JP3571940B2 - 炭化水素分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば大気などサンプルガス中に含まれる炭化水素の濃度を測定する炭化水素分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば大気中に含まれる炭化水素(以下、HCという)の濃度を測定する装置の一つに、水素炎イオン化検出器(以下、FIDという)を用いたものがある。このFIDを用いた炭化水素分析装置は、分析部であるFIDに、サンプルガスと燃料ガスおよびゼロガスに精製した助燃ガスを供給して、FID内部でサンプルガスを燃焼させ、そのときの炎のエネルギーでイオン化を生じさせて、サンプルガス中に含まれる炭素量に比例した電流出力を適宜の手法で測定することにより、サンプルガス中のHC濃度を分析するようにしたものである。
【0003】
ところで、従来の大気測定用炭化水素分析装置は、図2に示すように構成されていた。即ち、図2において、1はFIDで、このFID1には、ガス供給流路2と燃料ガスFおよび助燃ガスJの供給流路3,4が接続されている。
【0004】
上記のガス供給流路2は、大気をサンプルガスS1として、このサンプルガスS1と校正ガスS2とを択一的にFID1に供給するもので、大気取り入れ口(サンプルガス取り入れ口)5の下流側に、フィルタ6と、例えば三方電磁弁から成るガス流路切り換え手段7と、サンプルガスS1を除湿して所定の湿度に調湿する電子冷却器8、及び、余剰のサンプルガスS1の排出部9を備えたガス切り換えユニット10がこの順で設けられており、かつ、前記ガス流路切り換え手段7には、エアベースの可燃性ガスを校正ガスS2として、この校正ガスS2の供給流路11が接続されている。
【0005】
12は余剰のサンプルガスS1を排出するガス排出流路、13は流量調節用のニードル弁、14はダイヤフラム式の吸引ポンプであり、吸引ポンプ14の下流側はガス排出部(図示していない)に接続されている。また、15は電子冷却器8に接続されるドレンポンプで、その他端はドレン排出部(図示していない)に接続されている。
【0006】
前記燃料ガス供給流路3は、例えば水素ガスを燃料ガスFとしてFID1に供給するものであり、前記助燃ガス供給流路4は、サンプルガスS1および燃料ガスFが燃焼する際に必要な空気を助燃ガスJとして供給するものであって、この助燃ガス供給流路4には、大気取り入れ口16の後段に、フィルタ17、加湿器18、電子冷却器19、ダイヤフラム式の吸引ポンプ20、圧力調整器21、大気に含まれるHCを全て酸化してこれを除去するゼロガス精製手段22、流量調整用キャピラリ23がこの順で設けられている。
【0007】
ここで、助燃ガスJが含む水分量によっては酸素濃度の分圧が変化して、これがバックグラウンド値の急激な変化に繋がることから、上記の助燃ガス供給流路4に加湿器18と電子冷却器19とを設けて、助燃ガスJを一旦加湿して後に、電子冷却器19によって所定の湿度に調湿し、助燃ガスJの水分条件を一定にして、FID1においてバックグラウンド値を安定に保つようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記構成の従来の炭化水素分析装置においては、サンプルガスS1としての大気は、フィルタ6によって異物が除去され、かつ、電子冷却器8によっての前処理が施された後、ガス切り換えユニット10を通してFID1に供給される。
【0009】
そして、FID1には、燃料ガス供給流路3を経て燃料ガスFが供給される。また、大気取り入れ口16を経て助燃ガス供給流路4に導入された大気は、フィルタ17によって異物が除去され、加湿器18によって一旦加湿され、かつ、電子冷却器19によって調湿の前処理が施された後、吸引ポンプ20、圧力調整器21を経てゼロガス精製手段22に至り、前処理後の大気に含まれるHC成分が全て酸化された所謂ゼロガスとなり、このゼロガス精製手段22を経たガスは助燃ガスJとしてFID1に供給される。
【0010】
一方、炭化水素分析装置の校正に際しては、流路切り換え手段7が、サンプルガスS1の供給に代えて校正ガスS2の供給形態に切り換えられ、エアベースの校正ガスS2がFID1に供給されて、約30分程度で校正が行われる。
【0011】
上述したように、従来の炭化水素分析装置にあっては、校正に際して、サンプルガスS1に代えて校正ガスS2がFID1に供給され、炭化水素の濃度測定に際しては、各ガス供給流路2〜4を経て、サンプルガスS1、燃料ガスFおよび助燃ガスJがFID1に供給され、FID1内部において所望の燃焼が行われるが、次のような問題があった。
【0012】
即ち、従来の炭化水素分析装置では、ガス供給流路2と助燃ガス供給流路4とが互いに独立しており、二つのガス供給流路2,4のそれぞれに、フィルタ6,17、電子冷却器8,19および吸引ポンプ14,20を設けているため、装置の構成部品がそれだけ多くなり、その分、装置の設置スペースを広く必要とする上に、構成が複雑になり、コスト高となっていた。
【0013】
一方、上記の電子冷却器8としては、サンプルガスS1をFID1に安定的に供給する上で、供給すべきサンプルガス量の数倍、現実には5倍程度の冷却能力を有するものが設置されるが、この電子冷却器8によって調湿の前処理を受けた大量のサンプルガスS1を余剰分として廃棄することは非常に無駄であった。
【0014】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、構成部品が少なくて構成が簡単かつ安価であり、しかも、前処理したサンプルガスを無駄なく有効に使用することができる上に、校正に際して、バックグラウンド値の急激な変化を防止できるようにした炭化水素分析装置を提供する点にある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、水素炎イオン化検出器に、助燃ガスの機能を有する成分を含むサンプルガスとエアベースの校正ガスとを択一的に供給するガス供給流路を接続すると共に、更に、前記水素炎イオン化検出器に、燃料ガスの供給流路と、炭化水素を含まないゼロガスの精製手段を備えた助燃ガスの供給流路とを接続して成る炭化水素分析装置において、前記ガス供給流路にとって余剰のガスを排出するガス切り換えユニットを設け、このガス切り換えユニットの余剰ガス排出部に、前記ゼロガス精製手段を備えた助燃ガスの供給流路を接続して、ゼロガスに精製した余剰のガスを助燃ガスとして水素炎イオン化検出器に供給する一方、この助燃ガスの供給流路に調湿処理を行う水分バッファ手段を備えた点に特徴がある。
【0016】
上記構成の炭化水素分析装置においては、調湿の前処理を受けた大量の余剰ガスを廃棄することなく、これを助燃ガスとして用いることから、従来の炭化水素分析装置とは異なり、フィルタ、電子冷却器および吸引ポンプを重複して設ける必要がなく、この際、サンプルガス用の電子冷却器として、これの冷却能力が元来大きいことから冷却能力をアップさせずとも、或いは、大幅なアップを必要としないで、余剰のガスを助燃ガスとして利用できるのであり、これによって装置の構成を簡素化でき、かつ、装置全体を安価に構成することが可能となる。
【0017】
ここで、炭化水素分析装置の校正に際して、余剰の校正ガスを単純に助燃用のガスとして用いると、この校正ガスがドライガスであることから、校正面で不都合を伴うことがある。
【0018】
即ち、図1を参照して、炭化水素の濃度測定に際して用いられる助燃用のサンプルガスS1として、これを電子冷却器8によって完全にドライ処理すれば、以下の述べる不都合は生じないのであるが、サンプルガスS1を完全にドライ処理するには、冷却能力の高い大型の電子冷却器8を要するだけでなく、応答も遅れ勝手になることから、一般には電子冷却器8として、コスト面を考慮して上述したように、FID1に安定的に供給すべきサンプルガス量の5倍程度の冷却能力を有するものを設置して、サンプルガスS1を出来るだけドライに調湿するようにしている。
【0019】
而して、炭化水素の濃度測定に際して用いられる助燃用の余剰のサンプルガスが調湿ガスであるのに対して、校正に用いられるガスがエアベースのドライガスであって、濃度測定時と校正時とでは水分条件が異なって、FIDに供給される助燃ガスの酸素濃度の分圧が急激に変化することから、バックグラウンド値が急激に変化することが懸念されるのである。
【0020】
そこで本発明では、助燃ガスの供給流路に調湿処理を行う水分バッファ手段を備えて、炭化水素の濃度測定時には、即ち、短時間で行われる校正以外では、調湿されたサンプルガスから水分バッファ手段に水分を吸引させるようにして、常に水分を水分バッファ手段に保有させるようにし、校正時には、水分バッファ手段によってドライの校正ガスに水分を含ませるようにして、もって、水分バッファ手段によって助燃ガスの急激な水分量の変化を抑えるようにしたのであり、これによって、助燃ガスの水分条件が常にほゞ一定になって、バックグラウンド値の急激な変化が防止されることから、炭化水素分析装置の校正が安定的に行われるようになったのである。
【0021】
因に、例えばCH4 の5ppmに対して1200mV出力相当の場合、表1に示すように、水分バッファ手段を備えない従来の炭化水素分析装置では、助燃ガスとしてウエットガス(5℃飽和)とドライガスとを交互に流した際に、バックグラウンド値が20mV変動したのに対して、水分バッファ手段を備えた本発明による炭化水素分析装置では、上記と同じ条件でバックグラウンド値が全く変動することはなかった。
【0022】
【表1】
Figure 0003571940
(但し、cH4 5ppmに対し1200mV出力相当の場合)
【0023】
この発明は、特に大気測定用の炭化水素分析装置において有用である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による炭化水素分析装置の一つの実施の形態を示し、この図に付した符号のうち、図2におる符号と同一のものは同一物であるので、その説明は省略する。
【0025】
この実施の形態における炭化水素分析装置が、図2に示すものと大きく異なる点は、ガス切り換えユニット10の余剰ガス排出部9に接続されるガス排出流路12の下流側に、炭化水素を含まないゼロガスの精製手段22を備えた助燃ガスJの供給流路4を接続して、このゼロガス精製手段22を経た余剰のガスを、助燃ガスJとしてFID(水素炎イオン化検出器)1に供給するようにし、図2に示した従来の炭化水素分析装置におけるフィルタ17、加湿器18、電子冷却器19および吸引ポンプ20を省略したことである。以下、本発明による炭化水素分析装置について、図1を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
即ち、図1において、ガス排出流路12に、流量調節用のニードル弁13と、ダイヤフラム式の吸引ポンプ14と、バッファタンク24と、圧力調整器21と、ゼロガス精製手段22と、水分バッファ手段25と、キャピラリ23を、その順次に接続して、ゼロガスに精製した余剰のガスをFID1に供給するようにしている。
【0027】
上記のバッファタンク24は、吸引ポンプ14の吸引動作に起因して生ずるガス流の脈動が、助燃ガス供給流路4に伝わるのを防ぐものであり、26はバッファタンク24に接続されたチェックバルブである。
【0028】
上記の水分バッファ手段25は、例えば活性アルミナやシリカゲル、ゼオライトなどの吸湿剤を、流路を構成するケース内に、通気性を有せしめるように充填して成り、ガス流量ならびに圧力条件がほゞ一定になるライン、即ち、圧力調整器21とゼロガス精製手段22との間に配置しているが、配置部位は特定されるものではない。
【0029】
上記構成の炭化水素分析装置の動作を説明する。先ず炭化水素の濃度測定について、サンプルガス入口5に導入されたサンプルガスS1としての大気は、フィルタ6によって異物が除去されて、ガス流路切り換え手段7を経て電子冷却器8に至り、出来るだけドライにする調湿の処理が施される。
【0030】
この調湿されたサンプルガスS1はガス切り換えユニット10に至り、一部がFID1に供給される一方、余剰のサンプルガスS1が、吸引ポンプ14に引かれてガス排出流路12に排出される。
【0031】
そして、ガス排出流路12に排出されたサンプルガスS1は、バッファタンク24から圧力調整器21を経て水分バッファ手段25に至り、サンプルガスS1が含む水分が、飽和状態になるまで水分バッファ手段25に吸引され、次にゼロガス精製手段22に至り、ここでHC成分が酸化されてHC成分を含まないゼロガスに精製され、このゼロガスがキャピラリ23を経てFID1に助燃ガスJとして導入される。
【0032】
この際、助燃ガスJは、チェックバルブ26、圧力調整器21およびキャピラリ23によって流量調整が行われて、所定の流量でFID1に導入される。
【0033】
そして、前記FID1には、サンプルガスS1および助燃ガスJのほかに、燃料ガスFが導入されているので、FID1においては、サンプルガスS1が燃料ガスFおよび助燃ガスJの存在下で所定の燃焼が行われる。
【0034】
上述のように、この発明の炭化水素分析装置においては、ガス切り換えユニット10から排出される余剰の調湿されたサンプルガスS1を、無駄に廃棄することなく、助燃ガス供給流路4に流して、この供給流路4に設けられたゼロガス精製手段22によってゼロガス処理し、このサンプルガスS1を助燃ガスJとしてFID1に供給することから、従来の炭化水素分析装置とは異なり、フィルタ17、加湿器18、電子冷却器19、吸引ポンプ20などを設ける必要がなく、従って、助燃ガス供給流路4の簡略化はもとより、装置全体の部品が少なくなることから、装置を安価に構成できる。
【0035】
一方、炭化水素分析装置の校正に際しては、流路切り換え手段7が、サンプルガスS1の供給に代えて校正ガスS2の供給形態に切り換えられて、エアベースのドライの校正ガスS2が、電子冷却器8を通してガス切り換えユニット10に至り、このドライの校正ガスS2の一部がFID1に供給されると共に、余剰のガスS2が助燃ガスJとしてガス排出流路12に排出される。
【0036】
このガス排出流路12に排出された助燃用のドライガスは、バッファタンク24から圧力調整器21を経て水分バッファ手段25に至り、ここで水分バッファ手段25が保有している水分が助燃ガスJに吸引されることで、助燃ガスJはウエット化し、次にゼロガス精製手段22を通して助燃ガスJがゼロガスに精製され、このゼロガスが助燃ガスJとしてFID1に導入される。
【0037】
而して、助燃ガスJが水分を含むことから、FID1に導入される助燃ガスJの急激な水分量の変化が抑えられるのであって、FID1においては、サンプルガスS1を助燃ガスJにする炭化水素の濃度測定時とほゞ同じ水分条件下で校正ガスS2が燃焼することから、バックグラウンド値の急激な変化を防止した状態で、炭化水素分析装置の校正が安定的に行われることになる。
【0038】
ここで、サンプルガスS1中のHCが急激に変化した場合、ゼロガス精製手段22に負担がかゝることになるが、上記の水分バッファ手段25に備える活性アルミナ等はHCの吸着能力を有することから、水分バッファ手段25は、サンプルガスS1と助燃ガスJとをほゞ同じ水分条件下に置く機能の他に、ゼロガス精製手段22にかゝる負担を緩衝するようにも機能する。
【0039】
尚、上記炭化水素分析装置は、大気中のHC濃度の測定以外にも用いることができることは言うまでもないが、特に、図1に示した構成は、大気を吸引してこれをサンプルガスS1とする測定方式において、優れた効果を奏する。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、構成部品が少なくて構成が簡単かつ安価であり、しかも、余剰の調湿ガスを助燃ガスとして無駄なく有効に使用できる上に、校正に際してバックグラウンド値の急激な変化が防止される炭化水素分析装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭化水素分析装置の構成の一例を概略的に示す構成図である。
【図2】従来の炭化水素分析装置の構成を概略的に示す構成図である。
【符号の説明】
1…水素炎イオン化検出器(FID)、2…ガス供給流路、3…燃料ガス供給流路、4…助燃ガス供給流路、9…余剰ガス排出部、10…ガス切り換えユニット、21…ゼロガス精製手段、26…水分バッファ手段、F…燃料ガス、J…助燃ガス、S1…サンプルガス、S2…校正ガス。

Claims (2)

  1. 水素炎イオン化検出器に、助燃ガスの機能を有する成分を含むサンプルガスとエアベースの校正ガスとを択一的に供給するガス供給流路を接続すると共に、更に、前記水素炎イオン化検出器に、燃料ガスの供給流路と、炭化水素を含まないゼロガスの精製手段を備えた助燃ガスの供給流路とを接続して成る炭化水素分析装置において、前記ガス供給流路にとって余剰のガスを排出するガス切り換えユニットを設け、このガス切り換えユニットの余剰ガス排出部に、前記ゼロガス精製手段を備えた助燃ガスの供給流路を接続して、ゼロガスに精製した余剰のガスを助燃ガスとして水素炎イオン化検出器に供給する一方、この助燃ガスの供給流路に調湿処理を行う水分バッファ手段を備えて成ることを特徴とする炭化水素分析装置。
  2. サンプルガスが大気である請求項1に記載の炭化水素分析装置。
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