JP3564825B2 - 水性アルキド樹脂の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機溶剤含有量が少なく、しかも、とりわけ、貯蔵安定性などに優れた水性アルキド樹脂の、新規にして有用なる、製造法に関する。さらに詳細には、本発明は、不飽和脂肪酸と、それぞれ、カルボキシル基含有ビニル系単量体と、スチレン(誘導体)と、その他のビニル系単量体という、特定のビニル系単量体との重合により得られるビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物とを縮合せしめ、次いで、中和せしめることから成る、水性アルキド樹脂の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境、省資源あるいは安全衛生の観点から、溶剤型塗料から、水性塗料への転換が求められつつある。とりわけ、アルキド樹脂は、その低価格性、良好なる皮膜表面の光沢性、独特の肉持ち感、そして、耐水性が良好なることなどの理由で、工業用途から汎用用途に至るまで、今なお、多く使用されている。
【0003】
斯かるアルキド樹脂の水性化も、古くから研究されてはいるけれども、アルキド樹脂の水性化において、最も大きな課題の一つは、貯蔵安定性を向上化せしめるということである。
【0004】
工業用途の目的のための塗料にあっては、塗料化してから、塗装するまでの期間は、比較的、短いというのが一般的ではあるが、使用期間の長い一般家庭用の塗料にあっては、とりわけ、高皮膜外観ならびに刷毛での塗り易さなどの観点からも、長油系のアルキド樹脂が多く用いられており、これには、二年から三年の貯蔵安定性が要求される。
【0005】
また、夏場などのように、高温環境下で以て貯蔵するという場合があることを考えると、さらに、ハイレベルの安定性が、是非とも必要である。アルキド樹脂というものは、それ自体が、加水分解され易いエステル結合を多く含んでおり、したがって、加水分解により、皮膜の性能が著しく低下したり、あるいは塗料の粘度が低下したりして、折角の最適なる塗料配合を設定化せしめてみても、往々にして、塗装時の流動特性が損なわれて仕舞ったりするものである。
【0006】
アルキド樹脂の水性化において、乳化剤あるいは界面活性剤を用いて樹脂を分散化せしめるという試みも為されたが、とりわけ、乾燥性が著しく悪いこと、乾燥皮膜中に多量に残存する乳化剤・界面活性剤に起因する耐水性の悪さなどの理由から、未だに、実用化されるには到っていないというのが、実状である。
【0007】
また、アルキド樹脂中に、多くの、親水性であるカルボキシル基を、ハーフエステル化させることによって残存せしめ、親水性有機溶剤と共に、水に希釈化せしめるという方法が、よく、行われて来たが、アルキド樹脂それ自体の加水分解が著しく、したがって、経時的なる皮膜性能の低下が著しいということである。
【0008】
一方、水に希釈化せしめないで、専ら、親水性有機溶剤で以て希釈化せしめることによって製品化するという場合があるが、こうした場合には、どうしても、多量の溶剤で以て希釈せしめるというようにしないと、樹脂粘度が高いゆえに、作業者による樹脂の取り扱いが容易ではなくなるようになって、斯かる有機溶剤を低減化させづらいというのが、実状である。
【0009】
ところで、加水分解しにくい構造を持ったアルキド樹脂として、たとえば、ビニル系単量体が重合した部分が、加水分解され易いアルキド樹脂部を包囲する形のものを得るという技術が、特開昭50−115297号公報や、特開昭58−38748号公報などに開示されてはいる。
【0010】
しかしながら、こうした技術に従って得られる、いわゆる複合エマルジョンというものは、加水分解され易いアルキド部が、加水分解されにくいビニル部により包囲されているという処から、概して、分散安定性こそ良好ではあるものの、そのビニル部の量が少ないという場合には、どうしても、分散安定性の良好なるものが得難い処となる。
【0011】
油あるいは脂肪酸を多量に含むという長油系アルキドは、必然的に、ビニル量が少なくなって仕舞うので、上掲したような、公報開示技術に従う方法は、少なくとも、長油系には不向きである、と言い得よう。
【0012】
もう一つ、加水分解されにくい構造を持ったアルキド樹脂を得る方法として、たとえば、無水マレイン酸を、不飽和脂肪酸に、ディールズ・アルダー付加反応せしめ、次いで、此の付加反応物と、多価アルコールとをエステル化反応せしめるということによって、水性アルキド樹脂を得るという方法が、英国特許第1,032,364号明細書に開示されている。
【0013】
斯かる開示技術に従う場合には、親水性のカルボキシル基が、エステル結合によらずに、不飽和脂肪酸に結合されているというために、此の親水性基なるものは、加水分解によっては脱離し得ないという代物ではある。
【0014】
しかしながら、こうした方法によって得られるものは、どうしても、顔料との親和性の不足による、とりわけ、皮膜の光沢性が低いという問題点の存在が明らかとなっている。
【0015】
また、こうした方法を応用した形のものとして、特公平6−104770号公報には、不飽和脂肪酸と、アリルアルコールおよび芳香族ビニル単量体の共重合体とを縮合せしめたものに、さらに、マレイン化という手段を施すことによって得られる水性アルキド樹脂が、非水性アルキド樹脂を包囲しているという形のアルキド・エマルジョン組成物が開示されている。
【0016】
ところが、斯かる開示技術の方法によれば、長油系のアルキドでも、安定的に分散するけれども、高温環境下での分散粒子の会合、あるいは高温環境下でのエマルジョンの減粘(粘度低下)は避けられなく、塗装時の流動特性の変化に繋がって仕舞うという問題があった。
【0017】
一般に、安定なる分散粒子を得る方法の一つとしては、樹脂それ自体の親水性基を増加せしめるという方法もあるにはあるが、勿論ながら、斯かる親水性基の増大化が、とりわけ、皮膜の耐水性ならびに耐食性などを低下させ、加えて、乾燥皮膜の諸物性をも低下させるということは、よく知られている処である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来型技術に従う限りは、どうしても、低溶剤量などの、いわゆる環境対策条件下において、樹脂安定性ならびに塗料安定性の双方が良好であって、しかも、高い皮膜諸物性を有するという、まさしく、水性塗料に最適の樹脂得ることは、頗る、困難であって、現に、こうした、有機溶剤量が少なくて、しかも、樹脂安定性ならびに塗料安定性に優れた水性アルキド樹脂の製造方法の開発が、切に望まれている。
【0019】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の欠点の存在に鑑み、しかも、溶剤型塗料から水性塗料への転換が強く求められつつあるという時代の要求に鑑みて、先ずは、有機溶剤含有量が少ないという、次いで、水性樹脂単独の状態でも、はたまた、塗料液の状態でも、貯蔵安定性に優れているという、極めて実用性の高い水性アルキド樹脂の、斬新なる製造法を求めて、鋭意、研究を開始した。
【0020】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、一にかかって、有機溶剤量が少なくて、しかも、樹脂安定性ならびに塗料安定性に優れれるという、水性アルキド樹脂の、新規にして有用なる製造方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、こうした現状の認識と、従来型技術における種々の未解決の問題点の抜本的なる解決と、当業界における切なる要望との上に立って、鋭意、検討を重ねた結果、不飽和脂肪酸と、カルボキシル基含有ビニル系単量体と、スチレンと、その他のビニル系単量体とを重合せしめることにより得られるものであり、
【0022】
しかも、これらの諸原料成分のうちの、スチレン成分が、該スチレン成分と、その他のビニル系単量体なる成分との合計量に対し、20〜70重量%含まれているというビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物とを縮合せしめ、次いで、かくして得られる縮合生成物を、塩基性化合物により中和せしめることによって、
【0023】
低い有機溶剤含有量であるということは、もとより、加えて、比較的少ない親水基量でも、水中で溶解ないしは微分散化されるというものであって、常温での分散安定性が良好なるということは勿論のこと、約50℃という高温環境下においても、優れた分散安定性を有するという、極めて実用性の高い水性アルキド樹脂が得られるということを見出すに及んで、ここに、本発明を完成するに到った。
【0024】
【発明の実施態様】
すなわち、本発明は、基本的には、不飽和脂肪酸(a−1)と、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)と、スチレン(a−3)と、その他のビニル系単量体(a−4)とを重合せしめることから成るというものであり、
【0025】
しかも、上記したスチレン(a−3)なる原料成分が、該(a−3)成分と、上記した、その他のビニル系単量体(a−4)なる原料成分との合計量に対して、20〜70重量%含まれているビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物とを縮合せしめることから成るというものであり、
【0026】
次いで、かくして得られる縮合生成物を、塩基性化合物で以て中和せしめることから成るという、水性アルキド樹脂の、斬新にして有用なる製造法を請求しているものである。
【0027】
そして、本発明は、具体的には、それぞれ、上記した縮合生成物が、特に、上記したカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)に由来するカルボキシル基のモル数として、特に、該単量体(a−2)成分と、上記したスチレン(a−3)成分と、上記した、その他のビニル系単量体(a−4)との合計モル数に対して、10〜60モル%なる範囲内に入るものであるという、水性アルキド樹脂の、斬新にして有用なる製造法をも請求しているものであるし、
【0028】
次いで、上記したカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)が、特に、メタクリル酸であるという、水性アルキド樹脂の、斬新にして有用なる製造法をも請求しているものであるし、
【0029】
また、上記したビニル化脂肪酸が、特に、該ビニル化脂肪酸を基準として、上記した不飽和脂肪酸(a−1)を、20〜70重量%なる範囲内で以て含むものであるという、水性アルキド樹脂の、斬新にして、かつ、有用なる製造法をも請求しているものであるし、
【0030】
さらに、上記したポリオール化合物が、特に、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸とを縮合せしめることにより得られるものであるという、斬新にして有用なる製造法をも請求しているものであるし、
【0031】
さらにまた、上記したポリオール化合物が、特に、動物油、植物油および/またはその脂肪酸と、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸とを縮合させることにより得られるものであるという、斬新にして有用なる製造法をも請求しているものであるし、
【0032】
加えて、上記した水性アルキド樹脂の、すなわち、目的とする水性アルキド樹脂のトリグリセライド換算油長が、特に、20〜70%なる範囲内のものであるという、斬新にして有用なる製造法をも請求しているものである。
【0033】
以下に、本発明の方法を、つまり、本発明に係る水性アルキド樹脂の製造法というものを、一層、詳細に説明することにする。
【0034】
ここにおいて、まず、前記したビニル化脂肪酸とは、たとえば、不飽和脂肪酸(a−1)と、特定のビニル系単量体混合物との重合反応によって得られるというものを指称しているが、斯かる特定のビニル系単量体混合物とは、とりわけ、それぞれ、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)と、スチレン(a−3)と、さらに、その他のビニル系単量体(a−4)とからなるものを指称している。
【0035】
上記した不飽和脂肪酸(a−1)としては、たとえば、動物油あるいは植物油から合成される部類の、すべての脂肪酸が用いられるが、それらのうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、亜麻仁油、大豆油、サフラワー油、支那桐油、トール油、あさみ油、えの油の如き、各種の脂肪酸などであるし、
【0036】
あるいは脱水ひまし油脂肪酸、ハイ・ジエン脂肪酸などのような、とりわけ、ヨウ素価が約130以上なる化合物などであるが、こうした化合物の中から選ばれる、少なくとも1種のものが、該不飽和脂肪酸(a−1)として使用される。さらには、米糠油、綿実油、ひまし油、なたね油の如き、各種の脂肪酸なども、上掲したような脂肪酸と組み合わせて使用し得ることも、勿論、可能である。
【0037】
また、此の不飽和脂肪酸(a−1)と共重合される成分の一つである、前記したカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、アクリル酸、メタクリル酸もしくはクロトン酸の如き、各種の、いわゆるα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸;
【0038】
またはマレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸の如き、各種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸などをはじめ、さらには、無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸の如き、各種のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物などであるし、
【0039】
さらにはまた、これら上掲のような種々の酸無水物のモノエステル化物などであるが、これらの中から選ばれる、少なくとも1種の化合物が使用されるというものである。
【0040】
そして、これらのカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)の使用量としては、該単量体(a−2)成分それ自体に由来するカルボキシル基のモル数が、該単量体(a−2)成分と、それぞれ、後述するような、スチレン(誘導体)なる(a−3)成分と、その他のビニル系単量体なる(a−4)成分との合計モル数に対して、約10〜約60モル%なる範囲内が、好ましくは、15〜55モル%なる範囲内が適切である。
【0041】
10モル%より少ないと分散安定性に欠けたものが得られて仕舞う。一方、60モル%より多いと、アルキド樹脂とビニル部との相溶性が悪くなり乾燥皮膜が白化して仕舞う。皮膜物性面からはメタクリル酸の使用が特に好ましい。
【0042】
次いで、前記した、スチレン(a−3)成分の使用量としては、該スチレン(a−3)と、その他のビニル系単量体(a−4)との合計量に対して、少なくとも約20重量%なる範囲内が、好ましくは、30〜70重量%なる範囲内が適切である。
【0043】
此のスチレンなる(a−3)成分の使用量が、20重量%よりも少ないという場合には、約40℃あるいは約50℃という高温環境下で以て、分散安定性の良好なものは得られ難く、ひいては、水分散体それ自体の顕著なる粘度減少(粘度低下)が起こり易くなり、特に、約50℃の雰囲気下においては、1ヵ月程度で以て、不均一状態になって仕舞うというようにもなるし、一方、70重量%を超えて余りに多くなる場合には、どうしても、水分散体の水希釈性が悪くなり易くなるという場合もあるので、いずれの場合も好ましくない。
【0044】
さらに、前記した、その他のビニル系単量体(a−4)とは、たとえば、それぞれ、前述した、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)成分およびスチレンなる(a−3)成分以外の、重合性を有する化合物の総称であって、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0045】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルまたは(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどのような、(メタ)アクリル酸の、種々のアルキルエステル類などである。
【0046】
また、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのような、(メタ)アクリル酸の種々のヒドロキシアルキルエステル類の使用も、後続する縮合工程(縮合反応工程)でのゲル化を起こさないような範囲の量であれば、勿論、可能である。
【0047】
さらに、メトキシポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートの使用もまた、安定なる水分散体を得るという上で望ましいことであり、ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレートの使用もまた、皮膜の諸物性を考慮した上での使用は、勿論、可能である。
【0048】
以上までに記述して来た、それぞれ、不飽和脂肪酸(a−1)と、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)と、スチレン(a−3)と、その他のビニル系単量体(a−4)との重合反応は、公知慣用の種々の方法に従って行われる。
【0049】
斯かる重合反応のうちでも特に代表的なる一例のみを挙げるにとどめれば、トルエンもしくはキシレンの如き、各種の芳香族系溶剤;メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンの如き、各種のケトン系溶剤;または酢酸エチルもしくは酢酸ブチルの如き、各種のエステル系溶剤などのような、種々の有機溶剤の存在下において、不活性ガス雰囲気中で以て、約70〜約150℃なる温度範囲で、重合開始剤の使用により、此の重合反応が行われるというものである。
【0050】
また、後続する縮合反応工程に悪影響を及ぼさないような範囲の使用量で以て用い、あるいは適切なる処置をこそ行えば、イソプロパノールもしくはn−ブタノールの如き、各種のアルコール系溶剤;またはエチルセロソルブもしくはブチルセロソルブの如き、各種のグルコールエーテル系溶剤の使用も、勿論ながら、可能である。
【0051】
さらにまた、有機溶剤を使用しないという形での、いわゆる塊状重合反応で行ってもよいし、アルキド樹脂などのようなポリマーの存在下において、此の重合反応を行ってもよいことは、勿論である。
【0052】
前述した、それぞれ、(a−2)成分、(a−3)成分および(a−4)成分という、いわゆるビニル系単量体と、前述した不飽和脂肪酸(a−1)との共重合反応工程において、これらの、(a−2)成分と、(a−3)成分と、(a−4)成分との、いわゆる混合単量体(単量体混合物)の総使用量が多く、発熱が顕著なる場合には、斯かる混合単量体(単量体混合物)の添加は、間欠的滴下ないしは連続滴下で以て行ってもよいし、
【0053】
その逆に、斯かる混合単量体(単量体混合物)の総使用量が少ないという場合には、混合単量体(単量体混合物)の添加は、一括で以て行ってもよいし、また、必要があれば、公知慣用の種々の連鎖移動剤などを添加してもよいことは、勿論である。
【0054】
ここにおいて、上記した重合開始剤として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートまたはベンゾイルパーオキシドの如き、各種の有機過酸化物などであるが、
【0055】
勿論ながら、さらには、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどのような、各種のアゾ化合物の使用ならびに併用も、可能である。
【0056】
他方、上記した連鎖移動剤として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンもしくはn−オクチルメルカプタンの如き、各種のアルキルメルカプタン類;またはα−メチルスチレン・ダイマーなどであり、上掲した、これらの化合物の使用は、特に望ましい。
【0057】
引き続いて、本発明方法を実施するに当たり、前記したビニル化脂肪酸中における不飽和脂肪酸(a−1)の存在量としては、約20〜約70重量%、好ましくは30〜60重量%という範囲内の割合(存在率ないしは占有率)に該当する存在量が適切である。
【0058】
此の不飽和脂肪酸(a−1)の存在量が約20重量%未満である場合には、どうしても、此の不飽和脂肪酸(a−1)と共重合していないビニル部が増えるという処からも、分散安定性に欠けたものしか得られないようになるし、一方、約70重量%を超えて余りに多くなる場合には、どうしても、とりわけ、耐水性ならびに耐食性などの皮膜諸物性が、著しく、低下して仕舞うというようになり易く、いずれの場合も好ましくない。
【0059】
本発明方法を実施するに当たっては、さらに引き続き、斯かるビニル化脂肪酸と、前記したポリオール化合物とを、エステル化反応を通して、結合せしめるというわけであるが、此のポリオール化合物としては、特に、その水酸基価が約50〜約300KOHmg/g(以下、斯かるKOHmg/gなる単位の記載は省略するものとする。)なる範囲内のものを、好ましくは、100〜250なる範囲内のものを使用するのが望ましい。
【0060】
当該ポリオール化合物の水酸基価が約50未満であるという場合には、どうしても、此のエステル化反応が円滑に進みにくくなり易いし、その結果は、当該ポリオール化合物と、ビニル化脂肪酸との結合部位が少なくなるということになってしまい、ひいては、分散化の不可能なるものしか得られないということになって仕舞う。
【0061】
一方、当該ポリオール化合物の水酸基価が約300を超えて余りに多くなるという場合には、どうしても、水中における、分散粒子中の核(コア)となる部分の分子量の大きさが充分でないということに起因する、乳化作用を有する部分のコアからの脱離によって、後続する、塩基性化合物による中和・水性化の際に、非分散(化)状態となって仕舞うということである。
【0062】
当該ポリオール化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルキド樹脂、ビニル変性アルキド樹脂、ポリイソシアネート変性アルキド樹脂またはシリコン変性アルキド樹脂などである。
【0063】
ここで言うアルキド樹脂とは、換言すれば、ビニル−、ポリイソシアネート−あるいはシリコン変性される以前のアルキド樹脂とは、たとえば、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸(ただし、脂肪酸を含まない。)とを縮合反応せしめることによって得られるというようなもの、つまり、通常、オイル・フリー・アルキド樹脂と呼ばれる部類のものであるとか、
【0064】
あるいは動物油、植物油および/または其れ等の脂肪酸と、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸(ただし、脂肪酸は含まない。)とを縮合反応せしめることによって得られるというもの、つまり、通常、油あるいは脂肪酸変性アルキド樹脂と呼ばれる部類のものを指称する。
【0065】
ここにおいて、まず、上記した多価カルボン酸とは、たとえば、一分子中に2〜4個のカルボキシル基を有するという化合物を指称するものであり、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0066】
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロプタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸または「ハイミック酸」[日立化成工業(株)の製品であり、該「ハイミック酸」は、同上社の登録商標である。]などをはじめ、
【0067】
さらには、トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸またはピロメリット酸などであるし、あるいは此等の無水物などであるし、他方、上記したモノカルボン酸として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、安息香酸またはp−tert−ブチル安息香酸などである。
【0068】
次いで、上記した多価アルコールとは、一分子中に2〜6個の水酸基を有するという化合物を指称するものであり、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0069】
エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ペンタンジオールまたは1.4−シクロヘキサンジメタノールなどをはじめ、さらには、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリスイソシアヌレートまたはペンタエリスリトールなどである。
【0070】
斯かるアルキド樹脂は、公知慣用の種々の合成法に従って得られるというものであるが、それらのうちでも特に代表的なる一例を挙げるにとどめれば、上掲した、それぞれ、脂肪酸と、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸と、多価アルコールとを、一緒に加えて、エステル化反応せしめるという、通常、脂肪酸法と呼ばれる部類の合成法や、
【0071】
油と多価アルコールとをエステル交換反応せしめてから、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸と、残りの多価アルコールとをエステル化反応せしめるという、通常、モノグリセリド法と呼ばれる部類の方法などである。
【0072】
なお、斯かるエステル化反応を行うに当たっては、キシレンなどのように、水と共沸する部類の不活性有機溶剤を添加せしめるというようにしてもよいことは、勿論である。
【0073】
当該アルキド樹脂のうちの、上記したオイル・フリー・アルキド樹脂として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、大日本インキ化学工業(株)製の「M−6205−50」などであるし、油−ないしは脂肪酸変性アルキド樹脂として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、同上社製の「ベッコゾール
EZ−3020−60」などである。
【0074】
さらに、上記したビニル変性アルキド樹脂としてもまた、公知慣用の種々の合成法に従って得られるというような部類のものであればよく、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アルキド樹脂の存在下に、重合開始剤を用いて、スチレン(系)−および/またはアクリル系モノマーをビニル重合せしめるというような方法などである。
【0075】
さらにまた、上記したポリイソシアネート変性アルキド樹脂としても、公知慣用の種々の合成法に従って得られるというような部類のものであればよく、たとえば、アルキド樹脂の生成後において、トリレンジイソシアネートやメチレンビスフェニルイソシアネートなどのような、場合によっては、ヘキサメチレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(TMP変性のHDI)の如き、各種のポリイソシアネート化合物を重付加反応せしめるというような部類の方法などである。
【0076】
そしてまた、上記したシリコーン変性アルキド樹脂としても、公知慣用の種々の合成法に従って得られるというようなものであればよく、それらのうちでも特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、大日本インキ化学工業(株)製の、それぞれ、「ベッコゾール M−9201」や、「ベッコゾール M−9202」などである。
【0077】
こうした、それぞれ、ビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物との縮合反応、いわゆるエステル化反応は、これらのビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物とを混合して加熱するということによって行われる。
【0078】
なお、この際に、モノカルボン酸および/または多価カルボン酸を、新たに、これらのビニル化脂肪酸およびポリオール化合物に添加しても、何等、問題が無いということである。
【0079】
当該エステル化反応の温度としては、通常、約170〜約210℃なる範囲内が適切ではあるが、反応速度の観点からすれば、とりわけ、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)の種類によって、適切なるエステル化反応の温度を選定するのが、特に望ましいことである。
【0080】
たとえば、此のカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)として、特に、アクリル酸を用いるというような場合には、上掲したような温度範囲のうちの、比較的低めの温度で以て、当該反応を行うというのがよく、一方、此のカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)として、特に、メタクリル酸を用いるというような場合には、上掲したような温度範囲でさえあれば、いずれの温度においても、当該反応は円滑に進むというものである。
【0081】
当該縮合反応、いわゆるエステル化反応というものは、得られるアルキド樹脂の、とりわけ、諸安定性ならびに塗膜諸物性などを考慮すれば、好ましくは、固形分のアルキド樹脂の酸価が、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)のカルボキシル基に由来する酸価を基準にして、±5程度に達した処で、さらに好ましくは、±2程度に達した処で、終了せしめるというようにするのが適切である。
【0082】
なお、上掲のポリオール化合物を合成したのち、さらに、此の反応生成物に、不飽和脂肪酸(a−1)を添加し、混合せしめ、必要ならば、少量の不活性有機溶剤をも添加せしめて、前述した、それぞれ、(a−2)成分、(a−3)成分ならびに(a−4)成分という全ビニル系単量体を付加重合せしめてから、
【0083】
引き続いて、さらに昇温して、エステル化反応を行わしめる、という一段合成法でも、本発明に係る水性アルキド樹脂の調製は、まさしく、可能であるし、斯かる一段合成法に従う場合には、ビニル化脂肪酸の合成それ自体を、上掲したポリオール化合物の存在下において行うということもまた、何等、問題が無いということである。
【0084】
本発明に係る水性アルキド樹脂の調製に当たって、アルキド樹脂を水性化せしめる際に、該アルキド樹脂と共存させるべき親水性の有機溶剤として特に代表的なもののみを挙げるにとどめれば、エチレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種の1価アルコールとのモノエーテル化物であるとか、
【0085】
プロピレングリコールと、メタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種の1価アルコールとのモノエーテル化物であるとか、ジエチレングリコールとメタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種の1価アルコールとのモノエーテル化物であるとか、
【0086】
ジプロピレングリコールとメタノール、エタノール、プロパノールもしくはブタノールの如き、各種の1価アルコールとのモノエーテル化物であるとか、あるいは1,3−ブチレングリコール−3−モノメチルエーテル(一般名:3−メトキシブタノール)もしくは3−メチル−3−メトキシブタノール〔一般には、「ソルフィット」という名称で用いられるが、此の「ソルフィット」は(株)クラレの登録商標である。〕の如き、各種のエーテルアルコール類などであり、
【0087】
さらには、酢酸メチルセロソルブの如き、20℃の温度で、水に対して無限に可溶なるエーテルエステル類などもまた、使用することが出来る。
【0088】
これらの有機溶剤の使用量としては、水中での安定的な分散という観点から、目的水性アルキド樹脂中に、約10重量%以下の割合で以て含まれているということが望ましい。約10重量%を超えて余りにも多くなるという場合には、どうしても、当該水性アルキド樹脂の、分散媒相への溶解性が増すようになり易いという処から、分散(化)形態ないしは水溶(化)形態を維持しづらくなるという場合があるので、約10重量%を超えて、余りにも多くなるというような量での使用は、現に、慎むべきであろう。
【0089】
アルキド樹脂それ自体は、それを水性化せしめるという際に、該アルキド樹脂中のカルボキシル基の一部ないしは全部が、塩基性化合物によって中和される処となる。
【0090】
その際に用いるべき上記塩基性物質として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アンモニア;有機アミン;アルカリ金属の水酸化物などであるが、ここにおいて、上記した有機アミンとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミンまたはジプロピルアミンなどをはじめ、
【0091】
さらには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンまたはトリイソプロパノールアミンの如き、各種のアミノアルコール類などである。
【0092】
また、上記したアルカリ金属の水酸化物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどである。
【0093】
目的とする水性アルキド樹脂の分散安定性の観点から、これらのうちでも特に望ましいものとして特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、アンモニアであるとか、トリエチルアミンまたはジメチルエタノールアミンなどであるとか、あるいは20℃という温度で以て、水に完全に溶解するような部類の、いわゆる親水性の有機アミンなどであるが、
【0094】
当該水性アルキド樹脂の水性化能を調節せしめるというためには、上掲したような各種の化合物を、適宜、組み合わせるという形で用いることも出来ることは、勿論である。
【0095】
ところで、その際の、いわゆる中和化に当たっての中和当量としては、通常、約0.4〜約1.2当量なる範囲内が、好ましくは、0.6〜1.0当量なる範囲内が適切である。
【0096】
なお、本発明の製造法により得られる、つまり、本発明に係る、水性アルキド樹脂の製造法に従って得られる水性アルキド樹脂には、さらに、無機顔料ないしは有機顔料、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、レベリング剤またはドライヤーなどのような、公知慣用の種々の添加剤を、適宜、配合せしめることが出来るし、
【0097】
アミノ樹脂、エポキシ樹脂、多官能のブロック・ポリイソシアネート化合物の如き、各種の硬化剤をも併用することが出来るという処から、それぞれ、いわゆる常温乾燥型、強制乾燥あるいは焼き付け型などとしての、いずれのタイプの、特に、塗料用樹脂として用いることが出来るというものである。
【0098】
そのほかにも、本発明の製造法により得られる、つまり、本発明に係る、水性アルキド樹脂の製造法に従って得られる水性アルキド樹脂は、たとえば、紙化工用としても、繊維化工用としても、あるいは接着剤としても使用することが出来るというものである。
【0099】
塗料用としての主たる用途としては、とりわけ、自動車、鉄道車両、機械、家具、缶または建築材料の如き、各種の金属素材ないしは金属製品への用途でもあるし、自動車部品または家電製品の如き、各種のプラスチック素材ないしは製品への用途でもあるし、家具または建築材料の如き、各種の木工素材ないしは製品への用途でもあるし、さらには、建築材料またはガラスの如き、各種の無機素材あるいは製品への用途でもあるが、本発明は、決して、これら上掲の用途のみに限定されるというようなものではない。
【0100】
【実施例】
次に、本発明を、実施例および比較例により、さらに具体的に示すことにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるとする。
【0101】
参考例1(ビニル化脂肪酸の調製例)
攪拌機、温度計、不活性ガス導入管、滴下漏斗および還流管を備えたガラス製反応容器に、脱水ヒマシ油脂肪酸の100部、キシレンの124部を初期仕込み分として仕込んで、窒素ガスを導入しながら、130℃にまで昇温した。
【0102】
ここへ、予め調製しておいた、イソブチルメタクリレートの89部、スチレンの59部およびメタクリル酸の33部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの9部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0103】
滴下終了後は、モノマー転化率が95%を超える時点まで、130℃に保持して反応せしめることによって、固形分酸価が143なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0104】
参考例2(アルキド樹脂の調製例)
攪拌機、温度計、不活性ガス道入管およびガラス製多段精留塔を備えたガラス製反応容器に、大豆油脂肪酸の100部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温した。
【0105】
ここへ、トリメチロールプロパンの129部、ネオペンチルグリコールの47部、イソフタル酸の170部およびアジピン酸の23部を、順次に、仕込んだ。170℃に達した時点で、ジブチル錫オキシドの0.06部を添加せしめ、さらに180℃にまで昇温させ、此の温度で、2時間のあいだ反応を継続せしめた。
【0106】
しかるのち、4時間をかけて、240℃にまで昇温し、固形分酸価が6になるまで反応を続行せしめた。かくして得られたアルキド樹脂の水酸基価は147であった。
【0107】
参考例3(ビニル化脂肪酸の調製例)
参考例1と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の30部および亜麻仁油脂肪酸の201部と、キシレンの180部とを、初期仕込み分として仕込んで、窒素ガスを導入しながら、130℃にまで昇温した。
【0108】
ここへ、予め調製しておいた、n−ブチルメタクリレートの72部、スチレンの48部およびメタクリル酸の60部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの9部とからなる混合物を、3時間かけて、連続滴下せしめた。
【0109】
滴下終了後も、モノマー転化率が95%を超えるまでは、130℃に保持して反応せしめた処、固形分酸価が142なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0110】
参考例4(アルキド樹脂の調製例)
精留塔を取り外して、直接、大気開放系にするというように変更した以外は、参考例2と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の200部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温し、ペンタエリスリトールの94部、トリメチロールプロパンの23部およびイソフタル酸の84部を、順次に、仕込んだ。
【0111】
170℃に達した処で、0.05部のジブチル錫オキシドを添加し、さらに、200℃にまで昇温させて、此の温度を1.5時間のあいだ保持した。次いで、2時間をかけて、240℃にまで昇温し、固形分酸価が6になるまで反応を続行せしめた。かくして得られた樹脂の水酸基価は234であった。
【0112】
参考例5(ビニル化脂肪酸の調製例)
参考例1と同様の反応容器に、亜麻仁油脂肪酸の150部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温した。
【0113】
130℃に達した時点で、ビニルトルエンの54部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの8部とからなる混合物を、1時間に亘って連続滴下せしめた。滴下終了後は、モノマー転化率が90%を超えるまで、130℃に保持して反応を続行せしめた。
【0114】
しかるのち、かくして得られた反応液を冷却せしめて、80℃以下になった時点で以て、メチルエチルケトンの145部を添加せしめた。引き続いて、80℃に保持したまま、予め調製しておいたイソブチルメタクリレートの56部、ビニルトルエンの14部およびメタクリル酸の47部と、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの6部と、α−メチルスチレンダイマーの4部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0115】
さらに、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの1部を添加し、モノマー転化率が95%を超えるまで、80℃に保持して反応を続行せしめた処、固形分酸価が178なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0116】
参考例6(アルキド樹脂の調製例)
参考例4と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の200部および亜麻仁油脂肪酸の38部を仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温した処へ、さらに、ペンタエリスリトールの109部と、イソフタル酸の85部とを、順次に、仕込んだ。
【0117】
170℃に達した処で、0.05部のジブチル錫オキシドを添加して、さらに200℃にまで昇温させ、此の温度を、1.5時間のあいだ保持した。次いで、2時間をかけて240℃にまで昇温し、固形分酸価が6となるまで反応を続行せしめた。かくして得られた樹脂の水酸基価は185であった。
【0118】
参考例7(ビニル変性脂肪酸の調製例)
参考例1と同様の反応容器に、大豆油脂肪酸の150部と、キシレンの127部とを、初期仕込み分として仕込んで、窒素ガスを導入しながら、130℃にまで昇温した。
【0119】
次いで、予め調製しておいた、イソブチルメタクリレートの70部、スチレンの47部およびアクリル酸の23部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの7部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0120】
滴下終了後も、モノマー転化率が95%を超えるまでは、この130℃に保持して反応せしめた処、固形分酸価が161なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0121】
参考例8(ビニル化脂肪酸の調製例)
参考例1と同様の反応容器に、亜麻仁油脂肪酸の125部と、キシレンの134部とを、初期仕込み分として仕込んで、窒素ガスを導入しながら、130℃にまで昇温した。
【0122】
次いで、予め調製しておいた、n−ブチルメタクリレートの119部およびメタクリル酸の60部と、tert−ブチルペロキシベンゾエートの9部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0123】
滴下終了後も、モノマー転化率が95%を超えるまでは、この130℃に保持して反応せしめた処、固形分酸価が204なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0124】
参考例9(アルキド樹脂の調製例)
参考例4と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の199部と、亜麻仁油脂肪酸の90部とを仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温した処へ、ペンタエリスリトールの108部と、イソフタル酸の84部とを、順次に、仕込んだ。
【0125】
170℃に達した処で、0.06部のジブチル錫オキシドを添加せしめた。さらに200℃にまで昇温させて、此の温度を、1.5時間のあいだ保持した。次に、2時間をかけて240℃にまで昇温し、固形分酸価が6になるまで反応を続行せしめた処、固形分酸価が147なる、透明な外観を持った、ビニル化脂肪酸という、目的樹脂が得られた。
【0126】
実施例1
【0127】
本例は、変性アルキド樹脂の調製例を示すものである。
【0128】
攪拌機、温度計、不活性ガス導入管、ならびに揮発溶剤を捕集するためのガラス製キャッチャータンクを備えたガラス製反応容器に、参考例1で得られたビニル化脂肪酸溶液の100部と、参考例2で得られたアルキド樹脂の103部とを仕込んで、200℃にまで昇温した。
【0129】
昇温中の溶融混合液は不透明ではあったけれども、温度が200℃に達した時点で以て、此の溶融混合液は透明になった。次いで、固形分酸価が32となるまで、同温度で以て、エステル化反応を行ってから、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの26部を添加せしめた。
【0130】
かくして得られた樹脂の不揮発分は86%であり、25℃におけるガードナー気泡粘度計(ガードナー・ホルツ粘度計;以下同様)による溶液粘度がTであった。なお、斯かる粘度の測定は、ブチルセロソルブの50%溶液として、その樹脂固形分が50%なる状態で行ったものである。
【0131】
さらに、これに、9部のトリエチルアミンを添加し、60℃なる温度で以て、よく混合せしめたのち、この60℃を保持しながら、イオン交換水の244部を、間欠的に添加せしめた処、不揮発分が38%で、pHが8.9なる、半透明状の水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が30%なるものであった。
【0132】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤量は5〜6%なる範囲内にあり、かつ、此の水性樹脂の平均分散粒子径は、「レーザー粒径解析システム PAR−III」[大塚電子(株)製品]により測定した結果、重量平均で以て、22ナノ・メーター(nm)であった。
【0133】
実施例2
【0134】
本例もまた、変性アルキド樹脂の調製例を示すものである。
【0135】
実施例1と同様の反応容器に、参考例3で得られたビニル変性脂肪酸溶液の150部と、参考例4で得られたアルキド樹脂の64部とを仕込んで、200℃にまで昇温した。
【0136】
かくて、溶融混合液は、この昇温中に、透明となった。固形分酸価が56となるまで、此の温度を保持して、エステル化反応を行ってから、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの25部を添加せしめた。
【0137】
かくして得られた樹脂の不揮発分は86%であり、ガードナー気泡粘度計による樹脂溶液(キシレンの30%溶液として、その樹脂固形分が70%なる状態のもの)の粘度はZ7 であった。
【0138】
さらに、予め調製しておいた、11部の25%アンモニア水溶液と、240部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃なる温度で以て、間欠添加せしめた処、不揮発分が38%で、pHが8.3なる、透明状の水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が58%なるものであった。
【0139】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤量は5〜6%なる範囲内にあり、かつ、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、20nm以下であった。
【0140】
実施例3
【0141】
本例もまた、変性アルキド樹脂の調製例を示すものである。
【0142】
参考例1と同様の反応容器に、参考例4で得られたアルキド樹脂の100部と、n−ブタノールの54部とを、初期仕込み分として仕込んで、窒素ガスを導入しながら、120℃にまで昇温した。
【0143】
さらに、予め調製しておいた、スチレンの15部およびシクロヘキシルメタクリレートの10部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの1.3部とからなる混合物を、2時間かけて連続滴下せしめた。
【0144】
滴下終了後も、モノマー転化率が95%を超えるまでは、この120℃に保持して反応せしめ、引き続いて、この反応容器を、実施例1と同様の仕様に設定し直し、参考例3で得られたビニル化脂肪酸溶液の208部を添加せしめ、200℃にまで昇温した。
【0145】
固形分酸価が49になるまで、此の温度を保持して、エステル化反応を行ってから、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの40部を添加せしめた。かくして得られた樹脂の不揮発分は86%であり、ガードナー気泡粘度計による樹脂溶液(キシレンの30%溶液として、その樹脂固形分が70%なる状態のもの)の粘度はZ7 〜Z8 であった。
【0146】
さらに、予め調製しておいた、16部の25%アンモニア水溶液と、384部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃で、間欠添加せしめた処、不揮発分が38%で、pHが8.2なる透明状の水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が52%なるものであった。
【0147】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤量は5〜6%なる範囲内にあり、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、20nm以下であった。
【0148】
実施例4
【0149】
本例もまた、変性アルキド樹脂の調製例を示すものである。
【0150】
参考例4と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の150部と、亜麻仁油脂肪酸の27部とを仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温して、ペンタエリスリトールの81部およびイソフタル酸の64部を、順次に、仕込んだ。
【0151】
170℃に達した処で、ジブチル錫オキシドを0.06部を添加せしめた。さらに、200℃にまで昇温し、此の温度を、1.5時間のあいだ保持したのち、2時間をかけて、240℃にまで昇温して、反王を続行せしめた。
【0152】
固形分酸価が6になった処で冷却をし、170℃以下の温度で、亜麻仁油脂肪酸の144部を添加せしめて、充分に混合せしめたのち、140℃にまで冷却した。この時点での樹脂の固形分酸価は72であり、かつ、固形分水酸基価は190であった。
【0153】
さらに引き続いて、この反応容器を、参考例1と同様の仕様に設定し直して、キシレンの40部を添加せしめ、この140℃なる温度で以て、予め調製しておいた、イソブチルメタクリレートの72部、スチレンの48部およびメタクリル酸の51部と、ジ−tert−ブチルパーオキシドの8部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0154】
滴下終了後も、さらに3時間、140℃に保持して反応せしめたのち、反応容器を、実施例1と同様の仕様に設定し直して、180℃に昇温した。酸価が57となるまで、此の温度を保持して、エステル化反応を行った処、ガードナー気泡粘度計による樹脂溶液(キシレンの30%溶液として、その樹脂固形分が70%なる状態のもの)の粘度がZ7 という樹脂溶液が得られた。
【0155】
続いて、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの93部と、トリエチルアミンの13部とで以て希釈せしめた。さらに、予め調製しておいた、34部の25%アンモニア水溶液と、877部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃なる温度で、間欠添加せしめた処、pHが8.4なり、透明状の水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が59というものであった。
【0156】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤量は5〜6%なる範囲内にあり、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、20nm以下であった。
【0164】
実施例5
【0165】
本例もまた、変性アルキド樹脂の調製例を示すものである。
【0166】
実施例1と同様の反応容器に、参考例7で得られたビニル化脂肪酸溶液の150部と、参考例6で得られたアルキド樹脂の82部とを仕込んで、180℃にまで昇温した。
【0167】
溶融混合液は、昇温中に、透明となった。固形分酸価が35となるまで、此の温度を保持して、エステル化反応を行ってから、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの28部を添加せしめた。
【0168】
かくして得られた樹脂の不揮発分は86%であり、ガードナー気泡粘度計による、キシレンの30%溶液として、樹脂固形分が70%なる状態のものの粘度はZ4 であった。
【0169】
さらに、予め調製しておいた、7部の25%アンモニア水溶液と、268部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃なる温度で、間欠添加せしめた処、不揮発分が38%で、かつ。pHが8.7なる、透明状の水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が57%なるものであった。
【0170】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤の含有率は、5〜6%なる範囲内にあったし、しかも、実施例1と同様の方法で以て測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、20nm以下であった。
【0171】
比較例1 変性アルキド樹脂の調製例
【0172】
本例は、対照用の変性アルキド樹脂を調製するための例を示すものである。
【0173】
参考例4と同様の反応容器に、トール油脂肪酸の150部と、亜麻仁油脂肪酸の171部とを仕込んで、窒素ガスを導入しながら昇温し、ペンタエリスリトールの78部およびイソフタル酸の67部を順次仕込んだ。
【0174】
170℃に達した処で、ジブチル錫オキシドの0.06部を添加せしめ、さらに、200℃にまで昇温し、此の温度を、1.5時間のあいだ保持した。
【0175】
次に、2時間をかけて240℃にまで昇温し、固形分酸価が6に達するまで反応せしめた処、水酸基価が50で、かつ、ガードナー気泡粘度計による粘度がZ4なる樹脂が得られた。
【0176】
かくして得られた樹脂のうちの600部を、参考例1と同様の反応容器に取り出して、此の樹脂を、116部のブチルセロソルブで以て希釈せしめ、引き続いて、130℃に昇温したのち、同温度で、予め調製しておいた、イソブチルメタクリレートの114部およびアクリル酸の56部と、tert−ブチルパーオキシベンゾエートの9部とからなる混合物を、3時間かけて連続滴下せしめた。
【0177】
滴下終了後も、モノマー転化率が95%を超えるまでは、130℃に保持して反応せしめた処、不揮発分が87%で、固形分酸価が58で、かつ、ガードナー気泡粘度計による粘度がZ7 なる樹脂が得られた。
【0178】
かくして得られたビニル変性樹脂のうちの200部を、別の容器に取り出し、これに、12部の25%アンモニア水溶液と、246部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃で以て、間欠添加せしめた処、不揮発分が38%で、かつ、pHが8.1なる、若干ながら、外観上、ヘイズのある水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算油長が61%なるものであった。
【0179】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤の含有率は5〜6%の範囲内にあり、しかも、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、45nmなるものであった。
【0180】
比較例2
【0181】
本例もまた、対照用の変性アルキド樹脂を調製するというための例を示すものである。
【0182】
実施例1と同様の反応容器に、参考例8で得られたビニル変性脂肪酸溶液の115部と、参考例9で得られたアルキド樹脂の93部とを仕込んで、200℃にまで昇温させた。
【0183】
固形分酸価が57となるまで、此の温度を保持して、エステル化反応を行ってから、揮発分を減圧除去せしめたのち、ブチルセロソルブの26部を添加せしめた。かくして得られた樹脂の不揮発分は86%であり、ガードナー気泡粘度計による、キシレンの30%なる溶液として、樹脂固形分が70%なる粘度はZ6 〜Z7 であった。
【0184】
さらに、予め調製しておいた、12部の25%アンモニア水溶液と、243部のイオン交換水とからなる混合物を、60℃なる温度で以て、間欠添加せしめた処、不揮発分が38%で、かつ、pHが7.8なる、若干ながら、外観上、ヘイズのある水性樹脂が得られた。此の水性樹脂は、トリグリセライド換算が57%なるものであった。
【0185】
なお、此の水性樹脂に含まれている有機溶剤の含有率は5〜6%なる範囲内にあり、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は、重量平均で以て、43nmなるものであった。
【0186】
比較例3 変性アルキド樹脂の調製例
【0187】
本例もまた、対照用の変性アルキド樹脂を調製するというための例を示すものである。
【0188】
比較例2において、ブチルセロソルブの26部を添加する代わりに、3−メトキシブタノールの26部を添加せしめた。かくして得られた水性樹脂に含まれている有機溶剤量は5〜6%なる範囲内にあり、実施例1と同様の方法で測定した平均分散粒子径は25nmであった。
【0189】
以上に掲げた、それぞれ、実施例1〜5ならびに比較例1〜3なる各例において得られた、各種の水性樹脂それ自体の、それぞれ、40℃と、50℃とでの貯蔵安定性と、塗料配合したのちの塗料液の、それぞれ、25℃と、40℃とでの貯蔵安定性とについての評価判定を行った。それらの結果は、まとめて、第1表に示す。
【0190】
測定ならびに評価判定は、次に示すような要領で以て行ったものである。
【0191】
まず、水性樹脂それ自体の安定性(表中では、「水性樹脂単独の安定性」と略記している。)は、水性樹脂それ自体(つまり、溶剤;あるいは中和のための塩基性化合物以外、一切の添加剤などを含んではいないという形でのもの)をガラス瓶に入れて密閉した、各種の検体水性樹脂を、
【0192】
50℃に設定した温風循環型乾燥器中において貯蔵せしめ、一週間後、二週間後および四週間後に取り出して、それぞれの該検体の外観を、目視により判定するという一方で、それぞれの該検体の粘度を、東京計器(株)製のB型粘度計で以て測定した。なお、その際の測定条件としては、No.4ローターによる、30rpmなる回転数を採用している。
【0193】
塗料作製条件は、樹脂固形分を38部とし、白色顔料としては、タイペーク R−930」[石原産業(株)製の、酸価チタンの商品名]の75部を、体質顔料としては、「ホモカル D」[白石工業(株)製の、炭酸カルシウムの商品名]の25部を、そして、消泡剤としては、「BYK−080」[BYK社製品の、商品名]の1部を用いて、サンドミルにより、30分間のあいだ顔料分散を行うというようにして行ったものである。
【0194】
引き続いて、固形分換算で以て、それぞれの水性樹脂の62部でレット・ダウンせしめ、「ディックネート 3111」[大日本インキ化学工業(株)製の、水性ドライヤーの商品名]の2部を添加せしめた。
【0195】
さらに、イオン交換水を添加せしめ、ストーマー粘度計で以て、75〜80KUなる範囲内になるように、初期の塗料液粘度を調整せしめた。
【0196】
塗料液の安定性は、上述したような塗料作製条件で作製した、それぞれの塗料液をガラス瓶に入れて密閉したものを、35℃に設定した温風循環型乾燥器に貯蔵せしめ、それぞれ、二週間後と、四週間後とに取り出して、よく、かき混ぜたのち、ストーマー粘度計を用いて、それぞれの塗料液の粘度を測定した。
【0197】
【表1】
【0198】
《第1表の脚注》
(註1)……酸価の単位は、前述した通り、「mg−KOH/g」である。
【0199】
(註2)……表中の数字は、「(取り出した時点での粘度測定値)/(初期の粘度測定値)×100」で以て表したものである。上段の数値は40℃で貯蔵したものであって、下段の数値は、50℃で貯蔵したものの数値である。
【0200】
【表2】
【0201】
《第1表の脚注》
【0202】
(註3)……表中の数字は、「(取り出した時点での粘度測定値)/(初期の粘度測定値)×100」で以て表したものである。上段の数値は25℃で貯蔵したものであって、下段の数値は40℃で貯蔵したものの数値である。
【0203】
【表3】
【0204】
《第1表の脚注》
【0205】
表中の「*」または「**」は、それぞれ、次のような分散状態を意味している。
【0206】
「*」…………外観上、不均一である。しかし、沈降物は生じていない。
【0207】
「**」………外観は不均一で、しかも、沈降物が生じている。
【0208】
【表4】
【0209】
《第1表の脚注》
【0210】
表中の「***」は、次のような分散状態を意味している。
【0211】
「***」……ガラス瓶の下部には、沈降物が堆積して、固化してしまっている。
【0212】
【発明の効果】
以上に詳述して来た処からも、すでに、明らかなように、本発明に係る、水性アルキド樹脂の製造法により得られる、此の水性アルキド樹脂は、とりわけ、樹脂の安定性にも、さらには、塗料の安定性にも優れるというものである。したがって、本発明は、極めて実用性の高い水性アルキド樹脂の製造法であると言い得よう。
Claims (7)
- 不飽和脂肪酸(a−1)と、カルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)と、スチレン(a−3)と、その他のビニル系単量体(a−4)とを重合せしめること、上記したスチレン(a−3)なる原料成分が、該(a−3)成分と、上記した、その他のビニル系単量体(a−4)なる原料成分との合計量に対して、20〜70重量%含まれているビニル化脂肪酸と、ポリオール化合物とを縮合せしめること、次いで、かくして得られる縮合生成物を、塩基性化合物で以て中和せしめることを特徴とする、水性アルキド樹脂の製造法。
- 前記した縮合生成物が、前記したカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)に由来するカルボキシル基のモル数として、該(a−2)成分と、前記したスチレン(a−3)成分と、前記した、その他のビニル系単量体(a−4)成分との合計モル数に対して、10〜60モル%という範囲内にあるものである、請求項1に記載の製造法。
- 前記したカルボキシル基含有ビニル系単量体(a−2)がメタクリル酸である、請求項1または2に記載の製造法。
- 前記したビニル化脂肪酸が、該ビニル化脂肪酸を基準として、前記した不飽和脂肪酸(a−1)を、20〜70重量%なる範囲内で以て含むものである、請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。
- 前記したポリオール化合物が、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸とを縮合させることにより得られるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造法。
- 前記したポリオール化合物が、動物油、植物油および/またはその脂肪酸と、多価アルコールと、多価カルボン酸および/またはモノカルボン酸とを縮合させることにより得られるものである、請求項1〜5のいずれかに記載の製造法。
- 前記した水性アルキド樹脂のトリグリセライド換算油長が20〜70%なる範囲内である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造法。
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