(PE)であること、を特徴とする請求項4に記載の栄養組成物。
- 該有効成分が、精製物、粗製物、及び/又は含有物であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の栄養組成物。
- 該組成物が、ヒト及び/又は動物用の、医薬品タイプ及び/又は飲食品タイプの組成物であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の栄養組成物。
- 該組成物が乳児用食品であることを特徴とする請求項7に記載の栄養組成物。
- 乳児用食品が乳児用調製乳であることを特徴とする請求項8に記載の栄養組成物。
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