JP3568634B2 - 塗膜乾燥方法およびその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、塗膜液が塗膜された被塗膜物を加熱して、塗膜を乾燥させる塗膜乾燥方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子部品等の製造工程には、たとえば板状の被塗膜物に塗膜液を所望の領域、形状に塗布した後、この被塗膜物を加熱して塗膜の乾燥や平坦化する工程がある。
【0003】
このような場合に用いられる加熱装置としては、たとえば加熱用のホットプレートを複数ポジション設け、被塗膜物を各ポジションに所定のタクトタイムで搬送し、各ホットプレートにそれぞれ設けた複数のプロキシピンを介してホットプレートで順次加熱触し、この被塗膜物を乾燥させる構成が知られている。
【0004】
このように設定された乾燥装置において、一定のタクトタイムで被塗膜物を各ポジションに順次搬送し、被塗膜物および塗膜液を加熱して塗膜液を乾燥して平坦化している。
【0005】
しかし、このような従来の乾燥装置では、各ホットプレートに設けられたプロキシピンの位置が、どのホットプレートでも同じであるため、塗膜液乾燥中にプロキシピンと接触している被塗膜物の領域と、他の領域との温度に違いが生じ、この一定領域に温度むらが生じることがあり、塗膜の平坦性や品位が劣化する。
【0006】
また、この種の被塗膜物の加熱乾燥方法として、上述したホットプレートを用いた方法の他に、塗膜液が塗布された被塗膜物を乾燥炉内に搬入し、この乾燥炉内の熱伝導、対流、輻射により被塗膜物の加熱する構成も知られている。
【0007】
そして、乾燥炉内の各ポジションに被塗膜物を搬送する搬送アームと、この被塗膜物を乾燥炉内の各ポジションにて固定支持する固定アームとが設けられる。また、被塗膜物は、これら搬送アームおよび固定アーム上において、これらにそれぞれ設けられて支えピン上に載置される。
【0008】
このように設定された乾燥炉内において、一定のタクトタイムで被塗膜物を各乾燥ポジションに順次搬送し、被塗膜物および塗膜液を加熱して塗膜液を乾燥して平坦化している。
【0009】
しかし、このような従来の乾燥装置では、搬送アームおよび固定アームにそれぞれ設けられた支えピンは、搬送アームおよび固定アームのどの位置でも同じであるため、塗膜液乾燥中に支えピンと接触している被塗膜物の一定領域と、他の領域との温度に違いが生じ、この一定領域に温度むらが生じるおそれがあり、領域の塗膜の平坦性や品位が劣化する一因となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来方法では、各ホットプレートに設けられたプロキシピンや、乾燥炉内の搬送アームおよび固定アームに設けられた支えピンの位置が、それぞれ一定位置であるため、被塗膜物には、これらプロキシピンや支えピンと接触する一定領域と他の領域との間に温度の違いが生じる。このため、この一定領域の温度むらが顕著となり、この領域の塗膜の平坦性や品位が劣化するおそれがある問題を有している。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、被塗膜物の接触による温度むらの発生を抑制し、塗膜の平坦性や膜厚分布が良好で、高品位の塗膜を得ることができる塗膜乾燥方法およびその装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、塗膜液を塗膜した被塗膜物を加熱して、塗膜を乾燥させる際に、被塗膜物に加熱体との接触領域を変化させたり、乾燥炉内にて被塗膜物を支持する支えピンの支持位置を変化させるものである。
【0013】
【作用】
本発明は、塗膜液を塗膜した被塗膜物を、加熱体との接触により加熱する際に、被塗膜物と加熱体との接触領域を変化させたり、乾燥炉内にて被塗膜物の支持に用いられる支えピンの被塗膜物に対する支持位置を変化させ、被塗膜物の温度むらをなくして均一に塗膜を乾燥させる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、被塗膜物11を乾燥させる複数の加熱ポジション毎に加熱体としてのホットプレート12を設けている。これらホットプレート12上には、それぞれ複数のプロキシピン13が設けられており、塗膜液14が塗膜された被塗膜物11は、ホットプレート12により、これらプロキシピン13を介して間接的に加熱される。すなわち、被塗膜物11は、図示しない搬送機構により、所定のタクトタイムで各ポジション毎に設けられた複数のホットプレート12上に順次搬送され、プロキシピン13を介して加熱される。その結果、被塗膜物11に塗膜された塗膜液14が乾燥され、平坦化される。なお、最後に被塗膜物11を冷却ポジションに搬送し、充分冷却した後に次工程に取り出している。
【0016】
ここで、各ホットプレート12にそれぞれプロキシピン13を設けたのは、被塗膜物11とホットプレート12との直接接触による温度勾配の発生を防止するためである。すなわち、プロキシピン13を設けないと、被塗膜物11には、ホットプレート12との接触面と非接触面との間に急激な温度勾配が生じ、反りや撓みなどの形状変化が発生したり、塗膜液14の乾燥むらが生じたりする。さらには、被塗膜物11の搬送に支障が生じたりして、塗膜品位の劣化や歩留まり低下の主因となる。
【0017】
そこで、各ホットプレート12にプロキシピン13を設けて、被塗膜物11をプロシキピン13を介して間接的に加熱するように構成している。
【0018】
また、これらプロシキピン13の配置位置を、各ホットプレート12毎に異なるように設定している。すなわち、図1に示すように、5つのポジションを有するので、各ホットプレート12上におけるプロキシピン13の配置は、図2で示すように変化させる。
【0019】
すなわち、第1ポジションではプロキシピン13の位置とし、第2ポジションでのプロキシピン13の位置とする。以下、同様に第3ポジションから第5ポジションまでのプロキシピン13,13,13の位置を順次変化させる。なお、図2では、1本のプロキシピンの設置位置のみについて説明したが、図示していない他のプロキシピンについても同様に設置位置を変化させる。
【0020】
このように、プロキシピン13の設置位置を変化させた乾燥装置により、塗膜液14を塗膜した後の被塗膜物11を乾燥させる場合、被塗膜物11を各ポジションに設けられた40〜200℃程度の高温のホットプレート12上に3〜240秒の所定のタクトタイムで順次搬送し、それぞれプロキシピン13上に載置して乾燥させる。このとき、被塗膜物11とプロキシピン13との接触位置は、各ポジション毎に異なる。すなわち、被塗膜物11と加熱体の一部であるプロキシピン13との接触領域を、各ポジションへの搬送に対応して被塗膜物11に対する加熱時間の推移とともに変化させている。このため、塗膜液乾燥中に、被塗膜物11のプロキシピン13と接触している領域と他の領域との温度の違いによる温度むらの発生を極力抑制でき、塗膜全体の平坦性や品位を高く保てる。
【0021】
ここで、被塗膜物11に塗膜された塗膜液14を実際に乾燥する場合の、各ホットプレート12の温度やタクトタイム、塗膜液の性質などの具体的な実施条件を次のように設定する。
【0022】
まず、ホットプレートポジション1の温度を75℃、ホットプレートポジション2の温度を80℃、ホットプレートポジション3の温度を85℃、ホットプレートポジション4の温度を90℃、ホットプレートポジション5の温度を95℃、そして、冷却の温度を25℃に設定し、タクトタイムを40秒に設定する。
【0023】
また、塗膜液の粘度を50cP、溶媒沸点を117℃、溶媒蒸気圧を50mmHO、固形分濃度を5%、乾燥後の膜厚を0.5μmにする。
【0024】
さらに、プロキシピン13の直径を2mm、高さを3mmにし、被塗膜物11の平面形状を450mm×500mmとする。
【0025】
そして、プロキシピン13の各ポジション毎の変化量、すなわちプロキシピン13,プロキシピン13,プロキシピン13…間の間隔を25mmとする。
【0026】
上述の条件で塗膜乾燥させたところ、塗膜上プロキシピン跡径は、プロキシピンの位置が一定の従来例では15〜20mmであるのに対し、本実施例では7〜9mmと小さくなり、品位が向上した。また、搬送不良などの副作用も発生しない。
【0027】
このように、塗膜済の被塗膜物11と加熱体との接触領域を、被塗膜物の乾燥時間とともに変化させたので、プロキシピン13などの接触体との温度むらによる塗膜の平坦性劣化や品位低下のほとんどない塗膜乾燥が可能となる。
【0028】
次に、他の実施例を図3ないし図5を参照して説明する。
【0029】
図5で示すように、被塗膜物11の乾燥に乾燥炉17を用いており、図4で示す塗膜液14を塗膜後の被塗膜物11を乾燥炉17内に搬入して、この乾燥炉17内の熱伝導、対流、輻射により乾燥させている。また、この乾燥炉17内には図5に示すように第1から第5までの5つの乾燥ポジション16〜16および1つの冷却ポジション16が設けられている。なお、乾燥ポジションは5つに限らず、2〜10程度設定すれば良い。
【0030】
また、この乾燥炉17内には、被塗膜物11を各ポジション16〜16に搬送する搬送アーム18が設けられ、この搬送アーム18で搬送された被塗膜物11を各ポジション16〜16上で固定支持する固定アーム19が、図3で示すように、搬送アーム18と平行に設けられている。そして、これら搬送アーム18および固定アーム19の図示上面には複数の支えピン20,21がそれぞれ設けられている。
【0031】
ここで、支えピン20,21を設けたのは、プロキシピン13の場合と同様に、被塗膜物11での温度勾配の発生を防止するためである。すなわち、支えピン20,21を設けずに被塗膜物11を直接搬送アーム18および固定アーム19上で支えると、被塗膜物11には、各アーム18,19との接触面と非接触面との間に急激な温度勾配が生じ、被塗膜物11に反りや撓みなどの形状変化が発生したり、塗膜液14に乾燥むらが生じたりする。さらには、被塗膜物11の搬送に支障が生じたりして、塗膜品位の劣化や歩留まり低下の主因となる。
【0032】
そこで、搬送アーム18および固定アーム19にそれぞれ支えピン20,21を設けて、被塗膜物11がこれら搬送アーム18および固定アーム19の表面に直接接触しないように構成している。
【0033】
この実施例では、さらにこれら支えピン20,21の相互間隔、すなわち、図4で示すA,B,C,D,E,F,…がそれぞれ異なるように位置設定している。このように支えピン20,21を位置設定することにより、被塗膜物11に対する支えピン20,21の支持位置を、加熱時間の推移、すなわち、各ポジション16〜16への搬送の推移とともに変化させることができる。
【0034】
このように構成された40〜200℃の高温状態の乾燥炉17内において、3〜240秒のタクトタイムで被塗膜物11を、搬送アーム18により各乾燥ポジション16〜16に順次搬送し、対応する乾燥ポジション16〜16にて固定アーム19上に支持固定する。そして、これら各乾燥ポジション16〜16にて順次被塗膜物11および塗膜液14を加熱して塗膜液の乾燥と平坦化している。
【0035】
最後に、被塗膜物11を冷却ポジション16に搬送し、被塗膜物11を充分冷却した後、次工程に取り出している。
【0036】
ここで、搬送アーム18による搬送時および固定アーム19による支持固定時に、被塗膜物11はそれぞれ支えピン20,21上に支持されている。また、これら支えピン20,21の相互間隔A,B,C,D,E,F,…は、それぞれ異なるように位置設定してあるため、各ポジション16〜16間の搬送時および各ポジション16〜16での支持固定時のそれぞれにおいて、被塗膜物11と支えピン20,21との接触位置は、それぞれ異なっている。
【0037】
従来は、この支えピン20,21の相互間隔A,B,C,D,E,F,…がそれぞれ等しかったため、塗膜液14の乾燥中に支えピン20,21と接触している被塗膜物11の一定領域と、他の領域との温度に違いが生じ、この一定領域に温度むらが顕著に生じて、塗膜の平坦性や品位が劣化していたが、被塗膜物11と支えピン20,21との接触位置が、各ポジション16〜16間の搬送時および各ポジション16〜16での支持固定時のそれぞれにおいて異なっているため、このような問題はほとんど生じず、良好な塗膜状態を得ることができる。
【0038】
ここで、被塗膜物11に塗膜された塗膜液14を実際に乾燥する場合の、乾燥炉17内の各ポジション16〜16の温度やタクトタイム、塗膜液の性質など、具体的な実施条件を次のように設定する。
【0039】
まず、第1の乾燥ポジションの温度を75℃、第2の乾燥ポジションの温度を80℃、第3の乾燥ポジションの温度を85℃、第4の乾燥ポジションの温度を90℃、第5の乾燥ポジションの温度を95℃、そして、冷却ポジションの温度を25℃に設定し、タクトタイムを40秒に設定する。
【0040】
また、塗膜液の粘度を50cP、溶媒沸点を117℃、溶媒蒸気圧を50mmHO、固形分濃度を5%、乾燥後の膜厚を0.5μmにする。
【0041】
上述の条件で塗膜乾燥させたところ、塗膜上支えピン跡径は、支えピンの間隔が一定の従来例では15〜20mmであるのに対し、本実施例では7〜9mmと小さくなり、品位が向上した。また、搬送不良などの副作用も発生しない。
【0042】
このように、塗膜済の被塗膜物11と支えピン20,21との接触領域を、被塗膜物11の乾燥時間と共に変化させたので、温度むらによる塗膜の平坦性劣化や品位低下のほとんどない塗膜乾燥が可能となる。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、塗膜液の乾燥に際して、被塗膜物と加熱体との接触位置、あるいは、被塗膜物と乾燥炉内での支えピンとの接触位置を変化させたので、温度むらの発生が少なく、塗膜の平坦性劣化や膜圧分布劣化、品位低下のほとんどない塗膜乾燥ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の塗膜乾燥装置を示す正面図である。
【図2】同上プロキシピンの配置関係を示す平面図である。
【図3】同上他の実施例の要部を示す平面図である。
【図4】同上要部を示す正面図である。
【図5】同上全体構成を示す正面図である。
【符号の説明】
11 被塗膜物
12 加熱体としてのホットプレート
17 乾燥炉
20,21 支えピン

Claims (4)

  1. 塗膜液を塗膜した被塗膜物を加熱して、前記塗膜を乾燥させる塗膜乾燥方法において、
    前記被塗膜物に加熱体との接触により加熱させ、前記被塗膜物と加熱体との接触領域を、被塗膜物に対する加熱時間の推移とともに変化させる
    ことを特徴とする塗膜乾燥方法。
  2. 塗膜液を塗膜した被塗膜物を加熱して、前記塗膜を乾燥させる塗膜乾燥方法において、
    前記被塗膜物を乾燥炉内に搬入して加熱し、
    この乾燥炉内にて前記被塗膜物を支持する支えピンの支持位置を加熱時間の推移とともに変化させる
    ことを特徴とする塗膜乾燥装置。
  3. 塗膜液を塗膜した被塗膜物を加熱して、前記塗膜を乾燥させる塗膜乾燥装置において、
    前記被塗膜物を接触により加熱させる接触領域を異ならせた複数の加熱体
    を具備したことを特徴とする塗膜乾燥装置。
  4. 塗膜液を塗膜した被塗膜物を加熱して、前記塗膜を乾燥させる塗膜乾燥装置において、
    前記被塗膜物を加熱する乾燥炉と、
    この乾燥炉内にて前記被塗膜物の搬送支持し間隔を異ならせた複数の支持体とを具備したことを特徴とする塗膜乾燥装置。
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