JP3568369B2 - 被溶接物の溶接方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,導電性の良好な金属材料、又は異種金属材料同士の溶接を可能にする被溶接物、及びその溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に金属材料の溶接のプロセスは、溶接電流が被溶接物を通流する際にそれらの接触抵抗などによって発熱し、その熱で金属材料が溶融して固化することにより溶接又は接合が行われるものである。
【0003】
しかし、異種金属のプロジェクション溶接はお互いに軟化温度、熱伝導度、熱膨張係数などが異なる金属材料の軟化による拡散溶接であるために、一般に同種金属の溶接に比べて所望の溶接品質を得るのが難しいとされている。また、同種金属の場合にも、双方の被溶接物が真鍮のように導電性が高い場合には、溶接部分の熱拡散が非常に大きいためにプロジェクション溶接は困難とされている。
【0004】
したがって、このような場合、量産ラインに採用される接合方法としては、ろう付けによるのが一般的であり、どうしても溶接を行いたいときにはプラズマアーク溶接方法が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら方法はいずれも溶接箇所に沿って熱源を移動させるので、接合に時間がかかるという大きな欠点がある。また、前処理工程において脱脂などを行うための洗浄工程や、ろう付け時の酸化膜などを除去するための後処理工程が必要であばかりでなく、歩留りが低い、熱ひずみが大きい、作業環境を保持するための設備が必要であるなどの経済的な欠点がある。さらにまた、作業者の熟練度によりろう付け品質に大きな差異が生ずるなどの問題もあった。
【0006】
本発明はこのような従来の問題点を解決し,エアコン関連のバルブ部品などの異種金属材料同士、あるいは熱伝導の良好な同種金属材料同士の溶接を可能にする被溶接物、及びその溶接方法を提供することを主目的としている。
【0007】
【問題を解決するための手段】
異種の金属材料又は熱伝導の非常に良好な金属材料からなる第1の被溶接物と第2の被溶接物とを拡散接合する方法において、前記第2の被溶接物は、前記第1の被溶接物が溶接される部分に溶接溝を備えると共に、該溶接溝に沿ってその比較的近傍に、溶接部分からの熱伝達による放熱を抑制する補助溝を備えており、前記第2の被溶接物の前記溶接溝に前記第1の被溶接物の先端面を突き合わせ、前記第1の被溶接物と前記第2の被溶接物との間に高速応答の加圧力を加えると共に、短時間のパルス状の溶接電流を通流させて拡散接合することを特徴とする溶接方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施をするための形態】
以下図面により発明の実施をするための形態について説明する。先ずこの発明は、溶接箇所での熱集中を高めると共に変形し易くして、被溶接物Aと被溶接物Bとが軟化を始めたときに、被溶接物Aの先端部分が被溶接物Bの溶接溝内に入り込み易くし、被溶接物Aと被溶接物Bとの接合境界面積を大きくすることにより、接合強度を増大させようという考えに立脚している。
【0013】
先ず図1(A)において,Aは軸線Xを中心線とする銅のように熱伝導が非常に良好な金属材料からなるパイプ状又はリング状の第1の被溶接物の一部分であり、肉厚aのパイプの円周先端部分を、肉厚aから厚みbまで斜面A1となるよう徐々に薄く切削加工したものである。
【0014】
第1の被溶接物Aの先端部分が突き合わされる真ちゅうのような第2の被溶接物Bの一部分には、環状の溶接溝B1,その両側の近傍には溶接溝B1に沿って環状の補助溝B2とB3が形成される。溶接エネルギの通電により溶接溝B1は被溶接物Aと被溶接物Bとが軟化を始めたとき、被溶接物Aの先端部分が被溶接物Bの溶接溝内に入り込んで、被溶接物Aと被溶接物Bとの接合境界面積を大きくする働きを行う。このとき、補助溝B2とB3は被溶接物AとBとの溶接部分からの熱伝達による放熱を抑制して、その溶接部分に熱を集中させると同時に、変形し易くする働きを行うので、被溶接物AとBの拡散接合面積が拡大され、良好な拡散接合結果が得られる。
【0015】
環状の溶接溝B1及び補助溝B2とB3はそれぞれの被溶接物AとBの平坦面に対してほぼ垂直になるように形成され、これら溝Bの断面形状は、必ずしも図示のように矩形状でなくとも良いが、溶接溝B1の入口の幅cは、第1の被溶接物Aの先端部の厚みbと同程度か、あるいはそれよりも大きくなっており、また肉厚aよりも小さくなければならない。
【0016】
溶接溝B1の入口の幅cが被溶接物Aの先端部の厚みbよりも小さいと、接合電流の通流により被溶接物Aの先端部分と被溶接物Bの溶接溝B1と補助溝B2とB3との間の領域が軟化したときに、被溶接物Aの先端部分が被溶接物Bの溶接溝B1に入り込むのが難しいために、良好な接合境界面が得られず、また溶接溝B1の入口の幅cが被溶接物Aの厚みaよりも大きいと、溶接溝の入口における被溶接物Bと被溶接物Aとの接触状態が悪くなるため、十分な拡散接合強度が得られない。
【0017】
なお、溶接溝B1の深さは、必要とされる接合強度の大きさによって異なるが、傾向として、第1の被溶接物Aの肉厚aが大きいほど接合面積が大きくなるので浅くてもよく、第1の被溶接物Aの肉厚aが小さいほど大きな接合面積が得られ難いので、深くするのが好ましい。
【0018】
補助溝B2とB3の深さは接合部を含む母材の機械的強度の面から、溶接溝B1の深さと同等以下が好ましい。補助溝B2とB3の断面形状は任意のもので良く、形成し易い形状で良い。また、補助溝B2とB3の幅は溶接溝B1の入口の幅cと同等、若しくはそれよりも小さいのが好ましい。特に、溶接溝B1の入口の幅cは比較的大きい場合には、補助溝B2とB3の幅は幅cよりも小さい方が機械的強度の面から好ましい。
【0020】
図1(B)は図1(A)の実施例を変更したものを示し、溶接溝B1に対して内側に位置する補助溝B3を削除して外側の補助溝B2だけにすると共に、外側の補助溝B2を入口が広く、底に向けて幅が狭くなる形状にしたものである。
【0021】
また、図1(C)は図1(A)の実施例における溶接溝B1に対して外側に位置する補助溝B2を削除して内側の補助溝B3だけにすると共に、溶接溝B1を入口が広く、底に向けて幅が狭くなる形状にし、さらに第1の被溶接物Aの先端部に斜面を形成しないものである。この実施例では、第1の被溶接物Aの幅は第2の被溶接物Bの入口の幅よりも幾分小さくなるよう形成されている。
【0022】
次に、図2に示す実施例は導伝性の良好な平板状金属部分からなる第1の被溶接物Aと導伝性の良好な金属ブロックからなる第2の被溶接物Bとを接合する例を示す。被溶接物Bは左右両側に紙面の表裏方向にほぼ真っ直ぐに延びる溶接溝B1、B1’を備えると共に、その近傍にそれぞれの溶接溝B1、B1’に沿って補助溝B3,B3’を備える。
【0023】
第1の被溶接物Aは、第2の被溶接物Bの溶接溝B1、B1’に合致する位置にほぼ真っ直ぐに延びるプロジェクションA2,A2’を備える。第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bとを重ね合わせたとき、プロジェクションA2,A2’の先端部分は溶接溝B1、B1’内に位置する。互いの接合部をこのような構造にすることにより、第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bとを突き合わせたときに接触面積が比較的小さいこと、溶接電流による発熱が集中されること、及び第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bとの接合部が軟化したとき接合面積が大きくなることから、前述のように、第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bが真ちゅうや銅のように熱伝導の非常に良好な同種金属材料からなる場合でも、また異種金属材料からなる場合にも、満足し得る機械的強度を呈する接合を行うことができる。
【0024】
次に、これら第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bとを溶接する方法について説明する。図3は、この溶接を実施するための溶接装置の一例を示す。図3において,1はシリンダ装置のような加圧機構、2は加圧機構1の底部に固定されて電極ホルダとしての役割を行う金属ブロック、3と4は左右対称のフレキシブル部材であり、それぞれの一端側は金属ブロック2に固定されている。電気絶縁材料からなる断面コの字状の第1の支持部材5は、雄ねじ6によって金属ブロック2に固定されている。第2の支持部材7は、フレキシブル部材3と4によって支えられており、第1の支持部材5の外径よりも幾分大きな内径部を持ち、第1の支持部材5の一部分がその内部まで延びている。
【0025】
8は第2の支持部材7の上下方向の微小な動きに高速で追従して、第1の被溶接物Aと第2の被溶接物Bとの溶接箇所の金属材料の軟化にかかわらず、溶接箇所に常時一定の加圧力を保持する加圧補助部材であり、一般的に応答速度の優れたスプリングなどが用いられる。加圧補助部材8は第1の支持部材5と第2の支持部材7との間に挟まれて支持されており、加圧機構1からの下方向の加圧力は加圧補助部材8を通して第2の支持部材7に伝達される。
【0026】
上部溶接用電極として働くクランプ電極9は、第2の支持部材7に固定されており、二つ又はそれ以上に分割された電極部から構成される。これら電極部が自動的に中心線Yに対して開いたり閉じたりして、第1の被溶接物Aをクランプしたり、開放したりする。10は下部溶接用電極である。
【0027】
また、一端が金属ブロック2の主面2Aに対して垂直になるよう植設され、他端は固定端となっている互いに平行な2本の円筒状のガイド部材11A,11Bを備える。一対の直線駆動部材12A,12Bは同一構造であり、直線駆動部材12Aはガイド部材11Aにガイドされて直線運動を行う通常のリニアモーションベアリング部12A1とその外筒外面に設けられた電気絶縁部材12A2とそれらリニアモーションベアリング部12A1と電気絶縁部材12A2とが嵌入される電極支持ブロック部12A3とから構成される。
【0028】
次にこの装置によって図1に示した構造の接合部をもつ被溶接物同士を接合する接合接動作について説明すると、先ずクランプ電極9が開いた状態から閉じて第1の被溶接物Aをクランプする。加圧機構1が動作して下方向に動くと、図示されていない結合機構により上部溶接電極ヘッド全体が下降する。そして、加圧機構1がさらに下降するのに伴い、加圧補助部材8が収縮すると同時に、フレキシブル部材3と4が撓み、金属ブロック2と第1の支持部材5とガイド部材11A,11Bは加圧機構1と一緒に下降する。したがって、クランプ電極9などが停止した後に金属ブロック2などが降下した距離だけのスプリングような加圧補助部材8が収縮し、かつフレキシブル部材3と4が撓む。加圧機構1が加圧している状態では、加圧補助部材8は下向きの機械的エネルギーを蓄え、またそれらはあるレベル以上の上向きの力を吸収する作用を行う。
【0029】
このように加圧機構1が動作して下降運動を行っている過程で加圧補助部材8が収縮し、第1の支持部材5の外壁が第2の支持部材7の内壁に沿ってほとんど抵抗もなく降下する。この過程で、第1の被溶接物Aの先端部は第2の被溶接物Bの丘部B1に設けられた環状溝B2部分に加圧され、その圧力が予め決められたレベルに達すると、給電導体(図示せず)から金属ブロック2に供給される溶接電流は、フレキシブル部材3と4、第2の支持部材7及びクランプ電極9を通してパイプ形状銅製部材B及び鉄製部材Aに流れ、さらに下部溶接用電極10に流れる。
【0030】
これに伴い、先ず接触している被溶接物Aの先端部と被溶接物Bの丘部B1とが軟化を始め、加圧補助部材8の高応答の加圧力により、被溶接物Aの先端部は被溶接物Bの丘部B1の溝B2に入り込み、入り組んだ面積の広い接合面を形成する。この被溶接物Aの先端部が被溶接物Bの丘部B1の溝B2に入り込んだ部分の拡散接合が非常に接合強度を高めていることが確認できた。
【0031】
次に、図4により溶接電流について述べる。図4(A)において、交流電源ACからの交流電力はトランスT1で変成され、整流器Reで整流された後、半導体スイッチS1を通してコンデンサバンクCoに流れ、このコンデンサバンクCoを充電する。コンデンサバンクCoが所定の値まで充電されると、サイリスタ又はパワーMOSFETなどからなる高速半導体スイッチS2がオンすることにより、コンデンサバンクCoの充電電荷は溶接用トランスT2を介して放電され、溶接用電極WEを図4(B)に示すようなパルス状の電流波形の溶接電流iを流す。
【0032】
ここで溶接電流iはコンデンサバンクCo、溶接トランスT2及び溶接電極WEなどを含む放電回路のインピーダンスによって決まる放電時定数に従って減少する波形のパルス状電流となる。特に被溶接物A,Bが異種金属、あるいは真鍮のような熱伝導の良好な金属同士の溶接の場合には、被溶接物へ電流を集中して流す必要があり、例えば、溶接電流iはそのほぼ立ち上がり時点からピーク値近傍までの時間幅がほぼ10ミリ秒以下で、かつ被溶接物に加えられる加圧力の応答時間以上の範囲であるのが好ましい。
【0033】
所定の加圧力で加圧された状態において、例えば10ミリ秒よりも短い時間幅をもつパルス状の溶接電流iを流すことにより、第1の被溶接物Aの先端部と第2の被溶接物Bの丘部B1は軟化をする。この際、第1の被溶接物Aの先端部が、第2の被溶接物Bの本体部分に比べて十分に体積の小さい丘部B1に当された状態でパルス状の溶接電流iが流れるので、被溶接物A,Bが異種金属、あるいは熱伝導の良好な金属同士であっても、前記先端部と丘部B1の双方とも軟化し、好ましい接合を行える電流条件を与える。
【0034】
それら双方の金属材料の溶接箇所が軟化を始めるのに伴い、例えば加圧補助部材8が高速応答のスプリングのとき、前述のようにその溶接部分の膨張を加圧補助部材8で瞬時に吸収すると共に、加圧力が働いている状態では、常時、加圧補助部材8が溶接部分に加圧力を与えているので、拡散溶接の進行に伴う金属材料の軟化による沈みに対しても極めて応答の速い加圧を与えることができる。この加圧補助部材8の応答速度が速ければ速いほど、パルス幅の短い溶接電流iを、つまり短時間に電流エネルギーを集中させて流すことができ、熱伝導の極めて良好なものでも、さらに一層好ましい状態に軟化させることができる加圧条件を与える。ここで、加圧補助部材8の応答速度はパルス状の溶接電流iのパルス幅よりも速いのが好ましい。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように,本発明によれば,第1と第2の被溶接物が異種金属材料、あるいは熱伝導の非常に良好な金属材料からなる場合にも、満足の行く接合強度が得られるなど、好ましい接合結果を得ることのできる被溶接物、及びその溶接方法を提供することができる。
【0036】
また、本発明によれば,チリ(スパッタリング)が発生し難いので、特にチリが特性に悪影響を与える小型の電子部品の気密封止に好適な被溶接物、及びその溶接方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被溶接物の実施例を説明するための図である。
【図2】本発明の被溶接物の別の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明の接合方法を実施するための溶接装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の接合方法を実施するための溶接回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
A・・・第1の被溶接物 B・・・第2の被溶接物
B1・・・溶接溝 B2,B3・・・補助溝
1・・・加圧機構 2・・・金属ブロック
3、4・・・フレキシブル部材 5・・・第1の支持部材
7・・・第2の支持部材 8・・・弾性部材
9・・・クランプ電極 10・・・下部溶接用電極
11・・・ガイド部材 12・・・直線駆動部材
AC・・交流電源 T1・・トランス
Re・・整流器 S1・・スイッチ
Co・・コンデンサバンク S2・・高速半導体スイッチ
T2・・溶接トランス Rv・・パルス幅調整用抵抗

Claims (1)

  1. 異種の金属材料又は熱伝導の非常に良好な金属材料からなる第1の被溶接物と第2の被溶接物とを拡散接合する方法において、
    前記第2の被溶接物は、前記第1の被溶接物が溶接される部分に溶接溝を備えると共に、該溶接溝に沿ってその比較的近傍に、溶接部分からの熱伝達による放熱を抑制する補助溝を備えており、
    前記第2の被溶接物の前記溶接溝に前記第1の被溶接物の先端面を突き合わせ、前記第1の被溶接物と前記第2の被溶接物との間に高速応答の加圧力を加えると共に、短時間のパルス状の溶接電流を通流させて拡散接合することを特徴とする溶接方法。
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