JP3568766B2 - 超電導ケーブルおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超電導ケーブルおよびその製造方法に係わり、詳しくは交流通電時の交流損失を低減でき、しかも偏流を防止できる超電導ケーブル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の超電導ケーブルの例としては、図7に示すように、ステンレス鋼などからなるパイプ状のフォーマ2の周囲にテープ状の超電導導体3が螺旋状に巻回されて超電導導体層4が複数層積層され、これら超電導導体層4,4間に層間絶縁層5が介在されてなる超電導ケーブル1が知られている。
上記超電導導体3は、図8に示すように、超電導体からなるコア部6の複数が銀などからなるシース材7により覆われて形成されたものである。
各超電導体導体層4の超電導導体3の巻回方向は、交互反対方向となっており、図7に示した例では、フォーマ2側から第一層目の超電導体導体層4の巻回方向がS巻(右巻)、第二層目の超電導導体層4の巻回方向がZ巻(左巻)、第三層目の超電導導体層4の巻回方向がS巻(右巻)、第四層目の超電導導体層4の巻回方向がZ巻(左巻)となっている。
【0003】
上記コア部6をなす材料としては、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox(Bi系2212相),Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi系2223相),
Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox,Tl2Ba2Ca2Cu3Oy 等の組成を持つ酸化物超電導物質が用いられている。そのうち、Bi系、特に、Bi系2223相酸化物超電導物質が、高い臨界温度を有し安定な物質としてコア部6に適用されている。
上記層間絶縁層5は、ポリイミドテープなどの絶縁テープを巻回して構成されたものである。
このような構成の超電導ケーブル1の外周には、通常、保護層(図示)などが形成されて用いられる。
【0004】
上述のような従来の超電導ケーブル1を製造するには、以下の工程による。
〔原料粉末処理工程〕
Bi系の酸化物超電導物質の原料粉末、例えばBi2O3などのBiの化合物粉末,PbOなどのPbの化合物粉末,SrCO3などのSrの化合物粉末,CaCO3などのCaの化合物粉末,CuOなどのCuの化合物粉末からなるものを混合する。
〔充填工程〕
上記原料粉末処理工程において混合した粉末を、Ag等のシース材の第一のパイプ内部に充填し、シース材複合体(Agシース複合体)を形成する。
〔単心線の伸線(引き抜き)加工工程〕
上記充填工程において形成したAgシース複合体を、所定の線径にまで伸線加工し、超電導単心素線(単心線)を形成する。
〔多心化工程〕
上記単心線の伸線加工において形成した超電導単心素線をAg等のシース材の第二のパイプの内部に複数集合して挿入した後、伸線加工して超電導多心素線(多心線)を形成する。
【0005】
〔圧延工程〕
上記多心線をロール圧延加工により、例えばテープ状の超電導素導体に成形する。
〔熱処理工程〕
テープ状の超電導素導体に対して熱処理を行う。
その後、上記圧延工程の圧延加工(またはプレス処理)と、上記熱処理とを複数回繰り返して、図8(a)に示すような、所定寸法のテープ状の超電導導体3を形成する。
〔巻回工程〕
図7に示すように、テープ状の超電導導体3をパイプ状のフォーマ2の周囲に螺旋状に巻回して超電導導体層4を複数層積層するとともに超電導導体層4,4間にポリイミドテープなどからなる層間絶縁層5を介在させることにより、超電導ケーブル1が得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の超電導ケーブル1においては、交流電流を通電した場合には、図8(b)に示すように、各々の超電導導体3において、これらに流れる交流電流による自己磁場の影響によって渦電流Fが発生する。このとき、シース材7が電気抵抗率の低いAg(Agでは20℃において1.63μΩcm)等からなるために、図8(c)に示すように、渦電流F1が隣接する超電導導体3のシース材7に導通してしまう。その結果、図9に示すように、超電導導体層4の積層体に渦電流F2が横断して導通するために、超電導ケーブル1全体として渦電流F2が支配的となり、交流損失が大きくなるという問題があった。
また、上述のような構造の従来の超電導ケーブル1においては、超電導導体層4,4間のインダクタンスの違いにより、外側にある超電導導体層4ほど電流が多く流れ、内側にある超電導導体層4には電流が流れにくくなる偏流が起こるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、交流通電時における交流損失を低減でき、しかも偏流を防止できる超電導ケーブルを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にあっては、テープ状の超電導素線の表面に硫化処理が施されて高抵抗化膜が形成された複数本テープ状の超電導導体が2列に並べられ、かつこれら複数本のテープ状の超電導導体が転位撚り合わせられた転位超電導テープユニットが管体の周囲に巻回されてなり、
前記テープ状の超電導素線は、超電導体からなるコア部または熱処理により超電導体となる材料を有するコア部がシース材からなる基地の内部に備えられてなる超電導素線を平坦化してなるものであり、前記高抵抗化膜は硫化銀からなり、前記基地を形成するシース材よりも電気抵抗率の高いものであることを特徴とする超電導ケーブルを上記課題の解決手段とした。
【0009】
本発明においては、上記コア部をなす超電導体またはコア部の熱処理により超電導体となる材料が、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox (Bi2212相),
Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi2223相),
Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox,Tl2Ba2Ca2Cu3Oy,などで示される組成を持つものとされ、特に、Bi系2223相またはBi系2212相のBi系酸化物超電導材料が選択されることが好ましい。
上記シース材が、Ag,Pt,Au等の貴金属とされることが好ましい。
本発明において、上記高抵抗化膜は、上記シース材の硫化物からなるものであり、このなかでも硫化銀からなることが好ましい。
本発明の超電導ケーブルにおいては、上記テープ状の超電導導体の横断面形状が矩形状であることが好ましい。
上記管体が、ステンレス鋼製とされることが好ましい。
【0010】
本発明にあっては、超電導体からなるコア部または熱処理により超電導体となる材料を有するコア部がシース材からなる基地の内部に備えられてなる超電導素線を圧延加工および熱処理を行ってテープ状の超電導素線を形成する圧延熱処理工程と、前記テープ状の超電導素線の表面に硫化処理を施して硫化銀からなる高抵抗化膜を表面に有するテープ状の超電導導体を形成する硫化工程と、前記複数本のテープ状の超電導導体を2列に並べ、かつこれら複数本のテープ状の超電導導体を転位撚り合わせて転位超電導テープユニットを形成する転位撚り合せ工程と、前記転位超電導テープユニットを管体の周囲に巻回する巻回工程を少なくとも備えることを特徴とする超電導ケーブルの製造方法を前記課題の解決手段とした。
本発明の超電導ケーブルの製造方法においては、上記硫化工程における硫化処理は、内部に硫黄蒸気が満たされた反応容器内に前記テープ状の超電導素線を通過させることにより行われるものであってもよい。
本発明の超電導ケーブルの製造方法においては、上記転位撚り合せ工程における転位撚り合せが平角転位撚り合せであることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る超電導ケーブルおよびその製造方法の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。この超電導ケーブル10は、転位超電導テープユニット15がパイプ状のフォーマ(管体)17の周囲に螺旋状に巻回されてなるものである。
【0012】
上記転位超電導テープユニット15は、図2に示すようにテープ状の超電導導体(超電導テープ)18を複数本(図面では5本)転位撚り合わせてなる長尺の帯状のものである。この転位超電導テープユニット15では、テープ状の超電導導体18の複数本を集合して撚り合わす際に、各テープ状の超電導導体18がその長尺方向において、順次その位置を代えて変位するように撚り合わされたものである。
このような転位超電導テープユニット15の巻回方向は、S巻(右巻)の方向またはZ巻(左巻)の方向となっている。
上記フォーマ17は、ステンレス鋼などからなるものである。このようなフォーマ17の表面は、該フォーマ17と転位超電導テープユニット15間の通電を抑制するために絶縁処理が施されている。このフォーマ17の内部は、液体窒素等の冷却媒体の流路とされ、テープ状の超電導導体18の冷却が行われる。
【0013】
上記テープ状の超電導導体18は、図2に示すようにテープ状の超電導素線19の表面に硫化処理が施されて高抵抗化膜20が形成されてなるものである。この超電導導体18の横断面形状は、矩形状とすることが好ましい。この超電導導体18は、幅1.0mm〜5.0mm程度、厚さ0.1mm〜1.0mm程度の範囲のものとされる。
上記高抵抗化膜20は、後述するシース材7の硫化物からなるものであり、このなかでも硫化銀からなることが好ましい。このような高抵抗化膜20は、後述する基地29を形成するシース材よりも電気抵抗率が高くなっている。
【0014】
上記テープ状の超電導素線19は、図3に示すような超電導多心素線(超電導素線)25が平坦化されてなるものである。このような超電導素線19の横断面形状は、矩形状とすることが好ましい。この超電導素線19は、幅1.0mm〜5.0mm程度、厚さ0.1mm〜1.0mm程度の範囲のものとされる。
上記超電導多心素線25は、超電導フィラメントなどの超電導体27からなるコア部28または熱処理により超電導体となる材料27を有するコア部28がシース材からなる基地29の内部に備えられてなるものである。
【0015】
コア部28の超電導体27あるいは熱処理により超電導体となる材料27としては、Bi2Sr2Ca1Cu2Ox (Bi2212相),
Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi2223相),
Bi1.6Pb0.4Sr2Ca2Cu3Ox,Tl2Ba2Ca2Cu3Oy,などで示される組成を持つものが用いられ、例えば、Bi系2223相のBi系酸化物超電導材料が用いられる。
シース材12としては、Ag,Pt,Au等の貴金属あるいはそれらの合金からなるものが用いられる。
このような構成の超電導ケーブル10の外側には、図示しない半導体層、絶縁層、保護層、断熱層、防食層などが必要に応じて形成されて使用される。
【0016】
次に、図1に示した実施形態の超電導ケーブル10の製造方法の一例を工程順に説明する。
〔原料粉末処理工程〕
酸化物超電導物質の原料粉末、例えばBi2O3,PbO,SrCO3 ,
CaCO3 ,CuO、からなるものを、Bi:Pb:Sr:Ca:Cuの混合比が1.8:0.4:2.2:3.0となるように混合し、780℃〜820℃の範囲の温度条件においておこなう熱処理(仮焼き)と該仮焼きした後における粉砕とを複数回繰り返す。
ここで、混合する原料粉末は、上記の他にBi,Pb,Sr,Ca,Cuの各元素の酸化物、炭酸塩のいずれでもよい。
〔充填工程〕
上記粉砕した原料粉末をCIP(冷間静水圧プレス)成形等により例えば円柱体とし、ついでこの円柱体をAg等のシース材からなる第一のパイプ内部に充填して封入し、シース材複合体(Agシース複合体)を形成する。
【0017】
〔単心線の伸線(引き抜き)加工工程〕
上記シース材複合体(Agシース複合体)を、ダイス等によって所定の線径にまで伸線加工し、超電導単心素線(単心線)を形成する。
〔多心化工程〕
Ag等のシース材からなる第二のパイプの内部に上記単心線を所定数(例えば、19本)配置し、封入を行った後、ダイス等により所定の線径にまで伸線加工して、図3に示すような超電導多心素線(超電導素線)25を形成する。
【0018】
〔圧延熱処理反復工程〕
上記超電導多心素線25をロール圧延等の圧延加工により、所定の厚さまで圧延して平坦化する。ここでの圧延加工に用いる装置としては、例えば、上下一対のロールを備えた2重圧延機と、このロール間に超電導多心素線25を送り出す送出ドラムと上記ロール間で圧延された超電導多心素線25を巻き取る巻取ドラムとからなる搬送機からなる圧延装置(図示略)が好適に用いられる。このような圧延装置を用いて超電導多心素線25を圧延するには、上記送出ドラムから超電導多心素線25を上記ロール間に送り出して圧延するとともに圧延された超電導多心素線25を巻取ドラムで巻き取ることにより行われる。
ついで、この平坦化した超電導多心素線25を、例えば熱処理ドラムに巻回状態として電気炉等の内部に収容し、温度条件を、820℃〜850℃の範囲とし、処理時間を、10時間〜200時間の範囲に設定して熱処理を行う。
更に、上記圧延加工(またはプレス処理)および熱処理を複数回繰り返して、所定の厚みのテープ状の超電導素線19を形成する。
【0019】
〔硫化工程〕
上記テープ状の超電導素線19の表面に硫化処理を施して高抵抗化膜20を形成することにより、図2に示すようなテープ状の超電導導体(超電導テープ)18を形成する。
ここでの硫化処理に用いる装置としては、例えば、図4に示すように、真空排気可能であり、内部に硫黄蒸気が満たされる反応容器30と、該反応容器30内にテープ状の超電導素線19を送り出す送出ドラム31と、上記反応容器30内で硫化処理が施されたテープ状の超電導素線19を巻き取る巻取ドラム32とからなる硫化処理装置が好適に用いられる。上記反応容器30には、テープ状の超電導素線19を内部に導入する導入孔30aと、導入されたテープ状の超電導素線19を導出するための導出孔30bが形成されており、導入孔30aと導出孔30bの周縁部には、図4では省略されているが、テープ状の超電導素線19を通過させている状態で各孔の隙間を閉じて反応容器30内を気密状態にする封止機構が設けられている。このような反応容器30には、ヒータ(図示略)が備えられており、反応容器30を加熱できるようになっている。
【0020】
このような硫化処理装置を用いてテープ状の超電導素線19の表面に硫化処理を施すには、反応容器30の内部を真空排気した後、該反応容器30内に所定温度範囲の硫黄蒸気を供給し、ついで、送出ドラム31からテープ状の超電導素線19を上記硫黄蒸気が満たされた反応容器30内に送り出すとともに硫化処理が施されたテープ状の超電導素線19を巻取ドラム32で巻き取ると、表面に高抵抗化膜20を有するテープ状の超電導導体(超電導テープ)18が得られる。反応容器30内に供給される硫黄蒸気としては、二塩化硫黄、二塩化二硫黄、二酸化硫黄などの蒸気を挙げることができる。上記反応容器30内に供給される硫黄蒸気の温度としては、50゜C〜170゜C程度の範囲内とされる。上記反応容器30内の温度としては、供給された硫黄蒸気が液化しないような温度である。硫化処理時間としては、60〜30000秒程度である。ここでの硫化処理時間は、反応容器30内に送り込むテープ状の超電導素線19の線速等によって変更できる。
【0021】
〔転位撚り合せ工程〕
転位撚り合せ機を用いて上記テープ状の超電導導体18の複数本(図面では5本)を所定の転位ピッチで転位撚り合わせて図2に示すような転位超電導テープユニット15を形成する。ここでの転位ピッチとしては、20mm〜500mm程度の範囲内とされる。
〔巻回工程〕
上記転位超電導テープユニット15の複数組(例えば、24組)を表面に絶縁処理が施されたフォーマ17の周囲に所定のスパイラルピッチでZ巻あるいはS巻で巻回することにより、図1に示すような超電導ケーブル10が得られる。ここでのスパイラルピッチとしては、100〜2000mm程度の範囲内とされる。
【0022】
実施形態の超電導ケーブル10にあっては、テープ状の超電導導体18を複数本転位撚り合わせた転位超電導テープユニット15を用いたことにより、この転位超電導テープユニット15を構成する各テープ状の超電導導体18がその長尺方向において順次その位置を代えて変位しており、すなわち各テープ状の超電導導体18が転位超電導テープユニット15の最内側(フォーマ17側)位置から最外側位置まで繰り返して経由しながら超電導ケーブル10の長さ方向に延在しているので、各テープ状の超電導導体18を流れる電流の値と自己磁場から受ける影響との均等化を図ることができる。従って、実施形態の超電導ケーブル10によれば、各テープ状の超電導導体18において流れる電流と自己磁場から受ける影響とが等しいため、交流通電時の偏流を防止でき、内側に位置するテープ状の超電導導体18にも外側に位置するテープ状の超電導導体18と略同量の電流を流すことができ、よって臨界電流密度を増大でき、超電導ケーブルの大容量化を図ることができる。
【0023】
さらに、実施形態の超電導ケーブル10においては、交流電流を通電した場合には、図5(a)に示すように、各々のテープ状の超電導導体18において、これらに流れる交流電流による自己磁場の影響によって渦電流Fが発生する。このとき、基地29が電気抵抗率の低いAg(77Kにおいて電気抵抗率が0.3μΩcm)等からなるが、該基地29の周囲の高抵抗化膜20が電気抵抗率の高い硫化銀(77KにおいてAgの電気抵抗率の約103倍以上の電気抵抗率を有する)などからなるためにテープ状の超電導導体18の表面が高抵抗化して、図5(b)に示すように、渦電流F3が隣接するテープ状の超電導導体18のシース材29に導通することがなく、各々のテープ状の超電導導体18の内部に渦電流が留まることになる。
その結果、図6に示すように、超電導導体の積層体でもある転位超電導テープユニット15においては、渦電流F3の通電が抑えられるために、超電導ケーブル10全体としては渦電流が支配的にならず、交流損失の低減が可能となる。
実施形態の超電導ケーブルの製造方法にあっては、上述の構成としたことにより、交流通電時における交流損失を低減でき、しかも偏流を防止できる超電導ケーブル10を得ることができる。また、内部に50〜170゜Cの硫黄蒸気が満たされた反応容器30内にテープ状の超電導素線18を通過させることにより硫化処理を行うことにより、得られるテープ状の超電導導体18の超電導特性を低下させることなく、テープ状の超電導素線19の表面を高抵抗化できる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を、実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例)
Bi2O3,PbO,SrCO3,CaCO3,CuO、を、Bi:Pb:Sr:Ca:Cuの混合比が1.8:0.4:2.2:3.0となるように混合し、800℃の温度条件においておこなう熱処理(仮焼き)と該仮焼きした後における粉砕とを複数回繰り返して、原料粉末を得た。
この原料粉末をCIP(冷間静水圧プレス)成形により円筒状として、外径15mm、内径10mmのAgパイプ(第一のパイプ)内部に充填して封入し、Agシース複合体を得た。このAgシース複合体をダイス等によって線径1.9mmにまで伸線加工して単心線を形成した。ついで、外径15mm、内径10mmのAgパイプ(第二のパイプ)の内部に上記単心線を19本配置し、封入を行った後、ダイス等により線径0.9mmにまで伸線加工して、超電導多心素線を形成した。
【0025】
この超電導多心素線を、上述の2重圧延機と搬送機からなる圧延装置を用いて厚さ0.30mmまで圧延加工を施し、平坦化した。さらにこの平坦化した超電導素線を熱処理ドラムに巻回した状態で、上述の電気炉の内部に収容し、温度条件が830℃、処理時間が150時間として熱処理を行った。
更に、上記圧延加工(またはプレス処理)および熱処理を複数回繰り返して、幅2.0mm、厚さ0.20mmの横断面形状が矩形状のテープ状の超電導素線を形成した。
ついで、図4に示した硫化処理装置を用い、反応容器の内部を真空排気した後、該反応容器に約150゜Cの硫黄蒸気を供給し、ついで、送出ドラムからテープ状の超電導素線を線速20cm/時間で上記硫黄蒸気が満たされた反応容器内に送り出すとともに硫化処理が施されたテープ状の超電導素線を巻取ドラムで巻き取ると、表面に黒色の硫化銀からなる高抵抗化膜を有するテープ状の超電導導体(超電導テープ)が得られた。なお、ここでの反応容器内の雰囲気圧力は、約1atmであった。
【0026】
ついで、転位撚り合せ機を用いて上記テープ状の超電導導体の5本を転位ピッチ100mmで転位撚り合わせて転位超電導テープユニットを得た。
このようにして得られた転位超電導テープユニットを、表面にカプトンテープを貼ることにより絶縁を施した外径25mm,長さ2mのステンレス鋼製のコルゲート管(管体)に、50cmのピッチで24組スパイラル状に巻回(4巻)し、酸化物超電導ケーブルを得た。
【0027】
(比較例)
上記実施例と同様にして超電導多心素線を形成し、この超電導多心素線を上記実施例と同様にして圧延加工および熱処理を施して、幅4.0mm、厚さ0.20mmのテープ状の超電導導体を作製した。なお、このテープ状の超電導導体の表面には高抵抗化膜が形成されていないものであった。
次いで、作製したテープ状の超電導導体を、表面にカプトンテープを貼ることにより絶縁を施した外径25mm,長さ2mのステンレス鋼製のコルゲート管に、50cmのピッチで19本スパイラル状に巻回(4巻)して超電導導体層を5層積層するとともに超電導導体層間にポリイミドテープなどからなる層間絶縁層を介在させることにより、酸化物超電導ケーブルを得た。
【0028】
上記実施例で得られた酸化物超電導ケーブルと、比較例で得られた酸化物超電導ケーブルにおいて、以下の条件で測定実験を行った。
外部磁場:0T
温度:77K
交流周期:60Hz
交流電流値:1.0kA
実施例における酸化物超電導ケーブルの交流損失:0.5W/m
比較例における酸化物超電導ケーブルの交流損失:2.0W/m
【0029】
この結果、テープ状の超電導素線に硫化処理を施して高抵抗化膜を形成したテープ状の超電導導体を用いた実施例の酸化物超電導ケーブルは、高抵抗化膜を形成されていないテープ状の超電導導体を用いた比較例の酸化物超電導ケーブルに比べて、酸化物超電導ケーブルの交流損失が75%程度低減されることが測定された。
また、テープ状の超電導素線の外周に高抵抗膜が形成されていないテープ状の超電導導体の複数本を転位撚り合わすことなく管体の周囲に螺旋状に巻回した比較例の酸化物超電導ケーブルは偏流が起こっていたが、テープ状の超電導素線の外周に高抵抗化膜を形成したテープ状の超電導導体を複数本転位撚り合わせた転位超電導テープユニットを管体の周囲に巻回した実施例の酸化物超電導ケーブルは、偏流が生じていないことが分かった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の超電導ケーブルにあっては、特に、テープ状の超電導導体を複数本転位撚り合わせた転位超電導テープユニットを用いたことにより、この転位超電導テープユニットを構成する各テープ状の超電導導体が該ユニットの最内側(管体側)位置から最外側位置まで繰り返して経由しながら超電導ケーブルの長さ方向に延在しているので、各テープ状の超電導導体を流れる電流の値と自己磁場から受ける影響との均等化を図ることができる。従って、本発明の超電導ケーブルによれば、交流通電時の偏流を防止でき、内側に位置するテープ状の超電導導体にも外側に位置するテープ状の超電導導体と略同量の電流を流すことができ、よって臨界電流密度を増大でき、超電導ケーブルの大容量化を図ることができる。
【0031】
さらに、本発明の超電導ケーブルにおいては、テープ状の超電導素線のシース材からなる基地の周囲に該シース材より電気抵抗率の高い高抵抗化膜が形成されているためにテープ状の超電導導体の表面が高抵抗化しており、交流通電時における渦電流をテープ状の超電導導体の内部に留めることができ、転位超電導テープユニットにおけるテープ状の超電導導体間に生じようとする渦電流をテープ状の超電導導体の高抵抗化膜により抑制できるので、交流通電時の交流損失を少なくすることができる。
本発明の超電導ケーブルの製造方法にあっては、上述の構成としたことにより、交流通電時における交流損失を低減でき、しかも偏流を防止できる超電導ケーブルを得ることができる。
また、本発明の超電導ケーブルの製造方法の硫化処理工程において、内部に硫黄蒸気が満たされた反応容器内にテープ状の超電導素線を通過させることにより硫化処理を行うようにすると、得られるテープ状の超電導導体の超電導特性を低下させることなく、テープ状の超電導素線の表面を高抵抗化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超電導ケーブルの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の超電導ケーブルおよびその製造方法の一実施形態における転位超電導テープユニットを説明するための図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の超電導ケーブルおよびその製造方法の一実施形態における捻る前の超電導素線を示す斜視図である。
【図4】本発明の超電導ケーブルの製造方法の硫化工程において好適に用いられる硫化処理装置の例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の超電導ケーブルの一実施形態におけるテープ状の超電導導体の交流通電時等の状態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の超電導ケーブルの一実施形態における転位超電導テープユニットの交流通電時等の状態を示す模式断面図である。
【図7】従来の超電導ケーブルの例を示す斜視図である。
【図8】従来の超電導ケーブルの超電導導体の交流通電時等の状態を示す模式断面図である。
【図9】従来の超電導ケーブルの超電導導体層を示す断面図である。
【符号の説明】
10・・・超電導ケーブル,15・・・転位超電導テープユニット、17・・・フォーマ(管体)、18・・・テープ状の超電導導体(超電導テープ)、19・・・テープ状の超電導素線、20・・・高抵抗化膜、25・・・超電導多心素線(超電導素線)、
27・・・超電導体または超電導体となる材料、28・・・コア部、29・・・基地(シース材)、30・・・反応容器。
Claims (3)
- テープ状の超電導素線の表面に硫化処理が施されて高抵抗化膜が形成された複数本のテープ状の超電導導体が2列に並べられ、かつこれら複数本のテープ状の超電導導体が転位撚り合わせられた転位超電導テープユニットが管体の周囲に巻回されてなり、
前記テープ状の超電導素線は、超電導体からなるコア部または熱処理により超電導体となる材料を有するコア部がシース材からなる基地の内部に備えられてなる超電導素線を平坦化してなるものであり、前記高抵抗化膜は硫化銀からなり、前記基地を形成するシース材よりも電気抵抗率の高いものであることを特徴とする超電導ケーブル。 - 超電導体からなるコア部または熱処理により超電導体となる材料を有するコア部がシース材からなる基地の内部に備えられてなる超電導素線を圧延加工および熱処理を行ってテープ状の超電導素線を形成する圧延熱処理工程と、前記テープ状の超電導素線の表面に硫化処理を施して硫化銀からなる高抵抗化膜を表面に有するテープ状の超電導導体を形成する硫化工程と、前記複数本のテープ状の超電導導体を2列に並べ、かつこれら複数本のテープ状の超電導導体を転位撚り合わせて転位超電導テープユニットを形成する転位撚り合せ工程と、前記転位超電導テープユニットを管体の周囲に巻回する巻回工程を少なくとも備えることを特徴とする超電導ケーブルの製造方法。
- 前記硫化工程における硫化処理は、内部に硫黄蒸気が満たされた反応容器内に前記テープ状の超電導素線を通過させることにより行われることを特徴とする請求項2記載の超電導ケーブルの製造方法。
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