JP3570784B2 - 新規なるフィターゼ - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規なフィターゼ、該フィターゼを構成するサブユニットをコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えプラスミド、該組換えプラスミドを含む形質転換微生物及び該微生物により生産されたフィターゼを用いたフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィターゼは、フィチン酸を脱リン酸させるホスファターゼであり、フィチン酸の6位のリン酸を加水分解するものを6−フィターゼ(EC.3.1.3.26.)、フィチン酸の3位のリン酸を加水分解するものを3−フィターゼ(EC.3.1.3.8.)と呼び、通常単にフィターゼと称されるものは6−フィターゼである。フィターゼは、高等植物、動物および微生物に存在する。例えば高等植物由来のものとしては、マング・ビーン(Mung bean)(N.C.Mandalら、Phytochemistry,vol.11:pp.495−502,(1972))、小麦(P.E.Limら、Biochemica et Biophysica Acta,vol.302:pp.316−328,(1973))由来のものが知られており、微生物由来のものとしては、シュードモナス(Pseudomonas)(G.C.J.Irvingら、Aust.J.Biol.Sci.,vol.24:pp.547−557,( 1971)),枯草菌(Bacillus subtilis)(V.K.Paverら,J.Bacterial.,vol.151:pp.1102−1108,(1982)),クレブシエラ(Klebsiella)(Varsha Shahら、Indian Journal of Biochemistry and Biophysics,vol.27:pp.98−102,(1990)), アスペルギルス(Aspergillus)属(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.17:pp.63−91,(1987)(欧州特許公開0321004、欧州特許公開0420358、欧州特許出願92−200414、WO9403612),シュワニオミセス カステリ(Schwanniomyces Castelli)CBS 2863,(P.Galzyら、J.Ferment.Bioeng.,vol.74.1:pp.7−11,(1992)由来のものが知られている。尚、Galzyらに開示されている、シュワニオミセス カステリ CBS 2863は現在シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)IFO 1840に再分類されている(Kregerm van Rij et al.:the yeast , a taxonomic study, 3rd ed.,Elsevier Sci.Publisher, Amsterdam The Nertherlands,(1984))(LIST OF CULTURE MICROORGANISMS, 9th ed.:Institute For Fermentation Osaka,pp75−76,(1992))。
フィターゼの基質であるフィチン酸(イノシトールヘキサキスリン酸)はミオ−イノシトール(以後単にイノシトールということがある)の6リン酸であり、フィチン酸のカルシウム−マグネシウム混合塩であるフィチンは全てのナッツ、穀物、豆類、種子、胞子、及び花粉にリン酸の主要貯蔵物質として1〜3%含まれる(E.Grafら、J.Am.Oil.Chem.Soc.,vol.60:pp.1861−1867,(1983))。
【0003】
近年、穀物、種子を多く含む飼料を用いて飼育される家畜(単胃動物)の排せつ物中のリン酸が河川等を汚染することが問題化している。その対策として、フィターゼを飼料添加剤として家畜飼料中に混入させ、飼料中のフィチン酸塩をフィターゼにより分解することにより排せつ物中のリン酸源濃度を低減させる試みがなされている。
しかし、従来知られているフィターゼは、68℃、10分間の処理により活性が40%に減少する(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.18:pp.483−489,(1988))。そのため、飼料添加物として使用する場合、飼料成形中の温度(75−85 ℃)では大部分の活性が失われてしまうため飼料形成が不可能であるか、乾燥工程を大幅に変更する必要がある。
【0004】
一方、フィターゼを用いてミオ−イノシトールの製造に利用する試みがなされている。従来、コーンスティープリカーや米ぬかなどからフィチンを抽出し、さらに高温高圧下でフィチンを加水分解することによりミオ−イノシトールが工業的に生産されている。しかしフィチンの加水分解は、特殊な装置や大量のエネルギーを必要とするため、生産コストの点で問題がある。
そこで、常温常圧下でフィチン酸塩を加水分解することのできる酵素を用いてイノシトールを生産する方法が考案され、アスペルギルス属に属する微生物(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.18:pp.483−489,(1988))やシュワニオミセス オキシデンタリス(前出)などの微生物を用いてのフィチンの加水分解反応が報告されている。
しかし、これらの反応を触媒する酵素のうち、アスペルギルス属に属する微生物の産生するフィターゼは、フィチン酸またはその塩からイノシトールモノリン酸までは加水分解するが、それ以上すなわちミオ−イノシトールまでは加水分解することができない。そのためミオ−イノシトールまで加水分解するためには他の酵素、例えば酸性ホスファターゼなどの併用が必要である。このことはイノシトールの製造において経済性の点から好ましくない。
最近になって、フィチン酸のナトリウム塩をミオ−イノシトールまで完全に分解することが可能で、しかも熱安定性が74℃と比較的高いフィターゼをシュワニオミセス オキシデンタリスが生産することが見いだされた。
【0005】
一般に、フィターゼは脱リン酸酵素(ホスファターゼ)の一種であるからその誘導にはネガティブな調節を解除するためリン酸濃度を低くした培地、もしくはポジティブな調節である誘導の強化の観点からフィチン酸の塩を唯一のリン酸源とした培地を使用すればよい。P.Galzyら(前出)は、シュワニオミセス オキシデンタリスの培養液中のリン酸濃度を低く保つためケモスタットによる連続培養を行いフィターゼの生産を行っている。しかし該酵素の分泌量は、P.Galzyら(前出)によれば0.15 mg/lと極めて低かった。この様な場合遺伝子工学的手法を用いて該酵素の大量生産を試みることが考えられる。しかし、当該フィターゼをコードする遺伝子は未だ未同定である。また、P.Galzyら(前出)によれば該フィターゼの分子構成は、α(125kD)及びβ(70kD)の2つのサブユニットからなる4量体(α:β=1:3)であるため、遺伝子工学的手法を用いて該酵素を大量生産するためには同一細胞内で2種のサブユニットを発現させる必要がある。このことは2種のサブユニッットをコードする2種の遺伝子の発現をコントロールするために、高度な遺伝子工学的手法を必要とし、また異種宿主での高次(4次)構造形成の点から必ずしも望ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フィチン酸塩或いはその塩をミオ−イノシトールまで完全に分解することが可能で、熱安定性に優れ、しかも従来知られているフィターゼよりも構造的に単純で、該酵素の遺伝子工学的手法を用いた大量生産が可能なフィターゼ提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記フィターゼをコードするの遺伝子、該遺伝子を含む形質転換微生物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、該形質転換微生物を用いてフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既にフィターゼを生産することが報告されているシュワニオミセス オキシデンタリスを弱酸のカルシウム塩を含むリン酸源濃度の低い培地で培養することにより、公知のフィターゼとは異なる単一サブユニットからなる新規なフィターゼが分泌生産されることを見いだし、該知見に基づき本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明はフィチン酸塩をミオ−イノシトールまで加水分解することができ、単一のサブユニットよりなるフィターゼ、シュワニオミセス オキシデンタリス由来の脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDであるフィターゼサブユニットをコードする遺伝子、該遺伝子を含む形質転換微生物、該微生物が生産するフィターゼを用いたフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法を提供するものである。
【0009】
本発明のフィターゼはフィチン酸塩をミオ−イノシトールまで加水分解すること、即ち、フィチン酸に結合している6つのリン酸を完全に加水分解することが出来る酵素であり、1種類のサブユニットから構成されている。
本発明のフィターゼの例として、シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来のものが挙げられる。このフィターゼは糖蛋白質である。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼを構成するサブユニットは、脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で50kD±5kDである。また、該サブユニットは少なくとも配列表の配列番号:1あるいは、及び配列番号:2のアミノ酸配列を含んでいる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼは上記サブユニットを3〜5個、通常は4個会合した4量体として存在しているものと思われる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼは耐熱性を有する。即ち、該酵素は70℃以下の温度で30分間の処理条件で約90%の残存活性が確認され、75℃で30分間の処理条件でも約50%の残存活性が確認される。この様に耐熱性を有するフィターゼは、該酵素を飼料添加剤に混合する場合、高温での飼料の成形が可能になるので有効である。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼはまた、該酵母をCaCO3等の弱酸のカルシウム塩を含むリン酸濃度の低い培地で培養することにより誘導分泌される。例えば、通常の酵母の培養に使用される培地にカルシウム塩を0.01〜1%、好ましくは0.05〜0.5%程度添加した培地で培養することにより、培地中に誘導的に蓄積してくる。
この様なシュワニオミセス オキシデンタリスのフィターゼの誘導的分泌の原因は必ずしも明らかではないが、本発明者らがP.Galzyら(前出)を参考にフィチン酸の塩を唯一のリン酸源とした培地を用いたバッチ法による培養を検討したところ、培養液中にフィターゼ活性はほとんど検出されず、炭酸カルシウムを培地に添加して培養したところ、培地中のフィターゼ活性が顕著に上昇したことから、フィターゼが誘導される原因は、フィチンの分解によりわずかに遊離したリン酸によるフィターゼの発現の抑制が弱酸のカルシウム塩で解除されるためでないかと考えらる。
【0010】
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子は、シュワニオミセス オキシデンタリスから種々の方法でクローニングすることができるが、該遺伝子が真核生物由来のため、イントロンが存在する可能性があることを考慮すれば、例えばシュワニオミセス オキシデンタリスIFO 1840のmRNAから合成したcDNAを大腸菌の発現ベクターに組み込み作製したcDNA発現ライブラリーから該サブユニットと特異的に反応する抗体をプローブとしてクローンを得ることができる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子のcDNAの長さは1631bpであり、該DNAは、具体的には例えば配列表の配列番号:5に記載の塩基配列であり、少なくとも配列表の配列番号:3、配列番号:4のDNA塩基配列を含んでいる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子は、宿主細胞中で複製可能なベクターに連結することにより組換えプラスミドを作製し、これを適当な微生物に形質転換することにより異種生物中で発現させることができる。本発明のシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドとしてはYEpGPH 1(図−8([図8]))が例示できる。
また、シュワニオミセス オキシデンタリスの染色体遺伝子を部分分解して作成したゲノムライブラリーからcDNAとハイブリダイズするフラグメントを含むクローンが得られる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドは、適当な宿主に例えば形質転換などの方法で導入することにより、該遺伝子を発現させ、更に多くのフィターゼを菌体内或いは菌体外に生産させることができる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を発現させるためには、異種タンパク質生産が可能な系がすでに開発されている大腸菌、枯早菌、酵母、糸状菌を宿主とする宿主ベクター系を利用することが有効である。そして、該宿主の中で機能することが知られている適当なプロモーター、分泌シグナルの直後にフィターゼの成熟蛋白をコードする遺伝子を接続し、適当なベクターに連結することより形質転換するか、染色体に組み込むことにより本酵素を生産することができる。
本発明者らは、得られたゲノムDNAフラグメントをサッカロミセス セルビッシェのベクタープラスミドであるYEp24中に組み込み、このプラスミドでサッカロミセス セルビッシェを形質転換することによりシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼ酵素を生産することに成功した。
上記組換えプラスミドにより形質転換することにより得られた微生物としては、大腸菌、酵母が例示され、具体的には大腸菌の中でも大腸菌(Escherichia coli)MT−10743(FERM BP−5108)、酵母としてはサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)MT−40539 (FERM BP−5109)が例示される。これらの微生物は、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)にブタペスト条約に基づいて寄託されており、FERM BP−5108或いはFERM BP−5109はその寄託番号を表している。
尚、本発明の元の明細書においてFERM BP−5108はFERM P−14287として、FERM BP−5109はFERM P−14287として記載されている。寄託番号の相違は、これら菌株が共に平成7年5月25日をもって原寄託よりブタペスト条約に基づく寄託への移管手続きがなされたため、これに伴い寄託番号が上記のとおりに変更されたことによる。
【0011】
上記の形質転換された微生物を培養してフィターゼを製造するための培養方法は、通常の微生物の培養方法を用いることができる。
培地としては、形質転換された微生物に好適なものであれば特に制限はないが、遊離したリン酸によるフィターゼの発現の抑制を解除するために弱酸のカルシウム塩を含有することが好ましい。
上記培地を用いて通常の培養条件(温度・pH・通気・時間)で培養することにより、フィターゼを製造することができる。フィターゼを種々の用途に使用するためには、上述の通り培養して得られた培養液、菌体及びその処理物はフィターゼ酵素源として利用することができる。菌体の処理物としては、菌体を自己消化や有機溶媒による溶菌、超音波処理、ホモジナイズなどの処理により破壊したもの、及び該破壊物の粗精製物、並びに培養液、菌体から分離精製されたフィターゼ酵素蛋白質、更には培養により得られた菌体、菌体或いは培養液から分離精製された酵素蛋白質をアルギン酸ナトリウム、κ−カラギーナン、ポリアクリルアミドなどの固定化剤を用いて固定化したものを含む。
【0012】
以上の通りにして得られたフィターゼ或いはシュワニオミセス オキシデンタリス由来の、脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDであるサブユニットよりなるフィターゼはフィターゼ酵素源として種々の用途、例えば飼料添加物或いはイノシトールの生産に使用可能である。
上記のフィターゼ酵素源の存在下、フィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換するためには、フィチン酸カルシウムなどのフィチン酸塩を含むバッファー中にフィターゼ酵素源を添加して反応させればよい。
【0013】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、実施例は本発明の内容を何等限定するものではない。
【0014】
実施例1 炭酸カルシウム添加によるフィターゼの高発現誘導
1リットルあたりglucose 10g、(NH4)2SO4 3g、 MgSO4 0.5g、 KCl 0.5g, CaCl2 0.1g、FeCl3 0.135g、微量金属、イノシトール以外の各種ビタミン類、初期増殖のためにyeast extract 0.03g、唯一のリン酸源としてCalcium Phytate 0.6g、高発現誘導のためCaCO3 1gを含む培地を調製した。この培地30mlをバッフル付き三角フラスコに入れ、シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis) IFO 1840を植菌し、28℃で2日間培養した。対照として上記培地からCaCO3を除いた培地を使用して比較した。
培養の終わった培養液をamicon centricon 30 microconcentratorを用いて限外濾過することにより10倍に濃縮した後、透析した。透析された液のフィターゼ活性を以下のように測定した。即ち、透析された液100μlに基質水溶液(60mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)、 5mMフィチン酸ナトリウムを含む)900μlを加え、70℃で30分間反応した。反応終了後、反応液に5N H2SO4を100μl添加して反応を停止した。対照として基質を含むバッファー液に予め5N H2SO4 100μlを加えたものに酵素液を加えた画分を用意した。反応停止後、反応液を96穴マイクロタイタープレート上で1〜2048倍に希釈し、希釈液100μlあたり50μlのリン酸検出液(A液;1.47g/l マラカイトグリーン, 20% H2SO4: B液;7.5% Ammonium Molybdate: C液;11%(w/v) Tween20とし、使用直前にA液:B液:C液=50:12.5:1に混合したもの) を加え30分間振とう後、ABS620を測定した。1〜10nMの範囲のリン酸校正曲線により、得られた測定値から、放出されたリン酸量を決定した。フィターゼ活性の単位は1分間にリン酸を1μmole放出する活性を1unitとした。結果を図−1[図1]に示す。炭酸カルシウムを加えた誘導培地で培養した培養液中にはフィターゼ活性が検出され、炭酸カルシウムを加えない非誘導培地で培養した培養液からはフィターゼ活性は殆ど検出されなかった。
【0015】
実施例2 フィターゼ酵素活性の測定と分子サイズの測定
(1) 酵素の脱糖鎖
次に本発明者らは実施例1に記載の培養条件で誘導され、培地中に分泌・蓄積したフィターゼの酵素学的な性状を明らかにするために酵素の精製を試みた。
本酵素は糖蛋白であることが予備的な実験より明らかになった。この様な蛋白質は電気泳動で明瞭なバンドを与えにくいことが多い。そのため、電気泳動により単一のバンドを得るため、予めEndo Hにより脱糖鎖処理を行った。酵素の脱糖鎖は、酵素を終濃度10mMのCH3COONa(pH 5.2)、100mM 2−メルカプトエタノール、0.0025% SDSを含む溶液中で95℃で5分間処理して変性させた後ゆっくりと室温に戻し、蛋白量1ng当り4μUのEndo H(Endoglycosidase H)(Boehringer Mannheim Biochemica社製)を加え、37℃で1晩反応を行った。
尚、以下の実験で活性を測定するものと電気泳動する試料は、10mM CH3COONa(pH 5.2)の溶液に、蛋白量1ngあたり4μUのEndo Hを加え、37℃で1晩反応する処理を行った。
【0016】
(2) 粗酵素中の加水分解活性の検出と分子サイズの測定
実施例2でEndo Hによる脱糖鎖処理を行った粗酵素標品をNative PAGEにより電気泳動した。銀染色、及び加水分解活性染色を行い単一で加水分解活性を示すバンドを検出した。
加水分解活性染色は、電気泳動が終了したゲルを0.1% α−ナフチルホスフェート、0.2% ファーストガーネットGBC塩、0.6M 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)の溶液中で一晩インキュベートした。その際加水分解活性のあるバンドは黒色のバンドとして検出される。上記バンドにあたるポリペプチドのフィターゼ活性を確認するためにこのバンドに当たるポリペプチドをフィチン酸ナトリウムと反応させ、生成するリン酸量及びミオ−イノシトール量を定量しフィターゼ活性を測定したところ、リン酸及びミオ−イノシトールの生成が認められた。
また、該ポリペプチドのSDS−PAGEで分子サイズを測定したところ、当該酵素の分子サイズは50kD±5kDであることが分かった(図−5[図5])。これはシュワニオミセス オキシデンタリスのフィターゼサブユニットとして既に知られているα、βサブユニットとは明らかに異なっていた。
さらに詳しく解析するためにこのポリペプチドを精製し、家兎に免疫し、アフィニティーカラムにより精製することで目的のポリペプチドに特異的な抗体を得た。該抗体を用いたウエスタンブロットの解析から、該抗体はシュワニオミセスオキシデンタリスのフィターゼサブユニットとして既に知られているα、βサブユニットとは明らかに分子サイズの異なる50kDのバンドと反応した。
以上のことから、炭酸カルシウムを加えた誘導培地で培養した際に培養液中に検出されるフィターゼ活性を有する酵素は、これまで知られていない新規のものであると結論した。
【0017】
実施例3 培養上清液からのフィターゼの精製
シュワニオミセス オキシデンタリスを実施例1に記載の培地20mlに植菌し、28℃で一晩培養した。培養後、培養液全量を2lの同一培地に無菌的に加え、28℃で2日間培養した。最終的に得られた培養液を遠心分離することにより培養上清約2lを得た。得られた培養上清はエバポレーターにより50〜60℃で200mlまで濃縮した後、濃縮液を透析した。この透析液を再びエバポレーターにより20mlまで濃縮し、透析した。得られた粗酵素溶液を10mlのQ−Sepharose fast flowカラム(ファルマシア社製)にアプライし、カラムを20mM Tris−HCl Buffer, pH 7.5, 50 mlにより洗浄した。溶出は、25、50、75、100、125、150、175、200mMのNaClを含む20mM Tris−HCl buffer, pH 7.5各20mlを順次流して行った。20ml毎に溶出液を分取し、各溶出画分を透析後、フィターゼ活性を測定した。
得られた酵素の至適pH、至適温度、温度耐性を調べた。
酵素の至適pHは、実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定を行い、その際20mM酢酸ナトリウムバッファーと20mMフタル酸バッファーを用い、活性測定中のPHを変えた。実験の結果、本酵素の至適pHはpH 2.7−5.0の範囲であることがわかった(図−2[図2])。
酵素の至適温度は、実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定を行い、その際酵素反応の温度を変化させた。実験の結果、本酵素の至適温度は約70℃であることがわかった(図−3[図3])。
酵素の温度耐性は、酵素を20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)中で30分間インキュベートした後、該処理酵素液を用いて実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定をして行った。その結果、酵素の残存活性は70℃で約90%、75℃で50%あった(図−4[図4])。
【0018】
実施例4 フィターゼによるミオ−イノシトールの生産
100 g/lのフィチン酸カルシウムを含む溶液(pH 4.0)に実施例3で精製されたフィターゼを8U/mlになるように添加し、50℃で反応を行った。蓄積したミオ−イノシトールは高速液体クロマトグラフィーにより定量した。結果を図−6[図6]に示す。
【0019】
実施例5 N末端アミノ酸配列の決定
精製した酵素をEndo Hにより脱糖鎖した後、Bio−Rad Prep−Cell Model 491 により脱糖鎖が不完全であるものを取り除いた。この酵素を12.5%のSDS−PAGEゲルにより泳動し、Sartorius blotting装置によりPVDFブロッティングメンブレンフィルター(イムノビロン;ミリポア社)へ電気泳動的に移した。メンブレンフィルターを洗浄した後、ポンソー試薬による発色で蛋白の位置を検出した。目的のバンドを切り出し、乾燥させた後、アミノ酸シークエンサー(島津製作所製)により分析を行った。結果を配列表の配列番号:1に示す。
【0020】
実施例6 V8 proteaseによる部分分解産物のN末端アミノ酸配列の決定
実施例2に記載の方法により脱糖鎖した50kDの分子サイズを示す酵素200−400μgをサンプルバッファー(125mM Tris−HCl(pH 6.8), 0.1% SDS, 10% グリセロールを含む)に溶解し、Staphyrococuus属細菌由来のV8(Glu−c)protease 1μgをprotease用バッファー(125mM Tris−HCl(pH 6.8), 0.1% SDS, 5% グリセロール)に溶解した。
17% SDS−PAGEゲルにまず酵素を溶解したサンプルをのせ、つぎにV8 proteaseを溶解したサンプルを静かに重層した。これを泳動し、Stacking gelとSeparation gelの境界付近にBPBマーカーが来たところで30分間泳動を止め、Proteaseと酵素を反応させた。その後、再び泳動し、部分分解した酵素のN末端アミノ酸配列を実施例4に記述した方法により決定した。結果を配列表の配列番号:2に示す。
【0021】
実施例7 フィターゼcDNAのスクリーニング
(1) 抗体の作製
実施例2(1)に記載の方法により脱糖鎖した50kDの分子サイズを示す酵素溶液(1mg/ml)100μlと完全アジュバンド(Freund Complete adjuvand)(DIFCO社製)100μlを混合してエマルジョン化し、これを接種液とした。
接種はうさぎの皮下に数回に分けて行い、2、4、6週間後に追免疫を行った。抗体価の上昇はELISA(Enzyme−linked immuno sorbent assay)法により免疫前に採取した血清と比較することにより観察した。
最終的に得られた血清は0.1gのCNBr−activated sepharose 4Bに1mgの脱糖鎖後の精製酵素をcouplingして作製したアフィニティーカラムにより精製した。
精製された抗体はウエスタンブロット法により、脱糖鎖後の粗酵素から50kD、及びその分解産物と思われる約30kDのバンドを示した。結果を図−7[図7]に示す。
【0022】
(2) フィターゼcDNAのクローニング
実施例4に記載の方法でOD660=1.0まで菌体を培養し、遠心集菌後、同時に沈澱するCaCO3を除くためpH3.5の酢酸ナトリウムバッファーで菌体を洗浄し、次に10mM Tris−HClpH 7.0により洗浄して菌体を得た。
得られた菌体は、液体窒素を用いて凍らせた後、海砂とともにすり鉢を使用して破砕した。この粉にQuick Prep mRNA purification kit(ファルマシア社)のextraction bufferを加え均一に混合した後、4℃、2000Gで遠心分離して上清を取り、全RNAを得た。この後、Quick Prep mRNA purification kitの使用法に従いmRNAを得た。以後、UniZAP cDNA Library kit(STRATAGENE社)を用いてcDNAを合成、GIGAPACK GOLD II(STRATAGENE社)を用いてパッケージングしてcDNAライブラリーを作製した。
IPTG誘導によりcDNAを発現させた50,000個のプラークをUniZAP cDNA Library kit(STRATAGENE社)の使用法に従いPVDFブロッティングメンブレン(イムノビロン;ミリポア社)に転写し、作製した抗体をプローブにスクリーニングを行った。得られたクローンのcDNAは、UniZAP cDNA Library kitの使用法に従い、IN VIVO EXCISIONによりbluescript SK−にサブクローニングした。得られた組換え大腸菌MT−10743は工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号:FERM BP−5108として寄託されている。サブクローニングされたcDNAの塩基配列を決定したところ配列表の配列番号:5に記載の通りであった。該塩基配列には、配列表の配列番号:3及び4に記載のDNA塩基配列がそれぞれ第11−34番目と第377−400番目に存在することが確認された。
【0023】
実施例8 フィターゼゲノムDNAのクローニング
5ml YEPD培地(10% Yeast extract、 20% ポリペプトン、20% グルコースを含む)にシュワニオミセス オキシデンタリスを1白金耳植菌し、30℃で一晩培養し、この培養液を1lのYEPD培地に無菌的に植菌した。これをOD660=5.0まで培養し、2000gで遠心分離して菌体を得た。得られた菌体を30mlのlysis buffer(1M Sorbitol, 25mM EDTA, 50mM MES(pH 5.5), 4mg/ml Novozyme234;Novo BioLabs, 20mg/ml Zymolyase;Seikagaku) に懸濁して30℃で1時間インキュベートした。プロトプラスト化を確認後、 Dietyl pyrocarbonate 500μl, 0.5M EDTA 1.2ml, 0.2M Tris base 1.6ml, 10% SDS 1.6mlを加え、よく混合した後4℃で30分間静置した。
その後、5M 酢酸カリウムを3.5ml混合し、2000g、10分間の遠心分離を行い、上清を得た。等量のフェノール/クロロホルムで3回処理をした後、等量の2−プロパノールを加え、−20℃で2時間静置した。その後、3000gで10分間遠心分離した後、沈澱を70%エタノールで2回洗浄し、乾燥後2mlのTE bufferに溶かした。これに1/100容量の1mg/ml RNase Aを加え、37℃で30分間インキュベートした。
等量のフェノール/クロロホルムで2回処理を行った後、1/10容量の3M 酢酸ナトリウムを加え、2倍容量のエタノールを加えて−20℃で2時間静置した。
得られたDNAを制限酵素Sau3AIで部分分解し、9−23kb断片を用いてLAMDA EMBL3/BamH I VECTOR KIT(STRATAGENE社製)の使用法に従いゲノムライブラリーを作製した。
作製したゲノムライブラリーを用いてLAMDA EMBL3/Bam HI VECTOR KIT ;STRATAGENEの使用法に従い目的のフィターゼをコードする遺伝子を含むフラグメントをクローニングした。プローブには実施例7で得られたcDNAを用いた。
得られたフラグメント中の約5.3 kbのXhoI断片をベクタープラスミドYEp24のsalI部位にサブクローニングし、YEpGPH 1を作製した(図−8[図8])参照)。尚、プラスミドYEp24はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)ATCC−37051から常法により抽出した。
【0024】
実施例9 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ分泌酵母の育種 Itoらの方法(Ito,H., Y.Jukuda, K.Murata, and A.Kimura,J.Bacteriol.,Vol.153,p.163−168,(1983).)に従い実施例8で得られたプラスミド(YEpGPH 1)を用いてサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)W303−1B株(Matα ade2−1 his3−11,15 leu2−3,112 ura3−1 trp1−1 can1−100)の形質転換を行った。その結果、形質転換株MT−40539が得られた。形質転換株MT−40539は受託番号FERM BP−5109として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。形質転換株MT−40539とYEp24を実施例1に記載の培地に必要なアミノ酸(20mg/l adenine, 20mg/l histidine, 30mg/l leucine, 20mg/l tryptophan)を加えた培地で培養し、培養菌体のフィターゼ活性を測定したところ、MT−40539はYEp24で形質転換したサッカロミセス セルビッシェW303−1B株よりも高いフィターゼ活性を示した。また、MT−40539培養上清中に、ウエスタンブロット法により、実施例7(1)で作製した抗体で認識される蛋白質が検出された。結果を図−9[図9]に示す。
【0025】
【発明の効果】
本発明のフィターゼは1種類のポリペプチドによって構成される酵素であって、これにより、これまで2種類のポリペプチドを生産しなければならなかった他のフィターゼと比較して経済的に有利な酵素生産、ミオ−イノシトール生産が可能となる。
また、本発明のフィターゼは高い至適温度および高い耐熱性を有しているため、従来技術では使用できなかった温度範囲での酵素反応が可能になる。
また、この酵素をコードする遺伝子をクローニングすることにより酵素の大量生産、変異技術(例えば部位特異的突然変異誘発など)で本発明の方法で生産した野生型または組換えフィターゼとは性質(最適pH、最適温度、熱安定性、対溶媒安定性、比活性、基質親和性、分泌能、翻訳速度、転写制御など)の異なるフィターゼ(第二世代酵素)の作出を容易にする。
また、この遺伝子は類似の性質を持つフィターゼのスクリーニングにも利用することが出来る。
また、本発明によれば、より効率的なミオ−イノシトールの生産が可能となる。
【0026】
【配列表】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】シュワニオミセス オキシデンタリスの培養液中に含まれるフィターゼ活性の経時変化を示す図である。黒丸はCaCO3を含まない低リン酸フィターゼ誘導培地での培養液中のフィターゼ活性の変化を示し、白丸はCaCO3を含む低リン酸フィターゼ誘導培地での培養液中のフィターゼ活性を示している。
【図2】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの各pHにおける相対活性を示す図である。活性は20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)中で反応を行った場合の活性を100%とした相対活性を示し、黒丸は反応に20mM酢酸ナトリウムバッファーを用いた場合、白丸は20mMフタル酸バッファーを用いた場合の活性を示す。
【図3】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの活性に対する温度依存性を示す図である。活性は70℃での値を100とした相対活性で示される。
【図4】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの温度耐性を示す図である。値はインキュベート前の活性を100%として相対活性で示した。
【図5】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動した場合の電気泳動写真である。レーン1は分子サイズマーカーH(BIORAD)、レーン2は分子サイズマーカL(BIORAD)、レーン3は脱糖鎖前の精製酵素、レーン4は実施例2に示す方法で脱糖鎖した精製酵素、レーン5はEndo Hを20 unit使用して脱糖鎖を行った精製酵素、レーン6はEndo H反応前に行う変性処理を行わずに20unitのEndo Hにより脱糖鎖を行った精製酵素、レーン7はEndo Hのみをそれぞれ泳動したものであることを示している。
【図6】精製酵素による反応後の反応液中のミオ−イノシトールの蓄積濃度の経時変化を示す図である。
【図7】シュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清及び菌体破砕物のウエスタンブロット法による解析を示す電気泳動写真である。レーン1は分子サイズマーカL(BIORAD社)、レーン2及び3はそれぞれEndo H処理を施した培養上清及び菌体破砕物のSDS−PAGE、レーン4及び5は同泳動条件における培養上清及び菌体破砕物のウエスタン解析をそれぞれ示している。
【図8】YEp24およびYEpGPH 1のプラスミドマップを示す。
【図9】MT−40539の培養上清の銀染色法およびウエスタンブロット法による解析を示す電気泳動写真である。レーン1及びレーン6は分子サイズマーカL(BIORAD社)、レーン2及びレーン7はシュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清より精製したフィターゼをEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプル、レーン3及びレーン8は空きレーン、レーン4及びレーン9はサッカロミセス セルビッシェW303−1B株にYEp24を形質転換した菌体の培養上清をEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプル、レーン5及びレーン10はMT−40539の培養上清をEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプルをそれぞれ示している。
【産業上の利用分野】
本発明は新規なフィターゼ、該フィターゼを構成するサブユニットをコードする遺伝子、該遺伝子を含む組換えプラスミド、該組換えプラスミドを含む形質転換微生物及び該微生物により生産されたフィターゼを用いたフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィターゼは、フィチン酸を脱リン酸させるホスファターゼであり、フィチン酸の6位のリン酸を加水分解するものを6−フィターゼ(EC.3.1.3.26.)、フィチン酸の3位のリン酸を加水分解するものを3−フィターゼ(EC.3.1.3.8.)と呼び、通常単にフィターゼと称されるものは6−フィターゼである。フィターゼは、高等植物、動物および微生物に存在する。例えば高等植物由来のものとしては、マング・ビーン(Mung bean)(N.C.Mandalら、Phytochemistry,vol.11:pp.495−502,(1972))、小麦(P.E.Limら、Biochemica et Biophysica Acta,vol.302:pp.316−328,(1973))由来のものが知られており、微生物由来のものとしては、シュードモナス(Pseudomonas)(G.C.J.Irvingら、Aust.J.Biol.Sci.,vol.24:pp.547−557,( 1971)),枯草菌(Bacillus subtilis)(V.K.Paverら,J.Bacterial.,vol.151:pp.1102−1108,(1982)),クレブシエラ(Klebsiella)(Varsha Shahら、Indian Journal of Biochemistry and Biophysics,vol.27:pp.98−102,(1990)), アスペルギルス(Aspergillus)属(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.17:pp.63−91,(1987)(欧州特許公開0321004、欧州特許公開0420358、欧州特許出願92−200414、WO9403612),シュワニオミセス カステリ(Schwanniomyces Castelli)CBS 2863,(P.Galzyら、J.Ferment.Bioeng.,vol.74.1:pp.7−11,(1992)由来のものが知られている。尚、Galzyらに開示されている、シュワニオミセス カステリ CBS 2863は現在シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)IFO 1840に再分類されている(Kregerm van Rij et al.:the yeast , a taxonomic study, 3rd ed.,Elsevier Sci.Publisher, Amsterdam The Nertherlands,(1984))(LIST OF CULTURE MICROORGANISMS, 9th ed.:Institute For Fermentation Osaka,pp75−76,(1992))。
フィターゼの基質であるフィチン酸(イノシトールヘキサキスリン酸)はミオ−イノシトール(以後単にイノシトールということがある)の6リン酸であり、フィチン酸のカルシウム−マグネシウム混合塩であるフィチンは全てのナッツ、穀物、豆類、種子、胞子、及び花粉にリン酸の主要貯蔵物質として1〜3%含まれる(E.Grafら、J.Am.Oil.Chem.Soc.,vol.60:pp.1861−1867,(1983))。
【0003】
近年、穀物、種子を多く含む飼料を用いて飼育される家畜(単胃動物)の排せつ物中のリン酸が河川等を汚染することが問題化している。その対策として、フィターゼを飼料添加剤として家畜飼料中に混入させ、飼料中のフィチン酸塩をフィターゼにより分解することにより排せつ物中のリン酸源濃度を低減させる試みがなされている。
しかし、従来知られているフィターゼは、68℃、10分間の処理により活性が40%に減少する(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.18:pp.483−489,(1988))。そのため、飼料添加物として使用する場合、飼料成形中の温度(75−85 ℃)では大部分の活性が失われてしまうため飼料形成が不可能であるか、乾燥工程を大幅に変更する必要がある。
【0004】
一方、フィターゼを用いてミオ−イノシトールの製造に利用する試みがなされている。従来、コーンスティープリカーや米ぬかなどからフィチンを抽出し、さらに高温高圧下でフィチンを加水分解することによりミオ−イノシトールが工業的に生産されている。しかしフィチンの加水分解は、特殊な装置や大量のエネルギーを必要とするため、生産コストの点で問題がある。
そこで、常温常圧下でフィチン酸塩を加水分解することのできる酵素を用いてイノシトールを生産する方法が考案され、アスペルギルス属に属する微生物(Abul H.J.Ullahら、Preparative Biochemistry,vol.18:pp.483−489,(1988))やシュワニオミセス オキシデンタリス(前出)などの微生物を用いてのフィチンの加水分解反応が報告されている。
しかし、これらの反応を触媒する酵素のうち、アスペルギルス属に属する微生物の産生するフィターゼは、フィチン酸またはその塩からイノシトールモノリン酸までは加水分解するが、それ以上すなわちミオ−イノシトールまでは加水分解することができない。そのためミオ−イノシトールまで加水分解するためには他の酵素、例えば酸性ホスファターゼなどの併用が必要である。このことはイノシトールの製造において経済性の点から好ましくない。
最近になって、フィチン酸のナトリウム塩をミオ−イノシトールまで完全に分解することが可能で、しかも熱安定性が74℃と比較的高いフィターゼをシュワニオミセス オキシデンタリスが生産することが見いだされた。
【0005】
一般に、フィターゼは脱リン酸酵素(ホスファターゼ)の一種であるからその誘導にはネガティブな調節を解除するためリン酸濃度を低くした培地、もしくはポジティブな調節である誘導の強化の観点からフィチン酸の塩を唯一のリン酸源とした培地を使用すればよい。P.Galzyら(前出)は、シュワニオミセス オキシデンタリスの培養液中のリン酸濃度を低く保つためケモスタットによる連続培養を行いフィターゼの生産を行っている。しかし該酵素の分泌量は、P.Galzyら(前出)によれば0.15 mg/lと極めて低かった。この様な場合遺伝子工学的手法を用いて該酵素の大量生産を試みることが考えられる。しかし、当該フィターゼをコードする遺伝子は未だ未同定である。また、P.Galzyら(前出)によれば該フィターゼの分子構成は、α(125kD)及びβ(70kD)の2つのサブユニットからなる4量体(α:β=1:3)であるため、遺伝子工学的手法を用いて該酵素を大量生産するためには同一細胞内で2種のサブユニットを発現させる必要がある。このことは2種のサブユニッットをコードする2種の遺伝子の発現をコントロールするために、高度な遺伝子工学的手法を必要とし、また異種宿主での高次(4次)構造形成の点から必ずしも望ましくない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、フィチン酸塩或いはその塩をミオ−イノシトールまで完全に分解することが可能で、熱安定性に優れ、しかも従来知られているフィターゼよりも構造的に単純で、該酵素の遺伝子工学的手法を用いた大量生産が可能なフィターゼ提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記フィターゼをコードするの遺伝子、該遺伝子を含む形質転換微生物を提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、該形質転換微生物を用いてフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、既にフィターゼを生産することが報告されているシュワニオミセス オキシデンタリスを弱酸のカルシウム塩を含むリン酸源濃度の低い培地で培養することにより、公知のフィターゼとは異なる単一サブユニットからなる新規なフィターゼが分泌生産されることを見いだし、該知見に基づき本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明はフィチン酸塩をミオ−イノシトールまで加水分解することができ、単一のサブユニットよりなるフィターゼ、シュワニオミセス オキシデンタリス由来の脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDであるフィターゼサブユニットをコードする遺伝子、該遺伝子を含む形質転換微生物、該微生物が生産するフィターゼを用いたフィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法を提供するものである。
【0009】
本発明のフィターゼはフィチン酸塩をミオ−イノシトールまで加水分解すること、即ち、フィチン酸に結合している6つのリン酸を完全に加水分解することが出来る酵素であり、1種類のサブユニットから構成されている。
本発明のフィターゼの例として、シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来のものが挙げられる。このフィターゼは糖蛋白質である。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼを構成するサブユニットは、脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で50kD±5kDである。また、該サブユニットは少なくとも配列表の配列番号:1あるいは、及び配列番号:2のアミノ酸配列を含んでいる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼは上記サブユニットを3〜5個、通常は4個会合した4量体として存在しているものと思われる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼは耐熱性を有する。即ち、該酵素は70℃以下の温度で30分間の処理条件で約90%の残存活性が確認され、75℃で30分間の処理条件でも約50%の残存活性が確認される。この様に耐熱性を有するフィターゼは、該酵素を飼料添加剤に混合する場合、高温での飼料の成形が可能になるので有効である。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼはまた、該酵母をCaCO3等の弱酸のカルシウム塩を含むリン酸濃度の低い培地で培養することにより誘導分泌される。例えば、通常の酵母の培養に使用される培地にカルシウム塩を0.01〜1%、好ましくは0.05〜0.5%程度添加した培地で培養することにより、培地中に誘導的に蓄積してくる。
この様なシュワニオミセス オキシデンタリスのフィターゼの誘導的分泌の原因は必ずしも明らかではないが、本発明者らがP.Galzyら(前出)を参考にフィチン酸の塩を唯一のリン酸源とした培地を用いたバッチ法による培養を検討したところ、培養液中にフィターゼ活性はほとんど検出されず、炭酸カルシウムを培地に添加して培養したところ、培地中のフィターゼ活性が顕著に上昇したことから、フィターゼが誘導される原因は、フィチンの分解によりわずかに遊離したリン酸によるフィターゼの発現の抑制が弱酸のカルシウム塩で解除されるためでないかと考えらる。
【0010】
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子は、シュワニオミセス オキシデンタリスから種々の方法でクローニングすることができるが、該遺伝子が真核生物由来のため、イントロンが存在する可能性があることを考慮すれば、例えばシュワニオミセス オキシデンタリスIFO 1840のmRNAから合成したcDNAを大腸菌の発現ベクターに組み込み作製したcDNA発現ライブラリーから該サブユニットと特異的に反応する抗体をプローブとしてクローンを得ることができる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子のcDNAの長さは1631bpであり、該DNAは、具体的には例えば配列表の配列番号:5に記載の塩基配列であり、少なくとも配列表の配列番号:3、配列番号:4のDNA塩基配列を含んでいる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子は、宿主細胞中で複製可能なベクターに連結することにより組換えプラスミドを作製し、これを適当な微生物に形質転換することにより異種生物中で発現させることができる。本発明のシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドとしてはYEpGPH 1(図−8([図8]))が例示できる。
また、シュワニオミセス オキシデンタリスの染色体遺伝子を部分分解して作成したゲノムライブラリーからcDNAとハイブリダイズするフラグメントを含むクローンが得られる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドは、適当な宿主に例えば形質転換などの方法で導入することにより、該遺伝子を発現させ、更に多くのフィターゼを菌体内或いは菌体外に生産させることができる。
シュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を発現させるためには、異種タンパク質生産が可能な系がすでに開発されている大腸菌、枯早菌、酵母、糸状菌を宿主とする宿主ベクター系を利用することが有効である。そして、該宿主の中で機能することが知られている適当なプロモーター、分泌シグナルの直後にフィターゼの成熟蛋白をコードする遺伝子を接続し、適当なベクターに連結することより形質転換するか、染色体に組み込むことにより本酵素を生産することができる。
本発明者らは、得られたゲノムDNAフラグメントをサッカロミセス セルビッシェのベクタープラスミドであるYEp24中に組み込み、このプラスミドでサッカロミセス セルビッシェを形質転換することによりシュワニオミセス オキシデンタリス由来のフィターゼ酵素を生産することに成功した。
上記組換えプラスミドにより形質転換することにより得られた微生物としては、大腸菌、酵母が例示され、具体的には大腸菌の中でも大腸菌(Escherichia coli)MT−10743(FERM BP−5108)、酵母としてはサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)MT−40539 (FERM BP−5109)が例示される。これらの微生物は、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)にブタペスト条約に基づいて寄託されており、FERM BP−5108或いはFERM BP−5109はその寄託番号を表している。
尚、本発明の元の明細書においてFERM BP−5108はFERM P−14287として、FERM BP−5109はFERM P−14287として記載されている。寄託番号の相違は、これら菌株が共に平成7年5月25日をもって原寄託よりブタペスト条約に基づく寄託への移管手続きがなされたため、これに伴い寄託番号が上記のとおりに変更されたことによる。
【0011】
上記の形質転換された微生物を培養してフィターゼを製造するための培養方法は、通常の微生物の培養方法を用いることができる。
培地としては、形質転換された微生物に好適なものであれば特に制限はないが、遊離したリン酸によるフィターゼの発現の抑制を解除するために弱酸のカルシウム塩を含有することが好ましい。
上記培地を用いて通常の培養条件(温度・pH・通気・時間)で培養することにより、フィターゼを製造することができる。フィターゼを種々の用途に使用するためには、上述の通り培養して得られた培養液、菌体及びその処理物はフィターゼ酵素源として利用することができる。菌体の処理物としては、菌体を自己消化や有機溶媒による溶菌、超音波処理、ホモジナイズなどの処理により破壊したもの、及び該破壊物の粗精製物、並びに培養液、菌体から分離精製されたフィターゼ酵素蛋白質、更には培養により得られた菌体、菌体或いは培養液から分離精製された酵素蛋白質をアルギン酸ナトリウム、κ−カラギーナン、ポリアクリルアミドなどの固定化剤を用いて固定化したものを含む。
【0012】
以上の通りにして得られたフィターゼ或いはシュワニオミセス オキシデンタリス由来の、脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDであるサブユニットよりなるフィターゼはフィターゼ酵素源として種々の用途、例えば飼料添加物或いはイノシトールの生産に使用可能である。
上記のフィターゼ酵素源の存在下、フィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換するためには、フィチン酸カルシウムなどのフィチン酸塩を含むバッファー中にフィターゼ酵素源を添加して反応させればよい。
【0013】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、実施例は本発明の内容を何等限定するものではない。
【0014】
実施例1 炭酸カルシウム添加によるフィターゼの高発現誘導
1リットルあたりglucose 10g、(NH4)2SO4 3g、 MgSO4 0.5g、 KCl 0.5g, CaCl2 0.1g、FeCl3 0.135g、微量金属、イノシトール以外の各種ビタミン類、初期増殖のためにyeast extract 0.03g、唯一のリン酸源としてCalcium Phytate 0.6g、高発現誘導のためCaCO3 1gを含む培地を調製した。この培地30mlをバッフル付き三角フラスコに入れ、シュワニオミセス オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis) IFO 1840を植菌し、28℃で2日間培養した。対照として上記培地からCaCO3を除いた培地を使用して比較した。
培養の終わった培養液をamicon centricon 30 microconcentratorを用いて限外濾過することにより10倍に濃縮した後、透析した。透析された液のフィターゼ活性を以下のように測定した。即ち、透析された液100μlに基質水溶液(60mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)、 5mMフィチン酸ナトリウムを含む)900μlを加え、70℃で30分間反応した。反応終了後、反応液に5N H2SO4を100μl添加して反応を停止した。対照として基質を含むバッファー液に予め5N H2SO4 100μlを加えたものに酵素液を加えた画分を用意した。反応停止後、反応液を96穴マイクロタイタープレート上で1〜2048倍に希釈し、希釈液100μlあたり50μlのリン酸検出液(A液;1.47g/l マラカイトグリーン, 20% H2SO4: B液;7.5% Ammonium Molybdate: C液;11%(w/v) Tween20とし、使用直前にA液:B液:C液=50:12.5:1に混合したもの) を加え30分間振とう後、ABS620を測定した。1〜10nMの範囲のリン酸校正曲線により、得られた測定値から、放出されたリン酸量を決定した。フィターゼ活性の単位は1分間にリン酸を1μmole放出する活性を1unitとした。結果を図−1[図1]に示す。炭酸カルシウムを加えた誘導培地で培養した培養液中にはフィターゼ活性が検出され、炭酸カルシウムを加えない非誘導培地で培養した培養液からはフィターゼ活性は殆ど検出されなかった。
【0015】
実施例2 フィターゼ酵素活性の測定と分子サイズの測定
(1) 酵素の脱糖鎖
次に本発明者らは実施例1に記載の培養条件で誘導され、培地中に分泌・蓄積したフィターゼの酵素学的な性状を明らかにするために酵素の精製を試みた。
本酵素は糖蛋白であることが予備的な実験より明らかになった。この様な蛋白質は電気泳動で明瞭なバンドを与えにくいことが多い。そのため、電気泳動により単一のバンドを得るため、予めEndo Hにより脱糖鎖処理を行った。酵素の脱糖鎖は、酵素を終濃度10mMのCH3COONa(pH 5.2)、100mM 2−メルカプトエタノール、0.0025% SDSを含む溶液中で95℃で5分間処理して変性させた後ゆっくりと室温に戻し、蛋白量1ng当り4μUのEndo H(Endoglycosidase H)(Boehringer Mannheim Biochemica社製)を加え、37℃で1晩反応を行った。
尚、以下の実験で活性を測定するものと電気泳動する試料は、10mM CH3COONa(pH 5.2)の溶液に、蛋白量1ngあたり4μUのEndo Hを加え、37℃で1晩反応する処理を行った。
【0016】
(2) 粗酵素中の加水分解活性の検出と分子サイズの測定
実施例2でEndo Hによる脱糖鎖処理を行った粗酵素標品をNative PAGEにより電気泳動した。銀染色、及び加水分解活性染色を行い単一で加水分解活性を示すバンドを検出した。
加水分解活性染色は、電気泳動が終了したゲルを0.1% α−ナフチルホスフェート、0.2% ファーストガーネットGBC塩、0.6M 酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)の溶液中で一晩インキュベートした。その際加水分解活性のあるバンドは黒色のバンドとして検出される。上記バンドにあたるポリペプチドのフィターゼ活性を確認するためにこのバンドに当たるポリペプチドをフィチン酸ナトリウムと反応させ、生成するリン酸量及びミオ−イノシトール量を定量しフィターゼ活性を測定したところ、リン酸及びミオ−イノシトールの生成が認められた。
また、該ポリペプチドのSDS−PAGEで分子サイズを測定したところ、当該酵素の分子サイズは50kD±5kDであることが分かった(図−5[図5])。これはシュワニオミセス オキシデンタリスのフィターゼサブユニットとして既に知られているα、βサブユニットとは明らかに異なっていた。
さらに詳しく解析するためにこのポリペプチドを精製し、家兎に免疫し、アフィニティーカラムにより精製することで目的のポリペプチドに特異的な抗体を得た。該抗体を用いたウエスタンブロットの解析から、該抗体はシュワニオミセスオキシデンタリスのフィターゼサブユニットとして既に知られているα、βサブユニットとは明らかに分子サイズの異なる50kDのバンドと反応した。
以上のことから、炭酸カルシウムを加えた誘導培地で培養した際に培養液中に検出されるフィターゼ活性を有する酵素は、これまで知られていない新規のものであると結論した。
【0017】
実施例3 培養上清液からのフィターゼの精製
シュワニオミセス オキシデンタリスを実施例1に記載の培地20mlに植菌し、28℃で一晩培養した。培養後、培養液全量を2lの同一培地に無菌的に加え、28℃で2日間培養した。最終的に得られた培養液を遠心分離することにより培養上清約2lを得た。得られた培養上清はエバポレーターにより50〜60℃で200mlまで濃縮した後、濃縮液を透析した。この透析液を再びエバポレーターにより20mlまで濃縮し、透析した。得られた粗酵素溶液を10mlのQ−Sepharose fast flowカラム(ファルマシア社製)にアプライし、カラムを20mM Tris−HCl Buffer, pH 7.5, 50 mlにより洗浄した。溶出は、25、50、75、100、125、150、175、200mMのNaClを含む20mM Tris−HCl buffer, pH 7.5各20mlを順次流して行った。20ml毎に溶出液を分取し、各溶出画分を透析後、フィターゼ活性を測定した。
得られた酵素の至適pH、至適温度、温度耐性を調べた。
酵素の至適pHは、実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定を行い、その際20mM酢酸ナトリウムバッファーと20mMフタル酸バッファーを用い、活性測定中のPHを変えた。実験の結果、本酵素の至適pHはpH 2.7−5.0の範囲であることがわかった(図−2[図2])。
酵素の至適温度は、実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定を行い、その際酵素反応の温度を変化させた。実験の結果、本酵素の至適温度は約70℃であることがわかった(図−3[図3])。
酵素の温度耐性は、酵素を20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)中で30分間インキュベートした後、該処理酵素液を用いて実施例1に記載の活性測定法に準じて活性測定をして行った。その結果、酵素の残存活性は70℃で約90%、75℃で50%あった(図−4[図4])。
【0018】
実施例4 フィターゼによるミオ−イノシトールの生産
100 g/lのフィチン酸カルシウムを含む溶液(pH 4.0)に実施例3で精製されたフィターゼを8U/mlになるように添加し、50℃で反応を行った。蓄積したミオ−イノシトールは高速液体クロマトグラフィーにより定量した。結果を図−6[図6]に示す。
【0019】
実施例5 N末端アミノ酸配列の決定
精製した酵素をEndo Hにより脱糖鎖した後、Bio−Rad Prep−Cell Model 491 により脱糖鎖が不完全であるものを取り除いた。この酵素を12.5%のSDS−PAGEゲルにより泳動し、Sartorius blotting装置によりPVDFブロッティングメンブレンフィルター(イムノビロン;ミリポア社)へ電気泳動的に移した。メンブレンフィルターを洗浄した後、ポンソー試薬による発色で蛋白の位置を検出した。目的のバンドを切り出し、乾燥させた後、アミノ酸シークエンサー(島津製作所製)により分析を行った。結果を配列表の配列番号:1に示す。
【0020】
実施例6 V8 proteaseによる部分分解産物のN末端アミノ酸配列の決定
実施例2に記載の方法により脱糖鎖した50kDの分子サイズを示す酵素200−400μgをサンプルバッファー(125mM Tris−HCl(pH 6.8), 0.1% SDS, 10% グリセロールを含む)に溶解し、Staphyrococuus属細菌由来のV8(Glu−c)protease 1μgをprotease用バッファー(125mM Tris−HCl(pH 6.8), 0.1% SDS, 5% グリセロール)に溶解した。
17% SDS−PAGEゲルにまず酵素を溶解したサンプルをのせ、つぎにV8 proteaseを溶解したサンプルを静かに重層した。これを泳動し、Stacking gelとSeparation gelの境界付近にBPBマーカーが来たところで30分間泳動を止め、Proteaseと酵素を反応させた。その後、再び泳動し、部分分解した酵素のN末端アミノ酸配列を実施例4に記述した方法により決定した。結果を配列表の配列番号:2に示す。
【0021】
実施例7 フィターゼcDNAのスクリーニング
(1) 抗体の作製
実施例2(1)に記載の方法により脱糖鎖した50kDの分子サイズを示す酵素溶液(1mg/ml)100μlと完全アジュバンド(Freund Complete adjuvand)(DIFCO社製)100μlを混合してエマルジョン化し、これを接種液とした。
接種はうさぎの皮下に数回に分けて行い、2、4、6週間後に追免疫を行った。抗体価の上昇はELISA(Enzyme−linked immuno sorbent assay)法により免疫前に採取した血清と比較することにより観察した。
最終的に得られた血清は0.1gのCNBr−activated sepharose 4Bに1mgの脱糖鎖後の精製酵素をcouplingして作製したアフィニティーカラムにより精製した。
精製された抗体はウエスタンブロット法により、脱糖鎖後の粗酵素から50kD、及びその分解産物と思われる約30kDのバンドを示した。結果を図−7[図7]に示す。
【0022】
(2) フィターゼcDNAのクローニング
実施例4に記載の方法でOD660=1.0まで菌体を培養し、遠心集菌後、同時に沈澱するCaCO3を除くためpH3.5の酢酸ナトリウムバッファーで菌体を洗浄し、次に10mM Tris−HClpH 7.0により洗浄して菌体を得た。
得られた菌体は、液体窒素を用いて凍らせた後、海砂とともにすり鉢を使用して破砕した。この粉にQuick Prep mRNA purification kit(ファルマシア社)のextraction bufferを加え均一に混合した後、4℃、2000Gで遠心分離して上清を取り、全RNAを得た。この後、Quick Prep mRNA purification kitの使用法に従いmRNAを得た。以後、UniZAP cDNA Library kit(STRATAGENE社)を用いてcDNAを合成、GIGAPACK GOLD II(STRATAGENE社)を用いてパッケージングしてcDNAライブラリーを作製した。
IPTG誘導によりcDNAを発現させた50,000個のプラークをUniZAP cDNA Library kit(STRATAGENE社)の使用法に従いPVDFブロッティングメンブレン(イムノビロン;ミリポア社)に転写し、作製した抗体をプローブにスクリーニングを行った。得られたクローンのcDNAは、UniZAP cDNA Library kitの使用法に従い、IN VIVO EXCISIONによりbluescript SK−にサブクローニングした。得られた組換え大腸菌MT−10743は工業技術院生命工学工業技術研究所に受託番号:FERM BP−5108として寄託されている。サブクローニングされたcDNAの塩基配列を決定したところ配列表の配列番号:5に記載の通りであった。該塩基配列には、配列表の配列番号:3及び4に記載のDNA塩基配列がそれぞれ第11−34番目と第377−400番目に存在することが確認された。
【0023】
実施例8 フィターゼゲノムDNAのクローニング
5ml YEPD培地(10% Yeast extract、 20% ポリペプトン、20% グルコースを含む)にシュワニオミセス オキシデンタリスを1白金耳植菌し、30℃で一晩培養し、この培養液を1lのYEPD培地に無菌的に植菌した。これをOD660=5.0まで培養し、2000gで遠心分離して菌体を得た。得られた菌体を30mlのlysis buffer(1M Sorbitol, 25mM EDTA, 50mM MES(pH 5.5), 4mg/ml Novozyme234;Novo BioLabs, 20mg/ml Zymolyase;Seikagaku) に懸濁して30℃で1時間インキュベートした。プロトプラスト化を確認後、 Dietyl pyrocarbonate 500μl, 0.5M EDTA 1.2ml, 0.2M Tris base 1.6ml, 10% SDS 1.6mlを加え、よく混合した後4℃で30分間静置した。
その後、5M 酢酸カリウムを3.5ml混合し、2000g、10分間の遠心分離を行い、上清を得た。等量のフェノール/クロロホルムで3回処理をした後、等量の2−プロパノールを加え、−20℃で2時間静置した。その後、3000gで10分間遠心分離した後、沈澱を70%エタノールで2回洗浄し、乾燥後2mlのTE bufferに溶かした。これに1/100容量の1mg/ml RNase Aを加え、37℃で30分間インキュベートした。
等量のフェノール/クロロホルムで2回処理を行った後、1/10容量の3M 酢酸ナトリウムを加え、2倍容量のエタノールを加えて−20℃で2時間静置した。
得られたDNAを制限酵素Sau3AIで部分分解し、9−23kb断片を用いてLAMDA EMBL3/BamH I VECTOR KIT(STRATAGENE社製)の使用法に従いゲノムライブラリーを作製した。
作製したゲノムライブラリーを用いてLAMDA EMBL3/Bam HI VECTOR KIT ;STRATAGENEの使用法に従い目的のフィターゼをコードする遺伝子を含むフラグメントをクローニングした。プローブには実施例7で得られたcDNAを用いた。
得られたフラグメント中の約5.3 kbのXhoI断片をベクタープラスミドYEp24のsalI部位にサブクローニングし、YEpGPH 1を作製した(図−8[図8])参照)。尚、プラスミドYEp24はアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)ATCC−37051から常法により抽出した。
【0024】
実施例9 シュワニオミセス オキシデンタリス由来フィターゼ分泌酵母の育種 Itoらの方法(Ito,H., Y.Jukuda, K.Murata, and A.Kimura,J.Bacteriol.,Vol.153,p.163−168,(1983).)に従い実施例8で得られたプラスミド(YEpGPH 1)を用いてサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)W303−1B株(Matα ade2−1 his3−11,15 leu2−3,112 ura3−1 trp1−1 can1−100)の形質転換を行った。その結果、形質転換株MT−40539が得られた。形質転換株MT−40539は受託番号FERM BP−5109として工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託されている。形質転換株MT−40539とYEp24を実施例1に記載の培地に必要なアミノ酸(20mg/l adenine, 20mg/l histidine, 30mg/l leucine, 20mg/l tryptophan)を加えた培地で培養し、培養菌体のフィターゼ活性を測定したところ、MT−40539はYEp24で形質転換したサッカロミセス セルビッシェW303−1B株よりも高いフィターゼ活性を示した。また、MT−40539培養上清中に、ウエスタンブロット法により、実施例7(1)で作製した抗体で認識される蛋白質が検出された。結果を図−9[図9]に示す。
【0025】
【発明の効果】
本発明のフィターゼは1種類のポリペプチドによって構成される酵素であって、これにより、これまで2種類のポリペプチドを生産しなければならなかった他のフィターゼと比較して経済的に有利な酵素生産、ミオ−イノシトール生産が可能となる。
また、本発明のフィターゼは高い至適温度および高い耐熱性を有しているため、従来技術では使用できなかった温度範囲での酵素反応が可能になる。
また、この酵素をコードする遺伝子をクローニングすることにより酵素の大量生産、変異技術(例えば部位特異的突然変異誘発など)で本発明の方法で生産した野生型または組換えフィターゼとは性質(最適pH、最適温度、熱安定性、対溶媒安定性、比活性、基質親和性、分泌能、翻訳速度、転写制御など)の異なるフィターゼ(第二世代酵素)の作出を容易にする。
また、この遺伝子は類似の性質を持つフィターゼのスクリーニングにも利用することが出来る。
また、本発明によれば、より効率的なミオ−イノシトールの生産が可能となる。
【0026】
【配列表】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】シュワニオミセス オキシデンタリスの培養液中に含まれるフィターゼ活性の経時変化を示す図である。黒丸はCaCO3を含まない低リン酸フィターゼ誘導培地での培養液中のフィターゼ活性の変化を示し、白丸はCaCO3を含む低リン酸フィターゼ誘導培地での培養液中のフィターゼ活性を示している。
【図2】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの各pHにおける相対活性を示す図である。活性は20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH 4.4)中で反応を行った場合の活性を100%とした相対活性を示し、黒丸は反応に20mM酢酸ナトリウムバッファーを用いた場合、白丸は20mMフタル酸バッファーを用いた場合の活性を示す。
【図3】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの活性に対する温度依存性を示す図である。活性は70℃での値を100とした相対活性で示される。
【図4】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼの温度耐性を示す図である。値はインキュベート前の活性を100%として相対活性で示した。
【図5】シュワニオミセス オキシデンタリス由来の50kD±5kDの精製フィターゼをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動した場合の電気泳動写真である。レーン1は分子サイズマーカーH(BIORAD)、レーン2は分子サイズマーカL(BIORAD)、レーン3は脱糖鎖前の精製酵素、レーン4は実施例2に示す方法で脱糖鎖した精製酵素、レーン5はEndo Hを20 unit使用して脱糖鎖を行った精製酵素、レーン6はEndo H反応前に行う変性処理を行わずに20unitのEndo Hにより脱糖鎖を行った精製酵素、レーン7はEndo Hのみをそれぞれ泳動したものであることを示している。
【図6】精製酵素による反応後の反応液中のミオ−イノシトールの蓄積濃度の経時変化を示す図である。
【図7】シュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清及び菌体破砕物のウエスタンブロット法による解析を示す電気泳動写真である。レーン1は分子サイズマーカL(BIORAD社)、レーン2及び3はそれぞれEndo H処理を施した培養上清及び菌体破砕物のSDS−PAGE、レーン4及び5は同泳動条件における培養上清及び菌体破砕物のウエスタン解析をそれぞれ示している。
【図8】YEp24およびYEpGPH 1のプラスミドマップを示す。
【図9】MT−40539の培養上清の銀染色法およびウエスタンブロット法による解析を示す電気泳動写真である。レーン1及びレーン6は分子サイズマーカL(BIORAD社)、レーン2及びレーン7はシュワニオミセス オキシデンタリスの培養上清より精製したフィターゼをEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプル、レーン3及びレーン8は空きレーン、レーン4及びレーン9はサッカロミセス セルビッシェW303−1B株にYEp24を形質転換した菌体の培養上清をEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプル、レーン5及びレーン10はMT−40539の培養上清をEndo Hにより脱糖鎖を行ったサンプルをそれぞれ示している。
Claims (26)
- フィチン酸塩をミオ−イノシトールまで加水分解することができ、70℃以下の温度で30分間の熱処理で少なくとも90%の残存活性を有し、脱糖鎖後の分子サイズがSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである単一のサブユニットよりなるフィターゼ。
- 微生物由来であることを特徴とする請求項1に記載のフィターゼ。
- 微生物が酵母であることを特徴とする請求項2に記載のフィターゼ。
- 酵母がシュワニオミセス属(Schwanniomyces)に属する酵母であることを特徴とする請求項3に記載のフィターゼ。
- シュワニオミセス属に属する酵母がシュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)であることを特徴とする請求項4に記載のフィターゼ。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)を培養することにより誘導的に発現されることを特徴とする請求項5に記載のフィターゼ。
- 該酵素が弱酸のカルシウム塩を含み、リン酸源濃度の低い培地でシュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)を培養することにより誘導的に発現されることを特徴とする請求項6に記載のフィターゼ。
- 弱酸のカルシウム塩がCaCO3である請求項7に記載のフィターゼ。
- 少なくとも配列番号:1および/または配列番号:2のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載のフィターゼ。
- 配列表の配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項9に記載のフィターゼ。
- 大腸菌(Escherichia coli)FERM BP-5108により生産されるフィターゼ。
- サッカロミセスセルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)FERM BP-5109により生産されるフィターゼ。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の遺伝子であり、脱糖鎖後の分子サイズがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである請求項1に記載のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子。
- 遺伝子のDNA配列が配列表の配列番号:5に記載のアミノ酸配列をコードするDNA配列である請求項13に記載の遺伝子。
- 配列表の配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5に記載のDNA配列のうち、少なくとも1種のDNA配列を含む請求項14に記載の遺伝子。
- DNA配列が配列表の配列番号:5に記載のDNA配列である請求項15に記載の遺伝子。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の遺伝子であり、脱糖鎖後の分子サイズがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである請求項1に記載のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミド。
- 請求項13に記載のフィターゼサブユニットをコードする遺伝子を有する組換えプラスミドYEpGPH 1。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の遺伝子であり、脱糖鎖後の分子サイズがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである請求項1に記載のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドにより形質転換された微生物。
- 微生物が大腸菌(Escherichia coli)である請求項19に記載の微生物。
- 請求項1記載のフィターゼを生産する大腸菌(Escherichia coli)FERM BP-5108。
- 微生物が酵母である請求項19に記載の微生物。
- 酵母がサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomycescerevisiae)である請求項22に記載の微生物。
- 請求項1記載のフィターゼを生産するサッカロミセス セルビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)FERM BP-5109。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の遺伝子であり、脱糖鎖後の分子サイズがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである請求項1に記載のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドにより形質転換された微生物を培養して得られた培養液或いは菌体の処理物。
- シュワニオミセスオキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)由来の遺伝子であり、脱糖鎖後の分子サイズがSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で50kD±5kDである請求項1に記載のフィターゼのサブユニットをコードする遺伝子を含む組換えプラスミドにより形質転換された微生物を培養して得られた培養液、菌体あるいは菌体の処理物を用いて、フィチン酸塩をミオ−イノシトールに変換する方法。
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