JP3564657B2 - 窯業成形物の乾燥方法およびその装置 - Google Patents

窯業成形物の乾燥方法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、瓦、タイル、煉瓦などの窯業成形物の乾燥方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に瓦、タイル、煉瓦などの窯業製品は水分を含んだ粘土を主体とする原料から製造されるが、成形された直後の窯業成形物の水分率は約20%であるから、窯業成形物を乾燥させる必要のあることは知られるとおりである。
窯業成形物の乾燥の際、乾燥に伴う収縮が窯業成形物に発生することは避けられない。
【0003】
とくに、当業界で広く採用されている熱風を利用したいわゆる強制乾燥の場合では、この乾燥に伴う収縮の差が著しく生じるおそれがあり、乾燥に伴う著しい収縮の差が窯業成形物の変形や亀裂の原因となっていた。
したがって、窯業成形物に変形や亀裂を生じさせないようにするためには、窯業成形物の乾燥を適切に制御することが重要であり、そのための乾燥方法やその装置の選択や工夫は適切な乾燥を実現する大きな要素であった。
【0004】
窯業成形物の乾燥は、予熱期間、恒率乾燥期間、減率乾燥期間の3つの期間に区分することができる。
【0005】
予熱期間は、窯業成形物の温度が上昇し、一定の温度に保たれるまでの期間をいう。
予熱期間は、乾燥炉内に供給される熱風により窯業成形物の温度が上昇する期間であり、熱風の熱のほとんどは窯業成形物の温度上昇に費やされ、窯業成形物の乾燥には費やされない。
【0006】
ただし、窯業成形物の内部の温度が上昇する前に、窯業成形物の表面から乾燥が行われると、窯業成形物の内部の水分は十分に移動できないから、乾燥に伴う著しい収縮の差を生じ、この著しい収縮の差により窯業成形物に変形や亀裂を生じる。
【0007】
そこで、窯業成形物の表面からの乾燥を抑制する一方、乾燥時間を短縮するために窯業成形物の温度をできるだけ速く上昇させることが求められる。
【0008】
恒率乾燥期間は、窯業成形物の温度がほぼ一定に保たれた状態から窯業成形物の水分率が限界水分率に達するまでの期間をいう。
恒率乾燥期間では、窯業成形物の温度がほぼ一定の温度を保つが、窯業成形物の表面から水分が蒸発し、表面からの水分の蒸発に追従するように窯業成形物の内部の水分は表面に向けて移動する状態にある。
したがって、恒率乾燥期間では窯業成形物の水分率が限界水分率に達するまでほぼ一定の乾燥速度で窯業成形物が乾燥される。
【0009】
一般的に、窯業成形物の温度が高いほど窯業成形物の内部から表面へ移動する水分が多くなる。
しかし、単に乾燥炉内の温度を上昇させ、窯業成形物の温度を高めると、その表面から蒸発する水分が増加する一方、内部から表面に向けて移動する水分が表面から蒸発する水分に対応して追従することができなくなる。
【0010】
したがって、窯業成形物の表面と内部において乾燥状態に差が生じる。
その結果、窯業成形物に乾燥に伴う著しい収縮の差が生じ、窯業成形物に変形や亀裂が発生する。
そこで、恒率乾燥期間では窯業成形物に対して乾燥に伴う収縮の差を極力生じさせないようにすることが重要となる。
【0011】
減率乾燥期間は、窯業成形物の水分率が限界水分率から平衡水分率に達するまでの乾燥期間をいう。
減率乾燥期間では、窯業成形物の表面から蒸発する水分が内部から表面に移動する水分よりも多くなり、窯業成形物に残存する水分の低下に伴って乾燥速度は低下する。
減率乾燥期間では窯業成形物の温度は上昇し、窯業成形物の水分率が平衡水分率に達すると窯業成形物の乾燥が終了する。
減率乾燥期間では、窯業成形物に対する乾燥の収縮がほとんど発生しないので、乾燥による変形や亀裂などの窯業成形物への影響は小さい。
【0012】
次に、従来のこの種の乾燥装置を乾燥方法と併せて説明する。
図8に示された乾燥装置は、湿式成形された窯業成形物を収容する乾燥炉100にバ−ナ−116を介設した熱風供給路が接続され、乾燥炉100に設けられた炉内温度センサ122により炉内温度の検出値と炉内温度の設定値に基づいてバ−ナ−116の燃焼量を制御して乾燥炉内の温度調整を行うようにしたものである。
【0013】
そして、熱風供給路に介設されて熱風中に蒸気を混入する加湿器120と、供給される熱風の相対湿度を検出する熱風湿度センサ128と、供給される熱風の温度を検出する熱風温度センサ126と、炉内相対湿度の設定値と、前記炉内温度センサ122による炉内温度の検出値または炉内温度の設定値とから絶対湿度を演算し、さらに、その絶対湿度に対する前記熱風温度センサ126で得られた熱風の温度における相対湿度を演算し、その演算値を相対湿度の補正値として出力する演算部132とを備えたものである。
【0014】
さらに、前記熱風湿度センサ128の検出値と前記演算手段で得られた前記補正設定値の差に基づいて、前記加湿器120の蒸気混入量を制御する制御部130を備えている。
【0015】
この装置によれば、乾燥炉100の相対湿度を制御するに際して、演算部132により予め設定された炉内相対温度の設定値と、炉内温度センサ122による炉内温度の検出値または予め定められた炉内温度の設定値とから絶対湿度が演算され、さらにその絶対湿度に対する熱風温度センサ126で得られた熱風の温度における相対湿度が演算され、その演算値が相対湿度の補正値として出力される。
【0016】
つづいて、制御部130において、熱風湿度センサ128で得られた熱風の相対湿度の検出値が、上記の演算部132から出力された補正設定値と比較されて、その差に基づいて加湿器120から熱風中に混入される蒸気量が制御され、熱風の相対湿度が補正設定値に制御される。
【0017】
この場合、炉内温度が変化し、炉内相対湿度が変化するのを見越してそれを補完するように熱風へ混入する蒸気量が制御され、炉内温度が変化するにもかかわらず炉内相対湿度が設定値に正確に調整される。
【0018】
したがって、炉内相対湿度の制御がより正確で繊細に行われるので、複雑な形状の窯業成形物でも切れや変形を防止して乾燥歩留まりの向上を図ることができ、また、乾燥時間のより短縮化を図ることなどの利点を有するとされている。
【0019】
しかし、従来の技術では、乾燥炉に収容される前の窯業成形物は工場内の雰囲気に晒されており、工場内の雰囲気の変動に応じて異なる状態の窯業成形物が乾燥炉に収容されることになる。
なお、窯業成形物の状態が異なるとは、具体的には窯業成形物の温度の相違、乾き具合などを指している。
未乾燥であって乾燥炉に収容される前の窯業成形物の状態は、工場内の雰囲気の変動に影響されることが大きく、具体的には気象条件、季節、工場内の空調環境などに起因し、そのほか、原料の粘土の種類や含水率による影響も少なくない。
たとえば、夏季と冬季との比較では、乾燥炉に収容される前の窯業成形物の温度差が15℃となる場合もあった。
【0020】
つまり、乾燥炉に収容される前の窯業成形物の状態が一定に保たれているわけではないから、バーナーと加湿器の制御により乾燥炉内の雰囲気を調整するなど、乾燥炉による乾燥の制御を設定して操作しても、乾燥炉に収容された窯業成形物の状態に対応するように、予熱期間において窯業成形物の温度上昇が行われるわけではない。
予熱期間において、窯業成形物の状態に応じて窯業成形物の温度上昇を図るように乾燥炉の制御が行われないと、恒率乾燥期間において窯業成形物に対して著しい乾燥収縮が発生して変形や亀裂が生じやすく、乾燥された窯業成形物の品質は不均一となることが避けられない。
【0021】
その上、窯業成形物の乾燥を制御する場合、予熱期間と恒率乾燥期間の制御を乾燥炉内で連続して行うため、予熱期間と恒率乾燥期間の夫々において理想的な制御を行うことが事実上困難であるほか、乾燥炉の操作や制御が複雑化するという問題があった。
また、窯業成形物の状態のばらつきに応じて乾燥炉の操作を変更するなど、窯業成形物の乾燥条件を変更するにしても、乾燥炉に収容される前の窯業成形物の状態を把握する必要があるほか、乾燥条件の変更は専門的で高度な知識を有する者に限られていた。
したがって、窯業成形物の状態を把握し、窯業成形物の状態に応じて乾燥の制御を適切に変更することは現実的には不可能であった。
【0022】
一方、乾燥炉に収容される前の窯業成形物の状態にばらつきがある場合でも、窯業成形物の温度上昇のための予熱期間を3時間以上とし、乾燥時における窯業成形物の変形や亀裂をある程度抑制することも行われるが、予熱期間に要する時間を長く設定することが避けられず、乾燥された窯業成形物について品質のばらつきを解消するまでには至らなかった。
【0023】
また、前記した従来例の技術では、乾燥炉内の温度を測定し、測定された炉内温度と炉内温度の設定値の差に基づいて乾燥炉内の温度を制御する一方、設定された乾燥炉内の相対湿度を維持するために、熱風の相対湿度を加湿器を用いて制御するというものである。
つまり、乾燥炉内の温度制御は熱風の加熱制御により行い、乾燥炉内の相対湿度の制御を熱風の蒸気混入量の制御により行うものである。
【0024】
ところが、乾燥炉内の温度制御のために熱風の温度を制御すると熱風の相対湿度が追従して変化し、乾燥炉内の相対湿度が変化する。
そこで、相対湿度の変化に対応させて蒸気を混入し、設定された相対湿度に維持させるが、適切な蒸気量の制御のために以下の手順が必要となる。
▲1▼炉内の相対湿度の設定値と炉内温度の測定値により絶対湿度を求める。
▲2▼熱風の温度を測定し、熱風の温度の測定値と算出された炉内の絶対湿度とにより補正設定値としての相対湿度を求める。
▲3▼熱風湿度センサにより測定された熱風の湿度の測定値と、補正設定値を比較する。
▲4▼比較結果により混入する蒸気量を制御する。
【0025】
このように、熱風の温度を制御することによる乾燥炉内の温度の制御は、温度と相対湿度との密接かつ複雑な関係にあることから、温度の変化に対応するように相対湿度の変化を考慮しなければならず、乾燥炉内の相対湿度の制御を複雑化する結果となるほか、窯業成形物の最適な乾燥を実現するための条件を見いだすことが極めて困難であった。
【0026】
したがって、最適な乾燥を実現するための乾燥の制御は、乾燥装置の設計者など乾燥技術に精通した者に限られ、窯業成形物の製造に従事するオペレ−タが、窯業成形物の変更などに応じてこれらの制御を自由に変更することは不可能であった。
【0027】
また、湿式成形された窯業成形物から窯業製品を製造する場合、乾燥工程と焼成工程を必要とすることは知られているが、焼成工程において発生する廃熱を乾燥のために有効利用して熱効率を高めることが不充分であった。
すなわち、従来の乾燥装置では、乾燥炉の供給する熱風を発生させるための主たる手段として、バーナーなどの熱風発生源を備えることが必須であった。
そして、乾燥炉に熱風発生源が備えられることが前提の上で、焼成炉の廃熱を補助的に利用するのみにとどまっていた。
そのため、焼成炉の熱源とは別に、乾燥炉に独立した熱源が必要となり、多量の燃料を消費するほか、焼成炉により生じる無駄な熱を大気中に放出するなど設備費やランニングコストの増大を招くほか、熱効率が悪いという問題があった。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、乾燥炉に収容される前の窯業成形物の状態にばらつきがあると、予熱期間において乾燥炉に収容された窯業成形物を温度上昇させる制御が窯業成形物の状態に対応しない場合が発生し、乾燥された窯業成形物の品質が不均一となるほか、変形や亀裂が発生しやすいという点である。
また、窯業成形物の状態のばらつきに応じて、乾燥炉を操作して乾燥の制御を適切に変更することは現実的には不可能である点である。
また、予定する別の課題は、従来の乾燥技術が熱風の温度を制御して乾燥炉内の温度を制御する一方、熱風に蒸気を混入して乾燥炉内の相対湿度を制御するため、乾燥炉内の相対湿度の制御を複雑化する点や温度と相対湿度との密接かつ複雑な関係により、温度の変化に対応するように相対湿度の変化を考慮しなければならず、温度と相対湿度の制御を個別にすることができない点にあるほか、窯業成形物の最適な乾燥を実現するための条件を見いだすことが困難である点であり、乾燥炉内の相対湿度や温度の制御は乾燥の専門的な知識を有する者に限られる点である。
【0029】
この発明の目的は、窯業成形物の最適な乾燥を実現するために、まず予熱期間において、窯業成形物の乾燥を抑制しつつ、窯業成形物の温度を所定の温度まで上昇させ、予熱期間において窯業成形物の状態を一定に保ち、窯業成形物の状態が変わることなく予熱期間から恒率乾燥期間へ移行することができる乾燥方法およびその装置を提供することにある。
また、この発明が予定する別の目的は、昇温室において窯業成形物を所定の温度まで上昇させ、所定の温度に達した窯業成形物を乾燥炉へ搬入し、乾燥炉により窯業成形物の恒率乾燥を進行させ、恒率乾燥期間以降において熱風の温度の制御と供給量の制御を個別に行い、窯業成形物の最適な乾燥の制御をより容易なものとし、乾燥の制御に特別な知識や経験のない乾燥炉のオペレ−タなどが手軽に乾燥条件の制御を行うことができる窯業成形物の乾燥方法およびその装置を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段および作用効果】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法は、
湿式成形された窯業成形物を乾燥炉の入口から乾燥炉内に収容し、乾燥炉の出口に移動する間に窯業成形物を恒率乾燥期間から減率乾燥期間を経て乾燥させる窯業成形物の乾燥方法において、乾燥炉の入口側に密閉自在の昇温室を連設し、昇温室に未乾燥の窯業成形物を収容した後、昇温室を密閉状態に保持し、昇温室内の空気を加熱して循環させることにより窯業成形物の温度を上昇させ、窯業成形物の温度と密閉状態にある昇温室内の露点温度とがほぼ一致する状態を保ちつつ、窯業成形物の温度が所定の温度に達したとき乾燥炉と昇温室を連通させ、所定の温度に達した窯業成形物を昇温室から乾燥炉へ収容させ、乾燥炉を密閉状態に保持した後、窯業成形物を乾燥させることを特徴とするものである。
【0031】
請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法によれば、
乾燥炉へ窯業成形物を収容する前に、乾燥炉に連設された昇温室に未乾燥の窯業成形物を収容し、昇温室を密閉状態に保持するから、窯業成形物に対する外部の空気は遮断される。
そして、窯業成形物の温度が所定の温度に達するまで窯業成形物の温度を上昇させるが、窯業成形物の温度が経時的に上昇するように昇温室内の空気を加熱して循環させる。
【0032】
とくに、窯業成形物の温度を上昇させる過程で、昇温室内の相対湿度は100%に近い状態を保ち、窯業成形物の温度と昇温室内の露点温度がほぼ一致する状態を保つようにすれば、過度の乾燥や窯業成形物に対する結露は生じない。
このため、窯業成形物に対する結露や過度の乾燥は抑制されつつ、窯業成形物の温度は徐々に上昇する。
【0033】
そして、窯業成形物の温度が所定の温度に達したとき、乾燥炉と昇温室を連通させ、所定の温度に達した窯業成形物を乾燥炉へ収容させる。
乾燥炉を密閉状態に保持したのち窯業成形物は乾燥されるが、乾燥炉に収容された窯業成形物の状態は、密閉された昇温室内において窯業成形物の温度と密閉状態にある昇温室内の露点温度とがほぼ一致する状態を保ちつつ、窯業成形物の温度が所定の温度に達したとき乾燥炉と昇温室を連通させ、所定の温度に達した窯業成形物を昇温室から乾燥炉へ収容させ、乾燥炉を密閉状態に保持した後、窯業成形物を乾燥させることにより、所定の温度に達するから、結露や過度の乾燥を生じない。
したがって、恒率乾燥期間から減率乾燥期間において窯業成形物の乾燥状態にばらつきが生じることがない。
なお、所定の温度に達した窯業成形物が乾燥炉へ収容され、乾燥炉と昇温室の連通が閉鎖されたとき、次の窯業成形物を昇温室に収容し、窯業成形物の温度上昇が図られる。
【0034】
請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法は、上記のように構成されているので以下の利点を有する。
乾燥炉に収容される窯業成形物が、所定の温度に上昇しているほか、結露や過度の乾燥が発生していないので、恒率乾燥期間や減率乾燥期間における窯業成形物の乾燥状態が一定となり、予熱期間における結露や過度の乾燥による変形や亀裂を抑制することができ、また、乾燥された窯業成形物の品質の均一化を図ることができる。
また、乾燥炉による乾燥の制御を窯業成形物の状態に応じて変更する必要がなく、乾燥の制御のための条件は、乾燥炉に収容される窯業成形物の温度に対応させて一度設定すれば、ほとんど変更する必要がない。
したがって、乾燥に関する専門的で高度な知識を持つ者を必要としない。
【0035】
請求項2記載の窯業成形物の乾燥方法は、請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法において、昇温室において窯業成形物の温度を30〜50℃まで上昇させることを特徴とするものである。
【0036】
請求項2記載の窯業成形物の乾燥方法によれば、請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法において、昇温室内の窯業成形物の温度を30〜50℃まで上昇させる。
このとき、上昇させる窯業成形物の温度を30〜50℃の範囲とするから、窯業成形物に対する結露や過度の乾燥を防止することが比較的容易であるほか、窯業成形物の温度上昇に必要な熱エネルギーも比較的抑制される。
【0037】
したがって、請求項2記載の窯業成形物の乾燥方法は、請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法が奏する効果のほか、昇温室における窯業成形物の温度上昇を無理なく容易に行うことができるほか、また、温度上昇に必要な熱エネルギーも抑制でき、窯業成形物の温度上昇を簡便かつ容易な制御により行うことができる。
【0038】
請求項3記載の窯業成形物の乾燥方法は、請求項1又は2記載の窯業成形物の乾燥方法において、窯業成形物を昇温室に収容するに先立って、空気の流れを遮断した雰囲気中に所定の時間窯業成形物を待機させることを特徴とするものである。
【0039】
請求項3記載の窯業成形物の乾燥方法によれば、請求項1又は2記載の窯業成形物の乾燥方法において、窯業成形物を昇温室に収容するに先立って、空気の流れを遮断した雰囲気中に所定の時間窯業成形物が待機する。
このとき、窯業成形物は空気の流れを遮断した雰囲気中にあるため、窯業成形物の周囲は窯業成形物から僅かに蒸発する水分により高湿の雰囲気となり、その後、窯業成形物から蒸発される水分は抑制される。
また、空気の流れが遮断されていることから、窯業成形物の温度の変化が極めて抑制され、窯業成形物は過度の乾燥や結露が生じない安定した状態を維持する。
【0040】
したがって、請求項3記載の窯業成形物の乾燥方法は、請求項1又は2記載の窯業成形物の乾燥方法が奏する効果のほか、昇温室へ収容される窯業成形物の状態が安定しており、安定した状態の窯業成形物を昇温室に収容して温度上昇させるから、昇温室における窯業成形物の温度上昇がより安定して行われ、乾燥炉に収容される際に窯業成形物の温度にばらつきが生じない。
したがって、乾燥の制御に対する安定性が向上され、乾燥後の窯業成形物の品質をより一層安定させることができる。
【0041】
請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置は、湿式成形された窯業成形物を乾燥炉の入口から乾燥炉内に収容し、乾燥炉の出口に移動する間に窯業成形物を乾燥させる窯業成形物の乾燥装置において、密閉自在の昇温室が乾燥炉の入口側に連設され、外部から昇温室へ窯業成形物を搬入する搬入用扉と昇温室内の窯業成形物を乾燥炉へ搬出する搬出用扉が昇温室に設けられ、昇温室内の空気を攪拌させる攪拌用ファンと、昇温室内の窯業成形物の温度を測定する温度測定手段が昇温室内に設けられ、昇温室内の空気を循環させる循環ダクトが昇温室に設けられ、
昇温室内の空気を吸引し循環ダクトを通じて昇温室内へ供給する送風機と循環ダクトの空気を加熱する熱風発生器が夫々循環ダクトに設けられ、温度測定手段により測定された成形物の温度に基づき熱風発生器および送風ファンを制御する昇温室用制御器が設けられ、
乾燥炉内へ熱風を供給する熱風供給ダクトが乾燥炉に接続されるとともに、乾燥炉内の空気を排出する排気ダクトが乾燥炉に接続され、外気を吸引する外気吸引ダクトが熱風供給ダクトに接続されるとともに、外気吸引ダクトに外気を吸引する外気吸引手段が設けられ、外気吸引ダクトと熱風供給ダクトの接続部に、外気と同一の絶対湿度を持つ加熱空気を焼成炉から供給する廃熱供給ダクトが接続され、外気の温度を測定する外気温度センサと外気の相対湿度を測定する外気湿度センサが外気吸引ダクトに設けられ、外気温度センサにより測定された外気温度と外気湿度センサにより測定された外気相対湿度により、予め設定された乾燥炉内の設定湿球温度に対応する熱風の目標温度を求める演算手段が設けられ、外気と焼成炉からの前記加熱空気を混合して得られる熱風の温度が目標温度となるように、外気吸引手段を制御する吸引制御手段が設けられ、他方、乾燥炉に該乾燥炉内の温度を測定する炉内温度センサが設けられ、炉内温度センサにより測定された炉内温度と予め設定された炉内設定温度の差に基づいて乾燥炉内へ供給する熱風の供給量を制御する風量制御手段が設けられたことを特徴とするものである。
【0042】
請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置によれば、窯業成形物を乾燥炉に収容するに先立って、乾燥炉の入口側に連設された昇温室に未乾燥の窯業成形物を搬入させるが、このとき、昇温室の搬入用扉は開放されており、一方、搬出用扉は閉鎖されている。
昇温室に窯業成形物が搬入されると、昇温室の搬入用扉が閉鎖され、昇温室は密閉状態となり、窯業成形物の温度上昇が開始される。
循環ダクトに設けられた熱風発生器と送風機が作動し、循環ダクトを通過する昇温室の空気を加熱するとともに、循環ダクトから昇温室へ加熱された空気が供給される。
そして、加熱された空気が昇温室に供給されると、昇温室内の攪拌用ファンが作動し、昇温室内の空気を攪拌し、昇温室内の雰囲気を一定に保つようにする。
密閉状態の昇温室において昇温室内の空気を加熱、循環および攪拌させることにより、窯業成形物は昇温室内の空気から熱を受けて、窯業成形物の温度は徐々に上昇される。
そして、昇温室に設けられた窯業成形物用の温度測定手段により、測定された窯業成形物の温度が所定の温度に達すると、昇温室用制御器により熱風発生器および送風機の作動が停止され、昇温室の搬出用扉のみが開放され、所定の温度に達した窯業成形物が乾燥炉に搬入される。
窯業成形物が乾燥炉に搬入されると搬出用扉が閉鎖され、搬出用扉が閉鎖された後、搬入用扉が開放され、昇温室内の雰囲気を放出するとともに、次の窯業成形物が昇温室に搬入される。
なお、昇温室から乾燥炉に窯業成形物が搬入されるとき、乾燥炉に搬入される窯業成形物の温度に応じて、恒率乾燥期間へ移行できるように乾燥炉の雰囲気が調整されて運転されることが望ましい。
さらに、請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置によれば、所定の温度に達した窯業成形物は乾燥炉において乾燥されるが、乾燥炉内における窯業成形物は、恒率乾燥期間から減率乾燥期間を経て乾燥される。
このとき、外気温度センサにより外気温度が測定され、外気湿度センサにより外気相対湿度が測定される。
予め設定された乾燥炉内の設定湿球温度、測定された外気温度および外気相対湿度に基づいて乾燥炉内へ供給する熱風の目標温度が演算手段により求められる。
測定された熱風の温度が求められた目標温度となるように、吸引制御手段が吸引手段を制御し、吸引ダクトを通じて吸引された外気と、焼成炉から導入された、外気と同一の絶対湿度を持つ加熱空気が混合され、外気と焼成炉から導入された前記加熱空気の混合により得られた目標温度の熱風は熱風供給ダクトを通じて乾燥炉内へ供給される。
そして、乾燥炉内に供給された熱風により窯業成形物の乾燥が行われるが、乾燥炉内に供給された熱風の湿球温度は乾燥炉内の設定湿球温度と同じである。また、乾燥により熱風が断熱冷却されると熱風の相対湿度は上昇するが、熱風の湿球温度は変化しない。
したがって、窯業成形物の温度と乾燥炉内の湿球温度に差が生じないので、乾燥が安定して進行し、乾燥に伴う著しい収縮の差による窯業成形物の変形や亀裂の発生を抑制される。
他方、乾燥炉内に供給される熱風は乾燥炉内の設定湿球温度、外気温度および外気相対湿度に基づく目標温度が設定されているため、熱風の温度を乾燥炉内の温度変化に追従させることができない。
そこで、乾燥炉内の温度を炉内温度センサにより測定して炉内温度を求め、炉内温度と炉内設定温度との差を求め、この差に基づいて風量制御手段を制御して熱風の供給量を制御することにより、乾燥炉内の温度は炉内設定温度に保たれる。
【0043】
請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置は、上記のように構成されているので以下の利点を有する。
昇温室が乾燥炉と別に設けられ、密閉状態で窯業成形物の温度上昇を図るため、所定の温度に保たれた窯業成形物を乾燥炉に収容することができるので、乾燥炉における窯業成形物の乾燥を安定して行うことができる。
また、乾燥炉と独立した攪拌用ファン、循環ダクト、送風機および熱風発生器を備え、熱風発生器により密閉された昇温室内の空気を加熱、循環および攪拌するので、窯業成形物の温度制御を乾燥炉と独立させて行うことができる。
したがって、予熱期間の制御と恒率乾燥期間以降の制御を独立して行うことができ、窯業成形物に対する乾燥条件の設定や乾燥の制御自体が容易となる。そして、熱を受けた窯業成形物は温度上昇するが、窯業成形物から蒸発する水分により、昇温室内の相対湿度は100%に近い状態を保ち、窯業成形物の温度と昇温室内の露点温度がほぼ一致する状態を保つので、過度の乾燥や窯業成形物に対する結露は生じない。
さらに、窯業成形物の温度が所定の温度に達したことを温度測定手段により確認し、攪拌用ファン、送風機および熱風発生器を停止させるから、複雑な制御を必要せず、昇温室の構造が比較的簡単となる。
またさらに、請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置は、上記のように構成されているので、以下の利点を有する。
乾燥炉内の設定湿球温度に対応する目標温度の熱風を供給することができ、熱風の湿球温度と窯業成形物の温度が一致した状態で窯業成形物を乾燥することができるので、昇温室において窯業成形物の温度を所定の温度に上昇させることと相俟って、熱風の湿球温度と窯業成形物の温度の差により生じがちな乾燥に伴う著しい収縮の差による窯業成形物の変形や亀裂が抑制され、理想的な窯業成形物の乾燥を確実に行うことができる。
熱風の温度制御による乾燥炉内の湿球温度の制御と、熱風の供給量の制御による乾燥炉内の温度制御により、昇温室において窯業成形物の温度を所定の温度に上昇させることと相俟って、窯業成形物の理想的な乾燥を確実に実現し、窯業成形物の乾燥歩留まりをより向上させることができる。
また、熱風の温度制御は乾燥炉内の湿球温度の制御を目的とし、熱風の供給量の制御は乾燥炉内の温度制御を目的としているので、従来のような温度と相対湿度を制御するために熱風の温度と蒸気混入量を制御する場合と比較して、熱風の温度と供給量を独立させて制御することが可能であり、乾燥炉内の雰囲気を最適な状態にすることが極めて容易となり、乾燥に対する特別な知識を持たない乾燥炉のオペレ−タなどが手軽に乾燥の制御を変更することができる。
併せて、窯業成形物の乾燥のための熱風を発生させる主たる手段は、外気と、焼成炉から導入される、外気と同一の絶対湿度を持つ加熱空気のみとなるので、熱風を発生させるための熱風発生源などの熱源を乾燥炉に設ける必要がなく、焼成炉の廃熱を有効活用することができるほか、窯業成形物の乾燥の熱効率を向上させることができ、設備費やランニングコストを抑制することができる。
また、窯業成形物の乾燥における予熱期間を昇温室により制御し、一方、恒率乾燥期間以降を乾燥炉により制御するので、それぞれの期間について独立した制御ができ、乾燥条件の設定や乾燥装置の操作が容易となるほか、より正確な乾燥の制御を図ることができる。
【0044】
請求項5記載の窯業成形物の乾燥装置は、請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置において、窯業成形物に対する空気の流れを遮断する待機室が昇温室の搬入用扉側に連設されたことを特徴とするものである。
【0045】
請求項5記載の窯業成形物の乾燥装置によれば、窯業成形物を昇温室に収容するに先立って、昇温室の搬入用扉側に連設された待機室に未乾燥の窯業成形物を搬入させ待機させる。
このとき、待機室は窯業成形物に対する空気の流れを遮断するので、窯業成形物の周囲は窯業成形物から僅かに蒸発する水分により高湿の雰囲気となり、その後、窯業成形物から蒸発される水分は抑制される。
また、空気の流れが遮断されていることから、窯業成形物の温度の変化が極めて抑制され、窯業成形物は過度の乾燥や結露が生じない安定した状態を維持する。
なお、待機室の具体的な構造としては、昇温室のような密閉式の部屋のほか、待機室の入口が開放され、十分な長さを備えたトンネル状の待機室としてもよい。
十分な長さを備えたトンネル状の待機室であれば、入口が開放されていても、昇温室寄りの領域にあっては、実質的に空気の流れが遮断された状態にあるからである。
【0046】
したがって、請求項5記載の窯業成形物の乾燥方法は、請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置が奏する効果のほか、予め空気の流れを遮断した待機室において窯業成形物を待機させるので、昇温室へ収容される窯業成形物の状態が安定する。
したがって、安定した状態の窯業成形物を昇温室に収容して温度上昇させるから、昇温室における窯業成形物の温度上昇が安定して行われ、乾燥炉に収容される際に窯業成形物の温度にばらつきが生じない。
そのため、乾燥の制御に対する安定性が向上され、乾燥後の窯業成形物の品質をより一層安定させることができる。
また、待機室は、窯業成形物に対する空気の流れを遮断する役割を果たせばよいから、低コストで待機室を設置することもできる。
【0057】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。
図1はこの実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置全体の概略図、図2は実施の形態に係る乾燥装置の昇温室の構造を示す概略図、図3は実施の形態に係る乾燥装置の乾燥炉の概略図、図4は昇温室における窯業成形物および昇温室内の温度変化を示すグラフ、図5は湿球温度と温度制御との関係を示す説明図、図6は実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置による乾燥特性を示すグラフ、図7は別の実施例に係る待機室を示す概略図、図8は従来例の窯業成形物の乾燥装置の概略図である。
【0058】
この発明の実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置全体の基本構成について説明する。
(全体構成)
図1に示されるようにトンネル式の乾燥炉10が設けられており、乾燥炉10には一方に入口12、他方に出口14が設けられている。
乾燥炉10内には窯業成形物Wを搭載した乾燥台車16が入口12から出口14に向けて通過できるように軌道(図示せず)が敷設されている。
この実施の形態における乾燥台車16は、窯業成形物Wを水平状態で多段状に搭載することができ、また、軌道上を走行することができるものである。
乾燥炉10内の軌道の両側には乾燥炉10内に供給される熱風を攪拌しつつ、窯業成形物Wに熱風を吹き付けるための炉内用ファン18が多数設けられている。
したがって、連続式の乾燥炉10であるから、未乾燥の窯業成形物Wは乾燥炉10の入口12から順次搬入され、出口14に至るまでに順次乾燥される。
【0059】
そして、乾燥炉10の入口12側には、密閉自在の昇温室62が設けられている。
昇温室62の一方には、外部から昇温室62に通じる搬入用扉64が備えられ、他方には昇温室62から乾燥炉10に通じる搬出用扉66が備えられ、それぞれ開閉自在である(図2を参照)。
昇温室62の目的は、未乾燥の窯業成形物Wを乾燥炉10に収容する先立って、窯業成形物Wの温度を所定の温度まで上昇させるためのものである。
なお、この実施の形態においては、後述するが昇温室62の搬入用扉64側にトンネル状の待機室84が設置されている(図1、図2を参照)。
【0060】
(昇温室)
まず、図2を参照して昇温室62について詳しく説明する。
昇温室62は、乾燥炉10から完全に独立した部屋であり、この実施の形態においては1台の乾燥台車16が収容できる容積を備えている。
昇温室62に必要な容積は、窯業成形物Wの温度を上昇させる際に、窯業成形物Wの温度と昇温室10内の露点温度がほぼ一定に保たれる関係が成立する容積とされている。
この実施の形態においては、昇温室62の容積を約70立方メートルとし、1台の乾燥台車16の窯業成形物Wの全重量が約1400kgであって、昇温室62内における絶対湿度の上昇に必要な水分量は2.7kgであった。
そして、必要な水分量は、窯業成形物Wからの蒸発より生じる水分であるが、後述する熱風発生器70がガスバーナーである場合、ガスバーナーの燃焼により生じる水分が一部を構成することになる。
【0061】
昇温室62の乾燥炉10側には開閉自在の搬出用扉66が設けられ、搬出用扉66の反対側には開閉自在の搬入用扉64が備えられている。
そして、昇温室62は搬入用扉64および搬出用扉66の閉鎖により、ほぼ密閉状態に保つことができる。
昇温室62には、循環ダクト68が設けられ、循環ダクト68を通じて昇温室62内の空気が吸引され、再び昇温室62内に送出される構造となっている。
そして、循環ダクト68内の空気を加熱するための熱風発生器70が循環ダクト68に設けられ、加熱された空気を昇温室62に送り込むための送風機72が循環ダクト68に設けられている。
【0062】
循環ダクト68は両端はそれぞれ昇温室62内に連通しており、一端が吸引口74であって他端を送出口76となっているので、送風機72により吸引口74から吸引された昇温室62の空気は熱風発生器70により加熱され、加熱された空気は送風機72により送出口76から昇温室62に送り込まれ、昇温室62内の空気が加熱されつつ循環されることになる。
したがって、昇温室62を密閉状態に保ち、昇温室62内の空気を加熱しつつ、循環させることにより、外部との空気の出入りなく昇温室62内の窯業成形物Wの温度を上昇させることができる。
【0063】
なお、ここでいう昇温室62の「密閉状態」は昇温室62外の空気と接触する状態にないことを指しており、熱風発生器70の具体的手段としてガスバーナーを採用した場合、ガスバーナーの燃焼に必要な空気は除外される。
また、熱風発生器70の別の具体的手段として熱交換器を採用すれば、熱風発生器70として空気を必要としない。
【0064】
また、昇温室62には、昇温室62の空気を攪拌するための攪拌用ファン78が設けられており、循環ダクト68を通じて循環された昇温室62内の空気を攪拌用ファン78により攪拌することができ、昇温室62内の雰囲気の均一化を図っている。
【0065】
さらに、昇温室62内の窯業成形物Wの温度を測定するための温度測定手段80が設けられている。
この実施の形態における温度測定手段80は、近接式の温度センサを採用しており、温度センサを窯業成形物Wに接近させると、窯業成形物Wの温度が正確に測定できるものである。
【0066】
なお、昇温室62の空気の温度と相対湿度を測定して、測定された温度と相対湿度に基づいて演算処理することにより昇温室内の露点温度を求め、求められた露点温度を窯業成形物Wの温度とみなしてもよい。
ただし、この場合の温度測定手段80は、昇温室62内の空気の温度と相対湿度を測定する温度測定センサおよび湿度測定センサ、また、測定された昇温室62の温度と相対湿度から露点温度を求めるための演算処理器から構成されることになる。
【0067】
そして、窯業成形物Wの温度が所定の温度に達すると、別に設けられた昇温室用制御器82を通じて送風機72と熱風発生器70の作動を停止させることができる。
昇温室62は所定の温度になるまで窯業成形物Wの温度を上昇させる目的があり、窯業成形物Wを所定の温度を以って乾燥炉10へ送り込むことにより、乾燥炉10における窯業成形物Wの乾燥をより安定させて行うことができる。
【0068】
(待機室)
この実施の形態では待機室84が、昇温室62の搬入用扉64側に連設されている(図1を参照)。
待機室84は、窯業成形物Wを昇温室62に収容するに先立って、空気の流れを遮断した雰囲気中に窯業成形物Wを待機させ、昇温室62に収容される窯業成形物Wの状態のばらつきを抑制する目的がある。
待機室84における雰囲気は空気の流れが遮断されて、100%に近い相対湿度に保たれる。
この実施の形態の待機室84は、費用が安価な樹脂製の遮蔽シートによりトンネル状に形成されているので、入口側が開放されている形態である(図1を参照)。
待機室84の入口側が開放されているが、待機室84の長さが十分であれば、待機室の昇温室62寄りは外部からの空気の流れが実質的に遮断された状態にあるので、待機室84としての目的を達成することができる。
【0069】
この実施の形態においては、入口側が開放された待機室84としたが、図7に示されるように、昇温室62と同様の密閉状態の待機室86としてもよい。
この場合、待機室86の入口に開閉扉88を設け、開閉扉88により乾燥台車16の収容と待機室86の密閉状態を図ることが可能となる。
【0070】
(乾燥炉)
乾燥炉10は前に説明したが、乾燥炉10はトンネル式であって、入口12から順次送り込まれた窯業成形物Wを出口14へ向けて搬送する間に乾燥させるものである。
乾燥炉10の入口12側には昇温室62が設けられており、昇温室62の搬出用扉66が乾燥炉10の入口扉に相当し、乾燥炉10の出口14には出口扉20が設けられている(図1を参照)。
したがって、乾燥炉10へ窯業成形物の出入りがある場合、乾燥炉10の入口12と出口14が開放され、出入りのないときは閉鎖状態にある。
【0071】
また、乾燥炉10の内部には乾燥炉10内の空気を撹拌して乾燥炉10内の雰囲気をより均一にするための炉内用ファン18が多数設けられている。
そして、乾燥炉10の入口12から順次搬入された未乾燥の窯業成形物Wを一方へ向けて搬送させつつ乾燥させ、乾燥された窯業成形物Wを出口14から順次搬出する構成となっている。
【0072】
図3を参照して説明すると、この乾燥炉10に熱風供給ダクト22の一端が接続され、熱風供給ダクト22の他端に外気吸引ダクト24の一端が接続され、外気吸引ダクト24の他端は開放されている。
また、焼成炉からの加熱空気を供給する廃熱供給ダクト26が、熱風供給ダクト22と外気吸引ダクト24の接続部Aに接続されている。
【0073】
外気吸引ダクト24は外気を熱風供給ダクト22へ送るためのものであり、外気吸引ダクト24には外気の吸引を制御するための外気吸引手段28が設けられ、具体的手段として自動開閉式のダンパが採用されている。
廃熱供給ダクト26は、焼成炉(図示せず)の排気である加熱空気の一部を導入し、熱風供給ダクト22へ向けて供給するものである。
熱風供給ダクト22は、外気と焼成炉からの加熱空気を混合して得られた熱風を乾燥炉10内へ供給するものである。
【0074】
なお、焼成炉から導入される加熱空気は、焼成炉の冷却帯において使用された空気である。
すなわち、焼成された窯業成形物Wを冷却するために、焼成炉へ送り込まれた焼成炉外の空気が、冷却帯において焼成された窯業成形物Wからの熱を吸収し、加熱されたものである。
したがって、加熱空気は焼成炉の予熱帯や焼成帯において生じる燃焼ガスの残留分を含むものではないので、乾燥のために使用しても窯業成形物Wに悪影響が生じることはない。
【0075】
熱風供給ダクト22には送風ファン30が設けられており、送風ファン30は外気を外気吸引ダクト24に吸引するとともに、焼成炉からの加熱空気を廃熱供給ダクト26に吸引するほか、外気と焼成炉からの加熱空気を混合して得られた熱風を乾燥炉10内へ供給する機能を備えている。
【0076】
外気吸引手段28が設けられた外気吸引ダクト24の上流側には、外気の乾球温度(以下、単に外気温度という)を測定するための外気温度センサ32と外気の相対湿度(以下、単に外気相対湿度という)を測定するための外気湿度センサ34が設けられている。
この実施の形態においては、外気温度センサ32と外気湿度センサ34を外気吸引ダクト24に取り付けたが、外気の温度と相対湿度を測定することが可能であれば、両センサ32、34を設置する場所は問わない。
【0077】
外気温度センサ32と外気湿度センサ34は、測定された外気温度と外気相対湿度を別に設けられた演算手段36に伝達できるように、演算手段36に接続されている。
【0078】
(演算手段)
演算手段36は、乾燥に最適な熱風の目標の乾球温度(以下、単に目標温度という)を求めるほか、目標温度に基づいて後述する吸引制御手段38を制御する機能を有するものである。
そして、演算手段36には、乾燥炉10内の湿球温度を予め設定した設定湿球温度のデータが格納されているほか、乾燥炉10内の設定湿球温度、測定された外気温度と外気相対湿度により熱風の目標温度を求めるためのプログラムが格納されている。
【0079】
熱風の目標温度を演算手段36により求めるプログラムは、図5に示される湿度図表に基づいて以下の要素を求める手順から構成されている。
▲1▼乾燥炉10内の設定湿球温度に対応する相対湿度100%における断熱冷却線。
▲2▼測定された外気温度および外気相対湿度における絶対湿度(kg/kg)。
▲3▼乾燥炉10内の設定湿球温度と相対湿度100%における断熱冷却線と、測定された外気温度および外気相対湿度における絶対湿度(kg/kg)との交点における温度(目標温度)。
【0080】
この湿度図表に基づいて、乾燥炉10内の設定湿球温度、測定された外気温度および外気相対湿度とにより目標温度を求める意図は、とくに恒率乾燥期間における窯業成形物の変形や亀裂の抑制を図るため、熱風の温度制御により乾燥炉10内の湿球温度の制御を図るためである。
【0081】
(吸引制御手段)
吸引制御手段38は、先に述べた演算手段36に接続されるとともに、演算手段36により求められた熱風の目標温度に基づいて外気吸引手段28を制御し、焼成炉からの加熱空気に混合させる外気の吸引量を制御するためのものである。
【0082】
したがって、外気吸引手段28は吸引制御手段38の制御を受けつつ外気の吸引量を制御するが、外気と焼成炉からの加熱空気を混合して得られた熱風の温度が目標温度となるまで外気の吸引量を増減する。
この実施の形態では、外気と焼成炉からの加熱空気の混合して得られた熱風の温度の正確性をより高めるために、熱風の温度を測定する熱風温度センサ40が、熱風供給ダクト22に設けられ、熱風温度センサ40は吸引制御手段38に接続されている。
【0083】
したがって、熱風温度センサ40により測定された熱風の温度(以下、単に熱風温度という)は吸引制御手段38へ伝達され、測定された熱風温度と熱風の目標温度が比較され、その結果により外気吸引手段28に対する制御を行うので、外気と焼成炉からの加熱空気の混合して得られる熱風の温度制御が極めて正確に行われる。
【0084】
(風量制御手段)
一方、乾燥炉10内の温度を測定するための炉内温度センサ42が乾燥炉10に設けられている。
そして、炉内温度センサ42は測定された乾燥炉10内の温度(以下、単に炉内温度という)を別に設けられた開閉用制御器44に伝達できるよう開閉用制御器44に接続されている。
開閉用制御器44は、熱風供給ダクト22に設けられた熱風用ダンパ46の開閉を制御するためのものであり、開閉用制御器44と熱風用ダンパ46により風量制御手段48が構成される。
【0085】
開閉用制御器44を詳しく述べると、炉内温度センサ42により測定された炉内温度と予め設定された乾燥炉10内の設定温度(以下、単に炉内設定温度という)との比較が開閉用制御器44により行われ、炉内温度が炉内設定温度よりも高い場合は、熱風用ダンパ46の開閉により乾燥炉10への熱風の供給量を減少させ、一方、炉内温度が炉内設定温度よりも低い場合は、熱風用ダンパ46により熱風の供給量を増大させるように開閉用制御器44により熱風用ダンパ46の開閉を制御し、乾燥炉10内の温度を炉内設定温度に保つように図られている。
【0086】
熱風用ダンパ46と開閉用制御器44からなる風量制御手段48の目的は、とくに恒率乾燥期間における窯業成形物Wの変形や亀裂を抑制しつつ、熱風の供給量の制御により乾燥炉内の温度の制御を図ることにある。
また、熱風用ダンパ46により分岐された熱風を放出させる分岐ダクト50が設けられている。
なお、分岐ダクト50を排気ダクト56に接続してもよい。
【0087】
なお、この実施の形態において予め設定される炉内設定温度は、窯業成形物Wの乾燥時間をより短縮化するために、恒率乾燥期間においては経時的に上昇するように設定されており、炉内設定温度のデータは開閉用制御器44に格納される。
この実施の形態において、熱風供給ダクト22に設けられた送風ファン30は一定の回転数を保って運転されるものであり、熱風の供給量を炉内温度に基づいて制御する風量制御手段48を構成するものではない。
【0088】
また、炉内設定温度を経時的に上昇するように設定することにより、温度上昇に伴って窯業成形物Wに含まれる水分が低下して窯業成形物Wの強度が増加することから、乾燥に伴う著しい収縮の差による変形や亀裂の抑制を図ることができる。
【0089】
また、この実施の形態に係る乾燥装置は、乾燥炉10に供給される熱風に対して補助的に加熱する補助熱風発生源52が熱風供給ダクト22に設けられている。
この実施の形態では、補助熱風発生源52を制御するための補助加熱制御手段54が設けられている。
【0090】
補助加熱制御手段54は、熱風供給ダクト22に設けられた熱風温度センサ40と接続されており、熱風温度センサ40により測定された熱風の温度が、演算手段36により得られた目標温度より低いとき補助熱風発生源52を制御し、熱風供給ダクト22を通過する熱風に対して加熱するものである。
【0091】
なお、焼成炉の運転開始時などにおいて、熱風の温度が目標温度より低くなる可能性がある。
つまり、焼成炉から導入される加熱空気の温度が熱風の目標温度より低い場合であり、焼成炉からの加熱空気を直接乾燥炉10へ供給する熱風としたとしても、熱風の温度が目標温度に達していないことになるから、不足する温度を補うために補助熱風発生源52により補助的に熱風を加熱する必要が生じる。
【0092】
(排気ダクト)
乾燥炉10内の空気を排出するために乾燥炉10に排気ダクト56が設けられ、排気量を調節する排気ダンパ58が排気ダクト56に設けられている。
一方、乾燥炉10内に炉内圧力センサ60が設けられ、炉内圧力センサ60により測定された乾燥炉10内の圧力に応じて排気ダンパ58の開閉を制御し、排気を図るように構成されている。
【0093】
排気ダンパ58の開閉制御により乾燥炉10内の圧力を調整する目的は、乾燥炉10内の圧力が高くなると、熱風の乾燥炉10への供給が阻害されるほか、乾燥炉10の内壁が物理的損傷を受けるおそれのあることに鑑み、乾燥炉10内への熱風の供給を安定して行うことと併せて乾燥炉10の内壁の物理的損傷を防止することにある。
なお、排気ダクト56に排気用ファンを設けて、強制的に乾燥炉10の排気を行うようにしてもよい。
【0094】
次に、実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置の制御の説明と併せてその乾燥方法の制御について説明する。
【0095】
まず、乾燥台車16に搭載された多数の未乾燥の窯業成形物Wを待機室84に収容する。
このとき、外部の空気の流れに窯業成形物Wが晒されないように、窯業成形物Wを成形した後、できるだけ早く待機室84に収容することがより好ましい。
待機室84は外部の空気の流れを遮断した領域であるため、外気の空気に晒されることがない。
したがって、待機室84に収容された窯業成形物Wについては、外気の空気の流れの影響による窯業成形物Wの温度の変動や過度の乾燥が抑制される。
なお、この実施の形態においては、待機室84の長さを乾燥台車2〜3台分とし、待機室84から昇温室62に窯業成形物Wが収容される待機時間を30分とした。
【0096】
次に、待機室84において所定の時間待機した窯業成形物Wを昇温室62に収容する。
このとき、昇温室62の搬入用扉64が開放され、窯業成形物Wを搭載した乾燥台車16が昇温室62に引き込まれ、昇温室62に収容される。
窯業成形物Wが昇温室62に引き込まれると、昇温室62の搬入用扉64は閉鎖されるが、乾燥炉10と昇温室62を連通させる搬出用扉66は既に閉鎖されている状態にある。
【0097】
搬入用扉64および搬出用扉66の閉鎖により外部および乾燥炉10と遮断された昇温室62は密閉状態にある。
そして、昇温室62が密閉状態に保たれたとき、送風機72、熱風発生器70が作動し、昇温室62内の空気は吸引口74から吸引され、吸引された空気は循環ダクト68を通じて熱風発生器70により加熱され、加熱された空気が送出口76から昇温室62に送出される。
このとき、昇温室62内の攪拌ファン78が作動し、加熱された空気を攪拌して昇温室62内の雰囲気を均一にする。
【0098】
そして、昇温室62の空気を加熱するとともに循環させ、昇温室62内の温度を上昇させるので、昇温室62内の窯業成形物Wの温度も徐々に上昇する。
昇温室62内の温度は熱風発生器70による空気の加熱を受けて経時的に上昇するが、この実施の形態においては、図4に示されるように、昇温室62内の温度が30分間で35℃から55℃へ上昇した。
また、このとき窯業成形物Wの温度は35℃から45℃へ上昇したが、昇温室62が密閉状態に保持されているので、昇温室62内の絶対湿度と温度の上昇により、昇温室62内の露点温度は窯業成形物Wの温度とほぼ一致するように上昇した(図4を参照)。
【0099】
したがって、窯業成形物Wの温度と密閉状態にある昇温室内の露点温度がほぼ一致する状態を保ちつつ、窯業成形物Wの温度は所定の温度まで上昇されるので、窯業成形物Wに対する過度の乾燥や結露が生じることがない。
なお、窯業成形物Wの温度は昇温室62に設けられた温度測定手段80により測定され、窯業成形物Wの温度が所定の温度に達したとき、昇温室用制御器82へ信号を伝達し、昇温室用制御器82により送風機72、熱風発生器70の停止が行われる。
【0100】
このように、窯業成形物Wの温度が所定の温度まで上昇されるまで、送風機72および熱風発生器70が作動するので、昇温室62に収容される窯業成形物Wの温度が季節などの変化により異なっていても、昇温室62内における窯業成形物Wの温度は最終的に所定の温度に上昇され、窯業成形物Wが乾燥炉10に収容される時点で収容前の窯業成形物Wの温度差は解消される。
【0101】
窯業成形物Wの温度が所定の温度に上昇されたことが、温度測定手段80により検知され、昇温室用制御器82により熱風発生器70および送風機72が停止されると、乾燥炉10と昇温室62を連通させるように、昇温室62の搬出用扉66が開放される。
このとき、昇温室62の搬入用扉64は閉鎖された状態にあり、開放されることがない。
昇温室62の搬出用扉66が開放されると、窯業成形物Wを搭載した乾燥台車16は乾燥炉10へ送り込まれ、窯業成形物Wが乾燥炉10に収容される。
窯業成形物Wが乾燥炉10に収容されると、昇温室62の搬出用扉66は閉鎖され、搬出用扉66の閉鎖後に昇温室62内の雰囲気を調整するが、昇温室62内の露点温度を初期の状態に復帰させる。
昇温室62内の露点温度が初期の状態に復帰されると、搬入用扉64が開放され、窯業成形物Wを搭載した次の乾燥台車16が昇温室62に収容される。
【0102】
次に、乾燥炉10における窯業成形物Wの乾燥の制御について説明する。
乾燥炉10に収容された窯業成形物Wは所定の温度に上昇されており、乾燥炉10の出口へ向けて移動しつつ、乾燥される。
この実施の形態の乾燥炉10内の湿球温度の制御については、外気温度センサ32により測定された外気温度と、外気湿度センサ34により測定された外気相対湿度と、予め設定された乾燥炉10内の設定湿球温度とから演算手段36により熱風の目標温度が求められ、目標温度に基づいて吸引制御手段38を制御させ、外気吸引手段28による外気の吸引量が制御される。
このため、吸引された外気と焼成炉から導入される加熱空気との混合により、熱風を得ることができるが、焼成炉からの加熱空気の供給量が一定であれば、外気の吸引量を制御することにより、熱風の温度制御を図ることができる。
【0103】
この熱風の温度制御による乾燥炉10内の湿球温度の制御は、窯業成形物Wの乾燥時における変形および亀裂を防止するために有効である。
未乾燥の窯業成形物Wは水分を含んだ湿潤なものであるから、窯業成形物Wの温度は、窯業成形物Wの周囲の雰囲気の湿球温度(温度計に湿ったガ−ゼを付けて測定した温度)とほぼ等しく扱うことができる。
【0104】
そこで、加熱期間を経過して恒率乾燥期間における窯業成形物Wの温度と、恒率乾燥期間における乾燥炉10内の湿球温度を等しく保つことができると、熱風の熱は水分の蒸発にのみ使用され、適切な乾燥速度で窯業成形物Wを乾燥させることができる。
したがって、窯業成形物の一部に急激な乾燥や窯業成形物Wの表面への結露が発生することなく、恒率乾燥期間における窯業成形物Wの変形や亀裂を抑制できる。
【0105】
ほぼ密閉された乾燥炉10内において、熱風が窯業成形物Wの乾燥に使用されても近似的に断熱冷却され、熱風が断熱冷却される場合、断熱冷却の過程において熱風の湿球温度は変化しない。
【0106】
そして、乾燥炉10内の湿球温度が設定湿球温度に維持されるためには、乾燥炉10内の設定湿球温度に対応する断熱冷却線上に位置するように熱風の目標温度を求め、求められた目標温度となるように、外気と焼成炉から導入される加熱空気を混合すればよい。
【0107】
したがって、外気と焼成炉から導入される加熱空気の混合により得られた目標温度の熱風を乾燥炉10内に供給し、乾燥炉10内において熱風が乾燥に使用されても、乾燥炉10内の湿球温度は設定湿球温度と同じに維持され、また、乾燥炉10内の湿球温度と窯業成形物Wの温度が一致するので、恒率乾燥期間において窯業成形物Wの乾燥は安定して進行する。
【0108】
一方、乾燥炉10内の温度制御は、熱風の供給量を制御することにより行われる。
つまり、乾燥炉10内の温度が熱風の温度より低い場合、一定の温度の熱風であっても、供給される熱風の供給量を増大させると、供給量に応じて乾燥炉10内の温度は上昇する現象を利用するものである。
【0109】
この実施の形態における窯業成形物Wの乾燥の制御の具体例は、以下のようなプログラムに基づいて行った。
昇温室62における窯業成形物Wの加熱期間を約30分とし、この期間で窯業成形物Wの温度が35℃から45℃まで上昇するように、昇温室62内の温度を35℃から55℃に上昇させる設定とした。
【0110】
次に、乾燥炉10における恒率乾燥期間を約8時間とし、この期間の設定湿球温度を45℃とし、炉内温度を47℃から68℃まで段階的に上昇するように設定した。
そして、乾燥炉10における減率乾燥期間を約4時間とし、この期間の設定湿球温度についても45℃とする一方、炉内温度を68℃から80℃に上昇させ、温度80℃で約2時間の保持時間を設定した(図5を参照)。
【0111】
この乾燥における外気温度は35℃、外気の相対湿度は60%であったことから、乾燥炉10内の設定湿球温度が45℃であることを併せ、演算手段36により熱風の目標温度は145℃であった(図5を参照)。
一方、焼成炉から導入された廃熱である加熱空気は温度が155℃と一定で供給され、目標温度145℃の熱風を得るために必要な外気と加熱空気との混合比(容積比)はおよそ1:15となった。
【0112】
以上の設定および条件に基づいて窯業成形物の乾燥を行ったところ、乾燥された窯業成形物において乾燥による変形や亀裂はほとんど発生しなかった。
すなわち、昇温室62中の窯業成形物Wの温度が上昇する過程で、窯業成形物Wの温度と昇温室62内の露点温度がほぼ一致する状態を保たれ、昇温室62内の窯業成形物Wに対する過度の乾燥や結露が生じないためである。
また、窯業成形物の温度が所定の温度に達したとき、窯業成形物を乾燥炉へ収容させるので、乾燥炉に収容された窯業成形物は恒率乾燥期間から減率乾燥期間においてばらつきのない安定した乾燥となる。
さらに、乾燥炉10内の設定湿球温度、測定された外気温度と外気相対湿度とにより、乾燥炉10内の設定湿球温度に対応する熱風の目標温度が求められ、目標温度の熱風となるように、外気と焼成炉からの加熱空気を混合し、外気と焼成炉からの加熱空気との混合により得られた熱風が乾燥炉10内に供給され、乾燥炉10内に供給された目標温度の熱風は乾燥に使用されても湿球温度は変化することなく、設定湿球温度に保たれることにより、窯業成形物の温度と乾燥炉10内の湿球温度が一致する状態を維持し、窯業成形物の一部に急激な乾燥や表面への結露が生じないためである。
【0113】
恒率乾燥期間における乾燥炉10内の設定湿球温度と窯業成形物の温度を常に一致させる制御であるから、窯業成形物の種類に応じて設定湿球温度を自由に変更しても窯業成形物の温度が設定湿球温度と一致するように熱風の目標温度が求められ、従来のように温度と相対湿度の関係を考慮する必要もないので、乾燥炉10のオペレ−タによる乾燥の制御の変更が容易となった。
【0114】
併せて、乾燥炉10の度制御を熱風の供給量の制御により行うので、乾燥炉10内の温度を変動させても湿球温度が設定湿球温度に維持されていれば、一定の範囲内において乾燥時間の変更を自由にでき、この実施の形態では乾燥時間が14時間に短縮することができた。
【0115】
また、乾燥途中において外気温度や外気相対湿度の変動が生じても、演算手段36により、これらの変動に対応するように熱風の目標温度が求められ、目標温度に基づいて吸引制御手段38が制御されるので、外気吸引手段28による外気の吸引量の適切な制御を行うことができる。
【0116】
さらに、乾燥炉10へ供給される熱風は、外気と焼成炉から導入される加熱空気の混合により得られるので、乾燥装置に熱風発生源を設置することが不要となり、焼成炉の廃熱を有効活用することができるほか、窯業成形物Wの乾燥の熱効率を向上させることができ、設備費やランニングコストを抑制することができる。
【0117】
なお、この実施の形態において、乾燥炉10の入口12に昇温室62を隣接させて設置したが、間隔を設けて昇温室を設置してもよいが、乾燥室と昇温室を連絡するための連絡経路を設け、少なくとも待機室84のように外部の空気を遮断することができる連絡経路とする必要がある。
【0118】
また、この実施の形態では、昇温室62において窯業成形物Wの温度を約30分間で35℃から45℃に上昇させる場合を説明したが、昇温室62に収容される前の窯業成形物Wの温度に関わらず、昇温後の窯業成形物Wの温度は、30〜50℃の範囲内において設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置全体の概略図である。
【図2】実施の形態に係る乾燥装置の昇温室の構造を示す概略図である。
【図3】実施の形態に係る乾燥装置の乾燥炉の概略図である。
【図4】昇温室における窯業成形物および昇温室内の温度変化を示すグラフである。
【図5】湿球温度と温度制御との関係を示す説明図である。
【図6】実施の形態に係る窯業成形物の乾燥装置による乾燥特性を示すグラフである。
【図7】別の実施例に係る待機室を示す概略図である。
【図8】従来例の窯業成形物の乾燥装置の概略図である。
【符号の説明】
10 乾燥炉
12 入口
14 出口
16 乾燥台車
18 炉内用ファン
20 出口扉
22 熱風供給ダクト
24 外気吸引ダクト
26 廃熱供給ダクト
28 外気吸引手段
30 送風用ファン
32 外気温度センサ
34 外気湿度センサ
36 演算手段
38 吸引制御手段
40 熱風温度センサ
42 炉内温度センサ
44 開閉用制御器
46 熱風用ダンパ
48 風量制御手段
50 分岐ダクト
52 補助熱風発生源
54 補助加熱制御手段
56 排気ダクト
58 排気ダンパ
60 炉内圧力センサ
62 昇温室
64 搬入用扉
66 搬出用扉
68 循環ダクト
70 熱風発生器
72 送風機
74 吸引口
76 送出口
78 撹拌用ファン
80 温度測定手段
82 昇温室用制御器
84 待機室
86 待機室
88 開閉扉

Claims (5)

  1. 湿式成形された窯業成形物を乾燥炉の入口から乾燥炉内に収容し、乾燥炉の出口に移動する間に窯業成形物を恒率乾燥期間から減率乾燥期間を経て乾燥させる窯業成形物の乾燥方法において、
    乾燥炉の入口側に密閉自在の昇温室を連設し、
    昇温室に未乾燥の窯業成形物を収容した後、昇温室を密閉状態に保持し、
    昇温室内の空気を加熱して循環させることにより窯業成形物の温度を上昇させ、
    窯業成形物の温度と密閉状態にある昇温室内の露点温度とがほぼ一致する状態を保ちつつ、
    窯業成形物の温度が所定の温度に達したとき乾燥炉と昇温室を連通させ、
    所定の温度に達した窯業成形物を昇温室から乾燥炉へ収容させ、
    乾燥炉を密閉状態に保持した後、窯業成形物を乾燥させることを特徴とする窯業成形物の乾燥方法。
  2. 昇温室において窯業成形物の温度を30〜50℃まで上昇させることを特徴とする請求項1記載の窯業成形物の乾燥方法。
  3. 窯業成形物を昇温室に収容するに先立って、空気の流れを遮断した雰囲気中に所定の時間窯業成形物を待機させることを特徴とする請求項1又は2記載の窯業成形物の乾燥方法。
  4. 湿式成形された窯業成形物を乾燥炉の入口から乾燥炉内に収容し、乾燥炉の出口に移動する間に窯業成形物を乾燥させる窯業成形物の乾燥装置において、
    密閉自在の昇温室が乾燥炉の入口側に連設され、
    外部から昇温室へ窯業成形物を搬入する搬入用扉と昇温室内の窯業成形物を乾燥炉へ搬出する搬出用扉が昇温室に設けられ、
    昇温室内の空気を攪拌させる攪拌用ファンと、昇温室内の窯業成形物の温度を測定する温度測定手段が昇温室内に設けられ、
    昇温室内の空気を循環させる循環ダクトが昇温室に設けられ、
    昇温室内の空気を吸引し循環ダクトを通じて昇温室内へ供給する送風機と循環ダクトの空気を加熱する熱風発生器が夫々循環ダクトに設けられ、
    温度測定手段により測定された成形物の温度に基づき熱風発生器および送風ファンを制御する昇温室用制御器が設けられ、
    乾燥炉内へ熱風を供給する熱風供給ダクトが乾燥炉に接続されるとともに、乾燥炉内の空気を排出する排気ダクトが乾燥炉に接続され、
    外気を吸引する外気吸引ダクトが熱風供給ダクトに接続されるとともに、外気吸引ダクトに外気を吸引する外気吸引手段が設けられ、
    外気吸引ダクトと熱風供給ダクトの接続部に、外気と同一の絶対湿度を持つ加熱空気を焼成炉から供給する廃熱供給ダクトが接続され、
    外気の温度を測定する外気温度センサと外気の相対湿度を測定する外気湿度センサが外気吸引ダクトに設けられ、
    外気温度センサにより測定された外気温度と外気湿度センサにより測定された外気相対湿度により、予め設定された乾燥炉内の設定湿球温度に対応する熱風の目標温度を求める演算手段が設けられ、
    外気と焼成炉からの前記加熱空気を混合して得られる熱風の温度が目標温度となるように、外気吸引手段を制御する吸引制御手段が設けられ、
    他方、乾燥炉に該乾燥炉内の温度を測定する炉内温度センサが設けられ、
    炉内温度センサにより測定された炉内温度と予め設定された炉内設定温度の差に基づいて乾燥炉内へ供給する熱風の供給量を制御する風量制御手段が設けられたことを特徴とする窯業成形物の乾燥装置。
  5. 窯業成形物に対する空気の流れを遮断する待機室が昇温室の搬入用扉側に連設されたことを特徴とする請求項4記載の窯業成形物の乾燥装置。
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