JP3570737B2 - リステリア検出のための方法および試薬 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、リステリア(Listeria)属の細菌、とくにリステリア・モノシトゲネス(L. monocytogenes)、の検出のための試薬および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リステリア属の細菌はグラム陽性の桿状菌で広範に分布している。この属には次の7菌種、L. monocytogenes、L. ivanovii、L. seeligeri、L. welshimeri、L. innocua、L. murrayiおよびL. grayiがある。このうち、L. monocytogenesのみがヒトに対して病原性を有していて、とくに新生児、妊婦および高齢者、さらに免疫抑制の対象となる患者を脅かす。L. monocytogenes感染による死亡もしばしばみられる。
【0003】
汚染された食物では、この細菌は4℃付近の低温においても増殖することができ、しばしばリステリア感染の原因となる。すなわち、種々のリステリアの流行が汚染された食物、例えば生乳、チーズまたはコールスローなどの摂取によって起きている。したがって、リステリアの、とくに食物や臨床試料中におけるリステリアの迅速な検出法が危急に求められている。これらの検出法は、加えてL. monocytogenesとヒトに対して非病原性の他の菌種とを識別できるものでなくてはならない。さらに、ヒトに病原性示す菌種であるL. monocytogenesの全ての変種株の検出が可能でなければならない。最近の考察の結果、L. monocytogenesによる汚染の可能性を調べるための指示菌としてL. innocuaを用いることが提案された。したがって、L. innocuaの検出もまた、きわめて有用である。
【0004】
L. monocytogenesの検出は、微生物の培養を基礎とする既知の方法を用いて行うことができる。Int. J. Food Microbiol. 4、 249−256、 1987に記載の方法は、2週間を要する。いくらか速い方法が国際酪農連盟(International Dairy Foundation (IDF))によって推奨されたが、それも少なくとも6〜8日かかる。両方法とも時間がかかるために、迅速な同定法としては不適である。加えて、単離コロニーを得るために栄養培地に繰り返して接種しなくてはならないこと、続いて単離コロニーを生化学的および血清学的な検査手法を用いて特徴づけしなければならないことから、両方法はきわめて手間がかかる。
【0005】
近年市場に出てきた免疫学的試験法は2、3時間しか要しないが、リステリアの異なる菌種間の重要な違いを区別することができない。これらの方法においてもまた、増殖富化のための前培養に2日間を要する。
【0006】
Appl. Environ. Microbiol. 54、 2933−2937、 1988に記載の方法では、合成オリゴデオキシリボヌクレオチドプローブを用いてL. monocytogenesが特異的に検出される。しかし、用いられるプローブはヒトに対して非病原性の菌種であるL. seeligeriとも反応することから、充分に特異的ではない。細菌の前増殖がこの場合にも必要とされる。すなわち、食物試料、あるいはそれらの希釈物を寒天プレートに塗布して、次いでそれらプレートをインキュベートしてから、放射性標識したDNAプローブを用いるコロニーハイブリダイゼーション手法によって調べる。検出はオートラジオグラフィーによって行われる。この方法も人手と時間がかかる。
【0007】
L. monocytogenesのiap(invasion−associated protein、侵入関連タンパク質)遺伝子のDNA配列は、Infect. Immun. 58、 1943−1950、 1990に記載されている。この遺伝子は、全リステリア菌種の変株にみられるp60としても知られているタンパク質をコードするものである。L. monocytogenesにおいて、このタンパク質は動物細胞への侵入能に関係している。この遺伝子からの構成配列を有するポリヌクレオチド(400塩基)は、L. monocytogenesを他の菌種から識別するためのDNAプローブとして適している。
【0008】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって核酸のインビトロ複製がなされ、こ方法を用いる場合は前培養は一般に不要である。反応を開始するために、短い核酸断片(プライマー)が必要であって、プライマーは複製されるゲノムの部分に包含される。通常、二つのプライマーが要求され、そのそれぞれがひとつの核酸鎖とハイブリダイズする。したがって、プライマーのひとつは遺伝子の関連部分に対して相補的な配列を有する。これらプライマーの選択によって、検出反応の特異性が決定される。L. monocytogenesの検出のためのこのプロセスの使用は、Appl. Environmental Microbiology 57、 606−609、 1991、Letters Appl. Microbiol. 11、 158−162、 1990およびJ. Appl. Bact. 70、 372−379、 1991に記述されている。これらプロセスの詳細についてのより広範な情報は、これら文献にみられる。これらDNAプライマーは、リステリア溶血素であるリステリオリシンの遺伝子に結合する。これらプライマーの特異性は不確かであり、J. Appl. Bact. 70中にはL. seeligeniはL. monocytogenesから確実には識別できないという言及がみられる。このように、L. monocytogenesの確実な検出はPCR法の使用では可能ではない。
【0009】
L. monocytogenesp60に対するポリクローナル抗体は、他の非病原性のリステリア菌種のp60タンパク質とも反応する。したがってそのような抗体は免疫学的方法でL. monocytogenesを特異的に検出するには適していない。明らかに、この性質の多価抗血清を阻害抗体画分の特異的吸収によって精製することは原理的に可能である。この目的のために、他の全リステリア菌種からのp60タンパク質を担体に共有結合させる。不要な抗体画分を特異的に吸収させることができ、このようにして残った抗血清はL. monocytogenesからのp60タンパク質とだけ反応しない。L. monocytogenes特異性血清を得るためのこの方法は手がこんでいる。かなり多量の多価抗血清が出発材料として要求され、さらに、種々のリステリア菌種のp60iap遺伝子産物が必要である。p60タンパク質に対するモノクローナル抗体の獲得ではこのような大量の材料を必要としないだろうが、特定のエピトープに対する抗体を生じさせることは偶然による。まず第一に、大量の抗体産生細胞クローンを調製することが必要であり、それから適当なクローンを選択しなければならない。これまで、L. monocytogenesに特異的なエピトープに対する抗体を目的の方法で得ることは可能ではなかった。L. innocuaに特異的なエピトープに関しても同様である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リステリア属の細菌を識別するため、とくにL. monocytogenes菌種の細菌を検出するための、改良された試薬および方法を提供することにある。とくに、本発明によれば、PCR法に適するプライマー配列、および菌種L. monocytogenesとL. innocuaとの免疫学的な検出に適する特異的抗体の目的生産のためのペプチドが提供される。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、核酸複製のための、例えばポリメラーゼ連鎖反応などの方法でiap遺伝子から選択されたプライマーに関し、プライマーは構成配列として一般式Ia〜Ihのひとつによる少なくともひとつの配列および/またはそれに対応する相補的配列を含み、20個までのさらなるヌクレオチド部分をこの構成配列の前方および/または後方に結合することができることを特徴とする。そのようなプライマーは、リステリア属、とくにL. monocytogenes菌種を含む細菌のPCR法による検出および識別のために適している。
これに関連して、式IIa〜IIhの少なくともひとつによる配列および/またはそれに対応する相補的配列を含むプライマーがとくに好ましい。
本発明は、加えて、式IIIa〜IIIiのひとつによる少なくともひとつの配列を構成配列として含むペプチドに関し、それぞれの場合、7個までのアミノ酸をペプチド結合によってこの構成配列の前方および/または後方に結合させることが可能である。
これに関連して、第2a−i図および第6a−d図のひとつによる配列を有するペプチドがとくに好ましい。
【0012】
本発明はまた、式IIIa〜IIIiのひとつによる構成配列を有する、該ペプチドのひとつの、免疫原性抱合体の調製のための使用に関する。第2a−iおよび第6a−dのひとつによる配列を有するペプチドがこの目的のためにとくに好ましい。
【0013】
本発明はまたエピトープに結合する抗体に関し、これは第3図によるポリペプチドから形成されるか式IIIa〜IIIiのひとつ、好ましくは第2a−iおよび第6a−dによるペプチドを含む。
【0014】
本発明はさらに、第3図によるポリペプチドまたは第3図によるポリペプチドから選択される7〜24個のアミノ酸を有するペプチドを含む免疫原性抱合体を用いて実験動物を免疫することによって調製することができる抗体に関する。
【0015】
本発明はまた、実験動物を免疫原で免疫して抗体を単離することによるリステリアからのp60タンパク質に対する抗体の調製法であって、第3図によるポリペプチドまたは第3図によるポリペプチドを含む免疫原性抱合体を免疫原として用いることを特徴とする。これに関連して、免疫原性抱合体は、第3図によるポリペプチドから選択される7〜24個のアミノ酸を有するペプチドを含むか、式IVa〜IViのひとつによるペプチドを含むことが好ましい。
【0016】
式中X3およびX4は、それぞれ独立して水素、任意のアミノ酸または7個までのアミノ酸を含む任意のオリゴペプチドである。
第2a−i図および第6a−d図のひとつによる配列を有するペプチドがとくに好ましい。
【0017】
最後に、本発明は、式Ia〜Ihのひとつによる構成配列または好ましくは式IIa〜IIhのひとつによる配列または関連の相補的配列を含むプライマーの、リステリア属細菌の検出のための使用に関する。
【0018】
本発明はまた、式Ia〜Ihのひとつによる構成配列または好ましくは式IIa〜IIhのひとつによる配列または関連の相補的配列を含むプライマーを用いることによる、リステリア属細菌を検出する方法に関する。
【0019】
本発明はさらに、第3図によるポリペプチド配列からのエピトープに対する、または第2a−i図または第6a−d図のひとつによるアミノ酸配列を有するエピトープのひとつに対する抗体の、リステリア属細菌の検出のための使用に関する。
【0020】
本発明はまた、第3図によるポリペプチド配列からのエピトープに対する、または第2a−i図または第6a−d図のひとつによるアミノ酸配列を有するエピトープのひとつに対する抗体を用いることによる、リステリア属細菌の検出法に関する。
【0021】
最後に、本発明は、式Ia〜Ihのひとつによる構成配列または好ましくは式IIa〜IIhのひとつによる配列または関連の相補的配列を含むプライマーを含む、例えばポリメラーゼ連鎖反応による核酸の複製による、リステリア属細菌、とくにL. monocytogenes菌種の検出のための試験キットに関する。
【0022】
本発明はさらに、第3図によるポリペプチド配列からのエピトープ、または第2a−i図のひとつによるアミノ酸配列を有するエピトープのひとつに対する抗体を含むリステリア・モノシトゲネス菌種の細菌の免疫学的検出のための試験キット、および第6a−d図のひとつによるアミノ酸配列を有するエピトープに対する抗体を含むリステリア・イノキュア菌種の細菌の免疫学的検出のための試験キットに関する。
【0023】
本発明は、後記によってより詳細に説明される。これに関連して、当業者に公知であって文献に詳細が記述されているような生化学的、免疫学的および分子生物学的方法の詳細については、一般にはここには記述しない。これら方法において、自体公知の変法もまた使用できるが、その詳細はここには記述しない。
【0024】
式Ia〜IhおよびIIa〜IIhによって表される本発明によるオリゴヌクレオチドは、核酸複製法のためのプライマーとして、したがって、リステリア属細菌の特異的検出のために、適している。これらの配列は、通常の方法、すなわち5′末端から3′末端の方向に記述されている。いかなる場合も用いられる複製システムの要求に応じて、本発明による配列を有するデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドが用いられる。後者の場合、チミジン部分はそれぞれウリジンによって置き換えられる。さらに、核酸配列中のひとつまたは2、3個の塩基が置き換えられても生物学的性質に変化がないことがしばしばあることは当業者に公知である。この理由のために、本発明によるヌクレオチド配列もまた、配列Ia〜IhおよびIIa〜IIhからの塩基置換に由来し、その生物学的効果はオリジナル配列を有するそれぞれのプライマーと同様である、ヌクレオチド配列からなる。通常、ひとつのプライマーはそれぞれDNA鎖のひとつと反応することから、プライマーのひとつは相補的配列で用いられる。相補的配列は、塩基対合のルールによって既知の方法で得られる。
【0025】
各配列に基づいて、本発明によるオリゴヌクレオチドは、例えばホスホトリエステル法やホスホアミダイト法などの当業者に公知の方法によって合成することができる。ホスホアミダイト法は、とくに機械化された合成機による方法が好ましく用いられる。この方法は、Tetrahedron Lett、 22、 1859−1862、 1981に記述されている。同様の合成法のさらなる詳細は、例えばWinnacker、 E. L. (1985)、 Gene und Klone [Genes and Clones]、 44−61 (VCH−Verlagsgesellschaft mbH、 Weinheim)に記述されている。
【0026】
本発明によるプライマーは、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いるDNA複製に適している。この目的のために、DNAをまず最初に加熱によって1本鎖に解離する。二つのプライマーを用いてそれぞれDNA鎖のひとつの上の相同的DNAセグメントとそれぞれハイブリダイズさせる。これら二つのプライマーの間にあるゲノムセグメントが複製される。DNAに付いたプライマーは、複製の開始点を表す。次いで、四つのヌクレオチド三燐酸の存在下でポリメラーゼ、好ましくはtaqDNAポリメラーゼによって、オリジナルDNAの配列に対応する第二の鎖が完成される。次いで、生じた2本鎖を、再び加熱によって1本鎖に分離する。この複製サイクルは、何回も繰り返すことができる。充分な回数の複製サイクルの後に、複製された核酸を既知の方法によって検出することができる。この目的のために、DNAを電気泳動によって分離して、次いで臭化エチジウムによって染色し、最後にUV励起を用いる蛍光によって検出することができる。DNAハイブリダイゼーションを用いる検出もまた、可能である。適当な複製および検出法の詳細もまた、Innis et al. (eds.)、 PCR Protocols (Academic Press、 Inc.、 Harcourt Brace Jovanovich、 Publishers)などの総説に記述されている。本発明によるプライマーを用いることができる他の核酸複製法についてもまた、文献から知ることができる。これらには、Bond、 S.らによって記述されているリガーゼ連鎖反応が含まれる。
【0027】
好ましい式IIa〜IIhによるプライマーの選択によって、iap遺伝子上の開始点の位置が、すなわち、検出反応の特異性が決まる。このように、iap遺伝子の配列から選択されたプライマーの組み合わせは非特異的であり、その結果、DNA複製によるリステリア検出には不適当であることが証明された(これに関連して、例えば、表1のF欄を参照されたい)。しかし、他の選択された組み合わせはリステリア属に、他のものはリステリア菌種グループに、他のものはまた個々のリステリア菌種に、それぞれ特異的であることが証明された。したがって、結論として、プライマーの選択と構成が決定因子となる。二つのプライマーのひとつの選択はとくに常に重要で、第二番目のプライマーは検出反応の特異性を有意に変えることなくより容易に変更することができる。したがって、本発明の教示によれば、この第二のプライマーのために、式Ia〜IhまたはIIa〜IIhのひとつに対応しない配列を選択することも可能である。
【0028】
本発明によると、プライマーの少なくともひとつが式Ia〜Ihまたは好ましくは式IIa〜IIhから選択される。既に説明したように、第二のプライマーは第一のプライマーよりも複製反応の特異性への影響が実質的に少ない。しかし、両プライマーが式Ia〜IhまたはIIa〜IIhから選択される組み合わせが好ましい。このような好ましい組み合わせの例は次のようなものである(典型的な結果を表1に要約する)。
【0029】
a) 式IIcによるプライマーと式IIbによる相補的配列のプライマーとの組み合わせを用いる場合、リステリアのDNAのみが複製されて他のタイプの細菌のDNAは複製されない(表1のD欄を参照されたい)。
【0030】
b) 式IIdによるプライマーと式IIbによる相補的配列のプライマーとの組み合わせを用いる場合、L. monocytogenesのDNAのみが複製されて他のリステリアまたは他の細菌のDNAは複製されない(表1のB欄を参照されたい)。
【0031】
c) 式IIfによるプライマーと式IIbによる相補的配列のプライマーとの組み合わせを用いる場合、特定のリステリア菌種のDNAのみ、すなわち、L. seelingeri、L. welshimiriおよびL. ivanoviiのDNAが排他的に複製される。この結果、グループ−特異的検出が可能になる(表1のE欄を参照されたい)。 d) グループ−特異的検出の他の例としては、式IIhによるプライマーと式IIbによる相補的配列のプライマーとの組み合わせの使用によって、L. grayiおよびL. murrayiのDNAのみが複製される(表1のG欄を参照されたい)。 e) 異なるリステリア菌種の複製産生物は、種々の分子量を有することから、リステリア属の細菌は、いくつかのプライマー(式IId、IIf、IIgおよびIIhによる)と式IIbの相補的配列のプライマーとの組み合わせによって、単一のポリメラーゼ反応を用いて区別することができる。ポリメラーゼ手法のこのさらなる展開の詳細は実施例8から明かである(表1のH欄および第1図を参照されたい)。
【0032】
既述したように、核酸ハイブリダイゼーションによって複製産生物を検出することもまた、可能である。これを行うために、適当な核酸断片(核酸プローブ)を反応混合物に複製後に加える。これら核酸プローブは、複製された遺伝子セグメントと完全にまたは部分的に相補的な塩基配列を有している。加えて、これらプローブは、検出反応のために標識されている。すなわち、これらは放射性同位元素を含むか、蛍光標識を有するか、または酵素で標識することができる。適当な標識剤、核酸プローブへのそれらの導入法および検出方法は、当業者に公知のものである。
【0033】
とくに、複製反応はリステリア属に(より詳細は上記a)に記述)、またはリステリア菌種のグループ(より詳細は上記c)およびd)に記述)に特異的にデザインすることができる。それぞれひとつの菌種に特異的な核酸プローブを用いることによって、リステリアのこれら菌種の存在が反応混合物中に確認される。プローブに異なる標識剤が含まれる場合には、異なる菌種もまた並行して検出することができる。したがって、この方法の変法によって、上記のe)に記述の方法と同様にして異なるリステリア菌種が並行して検出できる。
【0034】
ひとつの核酸プローブまたは全リステリア菌種の複製産生物と反応する異なる核酸プローブの混合物の使用によって、複製反応の特異性のチェックまたは異なるリステリア菌種のための単一の検出試薬の調製が可能になる。
【0035】
式IVa〜IViによるおよび第2a−i図および第6a−d図による、本発明によるペプチドを免疫原性抱合体に取り込むことができる。これら抱合体を用いて、リステリア属の細菌を免疫学的手法を用いて特異的に検出するための抗体を生産することができる。
【0036】
リステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質の全体の配列における本発明によるペプチドの位置は、次のように記述される。
【0037】
a) 式IIIaによる配列は、p60配列の148位のプロリンで始まり(第4図)、第2a、2eおよび2f図によるペプチドもまたこの領域に位置している。
【0038】
b) 式IIIbによる配列は、p60配列の178位のスレオニンで始まり(第4図)、第2bおよび2h図によるペプチドもまたこの領域に位置している。 c) 式IIIcによる配列は、p60配列の243位のアラニンで始まり(第4図)、第2cおよび2i図によるペプチドもまたこの領域に位置している。
【0039】
d) 式IIIdによる配列は、p60配列の292位のグルタミンで始まり(第5図)、第2d図によるペプチドもまたこの領域に位置している。
【0040】
e) 式IIIeによる配列は、p60配列の71位のバリンで始まり(第4図)、第2g図によるペプチドもまたこの領域に位置している。
【0041】
第6a−d図に示された本発明によるペプチドの配列は、リステリア・イノクラからのタンパク質p60の全配列に由来する。これは式IIIf−iおよび式IVf−iに示された部分配列についても同様である。
【0042】
ペプチド中のひとつまたは二、三のアミノ酸の変化はその生物学的性質を変えないことがしばしばあることは当業者に公知である。この理由によって、本発明によるペプチドもまた、アミノ酸交換によって、第2a−i図による、第6a−d図による、または第3図による配列に由来し、オリジナル配列を有するそれぞれのペプチドと同様の効果を生物学的に示すものを含む。
【0043】
本発明によるペプチドの選択は決定的に重要であることは明かである。例えば、L. monocytogenesに特異的な遺伝子セグメントによってコードされる特定のペプチドが抗体産生に選択されると、驚いたことに、どの抗血清もp60タンパク質との反応を示さない。
【0044】
アミノ酸配列に基づいて、当業者に公知の方法によって、例えばtbocまたはfmoc(tert−ブチルオキシカルボニル、または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)法によって、合成することができる。これらの方法の詳細は、例えば、J. Am. Chem. Soc. 85、 2149−2154、 1963およびSynthetic Polypeptides as Antigens (Van Regenmortel et al (eds.) Elsevier 1988 (Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biologyシリーズ第9巻)などに記述されている。fmoc法、とくにその機械化された変法が好ましい。方法の詳細および適当なアミノ酸保護基は当業者に公知である。
【0045】
一般にペプチドは抗体の産生に適していない。しかし、ペプチドを高分子量の担体物質に結合させれば、免疫原性の抱合体が形成される。本発明によるペプチドは、既知の担体物質と抱合させることができる。それらには、ポリエチレングリコール、血清アルブミン、KLH(keyhole limpet ヘモシアニン)、卵白アルブミン、バチルス・メガテリウムからのグルコースデヒドロゲナーゼおよびPPD(ツベルクリンの精製タンパク質誘導体)などがある。好ましい担体物質は、KLHおよびバチルス・メガテリウムからのグルコースデヒドロゲナーゼである。
【0046】
この他に、架橋化合物(リンカー)もまた、しばしば用いられる。これらは、少なくとも二つの架橋できる官能基を有する低分子量有機化合物である。適当な化合物は当業者に公知であるが、例えば、1、2−ジアミノエタン、コハク酸、β−アラニン、1、6−ジアミノヘキサン、6−アミノカプロン酸、アジピン酸およびシステインなどがあげられる。システインはリンカーとして好ましく用いられ、このアミノ酸残基はペプチド合成中に取り込まれる。アミノおよびカルボキシル基の両方を含むリンカー(例えば、β−アラニン、6−アミノカプロン酸またはシステイン)は、ペプチドのC−末端またはN−末端のいずれにも結合することができる。m−マレイミド安息香酸N−ヒドロスクシンイミドエステル(MBS)は、ペプチドと担体物質間の結合を調製するために好ましく用いられる。
【0047】
該免疫原性抱合体は、既知の方法による実験動物における抗体の産生に用いられる。通常、この目的のためにはヒツジ、ヤギ、ウサギおよびマウスなどの哺乳動物が用いられる。ポリクローナル抗体の産生にはウサギが好ましい。しかし、本発明による免疫原性抱合体を用いてモノクローナル抗体を産生することもまた可能である。
【0048】
免疫学的方法の詳細は当業者に公知である。加えて、これらの方法を実施するための手順は、文献に既述されており、その例を以下にあげる。
Antibodies、 H. Harlow and D. Lane、 Cold Spring Harbor (1988)
Woodard、 L.F. and Jasman、 R.L. (1985) Vaccine 3、 137−144
Woodard、 L.F. (1989) Laboratory Animal Sci 39、 222−225
Handbook of Experimental Immunology (1986) Weir、 D.M. et al. eds.:
Blackwell Scientific Publications、 Oxford、 GB.
これらの方法には、例えば、抱合および免疫方法、さらに抗体の調製および精製、また免疫学的検出法なども含まれる。本発明による抗体を用い得る免疫学的検出法には、好ましくは凝集法、免疫度検出法、イムノブロット法およびとくにサンドイッチELISA法などが含まれる。
【0049】
本発明においては、抗体の概念には、免疫グロブリンと抗血清の両方が包含される。さらに、単一のエピトープに対する単一の抗体の代わりに特異性を異にする種々の抗体の混合物がしばしば用いられることは、当業者に公知である。これは、とくに検出感度に関して有利な結果となる。これはとくにモノクローナル抗体に適用されるが、また、それぞれひとつのエピトープに対する他の抗体についても適用される。したがって、式IIIa〜IIIiによる、または第3図、第2a−i図または第6a−d図のひとつによる異なるペプチド構造に対する複数の抗体を、本発明による使用および/または本発明による方法のために組み合わせることは有利と考えられる。
【0050】
【実施例】
本発明によるプライマーおよびペプチドの調製、さらにそれらの使用に関する詳細を次の実施例によって明らかにする。当業者はさらなる方法の詳細を引用文献に見出だすことができる。実施例は本発明の内容を説明するものであって、本発明を制限することを意図するものではない。
実施例1: 式IIaによるプライマーの調製
式IIaによるプライマーを、アプライド・バイオシステムズの380A型DNA合成機を用いてホスホアミダイト法によって調製する。この方法の要点はTetrahedron Lett 22、 1859−1862、 1981に記述されている。さらなる詳細は、機器製造業者によって提供される文献に見出される。
【0051】
式IIc、IId、IIf、IIgおよびIIhによるプライマーを対応する方法によって調製する。式IIbおよびIIeによるプライマーを、それぞれの相補的配列(IIb:TTGGCTTCGGTCGCGTAGAATTCATA;IIe:GCACTTGAATTGCTGTTATTG)に調製する。
実施例2: L. monocytogenesの菌種特異的検出のためのPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IIdおよびIIeによるプライマー(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を55℃の温度で30秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で1分間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)を45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0052】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩(それぞれ50mM)の泳動緩衝液中でポリアクリルアミドゲル(6%)上で分離する。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0053】
PCR産生物は、L. monocytogenesからのDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のA欄を参照されたい)。
実施例3: L. monocytogenesの菌種特異的検出のためのPCR反応の実施
式IIdおよびIIeによるプライマーの代わりに式IIdおよびIIbによるプライマー(実施例1を参照)を用いて、実施例2に記述の方法を繰り返す。この場合もまた、PCR産生物は、L. monocytogenesからのDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のB欄を参照されたい)。
実施例4: リステリア属細菌の属特異的検出のためのPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの水に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IIcおよびIIbによるプライマー(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を56℃の温度で30秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で2分間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)をそれぞれ45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0054】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩(それぞれ50mM)の溶出緩衝液中でアガロースゲル(1%)上で分離する。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0055】
この場合、PCR産生物はリステリア属の細菌からのDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のD欄を参照されたい)。
実施例5: リステリアのグループ特異的検出のためのPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの水に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IIfおよびIIbによるプライマー(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を58℃の温度で45秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で1分間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)を45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0056】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩(それぞれ50mM)の溶出緩衝液中でアガロースゲル(1%)上で分離する。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0057】
この場合、PCR産生物は、L. ivanovii、L. seeligeriおよびL. welshimeri群からの細菌のDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のE欄を参照されたい)。
実施例6: L. innocuaの菌種特異的検出のためのPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IIgおよびIIbによるプライマー(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を62℃の温度で60秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で45秒間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)を45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0058】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩の溶出緩衝液(それぞれ50mM)中でアガロースゲル(1%)上で分離する。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0059】
PCR産生物は、L. innocuaのDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のC欄を参照されたい)。
実施例7: リステリアの群特異的検出のためのPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの水に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IIhおよびIIbによるプライマー(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を56℃の温度で45秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で45秒間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)を45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0060】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩の溶出緩衝液(それぞれ50mM)中でアガロースゲル(1%)上で分離する。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0061】
この場合、PCR産生物は、L. grayiおよびL. murrayi群からの細菌のDNAまたは細胞が試料中に存在する場合にのみ観察される(表1のG欄を参照されたい)。
実施例8: L. monocytogenesおよびL. innocuaの菌種特異的検出のための、およびL. ivanovii/L. seelingeri/L. welshimeri群およびL.grayi/L. murrayi群の群特異的検出のための、組み合わせPCR反応の実施
細菌を含む試料を、約1μgのDNAとともに50μlの緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に懸濁させて、110℃で5分間加熱する。次いで、式IId、IIf、IIg、IIhおよびIIbによるプライマー混合物(実施例1を参照、各0.4μg)および2.5UのTaqポリメラーゼ(ファルマシア製)を反応緩衝液(10mMトリス−HCl(pH8.5)、1.5mMMgCl2および50mMKCl)に溶解して、それぞれ200μmolのdGTP、dATP、dTTPおよびdCTPを加える(反応総液量100μl)。最初の変性段階を94℃で3分間続ける。次いで、反応混合物を56℃の温度で45秒間(アニーリング期)、および72℃の温度で1分間(伸長期)保持する。次いで、変性段階(94℃)を45秒間続ける。30回の反応サイクルの後、5分間保持の終結伸長段階(72℃)を行う。
【0062】
PCR産生物を、EDTA(2.5mM)を含むトリス−ホウ酸塩(それぞれ50mM)の溶出緩衝液中でポリアクリルアミドゲル(4%)上で分離する。加えて、核酸混合物(例えば、SppIファージDNAの制限エンドヌクレアーゼEcoRIによる切断からの産物)を分子量標準物として含める。次いで、分離したPCR産生物を臭化エチジウム(0.1mg/ml水中)を用いて染色して、UV光(260nm)で照射して可視化する。
【0063】
L. monocytogenes菌種からの、L. innocua菌種からの、L. ivanovii/L. seeligeri/L. welshimeri群からのまたはL. grayi/L.murrayi群からの細菌のDNAまたは細胞の存在は、分子量の違いに基づいて識別できる(表1のH欄および第1図を参照されたい)。
実施例9: ペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluの合成
fmoc法(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基)をペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluの合成に用いる。このペプチドは、N−末端にシステイン基をリンカーとして追加した式IVdのペプチドに対応する。アプライド・バイオシステムズのペプチド合成機を合成に用いる。プロセスパラメーターは、機器資料のものを用いる。
【0064】
4−(2′4′−ジメトキシフェニルアミノメチル)フェノキシ基を有する重合支持体を固相として用いる。アミノ酸をα−N−fmoc誘導体として用いる。アミノ酸に含まれる反応性側基を、トリフルオル酢酸を用いて加水分解して除去することができる追加の保護基でマスクする。ペプチド結合を、ジイソプロピルカルボジイミドでカルボキシル基を活性化することによって形成する。アミノ酸誘導体を挿入する順序は、所望される配列によって決定される。
【0065】
合成サイクルの最初のステップにおいて、固相上のアミノ基、すなわち支持体の4−(2′4′−ジメトキシフェニルアミノメチル)フェノキシ残基のアミノ基は、α−N−fmoc誘導体として取り入れられた、適宜保護された側鎖を有する、ジイソプロピルカルボジイミドによって活性化された導入アミノ酸のカルボキシル基と反応し、これは以下に続くサイクルで導入アミノ酸が付される最後のアミノ酸のα−アミノ基と同様である。未反応のアミノ酸誘導体をジメチルホルムアミドで洗浄除去する。次いで、fmoc基をジメチルフォルムアミド中の20%(v/v)ピペリジンで処理して除去する。残りの保護基はこの反応の間は変化することなく保持される。α−N−保護基の除去に続いて、次の反応サイクルが開始される。目的の配列に対応する最後のアミノ酸が付加された段階で、側鎖の保護基および支持体樹脂との結合をトリフルオル酢酸を用いる酸加水分解によって切断する。次いで、ペプチドを高圧液体クロマトグラフィーによって精製する。
【0066】
本発明による配列を有する残りのペプチドもまた、上記の方法によって合成する。
実施例10: ペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluのグルコースデヒドロゲナーゼとの抱合
a) グルコースデヒドロゲナーゼの誘導体化:
30mgのメルク社製のバチルス・メガテリウムからのグルコースデヒドロゲナーゼ(製品番号No.13732)を4mlの燐酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH8.0)に溶解する。6.78mgのN−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミド(カルバイオケム社製)を50μlのジメチルスルホキシドに溶解して、2.4mlのこの溶液に添加して、混合物を室温で30分間放置する。次いで、過剰のN−γ−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドをPD−10(ファルマシア社製)上のゲル濾過によるクロマトグラフィーで分離除去する。クロマトグラフィーの後、3.5mlの活性化された担体タンパク質の溶液が4.5mg/mlの濃度で得られる。
b) ペプチドとの結合:
実施例9によって調製されたペプチドの5.2mgを1mlの燐酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0)に溶解して、1.1mlの上記のステップからの溶液に添加して、混合物を室温で3時間放置する。次いで、結合しなかったペプチドをPD−10(ファルマシア製)上のゲル濾過によるクロマトグラフィーで分離除去する。クロマトグラフィーの後、3.5mlの抱合体が2.3mg/mlの濃度で得られる。
【0067】
本発明に対応する他のペプチドの抱合体もまた、上記の方法によって調製される。
実施例11: ペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluに対するポリクローナル抗体の製造
2羽のウサギに、0.18mlの実施例10からの抱合体、0.07mlの燐酸塩緩衝生理的食塩水および0.25mlのオイルアジュバント(MISA50、仏国セピック社製)からなる乳濁液をそれぞれ筋肉内注射する。同量のブースター注射を、最初の注射の3、5および7週間後に行う。最後の注射の1週間後に、動物を殺してから放血する。血液が凝固した後、遠心分離によって抗血清が得られ、これにアジ化ナトリウムを最終濃度が0.02%になるように加える。抗血清は−20℃で凍結保存する。
実施例12: ペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluに対するモノクローナル抗体の製造
2匹のマウスに、0.1mlの実施例10からの抱合体および0.1mlのオイルアジュバント(MISA50、仏国セピック社製)からなる乳濁液をそれぞれ皮下注射する。同量のブースター注射を、最初の注射の2、4および6週間後に行う。最後の注射の3日後に、動物を殺してから脾臓を分離する。脾臓からの細胞を通常の方法で分離して、ネズミ固定細胞系と融合させる。ペプチドCysGlnGlnGlnThrAlaProLysAlaProThrGluに対する抗体を形成する細胞系を融合産物から選択する。
実施例13:L. monocytogenesの免疫学的検出
a) 前培養および細菌の遠心分離: 10mlのCASOブロスにL. monocytogenesのいくつかのコロニーからの材料を接種して、30℃で一晩培養する。次いで、1mlの培養物をそれぞれ取り出す。遠心分離(13000rpm)によって細菌体を除去する。
b) 同定反応: 前ステップからの上清液のそれぞれ300μlを、マイクロタイタープレートのウェルにピペットで入れて、4℃で一晩インキュベートする。次いで、それぞれ100μlの洗浄液(9g/リットルNaClおよび0.05%ツイーン20の水溶液)で各ウェルを3回洗浄する。実施例11によって調製された抗血清の100μlを、ここで各ウェルにピペットで入れて、プレートを室温で1時間インキュベートする。各ウェルをそれぞれ100μlの洗浄液で3回再洗浄する。アルカリホスファターゼ(シグマ社製、製品番号A8025)で標識した抗ウサギ抗体溶液の100μlを次いで各ウェルにピペットで入れて、プレートを室温で30分間インキュベートする。それぞれのウェルを100μlの洗浄液で再度洗浄してから、次いで、結合した酵素標識抗体を検出する。これを行うために、基質を含む200μlの緩衝溶液を各ウェルに加えて、プレートを室温で30分間インキュベートする。100μlの2NのNaOH溶液(メルク社製、製品番号9136)を各ウェルに添加することによって反応を停止して、反応生産物を可視化する。黄橙色はL. monocytogenesの存在を示す。
実施例14: イムノブロッティング法を用いるL. monocytogenesの特異的検出
実施例13a)の記述のようにして細菌を前培養して、細菌細胞を遠心分離する。遠心分離された細胞を集めて、1mlの燐酸塩緩衝生理的食塩水に懸濁させる。この懸濁液の2μlをニトロセルロース膜(ハイボンドC、0.45μm、アメルシャム社製、製品番号RPN283C)上にピペットで移す。溶液が乾いたら、膜を室温で1時間ウシ血清アルブミン燐酸塩緩衝生理食塩水溶液(10g/リットル)で処理する。実施例11で得られた抗血清の希釈物(1:200)を、ウシ血清アルブミン(10g/リットル)およびツイーン20(0.5g/リットル)の燐酸塩緩衝生理食塩水溶液を用いて調製し(抗体溶液A)、同様に、同じ希釈液を用いてペルオキシダーゼ標識抗ウサギ抗体(抗ウサギIgG、ICNイムノバイオロジカルズ社製、製品番号68−397)のさらなる希釈物(1:500)を調製する(HRP−抗体溶液)。抗体溶液Aとともに膜を室温で1時間インキュベートして、次いで0.05%ツイーン20を含む燐酸塩緩衝生理的食塩水で3回洗浄する。結合している抗体を検出するために、次いで膜をHRP−抗体溶液とともに室温で1時間インキュベートしてから、a)ツイーン20(0.5g/リットル)燐酸塩緩衝生理的食塩溶液、b)燐酸緩衝生理的食塩水およびc)トリス緩衝液(50mM、pH7.4、200mMNaClを含む)でそれぞれ3回洗浄する。呈色反応のために、4−クロロ−1−ナフトール(3mg/mlメタノール溶液)を5倍量のトリス緩衝液(50mM、pH7.4、200mMのNaClを含む)で希釈して、過酸化水素を加える(最終濃度0.1g/リットル)。この基質溶液中で膜をインキュベートする。青黒色呈色はL. monocytogenesを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】複製産生物の電気泳動分離の結果を示す。実験の詳細は実施例8に示されている。
【図2】aからiはリステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質の配列から選択されたとくに好ましい免疫原性ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図3】そのエピトープがリステリア属細菌の免疫学的検出のために適しているリステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質の配列から選択されたポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図4】リステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質のアミノ酸配列の1位から256位までを比較のために示したもので、この配列は図5に示す257位に続く。
【図5】リステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質のアミノ酸配列の257位から478位までを比較のために示したもので、この配列は図4に示す256位から続く。
【図6】aからdはリステリア・イノクアからのp60タンパク質の配列から選択されたとくに好ましい免疫原性ペプチドのアミノ酸配列を示す。
Claims (10)
- リステリア・モノシトゲネス菌種の細菌からのp60タンパク質の配列から選択されたペプチドであって、
下記式IVaまたはIVdによる配列を特徴とするペプチド。
X 3 ProValAlaProThrGlnX 4 (IVa)
X 3 GlnGlnThrAlaProLysAlaProThrX 4 (IVd)
[ただし、各式中X 3 およびX 4 は、それぞれ独立に水素、任意のアミノ酸または7個までのアミノ酸を有する任意のオリゴペプチドである。] - 以下のa、d、e及びf:
a: Val Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln
d: Gln Gln Gln Thr Ala Pro Lys Ala Pro Thr Glu
e: Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
f: Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
のひとつの配列を特徴とする請求項1に記載のペプチド。 - 請求項1または2に記載のペプチドの、免疫原性抱合体の調製のための使用。
- リステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質に対する抗体であって、
以下のa、d、e及びf:
a: Val Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln
d: Gln Gln Gln Thr Ala Pro Lys Ala Pro Thr Glu
e: Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
f: Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
の配列のひとつを含むエピトープに結合することを特徴とする抗体。 - 7〜24個のアミノ酸を有するペプチドを含む免疫原性抱合体を用いて実験動物を免疫することによって調製し得る抗体であって、
前記ペプチドが、下記式IVa、IVd、a、d、eまたはf:
IVa:X 3 ProValAlaProThrGlnX 4 ;
IVb:X 3 GlnGlnThrAlaProLysAlaProThrX 4 ;
a: Val Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln ;
d: Gln Gln Gln Thr Ala Pro Lys Ala Pro Thr Glu ;
e: Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys ;または
f: Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys ;
の配列のひとつを含むことを特徴とする抗体。 - 免疫原を用いて実験動物を免疫し、得られた抗体を単離することによるリステリア・モノシトゲネスからのp60タンパク質に対する抗体の製造方法であって、
前記使用される免疫原として、下記式IVaまたはIVd:
X 3 ProValAlaProThrGlnX 4 (IVa)
X 3 GlnGlnThrAlaProLysAlaProThrX 4 (IVd)
[ただし、式中X 3 およびX 4 は、それぞれ独立に水素、任意のアミノ酸または7個までのアミノ酸を有する任意のオリゴペプチドである。]
によるペプチドを含む免疫原性抱合体を用いる
ことを特徴とする抗体の製造方法。 - 前記使用される免疫原が、以下のa、d、e及びf:
a: Val Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln
d: Gln Gln Gln Thr Ala Pro Lys Ala Pro Thr Glu
e: Ser Thr Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
f: Pro Val Ala Pro Thr Gln Glu Val Lys Lys
の配列のひとつによるペプチドを含む免疫原性抱合体である請求項6に記載の抗体の製造方法。 - リステリア・モノシトゲネス菌種の細菌の検出のための請求項4または5に記載の抗体の使用。
- 免疫反応を用いたリステリア・モノシトゲネス菌種の細菌の検出法であって、請求項4または5に記載の抗体を用いることを特徴とする検出法。
- リステリア・モノシトゲネス菌種の細菌のイムノアッセイによる検出のための試験キットであって、
請求項4または5に記載の抗体を含むことを特徴とする試験キット。
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