JP3563462B2 - 活性空気による乾式洗浄方法とその装置、および除電方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、精密部品,電子部品などの洗浄物表面に付着する微粒子、特に静電気に基因して付着するごみ,けばなどを除去する乾式洗浄方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体(IC,LSI等)装置,磁気ディスク(CD),カラー液晶などの製品は、極めて微細な塵埃の混入をも許されない厳密な条件の超クリーンな清浄雰囲気中で製造され、また、半導体装置の材料であるウェハー,CDの材料であるアルミ板,カラー液晶材料であるガラス板などの部品は、製造ラインへの導入に先立って高度に洗浄される。精密機械,機器類の製造工程において、部品の洗浄処理は極めて重要なプロセスの一つである。
【0003】
LSI製造工程におけるSiウェハーの洗浄には、Siウェハー自体の製造時の仕上げ洗浄、ウェハーメーカーからSiウェハーを購入後、LSI製造時の前処理洗浄,LSI製造時の各工程における洗浄の3つの場合がある。
【0004】
洗浄とは、いうまでもなく、洗い清めて被洗浄物に付着したり、表面で生成した汚れを取り除き、被洗浄物そのものの本来の清浄な表面状態にすることである。
【0005】
一般に汚染物質は、次のような機構のいずれか、又はこれらの複合した力でSiウェハーなどの被洗浄物に付着しているものと考えられる。すなわち、
(1)ファンデルワールス力による物理吸着、
(2)クローン力のような電気的な力、
(3)化学反応による化学吸着、
(4)機械的な引っ掛り、
これら4つの機構のうち、化学吸着による汚染は、機械的洗浄だけでは汚染物の除去は困難であり、化学洗浄が不可欠になる。その他の機構による汚染については機械的洗浄か、または化学洗浄を併用した物理洗浄でより容易に除去できる。
【0006】
従来、これら部品の洗浄処理には専らフロン(R−113)が活用されていたが、フロンの使用が禁止されるようになり、現在その代替が進行中である。フロン代替洗浄剤としては、水系,準水系,溶剤系の3つに分類される。それぞれの系にはそれなりの長所があり、短所があるが、化学成分が含まれる洗浄液はいずれにしても望ましくない。この点、水、特に純水,超純水は安全であるといえる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように洗浄は、これを大きく分けて付着汚染物を機械的に除去する物理洗浄と、溶解して除去する化学洗浄との2つに大別される。水、特に超純水はそれ自体でかなり優れた洗浄能をもつもので、超純水を用いた機械的な洗浄は半導体製造工程では重要な洗浄方法である。
【0008】
超純水洗浄における主要な課題は、(1)理論純水に近い高純度の超純水をいかに経済的に製造するかということ、(2)いかに効率よく洗浄し、乾燥するか、(3)超純水の洗浄能力をいかに上げるかということ、などであるといわれている。特に(2)及び(3)については、高温純水に注目が払われている。超純水を昇温すれば表面張力が低下し、水分子および付着物の分子運動を活発にすることによって洗浄能力を上げることができる。しかし、この方法は耐熱性のないものには適用できない(おもしろい水のはなし,久保田 昌治 日刊工業新聞社1994年 p115〜132参照)。しかも、洗浄水を用いる限り、洗浄の後処理に乾燥工程が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、活性化された空気を用いて常温乾式で高度の洗浄を行なう方法とその装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明による活性空気による乾式洗浄方法においては、静電気の帯電によって被洗浄物に付着した付着物の洗浄を活性空気の雰囲気中で行なう活性空気による乾式洗浄方法であって、
活性空気は、空気イオンと水クラスターとを含み、高湿度雰囲気を形成して流動しつつ被洗浄物に接触し、
空気イオンは、正イオン量に比して負イオン量を多量に含み、被洗浄物の電荷を中和し、
水クラスターは、電荷が中和された付着物を被洗浄物の表面から遊離させる作用を有し、
流動する活性空気は、被洗浄物から付着物を剥離除去して空気力輸送するものである。
【0011】
また、活性空気は、風速2m/sec以上の風速で被洗浄物の表面に供給され、被洗浄物の表面に付着する付着物を活性空気の風速をもって除去するものである。
【0012】
また、活性空気中に含まれる負イオンと水クラスターとは、水の分裂処理並びに水の分裂によって生じた水滴を分離処理することによって生成させたものであり、
分裂処理は、水にエネルギーを付与してこれを微細水滴に分裂させ、空気中に微細水滴を分散させる処理であり、
分離処理は、空気中に分散した微細水滴を気液分離して活性空気を取出す処理である。
【0013】
また、被洗浄物の温度を洗浄空間の雰囲気の温度以上に保持するものである。
【0014】
また、本発明による活性空気による乾式洗浄装置においては、洗浄室と、活性空気発生装置とを有する活性空気による乾式洗浄装置であって、
洗浄室は、被洗浄物を洗浄する室であり、活性空気の吹出孔と、吸込孔とを有し、
吹出孔は、活性空気を洗浄室に圧入する開口であり、
吸込孔は、洗浄室内の活性空気を排気する開口であり、吹出孔と吸込孔間に活性空気の流通路が形成され、
被洗浄物は、活性空気の流通路に搬入するものであり、
活性空気発生装置は、イオン解離機構と、水滴の活性化機構と、気体分子のイオン化機構と、気液分離機構とを有し、洗浄室に付設され、
イオン解離機構は、高エネルギーを水に与えて水をイオン解離させ、イオン解離した水を水滴の活性化機構に供給する機構であり、
水滴の活性化機構は、供給された水に遠心力とコリオリ力とを作用させつつ旋回気流中で水の微細水滴化並びに活性化に必要なエネルギーを付与するものであり、
気体分子のイオン化機構は、水滴より空気中に電子を放出させて空気を活性化するものであり、
気液分離機構は、水滴と活性化された空気とを遠心力分離し、活性空気を吹出孔より洗浄室内に圧送する機構であり、前記吸込孔は、活性空気発生装置に接続され、前記吸込孔より排出された空気は、旋回気流として水滴の活性化機構に供給されるものである。
【0016】
【作用】
雨、その他の降水に関連して水滴が分裂するときに付近の空気が電離される現象はレナード(Lenard)効果として古くから知られている。レナードは、水滴が金属板に衝突して分裂する場合に付近の空気中にイオンが発生する現象を発見した。その後シンプソン(Simpson)は、レナードの実験を繰返し、より精密な装置を用いて測定し、水滴が空気中で分裂するだけでレナード効果と同様な結果が起り得ること、空気中に発生したイオンは水滴の電荷の如何にかかわらず負イオンであること、水滴は分裂の際に発生したイオンと等量の正電荷を得ることを確かめてこれを報告している(気象電気学 畠山久尚,川野実 岩波書店 1965年 p26〜27参照)。
【0017】
レナード効果,シンプソン効果によって発生させた負イオンは、これを水滴より分離することによって、外部へ取出すことができる。レナード効果を利用した負イオン発生装置は、特開平4−141179号に記載され、シンプソン効果を利用した負イオン発生装置は、特願平5−261396号に紹介されている。この装置は、気流の旋回流中に液体を噴射してこれを微細水滴に分裂させ、次いで気液分離を行って、負イオンを含む空気を供給空気として取り出すものであり、取り出された供給空気は、基本的に多湿である。
【0018】
気流の旋回流中に液体を噴出してこれを分裂させた微細水滴を含む多湿空気には、除塵,除菌,脱臭及びガス成分除去効果,調湿効果,帯電防止効果があることがわかっている。当初これらの効果は、すべて微細水滴の発生効果によるものと考えられ、次いで空気中の負イオンによる効果であると考えられるに至った。
【0019】
活性化処理によって発生する成分は、空気イオンと微細水滴との2種であると考えられていたが、水のクラスターも含まれている。クラスターとは、図1の分類によれば、原子あるいは分子が2つ以上から1000個で構成される物質の構造を示していることが分かる(梶本興亜編「クラスターの化学」1992年 p3,(株)培風館参照)。
【0020】
活性空気中に含まれる成分の大部分は、水蒸気水分であり、この水蒸気水分量に較べて負イオンや微細水滴は無視できる程度の量しか含まれていない。おそらく、活性空気中に含まれる水蒸気水分の大部分は、水クラスターであろうと推測される。
【0021】
液体の水は、水素結合によって(H2O)n(n=1,2,…∝)のような会合体−クラスターを形成し、氷はn=∝、水蒸気はnが最も小さい。nが小さい状態の水は活性が高い。クラスターモデルによれば、小さいクラスターは大きいクラスターに比べ相互作用をしている水分子の数が少ないので、より少ないエネルギーで表面積を拡げることができる。すなわち、小さい水クラスターは、表面張力も粘性率も小さい。
【0022】
したがって、活性化処理によって得られた活性空気中の水クラスターは、被洗浄物の洗浄に際し、付着物の下に入り込んでこれを被洗浄物上に遊離させる重要な役割を果たす。
【0023】
水の活性化処理によって得られた水蒸気水分を含む多湿の活性空気は、空気イオンと水クラスターとを含み、空気イオンは、正イオン量に比して負イオン量を多量に含み、被洗浄物表面に付着する雑菌類や静電気を除去し、被洗浄物に対する付着物の接合力は水クラスターによって弱められ、活性空気の流れによって被洗浄物の表面から付着物は持ち去られる。被洗浄物の設置空間内では、被洗浄物の表面に活性空気を吹付けることが必要である。付着物の除去に必要な活性空気の風速は、2m/sec以上、好ましくは5m/sec以上である。水の分裂によって生じた水滴を分離処理することによって生成した負イオンは、O↓ 2 ↑−(H↓ 2 O)nで表され、水分子付き負イオンである。
【0024】
また、被洗浄物の温度が洗浄室内の雰囲気温度より低い場合には被洗浄物に結露現象を生ずる。結露を生ずると、水滴が発生し、水滴が乾燥したときには、これがシミとして被洗浄物の表面に生ずる虞れがある。これを防止するためには、被洗浄物の温度を洗浄空間の雰囲気温度以上に保持することが必要であるが、洗浄空間の雰囲気温度よりせいぜい1℃高い温度に保つことで十分である。本発明によれば、ほぼ常温の範囲の活性空気を用いて乾燥雰囲気中で高度の洗浄が可能である。
【0025】
【実施例】
図2に本発明の基本的なシステムを示す。図2において、本発明は、洗浄室8に活性空気発生装置1を付設したものである。活性空気発生装置1は、これを大別して遠心力・コリオリ力発生装置2と、気液分離装置4との組合せからなっている。遠心力・コリオリ力発生装置2は、機能的には、イオン解離機構と、水滴の活性化機構と、気体分子のイオン化機構である。
【0026】
遠心力・コリオリ力発生装置2には、タンク9内の水をポンプ10で汲み上げて供給すると共に、洗浄室8内の空気を高速気流発生装置3で吸引して供給している。気液分離装置4は、遠心力・コリオリ力発生装置2から出力された空気を水滴から分離してこれを洗浄室8内に圧送するものである。洗浄室8には、タンク9に調温機19を付設して循環水を加温する。
【0027】
なお、図2では、洗浄室8と高速気流発生装置3の入力側及び気液分離装置4の出力側とを配管によって接続している状況を示しているが、活性空気発生装置は、必ずしも洗浄室外に設置されたものであることを意味するものではない。活性空気発生装置を洗浄室8内に設置し、高速気流発生装置3の吸気口及び気液分離装置4の送気口を室内に開口しても構わない。
【0028】
活性空気発生のメカニズムは、機能的にイオン解離機構によって行うイオン解離処理と、水滴の活性化及び気体分子のイオン化機構によって行う液滴の活性化処理及び気体分子のイオン化処理と、気液分離機構によって行う気液分離処理とを順に実行するものであるが、各々の処理は、必ずしも明確に区別しうるものではない。
【0029】
図3に具体的装置の例を示す。実施例は、シンプソン効果を利用して負イオンを発生させる装置を活性空気発生装置に用いた例を示している。
【0030】
図3において、遠心力・コリオリ力発生装置2は、液体のイオン解離処理と水滴の活性化処理と、気体分子のイオン化処理とを行う機構であり、実施例では横型の空気力輸送管13内に、図4に示すスパイラル状のスクリューガイド14を軸心に沿って配設し、軸心上に、ノズル配管15を設け、下周面に水槽16を付設したものである。
【0031】
タンク9内の水は、ポンプ10で水槽16内に汲み上げられ、水槽16内の水は、ポンプ17で汲み上げてノズル配管15に送水される。タンク9は、調温機19を装備しており、供給水を必要な温度に調整している。
【0032】
スクリューガイド14は、空気力輸送管13内で気流を誘導して管軸方向をスパイラル状に旋回させるものである。ノズル配管15は、空気力輸送管13の軸心にあって、その周囲を気体が旋回運動をすることになるため、スクリューガイド14は、必ずしも必要ではないが、実施例においては、スクリューガイド14を用いてコリオリ力が地球自転の角速度ベクトル方向を向くように気流の旋回方向の向きを規定している。もっとも、高速気流発生装置3からの気体の送気方向を空気力輸送管13内の内周に対し、接線方向に設定すれば、気流の旋回方向は右回り,左回りの旋回流に自ずから設定される。
【0033】
ノズル配管15には、その軸心に沿って周面要所にノズル18が開口され、ノズル18は、水槽16より供給された水を空気力輸送管13内の旋回気流中に噴出する。水は、ノズル18から高圧で噴出され、エネルギーを得て微細水滴に分裂する。
【0034】
高速気流発生装置3は、送風用のファンである。実施例においては、洗浄室8内の空気を吸引し、空気力輸送管13内に吸気口5を通して送風している。
【0035】
気液分離装置4は、実施例ではサイクロンセパレータを用いている。サイクロンセパレータは、空気力輸送管13の排気口7から排出される微細な水滴を含む気流に一定以上の風速,風圧が得られる限り気液の遠心力分離に有効である。気液分離された空気は、供給管路11を通り、吹出孔11aから洗浄室8内に導入される。
【0036】
実施例において、高速気流発生装置3を起動し、水槽16内の水をポンプ17で汲み上げ、ノズル配管15の各ノズル18より空気力輸送管13内に生じた強力な気流の旋回流中にその流れの方向に逆らって噴出させる。
【0037】
空気力輸送管13内に噴出された水は、気体圧力を受け、旋回気流中で分裂してイオン解離され、且つ細かい水滴に分裂し、ガイド14に沿って旋回しながら管内を空気力輸送される。この間、水滴は、気流の旋回流によって生じた遠心力と、コリオリ力との作用を受けて管壁に向かいつつ軸方向に流れ、さらに細かい水滴に分裂しつつ気体に接する水滴の界面が活性化され、水滴の表面で双極子が配向する際、気体側の界面に存在する酸素分子がイオン化され、空気は活性化される。
【0038】
水滴を含む空気は、空気力輸送管13の排気口7より気液分離装置4内に流入し、空気中に残存する水滴が除去され、次いで層流化処理され、活性空気として供給管路11を通り、吹出孔11aから洗浄室8内に導入される。これによって、洗浄室8内には、多湿の活性空気の雰囲気が形成される。一方、洗浄室8内の空気は、高速気流発生装置3の吸引力を受けて吸込孔12aから戻り管路12内に吸引され、必要により新たに導入した外気を供なって再び遠心力・コリオリ力発生装置2へ圧送される。
【0039】
空気力輸送管13の管壁に付着した水滴及び気液分離装置で分離された水滴は、水槽16内に回収される。この水滴中には正イオンが多く含まれているため、管壁を接地して中和する。
【0040】
以上、実施例では、横型の遠心力・コリオリ力発生装置を示しているが、その配置方向は、何等制約されるものではない。活性空気発生装置の仕様は、例えば次のとおりである。
【0041】
◎遠心力・コリオリ力発生装置
寸法:直径450φ×長さ900mm
入口空塔速度:12m/sec
出口空塔速度:10m/sec
◎気液分離装置
寸法:直径410φ×高さ620mm
入口空塔速度:10m/sec
出口空塔速度: 8m/sec
◎ファン
風量:Max 13m3/min
◎調温機
6.5KWヒーター
【0042】
図3に示す活性空気発生装置を運転し、洗浄室8内に開口する活性空気の吹出孔11aの直近で洗浄室内の温湿度,微細水滴の粒径分布,イオン量を測定した。
【0043】
微細水滴の粒径分布個数データは、RION(リオン)社のパーティクルカウンターKC−18及びKC−01Aを用いてシングルモードで測定したデータから風速4m/sec,水圧0.5kg/cm2,市水使用時のものを使用した。イオン濃度は、RION社のイオンカウンター(83−1001A)を用いて同条件で測定した。
【0044】
測定結果は、次のとおりである。
◎洗浄室の温湿度
室内温度 約22℃
室内湿度 約95%
◎微細水滴の粒径分布個数(シングルモード)
表1のとおりである。
【0045】
【表1】
【0046】
◎イオン濃度
表2のとおりである。
【0047】
【表2】
【0048】
表1,表2の結果から、微細水滴と空気イオン(特に負イオン)の存在量を重量比で求めると、以下のとおりとなる。なお、負イオン分子は、O↓2↑−(H↓2O)nとし、n=10と仮定した。負イオン分子は、O↓ 2 ↑−(H↓ 2 O)nと表されるように、水分子付き負イオンである。水クラスター付き負イオンであり、水クラスターは付着物の下に入り込み付着物の接合力を弱める。
微細水滴(0.1μmから2μmまで)の総量 2〜3×10↑−6g/m↑3負イオン量6×10↑−11g/m↑3
【0049】
一方、室温22℃,室内湿度95%の洗浄室内の空気中に含まれる水蒸気重量を空気線図から求めると、約18g/m3になる。得られた活性空気中に含まれる約18g/m3の水分量が水クラスターであると考えられる。
【0050】
遠心力・コリオリ力発生装置は水に高エネルギーを与えるために、慣性系に回転座標系を加味して、遠心力及びコリオリ力を発生させる旋回気流にしたことを特徴としている。この際、高速気流の空塔速度(m/sec)が大きい程これらのエネルギーが増大して水クラスターが多量に発生する。空塔速度を1.8m/secで実施したところ、パーティクル・カウンターで5μm粒子が50個/0.01CF検出された。
【0051】
実施例において、洗浄室8の天井に供給管路11の吹出孔11aを開口し、底部に戻り管路12の吸込孔12aを開口し、吹出孔11aと吸込孔12a間に活性空気の流路を形成している。被洗浄物Mを搬送する搬送機20は、ヒータ21を備え、活性空気の流路に設置され、搬送機20上で被洗浄物Mを順次搬送し、ヒータ21で加温しつつそれぞれの被洗浄物Mに活性空気を吹き付けて洗浄を行う。以下に実施例を示す。
【0052】
(実施例1)静電気中和実験
各種材料を粉砕分級して−325メッシュ以下の粉末とし、BET比表面積(m2/gr)を測定して秤量し、総表面積が800〜1,000m2の範囲に入るように試料を作成した。
【0053】
各種粉末材料は25×25cm角,2mm厚の銅板上に均一に散布し、35W×35L×5Hcmの洗浄室内に設置して密閉後、供給空気を微風(0.1m/sec)で送入し、試料設置後、吹出孔における2分および5分経過後の正イオン量,負イオン量を測定した。結果を表3に示す。
【0054】
(1)実験条件は次のとおりである。
(a)洗浄室
温度:23±1℃
湿度:85±2%RH
(b)活性空気発生装置
型式:200Z
風量:1m3/min
(c)測定結果
【0055】
【表3】
【0056】
(2)考察
以上の測定結果より下記のことが考察される。
(a)金属粉(銅粉,ステンレス粉,アルミ粉等)は静電気的には中和されている状態である。
(b)樹脂粉(アクリル粉,塩ビ粉等)は、負イオン,正イオン共に多量のイオンが消耗されている。このことから樹脂粉は静電気帯電をしており、帯電付着力が大きいことは容易に予測される。
従って、負イオン,正イオンによる除電効果が大きいと言える。
(c)綿(コットン),絹,ふけ(頭垢)等のほこりは、多量の負イオンと、少量の正イオンが消耗されている。又紙粉は、負イオンのみが多量に消耗されている。従って、負イオンによる除電効果が大きいと言える。
(d)ガラス,シリカ粉では、多量の負イオンが消耗されている。従って、負イオンによる除電効果が大きいと言える。
【0057】
(実施例2)各種製造プロセス中の洗浄工程の実験
(1)試料
試料1:単結晶シリコンをスライス,ラッピング,ポリシングした半導体用6インチシリコンウェハー
試料2:ハードディスク用14インチアルミ板をチャンファリング,ラッピング,ポリシングしたもの、
(2)上記試料1,2を以下の条件で洗浄した。
【0058】
(a)洗浄室
◎寸法:40W×40L×10Hcm
◎室内温度:21±1℃
室内湿度:90±2%RH
◎被洗浄物
温度:24±1℃(被洗浄物下部よりヒーター加熱)
◎供給空気
風速:5m/sec
負イオン量:220,000〜230,000個/cc
正イオン量: 1,000〜 1.300個/cc
(b)活性空気発生装置
型 式:500Z
使用水:蒸留水
水 温:24±1℃
(c)観察方法
被洗浄物(試料1及び2)の表面(測定面積:9cm2)に付着した粒子(粒子系:1μm以上)を光学顕微鏡(倍率:1,000)を用いて、その粒子数(個数)をクリーンチャンバー内で観察測定した。
(3)結果
結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
(4)考察
上記の結果は、例えば、フロン溶媒による洗浄(超音波+揺動)処理と、純水による洗浄(超音波+揺動)処理と、IPAによる乾燥前処理との3段階で行う従来の湿式洗浄法による洗浄効果とほぼ同程度である。
【0061】
(実施例3)活性空気発生装置から搬送された雰囲気空気の清浄化実験
(1)洗浄室に送入された活性空気中に含まれる汚染物質の除去性能を調べるため、最も極端な汚染雰囲気と考えられる大気を活性空気発生装置に取り入れて処理実験を行った。
【0062】
遠心力・コリオリ力発生装置には前記仕様のものを用い、気液分離装置には特願平6−5870号に記載の粒子の分離装置を用いた。この装置は、超微粒子を含めて気体中に含まれた粒子を強力に除去することを目的として開発されたものであり、概ね、図5に示す構造である。すなわち、図5において、気体の吹込み口22と吹出し口23とを有する円筒体24内に円錐筒25が上下2段に設置されている。吹込み口22は、円筒体24の胴部下周面より粒子を含む気体を円筒体内に送入する開口であり、吹出し口23は、円筒体24の頂部に設けられ、粒子が除かれた気体を排気する開口である。円錐筒25は、大小異径の開口を上下に有する円錐型の中空筒であり、大径側の開口を上向きとして吹出し口23の直下に配設されている。粒子を含む気体は、上昇旋回流Aを形成して円筒体24の内壁を上昇し、その一部は吹出し口23より排気流Cとなって排気され、上昇旋回流Aの大部分は、円筒体24の上部で反転し、下降旋回流Bを形成して円錐筒25を下降し、円錐筒25の上方空間に負圧領域を形成し、排気流C中に残存する粒子が吸引される。
【0063】
本実施例では、図3の気液分離装置に代えて図5の粒子の分離装置を用い、吹込み口22を遠心力・コリオリ力発生装置の排気口に接続し、活性空気を吹出し口23より圧出して洗浄室に送り込む。
【0064】
(2)実験条件
風量:2.5m3/min
使用水:蒸留水
◎取入大気条件
温度:23℃
湿度:55%RH
負イオン量:90個/cc
正イオン量:100個/cc
◎活性空気条件
温度:21℃
湿度:91%RH
負イオン量:220,000〜230,000個/cc
正イオン量: 1,000〜 1.300個/cc
【0065】
(3)測定機器
粒子数:リオン(株)製パーティクルカウンター
型式:KC−01A
計測:Single Mode
【0066】
(4)測定結果
測定結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
上記いずれの項目も不検出の結果を得た。
【0068】
(5)考察
測定結果より、活性空気は清浄化された雰囲気であって、パーティクル,カウンターで検出されている粒子は固体粒子でなく、水分子による水クラスターが計測されているものと考えられる。従って、洗浄室で汚染された空気は、活性空気発生装置で清浄化されることが判った。
【0069】
【発明の効果】
以上のように本発明によるときには、活性空気中に含まれる空気イオンと水クラスターとを作用させて帯電による付着物のほか汚染物質など被洗浄物に付着する各種付着物を有効に除去することができ、本発明方法によって処理された被洗浄物の表面には、一定期間にわたってごみなどが再付着せず、清浄な状況を維持できる。
【0070】
さらに、本発明処理は、洗浄液による洗浄とは異なり、活性空気は多湿空気でありながら被洗浄物に触れても被洗浄物は濡れることがなく、洗浄後の乾燥処理が不要となり、洗浄後直ちに次工程に搬入してラインの稼動時間の短縮を図ることができる。
【0071】
したがって、本発明をLSI製造工程におけるSiウェハーの洗浄をはじめ、各種の精密部品の洗浄処理に適用して優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】構成分子数の大きさによる名称の違いを示す図である。
【図2】本発明の基本的なシステムを示す図である。
【図3】本発明の一実施例を示す図である。
【図4】スクリューガイドの配置例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に用いた気液分離装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 活性空気発生装置
2 遠心力・コリオリ力発生装置
3 高速気流発生装置
4 気液分離装置
5 吸気口
6 吸液口
7 排気口
8 洗浄室
9 タンク
10 ポンプ
11 供給管路
11a 吹出孔
12 戻り管路
12a 吸込孔
13 空気力輸送管
14 スクリューガイド
15 ノズル配管
16 水槽
17 ポンプ
18 ノズル
19 調温機
20 搬送機
21 ヒータ
M 被洗浄物
Claims (5)
- 静電気の帯電によって被洗浄物に付着した付着物の洗浄を活性空気の雰囲気中で行なう活性空気による乾式洗浄方法であって、
活性空気は、空気イオンと水クラスターとを含み、高湿度雰囲気を形成して流動しつつ被洗浄物に接触し、
空気イオンは、正イオン量に比して負イオン量を多量に含み、被洗浄物の電荷を中和し、
水クラスターは、電荷が中和された付着物を被洗浄物の表面から遊離させる作用を有し、
流動する活性空気は、被洗浄物から付着物を剥離除去して空気力輸送するものであることを特徴とする活性空気による乾式洗浄方法。 - 活性空気は、風速2m/sec以上の風速で被洗浄物の表面に供給され、被洗浄物の表面に付着する付着物を活性空気の風速をもって除去することを特徴とする請求項1に記載の活性空気による乾式洗浄方法。
- 活性空気中に含まれる負イオンと水クラスターとは、水の分裂処理並びに水の分裂によって生じた水滴を分離処理することによって生成させたものであり、
分裂処理は、水にエネルギーを付与してこれを微細水滴に分裂させ、空気中に微細水滴を分散させる処理であり、
分離処理は、空気中に分散した微細水滴を気液分離して活性空気を取出す処理であることを特徴とする請求項1に記載の活性空気による乾式洗浄方法。 - 被洗浄物の温度を洗浄空間の雰囲気の温度以上に保持することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の活性空気による乾式洗浄方法。
- 洗浄室と、活性空気発生装置とを有する活性空気による乾式洗浄装置であって、
洗浄室は、被洗浄物を洗浄する室であり、活性空気の吹出孔と、吸込孔とを有し、
吹出孔は、活性空気を洗浄室に圧入する開口であり、
吸込孔は、洗浄室内の活性空気を排気する開口であり、吹出孔と吸込孔間に活性空気の流通路が形成され、
被洗浄物は、活性空気の流通路に搬入するものであり、
活性空気発生装置は、イオン解離機構と、水滴の活性化機構と、気体分子のイオン化機構と、気液分離機構とを有し、洗浄室に付設され、
イオン解離機構は、高エネルギーを水に与えて水をイオン解離させ、イオン解離した水を水滴の活性化機構に供給する機構であり、
水滴の活性化機構は、供給された水に、遠心力とコリオリ力とを作用させつつ旋回気流中で水の微細水滴化並びに活性化に必要なエネルギーを付与するものであり、
気体分子のイオン化機構は、水滴より空気中に電子を放出させて空気を活性化するものであり、
気液分離機構は、水滴と活性化された空気とを遠心力分離し、活性空気を吹出孔より洗浄室内に圧送する機構であり、前記吸込孔は、活性空気発生装置に接続され、前記吸込孔より排出された空気は、旋回気流として水滴の活性化機構に供給されるものであることを特徴とする活性空気による乾式洗浄装置。
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