JP3568109B2 - エンジンの排気消音装置とこれを備えた小型滑走艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからの排気ガスに水を混合して消音する水マフラを備えたエンジンの排気消音装置とこれを備えた小型滑走艇に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の従来の排気消音装置として、図6に示すように、エンジンからの排気管51の後端部を水マフラ52の入口側に接続し、排気管51の排気通路51aの外周には冷却水通路51bを設け、排気管51内の排気通路51aを通った排気ガスと、冷却水通路51bを通った冷却水とを水マフラ52内で混合させて消音したのち、テールパイプ53から外部に排出させ、さらに、排気管51の途中または、水マフラ52の出口側に接続されるテールパイプ53の途中に共鳴室54または55を設けたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような構成では、例えばエンジンルームの狭い小型滑走艇に搭載するエンジンに適用する場合、スペースの面で制約があり、取付け・取外しやメンテナンスが容易でなくなる場合がある。
【0004】
なお、冷却水を混入させないで、排気ガスのみを導入するマフラー内に共鳴室を設けたものも知られているが(特開昭54−98432号公報参照)、これによれば、スペース面の制約は解消されるが、排気ガスのみの共鳴作用では消音効果が十分とは言えない。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたもので、スペースの面で制約を受けることなく、取付け・取外しやメンテナンスが容易で、大きな消音効果が得られるエンジンの排気消音装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係るエンジンの排気消音装置は、ケース内に1つ以上の膨張室を有し、前記ケースの前端壁に設けた入口管から導入されたエンジンの排気ガスとエンジン冷却後の冷却水とを膨張室内で混合させるものであって、前記ケース内に、前記膨張室に連通する共鳴室が、最前段の膨張室とこれに連通してその前方に位置する共鳴室とが、前記最前段の膨張室に接続された前記入口管と同心状に配置されて前記入口管の外周側に環状の連通路を形成する連通管により連通されている。
【0007】
前記エンジンの排気消音装置によれば、水マフラのケース内に排気ガスと冷却水とを混合させる膨張室のほかに、この膨張室に連通する共鳴室が設けられているので、排気音における前記共鳴室で共鳴する周波数成分が効果的に減衰し、消音効果が向上する。特に、共鳴室内で排気ガスと水の飛沫および蒸気とが混在することによりガス密度が高くなるので、分子同志の衝突による振動エネルギーの減少効果が大きくなる結果、優れた消音効果が得られる。また、膨張室を有するケース内に共鳴室が設けられので、装置が嵩張らず、スペースの面で制約を受けることがなく、エンジンルームの狭い小型滑走艇などに設置しても、容易に取付け・取外しでき、メンテナンス性が良くなる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るエンジンの排気消音装置は、請求項1の構成において、前記ケースが、筒壁と、その両端を閉塞する端壁とを有し、前記端壁とケース内に取り付けた中間壁とにより前記共鳴室が形成されている。
【0009】
前記エンジンの排気消音装置によれば、ケースの端壁とケース内の中間壁とにより共鳴室が形成されるので、共鳴室を形成する部材の一部を水マフラの基本構造部材の一つである端壁で兼用することができ、それだけ部品点数が低減されて、装置が簡略化され、かつ軽量化される。また、ケースの端壁と、ケース内の中間壁とが、膨張室に対して二重壁構造となるので、ケースの板厚を増大させることなくケースからの透過音を抑制することができ、消音効果がより増大する。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るエンジンの排気消音装置は、請求項1または2の構成において、ケース内に複数の膨張室を形成するための隔壁が取り付けられており、前記隔壁の少なくとも1つとケース内に取り付けた中間壁とにより前記共鳴室が形成されている。
【0011】
前記エンジンの排気消音装置によれば、膨張室を形成するためのケース内に取り付けられた隔壁と、ケース内に取り付けた中間壁とにより共鳴室が形成されているので、共鳴室を形成する部材の一部を水マフラの基本構造部材の一つである隔壁で兼用することができ、それだけ装置が簡略化され、かつ軽量化される。
【0012】
また、本発明の請求項4に係る小型滑走艇は、エンジンと、請求項1ないし3のいずれかの構成の排気消音装置と、前記エンジンにより駆動される推進機と、前記推進機の高圧部から取り込まれた冷却水を、前記エンジンに供給する冷却水導入通路とを備えている。
【0013】
前記小型滑走艇によれば、小型滑走艇のエンジンの排気音を効果的に消音させることができ、狭いエンジンルームに容易に設置でき、排気消音装置のメンテナンスも容易に行うことができる。また、推進機の高圧部から取り込まれた冷却水が、冷却水導入通路からエンジンに供給され、そのエンジン冷却後の冷却水と排気ガスとが前記排気消音装置に導入されるので、冷却水導入のためのポンプが不要になり、それだけ構造が簡略化される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態に係るエンジンの排気消音装置を図1ないし図5にしたがって説明する。図1は、この実施形態のエンジンの排気消音装置を備えた小型滑走艇の側面図である。
図1において、小型滑走艇1の船体2はハル2aの上にデッキ2bを接合して構成され、デッキ2bには座席2cと足載置台(床)2dとが設けられ、さらに、ハンドル2eを備えている。船体後部には、船底から船尾2fにかけてダクト8が形成されており、このダクト8内に水ジェット式の推進機3が装着されている。推進機3のシャフト7は、カップリング6を介して船内のエンジン4の回転軸5に連結されている。エンジン4により推進機3が駆動され、船体2が推進する。
【0015】
図2は、前記小型滑走艇1のデッキ2bを除いて各装置の設置状態を示した平面図である。
図2において、船体2の前部には燃料タンク19が配置され、エンジン4は船体2のほぼ中央に配置されている。前記エンジン4は多気筒(ここでは3気筒)2サイクルエンジンであって、このエンジン4から船尾部にわたる部分には、エンジン4からの排気ガスに水を混合して消音する水マフラ10を備えた排気消音装置9と、推進機3の高圧部から取り込まれた冷却水を、前記エンジン4のウォータジャケットに導く冷却水導入通路11が設けられている。冷却水はさらに、ウォータジャケットから後述する排気管12の冷却水通路17(図3)に導入される。
【0016】
排気消音装置9は、前記水マフラ10と、エンジン4の各気筒に接続されてエンジン4からの排気ガスを水マフラ10に導く単一の排気管12と、水マフラ10を船尾2f付近のダクト8内に臨む排気口15に接続するテールパイプ14とで構成されている。図3(A)に示すように、前記排気管12は、二重管構造となっており、排気ガスGの通路16の外周に冷却水通路17を有し、エンジン4のウォータジャケットを出た冷却水Wが、接続パイプ20を通って前記冷却水通路17に導入される。
【0017】
水マフラ10は、筒壁22と、その両端を閉塞する前後の端壁23,24とを有するほぼ水平な軸心を持つ円筒形のケース21を有し、そのケース21内は、3つの隔壁26,27,28により前後4段の膨張室29A,29B,29C,29Dに仕切られ、最前段の膨張室29Aに接続される入口管13が前方の端壁23に溶接により固定されている。入口管13は、ケース21に対して同心状に配置される。この入口管13の上流端と、前記排気管12の後端部12aとが、ゴム製のチューブ18を介して接続され、その接続部で排気ガス通路16と外周の冷却水通路17とが合流するようにされている。これにより、前記接続部で排気ガスGと冷却水Wとが混合し、排気ガスGの温度が下げられる。
【0018】
前記最前段の膨張室29Aは、隔壁26,27を貫通する円管からなる2つの接続管30により、後方から2つ目の2段目膨張室29Bに接続されている。また、その膨張室29Bは、隔壁27を貫通するパイプからなる2つの接続管31により、前方から2つ目の3段目膨張室29Cに接続され、さらに、隔壁27,28を貫通するパイプからなる2つの接続管32により、3段目膨張室29Cと最後段(4段目)の膨張室29Dとが接続されている。最後段の膨張室29Dには、テールパイプ14が接続されている。
【0019】
これにより、前記入口管13を経て最前段の膨張室29Aに導入される排気ガスGと冷却水Wとの混合体が、2段目膨張室29Bおよび3段目膨張室29Cを経て最後段の膨張室29Dへ導出され、排気音が低減される。前記各接続管30〜32はそれぞれ、図3(B)に示すように、2本ずつ設けられ、かつ、すべての接続管30〜32がケース21と軸心と同心円上に中心を持つように配置されている。
【0020】
また、前記水マフラ10内には、最前段の膨張室29Aに連通する共鳴室33が設けられている。この共鳴室33は、排気音の所定周波数成分に共鳴してその周波数成分を低減するものであって、ケース21の前方の端壁23と、この端壁23に隣接してケース21内に取り付けた中間壁34とにより形成される。また、前記中間壁34には、前記入口管13と同心状に配置されて入口管13の外周側に環状の連通路を形成する連通管35が設けられている。この共鳴室33に共鳴する排気音の周波数fは、共鳴室33の有効容積をV、前記連通管35の環状連通路の断面積をS、前記連通管35の有効長さをL、音速をCとすると、
f=(C/2π)√(S/(L・V))
となり、この共鳴周波数fの排気音が減音される。
【0021】
前記排気消音装置9では、水マフラ10内に、膨張室29A〜29Bとともに、膨張室29Aに連通する共鳴室33が形成されているので、排気音における前記共鳴室33で共鳴する周波数成分が効果的に減衰し、消音効果が向上する。また、共鳴室33には、その連通管35から、排気ガスGとともに、冷却水Wの飛沫および蒸気が混合して入るので、共鳴室33内のガス密度が上昇し、分子同志の衝突による振動エネルギーの減少が大きくなる結果、共鳴室33による消音効果がより向上する。さらに、共鳴室33は水マフラ10内に設けられているから、装置が嵩張らず、スペースの面で制約を受けることがなく、小型滑走艇1の狭いエンジンルームに容易に設置でき、取付け・取外しも容易になり、メンテナンス性が良くなる。
【0022】
また、前記共鳴室33の一方の壁が、ケース21の前方の端壁23により形成されているから、共鳴室33を形成する部材の一部が水マフラ10の基本構造部材の一つである端壁23で兼用されるので、それだけ部品点数が減少して、構造が簡略化されるとともに、軽量化される。また、ケース21の端壁と、ケース21内に取り付けられる中間壁34とが、最前段の膨張室29Aに対して二重壁構造となるので、ケース21の板厚を増大させることなくケース21からの透過音を抑制することができ、消音効果がより増大する。さらに、共鳴室33の連通管35は、ケース21軸心と同心に配置されているので、小型滑走艇1の船体が傾いても、膨張室29Aの底部に溜まった水が前記連通管35から共鳴室33内に浸入して共鳴室33内の容積を減少させるのを防止できる。
【0023】
図4は本発明の第2実施形態を示す。この排気消音装置9では、水マフラ10内に、前記実施形態における共鳴室33のほかに、最後段の膨張室29Dに連通する第2の共鳴室36が形成されている。この第2の共鳴室36は、ケース21の後方の端壁24と、この端壁24に隣接してケース21内に取り付けた中間壁37とにより形成される。また、前記中間壁37の下部には円形パイプからなる連通管38が設けられ、これにより第2の共鳴室36が最後段の膨張室29Dに連通する。この第2の共鳴室36の有効容積、連通管38の断面積、連通管38の長さ等の条件は、第1の共鳴室33と異ならせてあり、第1の共鳴室33と異なる周波数の排気音と共鳴するようにされている。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0024】
この排気消音装置9では、それぞれ共鳴周波数の異なる2つの共鳴室33,36が水マフラ10内に設けられているので、排気音の低減効果がより増大する。また、第2の共鳴室36も、ケース21の後方の端壁24とケース21内に取り付けられる中間壁37とで形成されているので、部材の兼用による構造の簡略化と軽量化が実現されるとともに、ケース21の板厚を増大させることなくケース21からの透過音を抑制することができ、消音効果がより増大する。
【0025】
図5は本発明の第3実施形態を示す。この排気消音装置9では、水マフラ10内に、図4の実施形態における2つの共鳴室33,36のほかに、最前段の膨張室29Aに連通する第3の共鳴室39が形成されている。この第3の共鳴室39は、3段目膨張室29Cを形成する一方の隔壁26と、この隔壁26に隣接してケース21内に取り付けた中間壁40とにより形成される。また、前記中間壁40には、ケース21の軸心と同心位置にパイプからなる連通管41が設けられ、これにより第3の共鳴室39が最前段の膨張室29Aに連通する。この共鳴室39の有効容積、連通管41の断面積、連通管41の長さ等の条件は、第1および第2の共鳴室33,36と異ならせてあり、これら共鳴室33,36と異なる周波数の排気音と共鳴するようにされている。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【0026】
この排気消音装置9では、それぞれ共鳴周波数の異なる3つの共鳴室33,36,39が水マフラ10内に設けられているので、排気音の低減効果がより増大する。また、第3の共鳴室39の連通管41も、第1の共鳴室33の場合と同様に、ケース21の軸心と同心位置に配置されているので、小型滑走艇1の船体が傾いても、膨張室29Aの底部に溜まった水が前記連通管41から共鳴室39内に浸入するのを防止できる。また、第1および第2実施形態と同様に、部材の兼用による構造の簡略化と軽量化が実現される。
【0027】
なお、前記実施形態では、第3の共鳴室39を、3段目膨張室29Cを形成する一方の隔壁26と中間壁40とで形成したが、このほか、2段目膨張室29Bを形成する一方の隔壁28とこれに隣接させる中間壁とにより、2段目膨張室29Bに連通する第3の共鳴室を形成するようにしてもよい。
【0028】
また、前記各実施形態では、2サイクルエンジンに適用した場合について説明したが、4サイクルエンジンに適用してもよい。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエンジンの排気消音装置によれば、ケース内に1つ以上の膨張室を有し、前記ケースの前端壁に設けた入口管から導入されたエンジンの排気ガスとエンジン冷却後の冷却水とを膨張室内で混合させるものにおいて、前記ケース内に、前記膨張室に連通する共鳴室が設けられ、最前段の膨張室とこれに連通してその前方に位置する共鳴室とが、前記最前段の膨張室に接続された前記入口管と同心状に配置されて前記入口管の外周側に環状の連通路を形成する連通管により連通されているものとしたため、排気音における前記共鳴室で共鳴する周波数成分が減衰して消音される際に、排気ガスに混じった水の飛沫および蒸気によりガス密度が上昇して、消音効果が向上する。また、膨張室を有するケース内に共鳴室が設けられているので、装置が嵩張らず、スペースの面で制約を受けることがなく、エンジンルームの狭い小型滑走艇などに設置しても、容易に取付け・取外しでき、メンテナンス性が良くなる。
【0030】
また、本発明の小型滑走艇によれば、エンジンと、前記構成の排気消音装置と、前記エンジンにより駆動される推進機と、前記推進機の高圧部から取り込まれた冷却水を前記エンジンに供給する冷却水導入通路とを備えているため、冷却水を送るためのポンプを必要とすることなく、推進機の高圧部から取り込まれた冷却水が、冷却水導入通路からエンジンに供給され、そのエンジン冷却後の冷却水と排気ガスとが前記排気消音装置に導入されて、小型滑走艇のエンジンの排気音を効果的に消音させることができ、しかも、狭いエンジンルームに容易に設置でき、排気消音装置のメンテナンスも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る排気消音装置を装備したエンジンの搭載された小型滑走艇を示す側面図である。
【図2】前記小型滑走艇のデッキを除いて各装置の設置状態を示した平面図である。
【図3】(A)は前記小型滑走艇におけるエンジンの排気消音装置の要部を示す縦断面図、(B)は(A)のIII −III 線断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る排気消音装置の要部を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る排気消音装置の要部を示す縦断面図である。
【図6】従来例の要部を示す側面図である。
【符号の説明】
1…小型滑走艇、3…推進機、4…エンジン、9…排気消音装置、10…水マフラ、11…冷却水導入通路、21…ケース、22…筒壁、23,24 …端壁、26,27,28…隔壁、29A〜29D…膨張室、33,36,39…共鳴室、34,37,40…中間壁
Claims (4)
- 水マフラのケース内に1つ以上の膨張室を有し、前記ケースの前端壁に設けた入口管から導入されたエンジンの排気ガスとエンジン冷却後の冷却水とを膨張室内で混合させる排気消音装置において、前記ケース内に、前記膨張室に連通する共鳴室が設けられ、最前段の膨張室とこれに連通してその前方に位置する共鳴室とが、前記最前段の膨張室に接続された前記入口管と同心状に配置されて前記入口管の外周側に環状の連通路を形成する連通管により連通されていることを特徴とするエンジンの排気消音装置。
- 請求項1において、前記ケースは、筒壁と、その両端を閉塞する端壁とを有し、前記端壁とケース内に取り付けた中間壁とにより前記共鳴室が形成されているエンジンの排気消音装置。
- 請求項1または2において、ケース内に複数の膨張室を形成するための隔壁が取り付けられており、前記隔壁の少なくとも1つとケース内に取り付けた中間壁とにより前記共鳴室が形成されているエンジンの排気消音装置。
- エンジンと、
請求項1ないし3のいずれかに記載の排気消音装置と、
前記エンジンにより駆動される推進機と、
前記推進機の高圧部から取り込まれた冷却水を、前記エンジンに供給する冷却水導入通路とを備えた小型滑走艇。
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