JP3564386B2 - 加熱成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばバスタブ等の成形品を加熱成形する際に適用される加熱成形方法に係わり、特に加熱手段として加熱液を使用した加熱成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バスタブ等の成形品を加熱成形する場合、加熱成形型を使用して行うが、この加熱成形型としては、温水や蒸気を循環させる温水循環機能付きの金型か、FRP型の表面にNiメッキ等の金型層を設けかつ銅もしくはステンレスのフレキシブルな配管内に温水を循環させて加熱する、いわゆる電鋳型と言われる型が使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの加熱成形型にあっては、型費が著しく高くなって、少量、多品種の成形品を成形する際に、設備投資の面で大きな負担になるという問題点を有している。また、簡易型であるFRP型に温水循環機能を付加した電鋳型にあっては、配管の仕方により型表面の温度分布が大きく異なり、そのため、形状的に配管を設けることのできない場所は温度が上がらない等、温度バラツキが発生して、加熱硬化の際に、温度が低い場所の硬化が温度が高い場所に比較して遅れ、成形クラック等が発生し易いという問題点を有している。
【0004】
そこで、温調機能を持たないFRP型を加熱炉に入れて加熱させたり、型を温風によって加熱させる方法も考えられる。しかし、型を加熱炉に入れる方法では、バスタブのような深さのある成形品の場合に、炉の温度が均一にならず、型の温度にバラツキが発生して、前述した成形クラック等の発生を抑えることが困難であり、また、温風によって加熱硬化する方法では、昇温時間がかかって成形サイクルが長くなり易いという問題点を有している。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ハイサイクル成形を可能にし得ると共に、成形クラック等の欠陥発生を抑えることが可能な加熱成形方法を提供することにある。また、他の目的は、前記目的に加え、成形品を均一かつ高速冷却し得てよりハイサイクルな成形を可能にすると共に、より高品質な成形品が得られる加熱成形方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、少なくともFRP層を有する型を型合わせする型合わせ工程と、型合わせされた型の密閉されたキャビティ内に、熱硬化性樹脂に充填剤、促進剤及び硬化剤等を適宜の重量比で配合したコンパウンドを注入する注入工程と、コンパウンドが注入された型を加熱液槽内の所定温度の温水中に前記型全体を完全に浸漬させて前記コンパウンドを加熱硬化する加熱硬化工程と、加熱された型を加熱液槽から取り出して冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成することにより、少なくともFRP層を有する例えば上下の簡易型を型合わせして、そのキャビティ内に熱硬化性樹脂に充填剤、促進剤及び硬化剤等が適宜の重量日で配合されたコンパウンドを注入し、この型を例えば加熱液槽内の所定温度の温水中に浸漬させる。この時、型が温水中に浸漬されて温水が型の全面に均等に接触することから、型全体が所定温度に加熱されつつキャビティ内のコンパウンドが硬化される。これにより、型の温度が高速で昇温されてハイサイクル成形が可能になると共に、型の形状に係わらず型全体の温度が均一化されて、成形クラック等の発生が抑えられる。
【0010】
そして、前記冷却工程は、請求項2記載の発明のように、型を冷却槽内の所定温度の冷却水中に浸漬させることによって行うことが好ましい。このように構成することにより、温水で加熱された型を加熱液槽内から取り出し、この型が冷却槽内の所定温度の冷却水中に浸漬されて冷却されることから、冷却水が型全体に均等に接触して型が均一かつ高速冷却され、よりハイサイクルな成形が可能になる。
【0011】
また、前記加熱硬化工程は、請求項3記載の発明のように、型の裏面側に介在するエアーを脱気しつつ行うことが好ましい。このように構成することにより、成形品の形状が例えばバスタブのように凹部を有し、これを逆さにして温水中に浸漬する必要がある場合であっても、凹部内に発生するエアーが脱気されつつ加熱硬化されることから、エアーが介在することによる型の局所的な加熱ムラを防止できて、均一な加熱硬化が実現できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は、本発明に係わる加熱成形方法をバスタブに適用した場合を示し、図1が加熱成形方法の工程図、図2がその加熱成形型の一例を示す断面図、図3が試験結果の一例を示すグラフである。
【0014】
本発明に係わる加熱成形方法は、図2に示す加熱成形型1を使用して行う。すなわち、加熱成形型1は下型2と上型3を有し、下型2は第1のFRP層4と、第2のFRP層5と、両FRP層4、5間に介装された第1の補強材6と、第2のFRP層5の外面側に略格子状に設けられた第2の補強材7と、第1のFRP層4の表面側に形成されたゲルコート層9等で構成されている。また、上型3は、下型2と略同一構造に構成されるか、あるいは一般的な型構造で構成され、この下型2と上型3間に成形するバスタブ形状に対応したキャビティ8が形成されている。
【0015】
そして、この加熱成形型1を使用したバスタブの成形は、図1に示す工程によって行われる。以下、この加熱成形方法を図2と併せて説明する。先ず、前記加熱成形型1の下型2と上型3の成形面2a、3a側に離型処理(K101)を施し、下型2の成形面2aにクリアーのゲルコートを塗布した後に、これを硬化炉で硬化(K102)させてゲルコート層10aを形成する。また、上型3の成形面3aに白の隠蔽性のあるゲルコートを塗布した後に、これを硬化炉で硬化(K103)させてゲルコート層10bを形成する。なお、下型2及び上型3にゲルコート層10a、10bを形成する工程は、必ずしも必要ではなく、例えば型形状等によっては省略することもできる。
【0016】
下型2と上型3にゲルコート層10a、10bを形成したら、次に、下型2と上型3を型合わせし、シャコ万等の固定具11で下型2と上型3の複数箇所をクランプ(K104)する。これにより、下型2と上型3間に前記キャビティ8が形成される。この状態で、例えば上型3に設けた注入口12からコンパウンドをキャビティ8内に所定の圧力で注入(K105)する。このコンパウンドは、下記表1に示す樹脂、充填材、促進剤及び硬化剤等を適宜の重量比で配合した人工大理石用のコンパウンドで形成される。
【0017】
【表1】
【0018】
そして、コンパウンドが注入された加熱成形型1を、所定温度T1の温水13(加熱液)が収容された加熱液槽14内に上方から徐々に投入し、加熱成形型1全体を温水13中に完全に浸漬(K106)させる。この浸漬状態を所定時間t1維持することにより、加熱成形型1が加熱されてキャビティ8内のコンパウンドが加熱硬化される。この時、加熱成形型1が温水13中に完全に浸漬され、温水13が下型2や上型3の反成形面2b、3b(裏面)側となる外表面の全域に均等に接触することから、下型2及び上型3が加熱ムラなく均一に所定温度まで高速加熱される。
【0019】
また、加熱成形型1の温水13への浸漬時に、バスタブ表面の品質を維持するために下型3を下側にして浸漬させる必要があることから、下型3の第2のFRP層5の外面側で形成される凹部15の底部(上部)に、図2の二点鎖線で示すように、エアー16溜まりが発生し易い。そのため、下型2に、その先端が凹部15の底部側に位置し他端が加熱液槽14の上方に位置する脱気用ホース17を一体的に固定し、この脱気用ホース17の他端に脱気ポンプ18を接続する。
【0020】
そして、加熱成形型1の温水13への浸漬と略同時に脱気ポンプ18を作動させることにより、凹部15内のエアー16が脱気されつつコンパウンドが加熱硬化され、エアー16が介在することによる下型2の局所的な加熱ムラが防止されて、均一な加熱硬化が実現される。なお、この脱気工程は、成形品の形状がエアー16溜まりが発生しない形状の場合は、必ずしも必要ではない。
【0021】
加熱成形型1の温水13への浸漬でコンパウンドが加熱硬化されると、次に、この加熱成形型1を加熱液槽14から上方に引き上げ、例えば加熱液槽14に近接配置した冷却槽(図示せず)内の所定温度T2の冷却水(冷却液)中に所定時間t2浸漬(K107)させる。この冷却も、加熱成形型1全体が冷却水中に完全に浸漬されるため、加熱液と同様に、下型2や上型3の反成形面2b、3b全域に冷却水が均等に接触して、加熱成形型1の均一かつ高速冷却が可能になる。なお、この冷却工程は、冷却水への浸漬に限らず、例えば冷風冷却や自然冷却等の適宜の冷却方法を採用することができる。
【0022】
そして、加熱成形型1を冷却したら、固定具11を外して図2の矢印イの如く上型3を脱型し、成形品を下型2から離型(K108)させる。これにより、成形品としてのバスタブが成形される。
【0023】
【実施例】
次に、上記加熱成形方法の具体的な実施例について説明する。先ず、コンパウンドを下記表2に示す如く作成した。また、加熱成形型1を使用し、ゲルコート層10a、10bの厚みや硬化条件、温水13の温度T1と浸漬時間t1、冷却水の温度T2と浸漬時間t2を下記表3に示す如く設定して、バスタブを成形した。その結果、得られたバスタブには、成形クラック等の発生が全くなく、良好な品質状態が得られた。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
また、本発明に係わる温水加熱と従来の温風加熱による成形品の硬化特性について試験したところ、図3に示す結果が得られた。この試験は、190×190mmのテストピースを使用し、FRP6mmの型で9mmの厚み規制で行った。また、温水加熱は53℃の温水が収容された温水液槽を使用し、温風加熱は53℃に温度制御された蒸気硬化炉を使用した。その結果、温水加熱の場合は、最高発熱温度が61℃で最高発熱温度到達時間が32分となり、温風加熱の場合は、最高発熱温度が71℃で最高発熱温度到達時間が68分となって、特に最高発熱温度到達時間において、顕著な差が確認できた。
【0027】
このように、本発明に係わる加熱成形方法にあっては、少なくともFRP層4、5を有する下型2及び上型3からなる加熱成形型1を、加熱液槽14の温水13中に浸漬させてキャビティ8内のコンパウンドを加熱硬化させるため、温水13という加熱液を加熱成形型1の外面全域に均等に接触させることができて、均一加熱が可能になり、温度バラツキによる成形クラック等の発生を抑えることができると共に、昇温速度(時間)を図3に示すように、温風加熱より高速化することができるため、大きなサイクルアップが図れて、ハイサイクル成形が可能になる。
【0028】
また、加熱硬化後の加熱成形型1の冷却を、加熱硬化時と同様に冷却槽内の冷却水中に浸漬させて行うため、均一冷却が可能になって、より高品質の成形品が得られると共に、高速冷却が可能になって、より成形サイクルアップを図ることができる。さらに、バスタブのように凹部15を有し凹部15の開口を下方に向けて加熱液槽14に浸漬する必要がある場合でも、下型2に固定した脱気用ホース17でエアー16を脱気しつつ加熱硬化できるため、エアー16の介在による下型2の局所的な加熱ムラの発生を防止できて、均一な加熱硬化が可能になり、より高品質のバスタブ(成形品)を容易に得ることができる。
【0029】
さらにまた、加熱成形型1を熱容量の大きい温水13(加熱液)に浸漬させる方式であるため、加熱しすぎを吸収して、高温になりすぎることによるクラック等の発生を防止でき、より高品質の成形品を得ることができる。また、加熱硬化に加熱液槽14に収容された温水13を使用しているため、加熱のための設備が簡略化されて設備投資額を抑えることができると共に、温水13の温度管理が従来の温風等に比較して容易となって、その温度を所定範囲(例えば±1℃)に維持することができて、より均一加熱が可能になる。また、加熱液が温水13であることから、その使い勝手も簡単となって成形作業の作業性向上が図れる。これらのことは、冷却水を使用した冷却工程についても全く同様のことが言える。
【0030】
なお、本発明に係わる加熱液としては温水13に限らず、例えば温度が100℃以上ではシリコンオイルを使用する等、熱容量の大きな液体を使用し得るし、冷却液も冷却水に限らず、適宜の液体が使用される。また、本発明は、人工大理石製のバスタブに限らず、例えば浴室の洗面器置きカウンター、洗面室のボール付き洗面カウンター等の人工大理石製の各種成形品や、一般の樹脂成形品にも適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の発明によれば、少なくともFRP層を有する型のキャビティ内にコンパウンドを注入し、この型を加熱液槽内の所定温度の温水中に浸漬してコンパウンドを加熱硬化させるため、温水で型の温度が所定温度まで高速で昇温されて、ハイサイクル成形が可能になると共に、温水が型の形状に係わらずその全面に均等に接触して型全体が所定温度に均一加熱されて、温度バラツキによる成形クラック等の発生を確実に抑えることができる。
【0033】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、冷却工程が型を冷却槽内の所定温度の冷却水中に浸漬させることによって行うため、冷却水が型の全面に均等に接触して均一かつ高速冷却が可能となり、よりハイサイクルな成形を行うことができる。
【0034】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加え、加熱硬化工程が型の裏面側に介在するエアーを脱気しつつ行うため、成形品の形状が例えばバスタブのように凹部を有し、これを逆さにして温水中に浸漬させる場合であっても、凹部内に発生するエアーを脱気することができて、エアーが介在することによる型の局所的な加熱ムラを防止できて、均一な加熱硬化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる加熱成形方法を示す工程図
【図2】同その加熱成形型の一例を示す断面図
【図3】同試験結果の一例を示すグラフ
【符号の説明】
1・・・・・・・・・加熱成形型
2・・・・・・・・・下型
2a・・・・・・・・成形面
2b・・・・・・・・反成形面
3・・・・・・・・・上型
4・・・・・・・・・第1のFRP層
5・・・・・・・・・第2のFRP層
8・・・・・・・・・キャビティ
9、10・・・・・・ゲルコート層
13・・・・・・・・温水
14・・・・・・・・加熱液槽
15・・・・・・・・凹部
16・・・・・・・・エアー
17・・・・・・・・脱気用ホース
18・・・・・・・・脱気ポンプ
Claims (3)
- 少なくともFRP層を有する型を型合わせする型合わせ工程と、型合わせされた型の密閉されたキャビティ内に、熱硬化性樹脂に充填剤、促進剤及び硬化剤等を適宜の重量比で配合したコンパウンドを注入する注入工程と、コンパウンドが注入された型を加熱液槽内の所定温度の温水中に前記型全体を完全に浸漬させて前記コンパウンドを加熱硬化する加熱硬化工程と、加熱された型を加熱液槽から取り出して冷却する冷却工程と、を備えることを特徴とする加熱成形方法。
- 前記冷却工程は、型を冷却槽内の所定温度の冷却水中に浸漬させることによって行うことを特徴とする請求項1記載の加熱成形方法。
- 前記加熱硬化工程は、型の裏面側に介在するエアーを脱気しつつ行うことを特徴とする請求項1または2記載の加熱成形方法。
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