JP3562852B2 - 汚泥物質浄化装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、大量の微細気泡を発生することにより、水底に沈殿した汚泥、或いは、アオコ等の様に水中に浮遊する物質(本明細書においては、汚泥或いは水中浮遊物質等を総称して「汚泥物質」と記載している)が存在する河川や湖沼等を浄化する汚泥物質浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
汚泥物質が存在する水中に微細気泡を噴射し、底部に沈殿し或いは水中に浮遊している汚泥物質に対して微細気泡が付着し、当該汚泥物質を水面まで浮上し、水面まで浮上した汚泥物質を回収して処理或いは除去する技術は、従来から良く知られている。そして、従来技術においては、水中に供給された高圧気体の大きな気泡を破砕することを繰り返して微細気泡を発生させ、微細気泡が大量に混入した水として、浄化作業を行うべき湖沼等へ供給していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、大きな気泡を破砕して微細気泡にするためには、破砕するための乱流発生箇所を数多く構成しなければならず、しかも多数の乱流発生を介装した流路全体の長さも長くしなければならないので、配管系が非常に複雑となり、装置全体が大型化するという問題があった。そして、配管系の複雑化は保守作業の煩雑化、設置作業の複雑化という問題を惹起し、装置全体の大型化は装置を設置する自由度の低下、製造コストの高騰化という問題を惹起した。
【0004】
これに加えて、微細気泡を大量に包含した水を、浄化処理しようとする河川や湖沼に供給する際に、底に沈殿している汚泥物質を拡散してしまい、汚染度がかえって高くなってしまう可能性が存在する。また、汚泥物質が広範囲に拡散する途中で細分化されてしまい、回収される汚泥物質の量が減少してしまうという問題も存在する。
【0005】
本発明は上述した様な従来技術の問題点に鑑みて提案されたもので、シンプルな構成にて効率的に微細気泡を発生させることが出来て、しかも処理すべき汚泥物質を拡散すること無く微細気泡を付着させて浮上せしめることが出来る様な汚泥物質浄化装置の提供を目的としている。
【0006】
発明者等は種々研究・検討の結果、流路を流れる水中に高圧空気を供給する際に、高圧空気供給箇所に適当な曲面を形成すれば、高圧空気は所謂「コアンダ効果」により当該曲面に沿って流れるが、その曲面から安定した剪断応力を受けることによって多量の微細気泡となって流路内に混在することを見出だした。本発明は、その様な知見に基づいて為されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、汚泥物質が存在する水中の底部に設置され、大量の微細気泡により汚泥物質を浮上させて浄化するための汚泥物質の浄化装置において、中空の管状部材(2)とその管状部材(2)に対して高圧エア源と連通しているエア配管(11)とを備え、その中空の管状部材(2)は閉鎖平面形状を形成している管状部材(2a)とその閉鎖平面形状の内側で縦横に配置されている管状部材(2b、2c)とを含み、それらの管状部材(2)はその中空部分(2c)同士が相互に連通する様に接続されており、そして管状部材(2)にはその上面(6)から下面(7)に連通する開口部(5)が設けられ、その開口部(5)は下面(7)側の部分(4)の方が大面積であり、開口部(5)の壁面にはスリット(3)が設けられ、そのスリット(3)には開口部(5)の上方側に向って縦断面の曲率半径(R)が徐々に増加する曲面(3a)が形成されている。
【0008】
また本発明によれば、汚泥物質が存在する水中の底部に設置され、大量の微細気泡により汚泥物質を浮上させて浄化するための汚泥物質の浄化装置において、中空の管状部材(2)とその管状部材(2)に対して高圧エア源と連通しているエア配管(11)とを備え、その中空の管状部材(2)は閉鎖平面形状を形成している管状部材(2a)とその閉鎖平面形状の内側で縦横に配置されている管状部材(2b、2c)とを含み、それらの管状部材(2)はその中空部分(2e)同士が相互に連通する様に接続されており、その管状部材(2)の頂部(14)に開口部を構成するスリット(13)と、そのスリット(13)に連なる曲面(15)とを有し、そのスリット(13)は中空部分(2e)側の開口部から遠ざかるほど拡大する曲線(15)と連なっており、その断面形状は開口部の頂面(14a)に向って曲率(R)が増大している。
【0009】
ここで「汚泥物質」なる文言は、前述した通り、水底に沈殿した汚泥、或いは、アオコ等の様に水中に浮遊する物質を総称するものである。
【0010】
本発明の実施に際して、前記開口部としてはスリットでも良く、或いは、比較的短い間隔を隔てて連続的に穿孔された穴でも良い。
【0011】
【作用】
上述した様な構成を具備する本発明によれば、前記流路を流れる水中に、前記環状スリットを介して供給された高圧空気は、所謂「コアンダ効果」により、環状のスリットの下流側部分を構成する前記曲面に沿って流れ、適当な位置(曲面の接線が、前記流路の中心線に対して5〜30度の傾斜角度を形成する位置)に達したならば、高圧空気は前記曲面から剥離する。その際に、上述の知見で述べた様に、大量の微細気泡として水中に混在するのである。
【0012】
ここで、従来は高圧空気を包含した水を浄化処理すべき湖沼に供給する。これに対して本発明の場合には、高圧空気のみを供給すれば、該高圧空気が管状部材の中空部分を介して開口部に到達すると、開口部の水中側部分を構成する曲面から剥離する際に微細気泡となる。すなわち、従来技術の様に水を供給する必要が無くなるので、設置等の労力が軽減される。
【0013】
また、本発明によれば大きな気泡を繰り返し破砕する必要は無いので、従来技術の様に、気泡破砕のための乱流発生箇所を数多く構成する必要が無く、従って多数の乱流発生を介装した流路も必要無い。そのため、配管系が非常にシンプルとなり、装置全体の小型化が達成される。そして、配管系がシンプルであるため、保守作業及び装置の設置作業が簡単且つ容易となり、装置が小型化に伴い装置を設置する場所その他の自由度が増大し、製造コストも低額に抑えられる。
【0014】
さらに、本発明によれば、閉鎖平面形状を形成する管状部材の開口部から、大量の微細気泡が発生して水面に向かって上昇するので、微細気泡がエアカーテンの様に機能して、汚泥物質等が拡散するのを防止することが出来る。そして、当該エアカーテンは、環状部材が形成する閉鎖平面形状と同一の平面形状を有する閉じた領域を形成するので、その領域から外部へ汚泥物質が拡散することが防止されるのである。
【0015】
これに加えて、大量の微細気泡は汚泥物質に付着して、その汚泥物質を浮上させる作用を奏する。これにより、その領域内の汚泥物質が部分的に浮上し、これを収集し除去処理することにより、汚泥物質の浄化が達成されるのである。
【0016】
【実施例】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明を汚泥物質を浄化すべき湖沼において実施した態様を示している。浄化されるべき水中Wには汚泥物質の浄化装置10が設置され、該汚泥物質の浄化装置10は中空の管状部材(図1では符号2により総括的に表現されている)と、図示しない高圧エア源(例えば、エアコンプレッサ)に連通するエア配管11とを有している。そして図2で示す様に、中空の管状部材は、閉鎖平面形状を形成する部材2aと、該閉鎖平面形状の内側で縦横に配置されている部材2b及び2cとを含んでおり、管状部材2a、2b、2cは、その中空部分同士が相互に連通する様に接続されている。従って、図示しない高圧エア源からエア配管11を介して供給されたエアは、中空の管状部材2a、2b、2cの全てに行き渡るのである。なお、部材2aにより形成された閉鎖平面形状は、仕切りたい範囲および形状に対応している。
【0017】
管状部材2(2a、2b、2c)の断面の一例が図3で示されている。弾性体(例えばゴム)と、その内面の可撓性を有する非伸縮性の部材(例えば、FRP)とで構成された部材、とにより形成された管状部材2は、その上面6から下面7に連通する開口部5を設けている。そして、開口部5は下面7側の部分4の方が大面積となる様に構成されている。なお、以下の説明において、開口部5の「下流側」とは開口部5の上方を意味し、開口部5の「上流側」とは開口部5の下方を意味する。
【0018】
開口部5の壁面には環状のスリット3が設けられ、その環状のスリット3には、開口部5の下流に向かって縦断面の曲率半径Rが徐々に増加する様な曲面3aが形成されている。そして、該曲面3aの終端部の接線と、開口部5の中心線とが為す傾斜角θが10度になる様に構成されている。
【0019】
また前記スリット3は、管状部材2の空気溜めとして作用する中空部分2eが開口部5に対して開口する部分として構成されており、中空部分2eは高圧エアの供給源であるエアコンプレッサにエア回路11で接続されている。ここで、スリット3が開口5に開口或いは連通している箇所における幅寸法Bは、0.3mmに形成されている。
【0020】
エアコンプレッサからの高圧エアは、エア回路11を介して管状部材2の中空部分2eに供給されている。そして、中空部分2eの高圧エアは環状のスリット3から噴出し、いわゆる「コアンダ効果」によって前記曲面3aに沿って流れ、曲面3aが開口部5の上面6に達する付近で曲面3aから剥離し、Kで示す気泡となって水中を上昇して行く。換言すれば、高圧エアは曲面3aから剥離する際に微細気泡となるのである。
【0021】
ここで、発明者は種々の検討及び実験の結果として、上記の傾斜角θが5〜30度であり、スリットの幅Bが0.001mm〜0.5mmで、エア圧力が周囲の水圧より1.0〜10Kg/cm2 だけ高い場合において、高圧エアが曲面3aから剥離する場合に微細気泡となって水中に混在することを見出だした。そして、本実施例では、スリット3から上部の曲面3aに至る形状に関する条件や、エア圧に関する条件は、全て上述の条件(高圧エアが曲面3aから剥離する際に気泡が微細化されるための条件)を充足している。ここで、上記の開口部は閉鎖平面形状に沿った連続した開口部としても良い。
【0022】
図4は、管状部材2の別の例を示している。管状部材2の頂部14に開口部であるスリット13とスリット13に連なる曲面15とを直接設けたもので、管状部材2の空気溜めである中空部分2eは接続口8を介してエア回路11により図示しないエアコンプレッサに接続されている。
【0023】
また、そのスリット13は中空部分2e側の開口部から遠ざかるほど拡大する曲面15に連なり、その断面形状は頂面14aに向って曲率が増大するよう形成され、曲面15が頂面14aに達する箇所での接線方向と頂面14aの水平面との交角θは頂面14aに対して5〜30度の範囲(例えば10度)に形成され、スリット13の幅Bは0.3mmに形成されている。
図4で示す管状部材の作用は、図3で示すものと概略同一であるため、重複説明は省略する。
【0024】
再び図1、2において、浄化処理を行うべき水中Wの底部Gの適当な位置に配置された汚泥物質の浄化装置10は、図示しないエアコンプレッサからエア回路11を介して高圧エアが供給されると、該高圧エアは管状部材2a、2b、2cの全てに供給され、その開口部5(図3、4参照)から多量の微細気泡を発生する。この微細気泡は水中Wを浮遊しているか、或いは底部Gに沈殿している汚泥物質に付着して、該汚泥物質の見掛け上の浮力を増加して、水面まで浮上させる。換言すれば、水中W及び底部Gに存在する汚泥物質は、微細気泡Kにより除去されて水面に浮上する。そして、水面に浮上した汚泥物質を、回収船等の公知手段により収集し、収集された汚泥物質を公知の手法(例えば、焼却処理等)により、除去するべく処理を行えば良い。
【0025】
ここで、微細気泡を発生するに際して、従来は大量の微細気泡が混入している水を浄化処理すべき水中に供給していたので、微細気泡発生装置には水を供給する回路と、エアを供給する回路の2系統が必要であった。これに対して、上述した汚泥物質の浄化装置は高圧エアのみを供給すれば良いので、エア回路11のみを備えれば良い。これに関連して、湖沼の岸辺等の地上に設置するべき設備が極めてコンパクト化されるのである。
【0026】
また、中空管状部材2aは閉鎖平面形状を形成しており、その開口部5から発生する微細気泡は、汚泥物質の付着するのみならずエアーカーテンとして機能するので、汚泥物質は中空管状部材2aが形成する閉鎖平面形状の範囲外に拡散することは無い。従って、汚泥物質処理は中空管状部材2aが形成する閉鎖平面形状の範囲でのみ行われる。そして、1箇所の汚泥物質処理が完了したならば、図示しない公知の手段で汚泥物質の浄化装置10を移動して、他の部分の汚泥物質の浄化処理を行う。これにより、正確且つ効率的な汚泥物質の浄化処理が実行されるのである。
【0027】
なお、図示の実施例はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨のものではない。例えば、図3、4において、スリット3或いは13に代えて、短い間隔を空けて連続的に形成された複数の孔を形成し、該孔を穿孔した箇所が、曲面から高圧エアが剥離する際に気泡が微細化されるための上記した条件を具備する様に構成すれば、該孔より微細気泡が発生して、エアカーテンを形成することが出来る。そして、複数の孔を形成することは、スリットを形成するよりも構造が簡単であり、制作も容易である。
【0028】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列挙する。
(1) 微細気泡による汚泥物質の浄化処理を簡単且つ効率的に行うことが出来る。
(2) 汚泥物質を拡散させること無く、所定の範囲毎に汚泥物質の浄化処理を行うことが出来るので、正確且つ効率的に汚泥物質の浄化処理を実行する事ができる。
(3) 汚泥物質の浄化処理から微細気泡を発生させるために、高圧エアのみを供給すれば良いため、従来の技術に比較して供給系の構造を簡単且つコンパクトにすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す側面図。
【図2】図1の実施例の平面図。
【図3】図1、2の実施例の要部の拡大断面図。
【図4】図3で示すのと異なるタイプの要部の拡大断面図。
【符号の説明】
2、2a、2b、2c・・・管状部材
3、13・・・スリット
3a、15・・・曲面
4・・・開口の下部
5・・・開口部
6・・・上面
7・・・下面
10・・・汚泥物質の浄化装置
11・・・高圧エア供給回路
Claims (2)
- 汚泥物質が存在する水中の底部に設置され、大量の微細気泡により汚泥物質を浮上させて浄化するための汚泥物質の浄化装置において、中空の管状部材(2)とその管状部材(2)に対して高圧エア源と連通しているエア配管(11)とを備え、その中空の管状部材(2)は閉鎖平面形状を形成している管状部材(2a)とその閉鎖平面形状の内側で縦横に配置されている管状部材(2b、2c)とを含み、それらの管状部材(2)はその中空部分(2c)同士が相互に連通する様に接続されており、そして管状部材(2)にはその上面(6)から下面(7)に連通する開口部(5)が設けられ、その開口部(5)は下面(7)側の部分(4)の方が大面積であり、開口部(5)の壁面にはスリット(3)が設けられ、そのスリット(3)には開口部(5)の上方側に向って縦断面の曲率半径(R)が徐々に増加する曲面(3a)が形成されていることを特徴とする汚泥物質浄化装置。
- 汚泥物質が存在する水中の底部に設置され、大量の微細気泡により汚泥物質を浮上させて浄化するための汚泥物質の浄化装置において、中空の管状部材(2)とその管状部材(2)に対して高圧エア源と連通しているエア配管(11)とを備え、その中空の管状部材(2)は閉鎖平面形状を形成している管状部材(2a)とその閉鎖平面形状の内側で縦横に配置されている管状部材(2b、2c)とを含み、それらの管状部材(2)はその中空部分(2e)同士が相互に連通する様に接続されており、その管状部材(2)の頂部(14)に開口部を構成するスリット(13)と、そのスリット(13)に連なる曲面(15)とを有し、そのスリット(13)は中空部分(2e)側の開口部から遠ざかるほど拡大する曲線(15)と連なっており、その断面形状は開口部の頂面(14a)に向って曲率が増大していることを特徴とする汚泥物質浄化装置。
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JP00642095A JP3562852B2 (ja) | 1995-01-19 | 1995-01-19 | 汚泥物質浄化装置 |
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JPH08192145A JPH08192145A (ja) | 1996-07-30 |
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