JP3562508B2 - 型枠とその型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材 - Google Patents

型枠とその型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、建物の部材を成型する型枠とその型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材に関するもので、特に、集合住宅のベランダ部材等にタイルを打ち込みする型枠とその型枠を用いた打ち込み工法およびその型枠により製造される部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
集合住宅では、一般に、複数階からなり、同一階には複数の住戸を有している。これら各住戸ごとベランダ、バルコニー、ポーチ等のはね出し部分を備えている。図4は、従来の集合住宅のベランダを示すもので、住戸の内外を仕切る外壁2からほぼ水平にベランダ床3が外方に突出して形成され、このベランダ床3の外縁にはベランダ壁(壁)4が形成される。ベランダ壁4には、図4に示すように、タイル(張り付け材)5が張り付けられ、建物の美観を形成するとともに風雨から建物を保護するようになっている。
【0003】
図4に示すタイル5をベランダ壁4に張り付けるには、従来、図5に示す型枠20による工法が用いられていた。まず、図5の(A)に示すように、工場の製造ラインに作業床10を組み立てる。次に、ベランダ床3の下面3A(図5の(D)参照)とベランダ壁4の内側面のうちベランダ床3より下の部分4A(図5の(D)参照)を成型する断面コ字状の第1の型枠部11を作業床10上に設置する。次に、第1の型枠部11の外側にベランダ壁4の下端面4B(図5の(D)参照)を成型する断面L字状の第2の型枠部12を組み付ける。この時、下端面4Bに部材製作後、張り付けるための欠込用の型枠12Aが付けられている。ベランダ壁4の下端面4Bは作業床10から所定の高さh1上方に位置するようになっている。次に、図5の(B)に示すように、ベランダ壁4の外側面4C(図5の(D)参照)を張り付け材接着シート15を介して成型する板状の第3の型枠部13を用意する。この時も部材製作後張り付けるための欠込用の型枠13Aが付けられている。張り付け材接着シート15は、両面が接着面となっている接着薄片15Aと、この片面に表面側が所望の配置で接着された予め多数のタイル5とからなり、反対の接着面が成型面に接着されるようになっている。張り付け材接着シート15は、所望の形状に予めカットされている。次に、タイル5が接着された張り付け材接着シート15の他方の接着面を、図5の(B)に示すように、第3の型枠部13に張り付ける。この張り付け材接着シート15は、接着力を越える所定の力が加えられるとタイル5または型枠部13から接着薄片15Aが剥離されるようになっている。
【0004】
次に、張り付け材接着シート15が接着された第3の型枠部13を、図5の(C)に示すように、第2の型枠部12上に取り付け、鉄筋16を配して、断面L字状の第4の型枠部14を配置する。第4の型枠部14は、ベランダ壁4の内側面のうちベランダ床3より上側の面4Dと、この上側の面4Dと連続するベランダ床3の上面のうち外縁側の一部3Bとを成型するようになっている。
【0005】
図5の(C)に示すように、第1ないし第4の型枠部11〜14の内部に鉄筋16を配して型枠20が組み立てられると、次に、図5の(D)に示すように、この型枠20(11〜14)にコンクリートが打設され、硬化後、これら第1ないし第4の型枠部11〜14を取り外し、作業床10を撤去するようになっている。符号17は、水切り溝成型用の溝成形部材で、鉄筋16の組立前に、第2の型枠部12上に配置され、脱型後、取り外されて水切り溝18(図4参照)が形成されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のベランダ壁4は、上述のように形成されるため、図4の丸破線部Aで示す部分、すなわち、ベランダ壁4下端面の型枠12Aと13Aに、タイルをコンクリート打込み前に貼り付ける場合、まず、第2の型枠部12上にタイル5が所定の配置で張り付けられた張り付け材接着シート15を接着する。次に、この型枠部12のタイル5の目地に、張り付け材接着シート15が接着された第3の型枠部13のタイル5の目地を正確に合致させて第3の型枠部13を第2の型枠部12に取り付けなければならない。しかしながら、この目地を合致させる作業は型枠内部の一番奥まった場所で、タイルの目地を確認する必要があり、作業に精妙さが要求され、ずれが生じると、一旦、第3の型枠部を取り外し、型枠部12、13のいずれかの張り付け材接着シート15を張り直したりしなければならず、作業に難渋するという問題がある。このため、従来、図4に示すように、ベランダ壁4の外側面にのみタイル5を張り付け、脱型後、水切り溝18と張り付けられたタイル5の下端12Aに、ベランダ壁4の外側面のタイル5と目地を揃えて手作業でタイルを貼り付けるようにしていた。
【0007】
本発明は上記欠点を除くためになされたもので、容易かつ正確に壁外側面と壁下端面とに張り付け材の配列を合致させて張り付けることができる型枠とその型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の型枠は、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え、張り付け材を打ち込みのため先張りした型枠において、部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てたものである。
【0009】
本発明の型枠では、張り付け材の張り付け作業時、可動側型枠を作業床上の作業しやすい場所に移動させ、可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を接着させるようにしているので、脱型後、部材外側面と部材下端面との両面に張り付け材を配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けることができる。このため、作業性および張り付け精度が向上する。
【0010】
本発明の張り付け材打ち込み工法は、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を打ち込みのために先張りした型枠により部材に張り付け材を張り付ける張り付け材打ち込み工法において、作業床上に部材の内側面を成型する成型面を有する固定側型枠を組み立てる第1のステップと、固定側型枠と取り外し可能に接続され部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し作業床上を移動自在な可動側型枠を設け、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着する第2のステップと、張り付け材が接着された可動側型枠を移動させ、上記固定側型枠に接続して型枠を組み立てる第3のステップと、上記型枠にコンクリートを打設し、硬化後、可動側型枠を固定側型枠から取り外して移動させる第4のステップとを備えて構成したものである。
【0011】
本発明の張り付け材打ち込み工法では、第1のステップで、作業床上に固定側型枠を組み立て、第2のステップで、可動側型枠成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着し、第3のステップで、張り付け材が接着された可動側型枠を移動させ、上記固定側型枠に接続して部材の型枠を組み立て、第4のステップで、組み立てられた型枠にコンクリートを打設し、硬化後、可動側型枠を固定側型枠から取り外して移動させ、型枠を脱型すると、張り付け材が張り付けられた部材が成型される。このため、第2のステップで可動側型枠成型面のうち部材の下端面を成型する成型面の所望の部位に、部材の外側面を成型する成型面に接着された張り付け材と合致させて下端面側張り付け材を正確に接着するだけで、脱型時、部材外側面と部材下端面との両面に張り付け材の配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けることができ、作業効率が向上する。しかも、移動手段に可動側型枠を組み立てるようにしているので、可動側型枠を組み立てる際や可動側型枠成型面に張り付け材を張り付ける際、作業のしやすい場所で作業を行うことができ、正確に張り付けることができる。
【0012】
また、請求項3に係る張り付け材打ち込み工法は、第2のステップで、可動側型枠の成型面には、部材の外側面を成型する成型面とともに、部材の下端面を成型する成型面のうち外側面から連続する部位に張り付け材が接着されるようにしたものである。
【0013】
請求項3に係る張り付け材打ち込み工法では、第2のステップで可動側型枠成型面のうち部材の外側面と連続する下端面成型面に、部材の外側面を成型する成型面に接着された張り付け材と合致させて下端面側張り付け材を連続して接着すると、脱型時、部材外側面と部材下端面との両面に張り付け材を連続して張り付け、しかも張り付け材の配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けることができる。
【0014】
さらに、請求項4に係る型枠により製造される建物の部材は、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を先張りした型枠により製造される建物の部材であって、部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てた型枠にコンクリートを打設して製造されるようにしたものである。
【0015】
請求項4に係る型枠により製造される建物の部材では、可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させて型枠を組み立て、この型枠にコンクリートを打設して製造されるので、型枠を脱型すると、部材には、外側面と下端面とのそれぞれの所望の部位に張り付け材が張り付けられる。可動側型枠成型面に張り付け材を接着する際、可動側型枠を作業床上で自在に移動させ、作業しやすい場所に移動して作業を行うことができる。このため、可動側型枠の部材外側面成型面と部材下端面成型面との両面に張り付け材を配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて接着することができるので、脱型された部材の外側面と下端面とには、張り付け材が、配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けられる。このため、意匠上、美観の質が向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面に示す実施の形態により本発明を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る型枠の要部を示す縦断面図、図2の(A)ないし(D)はそれぞれ図1の型枠を用いた張り付け材打ち込み工法により建物の部材を製造する工程を順に示す説明図、図3は本発明の一実施の形態に係る型枠により製造された建物の部材の要部を示す一部破断斜視図である。上記従来の構成と同一または相当部分には、説明の重複を避けるため同一符号を付してその説明を省略する。
【0017】
まず、図1に示すように、工場の製造ラインに作業床10を組み立て、集合住宅のベランダ床33の下面33Aとベランダ部材34の内側面34Aのうちベランダ床33より下の部分34Bを成型する第1の型枠部11を作業床10上に設置する。
【0018】
ところで、本実施の形態に係る型枠30では、上記従来の型枠20が、図5に示すように、ベランダ壁4の外側面と下端面とをそれぞれ別々に成型する型枠部12、13を順番に第1の型枠部11に取り付けた状態で部材成型用型枠を組み立てるようにしたのに対し、本願発明では、図1に示すように、作業床10に取り付けられて組み立てられベランダ部材34の内側面34Aの一部35Bを成型する第1の型枠部11とベランダ部材34の内側面34Aの残りの部分34Eを成型する型枠部44とを固定側型枠とし、これら固定側型枠11、44のうち第1の型枠部11に対して取り外し可能に接続され、部材34の外側面34Cと下端面34Dとを同時に成型する成型面35A、35Bを有し、作業床10を移動自在な可動側型枠35を備えた点が異なっている。
【0019】
すなわち、本実施の形態に係る型枠30は、図1に示すように、第1の型枠部(固定側型枠)11と可動側型枠35とを備えて構成される。可動側型枠35は、車輪36を備えた車台37の上部に取り外し可能に組み立てられる。車輪36には図示しないロック機構が設けられ、必要に応じてロックされるようになっている。可動側型枠35は、ベランダ部材34の下端面34Dを成型する成型面35Bが上面に形成され、車台37上面にほぼ水平に取り付けられる下端面成形部材38と、ベランダ部材34の外側面34Cを成型する成型面35Aが形成され、下端面成形部材38上にほぼ垂直に取り付けられる外側面成形部材39とを備えて構成される。ベランダ部材34の下端面34Dは作業床10から所定の高さh1上方に位置するようになっている。所定の高さh1に応じて車台37上面の高さが決められる。符号40は支持部材、符号41はボルト等の接続部材である。
【0020】
この可動側型枠35は、車台37に取り付けられているので、ほぼ平坦な作業床10上を自由に移動できるようになっている。そして、この可動側型枠35は、図1に示すように、第1の型枠部11にボルト41で取り外し可能に接続される。可動側型枠35の成型面35A、35Bには、予め決められた設計プランに基づいてベランダ部材34のタイル(張り付け材)5を張り付ける部位に対応させて、張り付け材接着シート15が接着される。張り付け材接着シート15は、両面が接着面となっている接着薄片15Aと、この片面に表面側が所望の配置で接着された予め多数のタイル5とからなり、反対の接着面が成型面に接着されるようになっている。張り付け材接着シート15は、事前に所望の形状にカットされている。張り付け材接着シート15のタイル5側は、多数のタイル5が所望の配置で目地部を形成する空隙5Aを確保して接着されている。接着時、タイル5の配列や目地あわせを両成型面35A、35Bで連続させて合致させ、目地が合うように接着する。すなわち、両成型面35A、35Bを結ぶ角部で部材外側面34Cを成型する成型面35Aと部材下端面34Dを成型する成型面35Bとにそれぞれ接着されたタイル5がコンクリート打設後そのままの状態でベランダ部材34に張り付いて移し替えられるようになっている。
【0021】
張り付け材接着シート15の接着作業は、可動側型枠35を作業床10上の明るく空間的制約のない作業のしやすい場所に移動させて行う。このため、接着作業は、可動側型枠35の成型面35A、35Bを作業者の正面に向けて行うことができるので、作業を容易に行うことができるばかりでなく、タイル5の配列や目地あわせを両成型面35A、35Bで合致するように正確に作業を行うことができる。さらに、予めタイルが所定の配置で接着された市販の接着シートを用いれば、両成型面35A、35Bを接続する角部で接着するだけよく、きわめて簡単に接着作業を行うことができる。
【0022】
可動側型枠35は、張り付け材接着シート15のタイル5が接着された面の反対側面が成型面35A、35Bに接着されると、その状態で第1の型枠部11に接続される。水切り溝18を形成する場合、張り付け材接着シート15の接着作業終了後、第1の型枠部11に接続する前に、可動側型枠35の成型面35Bに水切り溝成型用の溝成形部材17を取り付ける。溝成形部材17は、図2の(D)に示すように、移動側型枠35を第1の型枠部11との固定を解除し、外側面成形部材39を少し剥がすことで張り付け材を接着した面が剥離する。こうすることにより溝成形部材17を解体せずにベランダ部材34を脱型できる。第1の型枠部11に可動側型枠35が接続されて、鉄筋16(図2の(B)参照)が配置され、型枠部(固定側型枠)44が取り付けられると、型枠30が組み立てられるようになっている。型枠部44は、断面L字状に形成され、ベランダ部材34の内側面34Aのうちベランダ床33より上側の面34Eと、この上側の面34Eと連続するベランダ床33の上面33Bのうち外縁側の一部33Cとを成型するようになっている。
【0023】
この型枠30にコンクリートが打設され、コンクリート硬化後、吊り上げ工程に備え型枠部44を第1の型枠部11から取り外す。第1の型枠部11との接続ボルト41が外され、可動側型枠35をベランダ部材34の外側に向かって剥離させると、タイル5はベランダ部材35の外側面34Cと下端面34Dの一部とにコンクリートにより強固に打ち込まれ張り付けられているので、接着シート15の接着薄片15Aは、タイル5の表面に接着したまま、可動側型枠35が第1の型枠部11から剥離する。この状態でベランダ部材34を吊り上げ、第1の型枠部11から脱型する。このとき、溝成形部材17がベランダ部材34から離れる。その後、可動側型枠35を完全に移動する。こうして、ベランダ部材34とベランダ床33が製造される。こうして製造されたベランダ部材34の外側面34Cとこの外側面34Cと連続する下端面34Dには、可動側型枠35の成型面35A、35Bに接着されたタイル5がそのまま張り付いて移し替えられるので、ベランダ部材34の外側面34Cとこの外側面34Cと連続する下端面34Dとには、タイル5を、配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けることができる。
【0024】
次に、上記実施の形態に係る型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材について上記型枠30の作用に基づいて説明する。図2の(A)に示すように、まず、第1のステップ(S1)で、作業床10上に、第1の型枠部(固定側型枠)11を組み立てる。この第1の型枠部11は、ベランダ床33の下面33Aとベランダ部材34の内側面34Aのうちベランダ床33より下の部分34Bとを成型する断面コ字状の型枠部により構成される。
【0025】
次に、第2のステップ(S2)で、車台37上に下端面成形部材38を、この下端面成形部材38上に外側面成形部材39をそれぞれ取り付け、可動側型枠35を組み立てる。可動側型枠35は下端面成形部材38と外側面成形部材39とにより、ベランダ部材34の下端面34Dを成型する成型面35Bと、ベランダ部材34の外側面34Cを成型する成型面35Aとがそれぞれ形成されるようになっている。次に、図2の(A)に示すように、可動側型枠35の成型面35A、35Bに、予め決められた設計プランに基づきベランダ部材34のタイル(張り付け材)5を張り付ける部位に対応させて、タイル5の表面側が所望の配置で接着された張り付け材接着シート15が接着される。
【0026】
接着する際、タイル5の配列や目地あわせを行うが、両成型面35A、35Bで連続させて合致させ、目地が合うように接着する。このとき、可動側型枠35の成型面35Bに水切り溝成型用の溝成形部材17を水切り型枠として付けておく。これら作業は、作業床10上の明るく空間的制約のない作業のしやすい場所に車台37を移動させて行う。
【0027】
次に、図2の(B)に示すように、第3のステップ(S3)で、第1のステップ(S1)により組み立てられた第1の型枠部11に、第2のステップ(S2)により張り付け材接着シート15が接着された可動側型枠35を移動させて接続し、鉄筋16を配置して、型枠部44を取り付ける。こうして、型枠30が組み立てられる。
【0028】
次に、図2の(C)に示すように、第4のステップ(S4)で、第3のステップ(S3)により組み立てられた型枠30にコンクリートを打設し、硬化後、図2の(D)に示すように、可動側型枠35を第1の型枠部11からわずかに分離させる(図2の(D)の分離量l参照)。次に、ベランダ部材34を吊り上げ(図2の(D)矢印方向U参照)、脱型する時、可動側型枠35をベランダ部材34の外側に向かって移動させる。張り付け材接着シート15に接着されたタイル5は、張り付け材接着シート15とともに剥離されベランダ部材34に張り付いて移し替えられる。タイル5の表面に取り残された張り付け材接着シート15の接着薄片15Aは清掃ラインで取り除かれる。最後に可動側型枠35を第1の型枠部11から完全に切り離す。こうした工程によりベランダ部材34とベランダ床33が製造される。
【0029】
こうして製造されたベランダ部材34は、図3に示すように、外側面34Cとこの外側面34Cに連続する下端面34Dとに、タイル5を配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて張り付けることができる。このため、意匠上、建物の美観の質が向上する。
【0030】
なお、上記実施の形態に係るベランダ部材34では、外側面34Cとこの外側面34Cに連続する下端面34Dの一部にタイル5を張り付けるようにしているがこれに限られるものではなく、下端面34D全面にタイル5を張り付けるようにしてもよいし、外側面34Cと下端面34Dとの所望の部位にタイル5を張り付けるようにしてもよいことはいうまでもない。また、張り付け材は、タイルに限られるものではなく、建物の美観を高めるものや、部材の耐熱耐寒性能を高める断熱性材料であってもよい。さらに、上記実施の形態に係る型枠30では、可動側型枠35に車台37を用いているがこれに限られるものではなく、可動側型枠35を作業床10上で移動させるものであればよいことはいうまでもない。また、上記実施の形態では、ベランダ部材34とベランダ床33とを同時に製造するようにしているがこれに限られるものではなく、第1の型枠部11と型枠部44とに代えて、部材34の内側面34A全面を成型する成型面を有する単一の固定側型枠を設けるようにしてもよい。さらに、タイル5は接着薄片15Aを介して可動側型枠35の成型面35A、35Bに接着するようにしているがこれに限られるものではなく、個々のタイルごとに接着部材を介して成型面35A、35Bに接着するようにしてもよい。さらに、張り付け部材接着シール15を成型面35A、35Bに接着した際、タイル5間に形成される目地空間にタイル5の厚さより薄い填隙部材を差し入れてベランダ部材34を成型し、脱型後、填隙部材を取り除いた目地溝に目地材を充填するようにしてもよい。また、上記実施の形態に係る型枠と型枠を用いた張り付け材打ち込み工法およびその型枠により製造される建物の部材では、建物の部材34の下面に上方に凹陥する水切り溝18を形成するようにしているが、なくてもよいことはいうまでもない。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように本発明に係る型枠によれば、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え、張り付け材を打ち込みのため先張りした型枠において、部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てたので、可動側型枠の組立や張り付け作業を、作業しやすい場所で行うことができるので作業性が向上する。また、可動側型枠への張り付け材の接着時、作業者の目の前で張り付け材を接着することができるので、脱型時、張り付け材の配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて張り付けることができる。また、部材外側面と部材下端面との両面に張り付け材を同時に張り付けることができるので、作業時間を短縮することができる。
【0032】
また、本発明に係る型枠を用いた張り付け材打ち込み工法によれば、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を打ち込みのために先張りした型枠により部材に張り付け材を張り付ける張り付け材打ち込み工法において、作業床上に部材の内側面を成型する成型面を有する固定側型枠を組み立てる第1のステップと、固定側型枠と取り外し可能に接続され部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し作業床上を移動自在な可動側型枠を設け、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着する第2のステップと、張り付け材が接着された可動側型枠を移動させ、上記固定側型枠に接続して型枠を組み立てる第3のステップと、上記型枠にコンクリートを打設し、硬化後、可動側型枠を固定側型枠から取り外して移動させる第4のステップとを備えて構成したので、第2のステップで可動側型枠成型面のうち部材の下端面を成型する成型面の所望の部位に、部材の外側面を成型する成型面に接着された張り付け材と合致させて下端面側張り付け材を正確に接着するだけで、脱型時、部材外側面と部材下端面との両面に張り付け材の配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けることができ、作業効率が向上する。また、可動側型枠の組立や張り付け作業を、作業しやすい場所で行うことができるので作業性が向上するとともに、張り付けの精度を向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る型枠により製造される建物の部材によれば、部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を先張りした型枠により製造される建物の部材であって、部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てた型枠にコンクリートを打設して製造されるので、脱型された部材の外側面と下端面とには、張り付け材が、配列を互いに正確に合致させ目地を合わせて同時に張り付けられ、作業効率が向上するとともに、張り付け精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る型枠の要部を示す縦断面図である。
【図2】(A)ないし(D)はそれぞれ図1の型枠を用いた張り付け材打ち込み工法により建物の部材を製造する工程を順に示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る張り付け材打ち込み型枠により製造される建物の部材の要部を示す一部破断斜視図である。
【図4】従来の建物の部材の要部を示す一部破断斜視図である。
【図5】(A)ないし(D)は従来の型枠を用いた張り付け材打ち込み工法により建物の部材を製造する工程を順に示す説明図である。
【符号の説明】
5 タイル(張り付け材)
10 作業床
11 第1の型枠部(固定側型枠)
30 型枠
34 部材
34A 部材の内側面
34C 部材の外側面
34D 部材の下端面
35 可動側型枠
35A、35B 成型面
37 車台
h1 所定の高さ

Claims (4)

  1. 部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え、張り付け材を打ち込みのため先張りした型枠において、
    部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てたことを特徴とする型枠。
  2. 部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を打ち込みのために先張りした型枠により部材に張り付け材を張り付ける張り付け材打ち込み工法において、
    作業床上に部材の内側面を成型する成型面を有する固定側型枠を組み立てる第1のステップと、
    固定側型枠と取り外し可能に接続され部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し作業床上を移動自在な可動側型枠を設け、この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着する第2のステップと、
    張り付け材が接着された可動側型枠を移動させ、上記固定側型枠に接続して型枠を組み立てる第3のステップと、
    上記型枠にコンクリートを打設し、硬化後、可動側型枠を固定側型枠から取り外して移動させる第4のステップとを備えて構成したことを特徴とする型枠を用いた張り付け材打ち込み工法。
  3. 第2のステップで、可動側型枠の成型面には、部材の外側面を成型する成型面とともに、部材の下端面を成型する成型面のうち外側面から連続する部位に張り付け材が接着されることを特徴とする請求項2に記載の型枠を用いた張り付け材打ち込み工法。
  4. 部材の内側面と外側面と下端面とをそれぞれ成型する成型面を備え張り付け材を先張りした型枠により製造される建物の部材であって、
    部材の内側面を成型する成型面を有し、作業床上に組み立てられる固定側型枠と、部材の外側面と下端面とを成型する成型面を有し、上記固定側型枠と取り外し可能に接続されるとともに、作業床上を移動自在な可動側型枠とを備えて構成し、
    この可動側型枠の成型面に、予め設計された上記部材の外側面と下端面とに張り付けられるべき所望の配置に合致させて張り付け材を剥離可能に接着させ、この可動側型枠を上記固定側型枠に接続して組み立てた型枠にコンクリートを打設して製造されることを特徴とする型枠により製造される建物の部材。
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