JP3570037B2 - インクジェット装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット装置、特にドロップオンデマンド型のマルチノズル型のインクジェット装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電式インクジェットヘッドが近年提案されている。これらのヘッドはインクが充填される複数のインク室を備えており、圧電アクチュエータの寸法変位によってインク室の容積を変化させ圧力波を発生させることにより、その容積減少時にインク室内のインクをノズルから噴射し、容積増大時にインク室内にインクを導入するようにしたものである。そして、所定の位置のインク室からインクを噴射させることにより、所望する文字や画像を形成することが出来る。
【0003】
このようなインクジェットヘッドについて、図2に示すインクジェットヘッド1の斜視図および図3に示すインクジェットヘッド1の一部の断面図を用いて具体的に説明する。
【0004】
複数の側壁5を有し、かつ矢印28の方向に分極処理を施した圧電セラミックス板2と蓋6とを接合することで、図3における横方向に互いに間隔を有する多数の平行なインク室4が構成される。インク室4は長方形断面の長くて狭いものであり、側壁5はインク室4の全長にわたって伸び、インク室4の中心軸に垂直に変形可能である。従って、側壁5が変形することによりインク室4の容積が変化し、インク室4内のインク圧が変化する。側壁5の表面の下半分(あるいは上半分)の領域には、駆動電界印加用の駆動電極7が形成されており、該駆動電極7の表面にはインクと駆動電極7とを絶縁するための絶縁処理が施してある。圧電セラミックス板2と蓋6との一端には、各インク室4の一端に連通するノズル50を有するノズルプレート60が接着剤70によって固定されている。
【0005】
このインクジェットヘッド1において所定の印字データに従って例えばインク室4Bが選択されると、図示しない駆動装置によって駆動電極7C、7Dと駆動電極7E、7Fの各々の間に駆動電界10が印加される。この時駆動電界方向と分極方向とが直交しているため、側壁5B、5Cは圧電厚みすべり効果によってインク室4Bの外部方向にくの字に変形する。この時、インク室4B内にインクが供給される。その後、前記駆動電界10の印加を遮断すると、該側壁5B、5Cがもとの位置に戻る。この変形によりインク室4B内のインク圧が正圧となり、インク室4Bに対応するノズル50からインク液滴が噴射される。その後、ノズルプレート60を圧電セラミックス板2および蓋6の一端面に接着剤70で固定する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような上述した従来のインクジェットヘッド1ではインク室4Bでの容積変化により発生した圧力波が各インク室4共通のインク供給路に伝播し、再び前記インク室4Bや他のインク室4A、4Cを経てノズル50まで伝播し、液滴の吐出エネルギーとなる振動とは別の余分な振動となるため、ノズル50からの安定した液滴の吐出を妨げるという問題点があった。
【0007】
この問題点を是正するために、余分な振動が他のインク室4A、4Bに伝播しにくいようにインク室4同士の距離を大きくすると、ヘッドが大型化するといった問題点が生じていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、インク室から発生した圧力波の伝播による他のインク室への余分な圧力波の影響を防ぎ安定した液滴の吐出を行うことが可能なインクジェット装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1では、インクを吐出するための複数のノズルと、前記ノズルに連通し、インクが充填される複数のインク室とを備えたアクチュエータ部材に、各インク室に連通する共通インク室を有するマニホールド部材を接合したインクジェット装置において、前記共通インク室内に設けられ、撥水性を有する多孔質部材を備えることによって、インク液滴吐出のためにインク室で発生した圧力波が、前記撥水性を有する多孔質部材に保持された空気のダンパー効果によって吸収され、他のインク室へ伝播されない。また、撥水性を有する多孔質体は、表面張力の低いインクであっても空気が保持される。
【0010】
また、請求項2のインクジェット装置では、空気を保持した多孔質部材が使用され、請求項3のインクジェット装置では、複数の側壁間に複数のインク室が備えられ、共通インク室内の各側壁に対応する位置に多孔質部材が配置され、それぞれインク液滴吐出に際してインク室で発生した圧力波が吸収される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。但し、従来例と同一の部材に付いては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
図1は本発明のインクジェット装置を示す断面図である。複数の側壁5を有する圧電セラミックス板2(図2)と蓋6(図2)とを接合することで、複数のインク室4が構成される。圧電セラミックス板2と蓋6との一端には、各インク室4の一端に連通するノズル50を有するノズルプレート60が接着剤70(図2)によって固定されている。また他の一端にはインクカートリッジ(図示せず)からインクを供給するマニホールド部材40が接着剤によって固定されている。そのマニホールド部材40には、各インク室4に連通する共通インク室46が形成されている。その共通インク室46内には、各側壁5に対応する位置に撥水性を有する多孔質体30が設けられている。
【0013】
ここで、撥水性を有する多孔質体30は、例えばテフロン(PTFE樹脂)の多孔質体が挙げられる。本実施例においては、テフロンの多孔質体から作られた材料(商品名:ゴアテックス ジャパンゴアテックス(株))を用いた。また、撥水性を有しない多孔質体に対して撥水性を付与する表面処理等を行ったものを用いても良い。この場合、例えば主鎖に含フッ素ヘテロ環状構造を有するポリマーを含有する部材でコーティングするのがよい。このようなコーティング材としては、例えばサイトップ(旭ガラス(株))やテフロンAF(デュポン社)等が挙げられる。
【0014】
側壁5の変形によってインク室4の容積が変化しそれによって発生した圧力波はノズル50に至り液滴を吐出させる。また同様に発生したマニホールド部材40の共通インク室46側へ向かう圧力波は撥水性を有した多孔質体30に保持されている空気31に吸収されるので、共通インク室46を経て他のインク室4へ伝播することがない。
【0015】
このようにして作製した本実施例のインクジェット装置で多数のノズル50より同時にインクを吐出させても、インク液滴の吐出速度が変化したりすることはなかった。従って、高品位の記録を行なうことができる。
【0016】
尚、本発明は上述した実施例に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが出来る。例えば、本実施例では、圧電素子のシェアモード変形によってインク液滴を吐出する方式のインクジェット装置に本発明を用いたが、圧電素子のダイレクトモード変形によってインク液滴を吐出する方式のインクジェット装置に本発明を用いてもよい。また、周知のサーマルジェット式のインクジェット装置に本発明を用いてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したことから明かなように、請求項1記載のインクジェット装置によれば、前記共通インク室内に設けられ、撥水性を有する多孔質部材を備えることによって、インク液滴吐出のためにインク室で発生した圧力波が、前記撥水性を有する多孔質部材に保持された空気のダンパー効果によって吸収され、他のインク室へ伝播しないので安定した液滴の吐出が可能であり、さらに 従来のインクジェット装置のように余分な振動が他のインク室に伝播しにくいようにインク室同士の距離を大きくする必要がないため小型化が可能である。また、撥水性を有する多孔質体のため表面張力の低いインクを用いたようなインクジェット装置であっても空気の保持性がきわめて良いため安定した液滴噴射の持続性が良い。
【0018】
また、請求項2のインクジェット装置のように、空気を保持した多孔質部材が使用されたもの、請求項3のインクジェット装置のように、複数の側壁間に複数 のインク室が備えられ、共通インク室内の各側壁に対応する位置に多孔質部材が配置されたものでも、それぞれインク液滴吐出に際してインク室で発生した圧力波が吸収され、他のインク室へ伝播することがなく、安定した液滴の吐出が可能となり、さらに 従来のインクジェット装置のように余分な振動が他のインク室に伝播しにくいようにインク室同士の距離を大きくする必要がないため小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット装置を示す断面図である。
【図2】従来及び本発明のインクジェット装置を示す斜視図である。
【図3】従来及び本発明のインクジェット装置の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
4 インク室
5 側壁
30 多孔質体
31 空気
50 ノズル
40 マニホールド部材
46 共通インク室
Claims (3)
- インクを吐出するための複数のノズルと、前記ノズルに連通し、インクが充填される複数のインク室とを備えたアクチュエータ部材に、各インク室に連通する共通インク室を有するマニホールド部材を接合したインクジェット装置において、
前記共通インク室内に設けられ、撥水性を有する多孔質部材を備えたことを特徴とするインクジェット装置。 - インクを吐出するための複数のノズルと、前記ノズルに連通し、インクが充填される複数のインク室とを備えたアクチュエータ部材に、各インク室に連通する共通インク室を有するマニホールド部材を接合したインクジェット装置において、
前記共通インク室内に設けられ、空気を保持した多孔質部材を備えたことを特徴とするインクジェット装置。 - インクを吐出するための複数のノズルと、複数の側壁間に前記ノズルに連通しインクが充填される複数のインク室とを備えたアクチュエータ部材に、各インク室に連通する共通インク室を有するマニホールド部材を接合したインクジェット装置において、
前記共通インク室内の各側壁に対応する位置に多孔質部材を備えたことを特徴とするインクジェット装置。
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- 1995-09-14 JP JP23681495A patent/JP3570037B2/ja not_active Expired - Fee Related
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