JP3564151B2 - 原子炉格納容器冷却系の注水装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、原子炉格納容器冷却系の注水装置に係わり、特に静的格納容器冷却系の冷却水プールで発生した蒸気を駆動源とする蒸気インジェクタを用いた注水装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
静的格納容器冷却系を用いた原子力プラントの原子炉格納容器は、例えば図14に示されるような構成のものが知られている。すなわち、図中、符号1は原子炉格納容器であり、この原子炉格納容器1の内部には、原子炉燃料である燃料集合体からなる炉心2を含む原子炉圧力容器3、サプレッションチェンバ4、および重力落下式の炉心注水系プール5等が設置され、上部には、図15ないし図17に示すように、静的格納容器冷却系の熱交換器6が浸されている冷却水プール7や使用済み燃料プール8が設置されている。
【0003】
前記冷却水プール7は、図17に斜線で示すように、互いに連通している多数の水槽からなり、そのうちのいくつかには、熱交換器6や隔離時復水器9が設置されている。
【0004】
静的格納容器冷却系は、冷却材喪失事故等が発生した場合、プラント運転員の操作やディーゼル発電機等の動的機器なしで原子炉格納容器1を冷却する安全系で、従来の設計では、事故発生後3日間は原子炉格納容器1の冷却を維持することができるようになっている。なお、その期間は、原子炉運転員の操作を全く必要としないウォークアウェイ期間あるいはグレースペリオドと呼ばれている。
【0005】
静的格納容器冷却系は、図14に示すように、冷却材喪失事故等により原子炉圧力容器3から原子炉格納容器1内に放出された蒸気を、冷却水プール7に浸されている熱交換器6で凝縮させ、凝縮水は、重力により炉心注水系プール5等に流れ込むように構成されている。したがって、冷却水プール7および熱交換器6は、炉心注水系プール5よりも上方に設置されている。また、冷却水プール水は、熱交換器6で凝縮される蒸気との熱交換によりやがて蒸発し、蒸気排出管10を通して大気に放出され、冷却水プールの水位が次第に減少していくことになる。このため、冷却水プール容積は、設定されたウォークアウェイ期間中、充分な熱交換が行われるように決定される。したがって、冷却水プール容積は、例えば、100万kW級の沸騰水型原子力プラントの場合、図17に斜線を施して示す部分の総面積は約800m2 で、図18に示すように水深7.0mとすると約5600m3 と極めて大きく、図16および図17に示すように、原子炉建屋上部の原子炉圧力容器3周りの空間の大部分を占めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のような静的格納容器冷却系を用いている従来の原子力プラントの原子炉建屋においては、冷却水プール容積が大きいため、原子炉建屋上部の重量が重く、コスト上および耐震設計上極めて不利となる。また、原子力プラントでは、法律で定められている定期検査があり、プラントの運転を停止した状態で、原子炉圧力容器3内から原子燃料を取出して新しいものと交換するとともに、取出した原子燃料は、原子炉格納容器1から出して使用済み燃料プール8に移動させなければならない。ところが従来の原子炉建屋においては、冷却水プール7が原子炉圧力容器3を囲むように配置されているため、使用済み燃料プール8を、原子炉圧力容器3上部から遠く離れた位置に設置せざるを得ず、原子燃料の交換作業に多くの人手と時間とを要し、定期検査日数が先行プラントの約1.5倍にも長くなり、結果として、原子力プラントを停止させる時間が長くなり、原子力プラントの保守性および稼動率の点で不利となる。
【0007】
また、従来の冷却水プール7の水は、冷却材喪失事故時等に、熱交換器6によって加熱されて沸騰蒸発し、蒸発した蒸気は蒸気排出管10を通して大気放出されるため、図19に示すように、事故後3日ないし4日で冷却水プール7の水位が下限水位である3.3mまで到達してしまう。この下限水位以下では、図18に示すように、熱交換器6の伝熱管が露出してしまうため、格納容器冷却能力が低下する。
【0008】
ところで、熱交換器6の伝熱管は、原子炉格納容器1の圧力バウンダリおよび放射能バウンダリを構成しており、高い信頼性が要求される。そして、万一伝熱管に亀裂が生じた場合には、複数基の熱交換器6のうちの当該基を、隔離弁で隔離する等の操作が必要となる。この操作をグレースペリオド中に運転員に要求することは、静的格納容器冷却系の設計思想である「グレースペリオド中に運転員に一切の操作を要求せず人に優しいプラント」に反し、伝熱管のリーク対策も必要となる。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたもので、冷却水プールの水位を長期に亘って一定以上に維持してグレースペリオドを延ばすことができ、また原子炉建屋上部に冷却水プールを設置するタイプの静的格納容器冷却系においては、冷却水プールの容積を縮小して耐震性を向上させることができるとともに、使用済み燃料プールを原子炉圧力容器上部の近くに設置してプラントの停止期間を短くすることができる原子炉格納容器冷却系の注水装置を提供するにある。
【0010】
本発明の他の目的は、熱交換器の伝熱管にリークが発生した場合であっても、隔離弁の操作等を行うことなく放射能放散を防止することができる原子炉格納容器冷却系の注水装置を提供するにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、装置設置位置の余裕を大きくすることができる原子炉格納容器冷却系の注水装置を提供するにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、静的格納容器冷却系を用いる原子炉格納容器冷却系において、蒸気源として用いられる静的格納容器冷却系熱交換器で加熱沸騰される冷却水プールと、この冷却水プールから発生する蒸気が供給される蒸気インジェクタと、原子炉格納容器外に設置され初期水位が蒸気インジェクタよりも上方に設定されているとともに前記蒸気インジェクタの水吸引側に接続された水源と、前記蒸気インジェクタの吐出側に接続され蒸気インジェクタにより吸引された前記水源からの水を前記冷却水プールに注入する注入ラインと、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項2に係る発明は、静的格納容器冷却系を用いる原子炉格納容器冷却系において、蒸気源として用いられる静的格納容器冷却系熱交換器で加熱沸騰される密閉型の冷却水プールと、この冷却水プールから発生する蒸気が供給される蒸気インジェクタと、前記蒸気インジェクタの吐出側と水吸引側とを冷却器を介して接続する循環ラインと、前記循環ラインの前記冷却器出口側位置と前記冷却水プールとを逆止弁を介して接続する注水ラインとを備え、前記冷却器は海水、河川水または湖水により冷却されることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、冷却水プールに加圧用逃がし弁を設置し、冷却水プールを加圧型としたことを特徴とする。
さらに、本発明の請求項4に係る発明は、複数台の蒸気インジェクタが並列に接続され、その蒸気インジェクタの作動する台数が冷却水プールの水位に応じて切り替えられることを特徴とする。
【0015】
【作用】
本発明の請求項1に係る発明においては、冷却水プールの補給水源が原子炉格納容器外に設置され、この水源からの冷却水の補給は、冷却水プールで発生した蒸気を駆動源とする蒸気インジェクタによってなされる。このため、運転員の操作や動的機器を要することなく冷却水を安定補給でき、グレースペリオドを延ばすことが可能となる。また、冷却水プールを原子炉建屋上部に設置するタイプの静的格納容器冷却系においては、原子炉建屋上部の重量が軽くなって耐震性を向上させることが可能となり、また冷却水プールの縮小化により使用済み燃料プールを原子炉圧力容器上部の近くに設置でき、プラントの停止期間を短くすることが可能となる。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る発明においては、蒸気インジェクタと熱交換器とが循環ラインで接続されるとともに、冷却水プールが密閉型となっているため、装置全体が閉ループとなっている。このため、万一熱交換器の伝熱管にリークが発生した場合であっても、隔離弁の操作等を要することなく、大気への放射能の放散を防止することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の請求項3に係る発明においては、冷却水プールが加圧型となっている。このため、冷却水プールで発生する蒸気圧および蒸気インジェクタの吐出圧が高まって装置の揚程が上昇し、レイアウト設計上の自由度を向上させることが可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を図面を参照して説明する。なお、前記従来の技術と同一構成部分については同一符号を付し、重複を避けるためその詳細な説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例に係る原子炉格納容器冷却系の注水装置を示すもので、図中、符号11は冷却水プールを蒸気源とする蒸気インジェクタであり、冷却水プール7で発生した蒸気は、ミストセパレータ12および蒸気供給管13を介して蒸気インジェクタ11の蒸気供給口に導かれるようになっている。
【0020】
蒸気供給管13には、蒸気供給弁14が設けられており、この蒸気供給弁14の入側には、冷却水プール7からの蒸気を導くベント管15、空気の逆流を防止するベント逆止弁16および温度検出器17がそれぞれ接続されている。そして、前記ベント管15により蒸気供給管13内の空気がベントされて蒸気が流入し、その温度上昇を温度検出器17が探知することにより、温度検出器17から蒸気インジェクタ11の起動信号が出力されて、後述する水供給弁21が開となるようになっている。
【0021】
原子炉格納容器1の外部には、冷却水プール7に注水するための水源18が設置されており、この水源18は、ストレーナ19および水供給管20を介して蒸気インジェクタ11の水供給口に接続され、水供給管20には、水供給弁21および圧力検知器22が設けられている。そして、圧力検知器22からの圧力高信号により、前記蒸気供給弁14が開となるようになっている。なお、前記水源18の初期水位は、蒸気インジェクタ11よりも上方に設定され、この水源18としては、原子力プラントに既設の純水タンクや複水貯蔵タンク等を共用することもできる。また、30℃以下の冷水が得られれば、海水、河川水、湖沼等水等の使用も可能である。
【0022】
蒸気インジェクタ11にはまた、吐出逆止弁23を有する注水管24が、冷却水プール7との間に接続されており、また蒸気インジェクタ11に接続された起動用ドレン管25は、起動用ドレン逆止弁26を介して起動用ドレン槽27に接続されている。
【0023】
なお、蒸気インジェクタ11の水平方向の位置が地上にある場合には、図2に示すように、起動用ドレン槽27を設けず、この起動用ドレン槽27に代えて排水溝28にドレンするようにしてもよく、これにより起動用ドレン槽27を省略することができる。
【0024】
ところで、蒸気インジェクタ11の作動原理および原子力プラントへの適用例については、例えば文献「日本機械学会第67期通常総会講演会、講演論文集」、Vol.B,NO.900−14,1990年、東京や、特開平2−253195号公報、特開平2−253196号公報あるいは特開平3−75593 号公報に示されているので、ここでは詳細な説明は省略し、以下図3を参照して簡単に説明する。
【0025】
図3は、例えば米国特許第4673335 号公報に示されている米国ヘリオス社製の「Helio PAC 」または「Helio JET 」(いずれも商品名)を示すもので、この蒸気インジェクタ11は、水吸引口32が接続されたケーシング31を備えており、このケーシング31には、蒸気供給口33および混合ノズル34が設けられ、混合ノズル34の出口側には、昇圧用のディフューザ35が接続されている。そして水吸引口32から水を供給した状態で、蒸気供給口33から蒸気が供給されると、蒸気が凝縮されながら混合ノズル34に流入し、水噴流を蒸気の超音速流で加速できるようになっている。
【0026】
なお、図1および図2において、符号29は、蒸気排出管10を介しミストセパレータ12に接続された蒸気排気搭である。
【0027】
次に、本実施例の作用について説明する。
【0028】
原子力プラントで冷却材喪失事故(LOCA)等が発生すると、静的格納容器冷却系が自動的に作動し、その熱交換器6において原子炉格納容器1内の蒸気が冷却水プール7との熱交換によって凝縮し、原子炉格納容器1内の圧力や温度の上昇が抑えられる。一方で、冷却水プール7の水は、熱交換器6との熱交換で温度上昇し、やがて蒸発する。
【0029】
発生した蒸気は、蒸気供給管13を通ってベント管15から放出されるが、温度検出器17がこの温度を検知すると、温度検出器17から出力される起動信号により水供給弁21が開となり、水源18の水が蒸気インジェクタ11に供給される。
【0030】
蒸気インジェクタ11に流入した水は、起動用ドレン管25、逆止弁26を介して、図1に示す起動用ドレン槽27あるいは図2に示す排水溝28に放出される。これにより、蒸気インジェクタ11内の水圧が上昇するので、この圧力上昇が圧力検知器22で検知され、圧力検知器22から出力される圧力高信号により、蒸気供給弁14が開となって蒸気インジェクタ11が起動される。また排水溝28の方が起動用ドレン槽27に比べ設置スペースが少なくてすむという利点がある。
【0031】
蒸気インジェクタ11が起動すると、その吐出圧の上昇による吐出逆止弁23が開となり、水源18からの水が注水管24を介して冷却水プール7に注水される。蒸気インジェクタ11の起動後は、蒸気インジェクタ11内部で発生する負圧のため、起動用ドレン逆止弁26が閉となる。
【0032】
なお、前記実施例においては、温度検出器17および圧力検知器22による温度および圧力の検出により蒸気インジェクタ11を起動する場合について説明したが、冷却水プール7の水が沸騰・蒸発すれば、冷却水プール7の水位が低下し始めるので、この水位低信号を用いて蒸気インジェクタ11を起動するようにしてもよい。
【0033】
図4は、静的格納容器冷却系を援用した100万KW級原子力プラントにおいて、冷却水プール7から発生する蒸気流量と冷却材喪失事故後の経過回数との関係を示したものである。
【0034】
図4からも明らかなように、冷却材喪失事故後、日数が経過するにつれて蒸気流量は次第に減少し、やがては初日の1/3〜1/4まで低下する。このため、原子炉格納容器冷却系の注水装置による注水流量は、この蒸気流量の減少に合わせて次第に減少させる必要がある。
【0035】
図5は、このような点を考慮してなされた本発明の第2実施例を示すもので、複数台の蒸気インジェクタ11を並列に接続し、その作動台数を、冷却水プール7の水位に応じて切換えるようにしたものである。
【0036】
すなわち、この方式は、図6に示すように、冷却水プール7の水位が上限に近付いたら蒸気インジェクタ11の作動台数を1台ずつ減少させ、逆に下限に近付いたら蒸気インジェクタ11の作動台数を1台ずつ増加させるようにするものである。
【0037】
例えは、蒸気インジェクタ11が1号機からN号機まである場合、1号機は水位L1 で起動、水位H1 で停止となり、また2号機は水位L2 で起動、水位H2 で停止となり、また3号機は水位L3 で起動、水位H3 で停止となり、さらにN号機は水位LN で起動、HN で停止となる。
【0038】
このように、起動・停止の信号を異なる水位レベルに設定することにより、万一起動しない蒸気インジェクタ11が存在したとしても、水位がさらに低下すると、必ず次の水位レベルが他の蒸気インジェクタ11が自動起動するので、作動台数を運転員が常に把握する必要がなくなる。
【0039】
図7は、前記作動台数切換方式を3台の蒸気インジェクタ11を用いてシステム構成した具体例を示すもので、図中、符号41は起動信号発生回路であり、この起動信号発生回路41は、入力される水位信号42に基づき、各蒸気インジェクタ11の起動・停止に対応する起動信号43が出力するようになっている。
【0040】
図8は、図7のシステムにおいて、冷却水プール7容積を従来の約25%に大幅削減した場合の、冷却材喪失事故後のプール水位変動を解析した結果を示すものである。
【0041】
従来の静的格納容器冷却系では、事故後グレースペリオドである3〜4日でプール水位が熱交換器6の伝熱管の頂部まで低下し、それ以後除熱特性が低下することになるが、図7のシステムにおいては、図8からも明らかなように、事故後15日経過しても未だ充分な水位が維持されることが判る。熱交換器6の伝熱管が露出しない水位が維持されれば、熱交換器6は沸騰熱伝達による充分な伝熱面積が確保されるので、伝熱性能が維持される。
【0042】
すなわち、原子炉建屋上部に設置される冷却水プール7の容積を従来の25%に減少させても、充分な水位と格納容器除熱特性を確保することができる。
【0043】
次に、前記解析の条件である冷却水プール7の底面積25%の根拠について説明する。従来の冷却水プール7は、お互いに連通している複数の水槽に分かれており、そのうちいくつかに熱交換器6が設置され、その他には熱交換器6は設置されていない。そして、熱交換器6の設置に必要な冷却水プール7の底面積は、全体のわずか25%である。したがって、前記解析では、この25%を用いているのである。
【0044】
図9は、斜線で示す冷却水プール7の底面積を25%に削減した例を示すもので、この例では、図17に示す従来のものに比較して600m2 もの床面積の余裕が生まれ、この余裕により、原子炉圧力容器3に隣接して使用済み燃料プール8を設置することが可能となる。この原子炉建屋の合理化により、原子炉建屋上部の重量が大幅に削減でき、耐震性を向上させることができるとともに、原子炉建屋の大幅なコストダウンが達成できる。
【0045】
また、原子炉運転後の定期検査においても、定期検査期間を以下のように大幅に短縮できる。すなわち、従来の静的格納容器冷却系を用いた原子力プラントにおいては、燃料集合体が1132体あり、炉心2から全燃料取出しに要する時間は約70日と見積られている。一方で、例えば燃料集合体数756の現行のBWRの場合、全燃料取出しに要する時間は約20日間である。したがって、本発明の注水装置を用いた場合は、燃料集合体数の増加を考慮しても約30日間で全燃料取出しが可能となり、約40日の工程短縮が可能となる。この結果、原子力プラントの運転を停止して行なう定期検査等で必要な工期を大幅に短縮でき、原子力プラントの保守性および稼働率を向上させることができる。
【0046】
図10は、本発明の第3実施例を示すもので、前記第1実施例における蒸気排出管10に冷却水プール加圧用逃し弁51を設置し、冷却水プール7を加圧型としたものである。そしてこれにより、冷却水プール7から発生する蒸気の圧力を約0.5MPa程度上昇させ、蒸気インジェクタ11への供給蒸気圧力を高めることが可能となり、蒸気インジェクタの吐出圧を水頭換算で50m以上とすることができる。すなわち、蒸気インジェクタ11は、蒸気インジェクタ11の設置位置から50m以上上方に位置する冷却水プール7に注水することが可能となる。このため、電力出力100万KW(1000MWe)を超える大型プラントに適用する際に有効である。
【0047】
図11は、本発明の第4実施例を示すもので、前記第1実施例における水源18に代え、海水61で冷却される海水冷却器62を用いて蒸気インジェクタ11を自己再循環型とし、かつ冷却水プール7を密閉型としたものである。
【0048】
すなわち、蒸気インジェクタ11の吐出側および水吸引口は、循環ライン63を介して海水冷却器62と接続されており、循環ライン63の海水冷却器62出側位置には、吐出水逃し弁64を介し注水管24が接続されている。そして、海水冷却器62で冷却された蒸気インジェクタ11の吐出水は、再び蒸気インジェクタ11の水吸引口に再注入されるとともに、一部は、吐出水逃し弁64を介して冷却水プール7に注水されるようになっている。
【0049】
これは、蒸気インジェクタ11の自己再循環機能を用いたもので、大気圧近傍の蒸気と水とを供給して起動し、圧力増幅された吐出水を冷却後、再び蒸気インジェクタ11の入口に戻すことにより、高い吐出圧力を得ることができる。冷却水プール7で発生した蒸気は、蒸気インジェクタ11により全量凝縮され、吐出水逃し弁64により、増加した凝縮水に相当する水が冷却水プール7に戻ることになる。
【0050】
なお、海水冷却器62の冷却水である海水61は、貝類や海藻等の海生物の付着を防止するため、導水弁65により事故時のみ導入され、海水冷却器62を水没させるようになっている。また、冷却水プール7で発生した蒸気中に含まれる水滴は、ミストセパレータ12により除去されて再び冷却水プール7に落下するようになっている。さらに、冷却水プール7内には、水供給管20の万一の破断に対するためにプール仕切板66が設置され、このプール仕切板66の堰効果により、冷却水プール7内の水が不用意に流出するのを防止している。
【0051】
このように、冷却水プール7で発生した蒸気がすべて凝縮されて冷却水プール7に還元されるため、静的格納容器冷却系の二次側の系統も大気と完全に隔離された閉ループとなる。このため、冷却材喪失時に原子炉圧力容器3から原子炉格納容器1内に放出される可能性のある放射性物質が、熱交換器6に生じた亀裂等を通じて万一冷却水プール7にリークしたような場合であっても、静的格納容器冷却系の注水装置の循環水内にトラップされるため、大気に放出される可能性はほとんどなく、原子力プラントの安全性をより一層向上させることができる。なお、海水冷却器62には、海水61に代えて河川水や湖沼水等を用いてもよい。
【0052】
図12は、本発明の第5実施例を示すもので、格納容器外壁を構成する金属製のウォータウォール71の外表面を、冷却水プール7の水で直接冷却する方式の静的格納容器冷却系に適用したものであり、この場合にも、熱交換器6を用いる場合と同様の効果が期待できる。
【0053】
図13は、本発明の第6実施例を示すもので、冷却水プール7からのスプレイ水により格納容器金属壁外表面を冷却する方式に適用したものであり、この場合にも、熱交換器6を用いる場合と同様の効果が期待できる。なお、図13中、符号81は蒸気発生器である。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に係る発明は、冷却水プールの補給水源を原子炉格納容器外に設置し、この水源からの冷却水を蒸気インジェクタを用いて補給するようにしているので、冷却水を安定して補給でき、グレースペリオドを延ばすことができる。また、冷却水プールを原子炉建屋上部に設置するタイプの静的格納容器冷却系においては、原子炉建屋上部の重量が軽くなって耐震性を向上させることができ、また冷却水プールの縮小化により使用済み燃料プールを原子炉圧力容器上部の近くに設置でき、プラント停止期間を大幅に短くすることができる。
【0055】
また、本発明の請求項2に係る発明は、装置全体が閉ループとなっているので、万一熱交換器の伝熱管にリークが発生した場合であっても、隔離弁の操作等を要することなく、大気への放射能の放散を防止することができる。
【0056】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、冷却水プールが加圧型となっているので、冷却水プールで発生する蒸気圧力および蒸気インジェクタの吐出圧を高めて装置の揚程を上昇させ、レイアウト設計上の自由度を向上させることができる。さらに、本発明の請求項4に係わる発明は、複数台の蒸気インジェクタが並列に接続され、その蒸気インジェクタの作動する台数が冷却水プールの水位に応じて切り替えられるようになっているので、冷却水プール内に設置された静的格納容器冷却系の熱交換器の伝熱管が露出しない水位を自動的に維持することができ、熱交換効率の維持と伝熱管の破損事故を予防することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る原子炉格納容器冷却系の注水装置を示す構成図。
【図2】蒸気インジェクタを地上に配置した場合のシステム構成を示す図1相当図。
【図3】蒸気インジェクタの一例を示す断面図。
【図4】冷却材喪失事故後の冷却水プールからの発生蒸気流量の経時変化を示すグラフ。
【図5】本発明の第2実施例を示す系統図。
【図6】冷却水プールの水位変化に応じて蒸気インジェクタを起動・停止させるための水位信号を示す説明図。
【図7】蒸気インジェクタを3台設置した場合のシステム構成を示す系統図。
【図8】図7の装置の効果を示すグラフ。
【図9】冷却水プールの底面積を25%に削減した場合の配置を示す原子炉建屋平面図。
【図10】本発明の第3実施例を示す構成図。
【図11】本発明の第4実施例を示す構成図。
【図12】本発明の第5実施例を示す構成図。
【図13】本発明の第6実施例を示す構成図。
【図14】従来の静的格納容器冷却系を示す構成図。
【図15】図14の冷却水プール部分の拡大図。
【図16】従来の静的格納容器冷却系を用いた原子力プラントを示す原子炉建屋断面図。
【図17】図16の平断面図。
【図18】従来の静的格納容器冷却系の総底面積と水位とから決まる総水量を示す説明図。
【図19】従来の静的格納容器冷却系の冷却材喪失事故後の冷却水プール水位の経時変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1 原子炉格納容器
3 原子炉圧力容器
6 熱交換器
7 冷却水プール
8 使用済み燃料プール
11 蒸気インジェクタ
13 蒸気供給管
18 水源
23 吐出逆止弁
24 注水管
62 海水冷却器
63 循環ライン
64 吐出水逃し弁
Claims (4)
- 静的格納容器冷却系を用いる原子炉格納容器冷却系において、蒸気源として用いられる静的格納容器冷却系熱交換器で加熱沸騰される冷却水プールと、この冷却水プールから発生する蒸気が供給される蒸気インジェクタと、原子炉格納容器外に設置され初期水位が蒸気インジェクタよりも上方に設定されているとともに前記蒸気インジェクタの水吸引側に接続された水源と、前記蒸気インジェクタの吐出側に接続され蒸気インジェクタにより吸引された前記水源からの水を前記冷却水プールに注入する注入ラインと、を具備することを特徴とする原子炉格納容器冷却系の注水装置。
- 静的格納容器冷却系を用いる原子炉格納容器冷却系において、蒸気源として用いられる静的格納容器冷却系熱交換器で加熱沸騰される密閉型の冷却水プールと、この冷却水プールから発生する蒸気が供給される蒸気インジェクタと、前記蒸気インジェクタの吐出側と水吸引側とを冷却器を介して接続する循環ラインと、前記循環ラインの前記冷却器出口側位置と前記冷却水プールとを逆止弁を介して接続する注水ラインとを備え、前記冷却器は海水、河川水または湖水により冷却されることを特徴とする原子炉格納容器冷却系の注水装置。
- 冷却水プールに加圧用逃がし弁を設置し、冷却水プールを加圧型としたことを特徴とする請求項1または2記載の原子炉格納容器冷却系の注水装置。
- 複数台の蒸気インジェクタが並列に接続され、その蒸気インジェクタの作動する台数が冷却水プールの水位に応じて切り替えられることを特徴とする請求項1または2記載の原子炉格納容器冷却系の注水装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP20527693A JP3564151B2 (ja) | 1993-08-19 | 1993-08-19 | 原子炉格納容器冷却系の注水装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP20527693A JP3564151B2 (ja) | 1993-08-19 | 1993-08-19 | 原子炉格納容器冷却系の注水装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH0755978A JPH0755978A (ja) | 1995-03-03 |
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-
1993
- 1993-08-19 JP JP20527693A patent/JP3564151B2/ja not_active Expired - Lifetime
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