JP3571949B2 - 移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響工学的手法を用いて移動体に搭載された機器の異常の有無を遠隔的に診断する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの機器は、異常が発生すると正常運転時とは異なった音を発生する。このことを利用して、従来から、人間の聴覚または音響的分析を行う機器により機器の異常の有無の診断が行われてきている。
【0003】
静止系(例えば地面)に固定されている機器の異常を自動的に診断する装置は、従来から知られている。この種の異常診断装置は、診断対象機器の近傍に配置された例えば集音マイク等の音響センサと、この音響センサとは離れた位置に設けられた信号処理装置とから構成されており、信号処理装置により音響センサからの出力信号の周波数分析を行い、その結果がある一定値を越えた時を異常と判定するとともに機器に異常がある旨のメッセージを出すようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したような固定機器用に構成された従来の異常診断装置を移動体に搭載された機器用のものとして適用するにあたっては、以下のような問題がある。
【0005】
まず、第1に、固定機器用の診断装置は診断対象機器が常時音響センサ近傍に存在することを前提としているため、診断対象機器が近傍に無いときの音も判定の対象となってしまう。このため、診断対象となる機器が発する音と類似の外乱音が発生した場合、診断装置の誤動作が発生するおそれがある。
【0006】
また、移動体が音響センサの前を通過している時間は通常短時間であるため、十分な測定時間を確保することができない。このため、移動体の通過中に外乱音が発生すると、音響センサにより採取される音響信号のS/N比が低下し、精度のよい異常診断を行うことが困難となる。また、診断対象機器が発する音が低周波である場合、短時間の測定では正確な判定を行うために十分な情報量を確保することが極めて困難となる。
【0007】
また、移動体が複数の機器を搭載している場合、従来の固定機器用の診断装置を用いたのでは、これら複数の機器がそれぞれ発生する音をいずれの機器からのものかを判別して各種機器の異常を個別に判定することは不可能である。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであり、移動体に無関係な外乱音による誤動作の防止、異常診断精度の向上、互いに異なる移動体および互いに異なる搭載機器に対する個別的な診断等を可能とすることができる、移動体に搭載された機器用の異常診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための第1の手段は、移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置において、移動体の移動方向に沿って地面等の静止系に配設された複数の音響センサと、前記各音響センサの前を移動体が通過することを検知するために前記複数の音響センサにそれぞれ対応して設けられた複数の移動体センサと、前記各音響センサからの音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定する信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置は、前記各音響センサからの音響信号の時間変化データを求め、移動体が前記各音響センサを通過する時間差に起因して生じた前記音響信号間の時間軸のずれを前記移動体センサからの信号に基づいて算出し、前記音響信号の時間変化データの時間軸を一致させた後に前記各音響信号の時間変化データの加算平均を求め、この加算平均に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定することを特徴とするものである。
【0010】
この第1の手段によれば、異常診断時の外乱音の影響を最小限とすることができ、これにより高精度の判定を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置において、移動体の移動方向に沿って地面等の静止系に配設された複数の音響センサと、前記各音響センサの前を移動体が通過することを検知するために前記複数の音響センサにそれぞれ対応して設けられた複数の移動体センサと、前記各音響センサからの音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定する信号処理装置と、を備え、前記信号処理装置は、移動体に設けられた機器が前記各音響センサを通過する時に前記各音響センサにより得られた音響信号を合成し、合成された音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定することを特徴とするものである。
この第2の手段によれば、移動体が高速で移動している場合に低周波音に基づいて異常判定を行う場合においても、仮想的に十分な測定時間を確保することができる。このためより高精度な異常判定を行うことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
まず、第1の実施の形態について説明する。図1乃至図3は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0021】
図1に示すように、移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置は、移動体の移動方向に沿って、すなわち鉄道車両連結体7の軌道8に沿って軌道8の近傍の地面9(静止系)上に配設された複数の音響センサ1−iと、複数の移動体センサ3−iを有する移動体検知装置4と、各音響センサ1−iからの信号に基づいて機器の異常の判定を行う信号処理装置10とを備えている。この信号処理装置10は、各音響センサ1−iが設置されている場所から離れた場所、例えば管制室に設けられている。また、移動体診断装置には、信号処理装置10の前段で各音響センサ1−iからの信号を増幅する増幅器2が設けられている。
【0022】
なお、以下、本明細書において「車両連結体」という用語は、車両単体を複数連結することにより構成されたものを意味し、また「車両単体」とは車両連結体を構成する一両の車両を意味する。
【0023】
移動体センサ3−iは、各音響センサ1−iに対応して設けられるとともに各音響センサ1−iと一緒に軌道8に沿って地面9上に配置されている。これら移動体センサ3−iは、移動体検知装置4におけるセンサ部としての機能を果たすものである。
【0024】
移動体検知装置4は、各移動体センサ3−iからの信号に基づいて、信号処理装置10に音響センサ1−iからの信号を取り込むように指示するトリガ信号の発信や、鉄道車両連結体7と各音響センサ1−iとの相対的位置関係の算出等を行う機能を有している。
【0025】
更に、軌道8の近傍には、受信装置5が設けられている。この受信装置5は、鉄道車両連結体7が常時発信しているID信号、すなわち自らを特定する信号を受信して管制塔に設けられた移動体識別装置6に送信するようになっている。移動体識別装置6は、前記ID信号に基づいて通過中の鉄道車両連結体7を識別し、その識別結果を信号処理装置10に送信するようになっている。なお、鉄道車両連結体7が発するID信号は、当該車両連結体の編成および各車両単体に使用されている車両の種類を特定することができるようなものである。
【0026】
次に、信号処理装置10の構成について説明する。
【0027】
信号処理装置10は、各音響センサ1−iからの信号を信号処理装置10の内部に取り込むレシーバ11と、A/D変換器12と、高速フーリエ変換器すなわち周波数分析器13と、演算装置14と、比較器15と、判定器16と、データ保存装置17と、表示器18とを有している。なお、信号処理装置10の各構成要素の詳細については以下の作用の説明において説明する。
【0028】
次に、上記構成を有する本実施形態の作用について説明する。なお、以下の説明においては、本診断装置を鉄道車両に搭載された圧縮空気配管からの漏気検出を行うために適用した場合を例にとって説明する。
【0029】
鉄道車両連結体7が鉄道車両連結体7の移動方向に関して最も上流側の移動体センサ3−iの前、すなわち対応する音響センサ1−iの前を通過し始めると、移動体検知装置4は、信号処理装置10のレシーバ11に各音響センサ1−iからの信号を取り込むように指令を発する。
【0030】
各音響センサ1−iは鉄道車両連結体7の移動方向に沿って配置されているため、鉄道車両連結体7は、その移動速度および各音響センサ1−iの配置間隔により定まる所定の時間差をもって、順次各音響センサ1−iの前を通過することになる。従って、鉄道車両連結体7が発する音は各音響センサ1−iを介して信号処理装置10に順次取り込まれることになる。各音響センサ1−iからの信号の取り込みは、鉄道車両連結体7がその移動方向に関して最も下流側にある移動体センサ3−iの前、すなわち対応する音響センサ1−iの前を通過し終わるまで、継続的に行われる。
【0031】
以下の処理を図1及び図2を参照して説明する。なお、図2において、流れ図の左側に付されたカッコ付きの参照符号(13)、(14)は、各処理を実施する構成要素を示している(図6においても同じ)。
【0032】
信号処理装置10に取り込まれた各音響センサ1−iからの信号は、まずA/D変換器12によりデジタル信号に変換され、周波数分析器13に導入される。周波数分析器13は、導入された音響信号を12.8kHz までの各周波数帯域成分に分解し、各周波数帯域ごとの成分信号を演算装置14に送信する。
【0033】
そして演算装置14は、各音響センサ1−iからの音響信号にそれぞれ対応するパワースペクトルを算出する(ステップS1)。各音響センサ1−iのうちの1つの音響センサからの信号に基づいて算出されたパワースペクトルの時間変化を示す図の一例が、図3に示される。A/D変換、周波数分析およびパワースペクトルの算出は各音響センサ1−iからの信号に対して並列的に実行される。
【0034】
次に、演算装置14は、パワースペクトルの時間変化データの加算平均を求める(ステップS2)。なお、ここで、各音響センサ1−iは鉄道車両連結体7の移動方向に沿って配置されているため、鉄道車両連結体7が第n番目の音響センサ1−iの前を通過した後、第n+1番目の音響センサ1−iを通過するまでには所定の時間差があり、このため各パワースペクトルの時間変化データの時間軸には少しずつずれがある。
【0035】
この時間軸のずれは、移動体検知装置4により各移動体センサ3−iからの信号に基づいて算出することができ、演算装置14は移動体検知装置4により算出されたデータに基づいて時間軸のずれを修正した後、前記パワースペクトルの時間変化データの加算平均を算出することになる。
【0036】
次に、演算装置14は、前記パワースペクトルの加算平均から圧縮空気配管に漏気が発生した場合に発生する周波数である8kHz 〜11kHz に対応するデータを抜き出し、周波数について積分する(ステップS3)。すなわち、ここでは、機器に異常が発生した場合に変化する周波数帯域がその機器によって決まる場合が多いという事実に基づいて、異常検出に必要な周波数のみを抜き出す処理を行っていることになる。
【0037】
次に、演算装置14は、積分演算の結果を対数のdB表示に変換して出力する。(ステップS4)出力されるデータの形態は、経過時間と音圧との関係を示すものとなる。
【0038】
次に、演算装置14は、鉄道車両移動体7からのID信号に基づいて移動体識別装置6が認識した鉄道車両連結体7の種別(ID)に基づいて、当該鉄道車両連結体7の編成および各車両単体に使用されている車両の種類を特定する。
【0039】
通過中の鉄道車両連結体7が特定されると、移動体検知装置4からの信号を考慮することにより、経過時間に対応する音響センサ1−iと鉄道車両連結体7との位置関係を特定することができるようになる。
【0040】
比較器15は、移動体識別装置6からの信号により通過中の鉄道車両連結体7を特定し、データ保存装置17から該当する車両連結体に関する音響的な基準値(上限および下限の基準値)に関する情報を取得する。データ保存装置17には、所定の編成を有する鉄道車両連結体7全体についての基準値、各車両単体についての基準値、および各車両単体の特定の搭載機器についての基準値が記録されている。
【0041】
比較器15は、演算装置14からの入力値を各車両ごとに基準値と比較し、この入力値が前記基準値の範囲外にある場合、基準範囲の値からのずれを出力する。
【0042】
比較器15の出力は判定器16に導入され、判定器16は比較器15から得られた値が基準範囲内にあるか否かを示す判定信号を出力する。
【0043】
表示器18は判定器16からの判定信号を導入して診断対象機器の異常の有無を表示する。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、移動体センサからの信号に基づいて車両の通過中の音響信号のみにより機器の異常診断を行うようになっているため、外乱音による影響を受けず高精度に機器の異常を検出することができる。すなわち、移動体を対象としない従来の機器異常診断装置のように常に音響信号を監視している場合には、音響センサの周囲に外乱音が発生した場合に誤動作が発生する場合もあり得るが、本実施形態によればこの問題を解決することができることになる。
【0045】
また、移動体センサからの信号により、各音響センサと車両連結体の位置関係を特定することができ、かつ、移動体識別装置によって、車両連結体の特定、車両連結体を構成する車両単体の形式の特定、および各車両単体に設けられた個々の機器を特定することができるようになっている。従って、車両連結体全体ないし車両単体を一単位とした測定を行うことができるのみならず、個々の機器を対象とした測定をも行うことができる。
【0046】
このため、データ保存装置に保存された車両連結体全体ごと、車両単体ごと、または個々の機器ごとの基準値と上記測定結果とを比較することにより、車両連結体全体ないし車両単体を一単位とした異常診断のみならず、個々の機器を対象とした異常診断をも高精度で行うことができる。
【0047】
また、診断を行うたびにデータ保存装置に診断結果を保存しておくことにより、車両連結体全体、車両単体、および個々の機器ごとに履歴管理を行うことができる。このため、単に機器の異常を判断するのみならず、各機器のメンテナンス計画の作成等をも行うことができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、移動体の移動方向に沿って配置された複数の音響センサを使用し、各音響センサからの信号(の処理結果)の平均値に基づいて機器の異常を判断しているため、すなわち複数の音響センサにより同一の移動体が発する音を複数回測定した結果の平均値に基づいて機器の異常を判定するようになっているため、外乱音の影響をより小さくすることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、移動体の移動方向に沿って配置された複数の音響センサにより遅延をかけて音響信号を採取することができるようになっているため、低周波の音響信号に基づいて診断を行わなければならない場合でも、移動体の機器が各音響センサを通過する時の信号を合成することにより測定時間を仮想的に長くすることができ、これにより高精度の診断を行うことができる。すなわち、診断対象である(移動体の)機器が音響センサの前を高速で通過する場合、診断対象である機器が発する音が低周波の音である場合には、十分な測定時間を確保することが困難となるが、本実施形態によればこの問題を解決することができることになる。
【0050】
また、固定系に音響センサを設置しているので、移動体がそこを通過することで移動体の全体の異常を少ないセンサ数で短時間に診断することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、音響センサからの信号のすべてに基づいて異常診断を行うのではなく、診断対象となる機器に異常が生じた場合に発生する周波数帯域の信号成分の変化(すなわちスペクトルの変化)のみに基づいて異常診断が行われるようになっている。このため、外乱音の影響をより低減することができ、より高精度に機器の異常を診断することができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。図4乃至図7は本発明の第2の実施の形態を示す図である。第2の実施の形態に係る機器異常診断装置は、第1の実施の形態に対して、音源方向を特定するための手段が更に設けられている点が主として異なり、他は第1の実施形態と略同一である。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、第2の実施の形態は、本発明を鉄道車両に搭載された機機の冷却フアンの音を検出するために適用した例を示すものである。
【0053】
本実施形態においては、第1の実施の形態に対して音響センサの配置が異なっている。すなわち本実施形態においては、図5に示すように、3本の音響センサ1a,1b,1cが設けられており、このうち中央の音響センサ1bはその軸線が移動体の進行方向と直交する方向を向き、中央の音響センサ1bを挟んで音響センサ1a,1cが配置されている。音響センサ1a,1cの軸線(図5二点鎖線参照)は、音響センサ1bの軸線(図5二点鎖線参照)に対してそれぞれ略45度の角度をなしており、音響センサ1aの軸線は鉄道車両連結体7の移動方向の上手側を向き、音響センサ1cの軸線は鉄道車両連結体7の移動方向の下手側を向いている。
【0054】
演算装置14aは、第1の実施の形態の演算装置14に対して、音源方向を判定するための音響インテンシティを算出する機能を更に備えている。そして信号処理装置10は、演算装置14aにより算出された音響インテンシティに基づいて音源方向を算出するための音源方向判定器20を更に備えている。
【0055】
次に、上記構成を有する本実施形態の作用について説明する。
【0056】
図6に示すように、演算装置14aは、第1の実施の形態と同様にして、各音響センサ1a,1b,1cからの信号に基づいて、パワースペクトルの算出(ステップS1)、パワースペクトルデータの平均化(ステップS2)、冷却ファンに対応する所定周波数帯域の信号についての積分(ステップS3)およびdB表示への変換演算(ステップS4)を行う。
【0057】
演算装置14aは、上記演算と並行して音響インテンシティの算出を行う。すなわち、「2マイクロフォン法」による音響インテンシティの算出手法を用いて、音響センサ1a,1bおよび音響センサ1b,1cからの信号にそれぞれ基づいて、判定対象である冷却ファンの周波数帯域の音の発生源の方向を算出するために音響インテンシティの算出を行う。
【0058】
ここで、以下に、演算装置14aにより実行される音源方向検出時の信号処理の流れについて、音響インテンシティの理論と併せて説明する。
【0059】
ある任意点でのr方向の音響インテンシティIr は、その点での音圧p(t)と粒子速度のr方向成分u(t)を用いて、次式(1)で表すことができる。
【0060】
【数1】
ここで、粒子速度ur は音圧pと次の関係がある。
【0061】
【数2】
ただし、ρ0 は空気の密度。
式(2)より、粒子速度ur は次式(3)で表すことができる。
【0062】
【数3】
2マイクロホン法を用いて測定を行った場合、2本のマイクロホンの間隔を△rとし、各マイクロホンで測定されるr方向の音圧をそれぞれp1 (t)、p2 (t)とすると、式(3)における被積分関数は次式(4)で近似することができる。
【0063】
【数4】
また、これら2測定点の中点の音圧を下式(5)で近似することができる。
【0064】
【数5】
音響インテンシティは、上式(3)(4)(5)を上式(1)に代入することにより得られる次式(6)により表現することができる。
【0065】
【数6】
パーシバルの定理から、時問領域のパワーと周波数領域のパワーとの間の関係は次式(7)で表現される。
【0066】
【数7】
ただし、p(f)、ur (f)は各々p(t)、ur (t)のフーリエ変換対、ur (f)*はur (f)の共役複素数をそれぞれ示す。
ここで、上式(3)〜(5)より、ur (f)、p(f)は次式(8)(9)で表現することができ、
【0067】
【数8】
ここで上式(8)(9)を上式(7)に代入すると、
【0068】
【数9】
となる。ただし、Im(p1 p2 *)はp1 ・p2 のクロススペクトルの虚部。
【0069】
単一周波数の場合、時間領域から複素フーリエ係数に展開されたとすると、上式(10)は、
【数10】
となる。
【0070】
ある周波数帯域(f1 ≦f≦f2 )における音響インテンシティは、個々の周波数に対応する音響インテンシティの和であるため、
【0071】
【数11】
上式(12)から最終的に音響インテンシティ値Ir を求めることができる。
【0072】
以上説明したように、演算装置14aは、図6に示すように、クロススペクトルの算出(ステップT1)を複数回繰り返した後、データの平均化(ステップT2)を行い、これから音響インテンシティ値の算出を行い(ステップT3)、その結果を音源方向判定器20(図4参照)に出力するようになっている。
【0073】
特に、本実施形態においては、演算装置14aは、上記ステップT1〜T3の演算を、音響センサ1a、1bからの音響信号および音響センサ1b、1cからの音響信号のそれぞれに対して行うことにより、音響センサ1a、1bからの音響信号に対応する音響インテンシティと音響センサ1b、1cからの音響信号に対応する音響インテンシティとをそれぞれ算出している。そして、これら2つの音響インテンシティのベクトル値を合成することにより音源方向を算出している。すなわち、本実施形態においては、図6に示すステップT3の後段で2つの音響インテンシティのベクトルを合成する処理が行われている。
【0074】
図7に、上記手法により求められた音響インテンシティの経時変化の一例を示す。図7は、車両に搭載される機器である冷却ファン音の一定時間(0.24sec )ごとの音響インテンシティの変化をとらえたものであり、車両の移動に伴い音のベクトルが変化し、音源が移動していることが確認できる。
【0075】
次に、音源方向判定器20は、移動体検知装置4からの信号と、音響インテンシティに基づいて求められた音源方向とを比較して、音源方向が車両の方向と一致している場合にのみ、前記ステップS1〜S4における演算結果を比較器15に出力する(図4参照)。そして、以下、第1の実施形態と同様の処理が行われる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態においては、信号処理装置10が、判定対象となる周波数帯域の音響信号の発生源の方向が移動体の方向と一致している場合にのみ正規の信号として処理し、方向が一致していない場合には、外乱音として処理するようになっている。このため、診断対象機器が発する周波数の音と同一帯域の外乱音が発生している環境下においても、高精度に機器の異常を判定することができる。
【0077】
なお、上記実施形態においては、音響インテンシティの理論を用いて音源方向を算出し、移動体の方向と音源方向とが一致した場合にのみ、その音を機器異常診断に用いるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、外乱音の発生源が、移動体の方向とは全く関係のない音響センサ後方に限られている場合には、音響インテンシティを算出する手法に代えて、指向性音響センサを用いることによっても外乱音の影響を除去することができる。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、移動体に設けられた機器の異常を、外乱音の影響を受けることなく高精度に診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図的構成図。
【図2】信号処理装置におけるデータ処理の流れを示す図。
【図3】圧縮空気配管から空気が漏れている時の音響スペクトルの時間変化を示す図。
【図4】本発明の第2の実施例を示すブロック図的構成図。
【図5】音響インテンシティを求めるために好ましい音響センサの配置を示す図。
【図6】信号処理装置におけるデータ処理の流れを示す図。
【図7】音響インテンシティの時間変化の一例を示す図。
【符号の説明】
1−i、1a,1b,1c 音響センサ
3 移動体センサ
10 信号処理装置
Claims (4)
- 移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置において、
移動体の移動方向に沿って地面等の静止系に配設された複数の音響センサと、
前記各音響センサの前を移動体が通過することを検知するために前記複数の音響センサにそれぞれ対応して設けられた複数の移動体センサと、
前記各音響センサからの音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定する信号処理装置と、を備え、
前記信号処理装置は、前記各音響センサからの音響信号の時間変化データを求め、移動体が前記各音響センサを通過する時間差に起因して生じた前記音響信号間の時間軸のずれを前記移動体センサからの信号に基づいて算出し、前記音響信号の時間変化データの時間軸を一致させた後に前記各音響信号の時間変化データの加算平均を求め、この加算平均に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定することを特徴とする診断装置。 - 移動体に設けられた機器の異常を診断するための診断装置において、
移動体の移動方向に沿って地面等の静止系に配設された複数の音響センサと、
前記各音響センサの前を移動体が通過することを検知するために前記複数の音響センサにそれぞれ対応して設けられた複数の移動体センサと、
前記各音響センサからの音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定する信号処理装置と、を備え、
前記信号処理装置は、移動体に設けられた機器が前記各音響センサを通過する時に前記各音響センサにより得られた音響信号を合成し、合成された音響信号に基づいて移動体に設けられた機器の異常を判定することを特徴とする診断装置。 - 前記信号処理装置は、
前記音響センサから出力される信号を各周波数成分に分ける周波数分析器と、
前記周波数分析器によって分けられた各周波数成分のうち、予め指定された周波数帯域の信号成分だけを取り出す手段と、
取り出された信号成分のレベルが予め定められた基準値を外れた場合に異常と判定する手段と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の診断装置。 - 前記移動体を識別するための移動体識別手段と、
前記移動体、前記移動体を構成する移動体単体、または移動体に設けられた機器ごとの信号レベルのデータを保存するデータ保存手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の診断装置。
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Cited By (2)
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