JP3572907B2 - 透光性カバー部材を備えた機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透光性カバー部材を備えた機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、合成樹脂からなる時計ケースに対して、時計の表示部を覆うカバーガラスとして透明な合成樹脂からなる有機ガラスを用いる場合、時計ケースの取付枠部に有機ガラスを溶着する場合がある。このような時計の一例として、図5には合成樹脂製の腕時計の時計ケース10に有機ガラス20を溶着した取付構造を示す。この例において、時計ケース10の取付枠部11には傾斜面12が形成されており、この傾斜面12に有機ガラス20の外周部21の内側角部21aを超音波振動などによって溶着させている。ここで、傾斜面12と内側角部21aとの間には予め所定の溶着代が生ずるように寸法設定されており、内側角部21aは有機ガラス20の内面22側へ溶出して溶出部23が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の腕時計の構造においては、有機ガラス20を確実に時計ケース10に溶着するためには充分な溶着代を確保する必要があるが、溶着代を大きくとると、溶出部23の体積も大きくなり、有機ガラス20を通して表示部を見た場合、表示部の外縁に溶出部23が大きく視認されて外観を悪化させるという問題点がある。
【0004】
逆に、表示部の外縁に溶出部23が大きくはみ出さないようにするには溶着代を小さくしなければならないため、時計ケース10と有機ガラス20との溶着が不完全になって有機ガラス20の剥離が生じたり、溶着部において割れが発生したりするという問題点がある。
【0005】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、有機ガラスなどの透光性カバー部材を備えた各種機器において、透光性カバー部材と基材との間の溶着代を充分に確保しつつ、溶出部のはみ出しによる外観の悪化を防止することのできる取付構造を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は、透光性カバー部材を基材に対して溶着した取付構造を有する透光性カバー部材を備えた機器において、前記透光性カバー部材と前記基材の少なくとも一方の表面上に、前記透光性カバー部材と前記基材との溶着部に臨み、前記透光性カバー部材又は前記基材の溶出部分を収容するように構成された包囲形状を設け、前記包囲形状は、前記溶着部よりも内側において前記透光性カバー部材に形成された段差部と、前記基材に形成された段差部とにより構成されていることを特徴とする。
【0007】
この手段によれば、溶着部に臨み、溶出部分を収容するように構成された包囲形状、たとえばほとんどの部分が囲まれた空間部、を透光性カバー部材と基材の少なくとも一方の表面上に形成したことにより、基材と透光性カバー部材の溶着時に生ずる溶出部分を包囲形状内に閉じこめることができるため、溶着代が大きくても外観を悪化させることが少ないから、基材と透光性カバー部材とを確実に固着させることができる。
【0008】
なお、上記の包囲形状とは、溶着部から生ずる溶出部分を実効的に閉じこめることの可能な形状を言い、完全に閉鎖された空間部を構成する形状でなくてもよいものである。特に、透光性カバー部材の内面に沿った方向及び透光性カバー部材の内側の奥方向に沿った方向に壁乃至は面が形成されていて、両方向に、溶出部分のはみ出しが制限されていることが好ましい。特に、透光性カバー部材と基材の少なくとも一方の表面に段差部を形成し、その段差面により溶出部分のはみ出しを制限することができる。この場合、溶出部分を閉じこめる方向に段差面を傾斜させることにより、単一の段差面でも閉じこめ効果を充分に得ることができる。
【0010】
さらに、透光性カバー部材と基材の双方に段差部を形成するだけで、透光性カバー部材の内面に沿った方向と、基材の内面に沿った方向の2方向に溶着部からの溶出部分のはみ出しを制限することができるため、簡単な構造で確実に溶出部分のはみ出しを防止することができ、製造コストも低減できる。
【0011】
また、前記包囲形状は、前記溶着部よりも内側において前記透光性カバー部材若しくは前記基材に形成され、前記溶着部に対して開口した凹部により構成されていることが好ましい。
【0012】
この手段によれば、溶着部に対して開口した凹部によって溶出部分を確実に収容保持することができるとともに、透光性カバー部材と基材とのいずれか一方に凹部を設ければ足りるので、加工が容易になり、製造コストを低減できる。
【0013】
上記各手段においては、前記透光性カバー部材は時計表示部を覆うものである場合があり、時計の表示部の外観向上と透光性カバー部材の固着強度とを両立させることができる。
【0014】
ここで特に、透光性カバー部材と基材とが有機樹脂であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。以下に示す各実施形態はいずれも腕時計の構造に関するものであるが、本発明は腕時計に限らず、他の種々の時計にも適用することができる他、時計に限らず、透光性カバー部材を備えた種々の機器にも適用することができるものである。
【0016】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の構造を示す要部拡大断面図である。この実施形態においては、ABS樹脂やポリカーボネート等の有機樹脂からなる時計ケース10の取付枠部11に傾斜面12が形成されているが、さらにその内側(時計表示部の内側、すなわち、図示下側)に突出した段差面14が形成されている。また、アクリル樹脂等からなる有機ガラス20の外周部21の内側角部21aよりも中央側(時計表示部の中央の側、すなわち、図示左側)に段差面24が形成されている。時計ケース10の段差面14と有機ガラス20の段差面24とは、ちょうど時計ケース10の傾斜面12と有機ガラス20の内側角部21aとが溶着された溶着部の内側に、断面略矩形の環状の空間を形成している。
【0017】
時計ケース10と有機ガラス20とを溶着させると、溶出部23は上記の環状の空間に入り込むが、溶出部23の中央側への張り出しは段差面24によって妨げられ、溶出部23の内側への張り出しは段差面14によって妨げられるので、溶出部23はいずれにしても上記の空間内に閉じこめられる。このため、腕時計の表示部の外縁部には、大きく中央側へはみ出た溶出部23が視認されることはない。特に、有機ガラス20を通して表示部を見た場合、溶着部の内側に段差面14が視認されるとともに、有機ガラス20の段差面24も光屈折面として表示部の外縁に視認されるため、溶出部23が目立つこともなくなる。
【0018】
この実施形態では、溶出部23が溶着部、段差面14,24によって囲まれた断面矩形の空間内に限定されるために、溶着代を或る程度大きく設定しても当該空間内に溶出部が充填されるだけで、外見を悪化させることがないため、外見の悪化を気遣うことなく溶着代を確保して時計ケース10と有機ガラス20とを確実に固着させることができる。
【0019】
なお、上記の空間の容積は、溶着代を勘案して、溶出部23の体積とほぼ同程度となるように形成することが最も好ましい。空間が溶出部23によってほぼ完全に充填される状態になると、表示部の外縁部にて外見上溶出部が目立たなくなるからである。
【0020】
上記実施形態では溶出部23を包囲する形状として時計ケース10と有機ガラス20の双方に形成された段差面14,24を構成しているが、一方の段差面に凹部を形成することにより、溶出部23が中心側にはみ出すことをより確実に防止することができる。たとえば、図1の図示一点鎖線に示すように、段差面14に凹部14aを形成することにより、図示左側への溶出部23の広がりが確実に防止される。
【0021】
(第2実施形態)
次に、図2を参照して本発明に係る第2実施形態について説明する。この実施形態においても、第1実施形態と同材料からなる時計ケース10及び有機ガラス20を用いている。本実施形態では、有機ガラス20の段差面25を、内側にいくほど周縁側(時計ケースの周縁部側、すなわち、図示右側)にずれるように傾斜させて形成してある。このため、溶出部23は、溶着部、時計ケース10の内面及び段差面25との間に形成された断面略三角形状の環状の空間内に閉じこめられる。
【0022】
この実施形態では、段差面25が溶出部23を閉じこめるように傾斜しているので、溶出部23の形成位置をより周縁側に限定することができるため、外観をさらに向上させることができる。なお、この実施形態においても時計ケース10に段差面14が形成されているが、溶着代が極端に大きくない限り段差面14がなくても全く支障はない。
【0023】
(第3実施形態)
次に、図3を参照して本発明に係る第3実施形態について説明する。この実施形態においても、時計ケース10及び有機ガラス20は第1実施形態と同材料からなる。この実施形態では、時計ケース10に段差面を形成せず、その代わりに、有機ガラス20に溶出部23を収容するための凹部26を形成している。この凹部26は時計ケース10の傾斜面12と有機ガラス20の内側角部21aとの溶着部に対して開口した形状となっている。
【0024】
この実施形態においても、溶着代を大きくしても凹部26内に溶出部23が充填されるだけであり、凹部26の外部にて溶出部が広がることは防止されることから、外見を気遣うことなく溶着代を確保して時計ケース10と有機ガラス20とを確実に溶着することができる。
【0025】
(第4実施形態)
次に、図4を参照して本発明に係る第4実施形態について説明する。この実施形態においても時計ケース10及び有機ガラス20は第1実施形態と同材料である。この実施形態では、上記第3実施形態とは逆に、有機ガラス20には段差面も凹部も形成せず、時計ケース10の側に溶着部に開口する凹部15を形成している。この実施形態においても、溶出部23は凹部15内に収容されてしまうので、表示部の外観を悪化させることがなく、充分な溶着代を確保して時計ケース10と有機ガラス20とを確実に固着させることができる。
【0026】
以上説明した各実施形態においては、いずれも、時計ケース10に対して主に有機ガラス20を溶出させて固着させるようにしているが、逆に時計ケース10を主に溶出させてもよい。また、時計ケース10と有機ガラス20の双方を互いに溶出させて固着してもよい。
【0027】
また、上記実施形態においては、合成樹脂製の時計ケース10に合成樹脂製の有機ガラス20を溶着させているが、素材としては合成樹脂に限らず、溶着可能な金属その他の種々の素材を用いることも可能である。
【0028】
更に、溶着部及びその溶出部分を収納する包囲形状部(凹部)は、透光性カバー部材の全周に設けてもよいが、全周ではなく部分的に設けても良い。部分的に設ける場合には、包囲形状部は溶着部に対応してその付近に設ける必要はあるが、溶着部の溶出部分を実質的に閉じこめるものであればその形成場所、形状はいかようであってもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、溶着部に臨み、溶出部分を収容するように構成された包囲形状、たとえばほとんどの部分が囲まれた空間部、を透光性カバー部材と基材の少なくとも一方の表面上に形成したことにより、基材と透光性カバー部材の溶着時に生ずる溶出部分を包囲形状内に閉じこめることができるため、溶着代が大きくても外観を悪化させることが少ないから、基材と透光性カバー部材とを確実に固着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の要部拡大断面図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の要部拡大断面図である。
【図3】本発明に係る第3実施形態の要部拡大断面図である。
【図4】本発明に係る第4実施形態の要部拡大断面図である。
【図5】従来の時計ケースと有機ガラスとの溶着部近傍の構造を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
10 時計ケース
11 取付枠部
12 傾斜面
14,24,25 段差面
15,26 凹部
20 有機ガラス
21 外周部
21a 内側角部
22 内面
23 溶出部
Claims (4)
- 透光性カバー部材を基材に対して溶着した取付構造を有する透光性カバー部材を備えた機器において、
前記透光性カバー部材と前記基材の少なくとも一方の表面上に、前記透光性カバー部材と前記基材との溶着部に臨み、前記透光性カバー部材又は前記基材の溶出部分を収容するように構成された包囲形状を設け、
前記包囲形状は、前記溶着部よりも内側において前記透光性カバー部材に形成された段差部と、前記基材に形成された段差部とにより構成されていることを特徴とする透光性カバー部材を備えた機器。 - 請求項1において、前記包囲形状は、前記溶着部よりも内側において前記透光性カバー部材若しくは前記基材に形成され、前記溶着部に対して開口した凹部により構成されていることを特徴とする透光性カバー部材を備えた機器。
- 請求項1または請求項2において、前記透光性カバー部材は時計表示部を覆うものであることを特徴とする透光性カバー部材を備えた機器。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか1項において、前記透光性カバー部材と前記基材とが有機樹脂からなることを特徴とする透光性カバー部材を備えた機器。
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JP31087397A JP3572907B2 (ja) | 1997-11-12 | 1997-11-12 | 透光性カバー部材を備えた機器 |
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JPH11142541A JPH11142541A (ja) | 1999-05-28 |
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- 1997-11-12 JP JP31087397A patent/JP3572907B2/ja not_active Expired - Fee Related
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