JP3562244B2 - テーパ状スプライン歯成形装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機用歯車等において用いられるテーパ状スプライン歯を成形するための装置に関するもので、より詳細には、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯を軸心方向に沿って形成した粗形材に対し、その両端面にそれぞれ保持部材を当接させることによって該粗形材を所定の加工位置に位置決め保持し、さらにこの状態から前記粗形材の直状スプライン歯にテーパ状スプライン歯成形部を押し当てることにより、該直状スプライン歯をそれぞれテーパ状スプライン歯に成形するようにしたテーパ状スプライン歯成形装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、四輪自動車の変速機に適用されるクラッチギアには、不用意なギア抜けを防止するため、スリーブとの噛み合い機構としてテーパ状スプライン歯を適用するものがある。
【0003】
このテーパ状スプライン歯は、先端に向けて漸次歯厚が大となるようにテーパ状に形成したもので、スリーブのスプライン歯と噛み合っている状態において関連部品のばらつき、がた、負荷等の要因により、スリーブのスプライン歯に抜け方向の力が発生しないようにしている。
【0004】
この種のテーパ状スプライン歯は、上述したように、軸方向に沿って歯厚が変化するものであるため、従前の直状スプライン歯を成形するための装置を適用してこれを成形することが困難である。
【0005】
このため従来では、図10に示すような成形装置が提供されている。
【0006】
この成形装置は、互いに開閉する上型1および下型2を備えるとともに、該下型2に軸心が鉛直方向に沿う状態で配設したワークベース3と、水平方向に沿って互いに放射状に配設し、それぞれがワークベース3の軸心に近接離反する態様で個々の長手方向に進退移動する複数のダイ4とを備えている。
【0007】
上記の成形装置では、まず、粗形材Ws をワークベース3の先端部に配置し、この状態から上型1を下動させることにより、これら上型1および下型2の間に粗形材Ws を位置決め保持させる。このとき、粗形材Ws には、従前から用いられている成形装置を適用して、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯Ss を軸心方向に沿って形成しておく。
【0008】
上述した状態から複数のダイ4をそれぞれワークベース3の軸心に近接する方向に移動させ、各ダイ4の先端部に形成したテーパ状スプライン歯成形部4aを粗形材Ws の直状スプライン歯Ss に押し当てれば、該直状スプライン歯Ss がそれぞれテーパ状スプライン歯に成形されることになる。
【0009】
このような成形装置によれば、鍛造のみの成形となるため、クラッチギアの製造工程を簡略化できるとともに、クラッチギアのギア部とテーパ状スプライン歯とでメタルフローが切断されないため、高強度のクラッチギアを成形することができるようになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した成形装置にあっては、多数の独立したダイ4を放射状に配置し、しかもこれらダイ4をそれぞれの長手方向に沿って水平方向へ移動させるのであるから、粗形材Ws の外周域に広いダイスペースが必要となり、装置の大型化を招来する。
【0011】
さらに、放射状に配設した個々のダイ4を直状スプライン歯Ss に正確に押し付けるには、ダイ4およびその摺動部に高度な加工精度が要求されるため、装置の製造コストを著しく増大させる要因となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置の大型化および製造コストの著しい増大を招来することなくテーパ状スプライン歯を成形することのできる装置を提供することを解決課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯を軸心方向に沿って形成した粗形材に対し、その両端面にそれぞれ保持部材を当接させることによって該粗形材を所定の加工位置に位置決め保持し、さらにこの状態から前記粗形材の直状スプライン歯にテーパ状スプライン歯成形部を押し当てることにより、該直状スプライン歯をそれぞれテーパ状スプライン歯に成形するようにしたテーパ状スプライン歯成形装置において、それぞれが前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在し、かつ個々の先端部内面にそれぞれ前記テーパ状スプライン歯成形部を具備しており、常態において個々の先端部が互いに拡開し、各テーパ状スプライン歯成形部を、前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の直状スプライン歯から離隔した位置に配置させる一方、個々の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接させた場合に前記粗形材の軸心を中心とした略円筒を構成し、各テーパ状スプライン歯成形部をそれぞれ前記粗形材の直状スプライン歯に当接させた位置に配置させる複数の弾性舌片と、前記複数の弾性舌片の外周面に離接する態様で前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心に沿って移動可能に配設し、各テーパ状スプライン歯成形部の外周域に占位した場合に前記弾性舌片の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接した状態に保持させる押圧部材とを備えている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の一実施形態を概念的に示したものである。ここで例示する成形装置は、自動二輪車や四輪自動車の変速機用歯車として用いられるクラッチギア、たとえば図7に示すような四輪自動車用変速機のカウンタシャフトに配設されるセカンドギアWの製造過程において適用され、図6(d)および図6(e)に示すようなセカンドギア粗形材Ws から、鍛造プレス機械によって、図6(f)乃至図6(h)に示すようなセカンドギア半成形品Wh を成形する場合に適用するものである。
【0015】
ここで、変速機のセカンドギアWは、図7に示すように、外周面に変速用のヘリカル歯gを形成した歯車部Gと、この歯車部Gの一側面に配設し、該歯車部Gよりも小径となる外周面にテーパ状スプライン歯Ts を形成したスプライン部Sと、このスプライン部Sの一側面に配設し、該スプライン部Sから離隔するにしたがって漸次外径が減少するテーパ状を成したコーン部Cとを備えており、互いの軸心を合致させた状態でこれら歯車部G、スプライン部Sおよびコーン部Cを一体とし、さらにその中心部にカウンタシャフト装着孔Hc を穿設したものである。テーパ状スプライン歯Ts は、図6(h)に示すように、軸方向に沿った歯厚がコーン部Cに向かうにしたがって漸次増大し、さらにその先端部にかみ合いを補助するためのチャンファCh を有している。
【0016】
一方、本成形装置が成形対象とするセカンドギア粗形材Ws は、図6(d)に示すように、上述したセカンドギアWの歯車部G、スプライン部Sおよびコーン部Cに相当する各部分G′,S′,C′を大まかに成形し、さらにその中心部に上述したカウンタシャフト装着孔Hc よりも細径の軸孔Hj を穿設するとともに、スプライン部相当部分S′の外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯Ss を軸心方向に沿って形成したものである。直状スプライン歯Ss は、図6(e)に示すように、軸方向に沿った歯厚が一定であり、その先端部に上述したテーパ状スプライン歯Ts と同様のチャンファCh を有している。
【0017】
このセカンドギア粗形材Ws は、以下に示す手順によって経て成形されるものである。
【0018】
(1) SC鋼(炭素鋼鋳鋼品)、SCM鋼(クロムモリブデン鋼鋼材)、SNC鋼(ニッケルクロム鋼)、SNCM鋼(ニッケルクロムモリブデン鋼)、SCr鋼(クロム鋼鋼材)等々の適宜な鋼材の中から最適な鋼材を選択し、図6(a)に示すように、これを所要の長さに切断して原材料Wo を得る。
【0019】
(2) 原材料Wo に対して据え込み等の適宜な熱間鍛造成形を施すことにより、図6(b)に示すような第1素材W1 を形作る。
【0020】
(3) 第1素材W1 に対して、さらに適宜鍛造成形を施し、図6(c)に示すような第2素材W2 を形作る。
【0021】
(4) 第2素材W2 に対して、孔明け、ショットブラスト、冷間コイニング等々の処理を施し、図6(d)に示すようなセカンドギア粗形材Ws を形作る。
【0022】
さて、上記のような構成を有したセカンドギア粗形材Ws を成形対象とする成形装置は、図1に示すように、鉛直方向に沿って互いに開閉移動する上ラムベース10および下ラムベース30を備えている。
【0023】
上ラムベース10は、下面10aが水平に延在する平坦状を成しており、その中心部に形成した上型装着穴10bにスリーブホルダ11およびスリーブ12を保持している。
【0024】
スリーブホルダ11は、上記上型装着穴10bの内径とほぼ同一の外径を有し、かつ該上型装着穴10bよりも長さの短い円柱状を成すもので、その中心部にスプリング収容孔11aを有しており、その基端面を上型装着穴10bの内底面に当接させた状態で該上型装着穴10bに嵌着保持させている。なお、図中の符号13は、スプリング収容孔11aの基端部に嵌着させたバネ座である。
【0025】
スリーブ12は、基端部が上記スリーブホルダ11と同一外径の円柱状を成すとともに、先端部が該スリーブホルダ11よりも十分太径の円柱状を成すもので、その中心部に上記スプリング収容孔11aの内径よりも細径の摺動孔12aを有しており、その基端面を上記スリーブホルダ11の先端面に当接させた状態で基端部を介して上記上型装着穴10bに嵌着保持させている。
【0026】
このスリーブ12には、上述した摺動孔12aにガイドシャフト14を配設しているとともに、その先端面にガイドリング15およびチャックプッシャ(押圧部材)16を配設している。
【0027】
ガイドシャフト14は、上記摺動孔12aの内径とほぼ同一の外径で、該摺動孔12aよりも長さの大きい円柱状を成し、その基端部に上記スプリング収容孔11aの内径とほぼ同一の外径を有した規制フランジ14aを具備するとともに、その先端面にワークプッシャ(保持部材)17を保持しており、規制フランジ14aをスリーブホルダ11のスプリング収容孔11aに配置させる一方、ワークプッシャ17をスリーブ12の先端面側に配置させ、さらにスリーブホルダ11のスプリング収容孔11aにおいてその基端面とバネ座13との間に押圧スプリング18を介在させた状態で上記摺動孔12aに摺動可能に嵌挿している。
【0028】
ワークプッシャ17は、セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′とほぼ同一の外径を有した第1円柱状部分17aと、この第1円柱状部分17aの先端部から先端に向かうにしたがって漸次外径が減少するように延在したテーパ状部分17bと、このテーパ状部分17bの先端部から延在し、上記セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′よりもわずかに外径の小さい円柱状を成す第2円柱状部分17cとを有し、さらにこの第2円柱状部分17cの先端面に、セカンドギア粗形材Ws の他側面、つまりスプライン部Sを配設していない方の側面に当接嵌合することによって該セカンドギア粗形材Ws の軸心を第2円柱状部分17cの軸心に合致させるための当接嵌合部17dを形成したもので、その軸心をガイドシャフト14の軸心に合致させた状態で、第1円柱状部分17aの基端面を介して当該ガイドシャフト14の先端面に接触保持させている。
【0029】
図からも明らかなように、このワークプッシャ17は、常態において上述した押圧スプリング18の押圧力によりガイドシャフト14を介して下動しており、第1円柱状部分17aの基端面がスリーブ12の先端面から離隔した状態に保持されている。
【0030】
ガイドリング15は、上述したスリーブ12の先端部と同一外径の円柱状を成すもので、その中心部にガイド孔19を有しており、該ガイド孔19の軸心をスリーブ12の軸心に合致させた状態で該スリーブ12の先端面に固着させている。ガイド孔19は、第1円柱状部分17aの外径とほぼ同一内径の第1円柱状ガイド部分19aと、この第1円柱状ガイド部分19aの先端から上述したテーパ状部分17bと同一の傾斜角度で漸次内径が減少するように延在したテーパ状孔部分19bと、このテーパ状孔部分19bの先端部から延在し、上記第2円柱状部分17cの外径とほぼ同一内径の第2円柱状ガイド部分19cとを有しており、上述したワークプッシャ17が常態にある場合にテーパ状孔部分19bの内周面がテーパ状部分17bに当接し、かつ第2円柱状ガイド部分19cの先端開口を介して第2円柱状部分17cの先端部をガイドリング15の先端面から外部に突出させている。
【0031】
チャックプッシャ16は、上記ガイドリング15と同一の外径を有した円柱状を成すもので、その中心部に挿入孔16aおよび傾斜カム孔16bを有しており、これら挿入孔16aおよび傾斜カム孔16bの軸心をそれぞれガイドリング15の軸心に合致させた状態で該ガイドリング15の先端面に固着させている。
【0032】
挿入孔16aは、セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′の外径よりもわずかに大きな内径をもって形成したもので、その内部にワークプッシャ17におけるガイドリング15の先端面から突出した部分を収容している。
【0033】
傾斜カム孔16bは、上記挿入孔16aの先端部から先端に向けて漸次内径が増大するように形成したもので、その内周面に環状の傾斜カム面16cを構成している。
【0034】
なお、図中の符号20は、円筒状を成す上方ダイケースであり、スリーブ12の先端部、ガイドリング15およびチャックプッシャ16の外周部に嵌着することによってこれらスリーブ12、ガイドリング15およびチャックプッシャ16を相互に一体的に結合している。
【0035】
一方、下ラムベース30は、上面30aが水平に延在する平坦状を成しており、その中心部に下型装着穴31を有している。下型装着穴31は、上方ダイケース20の外径とほぼ同一内径のケース固着部31aと、このケース固着部31aの内底面に形成した細径のホルダ固着部31bとを有し、それぞれの軸心を上述した上型装着穴10bの軸心に合致させた状態で下ラムベース30に設けたもので、ケース固着部31aに下方ダイケース32の下端部を固着保持している。
【0036】
下方ダイケース32は、上方ダイケース20と同一の外径で、下型装着穴31のケース固着部31aよりも十分長さの大きな有底円筒状を成し、かつ底壁の中心部に上述したホルダ固着部31bよりも太径の挿通孔32aを有したもので、その内部にダイホルダ33を収容している。
【0037】
ダイホルダ33は、下型装着穴31におけるホルダ固着部31bの内径とほぼ同一外径の固着用円柱状部分33aと、下方ダイケース32の内径とほぼ同一外径の保持用柱状部分33bとを有し、下方ダイケース32の挿通孔32aを介して固着用円柱状部分33aを下型装着穴31のホルダ固着部31bに固着保持させたもので、保持用柱状部分33bの上面中心部にワークベースホルダ34を介してワークベース(保持部材)35を保持している。
【0038】
ワークベース35は、基端部周面に取付フランジを35a有し、かつ先端部周面に環状の収容溝35bを有するとともに、該収容溝35bよりも先端側に位置する部分がセカンドギア粗形材Ws のスプライン部相当部分S′よりもわずかに太径となる円柱状を成すもので、その軸心を下型装着穴31の軸心に合致させた状態でダイホルダ33の上面に配設している。
【0039】
図からも明らかなように、このワークベース35は、その先端部が下方ダイケース32の上端縁から突出するに十分な長さをもっており、その先端面にセカンドギア粗形材Ws の加工位置を規定するための位置決め収容孔35cを有している。位置決め収容孔35cは、セカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合に、該セカンドギア粗形材Ws の軸心をワークベース35の軸心に合致させるとともに、セカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss をワークベース35の上端面に位置させる作用を成すものである。
【0040】
また、上記ワークベース35の周囲には、テーパ状スプライン歯成形型40およびチャックホルダ36を順次配設し、さらにワークベース35とテーパ状スプライン歯成形型40との間に位置する部位にノックアウトスプリング部材37を介在させている。
【0041】
テーパ状スプライン歯成形型40は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)等の比較的弾性に富んだ材料から放電加工等の成形方法を適用して高精度に成形したもので、基端部周面に位置決めフランジ41を有し、かつその筒状部分(弾性舌片)45の外周側において位置決めフランジ41から軸方向のほぼ中間部に至る部分を薄肉に形成し、さらに中心部に上述したワークベース35の外径とほぼ同一内径の取付孔42を有した略円筒状を成しており、その軸心をワークベース35の軸心に合致させた状態で、位置決めフランジ41を介してワークベースホルダ34の上面に固定している。
【0042】
このテーパ状スプライン歯成形型40は、筒状部分45の先端部が上記ワークベース35の上端面から、上述したセカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の長さに相当する距離だけ上方に突出する長さを有しており、その先端部内周面に複数のテーパ状スプライン歯成形部43を備えている。
【0043】
テーパ状スプライン歯成形部43は、図1乃至図5に示すように、上述したワークベース35の位置決め収容孔35cにセカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合において、該セカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の各相互間に対向する部位のそれぞれに設けた突出部であり、互いの間にセカンドギアWのテーパ状スプライン歯Ts と同一形状の凹部を確保するべく、テーパ状スプライン歯成形型40の軸心に沿って基端部側に向かうにしたがい漸次幅が減少する形状を成している。
【0044】
これらテーパ状スプライン歯成形部43は、テーパ状スプライン歯成形型40の先端面から位置決めフランジ41の直前までの間に位置する筒状部分45に、該テーパ状スプライン歯成形型40の軸心に沿って放射状のスリット44を施すことにより、該筒状部分45と共に相互に等分割され、各筒状部分45、特に薄肉部が弾性的に変形することにより、互いに拡縮する態様で移動することが可能であり、上述したスリット加工による応力特性上、常態においてそれぞれが薄肉部の基端部を起点として互いにわずかに拡開した状態に保持される一方、各筒状部分45の弾性力に抗して相互に近接させた場合に個々の内端面を結ぶ仮想円の内径Ds が上述したセカンドギア粗形材Ws のスプライン部相当部分S′において直状スプライン歯Ss 相互間の溝を結ぶ外径ds と同一になるとともに、それぞれの外周面を結ぶ円の外径Dp が上述したチャックプッシャ16における挿入孔16aの内径Dp とほぼ同一となるように構成している。
【0045】
チャックホルダ36は、図1に示すように、ダイホルダ33の保持用柱状部分33bと同一の外径を有するとともに、その中心部にテーパ状スプライン歯成形型40の外径Dp よりもわずかに大きな規制孔36aを有した円筒状を成すもので、その軸心をワークベース35の軸心に合致させた状態で、ワークベースホルダ34の上面、および下方ダイケース32の内周面にそれぞれ固着保持させている。
【0046】
図からも明らかなように、このチャックホルダ36は、下方ダイケース32の上端縁を越えて上方に突出し、その先端部をワークベース35に形成した環状の収容溝35bに相当する部位に配置することのできる長さを有している。
【0047】
また、チャックホルダ36に形成した規制孔36aは、上述したワークベース35の収容溝35bに相当する部分から先端部側に位置する部分がわずかに細径となっており、テーパ状スプライン歯成形型40の先端部外周面に当接することによって、各テーパ状スプライン歯成形部43が互いに最も拡開した状態位置を規制し、ワークベース35の位置決め収容孔35cにセカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合において、テーパ状スプライン歯成形部43の各内端部をそれぞれセカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の各相互間にわずかに介在させた状態に保持する作用を成す。
【0048】
ノックアウトスプリング部材37は、ゴム等の弾性に富んだ材質によって環状に成形したもので、ワークベース35に形成した収容溝35bに嵌着保持させており、常態においてテーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡開させ、テーパ状スプライン歯成形型40の外周面をそれぞれチャックホルダ36の規制孔36aに当接させた状態に保持する一方、該テーパ状スプライン歯成形型40の外周面を押圧した場合に容易に弾性的に変形し、各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に近接させた状態に保持させることが可能である。
【0049】
なお、図中の符号38は、下型押さえであり、チャックホルダ36を介して上述したテーパ状スプライン歯成形型40、ワークベースホルダ34、ワークベース35およびダイホルダ33をそれぞれ下ラムベース30に保持させる作用を成す。また、図中の符号21は、上型押さえであり、上型ダイケース20を上ラムベース10に保持させる作用を成す。
【0050】
上記のように構成した成形装置では、図1(a)に示すように、上ラムベース10をその上死点に保持させ、該上ラムベース10が下ラムベース30から最も離隔した状態が成形待機状態となっている。
【0051】
上述した成形待機状態からセカンドギア粗形材Ws に成形を施す場合には、まず、ワークベース35の位置決め収容孔35cにコーン部相当部分C′を嵌合させることによってセカンドギア粗形材Ws の軸心を当該ワークベース35の軸心に合致させた状態に配置させる。
【0052】
このとき、各筒状部分45の弾性力、並びにノックアウトスプリング部材37の押圧力により、テーパ状スプライン歯成形型40の外周面がそれぞれチャックホルダ36の規制孔36aに当接した状態にあり、各テーパ状スプライン歯成形部43の内端部が直状スプライン歯Ss の各相互間にわずかに介在することになるため、結局、当該テーパ状スプライン歯成形部43とセカンドギア粗形材Ws との周方向の位置決めも同時に行われることになる。またこのとき、ワークベース35に配置させたセカンドギア粗形材Ws の上端面とワークプッシャ17における第2円柱状部分17cの先端面との間の距離は、チャックホルダ36の先端面とチャックプッシャ16の先端面との距離よりも小さいものとなっている。
【0053】
セカンドギア粗形材Ws をワークベース35に配置した状態から鍛造プレス機械を作動させ、上ラムベース10を下動させると、図1(b)において中心線よりも左側の部分に示すように、ワークプッシャ17の当接嵌合部17dがセカンドギア粗形材Ws の他側面に当接嵌合することにより、これらワークベース35およびワークプッシャ17の間にセカンドギア粗形材Ws が位置決め保持されることになる。
【0054】
このとき、テーパ状スプライン歯成形部43の外周には、チャックプッシャ16の傾斜カム孔16bが占位されるだけであり、該テーパ状スプライン歯成形部43が、依然として相互に拡開した状態に保持されている。
【0055】
上述した状態からさらに上ラムベース10を下動させると、チャックプッシャ16の傾斜カム面16cに案内され、各筒状部分45の弾性力、並びにノックアウトスプリング部材37の弾性力に抗して各テーパ状スプライン歯成形部43が薄肉部の基端部を起点として弧状を成すように漸次近接する方向に移動し、上記上ラムベース10がその下死点に達した場合にチャックプッシャ16の挿入孔16aがテーパ状スプライン歯成形部43の外周域に占位することになり、該テーパ状スプライン歯成形部43が互いに近接した状態に保持される。
【0056】
この状態においては、テーパ状スプライン歯成形部43のそれぞれが大きな力を持ってセカンドギア粗形材Ws における直状スプライン歯Ss の相互間に押圧されることになるため、各直状スプライン歯Ss が塑性変形し、図6(h)に示すように、テーパ状スプライン歯成形部43の形状にしたがってテーパ状スプライン歯Ts が成形されることになる。
【0057】
なお、これらの動作の間、ワークプッシャ17は、押圧スプリング18が撓むことにより、上ラムベース10に対して適宜上動し、セカンドギア粗形材Ws の他側面に当接嵌合した状態に保持されている。
【0058】
上述した状態から鍛造プレス機械の作動が進行すると、上ラムベース10が漸次上動することになり、やがて再び図1(a)に示した状態に復帰する。
【0059】
この間、テーパ状スプライン歯成形型40は、チャックプッシャ16がその外周域から逸脱した時点で各筒状部分45の弾性復元力、並びにノックアウトスプリング部材37の弾性復元力によってテーパ状スプライン歯成形部43が相互に拡開した状態に復帰することになるため、成形終了後のセカンドギア粗形材Ws 、つまり図6(f)に示すようなセカンドギア半成形品Wh をワークベース35から容易に取り出すことができるとともに、次のセカンドギア粗形材Ws を配置することが可能となる。
【0060】
以下、上述した操作を繰り返すことにより、セカンドギア粗形材Ws に順次テーパ状スプライン歯Ts が成形されることになる。
【0061】
このように上記成形装置によれば、ワークベース35の位置決め収容孔35cに配置させたセカンドギア粗形材Ws に対して、その軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在する複数の筒状部分45の各先端部内周面に、常態において互いに拡開するテーパ状スプライン歯成形部43を設け、かつ上述した軸心に沿って移動するチャックプッシャ16によってこれらテーパ状スプライン歯成形部43を相互に近接させた状態に保持させるようにしたものであるから、上記セカンドギア粗形材Ws の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部43が拡縮するための移動領域、並びにチャックプッシャ16が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができる。
【0062】
しかも、上記成形装置によれば、筒状部分45の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部43の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することもできる。
【0063】
なお、上述した実施の形態では、セカンドギアWのテーパ状スプライン歯Ts を成形するための装置を例示しているが、本発明ではこれに限定されず、たとえば図9に示すように、シャフトとクラッチギアとを一体に成形したもの、たとえば四輪自動車用変速機に用いられるスプラインシャフトSt と軸受部Ju と入力歯車Gi とを一体に成形したメインシャフトMのテーパ状スプライン歯Ts を成形することも可能である。
【0064】
図8は、上述したメインシャフトMの粗形材Ms を成形対象とする成形装置を例示したものである。
【0065】
この成形装置では、先に図1で示した成形装置のガイドシャフト14に相当する部材を粗形材Ms におけるスプラインシャフト相当部分St′ と同一外径のワークプッシャシャフト(保持部材)50として適用し、さらにガイドリング15およびスリーブ12に相当する部材を一体に成形したものをスリーブ体51として適用し、その中心部に粗形材Ms のスプラインシャフト相当部分St′ および軸受部相当部分Ju′ を収容させるガイド孔51aを形成している。このガイド孔51aは、その上端部を基端部よりも細径に形成したもので、該上端部が粗形材Ms におけるスプラインシャフト相当部分St′ およびワークプッシャシャフト50の外径とほぼ同一の内径を有している。なお、テーパ状スプライン歯成形型40を含むその他の構成に関しては、図1に示した成形装置と同様であり、同様の作用によって粗形材Ms にテーパ状スプライン歯Ts を成形するものであるため、同様の構成に同一の符号を付すことにより、それぞれの詳細構成、並びに作用の説明については省略する。
【0066】
この図8に示した成形装置においても、粗形材Ms の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部43が拡縮するための移動領域、並びにチャックプッシャ16が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができるとともに、筒状部分45の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部43の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することができる。
【0067】
なお、上述した実施の形態および変形例では、いずれも予め円筒状に一体に成形した筒状部分にスリットを施すことにより、互いの基端部が連結した弾性舌片を構成するようにしているため、装置を製造する場合においてこれら弾性部材相互の位置決めが不要となり、製造コストの低減を図ることも可能になる。
【0068】
しかしながら、本発明では、個別に弾性舌片を構成し、これを位置決め保持させた粗形材の軸心が中心となる円筒状に配置してもよく、たとえばワークベースの外周面にそれぞれの基端部を固着保持させるようにしてもよく、このような構成であっても上述した成形装置と同様の作用効果を期待することができる。
【0069】
また、上述した実施の形態および変形例では、いずれもノックアウトスプリング部材を適用するようにしているため、仮にテーパ状スプライン歯成形部が粗形材に噛み込んだ状態となった場合にも、該ノックアウトスプリング部材の弾性復元力によってこれを確実に解除することが可能であるが、本発明では必ずしもノックアウトスプリング部材を適用する必要はない。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在する複数の弾性部材の各先端部内周面に常態において互いに拡開するテーパ状スプライン歯成形部を設け、かつ上述した軸心に沿って移動する押圧部材によってこれらテーパ状スプライン歯成形部を相互に近接させた状態に保持させるようにしたものであるから、粗形材の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部が拡縮するための移動領域、並びに押圧部材が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができるようになる。
【0071】
しかも、弾性部材の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の一実施形態を概念的に示した断面図である。
【図2】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置の要部を概念的に示した断面図である。
【図3】図2における矢視 III 図である。
【図4】図3における IV 部拡大図である。
【図5】図4における矢視 V 図である。
【図6】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用したクラッチギアの製造工程を示した概念図である。
【図7】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用して成形される四輪自動車用変速機のセカンドギアを概念的に示した断面図である。
【図8】本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の変形例を概念的に示した断面図である。
【図9】図8に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用して成形される四輪自動車用変速機のメインシャフトを概念的に示した断面図である。
【図10】従来のテーパ状スプライン歯成形装置を概念的に示した断面図である。
【符号の説明】
16…チャックプッシャ
17…ワークプッシャ
35…ワークベース
43…テーパ状スプライン歯成形部
45…筒状部分
50…ワークプッシャシャフト
Ss …直状スプライン歯
Ts …テーパ状スプライン歯
Ws ,Ms …粗形材
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機用歯車等において用いられるテーパ状スプライン歯を成形するための装置に関するもので、より詳細には、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯を軸心方向に沿って形成した粗形材に対し、その両端面にそれぞれ保持部材を当接させることによって該粗形材を所定の加工位置に位置決め保持し、さらにこの状態から前記粗形材の直状スプライン歯にテーパ状スプライン歯成形部を押し当てることにより、該直状スプライン歯をそれぞれテーパ状スプライン歯に成形するようにしたテーパ状スプライン歯成形装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば、四輪自動車の変速機に適用されるクラッチギアには、不用意なギア抜けを防止するため、スリーブとの噛み合い機構としてテーパ状スプライン歯を適用するものがある。
【0003】
このテーパ状スプライン歯は、先端に向けて漸次歯厚が大となるようにテーパ状に形成したもので、スリーブのスプライン歯と噛み合っている状態において関連部品のばらつき、がた、負荷等の要因により、スリーブのスプライン歯に抜け方向の力が発生しないようにしている。
【0004】
この種のテーパ状スプライン歯は、上述したように、軸方向に沿って歯厚が変化するものであるため、従前の直状スプライン歯を成形するための装置を適用してこれを成形することが困難である。
【0005】
このため従来では、図10に示すような成形装置が提供されている。
【0006】
この成形装置は、互いに開閉する上型1および下型2を備えるとともに、該下型2に軸心が鉛直方向に沿う状態で配設したワークベース3と、水平方向に沿って互いに放射状に配設し、それぞれがワークベース3の軸心に近接離反する態様で個々の長手方向に進退移動する複数のダイ4とを備えている。
【0007】
上記の成形装置では、まず、粗形材Ws をワークベース3の先端部に配置し、この状態から上型1を下動させることにより、これら上型1および下型2の間に粗形材Ws を位置決め保持させる。このとき、粗形材Ws には、従前から用いられている成形装置を適用して、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯Ss を軸心方向に沿って形成しておく。
【0008】
上述した状態から複数のダイ4をそれぞれワークベース3の軸心に近接する方向に移動させ、各ダイ4の先端部に形成したテーパ状スプライン歯成形部4aを粗形材Ws の直状スプライン歯Ss に押し当てれば、該直状スプライン歯Ss がそれぞれテーパ状スプライン歯に成形されることになる。
【0009】
このような成形装置によれば、鍛造のみの成形となるため、クラッチギアの製造工程を簡略化できるとともに、クラッチギアのギア部とテーパ状スプライン歯とでメタルフローが切断されないため、高強度のクラッチギアを成形することができるようになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した成形装置にあっては、多数の独立したダイ4を放射状に配置し、しかもこれらダイ4をそれぞれの長手方向に沿って水平方向へ移動させるのであるから、粗形材Ws の外周域に広いダイスペースが必要となり、装置の大型化を招来する。
【0011】
さらに、放射状に配設した個々のダイ4を直状スプライン歯Ss に正確に押し付けるには、ダイ4およびその摺動部に高度な加工精度が要求されるため、装置の製造コストを著しく増大させる要因となる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置の大型化および製造コストの著しい増大を招来することなくテーパ状スプライン歯を成形することのできる装置を提供することを解決課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯を軸心方向に沿って形成した粗形材に対し、その両端面にそれぞれ保持部材を当接させることによって該粗形材を所定の加工位置に位置決め保持し、さらにこの状態から前記粗形材の直状スプライン歯にテーパ状スプライン歯成形部を押し当てることにより、該直状スプライン歯をそれぞれテーパ状スプライン歯に成形するようにしたテーパ状スプライン歯成形装置において、それぞれが前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在し、かつ個々の先端部内面にそれぞれ前記テーパ状スプライン歯成形部を具備しており、常態において個々の先端部が互いに拡開し、各テーパ状スプライン歯成形部を、前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の直状スプライン歯から離隔した位置に配置させる一方、個々の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接させた場合に前記粗形材の軸心を中心とした略円筒を構成し、各テーパ状スプライン歯成形部をそれぞれ前記粗形材の直状スプライン歯に当接させた位置に配置させる複数の弾性舌片と、前記複数の弾性舌片の外周面に離接する態様で前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心に沿って移動可能に配設し、各テーパ状スプライン歯成形部の外周域に占位した場合に前記弾性舌片の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接した状態に保持させる押圧部材とを備えている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の一実施形態を概念的に示したものである。ここで例示する成形装置は、自動二輪車や四輪自動車の変速機用歯車として用いられるクラッチギア、たとえば図7に示すような四輪自動車用変速機のカウンタシャフトに配設されるセカンドギアWの製造過程において適用され、図6(d)および図6(e)に示すようなセカンドギア粗形材Ws から、鍛造プレス機械によって、図6(f)乃至図6(h)に示すようなセカンドギア半成形品Wh を成形する場合に適用するものである。
【0015】
ここで、変速機のセカンドギアWは、図7に示すように、外周面に変速用のヘリカル歯gを形成した歯車部Gと、この歯車部Gの一側面に配設し、該歯車部Gよりも小径となる外周面にテーパ状スプライン歯Ts を形成したスプライン部Sと、このスプライン部Sの一側面に配設し、該スプライン部Sから離隔するにしたがって漸次外径が減少するテーパ状を成したコーン部Cとを備えており、互いの軸心を合致させた状態でこれら歯車部G、スプライン部Sおよびコーン部Cを一体とし、さらにその中心部にカウンタシャフト装着孔Hc を穿設したものである。テーパ状スプライン歯Ts は、図6(h)に示すように、軸方向に沿った歯厚がコーン部Cに向かうにしたがって漸次増大し、さらにその先端部にかみ合いを補助するためのチャンファCh を有している。
【0016】
一方、本成形装置が成形対象とするセカンドギア粗形材Ws は、図6(d)に示すように、上述したセカンドギアWの歯車部G、スプライン部Sおよびコーン部Cに相当する各部分G′,S′,C′を大まかに成形し、さらにその中心部に上述したカウンタシャフト装着孔Hc よりも細径の軸孔Hj を穿設するとともに、スプライン部相当部分S′の外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯Ss を軸心方向に沿って形成したものである。直状スプライン歯Ss は、図6(e)に示すように、軸方向に沿った歯厚が一定であり、その先端部に上述したテーパ状スプライン歯Ts と同様のチャンファCh を有している。
【0017】
このセカンドギア粗形材Ws は、以下に示す手順によって経て成形されるものである。
【0018】
(1) SC鋼(炭素鋼鋳鋼品)、SCM鋼(クロムモリブデン鋼鋼材)、SNC鋼(ニッケルクロム鋼)、SNCM鋼(ニッケルクロムモリブデン鋼)、SCr鋼(クロム鋼鋼材)等々の適宜な鋼材の中から最適な鋼材を選択し、図6(a)に示すように、これを所要の長さに切断して原材料Wo を得る。
【0019】
(2) 原材料Wo に対して据え込み等の適宜な熱間鍛造成形を施すことにより、図6(b)に示すような第1素材W1 を形作る。
【0020】
(3) 第1素材W1 に対して、さらに適宜鍛造成形を施し、図6(c)に示すような第2素材W2 を形作る。
【0021】
(4) 第2素材W2 に対して、孔明け、ショットブラスト、冷間コイニング等々の処理を施し、図6(d)に示すようなセカンドギア粗形材Ws を形作る。
【0022】
さて、上記のような構成を有したセカンドギア粗形材Ws を成形対象とする成形装置は、図1に示すように、鉛直方向に沿って互いに開閉移動する上ラムベース10および下ラムベース30を備えている。
【0023】
上ラムベース10は、下面10aが水平に延在する平坦状を成しており、その中心部に形成した上型装着穴10bにスリーブホルダ11およびスリーブ12を保持している。
【0024】
スリーブホルダ11は、上記上型装着穴10bの内径とほぼ同一の外径を有し、かつ該上型装着穴10bよりも長さの短い円柱状を成すもので、その中心部にスプリング収容孔11aを有しており、その基端面を上型装着穴10bの内底面に当接させた状態で該上型装着穴10bに嵌着保持させている。なお、図中の符号13は、スプリング収容孔11aの基端部に嵌着させたバネ座である。
【0025】
スリーブ12は、基端部が上記スリーブホルダ11と同一外径の円柱状を成すとともに、先端部が該スリーブホルダ11よりも十分太径の円柱状を成すもので、その中心部に上記スプリング収容孔11aの内径よりも細径の摺動孔12aを有しており、その基端面を上記スリーブホルダ11の先端面に当接させた状態で基端部を介して上記上型装着穴10bに嵌着保持させている。
【0026】
このスリーブ12には、上述した摺動孔12aにガイドシャフト14を配設しているとともに、その先端面にガイドリング15およびチャックプッシャ(押圧部材)16を配設している。
【0027】
ガイドシャフト14は、上記摺動孔12aの内径とほぼ同一の外径で、該摺動孔12aよりも長さの大きい円柱状を成し、その基端部に上記スプリング収容孔11aの内径とほぼ同一の外径を有した規制フランジ14aを具備するとともに、その先端面にワークプッシャ(保持部材)17を保持しており、規制フランジ14aをスリーブホルダ11のスプリング収容孔11aに配置させる一方、ワークプッシャ17をスリーブ12の先端面側に配置させ、さらにスリーブホルダ11のスプリング収容孔11aにおいてその基端面とバネ座13との間に押圧スプリング18を介在させた状態で上記摺動孔12aに摺動可能に嵌挿している。
【0028】
ワークプッシャ17は、セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′とほぼ同一の外径を有した第1円柱状部分17aと、この第1円柱状部分17aの先端部から先端に向かうにしたがって漸次外径が減少するように延在したテーパ状部分17bと、このテーパ状部分17bの先端部から延在し、上記セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′よりもわずかに外径の小さい円柱状を成す第2円柱状部分17cとを有し、さらにこの第2円柱状部分17cの先端面に、セカンドギア粗形材Ws の他側面、つまりスプライン部Sを配設していない方の側面に当接嵌合することによって該セカンドギア粗形材Ws の軸心を第2円柱状部分17cの軸心に合致させるための当接嵌合部17dを形成したもので、その軸心をガイドシャフト14の軸心に合致させた状態で、第1円柱状部分17aの基端面を介して当該ガイドシャフト14の先端面に接触保持させている。
【0029】
図からも明らかなように、このワークプッシャ17は、常態において上述した押圧スプリング18の押圧力によりガイドシャフト14を介して下動しており、第1円柱状部分17aの基端面がスリーブ12の先端面から離隔した状態に保持されている。
【0030】
ガイドリング15は、上述したスリーブ12の先端部と同一外径の円柱状を成すもので、その中心部にガイド孔19を有しており、該ガイド孔19の軸心をスリーブ12の軸心に合致させた状態で該スリーブ12の先端面に固着させている。ガイド孔19は、第1円柱状部分17aの外径とほぼ同一内径の第1円柱状ガイド部分19aと、この第1円柱状ガイド部分19aの先端から上述したテーパ状部分17bと同一の傾斜角度で漸次内径が減少するように延在したテーパ状孔部分19bと、このテーパ状孔部分19bの先端部から延在し、上記第2円柱状部分17cの外径とほぼ同一内径の第2円柱状ガイド部分19cとを有しており、上述したワークプッシャ17が常態にある場合にテーパ状孔部分19bの内周面がテーパ状部分17bに当接し、かつ第2円柱状ガイド部分19cの先端開口を介して第2円柱状部分17cの先端部をガイドリング15の先端面から外部に突出させている。
【0031】
チャックプッシャ16は、上記ガイドリング15と同一の外径を有した円柱状を成すもので、その中心部に挿入孔16aおよび傾斜カム孔16bを有しており、これら挿入孔16aおよび傾斜カム孔16bの軸心をそれぞれガイドリング15の軸心に合致させた状態で該ガイドリング15の先端面に固着させている。
【0032】
挿入孔16aは、セカンドギア粗形材Ws の歯車部相当部分G′の外径よりもわずかに大きな内径をもって形成したもので、その内部にワークプッシャ17におけるガイドリング15の先端面から突出した部分を収容している。
【0033】
傾斜カム孔16bは、上記挿入孔16aの先端部から先端に向けて漸次内径が増大するように形成したもので、その内周面に環状の傾斜カム面16cを構成している。
【0034】
なお、図中の符号20は、円筒状を成す上方ダイケースであり、スリーブ12の先端部、ガイドリング15およびチャックプッシャ16の外周部に嵌着することによってこれらスリーブ12、ガイドリング15およびチャックプッシャ16を相互に一体的に結合している。
【0035】
一方、下ラムベース30は、上面30aが水平に延在する平坦状を成しており、その中心部に下型装着穴31を有している。下型装着穴31は、上方ダイケース20の外径とほぼ同一内径のケース固着部31aと、このケース固着部31aの内底面に形成した細径のホルダ固着部31bとを有し、それぞれの軸心を上述した上型装着穴10bの軸心に合致させた状態で下ラムベース30に設けたもので、ケース固着部31aに下方ダイケース32の下端部を固着保持している。
【0036】
下方ダイケース32は、上方ダイケース20と同一の外径で、下型装着穴31のケース固着部31aよりも十分長さの大きな有底円筒状を成し、かつ底壁の中心部に上述したホルダ固着部31bよりも太径の挿通孔32aを有したもので、その内部にダイホルダ33を収容している。
【0037】
ダイホルダ33は、下型装着穴31におけるホルダ固着部31bの内径とほぼ同一外径の固着用円柱状部分33aと、下方ダイケース32の内径とほぼ同一外径の保持用柱状部分33bとを有し、下方ダイケース32の挿通孔32aを介して固着用円柱状部分33aを下型装着穴31のホルダ固着部31bに固着保持させたもので、保持用柱状部分33bの上面中心部にワークベースホルダ34を介してワークベース(保持部材)35を保持している。
【0038】
ワークベース35は、基端部周面に取付フランジを35a有し、かつ先端部周面に環状の収容溝35bを有するとともに、該収容溝35bよりも先端側に位置する部分がセカンドギア粗形材Ws のスプライン部相当部分S′よりもわずかに太径となる円柱状を成すもので、その軸心を下型装着穴31の軸心に合致させた状態でダイホルダ33の上面に配設している。
【0039】
図からも明らかなように、このワークベース35は、その先端部が下方ダイケース32の上端縁から突出するに十分な長さをもっており、その先端面にセカンドギア粗形材Ws の加工位置を規定するための位置決め収容孔35cを有している。位置決め収容孔35cは、セカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合に、該セカンドギア粗形材Ws の軸心をワークベース35の軸心に合致させるとともに、セカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss をワークベース35の上端面に位置させる作用を成すものである。
【0040】
また、上記ワークベース35の周囲には、テーパ状スプライン歯成形型40およびチャックホルダ36を順次配設し、さらにワークベース35とテーパ状スプライン歯成形型40との間に位置する部位にノックアウトスプリング部材37を介在させている。
【0041】
テーパ状スプライン歯成形型40は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)等の比較的弾性に富んだ材料から放電加工等の成形方法を適用して高精度に成形したもので、基端部周面に位置決めフランジ41を有し、かつその筒状部分(弾性舌片)45の外周側において位置決めフランジ41から軸方向のほぼ中間部に至る部分を薄肉に形成し、さらに中心部に上述したワークベース35の外径とほぼ同一内径の取付孔42を有した略円筒状を成しており、その軸心をワークベース35の軸心に合致させた状態で、位置決めフランジ41を介してワークベースホルダ34の上面に固定している。
【0042】
このテーパ状スプライン歯成形型40は、筒状部分45の先端部が上記ワークベース35の上端面から、上述したセカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の長さに相当する距離だけ上方に突出する長さを有しており、その先端部内周面に複数のテーパ状スプライン歯成形部43を備えている。
【0043】
テーパ状スプライン歯成形部43は、図1乃至図5に示すように、上述したワークベース35の位置決め収容孔35cにセカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合において、該セカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の各相互間に対向する部位のそれぞれに設けた突出部であり、互いの間にセカンドギアWのテーパ状スプライン歯Ts と同一形状の凹部を確保するべく、テーパ状スプライン歯成形型40の軸心に沿って基端部側に向かうにしたがい漸次幅が減少する形状を成している。
【0044】
これらテーパ状スプライン歯成形部43は、テーパ状スプライン歯成形型40の先端面から位置決めフランジ41の直前までの間に位置する筒状部分45に、該テーパ状スプライン歯成形型40の軸心に沿って放射状のスリット44を施すことにより、該筒状部分45と共に相互に等分割され、各筒状部分45、特に薄肉部が弾性的に変形することにより、互いに拡縮する態様で移動することが可能であり、上述したスリット加工による応力特性上、常態においてそれぞれが薄肉部の基端部を起点として互いにわずかに拡開した状態に保持される一方、各筒状部分45の弾性力に抗して相互に近接させた場合に個々の内端面を結ぶ仮想円の内径Ds が上述したセカンドギア粗形材Ws のスプライン部相当部分S′において直状スプライン歯Ss 相互間の溝を結ぶ外径ds と同一になるとともに、それぞれの外周面を結ぶ円の外径Dp が上述したチャックプッシャ16における挿入孔16aの内径Dp とほぼ同一となるように構成している。
【0045】
チャックホルダ36は、図1に示すように、ダイホルダ33の保持用柱状部分33bと同一の外径を有するとともに、その中心部にテーパ状スプライン歯成形型40の外径Dp よりもわずかに大きな規制孔36aを有した円筒状を成すもので、その軸心をワークベース35の軸心に合致させた状態で、ワークベースホルダ34の上面、および下方ダイケース32の内周面にそれぞれ固着保持させている。
【0046】
図からも明らかなように、このチャックホルダ36は、下方ダイケース32の上端縁を越えて上方に突出し、その先端部をワークベース35に形成した環状の収容溝35bに相当する部位に配置することのできる長さを有している。
【0047】
また、チャックホルダ36に形成した規制孔36aは、上述したワークベース35の収容溝35bに相当する部分から先端部側に位置する部分がわずかに細径となっており、テーパ状スプライン歯成形型40の先端部外周面に当接することによって、各テーパ状スプライン歯成形部43が互いに最も拡開した状態位置を規制し、ワークベース35の位置決め収容孔35cにセカンドギア粗形材Ws のコーン部相当部分C′を嵌合させた場合において、テーパ状スプライン歯成形部43の各内端部をそれぞれセカンドギア粗形材Ws に形成した直状スプライン歯Ss の各相互間にわずかに介在させた状態に保持する作用を成す。
【0048】
ノックアウトスプリング部材37は、ゴム等の弾性に富んだ材質によって環状に成形したもので、ワークベース35に形成した収容溝35bに嵌着保持させており、常態においてテーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡開させ、テーパ状スプライン歯成形型40の外周面をそれぞれチャックホルダ36の規制孔36aに当接させた状態に保持する一方、該テーパ状スプライン歯成形型40の外周面を押圧した場合に容易に弾性的に変形し、各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に近接させた状態に保持させることが可能である。
【0049】
なお、図中の符号38は、下型押さえであり、チャックホルダ36を介して上述したテーパ状スプライン歯成形型40、ワークベースホルダ34、ワークベース35およびダイホルダ33をそれぞれ下ラムベース30に保持させる作用を成す。また、図中の符号21は、上型押さえであり、上型ダイケース20を上ラムベース10に保持させる作用を成す。
【0050】
上記のように構成した成形装置では、図1(a)に示すように、上ラムベース10をその上死点に保持させ、該上ラムベース10が下ラムベース30から最も離隔した状態が成形待機状態となっている。
【0051】
上述した成形待機状態からセカンドギア粗形材Ws に成形を施す場合には、まず、ワークベース35の位置決め収容孔35cにコーン部相当部分C′を嵌合させることによってセカンドギア粗形材Ws の軸心を当該ワークベース35の軸心に合致させた状態に配置させる。
【0052】
このとき、各筒状部分45の弾性力、並びにノックアウトスプリング部材37の押圧力により、テーパ状スプライン歯成形型40の外周面がそれぞれチャックホルダ36の規制孔36aに当接した状態にあり、各テーパ状スプライン歯成形部43の内端部が直状スプライン歯Ss の各相互間にわずかに介在することになるため、結局、当該テーパ状スプライン歯成形部43とセカンドギア粗形材Ws との周方向の位置決めも同時に行われることになる。またこのとき、ワークベース35に配置させたセカンドギア粗形材Ws の上端面とワークプッシャ17における第2円柱状部分17cの先端面との間の距離は、チャックホルダ36の先端面とチャックプッシャ16の先端面との距離よりも小さいものとなっている。
【0053】
セカンドギア粗形材Ws をワークベース35に配置した状態から鍛造プレス機械を作動させ、上ラムベース10を下動させると、図1(b)において中心線よりも左側の部分に示すように、ワークプッシャ17の当接嵌合部17dがセカンドギア粗形材Ws の他側面に当接嵌合することにより、これらワークベース35およびワークプッシャ17の間にセカンドギア粗形材Ws が位置決め保持されることになる。
【0054】
このとき、テーパ状スプライン歯成形部43の外周には、チャックプッシャ16の傾斜カム孔16bが占位されるだけであり、該テーパ状スプライン歯成形部43が、依然として相互に拡開した状態に保持されている。
【0055】
上述した状態からさらに上ラムベース10を下動させると、チャックプッシャ16の傾斜カム面16cに案内され、各筒状部分45の弾性力、並びにノックアウトスプリング部材37の弾性力に抗して各テーパ状スプライン歯成形部43が薄肉部の基端部を起点として弧状を成すように漸次近接する方向に移動し、上記上ラムベース10がその下死点に達した場合にチャックプッシャ16の挿入孔16aがテーパ状スプライン歯成形部43の外周域に占位することになり、該テーパ状スプライン歯成形部43が互いに近接した状態に保持される。
【0056】
この状態においては、テーパ状スプライン歯成形部43のそれぞれが大きな力を持ってセカンドギア粗形材Ws における直状スプライン歯Ss の相互間に押圧されることになるため、各直状スプライン歯Ss が塑性変形し、図6(h)に示すように、テーパ状スプライン歯成形部43の形状にしたがってテーパ状スプライン歯Ts が成形されることになる。
【0057】
なお、これらの動作の間、ワークプッシャ17は、押圧スプリング18が撓むことにより、上ラムベース10に対して適宜上動し、セカンドギア粗形材Ws の他側面に当接嵌合した状態に保持されている。
【0058】
上述した状態から鍛造プレス機械の作動が進行すると、上ラムベース10が漸次上動することになり、やがて再び図1(a)に示した状態に復帰する。
【0059】
この間、テーパ状スプライン歯成形型40は、チャックプッシャ16がその外周域から逸脱した時点で各筒状部分45の弾性復元力、並びにノックアウトスプリング部材37の弾性復元力によってテーパ状スプライン歯成形部43が相互に拡開した状態に復帰することになるため、成形終了後のセカンドギア粗形材Ws 、つまり図6(f)に示すようなセカンドギア半成形品Wh をワークベース35から容易に取り出すことができるとともに、次のセカンドギア粗形材Ws を配置することが可能となる。
【0060】
以下、上述した操作を繰り返すことにより、セカンドギア粗形材Ws に順次テーパ状スプライン歯Ts が成形されることになる。
【0061】
このように上記成形装置によれば、ワークベース35の位置決め収容孔35cに配置させたセカンドギア粗形材Ws に対して、その軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在する複数の筒状部分45の各先端部内周面に、常態において互いに拡開するテーパ状スプライン歯成形部43を設け、かつ上述した軸心に沿って移動するチャックプッシャ16によってこれらテーパ状スプライン歯成形部43を相互に近接させた状態に保持させるようにしたものであるから、上記セカンドギア粗形材Ws の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部43が拡縮するための移動領域、並びにチャックプッシャ16が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができる。
【0062】
しかも、上記成形装置によれば、筒状部分45の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部43の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することもできる。
【0063】
なお、上述した実施の形態では、セカンドギアWのテーパ状スプライン歯Ts を成形するための装置を例示しているが、本発明ではこれに限定されず、たとえば図9に示すように、シャフトとクラッチギアとを一体に成形したもの、たとえば四輪自動車用変速機に用いられるスプラインシャフトSt と軸受部Ju と入力歯車Gi とを一体に成形したメインシャフトMのテーパ状スプライン歯Ts を成形することも可能である。
【0064】
図8は、上述したメインシャフトMの粗形材Ms を成形対象とする成形装置を例示したものである。
【0065】
この成形装置では、先に図1で示した成形装置のガイドシャフト14に相当する部材を粗形材Ms におけるスプラインシャフト相当部分St′ と同一外径のワークプッシャシャフト(保持部材)50として適用し、さらにガイドリング15およびスリーブ12に相当する部材を一体に成形したものをスリーブ体51として適用し、その中心部に粗形材Ms のスプラインシャフト相当部分St′ および軸受部相当部分Ju′ を収容させるガイド孔51aを形成している。このガイド孔51aは、その上端部を基端部よりも細径に形成したもので、該上端部が粗形材Ms におけるスプラインシャフト相当部分St′ およびワークプッシャシャフト50の外径とほぼ同一の内径を有している。なお、テーパ状スプライン歯成形型40を含むその他の構成に関しては、図1に示した成形装置と同様であり、同様の作用によって粗形材Ms にテーパ状スプライン歯Ts を成形するものであるため、同様の構成に同一の符号を付すことにより、それぞれの詳細構成、並びに作用の説明については省略する。
【0066】
この図8に示した成形装置においても、粗形材Ms の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部43が拡縮するための移動領域、並びにチャックプッシャ16が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができるとともに、筒状部分45の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部43を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部43の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することができる。
【0067】
なお、上述した実施の形態および変形例では、いずれも予め円筒状に一体に成形した筒状部分にスリットを施すことにより、互いの基端部が連結した弾性舌片を構成するようにしているため、装置を製造する場合においてこれら弾性部材相互の位置決めが不要となり、製造コストの低減を図ることも可能になる。
【0068】
しかしながら、本発明では、個別に弾性舌片を構成し、これを位置決め保持させた粗形材の軸心が中心となる円筒状に配置してもよく、たとえばワークベースの外周面にそれぞれの基端部を固着保持させるようにしてもよく、このような構成であっても上述した成形装置と同様の作用効果を期待することができる。
【0069】
また、上述した実施の形態および変形例では、いずれもノックアウトスプリング部材を適用するようにしているため、仮にテーパ状スプライン歯成形部が粗形材に噛み込んだ状態となった場合にも、該ノックアウトスプリング部材の弾性復元力によってこれを確実に解除することが可能であるが、本発明では必ずしもノックアウトスプリング部材を適用する必要はない。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在する複数の弾性部材の各先端部内周面に常態において互いに拡開するテーパ状スプライン歯成形部を設け、かつ上述した軸心に沿って移動する押圧部材によってこれらテーパ状スプライン歯成形部を相互に近接させた状態に保持させるようにしたものであるから、粗形材の外周域に、テーパ状スプライン歯成形部が拡縮するための移動領域、並びに押圧部材が軸方向に沿って移動するための領域を確保すればよいため、装置が大型化する事態を防止することができるようになる。
【0071】
しかも、弾性部材の弾性力を利用して各テーパ状スプライン歯成形部を相互に拡縮させるものであるから、該テーパ状スプライン歯成形部の移動を案内するための高精度に加工したガイドを用意する必要がなく、製造コストが著しく増大する事態を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の一実施形態を概念的に示した断面図である。
【図2】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置の要部を概念的に示した断面図である。
【図3】図2における矢視 III 図である。
【図4】図3における IV 部拡大図である。
【図5】図4における矢視 V 図である。
【図6】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用したクラッチギアの製造工程を示した概念図である。
【図7】図1に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用して成形される四輪自動車用変速機のセカンドギアを概念的に示した断面図である。
【図8】本発明に係るテーパ状スプライン歯成形装置の変形例を概念的に示した断面図である。
【図9】図8に示したテーパ状スプライン歯成形装置を適用して成形される四輪自動車用変速機のメインシャフトを概念的に示した断面図である。
【図10】従来のテーパ状スプライン歯成形装置を概念的に示した断面図である。
【符号の説明】
16…チャックプッシャ
17…ワークプッシャ
35…ワークベース
43…テーパ状スプライン歯成形部
45…筒状部分
50…ワークプッシャシャフト
Ss …直状スプライン歯
Ts …テーパ状スプライン歯
Ws ,Ms …粗形材
Claims (1)
- 予め外周面に互いに平行な複数の直状スプライン歯を軸心方向に沿って形成した粗形材に対し、その両端面にそれぞれ保持部材を当接させることによって該粗形材を所定の加工位置に位置決め保持し、さらにこの状態から前記粗形材の直状スプライン歯にテーパ状スプライン歯成形部を押し当てることにより、該直状スプライン歯をそれぞれテーパ状スプライン歯に成形するようにしたテーパ状スプライン歯成形装置において、
それぞれが前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心を囲繞する態様で該軸心に沿って延在し、かつ個々の先端部内面にそれぞれ前記テーパ状スプライン歯成形部を具備しており、常態において個々の先端部が互いに拡開し、各テーパ状スプライン歯成形部を、前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の直状スプライン歯から離隔した位置に配置させる一方、個々の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接させた場合に前記粗形材の軸心を中心とした略円筒を構成し、各テーパ状スプライン歯成形部をそれぞれ前記粗形材の直状スプライン歯に当接させた位置に配置させる複数の弾性舌片と、
前記複数の弾性舌片の外周面に離接する態様で前記加工位置に位置決め保持させた粗形材の軸心に沿って移動可能に配設し、各テーパ状スプライン歯成形部の外周域に占位した場合に前記弾性舌片の弾性力に抗してそれぞれの先端部を相互に近接した状態に保持させる押圧部材と
を備えたことを特徴とするテーパ状スプライン歯成形装置。
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JP21063797A JP3562244B2 (ja) | 1997-08-05 | 1997-08-05 | テーパ状スプライン歯成形装置 |
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JPH1147867A JPH1147867A (ja) | 1999-02-23 |
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-
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- 1997-08-05 JP JP21063797A patent/JP3562244B2/ja not_active Expired - Fee Related
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