JP3563981B2 - 床構成体及びその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床構成体及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近では、床材において床下地材と床仕上げ材とを積層する際に、エポキシ接着剤や酢酸ビニル樹脂系接着剤のように硬化皮膜の硬い接着剤ばかりでなく、変成シリコーン系接着剤のように硬化被膜が、ゴム弾性を有する柔軟な接着剤が用いられている。このようなゴム弾性を有する柔軟な接着剤を用いることによって、従来から問題となっていた床鳴りを防止することができる。
この床鳴りとは、人などの歩行によって床材を踏みしめたときに、床材から発生する音をいう。
【0003】
しかしながら、上記硬化被膜が柔軟な接着剤を使用して、例えば、床暖房仕様の床材等を接着すると、冬場に床仕上げ材が収縮して目隙が生じるという問題点があるため、硬化皮膜の硬い接着剤が用いられている。
【0004】
しかしながら、上記硬化皮膜の硬い接着剤を用いた場合は、線膨張率の違いによって応力の発生や応力集中が起こり、床を構成する部材に亀裂や破壊が起こることがあり、それによって、床鳴りが発生するという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、床材と床暖房ユニットとの接着や、床下地材と床仕上げ材との接着等に変成シリコーン系接着剤を使用しても、床材の収縮による目隙が起こらないため、床鳴りが発生しない床構成体及びその施工方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の床構成体は、床材と温水パイプとして架橋ポリエチレン管を使用した床暖房ユニットとが変成シリコーン系接着剤によって積層されており、2価の有機カルボン酸錫又は、下記一般式(1)若しくは下記一般式(2)からなるシラノール硬化触媒が前記変成シリコーン系接着剤に含有されていることを特徴とする。
(X)2 Sn(OSiY3 )2 (1)
(OSiY3 )(X)2 SnOSn(X)2 (OSiY3 ) (2)
(式中、Xは1価の炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示す)
【0007】
本発明において用いられる変成シリコーン系接着剤は、変成シリコーンポリマーに各種添加剤を加えた接着剤である。変成シリコーンポリマーとしては、主鎖がポリオキシアルキレンであり、末端に架橋可能な加水分解性シリル基を有するものが用いられる。
【0008】
上記変成シリコーンポリマーは、例えば、VIII族遷移金属の存在下で、末端にアリル基を有するポリオキシアルキレンを下記一般式(3)で表される水素化ケイ素化合物と反応させることによって得ることができる。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、Rは、1価の炭化水素基又はハロゲン化された1価の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基又はケトキシメート基を示し、aは0、1又は2を示す。
【0011】
上記変成シリコーンポリマーの主鎖であるポリオキシアルキレンとしては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等が挙げられるが、現在はポリオキシプロピレンであるものが一般に市販されている。
上記架橋可能な加水分解性シリル基としては、例えば、メトキシシリル基が好ましい。
【0012】
上記変成シリコーンポリマーの分子量は、4,000〜30,000が好ましく、より好ましくは10,000〜30,000である。分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は1.6以下が好ましい。
【0013】
上記変成シリコーンポリマーの市販品としては、主鎖がポリオキシプロピレンのものであり、例えば、鐘淵化学工業社製「MS−ポリマーS−203」、「MS−ポリマーS−303」、「MS−ポリマーS−903」等のMS−ポリマー;「サイリルSAT−200」、「サイリルMA−430」、「サイリルMAX−447」、「サイリルSAT−350」、「サイリルSAT−400」等のサイリルポリマー;旭硝子社製「エクセスターESS−3620」、「エクセスターESS−3430」、「エクセスターESS−2420」、「エクセスターESS−2410」などが挙げられる。これらの変成シリコーンポリマーは、単独で使用されてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0014】
上記変成シリコーンポリマーには、必要に応じて硬化触媒が添加されてもよい。
上記硬化触媒は、上記変成シリコーンポリマーの湿気硬化反応を促進するために使用されるものであり、従来より変成シリコーンポリマーの硬化触媒として使用されているシラノール縮合触媒が好適である。
【0015】
上記シラノール縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド(例えば、三共有機合成社製、商品名「SB−65」)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩;その他の酸性触媒や塩基性触媒が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
上記硬化触媒の量は、上記変成シリコーンポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲が好ましい。
【0017】
また、硬化性を高めるための硬化助触媒としては、シラン化合物やアミン化合物が挙げられ、例えば、ケトオキシムシラン;アルコキシシラン;アミノキシシラン、アミドシランのようなアミノ基置換アルコキシシラン;ラウリルアミン又はそれらの誘導体などが、硬化触媒と併用されてもよい。
【0018】
ただし、床暖房の温水ユニットの温水パイプとして架橋ポリエチレン管を使用する場合には、使用する硬化触媒に注意を要する。すなわち、温水ユニットの構成しだいでは、変成シリコーン系接着剤が架橋ポリエチレン管に付着することがあり、これにより架橋ポリエチレン管が熱劣化を起こすことがある。
そこで、架橋ポリエチレン管の熱劣化を防止するために、2価の有機カルボン酸錫、下記一般式(1)若しくは下記一般式(2)からなるシラノール硬化触媒が変成シリコーン系接着剤に含有されている。
(X)2 Sn(OSiY3 )2 (1)
(OSiY3 )(X)2 SnOSn(X)2 (OSiY3 ) (2)
式中、Xは1価の炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示す。
なお、Xはブチル基、オクチル基又はステアリル基が好ましく、Yはメトキシ基、エトキシ基又はブトキシ基が好ましい。
【0019】
上記2価の有機カルボン酸錫としては、ステアリン酸錫、スタナスオクトエート等が挙げられる。
上記一般式(1)、又は一般式(2)で表される硬化触媒としては、例えばジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ビスメトキシシリケート等が挙げられる。
上記シラノール硬化触媒の添加量としては、0.1〜10重量部であることが好ましい。0.1重量部未満であると、触媒としての働きが充分でないことがあり、10重量部を越えると、硬化速度が作業に適した速度よりも速くなることがある。
【0020】
また、床暖房の熱がこもってユニット周辺が高温状態になる場合があり、これにより変成シリコーン接着剤が熱劣化することもある。
変成シリコーン接着剤の熱劣化を防止方法するためには、変成シリコーンポリマー100重量部に対して、酸化防止剤0.5〜10重量部が変成シリコーン系接着剤に含有されていることが好ましい。
上記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等が挙げられる。
上記酸化防止剤の添加量としては、0.5〜10重量部であることが好ましい。0.5重量部未満であると、熱劣化低減効果が小さく、10重量部を越えると、添加量を増やしても熱劣化低減効果の著しい向上が見られなくなる。
【0021】
また、床暖房ユニットが高温状態になると接着剤が熱劣化するとして、変成シリコーンポリマー100重量部に対して、ヒンダードフェノール0.5〜10重量部とヒンダートアミン0.5〜10重量部とベンゾトリアゾール0.5〜10重量部とからなる3種混合物からなる酸化防止剤を添加することがより好ましい。
上記ヒンダードフェノール、ヒンダートアミン、ベンゾトリアゾールの添加量としては、0.5〜10重量部であることが好ましい。
0.5重量部未満であると、熱劣化低減効果が小さく、10重量部を越えると、添加量を増やしても熱劣化低減効果の著しい向上が見られなくなる。
上記変成シリコーンポリマーには、必要に応じて、接着性付与剤、脱水剤、充填剤、可塑剤、たれ防止剤等が添加されてもよい。
【0022】
上記接着性付与剤としては、接着性能向上のために、1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物が用いられる。
上記化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕アミン、N,N−ビス−〔3−(メチルジメトキシシリル)プロピル〕アミン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0023】
上記脱水剤は、保存時において変成シリコーン系接着剤への浸入水分を除去するために用いられる。脱水剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のシラン化合物類;オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等の加水分解性エステル化合物類が挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記充填剤は、変成シリコーン系接着剤の補強を目的として使用され、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、微粉末シリカ、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、タルク、カーボンブラック、ガラスバルーンなどが挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記可塑剤は、変成シリコーン系接着剤硬化物の伸びを高めるために用いられる。可塑剤としては、例えば、燐酸トリブチル、燐酸トリクレジル等の燐酸エステル類;フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;グリセリンモノオレイン酸エステル等の脂肪酸一塩基酸エステル類;アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル等の脂肪酸二塩基酸エステル類;及びポリプロピレングリコールなどが挙げられ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記たれ防止剤としては、例えば、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0027】
上記変成シリコーン系接着剤には、更に必要に応じて、老化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、香料、溶剤(例えば、キシレン)等が添加されてもよい。
【0028】
また、上記変成シリコーン系接着剤は、変成シリコーンポリマー、硬化触媒、及び、必要に応じて、硬化助触媒、接着性付与剤、脱水剤、可塑剤、タレ防止剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、香料、溶剤等を所定量配合し、ロール、プラネタリーミキサー等により混練することによって得られる。
【0029】
上記変成シリコーン系接着剤は、1液型、2液型のいずれの処方も可能であるが、施工が簡便な点から1液型の方が好ましい。
【0030】
上記変成シリコーン系接着剤は、1液型とした場合、空気中の湿気と接触することにより硬化が起こるので、1液型の充填容器としては、湿気による硬化反応の進行を防ぐために該接着剤を外気より遮断、密閉できるものが必要であり、例えば、シーリング材分野で従来より用いられている各種タイプのカートリッジ容器、フィルム容器を使用することができる。
【0031】
上記変成シリコーン系接着剤の硬化物は、ある程度高い弾性率を有することが好ましい。高弾性率化によって、線膨張率差による内部応力の発生を防ぎ、接着性、耐熱性、耐水性、耐久性等に優れたものを得ることができる。
【0032】
上記高弾性率化する方法としては、例えば、(a)変成シリコーンポリマー中の架橋点の数を増やす、(b)高弾性率化するための充填剤を添加する、(c)エポキシ樹脂やアクリル化合物を添加する、(d)高弾性率化するシランカップリング剤を利用する、等が挙げられる。
【0033】
上記(a)の方法では、変成シリコーンポリマーとして、鐘淵化学社製「サイリルSAT−350」、「サイリルSAT−400」や、旭硝子社製「エクセスターESS−3630」等を用いることが好ましい。
【0034】
上記(b)の方法では、高弾性率化する充填剤として、例えば、各種のウイスカー、セメント、シリカ等を用いることが好ましい。また、高耐久性を発現させるためにエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0035】
上記変成シリコーン系接着剤の好ましい配合例としては、例えば、主鎖がポリオキシプロピレンであり、末端に架橋可能な加水分解性シリル基を有し、数平均分子量が6,000〜30,000である変成シリコーンポリマー100重量部に対して、1分子中にアミノ基及びアルコキシシリル基を有する化合物0.2〜20重量部、シラノール縮合化合物0.1〜10重量部及びセメント10〜200重量部である。
【0036】
また、上記変成シリコーン系接着剤は、JIS K6301(加硫ゴム物理試験方法、3号ダンベル使用)に準拠して測定される引張試験において、硬化物の破断時における、引張強度が15kg/cm2 以上、伸びが100%以上であり、かつ、永久伸びが50%以下であることが好ましい。
引張強度が15kg/cm2 未満では床材に目隙を生じることがあり、伸びが100%未満、永久伸びが50%を超えると床鳴りを起こすことがある。
【0037】
上記変成シリコーン系接着剤の粘度は、ブルックフィールド粘度計により、ローターNO.6を使用して、回転数10rpmで測定される値として、5万〜60万MPaが好ましい。粘度が、5万MPa未満では塗布量が多く必要になり、60万MPaを超えると作業性が悪くなる。
【0038】
上記変成シリコーン系接着剤のチキソトロピー性は、ブルックフィールド粘度計において、回転数1rpmで測定される粘度と回転数10rpmとで測定される粘度との粘度比(1rpm粘度/10rpm粘度)で表され、この粘度比が3未満では施工時に十分な接着面積が確保できなくなることがあるので、3以上であることが好ましい。
【0039】
本発明の床構成体は、床材と床暖房ユニットとを上記変成シリコーン系接着剤を用いて接着することにより得られる。この床構成体を施工する際には、例えば、床暖房ユニット上に変成シリコーン系接着剤を塗布し、その上に床材を重ね合わせて接着する。接着剤は、通常、ノズルが装着されたカートリッジ容器に充填されており、使用時にはカートリッジ容器に圧力を加えてノズルの先から押出しながら塗布する方法が一般的に採用されている。
【0040】
上記カートリッジ容器に装着されたノズルには、通常、1個の吐出口が設けられており、1回の塗布によって1本のビード状に塗布することができる。
また、複数の吐出口が設けられたノズルを使用することによって、1回の塗布によって複数のビード状に塗布することが可能となる。
さらに、本発明の床構成体における床材は、床仕上げ材と床下地材とが変成シリコーン系接着剤により接着されたものであってもよく、該接着の際に上記塗布方法が適用されてもよい。従って、図3(イ)に示すように、床下地材上及びさね部に同時に塗布することができる。
【0041】
上記床仕上げ材としては、例えば、合板、MDF等の木質フローリング、タイル、塩化ビニルシート、石材等が用いられる。また、上記床下地材としては、例えば、合板、木根太、石膏ボード、スレート板、コンクリート等が用いられる。
【0042】
本発明の床構成体においては、床仕上げ材と床下地材との間に床暖房ユニットが挟持されたものであってもよいし、床下地材として、暖房用エレメントが針葉樹合板やラワン合板によってパネル化された床暖房ユニットが用いられてもよいし、床下地材の下面に床暖房ユニットが積層されてもよい。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例および比較例を示す。
(実施例1)
変成シリコーンポリマー(鐘淵化学社製、商品名「サイリルSAT−400」、数平均分子量2万)100重量部、充填剤としてコロイダル炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名「CCR」)90重量部、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「サイラエース S210」)4重量部、N−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−602」)3重量部と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1重量部との反応物、ならびに、ポルトランドセメント20重量部を配合し、プラネタリーミキサーで約60分間真空混練して変成シリコーン系接着剤(A)を得た後、紙カートリッジ容器に密封充填した。
【0044】
上記接着剤(A)について、以下の評価を行い、その結果を表1に示した。
(1)伸び
JIS K6301に準拠して、3号ダンベルにて引張試験を行い、硬化物の破断時における伸びを測定した。
(2)永久伸び
JIS K6301に準拠して、3号ダンベルにて引張試験を行い、硬化物の破断時における永久伸びを測定した。
(3)粘度
ブルックフィールド粘度計(ローターNO.6使用)を使用して、23℃、回転数10rpmにおける粘度を測定した。
(4)チキソトロピー性
ブルックフィールド粘度計(ローターNO.6使用)を使用して、23℃、回転数1rpm及び回転数10rpmにおける粘度をそれぞれ測定し、その粘度比(1rpm粘度/10rpm粘度)を求めた。
【0045】
(5)目隙試験
60℃で1週間乾燥した針葉樹合板(20mm厚×300mm×600mm)の短手方向に、図1(イ)に示したように、接着剤(A)を4本の6mm幅ビード状に塗布した後、針葉樹合板上に2枚のフロア材(300mm角)を積層し、試験体を作製した。この試験体を、20℃、65%RHで2週間養生した後、図1(ロ)に示したように、各フロア材の4隅部に釘打ちを行ってフロア材を固定した後、60℃で1週間加熱し、2枚のフロア材間に生じた目隙幅を測定した。
【0046】
(6)床鳴り試験
床仕上げ材であるフロア材(永大産業製、12mm厚×303mm×450mm、←→は繊維方向を示す)及び床下地材である20mm厚の床暖パネル(針葉樹合板、20mm厚×400mm×500mm、←→は繊維方向を示す)を使用し、図2(イ)に示したように、床下地材上の短手方向に303mm間隔(中心振り分け)となるように接着剤(A)を2本の6mm幅ビード状に塗布した後、その上に床仕上げ材を積層し、一旦圧力を加えて接着剤(A)を押し広げた後、床仕上げ材の中央部に10kgのおもりを載せて圧締し、試験体を作製した。
この試験体を20℃、65%RHで2週間養生した後、図2(ロ)に示したように、フロア材を2点で支持し中心部に500mm/分の曲げ応力を加えて、3mmの変位を与えたときに、床鳴りを起こさなかったものを○、床鳴りを起こしたものを×、と表示した。
【0047】
(比較例1)
積水化学工業社製「セキスイ変成シリコーンシーラントLM」を使用して、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
(比較例2)
積水化学工業社製酢酸ビニル溶剤型接着剤「セキスイボンド木レンガ用」を使用して、実施例1と同様の試験を行い、その結果を表1に示した。
【0049】
(実施例2)
変成シリコーンポリマー(旭硝子社製、商品名「エクセスターESS3630」、数平均分子量2万)100重量部、酸化防止剤(吉富製薬社製、商品名「トミノックスTT」)2重量部、可塑剤としてジオクチルフタレート(積水化学工業社製)40重量部、充填剤としてコロイダル炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名「CCR」)130重量部、ならびに、脱水剤としてビニルトリメトキシシラン(チッソ社製、商品名「サイラエース S210」)4重量部及びN−(2−アミノメチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、商品名「KBM−603」)2重量部を配合し、プラネタリーミキサーで約60分間真空混練して変成シリコーン系接着剤(B)を得た後、紙カートリッジ容器に密封充填した。次いで、紙カートリッジ容器に4個の吐出口を有する4穴ノズルを装着した後、図3(イ)に示したように、接着剤(B)を床下地材及びさね部に4本の2mm幅ビード状に塗布し、図3(ロ)に示したように、その上に仕上げ材を接着し、床材試験体を得た。尚、1回の塗布によって、床下地材及びさね部にも接着剤(B)を同時に塗布することができた。
【0050】
(比較例3)
1個の吐出口を有する1穴ノズルを用いて、実施例1の接着剤(B)を6mm幅ビード状に塗布したこと以外は、実施例2と同様にして床材試験体を得た。
尚、床下地材とさね部に接着剤(B)を同時に塗布することができなかった。
【0051】
上記実施例2及び比較例3の試験体について、上記(5)と同様の目隙試験を行い、その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
(実施例3)
変成シリコーンポリマー100重量部に対して、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート2重量部を添加して変成シリコーン系接着剤を調整したこと以外は、実施例1と同様にして床構成体を作製した。
【0054】
(実施例4)
変成シリコーンポリマー100重量部に対して、スタナスオクトエート2重量部を添加して変成シリコーン系接着剤を調整したこと以外は、実施例1と同様にして床構成体を作製した。
【0055】
(実施例5)
変成シリコーンポリマー100重量部に対して、酸化防止剤(商品名 スミライザーBP101)5重量部を添加して変成シリコーン系接着剤を調整したこと以外は、実施例1と同様にして床構成体を作製した。
【0056】
(実施例6)
変成シリコーンポリマー100重量部に対して、酸化防止剤(商品名 スミライザーBP101)2重量部、酸化防止剤(商品名 サノールLS770)2重量部、酸化防止剤(商品名 チヌビン327)2重量部を添加して変成シリコーン系接着剤を調整したこと以外は、実施例1と同様にして床構成体を作製した。
【0057】
(架橋ポリエチレン管の劣化試験)
架橋ポリエチレン管(商品名「エスロペックス」、積水化学社製)に変成シリコーン接着剤を塗布し、20℃、65%RHで1週間かけて硬化させた後、140℃のオーブンで800時間加熱処理した後、劣化状態を官能評価した。
評価基準
○ 異常なし
× 脆くなり簡単に管が破れた
上記実施例3〜5及び比較例1の試験体について、架橋ポリエチレン管の劣化試験を行い、官能評価結果を表2にまとめた。
【0058】
【表2】
【0059】
(接着剤の劣化試験)
変成シリコーン接着剤を20℃、65%RHで1週間かけて硬化させて厚さ3mmのシート状硬化物とした。
この硬化物を140℃のオーブンで加熱処理をした後、劣化状態を官能評価した。
評価基準
○ 異常なし
× もろくなり、触ると崩れた
×× クラック多数発生。重量減少大きい。
上記実施例5、6及び比較例1の硬化物について劣化試験を行い、官能評価結果を表3にまとめた。
【0060】
【表3】
【0061】
【発明の効果】
本発明の床材は前述した通りであり、変成シリコーン系接着剤を用いて床暖房ユニットに床材を施工しても、線膨張率の違いによる応力の発生や応力集中がなく、床材の収縮による目隙が起こらないため、床鳴りを防止することができる。
なお、複数の吐出口を有するノズルを使用して、変成シリコーン系接着剤を塗布することによって、1回の塗布によって複数のビード状に塗布できるので、床材の収縮による目隙が抑制されるので、床鳴りを防止することができる。
さらに、床暖房の温水ユニットの温水パイプとして架橋ポリエチレン管を使用する場合に、特定の硬化触媒と酸化防止剤を単独又は併用して使用することにより、変成シリコーン系接着剤が架橋ポリエチレン管に付着しても架橋ポリエチレン管が熱劣化を起こさない。
さらに、特定の酸化防止剤を併用して使用することにより、床構成体に使用された変成シリコーン系接着剤が高温状態に曝されても熱劣化を起こさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(イ)は、目隙試験用試験体において、針葉樹合板(床下地材)上に変成シリコーン系接着剤をビード状に塗布した状態を示す模式図であり、図1(ロ)は、針葉樹合板(床下地材)上にフロア材(床仕上げ材)を固定した状態を示す模式図である。
【図2】図2(イ)は、床鳴り試験用試験体において、針葉樹合板(床下地材)上にフロア材(床仕上げ材)を変成シリコーン系接着剤を用いて積層する状態を示す模式図であり、図2(ロ)は、針葉樹合板(床下地材)上にフロア材(床仕上げ材)を積層した状態を示す模式図である。
【図3】図3(イ)は、4個の吐出口を有するノズルを使用して、変成シリコーン系接着剤をビード状に塗布した状態を示す模式図であり、図3(ロ)は、床下地材上にフロア材を接着により積層した状態を示す模式図である。
Claims (9)
- 床材と温水パイプとして架橋ポリエチレン管を使用した床暖房ユニットとが変成シリコーン系接着剤によって接着されている床構成体であって、下記一般式(1)若しくは下記一般式(2)からなるシラノール硬化触媒が前記変成シリコーン系接着剤に含有されていることを特徴とする床構成体。
(X)2 Sn(OSiY3 )2 (1)
(OSiY3 )(X)2 SnOSn(X)2 (OSiY3 ) (2)
(式中、Xは1価の炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示す) - 床材と温水パイプとして架橋ポリエチレン管を使用した床暖房ユニットとが変成シリコーン系接着剤によって接着されている床構成体であって、2価の有機カルボン酸錫からなるシラノール硬化触媒が前記変成シリコーン系接着剤に含有されていることを特徴とする床構成体。
- 変成シリコーン系接着剤として、JIS K6301に準拠した測定方法により、硬化物の接着強度が15kg/cm2 以上、伸びが100%以上であり、かつ永久伸びが50%以下の値を示すものを用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の床構成体。
- 床材は、床下地材と床仕上げ材とが変成シリコーン系接着剤によって接着されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の床構成体。
- 変成シリコーン系接着剤を用いて施工する際に、複数の吐出口を有するノズルから変成シリコーン系接着剤をビード状に塗布することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床構成体の施工方法。
- 変成シリコーン系接着剤として、変成シリコーンポリマー100重量部に対して、2価の有機カルボン酸錫、下記一般式(1)若しくは下記一般式(2)からなるシラノール硬化触媒が0.1〜10重量部配合されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の床構成体。
(X) 2 Sn(OSiY 3 ) 2 (1)
( OSiY 3 )(X) 2 SnOSn(X) 2 (OSiY 3 ) (2)
(式中、Xは1価の炭化水素基を示し、Yはアルコキシ基を示す) - 変成シリコーンポリマー100重量部に対して、酸化防止剤0.5〜10重量部が変成シリコーン系接着剤に含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項又は請求項6に記載の床構成体。
- 変成シリコーンポリマー100重量部に対して、ヒンダードフェノール0.5〜10重量部とヒンダートアミン0.5〜10重量部とベンゾトリアゾール0.5〜10重量部とからなる3種混合物からなる酸化防止剤が変成シリコーン系接着剤に含有されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項又は請求項6もしくは7に記載の床構成体。
- 変成シリコーン系接着剤が1液型であることを特徴とする請求項5に記載の床構成体の施工方法。
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