JP3566584B2 - 塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 - Google Patents

塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁することによって塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整可能な塗装装置およびその装置を用いた塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、塗装を行うための塗装装置としては、回転霧化型塗装機、エア霧化型塗装機、液圧霧化型塗装機、エア霧化と液圧霧化の霧化機構を併用したエアミックス型塗装機等が知られている。また、これらの塗装装置には被塗物への塗料粒子の塗着効率が高い静電塗装装置が用いられ、この静電塗装装置には直接帯電式と間接帯電式とがある。
【0003】
ここで、直接帯電式の塗装装置とは、噴霧前の塗料に直接高電圧を印加することによって帯電塗料粒子を噴霧し、この帯電塗料粒子を塗装機と被塗物との間に形成される電気力線に沿って飛行させ、被塗物に塗着させるものである。一方、間接帯電式の塗装装置とは、外部電極に高電圧を印加し、塗装装置から噴霧された塗料粒子が外部電極の前方に形成されるコロナ放電領域を通過するときに帯電し、この帯電塗料粒子を外部電極と被塗物との間に形成される電気力線に沿って飛行させ、被塗物に塗着させるものである。
【0004】
これら各塗装装置のうち直接帯電方式による回転霧化頭型塗装装置は、カバーによって覆われたエアモータと、該エアモータの前端側に位置して該エアモータによって回転可能に設けられ、先端が塗料放出端縁となった回転霧化頭と、該回転霧化頭に接続して設けられ、該回転霧化頭の塗料放出端縁から噴霧される塗料粒子を帯電するための高電圧発生器とによって構成されている。
【0005】
このように構成される回転霧化頭型塗装装置は、各回転霧化頭に高電圧を印加すると、該回転霧化頭とアース電位となる被塗物(図示せず)との間には電気力線による静電界域が形成される。この状態で、エアモータによって回転軸および回転霧化頭を高速回転し、塗料弁を開弁することにより、塗料供給配管を介して回転霧化頭に塗料を供給する。このように回転霧化頭に供給された塗料は、該回転霧化頭の回転による遠心力によって塗料薄膜化面に薄いフィルム状に拡がり、塗料放出端縁から径方向外側に飛び出すときに微粒化される。
【0006】
また、微粒化される塗料粒子は、回転霧化頭に印加されている高電圧によって帯電塗料粒子となっている。そして、この帯電塗料粒子は、アースに接続された被塗物に向けて飛行して、該被塗物の表面に塗着し、塗膜を形成する。
【0007】
ここで、塗膜には、次のような種々の原因によって塗装不良が発生する場合がある。即ち、塗装不良の原因には、例えば、塗料中の顔料、樹脂等の粗粒(小さな固まり)が塗面上に突起を形成するブツ(cluster, hump )現象、塗装前の被塗物表面にシリコンや油分が付着することにより局部的に塗膜が形成されないハジキ(cissing )現象、塗装前の被塗物表面に微細なゴミ等が付着することにより局部的に小円状のへこみが生ずるクレタリング(cratering )現象、塗膜形成後の乾燥中に塗膜中の気泡の急激な膨張や溶剤の急激な蒸発により乾燥途中の表面塗膜を破壊するワキ(popping, pin hole )現象、垂直面に塗装された塗膜が下方に流動し塗膜だまりが生じ、膜厚が不均一にたるむダレ(sagging )現象がある。このような場合、塗装面を高品質に仕上げるためには、塗膜の表面に再度塗料を塗着する再塗装を行う必要がある。
【0008】
このため、従来技術では、図9に示すように被塗物100の表面に形成された塗膜101に塗装不良が生じた場合であって塗装不良が極少ないときには、塗装不良の箇所のみをスポット的に研磨処理(サンディング)を施した後に再塗装の塗膜との密着性を高めるために塗膜表面全体を極僅かに研磨処理を施す。また、塗装不良が塗膜の全面に亘って多数発生したときには、塗膜表面全体に研磨処理を施す。
【0009】
次に、研磨処理後の塗膜101表面に塗料を再度噴霧し、再塗装による塗膜102を形成する。そして、このような再塗装を行うときには、最初の塗装時と同じ塗料を使用し、最初の塗装時と同程度の膜厚となった塗膜を形成している。
【0010】
一方、図10に示すように、被塗物110の表面に微細な凹凸状の模様をもった塗膜111を施す絞(しぼ)塗装、レザートーン塗装等の塗装方法が知られている。このような塗装方法の場合、再塗装時に最初の塗装時と同程度の膜厚となった塗膜112を形成すると、図10の塗膜112′のように所望の塗膜表面の模様が得られない。このため、このような模様をもった塗装方法の場合、被塗物110の表面から最初の塗装時の塗膜111を全部研磨処理して除去した後、再度絞(しぼ)塗装、レザートーン塗装等を行っているのが実情である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、例えば研磨処理後に再塗装を行う場合には、図9中の(c)に示すように研磨処理によって減少した膜厚分だけ再塗装による塗膜102′を形成すれば、所望の膜厚は確保できる。しかし、塗膜を薄くするために単に塗料の吐出量を減少させたときには、塗膜表面にオレンジピールまたはゆず肌と呼ばれるゆずの実の表皮のような小さな凹凸が発生し、塗装欠陥を起こし易いという問題がある。
【0012】
このような塗装欠陥が生じるのは、次の理由によるものである。即ち、塗料の吐出量を少なくした場合には、図11の特性線Aに示すように回転霧化頭から噴霧される塗料粒子の質量が小さくなると共に、その粒径が小さくなる。このため、通常塗装時に比べて単位質量当たりの塗料粒子が空気に接触する表面積が大きくなる。この結果、塗料粒子中の揮発性溶剤の蒸発速度は、図11の特性線Bに示すように速くなるから、塗料粒子中の揮発成分の揮発が促進されて塗装装置から被塗物への飛行している間に塗料粒子が乾燥する傾向がある。
【0013】
これにより、塗着直後の塗膜中において揮発性溶剤の割合が減少するから、塗膜の粘度が高く、流動性が低くなる。この結果、以下の数1に示す塗着時不揮発分含有率(通常、塗着NV(塗着 nonvolatile)と呼ばれる)が上昇するから、塗料粒子が被塗物に塗着しても、塗着塗料は平滑化(レベリング)の途中で流動を停止し、塗膜表面に凹凸状のゆず肌が形成されるものである。
【0014】
【数1】
Figure 0003566584
【0015】
このような問題を解決するために、従来技術にあっては、図9中の(d)に示すように再塗装時も通常塗装時と同様の吐出量を回転霧化頭に供給していた。このため、再塗装後による塗膜102が不必要に厚くなり、塗料を無駄に消費するという問題がある。
【0016】
また、絞(しぼ)塗装、レザートーン塗装等にあっては、再塗装時に通常塗装時と同様の吐出量を回転霧化頭に供給した場合、図10中の(c)に示すように再塗装時の塗膜112によって微小な凹凸が埋まり、凹凸感が損なわれてしまうという問題がある。
【0017】
一方、冬期のように朝夕の気温差が激しいときには、気温の変化に応じて被塗物の温度や塗料の温度も変化する。また、日中は気温の上昇に加えて塗装装置の周囲に配置された種々の機械等が放熱するから、被塗物、塗装装置等の周囲温度はさらに上昇することになる。このように被塗物、塗料等の温度変化が激しい環境で同じ塗料を使用した場合にも、塗装不良が生じる傾向がある。
【0018】
即ち、被塗物や塗料が低温のときには、塗料粒子や塗着塗膜からの溶剤の揮発が活発ではないから、塗着塗膜は流動し易くなる。一方、被塗物や塗料が高温のときには、塗料粒子や塗着塗膜からの溶剤の揮発が促進されるから、塗着塗膜は流動しにくくなる。このため、例えば被塗物、塗料等が低温となったときに合わせて塗料中の溶剤含有量を設定した場合には、日中のように被塗物、塗料等が高温となったときには、塗着塗膜が流動しにくいから、塗膜表面にゆず肌が形成されるという問題がある。
【0019】
そこで、本発明者達は、このような従来技術による欠点の改善について鋭意研究した結果、例えば実開平2−37766号公報等に記載されているフィードチューブ先端を洗浄する技術を応用し、再塗装時や塗料等の温度が高温となるときに揮発性溶剤の割合を高め、もって再塗装時等であっても塗着時不揮発含有率を最適な値に調整可能であることに着目してなされたものである。
【0020】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、塗料と溶剤とを一緒に吐出することによって塗着時不揮発分含有率を低下させ、塗装面の品質を向上できるようにした塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を提供することを目的としている。
【0021】
また、本発明の他の目的は、塗料の吐出量を低くしつつ、再塗装による塗装面の品質を向上できるようにした塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を提供することにある。
【0022】
さらに、本発明の他の目的は、気温、湿度等のような被塗物、塗装装置周囲のの雰囲気条件が変化するときでも、塗装面の品質を向上できるようにした塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による塗装装置は、塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置に適用される。
【0024】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、通常塗装時には前記塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には前記塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行う構成としたことにある。
【0025】
これにより、未塗装の被塗物に塗装を行う通常塗装時には、塗料弁のみを開弁させるから、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が塗料流路を通じて供給される。このため、塗料噴霧手段は、塗料供給源から供給される塗料を噴霧し、被塗物を塗装する。
一方、塗装済みの被塗物に再度塗装を行う再塗装時(塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、塗料弁と溶剤弁と一緒に開弁するから、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が供給されると共に、溶剤源からの溶剤が供給される。この結果、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤と混合希釈した希釈塗料を噴霧する。このとき、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなるから、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
また、請求項2の発明が採用する構成の特徴は、外気温度等の雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としたことにある。
これにより、溶剤の揮発が促進される外気温度等の雰囲気条件となるときには、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して未塗装の被塗物に通常塗装を行う。これにより、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が供給されると共に、溶剤源からの溶剤が供給されるから、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とが混合希釈した希釈塗料を噴霧する。この結果、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなるから、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁、溶剤弁から塗料、溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、溶剤の揮発が促進される雰囲気条件であっても塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときであっても、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときとほぼ同じ流量の塗料を供給するから、溶剤弁の開,閉に関係なく通常塗装時の塗膜の膜厚をほぼ一定に保持することができる。
【0026】
また、請求項の発明は、塗料供給源と塗料弁との間には塗料供給源から供給される塗料の流量を調整する塗料流量調整手段を設け、溶剤源と溶剤弁との間には溶剤源から供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段を設ける構成としたことにある。
【0027】
これにより、塗料流量調整手段は所望の流量となった塗料を塗料噴霧手段に定量供給することができ、溶剤流量調整手段は所望の流量となった溶剤を塗料噴霧手段に定量供給することができる。このため、溶剤によって希釈化した希釈塗料を、塗料と溶剤との混合比が最適な揮発性溶剤の割合となるように調整することができる。
【0028】
また、請求項の発明は、塗料噴霧手段を、エアモータと、該エアモータの軸方向に挿通された回転軸と、該回転軸内にそれぞれ塗料流路と溶剤流路とが設けられたフィードチューブと、回転軸の先端に設けられ該フィードチューブから吐出された塗料を噴霧し、塗料と溶剤とを一緒に噴霧する回転霧化頭とによって構成したことにある。
【0029】
これにより、エアモータは、回転軸と回転霧化頭とを高速回転する。この状態で、塗料供給源は、フィードチューブの塗料流路を通じて回転霧化頭に塗料を供給するから、回転霧化頭は、フィードチューブから吐出された塗料を、その遠心力によって噴霧し、被塗物を塗装する。また、塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、フィードチューブは、塗料流路を通じて塗料を吐出し、溶剤流路を通じて溶剤を吐出するから、回転霧化頭は、塗料と溶剤とを混合すると共に、溶剤によって希釈化した希釈塗料を被塗物に向けて噴霧する。
【0030】
また、請求項の発明は、フィードチューブを内筒と外筒とからなる二重チューブ構造とし、内筒内に塗料流路を形成し、内筒と外筒との間に溶剤流路を形成する構成としたことにある。
【0031】
このように構成したことにより、再塗装時には、内筒内の塗料流路から塗料が吐出されると共に、内筒の外周側を取り囲む溶剤流路から溶剤が供給されるから、塗料と溶剤とを容易に混合することができる。
【0032】
さらに、請求項の発明は、塗料噴霧手段を、スプレーガン本体と、該スプレーガン本体の先端側に設けられ塗料流路を介して供給される塗料を塗料噴霧口から噴霧する塗料ノズルとによって構成し、塗料ノズルの手前側で塗料流路と溶剤流路とを合流させる構成としたことにある。
【0033】
このように構成したことにより、塗料供給源は、塗料流路を通じて塗料ノズルに塗料を供給するから、塗料ノズルは、塗料供給源からの塗料を塗料噴霧口から噴霧する。また、塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、塗料供給源は塗料流路を通じて塗料を供給し、溶剤源は溶剤流路を通じて溶剤を供給する。そして、塗料流路と溶剤流路とは塗料ノズルの手前側で合流しているから、塗料ノズルは、塗料と溶剤とを混合希釈し、希釈塗料を塗料噴霧口から被塗物に向けて噴霧することができる。
【0034】
また、請求項の発明が採用する塗装方法は、塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置を用いた塗装方法に適用される。
【0035】
そして、請求項の発明による塗装方法は、通常塗装時には前記塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には前記塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行うことを特徴としている。
【0036】
このような塗装方法によると、未塗装の被塗物に塗装を行う通常塗装時には、塗料弁のみを開弁させる。これにより、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が塗料流路と通じて供給されるから、塗料噴霧手段は、塗料供給源から供給される塗料を噴霧し、被塗物を塗装する。
【0037】
一方、塗装済みの被塗物に再度塗装を行う再塗装時には、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁する。これにより、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が供給されると共に、溶剤源からの溶剤が供給されるから、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とが混合希釈した希釈塗料を噴霧する。この結果、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなるから、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
【0038】
また、請求項の発明は、再塗装時には、塗料弁からは通常塗装時の流量よりも少ない流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、通常塗装時よりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としたことにある。
【0039】
これにより、再塗装時には、塗料弁、溶剤弁から塗料、溶剤を供給し、通常塗装時よりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、再塗装時の塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、再塗装時には、通常塗装時の流量よりも少ない流量の塗料を供給するから、通常塗装時よりも薄い塗膜を形成することができる。
【0040】
また、請求項の発明による塗装方法は、外気温度等の雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としたことを特徴としている。
【0041】
このような塗装方法によると、溶剤の揮発が促進される外気温度等の雰囲気条件となるときには、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して未塗装の被塗物に通常塗装を行う。これにより、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が供給されると共に、溶剤源からの溶剤が供給されるから、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とが混合希釈した希釈塗料を噴霧する。この結果、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなるから、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
【0043】
また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁、溶剤弁から塗料、溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、溶剤の揮発が促進される雰囲気条件であっても塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときであっても、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときとほぼ同じ流量の塗料を供給するから、溶剤弁の開,閉に関係なく通常塗装時の塗膜の膜厚をほぼ一定に保持することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図8に基づいて本発明の実施の形態による塗装装置について詳細に説明する。
【0045】
まず、図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態による塗装装置として直接帯電式の回転霧化頭型静電塗装装置を例に挙げて説明する。
【0046】
図中、1は塗料噴霧手段としての回転霧化頭型の塗装機で、該塗装機1は、後述するエアモータ3、回転軸4、回転霧化頭5、フィードチューブ9等によって構成されている。
【0047】
2は塗装機1の外形をなすカバーで、該カバー2は、薄肉な円筒状に形成され、その先端部に段付円筒状のシェーピングエアリング2Aが取り付けられると共に、その内部には後述するエアモータ3を収容している。また、シェーピングエアリング2Aの先端面には、多数個のシェーピングエア噴出口2Bが環状に列設され、該シェーピングエア噴出口2Bは、エア通路を通じてカバー2の外部に設けられたシェーピングエア源(図示せず)に接続されている。
【0048】
3はカバー2内に収容されたエアモータで、該エアモータ3は、筒状に形成されたモータ本体3Aと、該モータ本体3A内に収容されたエアタービン3Bと、後述する回転軸4を回転可能に軸支する静圧エア軸受3Cとによって構成されている。そして、エアモータ3は、エアタービン3Bに高圧のエアを供給することによって回転駆動するものである。また、エアモータ3は、高電圧発生器(図示せず)に接続されている。そして、該高電圧発生器は、エアモータ3、回転軸4を通じて後述の回転霧化頭5に高電圧を供給している。
【0049】
4はエアモータ3の静圧エア軸受3Cに回転可能に軸支された回転軸で、該回転軸4の先端は、エアモータ3の前側に突出し、その基端側はエアモータ3のエアタービン3Bに取り付けられている。そして、回転軸4は、エアモータ3によって高速で回転駆動するものである。
【0050】
5は回転軸4の先端側に取付けられた霧化ヘッドとしてのベル形の回転霧化頭で、該回転霧化頭5は、回転霧化頭5の外形をなす霧化頭本体6と該霧化頭本体6の前面側中央に取付けられたハブ部材7とによって構成されている。
【0051】
ここで、霧化頭本体6は、前方に向けて拡開して延びるベル状に形成されたベルカップ部6Aと、ハブ部材7の後方に位置して該ベルカップ部6Aの内側に向けて突設された環状隔壁6Bと、前記ハブ部材7よりも前側に位置して前記ベルカップ部6Aの前面側に形成され、塗料を薄膜化する塗料薄膜化面6Cと、前記ベルカップ部6Aの先端側に設けられ、該塗料薄膜化面6Cによって薄膜化された塗料を放出する塗料放出端縁6Dと、前記ベルカップ部6Aの縮径部の内周側に位置して回転軸4の先端部が嵌合される取付穴6Eとによって構成されている。
【0052】
また、ハブ部材7は、略円板状に形成されると共に、ベルカップ部6Aの内周側中央部位に嵌合して取り付けられ、ベルカップ部6Aの前面を閉塞している。そして、ハブ部材7の中央側には、洗浄時に後述するフィードチューブ9から前面に向けてシンナを供給する複数個の溶剤流出孔7A(2個のみ図示)が穿設されている。また、ハブ部材7の径方向外側位置には、フィードチューブ9から吐出された塗料またはシンナを霧化頭本体6の塗料薄膜化面6Cに導くための多数個の塗料流出孔7B(2個のみ図示)が穿設されている。
【0053】
8は回転霧化頭5内に形成された塗料溜りで、該塗料溜り8は、霧化頭本体6の環状隔壁6Bの前面側に位置して、ハブ部材7の背面側との間に画成されている。そして、塗料溜り8は、その内部にフィードチューブ9の先端部が挿入され、フィードチューブ9から吐出される塗料、シンナを一時的に貯留するものである。
【0054】
9は回転軸4内に同軸に設けられたフィードチューブで、該フィードチューブ9は、後述する外筒10と内筒11とにより二重チューブ構造となっている。
【0055】
10はフィードチューブ9を後述の内筒11と共に構成する外筒で、該外筒10は、その先端側が縮径して溶剤吐出口10Aとなり、回転霧化頭5の環状隔壁6Bと対応する位置まで延在している。また、外筒10の先端側には、ゴム等によるチェック弁体10Bが取り付けられ、該チェック弁体10Bによって外筒10と内筒11との間を流通するシンナがだれ落ちするのを防止している。
【0056】
11は外筒10内に同軸に配設された内筒で、該内筒11は、その途中に後述する塗料弁14の弁体14Cが離着座する弁座11Aが一体形成されると共に、先端側が縮径しつつ外筒10の外部に突出した塗料吐出口11Bとなっている。
【0057】
12は内筒11内に形成された塗料流路で、該塗料流路12は、その基端側が後述の塗料供給配管17に接続され、先端側は塗料吐出口11Bの位置でハブ部材7の塗料供給面12Aに向けて開口している。そして、該塗料流路12は、その途中に設けられた塗料弁14が開,閉することにより、内部に収容した塗料をハブ部材7に向けて噴出するものである。
【0058】
13は外筒10と内筒11との間に形成された溶剤流路で、該溶剤流路13は、その基端側が後述の溶剤供給配管21に接続され、先端側は溶剤吐出口10Aの位置で内筒11の先端側に向けて開口している。そして、該溶剤流路13は、後述の溶剤弁15が開,閉することにより、外部から供給されたシンナを内筒11の先端側に向けて噴射するものである。
【0059】
14は2ポート2位置のスプリングリターン型エア式切換弁からなる常閉の塗料弁で、該塗料弁14はエアシリンダ等からなるアクチュエータ14Aと、基端側が該アクチュエータ14Aに連結され、先端側が内筒11内に挿通された弁軸14Bと、該弁軸14Bの先端側に設けられ、内筒11の弁座11Aに離着座する弁体14Cとから構成されている。そして、塗料弁14は、常時は弁座11Aに着座して閉弁している。一方、塗装時、再塗装時には、塗料弁14は、外部からの制御エアがアクチュエータ14Aに給排されることによって、弁軸14Bを縮小させて弁体14Cを内筒11の弁座11Aから離座させ、塗料流路12を開弁するものである。
【0060】
15は溶剤流路13の途中に配設された常閉の溶剤弁で、該溶剤弁15は、2ポート2位置のスプリングリターン型エア式切換弁によって構成されている。そして、溶剤弁15は、常時は溶剤流路13を閉弁している。一方、洗浄時、再塗装時には、溶剤弁15は、外部から制御エアが供給されることによって開弁し、後述の溶剤源装置20と溶剤流路13との間を連通するものである。
【0061】
16は塗装機1の外部に設けられた色替弁装置で、該色替弁装置16は、図2に示すように塗料供給配管17を介して塗料流路12と接続されると共に、塗料供給配管17の途中には、後述の塗料用容積型ポンプ19が配設されている。また、色替弁装置16は、A色,B色,…N色の塗料を選択的に回転霧化頭5に供給するための塗料弁16A,16B,…16Nと、色替のときに塗料通路12と回転霧化頭5との間を洗浄するためのシンナ弁16Th 、エア弁16Ar によって構成されている。さらに、塗料弁16A,16B,…16Nは、塗料供給源としての塗料供給ライン18A,18B,…18Nに接続されると共に、シンナ弁16Th は、シンナ源18Th に接続され、エア弁16Ar は、エア源18Ar に接続されている。そして、色替弁装置16は、A色,B色,…N色の複数の塗料弁16A,16B,…16N、シンナ弁16Th 、エア弁16Ar を選択的に開弁し、塗料を塗料流路12内に供給すると共に、色替時にあっては回転霧化頭5、塗料流路12、後述の排液流路24を洗浄するものである。
【0062】
19は塗料の吐出量を可変に調整する塗料流量調整手段としての塗料用容積型ポンプで、該塗料用容積型ポンプ19は、塗料供給配管17の途中に接続され、例えばギヤポンプ、ベーンポンプ、アキシャルピストン型ポンプ、ラジアルピストン型ポンプ等によって構成されている。そして、塗料用容積型ポンプ19の1回転当たりの押しのけ容積は、そのポンプにとって固有の値に予め定められているから、塗料用容積型ポンプ19の回転数を調整することによって塗料、シンナの供給量を可変に設定する。このため、塗料用容積型ポンプ19は、回転数を調整することによって、被塗物、塗装機1周囲の温度、湿度等の雰囲気条件に影響されることなく、所望の吐出量となった塗料、シンナを定量供給するものである。
【0063】
20は色替弁装置16と共に塗装機1の外部に設けられた溶剤源としての溶剤源装置で、該溶剤源装置20は、溶剤供給配管21を介して溶剤弁15に接続され、該溶剤弁15を介して溶剤流路13に接続されている。そして、溶剤源装置20は、色替時には内筒11の先端側や回転霧化頭5等を洗浄し、再塗装時には塗料を希釈化するシンナを回転霧化頭5に供給するための複数(例えば2個)のシンナ弁20Th と、洗浄用のエアを供給するエア弁20Ar によって構成されている。また、シンナ弁20Th は溶剤源としてのシンナ源22Th に接続されると共に、エア弁20Ar はエア源22Ar に接続されている。これにより、溶剤源装置20は、シンナ弁20Th とエア弁20Ar とを選択的に開弁し、シンナ等を溶剤流路13に供給するものである。なお、2個のシンナ弁20Th は、塗料の種類等に応じて異なる成分のシンナを供給するシンナ源22Th に接続されている。
【0064】
23は再塗装時のシンナの供給量を可変に調整する溶剤流量調整手段としての溶剤用容積型ポンプで、該溶剤用容積型ポンプ23は、溶剤供給配管21の途中に接続され、塗料用容積型ポンプ19と同様にギヤポンプ等によって構成されている。そして、溶剤用容積型ポンプ23は、塗料用容積型ポンプ19と同様に、回転数を調整することによって、所望の吐出量となったシンナを定量供給するものである。
【0065】
24はカバー2内に形成された排液流路で、該排液流路24は、図2に示すように、その一端側が排液配管25を介して塗装機1の外部に設けられた廃液タンク26に接続され、その他端側がカバー2内で塗料流路12の途中に接続されている。
【0066】
27は排液流路24の途中に設けられた排液弁で、該排液弁27は溶剤弁15とほぼ同様に、常閉の2ポート2位置のスプリングリターン型エア式切換弁として構成されている。そして、排液弁27は、常時は、排液流路24を閉弁している。一方、洗浄時には、排液弁27は、外部からの制御エアによって開弁し、排液流路24と廃液タンク26との間を連通するものである。
【0067】
本実施の形態による回転霧化型静電塗装装置は上述の如き構成を有するもので、次にA色の通常塗装と再塗装を行う場合について図2および図3を参照しつつ説明する。
【0068】
まず、前色の洗浄が済んでいる塗装機1の回転霧化頭5にA色塗料を供給するA色供給工程が行われる。このとき、A色塗料は、塗料供給配管17から塗料流路12、回転霧化頭5に亘って充填される。
【0069】
そして、A色の通常塗装工程では、エアモータ3によって回転軸4、回転霧化頭5を回転させる。また、回転霧化頭5に高電圧を印加すると共に、シェーピングエア源(図示せず)からシェーピングエアリング2Aに向けてシェーピングエアを供給し、シェーピングエア噴出口2Bから回転霧化頭5の前面側にシェーピングエアを噴出する。
【0070】
このとき、塗料弁14は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁する。一方、溶剤弁15と排液弁27は、閉弁位置となる切換位置(イ)に保持されている。この状態で、塗料用容積型ポンプ19はA色塗料を回転霧化頭5の塗料溜り8に定量供給するから、A色塗料は、塗料吐出口11Bからハブ部材7の塗料薄膜化面6Cに向けて吐出され、回転霧化頭5の高速回転によって霧化される。そして、この霧化されたA色塗料は、塗料放出端縁6Dから放出されるときに高電圧が帯電すると共に、シェーピングエア噴出口2Bからのシェーピングエアにより塗装パターンが形成され、回転霧化頭5と被塗物との間に生じる電気力線に沿って飛行することにより、該被塗物に塗着する。
【0071】
次に、A色の通常塗装工程が終了したら、塗料供給配管17、塗料流路12、ハブ部材7等に残留、付着したA色塗料を洗浄する洗浄工程を行う。
【0072】
即ち、洗浄工程では、排液弁27は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁する。一方、塗料弁14は閉弁位置となる切換位置(イ)に保持される。
【0073】
これにより、排液弁27は、排液流路24と廃液タンク26とを接続するから、色替弁装置16は、エア、シンナを交互に複数回吐出する。この結果、塗料供給配管17、塗料流路12の一部に残留したA色塗料は、排液流路24から排液配管25等を介して廃液タンク26内に流入し、回収される。
【0074】
そして、塗料供給配管17および塗料流路12の一部の洗浄が終了したら、塗料弁14を切換位置(ロ)に切換えて開弁させ、色替弁装置16からのシンナを塗料流路12の先端側に供給する。これにより、色替弁装置16から供給されるシンナは、塗料流路12先端側に残留するA色塗料をハブ部材7に吐出させ、該塗料流路12の先端側や回転霧化頭5等を洗浄する。
【0075】
また、A色の通常塗装工程では、A色塗料の吐出時に内筒11の先端の塗料吐出口11B外周側に塗料が付着する。しかし、前述の洗浄工程では、塗料流路12から回転霧化頭5に向けてシンナ等を噴射するだけであるから、この塗料吐出口11B外周側に付着した塗料を洗浄することができない。そこで、洗浄工程では、前述した色替弁装置16による塗料流路12等の主洗浄に加えて、溶剤源装置20によって内筒11の先端外周側をスポット的に洗浄する補助洗浄工程を行うようになっている。
【0076】
即ち、例えば洗浄工程の初期時には、補助洗浄工程を行うために溶剤弁15は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わり開弁する。この状態で、溶剤源装置20のシンナ弁20Th が開弁し、シンナを吐出する。これにより、このシンナは、溶剤供給配管21から溶剤流路13に供給され、該溶剤吐出口10Aから内筒11の塗料吐出口11B外周側に向けて吐出されて付着塗料を洗浄する。そして、内筒11の先端側外周の付着塗料の洗浄が終了した後、溶剤源装置20のエア弁20Ar は、エアを吐出し、溶剤流路13内に残留したシンナを排出する。
【0077】
また、A色の塗装が行われた被塗物は乾燥工程、焼付工程等の後、仕上り工程においてその塗装状態が検査される。このとき、塗装された被塗物の塗膜表面に塗装不良が発生していることがある。このように塗装不良が発生している場合には、塗装面を高品質に仕上げるために、塗装不良が点在して発生している塗膜表面全体に研磨処理を施した後に、研磨除去された塗膜の膜厚分を補うために再塗装を行う必要がある。そこで、次にA色の再塗装工程について説明する。
【0078】
まず、塗料供給工程では、回転霧化頭5にA色塗料を供給し、A色の塗装準備を行う。次に、再塗装工程では、塗料弁14は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁すると共に、溶剤弁15も、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁する。一方、排液弁27は、閉弁位置となる切換位置(イ)に保持されている。
【0079】
この状態で、塗料用容積型ポンプ19は、塗料流路12を介してA色塗料を塗料溜り8に定量供給し、溶剤用容積型ポンプ23は、溶剤流路13を介してシンナを塗料溜り8に定量供給する。これにより、塗料溜り8で、A色塗料とシンナとが混合され、シンナによって希釈化したA色希釈塗料となって回転霧化頭5により噴霧される。
【0080】
ここで、このA色希釈塗料を用いて塗装を行う再塗装工程では、研磨処理工程で研磨除去した膜厚分だけの塗料を塗装すればよいから、塗料用容積型ポンプ19の回転数を低く設定する。これにより、塗料用容積型ポンプ19は、A色塗料のみを用いて行う通常塗装工程のときよりも少量のA色塗料を塗料溜り8に定量供給する。一方、溶剤用容積型ポンプ23は、溶剤流路13から吐出するシンナの吐出量を調整し、シンナを塗料溜り8に定量供給する。
【0081】
即ち、通常塗装工程では、塗料弁14を開弁し、塗料用容積型ポンプ19によって流量が例えば100cc/minとなったA色塗料を定量供給する。このとき、溶剤弁15は閉弁しているから、溶剤用容積型ポンプ23からシンナが供給されることはない。これに対し、再塗装工程では、塗料弁14と溶剤弁15を開弁し、塗料用容積型ポンプ19によって流量が例えば50cc/minとなったA色塗料を定量供給すると共に、溶剤用容積型ポンプ23によって流量が例えば20cc/minとなったシンナを定量供給する。これにより、再塗装のときに使用されるA色希釈塗料は、A色塗料とシンナとの混合比が最適な揮発性溶剤の割合となるように調整される。
【0082】
そして、塗料溜り8内に吐出したA色塗料とシンナとは、高速回転する回転霧化頭5によって塗料溜り8内で攪拌され、A色希釈塗料となって塗料流出孔7Bから流出する。そして、A色希釈塗料は、塗料薄膜化面6Cによって平滑化されると共に、塗料放出端縁6Dから放出され、回転霧化頭5の高速回転によって霧化される。これにより、霧化されたA色希釈塗料は、塗料放出端縁6Dから放出されるときに高電圧に帯電した帯電塗料粒子となり、シェーピングエア噴出口2Bからのシェーピングエアによって塗装パターンが形成される。そして、帯電塗料粒子は、回転霧化頭5と被塗物との間に生じる電気力線に沿って飛行することにより、該被塗物に塗着する。
【0083】
かくして、本実施の形態では、通常塗装工程では塗料弁14のみ開弁し、再塗装工程では塗料弁14と一緒に溶剤弁15を開弁する構成としたから、再塗装工程では、回転霧化頭5に塗料流路12を通じて塗料を供給すると共に、溶剤流路13を通じてシンナを供給することができる。これにより、回転霧化頭5は、塗料とシンナとを混合すると共に、シンナによって希釈化した希釈塗料を高電圧に帯電させつつ被塗物に向けて噴霧する。
【0084】
このため、再塗装工程では、溶剤弁15から供給されるシンナによって塗料の揮発性溶剤の割合を増加させることができるから、再塗装工程で塗料の吐出量が減少し、塗料粒子中の揮発成分の揮発が促進されるときでも、回転霧化頭5から噴霧される各塗料粒子中に含まれる揮発成分の割合を増加させることができ、塗着時不揮発分含有率を所望の値に容易に調整することができる。従って、再塗装における被塗物の塗装仕上り性を良好にして、塗装機1に対する信頼性を向上することができる。
【0085】
また、本実施の形態によれば、再塗装工程では塗料用容積型ポンプ19によって色替弁装置16からの塗料の吐出量を減少させることができるから、従来技術のような塗料の無駄をなくすことができ、塗装コストを低下させることができる。しかも、色替弁装置16からの塗料の吐出量を減少させることによって絞塗装、レザートーン塗装等の塗膜に再塗装を施すときでも、再塗装によって被塗物の表面に薄い塗膜を形成することができるから、絞塗装、レザートーン塗装等による凹凸感が損なうことなく、再塗装を行うことができる。
【0086】
また、色替弁装置16と塗料弁14との間には塗料用容積型ポンプ19を設け、溶剤源装置20と溶剤弁15との間には溶剤用容積型ポンプ23を設ける構成としたから、再塗装工程では、塗料用容積型ポンプ19によって塗料の吐出量を調整しつつ塗料を塗料溜り8に定量供給できると共に、溶剤用容積型ポンプ23によってシンナの吐出量を調整しつつシンナを塗料溜り8に定量供給することができる。これにより、再塗装のときに使用される希釈塗料を、塗料とシンナとの混合比が最適な揮発性溶剤の割合となるように調整することができる。
【0087】
一方、塗装機1を、エアモータ3と、該エアモータ3の軸方向に挿通された回転軸4と、該回転軸4に設けられたフィードチューブ9と、回転軸4の先端に取り付けた回転霧化頭5とによって構成したから、再塗装工程では、塗料弁14と溶剤弁15とが開弁し、エアモータ3によって高速回転状態にある回転霧化頭5に向けて塗料とシンナとを供給することができる。この結果、回転霧化頭5は、塗料とシンナとを混合希釈すると共に、希釈化した希釈塗料を高電圧に帯電させつつ被塗物に向けて噴霧することができる。
【0088】
また、フィードチューブ9を内筒11と外筒10とからなる二重チューブ構造とし、内筒11内には塗料流路12を形成すると共に、内筒11と外筒10との間には溶剤流路13を形成する構成としたから、洗浄工程では、溶剤弁15をフィードチューブ9先端の洗浄を行う洗浄弁として用いることができる。このため、補助洗浄工程で溶剤弁15を開弁し、内筒11と外筒10との間に形成された溶剤流路13を通じてシンナを吐出することによって、内筒11の先端に付着した塗料を確実に洗浄することができる。また、再塗装工程では、内筒11内の塗料流路12から塗料が吐出されると共に、内筒11の外周側を取り囲む溶剤流路13からシンナが供給されるから、回転霧化頭5の全周に亘ってほぼ均等に塗料、シンナを吐出させることができ、塗料とシンナとを容易に混合することができる。
【0089】
また、回転霧化頭5にはフィードチューブ9の先端を収容する塗料溜り8を形成したから、再塗装工程でフィードチューブ9の先端から塗料とシンナとを吐出したときに、塗料溜り8内で塗料とシンナとを容易に混合、攪拌することができる。
【0090】
次に、図4は第2の実施の形態による塗装方法で、本実施の形態の特徴は、被塗物、塗装装置等の周囲の温度、湿度等のような雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うことにある。そこで、図4を参照しつつ雰囲気条件が適温時、適湿時のA色の通常塗装工程(以下、適温時塗装工程という)と溶剤が揮発し易い高温時、乾燥時のA色の通常塗装工程(以下、高温時塗装工程という)について説明する。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0091】
まず、前色の洗浄が済んでいる塗装機1の回転霧化頭5にA色塗料を供給するA色塗料供給工程が行われる。このとき、A色塗料は、塗料供給配管17から塗料流路12、回転霧化頭5に亘って充填される。
【0092】
そして、適温時塗装工程では、エアモータ3によって回転軸4、回転霧化頭5を回転させる。また、回転霧化頭5に高電圧を印加すると共に、シェーピングエア源(図示せず)からシェーピングエアリング2Aに向けてシェーピングエアを供給し、シェーピングエア噴出口2Bから回転霧化頭5の前面側にシェーピングエアを噴出する。
【0093】
このとき、塗料弁14は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁する。一方、溶剤弁15と排液弁27は、閉弁位置となる切換位置(イ)に保持されている。これにより、塗料用容積型ポンプ19は、塗料流路12を介してA色塗料を塗料溜り8に定量供給し、A色塗料を塗料吐出口11Bからハブ部材7の塗料薄膜化面6Cに向けて吐出して回転霧化頭5によって霧化する。そして、この霧化されたA色塗料は、塗料放出端縁6Dから放出されるときに高電圧が帯電すると共に、シェーピングエア噴出孔2Aからのシェーピングエアにより塗装パターンが形成され、回転霧化頭5と被塗物との間に生じる電気力線に沿って飛行することにより、該被塗物に塗着する。
【0094】
ところで、一般に、塗料は通常の塗装温度等の適正な雰囲気条件に合わせて溶剤の含有量が設定されている。このため、例えば被塗物、塗装装置等の周囲温度が上昇したときには通常使用される塗料によって塗装を行うと、塗着時不揮発分含有率が上昇して、塗膜表面にゆず肌が形成される傾向がある。
【0095】
本実施の形態はこのような問題点を解決したもので、次に前述した高温時等における高温時塗装工程について説明する。
【0096】
まず、塗料供給工程では、回転霧化頭5にA色塗料を供給し、A色の塗装準備を行う。次に、高温時塗装工程では、塗料弁14は、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁すると共に、溶剤弁15も、切換位置(イ)から切換位置(ロ)に切換わって開弁する。一方、排液弁27は、閉弁位置となる切換位置(イ)に保持されている。
【0097】
この状態で、塗料用容積型ポンプ19は、塗料流路12を介してA色塗料を塗料溜り8に定量供給し、溶剤用容積型ポンプ23は、溶剤流路13を介してシンナを塗料溜り8に定量供給する。これにより、塗料溜り8で、A色塗料とシンナとが混合され、シンナによって希釈化したA色希釈塗料となって回転霧化頭5により噴霧される。
【0098】
ここで、このA色希釈塗料を用いて塗装を行う高温時塗装工程では、適温時塗装工程とほぼ同じ膜厚分だけ塗料を塗装する必要があるから、塗料用容積型ポンプ19の回転数は適温時塗装工程とほぼ同じ回転数に設定する。これにより、塗料用容積型ポンプ19は、A色塗料のみを用いて行う適温時塗装工程とほぼ同じ流量のA色塗料を塗料溜り8に定量供給する。一方、溶剤用容積型ポンプ23は、溶剤流路13から吐出するシンナの吐出量を調整し、シンナを塗料溜り8に定量供給する。
【0099】
即ち、適温時塗装工程では、塗料弁14を開弁し、塗料用容積型ポンプ19によって流量が例えば100cc/minとなったA色塗料を定量供給する。このとき、溶剤弁15は閉弁しているから、溶剤用容積型ポンプ23からシンナが供給されることはない。一方、高温時塗装工程では、塗料弁14を開弁し、塗料用容積型ポンプ19によって流量が適温時塗装工程と同様の100cc/minとなったA色塗料を定量供給する。このとき、溶剤弁15も開弁し、溶剤用容積型ポンプ23によって流量が例えば30cc/minとなったシンナを定量供給する。これにより、高温時塗装工程に使用されるA色希釈塗料は、A色塗料とシンナとの混合比が最適な揮発性溶剤の割合となるように調整される。
【0100】
そして、塗料溜り8内に吐出したA色塗料とシンナとは、高速回転する回転霧化頭5によって塗料溜り8内で攪拌され、A色希釈塗料となって塗料流出孔7Bから流出する。そして、A色希釈塗料は、塗料薄膜化面6Cによって平滑化されると共に、塗料放出端縁6Dから放出され、回転霧化頭5の高速回転によって霧化される。これにより、霧化されたA色希釈塗料は、塗料放出端縁6Dから放出されるときに高電圧に帯電した帯電塗料粒子となり、シェーピングエア噴出口2Bからのシェーピングエアによって塗装パターンが形成される。そして、帯電塗料粒子は、回転霧化頭5と被塗物との間に生じる電気力線に沿って飛行することにより、該被塗物に塗着する。
【0101】
かくして、本実施の形態では、溶剤が揮発しにくい適温時塗装工程では塗料弁14のみ開弁し、溶剤が揮発し易い高温時塗装工程では塗料弁14と一緒に溶剤弁15を開弁する構成としたから、高温時塗装工程では、回転霧化頭5に塗料流路12を通じて塗料を供給すると共に、溶剤流路13を通じてシンナを供給することができる。
【0102】
このため、高温時塗装工程では、溶剤弁15から供給されるシンナによって塗料の揮発性溶剤の割合を増加させることができるから、高温時塗装工程で温度、湿度等の雰囲気条件によって塗料粒子中の揮発成分の揮発が促進されるときでも、回転霧化頭5から噴霧される各塗料粒子中に含まれる揮発成分の割合を増加させることができ、被塗物に塗着したときの塗着時不揮発分含有率を所望の値に容易に調整することができる。従って、溶剤の揮発が促進されるときでも被塗物の塗装仕上り性を良好にして、塗装機1に対する信頼性を向上することができる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、高温時塗装工程では塗料用容積型ポンプ19によって適温時塗装工程とほぼ同じ流量の塗料を定量供給するから、高温時塗装工程でも適温時塗装工程とほぼ同じ膜厚の塗膜を形成することができる。
【0104】
なお、前記第1、第2の実施の形態では、塗装装置として直接帯電式の静電塗装装置を例に挙げて説明したが、カバーの外周側に外部電極を設け、該外部電極に高電圧を印加することによって塗料粒子を帯電させる間接帯電方式の静電塗装装置に適用してもよい。
【0105】
また、前記第1、第2の実施の形態では、二重チューブ構造のフィードチューブ9を用いる構成としたが、図5および図6に示す変形例のように、内部が塗料流路31となった一重チューブ構造のフィードチューブ32を用いる構成としてもよい。この場合、フィードチューブ32の途中には塗料弁14′を設けると共に、該塗料弁14′の上流側には溶剤流路としての溶剤配管33を接続するものである。
【0106】
次に、図7および図8は第3の実施の形態による塗装装置で、本実施の形態の特徴は、塗料噴霧手段をエア霧化型の塗装機によって構成したことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0107】
41は塗料噴霧手段としてのエア霧化型の塗装機で、該塗装機41は、後述するスプレーガン本体42、塗料ノズル43、エアノズル45等によって構成されている。
【0108】
42は長尺な筒状に形成されたスプレーガン本体、43は該スプレーガン本体42の先端側中央に取付けられた塗料ノズルをそれぞれ示し、該塗料ノズル43は、その先端側がテーパ状に形成されると共に、その内部には色替弁装置16に接続された塗料流路44が形成されている。また、塗料ノズル43の内部には後述する塗料弁50のニードル弁体50Bが離着座する弁座部43Aが形成されると共に、弁座部43Aの先端側にはニードル弁体50Bの開弁時に塗料流路44を介して供給される塗料を噴霧する塗料噴霧口43Bが形成されている。
【0109】
45は塗料ノズル43の先端面側を覆うようにして設けられたエアノズルで、該エアノズル45は、リテーナリング46を介してスプレーガン本体42の先端側に固定されている。そして、エアノズル45の前面側には、上下方向に対向し、かつ前方に突出した一対のホーン部45Aが形成されている。また、エアノズル45の中央部には、塗料ノズル43の先端側が挿通するノズル挿通穴45Bが形成されると共に、該ノズル挿通穴45B内には塗料ノズル43の塗料噴霧口43Bが突出して配設されている。さらに、ノズル挿通穴45Bの周囲には、多数の霧化エア噴出口45Cが形成され、各ホーン部45Aには、斜め内側に向けて開口したパターンエア噴出口47が形成されている。
【0110】
そして、ノズル挿通穴45Bと霧化エア噴出口45Cは、霧化エア通路48を通じて供給される霧化エアを噴出し、塗料噴霧口43Bから噴霧する塗料の霧化を促進するものである。また、パターンエア噴出口47は、パターンエア通路49を通じて供給されるパターンエアを噴出し、塗料噴霧口43Bから噴霧する塗料のパターンを成形するものである。
【0111】
50は塗料流路44を開,閉弁する塗料弁で、該塗料弁50は、スプレーガン本体42に設けられたアクチュエータ50Aと、該アクチュエータ50Aによって弁座部43Aに離着座するニードル弁体50Bとによって構成されている。また、ニードル弁体50Bの先端には、高電圧発生器(図示せず)に接続された針状電極51が設けられている。
【0112】
52は塗料ノズル43の手前側で塗料流路44に合流する溶剤流路で、該溶剤流路52は、その途中には第1の実施の形態の溶剤弁15とほぼ同様の溶剤弁53が設けられると共に、溶剤供給配管21を通じて溶剤源装置20に接続されている。
【0113】
54は塗料流路44に合流した排液流路で、該排液流路54は、その途中に第1の実施の形態による排液弁27とほぼ同様の排液弁55が設けられると共に、排液配管25を介して塗装機41の外部に設けられた廃液タンク26に接続されている。
【0114】
かくして、本実施の形態でも前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
なお、第2の実施の形態では、塗料噴霧手段としてエア霧化型塗装機41を用いるものとしたが、液圧霧化型塗装機、エアミックス型塗装機等を用いてもよい。
【0116】
また、前記各実施の形態では、塗料用容積型ポンプ19を色替弁装置16と塗装機1,41との間に接続するものとしたが、例えば色替弁装置16と塗料供給ライン18A,18B,…18Nとの間にそれぞれ配設する構成としてもよい。
【0117】
また、前記各実施の形態では、溶剤用容積型ポンプ23を溶剤源装置20と塗装機1,41との間に接続するものとしたが、例えば溶剤源装置20とシンナ源22Th との間に配設する構成としてもよい。
【0118】
また、前記各実施の形態では、塗料流量調整手段、溶剤流量調整手段としてギヤポンプ、ベーンポンプ、アキシャルピストン型ポンプ、ラジアルピストン型ポンプ等からなる容積型ポンプ19,23によって構成するものとしたが、本発明はこれに限らず、例えば圧力レギュレータによって塗料流量調整手段、溶剤流量調整手段を構成してもよい。
【0119】
【発明の効果】
以上詳述した如く、請求項1の発明による塗装装置によれば、通常塗装時には塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行う構成としたから、通常塗装時には、塗料噴霧手段は、塗料供給源から供給される塗料を噴霧し、被塗物を塗装することができる。一方、塗着時不揮発分含有率を低下させる再塗装時には、塗料弁と溶剤弁と一緒に開弁させるから、塗料噴霧手段に塗料と溶剤とを供給することができる。これにより、塗料噴霧手段は、溶剤と混合希釈した希釈塗料を噴霧することができる。この結果、飛行中の塗料粒子の揮発成分の割合を増加させ、再塗装時の被塗物に塗着した塗膜の塗着時不揮発分含有率を所望の値に調整することができ、再塗装における被塗物の塗装仕上り性を良好にして、塗装装置に対する信頼性を向上することができる。
また、請求項2の発明によれば、雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うから、溶剤の揮発が促進される温度、湿度等の雰囲気条件となるときには、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して未塗装の被塗物に通常塗装を行うことができる。これにより、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とが混合希釈した希釈塗料を噴霧するから、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなり、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
特に、請求項2の発明によれば、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、溶剤の揮発が促進される雰囲気条件であっても塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときであっても、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときとほぼ同じ流量の塗料を供給するから、溶剤弁の開,閉に関係なく通常塗装時の塗膜の膜厚をほぼ一定に保持することができる。
【0120】
また、請求項の発明によれば、塗料供給源と塗料弁との間には塗料流量調整手段を設け、溶剤源と溶剤弁との間には溶剤流量調整手段を設ける構成としたから、希釈塗料を用いるときには、塗料流量調整手段によって塗料の流量を調整しつつ塗料を塗料噴霧手段に定量供給できると共に、溶剤流量調整手段によって溶剤の流量を調整しつつ溶剤を塗料噴霧手段に定量供給することができる。これにより、希釈塗料を、塗料とシンナとの混合比が最適な揮発性溶剤の割合となるように調整することができる。
【0121】
また、請求項の発明によれば、塗料噴霧手段を、エアモータと、該エアモータの軸方向に挿通された回転軸と、該回転軸内にそれぞれ塗料流路と溶剤流路とが設けられたフィードチューブと、回転軸の先端に設けられた回転霧化頭とによって構成したから、塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、エアモータによって高速回転状態にある回転霧化頭に向けて塗料と溶剤とを供給することができる。この結果、回転霧化頭は、塗料と溶剤とを混合すると共に、この混合希釈した希釈塗料を高電圧に帯電させつつ被塗物に向けて噴霧することができる。
【0122】
また、請求項の発明によれば、フィードチューブを内筒と外筒とからなる二重チューブ構造とし、内筒内には塗料流路を形成すると共に、内筒と外筒との間には溶剤流路を形成する構成としたから、塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、内筒内の塗料流路から塗料を吐出すると共に、内筒の外周側を取り囲む溶剤流路から溶剤を供給し、塗料と溶剤とを容易に混合することができる。また、溶剤流路を通じて溶剤を吐出することによって、フィードチューブ先端の塗料を洗浄することができ、溶剤弁を洗浄弁として利用することができる。
【0123】
また、請求項の発明によれば、塗料噴霧手段を、スプレーガン本体と、該スプレーガン本体の先端側に設けられ塗料流路を介して供給される塗料を塗料噴霧口から噴霧する塗料ノズルとによって構成し、塗料ノズルの手前側で塗料流路と溶剤流路とを合流させたから、塗着時不揮発分含有率を低下させるときには、塗料ノズルに塗料流路を通じて塗料を供給すると共に溶剤流路を通じて溶剤を供給することができる。これにより、塗料ノズルは、これらの塗料と溶剤とを混合希釈し、希釈塗料を一緒に噴霧することができる。
【0124】
一方、請求項の発明による塗装方法によれば、通常塗装時には塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行う構成としたから、通常塗装時には、塗料噴霧手段は、塗料供給源から供給される塗料を噴霧し、被塗物を塗装することができる。一方、再塗装時には、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁させるから、塗料噴霧手段には、塗料供給源からの塗料が供給されると共に、溶剤源からの溶剤が供給される。これにより、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とを混合し、溶剤によって希釈化した希釈塗料を噴霧することができる。この結果、再塗装時の被塗物に塗着した塗膜の塗着時不揮発分含有率を所望の値に調整することができ、再塗装における被塗物の塗装仕上り性を良好にして、塗装装置に対する信頼性を向上することができる。
【0125】
また、請求項の発明によれば、再塗装時には、塗料弁からは通常塗装時の流量よりも少ない流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、通常塗装時よりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、再塗装時の塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、再塗装時には、通常塗装時の流量よりも少ない流量の塗料を供給するから、通常塗装時よりも薄い塗膜を形成することができ、塗料の無駄をなくすことができる。
【0126】
また、請求項の発明によれば、雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うから、溶剤の揮発が促進される温度、湿度等の雰囲気条件となるときには、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して未塗装の被塗物に通常塗装を行うことができる。これにより、塗料噴霧手段は、塗料と溶剤とが混合希釈した希釈塗料を噴霧するから、飛行中の希釈塗料粒子の揮発性溶剤の割合が高くなり、塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。
【0127】
さらに、請求項9の発明によれば、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させるから、溶剤の揮発が促進される雰囲気条件であっても塗膜の塗着時不揮発分含有率を最適な値に調整することができる。また、塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときであっても、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときとほぼ同じ流量の塗料を供給するから、溶剤弁の開,閉に関係なく通常塗装時の塗膜の膜厚をほぼ一定に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による塗装装置を示す全体構成図である。
【図2】第1の実施の形態による塗装装置の塗料、溶剤等の流路系統を示す回路構成図である。
【図3】塗装工程、洗浄工程、再塗装工程における色替弁装置、溶剤源装置、塗料弁、排液弁、溶剤弁の動作を示す動作説明図である。
【図4】第2の実施の形態による適温時塗装工程、高温時塗装工程における色替弁装置、溶剤源装置、塗料弁、排液弁、溶剤弁の動作を示す動作説明図である。
【図5】第1、第2の実施の形態の変形例による塗装装置を示す全体構成図である。
【図6】第1、第2の実施の形態の変形例による塗装装置の塗料、溶剤等の流路系統を示す回路構成図である。
【図7】第3の実施の形態による塗装装置を示す全体構成図である。
【図8】第3の実施の形態による塗装装置の塗料、溶剤等の流路系統を示す回路構成図である。
【図9】従来技術による塗装装置によって被塗物を再塗装したときの塗膜を示す断面図である。
【図10】従来技術による塗装装置によって絞塗装を施した被塗物を再塗装したときの塗膜を示す断面図である。
【図11】塗料の吐出量、塗料粒子の粒径、飛行中の溶剤蒸発速度の関係を示す特性線図である。
【符号の説明】
1,41 塗装機(塗料噴霧手段)
3 エアモータ
4 回転軸
5 回転霧化頭
9,32 フィードチューブ
10 外筒
11 内筒
12,31,44 塗料流路
13,52 溶剤流路
14,50,14′ 塗料弁
15,53 溶剤弁
18A,18B,…18N 塗料供給ライン(塗料供給源)
19 塗料量容積型ポンプ(塗料流量調整手段)
22Th シンナ源(溶剤源)
23 溶剤用容積型ポンプ(溶剤流量調整手段)
33 溶剤配管(溶剤流路)
42 スプレーガン本体
43 塗料ノズル
43B 塗料噴霧口

Claims (9)

  1. 塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置において、
    通常塗装時には前記塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には前記塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行う構成としたことを特徴とする塗装装置。
  2. 塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置において、
    外気温度等の雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としたことを特徴とする塗装装置。
  3. 前記塗料供給源と塗料弁との間には、前記塗料供給源から供給される塗料の流量を調整する塗料流量調整手段を設け、前記溶剤源と溶剤弁との間には、前記溶剤源から供給される溶剤の流量を調整する溶剤流量調整手段を設けてなる請求項1または2に記載の塗装装置。
  4. 前記塗料噴霧手段は、エアモータと、該エアモータの軸方向に挿通された回転軸と、該回転軸内にそれぞれ前記塗料流路と溶剤流路とが設けられたフィードチューブと、前記回転軸の先端に設けられ該フィードチューブから吐出された塗料を噴霧し、または塗料と溶剤を一緒に噴霧する回転霧化頭とによって構成してなる請求項1,2またはに記載の塗装装置。
  5. 前記フィードチューブは内筒と外筒とからなる二重チューブ構造とし、内筒内に塗料流路を形成し、内筒と外筒との間に溶剤流路を形成する構成としてなる請求項に記載の塗装装置。
  6. 前記塗料噴霧手段は、スプレーガン本体と、該スプレーガン本体の先端側に設けられ前記塗料流路を介して供給される塗料を塗料噴霧口から噴霧する塗料ノズルとによって構成し、該塗料ノズルの手前側で前記塗料流路と溶剤流路とを合流させてなる請求項1,2またはに記載の塗装装置。
  7. 塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置を用いた塗装方法において
    常塗装時には前記塗料弁のみ開弁して塗装を行い、再塗装時には前記塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して塗装を行うことを特徴とする塗装装置を用いた塗装方法。
  8. 再塗装時には、塗料弁からは通常塗装時の流量よりも少ない流量の塗料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、通常塗装時よりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としてなる請求項に記載の塗装装置を用いた塗装方法。
  9. 塗料を供給する塗料供給源と、塗料流路を介して該塗料供給源から供給された塗料を噴霧する塗料噴霧手段と、該塗料噴霧手段から噴霧する塗料の供給、停止を行うために前記塗料流路を開,閉する塗料弁と、前記塗料供給源とは別に設けられ溶剤流路を介して溶剤を供給する溶剤源と、前記溶剤流路の途中に設けられ前記塗料噴霧手段に溶剤を供給する溶剤弁とを備えた塗装装置を用いた塗装方法において、
    外気温度等の雰囲気条件に応じて塗料弁と溶剤弁とを一緒に開弁して通常塗装を行うときには、塗料弁からは塗料弁のみを開弁して通常塗装するときの流量とほぼ同じ流量の塗 料を供給し、溶剤弁からは所望の流量の溶剤を供給し、塗料弁のみを開弁して通常塗装するときよりも塗着時不揮発分含有率を低下させる構成としたことを特徴とする塗装装置を用いた塗装方法。
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