JP3573639B2 - 添加剤を混練した溶融ポリマーの押出し方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は添加剤を混練した溶融ポリマーの押出し方法及びその装置に関し、更に詳しくは真空ホッパー式押出機に常圧部より粉状の添加剤を供給投入し、該添加剤をポリマー中に均一分散状態で含有させる押出し方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーに粉状体を添加し押出機で混合溶融させる方法には、▲1▼ポリマーチップと粉状体を一定比率で押出機に投入して均一に溶融分散混合する方法、▲2▼ポリマーチップと粉状体を事前に混合して押出機に投入する方法等がある。
【0003】
▲1▼の方法は簡便で設備投資が小さく、広く実施されている方法である。一方、押出機においてポリマーチップを溶融混練する際に僅かな空気を巻き込み溶融ポリマー中に気泡が入るのを防止するため、押出機に投入するポリマーチップ部を真空にした真空ホッパー式押出機が広く用いられている。
【0004】
真空ホッパー式押出機において、▲1▼の方法で粉状体を添加する場合は粉状体の計量装置部及びその粉体貯蔵部を真空にしなければならず装置が大掛かり、かつ複雑になる問題があった。また粉状体の計量装置の形式によっては真空にすることが不可能な場合もあり、使用できる計量装置に制約が生じると言う問題があった。更には、長時間連続運転の場合、粉状体の補給時に一旦真空を破る必要が生じる。
【0005】
また、▲2▼の方法は大きな貯槽に計量精度が得易い量の粉状体を(微小量は計量精度が低くなり易い)一括投入して混合し、しかる後押出機に投入する方法であるが、ポリマーチップ乾燥後に真空下で混合するためには、結局、粉状体の計量装置部を真空にする必要がある。逆に計量、混合後に真空にすると、粉状体の一部が吸引空気流と共に排出されるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
既存装置の限られたスペースで、粉状体の均一混合機能を導入するには▲1▼の方法が適している。しかし真空ホッパー式押出機において、▲1▼の方法を適用するには粉状体の計量装置部及び粉状体貯蔵部を真空にしなければならないため、設備が大掛かりかつ複雑になるという問題が生じる。
【0007】
本発明者は、この問題を克服する手段を開発すべく鋭意研究した結果、粉状体を常圧下で計量し移送した後に、垂直方向の粉体重力流を形成する位置に配置した2台の弁を交互に開閉することで常圧部から真空部へ粉状体を簡便に移送できることを知見し、本発明に到達した。
【0008】
従って、本発明の目的は、比較的小さな投資、限られたスペースの中で、真空ホッパー式押出機に粉状添加剤を簡便な手段で安定して供給して、添加剤を混練した溶融ポリマーを押出す方法、及びその装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、本発明によれば、
第1に、真空ホッパー式押出機を用いて添加剤を混練した溶融ポリマーを押出す際、該ホッパーを真空状態に維持しながら該ホッパー内のポリマーチップを押出機に連続的に供給し、かつ該ホッパーの底部から押出機のフィードポケット間の流動ポリマーチップに、常圧密閉手段を有する粉体供給工程から、該手段を作動させながら粉状添加剤を供給することを特徴とする添加剤を混練した溶融ポリマーの押出し方法によって、
第2に、真空ホッパー式押出機と粉体供給工程を備えた、添加剤を混練した溶融ポリマーの押出装置であって、該粉体供給工程が常圧密閉手段を有し、該常圧密閉手段から排出される粉状添加剤を、該真空ホッパーの底部から押出機のフィードポケット間の流動ポリマーチップに供給するようにしたことを特徴とする押出装置によって達成される。
【0010】
そして、前記押出し方法は、好ましい態様として、前記常圧密閉手段が粉体重力流を形成する位置で所定の間隔に設けた2台の弁からなり、これら弁間に上位の弁の開閉で計量器で計量された所定量の粉状添加剤を供給し、その後下位の弁の開閉で該粉状添加剤を押出機側の供給管に排出する態様を、さらに前記常圧密閉手段の2台の弁の交互に開閉する周期が、添加剤のポリマー中での均一分散性を損なわない程度に短い時間である態様を、また真空ホッパーの真空度(絶対圧)が4.5×104 Pa以下である態様を包含する。さらに、前記押出し方法は、粉状添加剤がスルホン酸4級ホスホニウム塩化合物であり、この量がポリマーに対し0.02〜45mmol%である態様を包含する。
【0011】
また、前記押出装置は、好ましい態様として、前記常圧密閉手段が粉体重力流を形成する位置で所定の間隔に設けた2台の弁からなり、これら弁間に上位の弁の開閉で計量器で計量された所定量の粉状添加剤を供給し、その後下位の弁の開閉で該粉状添加剤を押出機側の供給管に排出するようにした態様を包含する。
【0012】
以下、本発明を更に詳しく述べる。
本発明におけるポリマーとは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン―2,6―ナフタレートのようなポリエステル、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスチレンのようなポリビニル、ナイロンのようなポリアミド、ポリカーボネイト等の熱可塑性重合体であり、その中でもポリエステルが特に好ましい。
【0013】
本発明における粉状添加剤は粉状の無機物ないし無機化合物でも有機化合物でもよい。この代表的なものとして、無機あるいは有機の不活性粒子が挙げられ、該粒子は単一粒子でもそれらの凝集粒子(二次粒子)でもよい。かかる粒子としては、例えば炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、酸化チタン、カオリン、カーボン等の無機粒子、(架橋)シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン、ポリイミド、フッ素樹脂等の耐熱性樹脂からなる有機粒子が挙げられる。前記有機化合物としては、さらに、染料、各種安定剤、紫外線吸収剤、フイルムを成形するときのキャスティング機能強化剤(例えば、アルカリ(土類)金属化合物、スルホン酸4級アンモニウム塩化合物等)を例示することができる。
【0014】
前記スルホン酸4級アンモニウム塩化合物としては、例えば下記式で示される化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、Aは芳香族基又は脂肪族基、X1 及びX2 は同一若しくは異なるエステル形成性官能基又は水素原子、R1 、R2 、R3 及びR4 はアルキル基及びアリール基よりなる群から選ばれた同一又は異なる基、nは正の整数である。
【0017】
上記スルホン酸4級ホスホニウム塩化合物の好ましい具体例としては、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム塩、3―カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5―ジ(β―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、4―ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ビスフェノールA―3,3′―ジ(スルホン酸テトラブチルホスホニウム塩)、2,6―ジカルボキシナフタレン―4―スルホン酸テトラブチルホスホニウム等を挙げることができる。
【0018】
前記アルカリ(土類)金属化合物としては、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等を挙げることができる。
【0019】
本発明における粉状添加剤の形状は制約がなく任意であるが、良好な重力流を形成するものが好ましい。また添加剤の大きさはその種類にもよるが、球換算平均直径で1mm以下、更には0.5mm以下であることが好ましい。この下限は1nmであることが好ましい。
【0020】
例えば、フイルムの滑剤として用いる不活性粒子の大きさは、平均粒径で0.002〜3μm、さらには0.003〜2μmの範囲にあることが好ましい。また、スルホン酸4級アンモニウム化合物の大きさは、平均径で1〜150μm、さらには5〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0021】
本発明における粉状添加量の供給量は、添加剤の種類によって変わるが、例えば不活性粒子ではポリマーに対し、0.00005〜5重量%、さらには0.0001〜2重量%の範囲が好ましい。またスルホン酸4級アンモニウム化合物では、ポリマー構成成分(特にポリエステルの酸成分)に対し、0.02〜45mmol%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明における真空ホッパー式押出機としては、従来から知られているものを用いることができ、一軸押出機でも2軸以上の多軸押出機でもよい。
【0023】
本発明における粉体供給工程は、粉体を連続的に計量移送するフィダーと常圧密閉手段とを有するが、このフィダーとしては例えばスクリューフィーダー、サークルフィーダー、電磁フィーダー、重量式フィーダー、容積式フィーダー等が挙げられる。かかるフィダーによる計量移送は約1g/時のときもあれば数kg/時のときもある。また、この中間の量のときもある。このため、該フィダーとしては約1g/時から数kg/時の範囲をすべて対応できる能力を有するものが最も好ましいが、場合によってはその一部の供給能力を有するもの、例えば約1g/時乃至数100g/時の範囲を対応できるもの、数10g/時乃至数100g/時の範囲を対応できるもの、或は数100g/時乃至数kg/時の範囲を対応できるもの等を用いることができる。
【0024】
また、常圧密閉手段としては粉体重力流を形成する位置で所定の間隔に設けた2台の弁からなる手段が好ましい。この弁は真空封止可能な自動弁で、例えばボール弁、バタフライ弁等が挙げられる。また、垂直方向に粉体の重力流を形成する位置に配置した2台の弁と弁の間の内部流路の容積が小さいものが好ましい。2台の弁を交互に開閉する時間間隔は2台の弁が同時に開く瞬間がなくて、かつ供給する粉状体の弁開閉による投入間隔が、押出機で添加剤がポリマーへ混合分散するのに均一性を損なわない程度以下に短いことが好ましい。通常2台の弁の交互に開閉する周期1サイクルが60秒以下、更に好ましくは30秒以下である。
【0025】
2台の弁の内、下位の弁を開けた際に弁と弁の間の内部流路容積分の空気がポリマーチップの真空部側に吸引されるが、内部流路容積を十分小さくすることにより真空度低下への影響は無視できる程度に小さくなる。逆に空気が吸引される作用で流動性の悪い粉状体でも確実に空気と共にポリマーチップ側へ移送される利点を持つ。
【0026】
本発明においては、前記常圧密閉手段から排出された粉状添加剤は、その押出機側の供給管を通って、真空ホッパー底部から押出機のフィードポケット間の流動ポリマーチップに供給される。その際、真空ホッパーの真空度(絶対圧)は4.5×104 Pa(パスカル)以下が好ましい。そして該押出機内にてポリマーと均一に混練される。この混練において、溶融したポリマーと添加剤とが反応しても良い。例えば、スルホン酸4級アンモニウム塩化合物とポリエステルとを混練する場合該化合物がポリエステルとの反応性官能基(例えばカルボキシル基)を有すると、該化合物の一部又は全部がポリエステルと反応することがある。この場合も本発明の一つの態様である。一方、粉状添加剤が不活性粒子の場合、前記混練において該粒子はポリマー中に均一分散される。
【0027】
以下、図面を用いて本発明をさらに説明する。
図1は本発明の実施態様の1例で、1は一軸混練押出機、2は連続定量フィーダーで、ポリマーに添加する粉状添加剤を連続的に計量排出する。3、4は自動弁で常圧密閉手段を構成し、これらを交互に開閉する、すなわち弁3を開閉し、その後弁4を開閉することでフィーダー2から排出された粉体を常圧部から真空に保持された押出機1のフィードポケットにポリマーチップと平行して投入添加する。3、4の弁の交互開閉を前述の時間間隔で行うことにより押出機の真空度を保持しつつ、粉体濃度のバラツキの小さい押出し成形物を製造することができる。5は真空式ポリマーチップのホッパー、6は該ホッパー5を真空状態にする真空ポンプである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例によって更に詳しく説明する。なお、例中の特性は下記の方法で測定した。
【0029】
1.交流体積抵抗率
溶融ポリマーの交流体積抵抗率の測定は、図2に示す装置を用いて測定する。測定サンプル11は厚さ150μmシートを用いる。直径20cmの円柱状下部電極12の上面に、150μmの平行な間隙が保持出来る直径5.6cm、厚さ0.2cmの上部電極13を配し、この間に測定サンプルが電極と密着するようにして挿入する。
【0030】
下部電極12は加電装置14と温度検出端15を内蔵し、下部電極の表面温度の測定面におけるバラツキが1℃以内、検出端部分との温度差が昇温速度8℃/分において2℃以内となるように構成する。なお、検出温度は読取温度計7で測定する。電極の全体は保温箱21中に配置する。
【0031】
電源18はその発生電圧を標準抵抗19を介して両電極間に印加するが、該電源は100V、50Hzを発生する電源である。この回路に流れる電流は標準抵抗の両端に発生する電圧を、内部インピーダンスが100MΩ以上のエレクトロンメーター20で読取る。
【0032】
溶融ポリマーの交流体積抵抗率は、上記装置により、下部電極の昇温速度が8℃/分、該電極はポリマーのDSCによる融点+30℃の温度にて行ない、交流体積抵抗率Zは、印加電圧E、電流I、電極面積S、電極間隔dより次式で求められる。
【0033】
【数1】
【0034】
[実施例1]
図1の装置において、真空式ホッパー5から乾燥したポリエチレンテレフタレートチップを、一軸混練押出機1で、360kg/時の割合で溶融して、幅2000mmのシート成形ダイから押出し、冷却固化して厚さ170μmのシートを成形した。その際、連続計量フィーダー2から粉状のピンニング剤(3,5―ジカルボキシベンゼンスルホン酸4級ホスホニウム塩)を200g/時の割合で添加した。また、計量フィーダ下の2台の自動弁3,4の交互の開閉時間は20秒周期とした。真空式ホッパー5の真空度(絶対圧)は8×103 Paで添加開始後に圧力上昇(真空度の低下)は見られなかった。
【0035】
得られたシートから、シート巾方向に4個所と巾方向の中央付近でシート長手方向に0.6mと0.3m及び数10m後に2個所、合計8個所のサンプルを採取し、それぞれのサンプルを溶融させ270℃における交流体積抵抗率を測定したところ1.6〜1.8×107 Ωcmと抵抗値が小さく、かつバラツキが少なかった。
【0036】
[比較例1]
ピンニング剤の添加を中止した以外は実施例1と同じように行なってシートを成形した。このシートを実施例1と同様にして交流体積抵抗率を測定したところ2.9×108 Ωcmであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的小さな投資、限られたスペースの中で、真空ホッパー式押出機に粉状添加剤を簡便な手段で安定して供給して、添加剤を混練した溶融ポリマーを押出す方法及びその装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の1例を示す押出装置の説明図である。
【図2】交流体積抵抗率の測定装置の模式図である。
【符号の説明】
1:押出機
2:粉体の連続計量フィーダー
3,4:真空シール可能な自動弁
5:真空式のポリマーチップホッパー
6:真空ポンプ
11:ポリマー
12:下部電極
13:上部電極
14:加電装置
15:温度検出端
16:電流計
17:読取温度計
18:電源
19:標準抵抗
20:エレクトロンメーター
21:保温箱
Claims (8)
- 真空ホッパー式押出機を用いて添加剤を混練した溶融ポリマーを押出す際、該ホッパーを真空状態に維持しながら該ホッパー内のポリマーチップを押出機に連続的に供給し、かつ該ホッパーの底部から押出機のフィードポケット間の流動ポリマーチップに、常圧密閉手段を有する粉体供給工程から、該手段を作動させながら粉状添加剤を供給することを特徴とする添加剤を混練した溶融ポリマーの押出し方法。
- 前記常圧密閉手段が粉体重力流を形成する位置で所定の間隔に設けた2台の弁からなり、これら弁間に上位の弁の開閉により計量器で計量された所定量の粉状添加剤を供給し、その後下位の弁の開閉で該粉状添加剤を押出機側の供給管に排出する請求項1記載の押出し方法。
- 前記常圧密閉手段の2台の弁の交互に開閉する周期が、添加剤のポリマー中での均一分散性を損なわない程度に短い時間である請求項2記載の押出し方法。
- 真空ホッパーの真空度(絶対圧)が4.5×104 pa以下である請求項1記載の押出し方法。
- 粉状添加剤がスルホン酸4級ホスホニウム塩化合物である請求項1記載の押出し方法。
- 添加剤の量が、ポリマーに対し、0.02〜45mmol%である請求項1又は5記載の押出し方法。
- 真空ホッパー式押出機と粉体供給工程を備えた、添加剤を混練した溶融ポリマーの押出装置であって、該粉体供給工程が常圧密閉手段を有し、該常圧密閉手段から排出される粉状添加剤を、該真空ホッパーの底部から押出機のフィードポケット間の流動ポリマーチップに供給するようにしたことを特徴とする押出装置。
- 前記常圧密閉手段が粉体重力流を形成する位置で所定の間隔に設けた2台の弁からなり、これら弁間に上位の弁の開閉で計量器で計量された所定量の粉状添加剤を供給し、その後下位の弁の開閉で該粉状添加剤を押出機側の供給管に排出するようにした請求項7記載の押出装置。
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- 1999-01-28 JP JP01981499A patent/JP3573639B2/ja not_active Expired - Lifetime
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