JP3566913B2 - 排気浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用エンジンに適用するための排気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)は、炭素質から成る煤と、高沸点炭化水素成分から成るSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とし、更に微量のサルフェート(ミスト状硫酸成分)を含んだ組成を成すものであるが、この種のパティキュレートの低減対策として、図6に示す如く、ディーゼルエンジン1からの排気ガス2が流通する排気管3の途中にパティキュレートフィルタ4を装備することが考えられている。
【0003】
図7に示すように、パティキュレートフィルタ4は、コージェライトなどのセラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路5の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路5については、その出口が目封じされるようになっており、各流路5を区画する多孔質薄壁6を透過した排気ガス2のみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0004】
そして、排気ガス2中のパティキュレートは、前記多孔質薄壁6の内側表面に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタ4の再生を図る必要があるが、通常のディーゼルエンジン1の運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ない為、一般的には、電気ヒータなどを付属させて積極的な加熱を行うことが考えられている。
【0005】
ただし、斯かる従来のパティキュレートフィルタ4では、複雑なハニカム構造の一体成形物として製造しなければならなかったために、その製造コストが高くつくという問題があり、しかも、車種などに応じて容量の異なるパティキュレートフィルタ4が必要となった場合に、容量の異なる複数種類のパティキュレートフィルタ4を高い製造コストをかけて個々に製造しなければならないという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明者らは、従来におけるパティキュレートフィルタ4に換えて、シンプルな板形状に製造するだけで済む平板フィルタを排気ガス2の流れ方向に複数枚重ね合わせてフィルタ層として使用し、これによって、従来の如き複雑なハニカム構造のパティキュレートフィルタ4を一体成形物として製造する場合よりも製造コストを安価に抑え、しかも、平板フィルタの枚数を加減するだけで極めて簡単に容量を調整し得るようにすることを創案するに到った。
【0007】
しかも、各平板フィルタについては、酸化触媒を担持させて、各平板フィルタに捕集されたパティキュレートの酸化反応を促進し、比較的低い着火温度にてパティキュレートを効率良く燃焼除去し得るようにすることを更に検討している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような平板フィルタを採用するとした場合、各平板フィルタを筒状の保持体内に装填してユニット化した上で、この保持体ごと各平板フィルタを排気管3の途中に装備することになるが、各平板フィルタの厚さ寸法が小さすぎると、保持体内への装填時に該保持体内で平板フィルタが倒れ易くなり、しかも、保持体内で倒れた平板フィルタは、斜めに傾斜した状態でつかえてしまうので、各平板フィルタの装填作業に非常に手間が掛かる虞れがあった。
【0009】
即ち、平板フィルタを装填する保持体には、各平板フィルタの円滑な装填を可能ならしめるよう外周囲にクリアランスが確保されることになるので、平板フィルタの厚さ寸法が小さくなりすぎると、外周囲のクリアランスによる自由度が大きくなりすぎて倒れ易くなり、ある程度倒れた姿勢で平板フィルタの矩形側断面の対角同士が外周囲につかえてしまうのである。
【0010】
他方、各平板フィルタの厚さ寸法が大きすぎると、触媒の粉末をペースト状に溶いた触媒液に各平板フィルタを浸漬させて酸化触媒を担持させる際に、その後処理として行われるエアブローやバキュームによる触媒液の脱離作業が効率良く行えなくなり、各平板フィルタを短時間で目詰まりのない状態に復帰させることが困難になって生産効率が低下してしまう虞れがあった。
【0011】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、各平板フィルタの適正な厚さ寸法を規定して、その装填作業を容易に行い且つ触媒を担持させる作業の後処理である触媒液の脱離作業を短時間で効率良く行い得るようにすることを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、パティキュレートを深層濾過し得るよう目を粗くした多孔質構造を成し且つ排気浄化触媒を担持した平板フィルタを排気ガスの流れ方向に複数枚重ね合わせて排気管の途中に装備した排気浄化装置であって、平板フィルタの厚さ寸法を5〜40mm、好ましくは10〜20mmの範囲に設定したことを特徴とするものである。
【0013】
而して、このように平板フィルタの厚さ寸法を設定すれば、通常の自動車におけるマフラなどを含む排気管途中の流路径として想定される約60〜約300mm(この径内に含まれる楕円形流路も同様)に関し、各平板フィルタを筒状の保持体などに装填して排気管の途中に装備する際に、各平板フィルタが保持体などの内部で倒れ難くなり、その装填作業に手間が掛からなくなる。
【0014】
また、触媒の粉末をペースト状に溶いた触媒液に各平板フィルタを浸漬させて酸化触媒を担持させる際に、その後処理として行われるエアブローやバキュームによる触媒液の脱離作業が効率良く行えるようになり、各平板フィルタを短時間で目詰まりのない状態に復帰させることが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1〜図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1に示す如く、本形態例の排気浄化装置においては、自動車のディーゼルエンジン1(図6参照)から排出された排気ガス2が流通している排気管3のマフラ7の外筒をフィルタケース8とした場合を例示している。
【0017】
即ち、マフラ7の入口パイプ9と出口パイプ10及びインナーパイプ11との間に第一セパレータ12と第二セパレータ13とにより画定された所要の大きさの収容空間14が確保されており、この収容空間14に、パティキュレートを深層濾過し得るよう目を粗くした多孔質構造を有し且つ円盤状に形成された複数枚の平板フィルタ15(図2参照)が、排気ガス2の流れ方向に重ね合わされて収容されるようになっている。
【0018】
ここで、各平板フィルタ15は、発泡金属、発泡セラミック、金属線の圧縮体、金属繊維または無機繊維の圧縮体などにより製造されており、従来におけるセラミック製のパティキュレートフィルタとは細孔の大きさが著しく異なっている。
【0019】
即ち、従来のパティキュレートフィルタが表層濾過を意図してパティキュレートの粒子径より小さな径の細孔となるように目を細かくしていたのに対し、ここに示している各平板フィルタ15では、パティキュレートの粒子を各平板フィルタ15の細孔を形成している柱部分に繰り返し何度も衝突させることで何れかの柱部分に捕集させるようにした深層濾過を意図してパティキュレートの粒子径より細孔の径が大きくなるようにしており、より具体的には、約0.7mmから2.0mm程度の径の細孔が形成されるようにしてある。
【0020】
更に、各平板フィルタ15には、アルミナゾルに白金やパラジウムなどの貴金属の粉末をペースト状に溶いた触媒液に各平板フィルタ15を浸漬させた後、エアブローやバキュームなどの手法で触媒液を脱離させることにより酸化触媒を担持させるようにしてあり、この酸化触媒によって、捕集したパティキュレートの酸化反応を促進し得るようにしてある。
【0021】
ここで、各平板フィルタ15の厚さ寸法t(図1及び図2参照)は、後述する理由により5〜40mmの範囲、より好ましくは10〜20mmの範囲で設定するようにしている。
【0022】
また、図3に上側部分の断面を拡大して示してあるように、各平板フィルタ15の相互間には、各平板フィルタ15同士が直接接触しないよう環状のスペーサ16が介装され、各平板フィルタ15が成すフィルタ層17の外周面には、円筒状に巻かれたスペーサ18が保持体として被包されており、このスペーサ18とフィルタケース8の内周面に固着したキャニング外筒19との間には、弾性クッション材20,21が介装され、該各弾性クッション材20,21の相互間には、シール材22が介装されて排気ガス2の迂回を阻止し得るようにしてある。
【0023】
ここで、各弾性クッション材20,21は、金属線をニット状に編んで蛇腹円筒状に形成したものであり、各平板フィルタ15の半径方向への移動(排気ガス2の流れ方向に対し略直角な向きへの移動)を抑制し得るよう前記各平板フィルタ15の外周部分を弾性力で加圧保持するようになっている。
【0024】
更に、前方の弾性クッション材20の前端部分20aが、最前列の平板フィルタ15の前面側外縁部分に回り込むように縮径していると共に、後方の弾性クッション材21の直後には、最後列の平板フィルタ15の後面側外縁部分にも掛かるようにした環状のシール材22が配置されており、これら前方の弾性クッション材20の前端部分20aとシール材22とを前後に介在させた状態でフィルタ層17がフィルタストッパ23,24により前後に挾圧され、前記前方の弾性クッション材20の前端部分20aによる弾性力で各平板フィルタ15が排気ガス2の流れ方向に移動しないよう加圧保持されるようにしてある。
【0025】
即ち、本形態例においては、フィルタケース8が最後列の平板フィルタ15より後方位置にて前後に分割構成されており、前述した前方のフィルタストッパ23が、前側のフィルタケース8に対しキャニング外筒19を介して装着され、後方のフィルタストッパ24が、後側のフィルタケース8に対して装着されるようになっているので、後側のフィルタケース8を取り外して各平板フィルタ15を前側のフィルタケース8内に収容させた後に後側のフィルタケース8を再び取り付ける際に、後方のフィルタストッパ24により各平板フィルタ15が前方に押し込まれて両フィルタストッパ23,24間で挾圧されるようになっているのである。
【0026】
尚、フィルタケース8の分割された相互の接続側端部にはフランジ25が夫々形成されており、このフランジ25同士をガスケット26を介しボルト締結することにより前後のフィルタケース8の接続が行われるようにしてある。
【0027】
而して、このように構成された排気浄化装置では、排気ガス2が各平板フィルタ15から成るフィルタ層17を通過する際に、パティキュレートの粒子が、フィルタ層17内で細孔を形成している柱部分に対し繰り返し何度も衝突して何れかの柱部分に捕集されることになり、各平板フィルタ15に捕集されたパティキュレートの粒子は、各平板フィルタ15の酸化触媒により酸化反応を促進されて比較的低い着火温度にて効率良く燃焼除去されることになるが、本形態例において、平板フィルタ15の厚さ寸法tを5〜40mmの範囲、より好ましくは10〜20mmの範囲で設定したことは、以下に詳述する如き優れた作用効果を奏する。
【0028】
即ち、平板フィルタ15の厚さ寸法tを5〜40mmの範囲、より好ましくは10〜20mmの範囲で設定すれば、通常の自動車におけるマフラ7などを含む排気管3途中の流路径として想定される約60〜約300mm(この径内に含まれる楕円形流路も同様)に関し、各平板フィルタ15をスペーサ18内に装填するに際して、該スペーサ18内で各平板フィルタ15が倒れ難くなり、その装填作業に手間が掛からなくなる。
【0029】
ここで、各平板フィルタ15の装填作業につき補足して説明すると、各平板フィルタ15をマフラ7の収容空間14に収容させるにあたっては、円筒状に巻かれた保持体を成すスペーサ18内に各平板フィルタ15を環状のスペーサ16を介装させつつ順次装填してユニット化し、更に、前記スペーサ18の外周部を各弾性クッション材20,21及びシール材22により被包させた状態とした後に、フィルタケース8の内周面に固着したキャニング外筒19内に後方から押し込んで前記各弾性クッション材20,21によりスペーサ18ごと各平板フィルタ15を加圧保持させるようにしているので、マフラ7の収容空間14への収容が完了した段階では、スペーサ18が縮径して各平板フィルタ15周囲のクリアランスは消失することになるが、マフラ7の収容空間14へ収容する前の段階では、スペーサ18と各平板フィルタ15との間に、該各平板フィルタ15の円滑な装填を可能ならしめるよう外周囲にクリアランスが確保されているので、平板フィルタ15の厚さ寸法tに下限値を設けることで前記クリアランスによる各平板フィルタ15の自由度を倒れが生じ難くなるよう抑制しているのである。
【0030】
また、平板フィルタ15の厚さ寸法tを5〜40mmの範囲、より好ましくは10〜20mmの範囲で設定すれば、触媒液に各平板フィルタ15を浸漬させて酸化触媒を担持させる際に、その後処理として行われるエアブローやバキュームによる触媒液の脱離作業が効率良く行えるようになり、各平板フィルタ15を短時間で目詰まりのない状態に復帰させることが可能となる。
【0031】
図4のグラフは本発明者らによる検証実験の結果を示したものであり、このグラフにおける横軸は、平板フィルタ15の厚さ寸法tを示し、一方の縦軸は、平板フィルタ15の倒れ量g、即ち、図5に示す如き平板フィルタ15が正常な直立姿勢から倒れて該平板フィルタ15の矩形側断面の対角同士が外周囲のスペーサ18につかえるまでの軸心方向へのズレ量を倒れ量gとして示し、他方の縦軸は、触媒液に各平板フィルタ15を浸漬させて酸化触媒を担持させる際に、その後処理としてエアブローやバキュームによる触媒液の脱離作業を行なった場合における単位時間当たりの触媒液の脱離量を示している。
【0032】
そして、このグラフにおける倒れ量gの推移を示す曲線Aは、平板フィルタ15の厚さ寸法tが5mmより小さい領域で平板フィルタ15が殆ど完全に倒れてしまって倒れ量gを計測することが困難となり、平板フィルタ15の厚さ寸法tが最低限5mm必要であることを表しているが、平板フィルタ15の厚さ寸法tが5mm増えて10mmとなるだけで大幅な倒れ量gの低下が認められ、しかも、これ以上の厚さ寸法tの増加は緩慢な倒れ量gの低下しか示さないので、より好ましい厚さ寸法tの下限値が10mmであることを表し、更には、平板フィルタ15の厚さ寸法tが20mmとなった段階で平板フィルタ15に倒れが生じなくなることを表している。
【0033】
また、このグラフにおける触媒液の脱離量の推移を示す曲線Bは、平板フィルタ15の厚さ寸法tが20mmを超えた段階で急激に脱離量が低下し、厚さ寸法tが40mmを超えた段階では、機械的な大量生産に適した脱離量の限界値xを下まわってしまうので、少くとも厚さ寸法tの上限値が40mmを超えないようにする必要があることを表し、しかも、厚さ寸法tを平板フィルタ15に倒れが生じなくなる20mmまで減らすだけで大幅な脱離量の増加が認められるので、より好ましい厚さ寸法tの上限値が20mmであることを表している。
【0034】
従って、上記形態例によれば、各平板フィルタ15の適正な厚さ寸法tを規定したことにより、該各平板フィルタ15の保持体であるスペーサ18への装填作業を容易に行い且つ酸化触媒を担持させる作業の後処理である触媒液の脱離作業を短時間で効率良く行い得るようにすることができるので、各平板フィルタ15の装填作業に要する労力を大幅に軽減し且つ各平板フィルタ15の生産効率を大幅に向上することができる。
【0035】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、触媒を酸化触媒以外のNOx低減触媒としても良いこと、また、フィルタケースをマフラとは別に独立して設けても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0036】
【発明の効果】
上記した本発明の排気浄化装置によれば、各平板フィルタの適正な厚さ寸法を規定したことにより、各平板フィルタを筒状の保持体などに装填して排気管の途中に装備する際に、各平板フィルタを保持体などの内部で倒れ難くして、その装填作業を容易に行い得るようにすることができ、しかも、酸化触媒を担持させる作業を行う際に、その後処理である触媒液の脱離作業を短時間で効率良く行い得るようにすることもできるので、各平板フィルタの装填作業に要する労力を大幅に軽減し且つ各平板フィルタの生産効率を大幅に向上することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1の各平板フィルタの斜視図である。
【図3】図1の各平板フィルタの保持構造を拡大して示す断面図である。
【図4】平板フィルタの厚さ寸法と倒れ量及び触媒液の脱離量との関係を示すグラフである。
【図5】平板フィルタの倒れ状態を示す説明図である。
【図6】従来例を示す概略図である。
【図7】図6のパティキュレートフィルタの詳細を示す断面図である。
【符号の説明】
2 排気ガス
3 排気管
15 平板フィルタ
t 厚さ寸法
Claims (1)
- パティキュレートを深層濾過し得るよう目を粗くした多孔質構造を成し且つ排気浄化触媒を担持した平板フィルタを排気ガスの流れ方向に複数枚重ね合わせて排気管の途中に装備した排気浄化装置であって、平板フィルタの厚さ寸法を5〜40mm、好ましくは10〜20mmの範囲に設定したことを特徴とする排気浄化装置。
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