JP3569156B2 - フィルタ回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無線を用いる通信機の帯域制限をするフィルタ回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分布定数型伝送線路の一つであるマイクロストリップライン共振器を用いたフィルタ回路では、例えば図9に示すように、ストリップ導体をずらして並べた構成を用いていた。図10にこのフィルタ回路の等価回路を示す。
【0003】
即ち、裏面に接地導体(図示せず)が設けられている平板状の誘電体901の表面に1/2波長の長さのストリップ導体902,903,904を1/4波長(λ)ずらして配設し、これらによって接地導体との間に共振器1002,1003,1004を構成しており、入力端子用のストリップ導体905をストリップ導体902に近接して設け、また出力端子用のストリップ導体906をストリップ導体904に近接して設けることにより、入力端子1005、出力端子1006を構成している。図10の等価回路におけるコンデンサ1007,1008,1009,1010は各ストリップ導体間の容量を意味する。
【0004】
しかしこの構成では、ストリップ導体を1/4波長ずつずらせているので、フィルタ回路が一方向に長くなって誘電体901が長方形となり、このフィルタ回路を円形の基板上に構成する場合には大きな誘電体が必要となり、結局フィルタが大きくなってしまうという問題点があった。
【0005】
この問題点を解決するために、図11に示すようなフィルタが考え出された。即ち、1/2波長のストリップ導体1102,1103,1104を並列にならべることにより、共振器間の結合を小さくしたフィルタ構成である。しかし、この構成では小型化はされるが、使用周波数帯が低くなるにつれて1/2波長の長さが大きくなってしまうため、より大きな誘電体材料が必要となってしまう問題点が出てきた。
【0006】
このため、図12に示すように1/2波長のストリップ導体1202,1203,1204を折り曲げた”コ”字形にすることにより小型化が進められた。共振器をコ字形にすることで1/4波長程度のサイズの材料で1/2波長の分布定数線路形フィルタを作成することが可能となった。しかし、コ字形の共振器を並べていく場合にはフィルタの形状が四角形となり、例えば超伝導フィルタを作るとすると円形材料1207上にフィルタを構成することになるが、この場合には不必要なエリアが大きくなる問題があった。
【0007】
また一般に、フィルタの周波数レスポンスのスカート特性を急峻にしたい場合、フィルタを構成する共振器の段数を多くする方法が用いられていた。しかし、この方法ではフィルタの大型化と挿入損失の劣化につながってしまう。そこでフィルタの周波数レスポンスのスカート特性を改善する別な方法として、楕円関数フィルタのような帯域外に反共振の点を持ってくる方法がある。この方法を用いた場合には偶数の共振器で通常のフィルタにあるような隣の共振器との結合以外に、2N段(Nは2以上の整数)の共振器を用いた楕円関数フィルタでは1段目とN段目、2段目と2N−1段目、…、N−1段目とN+2段目の共振器を結合させる必要がある。このようなフィルタを図13に示した。裏面に接地導体(図示せず)を設けた平板状誘電体1301の表面に、コ字形のストリップ導体1302〜1307を互い違いに2列に配置し、両端のストリップ導体1302,1307に隣接して入力用出力端子用のストリップ導体1308,1309を設け、ストリップ導体1302,1307で構成した共振器間で飛び越した結合、即ち反共振結合1310を作る。しかし、この構成では、入出力のストリッップ導体1308,1309が近接してしまうためこの間での結合1311も生じ、この部分において直接エネルギーが抜けてしまい帯域外の減衰量が劣化してしまう問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来技術では矩形形状にフィルタ回路が構成されるので四角以外の任意形状の平板材料にフィルタ回路を構成する場合には無駄となる面積が大きくなる問題点があった。また、フィルタの周波数レスポンスのスカート特性を改善する場合に多段化することによる回路規模の大型化や挿入損失特性が劣化する問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような従来技術の欠点を除去し、フィルタの周波数レスポンスのスカート特性が急峻であり、小型なフィルタ回路を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の基本的特徴によれば、円形の平板状誘電体の一方の面に接地導体を設け、他方の面にストリップ導体を選択的に配設して3段以上の共振器と入力端子と出力端子を構成してなるフィルタ回路において、
前記共振器の1つを形成するコ字形状又は逆コ字形状の第1のストリップ導体と、この第1のストリップ導体に隣接し前記第1のストリップ導体とは逆の向きに逆コ字形状又はコ字形状に配設されて前記共振器の他の1つを形成する第2のストリップ導体と、この第2のストリップ導体に隣接し前記第2のストリップ導体とは逆の向きに逆コ字形状又はコ字形状に配設され前記共振器の更に他の1つを形成する第3のストリップ導体とを備え、この第3のストリップ導体と前記第1のストリップ導体との間において直接結合し反共振を生ずるように配設すると共に、前記入力端子及び出力端子はこのフィルタ回路を中心にほぼ180度互いに異なる位置に配設して成ることを特徴とするフィルタ回路を提供する。
【0011】
したがって、本発明では第1のストリップ導体と第2のストリップ導体のみならず、第3のストリップ導体とも直接結合しており反共振を生ずるので、スカート特性が急峻で帯域外減衰量の大きな特性を有するフィルタ回路が得られる。
【0014】
したがって、フィルタ回路としての占有面積が大きくなり、小型なフィルタ回路が得られる。
【0015】
更に本発明は上記構成において、前記第1,第2及び第3のストリップ導体は前記平板状誘電体の形状に合わせて全体としてほぼ円形になるように配設することを特徴とするフィルタ回路を提供する。
【0016】
したがって、本発明によれば全体として円形形状となり超伝導フィルタにも好適なフィルタ回路が得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に本発明に係るフィルタ回路の第1の実施例を示す。この実施例は、分布定数型伝送線路を用いたフィルタの例としてマイクロストリップライン共振器を用いたフィルタ回路の例である。
【0018】
一方の面に接地導体を設けた、任意形状を持つ平板状誘電体101の他方の面に複数のストリップ導体が選択的に配設される。即ち、長さが1/2波長であり折り曲げられた形状のストリップ導体102,103,104,105が一列に交互に逆向きに設けられその両端のストリップ導体102,105に隣接してこのフィルタ回路に対して180度異なる向きに各々入力端子,出力端子を構成するストリップ導体106,107が設けられている。これらのストリップ導体は、平板状誘電体101内でこの形状と相似する形の、点線で示した有効エリア109内においてできるだけ広い面積をカバーするように配設される。この有効エリア109は、伝送線路の漏れる電力から決定される。
【0019】
上記ストリップ線路及び接地導体は超伝導特性を有する導体により構成できる。
【0020】
図2にこのフィルタ回路の一部の断面図を示す。201は、平板状誘電体101の一方の面に配設された接地導体であり、ストリップ導体102から伝播モードの電気力線202が平板状誘電体101を通って接地導体に入る。ところが電気力線は接地導体とストリップ導体により形成される伝送線路内だけでなく、図2の203に示すようにこの伝送線路の外側に電気力線が漏れる。接地導体201が小さい場合にはこの漏れ出た電力が放射されて放射損失となってしまうので、誘電体の全面にストリップ導体を配設することができない。このため、平板状誘電体101の全面から周囲の一定範囲を除いて残りの部分を有効エリアとしこの範囲内にストリップ導体を配設することになる。
【0021】
ところで、図1においてストリップ導体102,103,104,105は接地導体との間で共振器を構成しており、各ストリップ導体との間及び入力端子用ストリップ導体106、出力端子用ストリップ導体107は、それぞれ容量結合されている。更に、ストリップ導体102はストリップ導体103に隣接しているが、図1から明らかなように、ストリップ導体103に隣接せず、ストリップ導体104に直接結合している部分110もある。この部分が反共振結合を生ずる部分である。同様にストリッップ導体103とストリップ導体105間の部分111にも反共振を生じさせる直接結合が生じている。したがって、このフィルタ回路の等価回路は図3に示す如くなる。302,303,304,305はストリップ導体102〜105により接地導体との間に形成される共振器であり、306,307は入力端子,出力端子である。また、容量素子308〜312は入力端子用ストリップ導体106,各ストリップ導体102〜105,出力端子用ストリップ導体107の間の結合を示す。容量素子313はストリップ導体102とストリップ導体104との間の反共振結合を、また容量素子314はストリップ導体103とストリップ導体105との間の反共振結合を、それぞれ意味する。
【0022】
ここで、ストリップ導体102とストリップ導体104との間に着目し、この間で結合が生ずる場合を検討する。図4にこの部分を中心にした拡大図を示す。ストリップ導体102のストリップ導体105に対向する部分102aと、ストリップ導体105のストリップ導体102に対向する部分105aを考えると、この部分が平行になっていれば、結合が生ずる。しかし、この部分が必ずしも平行になっている必要はない。ストリップ導体102の部分102aに流れる電流成分A−A′に対してストリップ導体105の部分105aに流れる電流成分B−B′をA−A′と平行な方向の成分401とその方向に垂直な方向の成分402に分解して、平行方向成分401がある限り、102aと105aの間に結合が生ずる。
【0023】
入出力用端子はそれぞれの結合による帯域外の減衰量の劣化を避けるべく、両端子のストリップ導体106,107は帯域外減衰量以上のアイソレーション特性を実現するために、180度異なる位置に置かれて構成される。したがって、この実施例は入力端子出力端子間の結合は非常に小さい。
【0024】
図5に、フィルタ回路を円形形状に構成した本発明の第2の実施例を示す。この実施例では、一方の面に接地導体を配設した円形形状の平板状誘電体501の他面に、共振器を形成するコ字形状のストリップ導体502,503,504,505,506、及び入力端子用のストリップ導体507と出力端子用のストリップ導体508を左右対称に配設している。しかも、共振器を形成するストリップ導体502,503,504,505,506は中央のもの程上下に長く、全体の形状が誘電体よりも小さく円形形状となるように配設される。
【0025】
この実施例におけるフィルタ回路の等価回路を図6に示す。即ち、ストリップ導体502〜506各々が接地導体との間で形成する共振器が、各々602〜606であり、入力端子607、出力端子608はストリップ導体707,508により形成されている。容量素子609〜614はストリップ導体507,502〜506,508間の結合を示している。このフィルタ回路の反共振結合は、ストリップ導体502とストリップ導体504の間、ストリップ導体503とストリップ導体505の間及びストリップ導体504とストリップ導体506の間に生じており、図6の等価回路では容量素子615,616,617がこれらの結合を示している。
【0026】
この実施例における上記ストリップ線路及び接地導体も、超伝導特性を有する導体により構成できる。
【0027】
実際にこのフィルタ回路を2GHz帯有極性型バンドパスフィルタとして、設計を行った。ストリップ導体は特性インピーダンス50Wのマイクロストリップラインを用い、誘電体は直径30mm、0.5mm厚のLaAlO3を用いた。また、誘電体の端の影響を避けるために、有効エリアは誘電体よりも3mm内側にとった。このフィルタ回路の通過特性を、図7に実線701で示した。図7において、点線702は多段フィルタ、一点鎖線703は楕円関数型フィルタ、破線704は反共振を生ぜしめない長方形のコ字形状のフィルタの場合の各特性を示す。この実施例のフィルタでは、長方形のコ字形状のフィルタの場合に比して阻止域における減衰量を20dB以上改善することができた。
【0028】
上記実施例では、入出力端子は互いに180度異なる位置に設けられていた。しかし、本発明は入出力端子を構成するストリップ導体を、90度異なる位置に配設してもよい。図8にこのような、本発明一実施例の構成を示す。一面に接地導体を配設した円形の平板状誘電体801の他面にストリップ導体802,803,804,805,806を図示の如く円形の有効エリア807内配設し、入力端子用のストリップ導体808、出力端子用のストリップ導体809を各々ストリップ導体802,806に隣接して設けている。このフィルタ回路では、ストリップ導体802とストリップ導体804の間、及びストリップ導体804とストリップ導体806の間に反共振結合が生じており、ストリップ導体808と接地導体から入力された信号はストリップ導体809と接地導体から出力される。
【0029】
本発明のこの実施例では、入出力端子が互いに90度異なる位置に配設されているので、入出力端子間のアイソレーションが最大になる利点がある。
【0030】
上記実施例ではいずれも、入出力端子は互いに180度又は90度異なる位置に設けられていたが、本発明ではほぼ90度〜180度の範囲で適宜選択することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明では反共振を生じさせ阻止帯域に極を持たせることにより、等価的に少ない段数で多段にした性能を実現することができる。そのため特定の帯域の減衰特性を大きく改善できる特性を持ち、入出力のアイソレーション特性が劣化しないことから良好な帯域外減衰量特性を実現できる。
【0032】
また、ストリップ導体を誘電体の形状と相似で電気力線が外に漏れない程度に小さくした範囲内でできるだけ大きくなるように配設すれば、フィルタ回路としての占有面積を大きくなり、小型なフィルタ回路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルタ回路の一実施例を示す構成図。
【図2】図1の実施例のフィルタ回路の構造を示す断面図。
【図3】図1に示した実施例の等価回路図。
【図4】図1に示した実施例における結合を説明するための図。
【図5】本発明の他の一実施例の構成図。
【図6】図5に示した実施例の等価回路図。
【図7】図5に示した実施例などの通過特性を示す図。
【図8】本発明の更に他の実施例の構成図。
【図9】従来のフィルタ回路一例の構成図。
【図10】図9のフィルタ回路の等価回路図。
【図11】従来のフィルタ回路の他の一例の構成図。
【図12】従来のフィルタ回路の更に他の一例の構成図。
【図13】従来のフィルタ回路の他の一例の構成図。
101、501,801・・・平板状誘電体、102〜107,502〜508・・・ストリップ導体、109,807・・・有効エリア

Claims (3)

  1. 円形の平板状誘電体の一方の面に接地導体を設け、他方の面にストリップ導体を選択的に配設して3段以上の共振器と入力端子と出力端子を構成してなるフィルタ回路において、
    前記共振器の1つを形成するコ字形状又は逆コ字形状の第1のストリップ導体と、
    この第1のストリップ導体に隣接し前記第1のストリップ導体とは逆の向きに逆コ字形状又はコ字形状に配設されて前記共振器の他の1つを形成する第2のストリップ導体と、
    この第2のストリップ導体に隣接し前記第2のストリップ導体とは逆の向きに逆コ字形状又はコ字形状に配設され前記共振器の更に他の1つを形成する第3のストリップ導体とを備え、
    この第3のストリップ導体と前記第1のストリップ導体との間において直接結合し反共振を生ずるように配設すると共に、前記入力端子及び出力端子はこのフィルタ回路を中心にほぼ180度互いに異なる位置に配設して成ることを特徴とするフィルタ回路。
  2. 前記第1,第2及び第3のストリップ導体は前記平板状誘電体の形状に合わせて全体としてほぼ円形になるように配設することを特徴とする請求項1記載のフィルタ回路。
  3. 前記接地導体及び前記第1,第2,第3のストリップ導体は、超伝導特性を有することを特徴とする請求項1記載のフィルタ回路。
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