JP3562190B2 - 光学走査装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザプリンタやディジタル複写機などの画像記録装置に使用される光学走査装置に係り、特に回転多面鏡の反射面の回転方向に沿った面幅よりもこの回転多面鏡に入射するレーザ光束の主走査方向に沿った方向の幅の方が大きいオーバーフィルドタイプの光学走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な光学走査装置は、レーザ光束とされるレーザビームの主走査方向の幅よりも、このレーザ光束が入射されるポリゴン(Polygon )ミラーである回転多面鏡の各反射面の面幅のほうが大きなものとなっていて、レーザ光束の走査角が何れの角度であっても、入射するレーザ光束を全て網羅できる大きさに各反射面の大きさは設定されている。そして、これをアンダーフィルド(Underfilled ) 光学系という。
【0003】
このようなアンダーフィルド光学系を採用したアンダーフィルドタイプの光学走査装置では、回転多面鏡により走査されたレーザ光束の感光体上における光量が回転多面鏡の偏向角度に拘わらず略均一となる。
【0004】
ところで、このような光学走査装置を使用したレーザプリンタやディジタル複写機などの画像記録装置に、近年、高速化及び高解像度化の要求がされるようになった。そして、上記の光学走査装置によってこれらの高速化及び高解像度化の要求に答えるには、まず、回転多面鏡の回転数を増加させて、レーザ光束が感光体上の1ラインを走査するのに要する時間を短縮することが、考えられる。
【0005】
しかし、上記回転多面鏡は、通常、駆動モータによって直接回転駆動されるが、ボールベアリングを使用したこの種の駆動モータの回転数の上限は15,000rpm であり、また、大幅なコストアップを招くため現実的には使用し難い空気軸受を使用したとしても、40,000rpm が限度である。そのため、回転多面鏡の回転数を増加させることによって高速化及び高解像度化を図るには限界がある。
【0006】
そこで、回転多面鏡の鏡面である反射面の数を多くすることが考えられるが、反射面の数が増えると、回転多面鏡が大径化して通常の駆動モータでは駆動し難いという問題が発生する。
【0007】
従って、回転多面鏡の大径化という問題を解決するための技術として、反射面の面幅よりも幅の広いレーザ光束を回転多面鏡に照射するタイプの光学系であるオーバフィールド(Overfilled ) 光学系を採用した、いわゆるオーバーフィルドタイプの光学走査装置が開発され、例えば特開昭50−93719号公報に開示されている。
【0008】
この特開昭50−93719号公報に開示された光学走査装置は、図6に示すように、レーザ光束を発生する光源2と、画像信号に応じてこのレーザ光束を変調する変調器4と、変調器4からのレーザ光束を反射する反射鏡6と、射出側が曲面とされかつ入射したレーザ光束を主走査方向に沿って発散するレンズパワーを備えた平凸シリンドリカルレンズ8と、該平凸シリンドリカルレンズ8から射出されて発散したレーザ光束の主走査方向に沿った方向の幅を調整して同方向に長い線像として結像させる結像レンズ14と、複数の反射面12Aによってこのレーザ光束を反射する回転多面鏡12と、回転多面鏡12の反射面12Aの倒れ補正用のシリンドリカルレンズ24と、を少なくとも含んでいる。
【0009】
つまり、このようなオーバーフィルドタイプの光学走査装置は、図7(A)に示すように、回転多面鏡12の反射面12Aの面幅よりも幅が広いレーザ光束を、回転多面鏡12の1つの反射面12Aが切り取るように反射することを特徴としている。従って、図8(A)に示すように、反射面12Aが切り取るレーザ光束内の位置が変化するのに伴ってビーム径及び光量が変動し、図6に示す感光体32上の走査開始側と走査終了側との間で、ビーム径及び光量が相違することになる。
【0010】
一方、このオーバーフィルドタイプの光学走査装置における感光体32上のビーム径の変動を抑制して光量分布を補正するために、図7(B)に示すような光学走査装置が考えられる。この図7(B)に示す光学走査装置は、入射光軸L1をレーザ光束の中心からずらしたものであり、この光学走査装置のレーザ光束のエネルギー分布(以下、ビームプロファイルという)を図8(B)に示す。
【0011】
つまり、この図7(B)には、偏向範囲内であって入射されるレーザ光束の光路に近い側の端部又はその付近へレーザ光束を偏向するような向きに、回転多面鏡12の反射面12Aが向いているときには、入射されるレーザ光束が主走査方向に沿った反射面12Aの一部の範囲に照射されず、偏向範囲内であって入射されるレーザ光束の光路と反対側の端部又はその付近へレーザ光束を偏向するような向きに、回転多面鏡12の反射面12Aが向いているときには、入射されるレーザ光束が主走査方向に沿った反射面12Aの全範囲に照射されるように、回転多面鏡12に入射するレーザ光束の照射範囲を調整するようにした光学走査装置が示されている。
【0012】
しかし、このような光学走査装置では、感光体32上の走査開始側と走査終了側との間のビーム径及び光量の比は改善されるが、感光体32上における走査開始側の端部及び走査終了側の端部での光量の降下が大きいため、走査開始側及び走査終了側の画像の濃度が低下する欠点があった(図5参照)。
【0013】
また、特開平8−160338号公報には、オーバーフィルドタイプの光学走査装置における感光体32上の光量分布の一様性を補正する為に、図7(C)に示すように、低透過率部34A及び高透過率部34Bを有した光学フィルター34を回転多面鏡12の前に配置した光学走査装置が開示され、この光学走査装置のビームプロファイルを図8(C)に示している。しかし、この構造では部品数が増えるという欠点があった。
【0014】
一方、一般的なアンダーフィルドタイプの光学走査装置の概略図を表す図9に示すように、アンダーフィルドタイプの光学走査装置の光源は、該光源から出射される光束の中心が光学的性能を満足すべき回転多面鏡12の基準位置Pに入射されるように、通常は配置されている。尚、この基準位置Pは、回転多面鏡12の反射面12Aが走査光軸方向に反射するときの反射面12Aの中心点である。
【0015】
そして、図9に示すアンダーフィルドタイプの光学走査装置では、図11に示すように回転多面鏡12の反射面12Aの幅よりも狭いレーザ光束が回転多面鏡12の反射面12Aに入射され、その全部をこの反射面12Aで反射するので、回転多面鏡12で反射された後の走査線の走査開始側と走査終了側との間の光量の一様性は良好で、実用上問題がない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図10に概略図が示されるオーバーフィルドタイプの光学走査装置では、反射面12Aの面幅よりも幅の広いレーザ光束を回転多面鏡12の1つの反射面12Aが切り取るように反射することから、図12に示すように、走査線の走査開始時(入射側最大走査時)と走査終了時(反入射側最大走査時)との間で光量が変化して光量の一様性が悪化し、その結果、画像出力の濃度差が視覚上明瞭に判別されてしまう。
【0017】
具体的には、回転多面鏡12に内接する円の直径をφ、回転多面鏡12の面数をN、回転多面鏡12に入射する光軸と走査光軸のなす角をβ、走査角をαとしたとき、回転多面鏡12で反射されるレーザ光束の幅Dは次式で表される。
【0018】
D=φ×tan(180/N)×cos(0.5(β+α))
この為上式より、走査角αが変化すると反射されるレーザ光束の幅Dも変化するので、レーザ光束の光量も走査角αに応じて変化することがわかる。
【0019】
さらに、光学走査装置に使用される光源(例えばレーザダイオード)のビームプロファイルは、ガウス分布に近いことが知られている。従って、走査角αによって、反射面12Aが切り取るレーザ光束の強度が異なるため、レーザ光束の光量が一層変化することがわかる。
【0020】
本発明は、かかる従来技術の有する不都合に鑑みてなされたもので、感光体上における光量の変化範囲を狭めて実用上問題のないレベルにする光学走査装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
請求項1による光学走査装置は、レーザ光束を発生する光源と、偏向面を有しかつ光源から入射されたレーザ光束を前記偏向面により主走査方向に沿って偏向させる偏向器と、前記光源からのレーザ光束を前記偏向面へ入射させる光学部材と、を有し、前記偏向面に入射するレーザ光束は前記偏向面の主走査方向に沿った幅を越え且つ略ガウシアンプロファイルとなるような光学走査装置において、前記偏向面で反射される前記レーザ光束が有効走査角の中央である走査光軸方向に向かって反射されるとき前記偏向面の幾何学的中心を基準位置とし、このとき前記偏向面へ入射されるレーザ光束の光軸を主走査方向に沿って前記基準位置より反入射側寄りに移動させたことを特徴とする。
【0022】
請求項2による光学走査装置は、請求項1に係る光学走査装置において、偏向器が複数の反射面を有する回転多面鏡とされ、偏向面がこれら複数の反射面とされ、走査角をα、入射角をβ、回転多面鏡の内接径をφ、回転多面鏡の面数をN としたときに、
レーザ光束の光軸の反入射側への移動量Mが、
0<M ≦sin β×{(0.5φ÷cos(180/N)×cos(0.5 β−180/N−0.5α) −0.5φ×cos(0.5 β))−tanβ×(0.5φ÷cos(180/N)×sin(0.5 β−180/N−0.5α)−0.5 φ×sin(0.5 β))}
の範囲内にあることを特徴とする。
【0023】
請求項1に係る光学走査装置の作用を以下に説明する。
レーザ光束を発生する光源からのレーザ光束を、光学部材が偏向器の偏向面の主走査方向に沿った幅を越え且つ略ガウシアンプロファイルとし、偏向器の偏向面が、光源から入射されたこのレーザ光束を主走査方向に沿って偏向させる。この際、偏向面へ入射されるレーザ光束の光軸が偏向面の中心に対して、主走査方向に沿って反入射側寄りに移動して配置されている。
【0024】
従って、光源から出射されて偏向面の面幅よりも広いレーザ光束を、偏向器の1つの偏向面が切り取るように反射するが、このとき、偏光面で反射される前記レーザ光束が有効走査角の中央である走査光軸方向に向かって反射されるとき前記偏光面の幾何学的中心を基準位置とし、このとき前記偏向面へ入射されるレーザ光束の光軸を主走査方向に沿って前記基準位置より反入射側寄りに移動させることで、感光体上の光量分布の範囲を狭めることができる。
【0025】
請求項2に係る光学走査装置の作用を以下に説明する。
本請求項も請求項1と同様の構成を有しており、重複した説明を省略する。
【0026】
但し、偏向器が複数の反射面を有する回転多面鏡とされ、偏向面がこれら複数の反射面とされ、この反射面へ入射されるレーザ光束の光軸を反射面の中心より主走査方向に沿った反入射側に移動するときの移動量Mの範囲を具体的に限定することによって、感光体上の光量分布の範囲をより一層狭めるようにできる。
【0027】
つまり、レーザ光束の光軸の反入射側への移動量Mを
0<M ≦ sinβ×{(0.5φ÷cos(180/N)×cos(0.5 β−180/N−0.5α) −0.5φ×cos(0.5 β))−tanβ×(0.5φ÷cos(180/N)×sin(0.5 β−180/N−0.5α)−0.5 φ×sin(0.5 β))}
の式の範囲内とすることによって、感光体上の光量分布の範囲を狭めるようにできる。
【0028】
すなわち、この移動量Mの上限は、レーザ光束を反射面により最も反入射側に走査するとき、入射光軸であるガウシアンプロファイルのピークが、反射面内に入射される位置を規定している。この為、この入射位置であれば、レーザ光束を反射面により最も入射側に走査するときであっても、光量が極端に低下することがない。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明に係る光学走査装置の実施の形態を図面に基づき以下に説明する。
【0030】
まず、図1に基づき本実施の形態の基本構成を説明する。この図に示すように、実施の形態に係わるオーバーフィルドタイプの光学走査装置10は、偏平な筐体下部30Bと、筐体下部30Bの一方の端から斜め上方に延びた筐体上部30Cと、で構成される筐体30を備えている。この筐体上部30Cの下面には、開口部の形状が筐体30の幅方向に長い略長方形とされた孔30Aか設けられており、この孔30Aは筐体30の外部へ出射されるレーザ光束の通過口となる。
【0031】
この光学走査装置10の筐体30内には、レーザ光束を発生する光源としてのレーザダイオード16が配設されている。このレーザダイオード16は図示しないドライバに接続されており、このドライバにより画像信号に応じてレーザダイオード16はオンオフ制御される。レーザダイオード16のレーザ光束の出射側には、コリメータレンズ18、エキスパンドレンズ20、回転多面鏡12が順に配置されている。
【0032】
さらに、回転多面鏡12が、側面に複数の偏向面である反射面12Aが形成されて正多角柱状とされた偏向器とされ、回転軸Oを中心として図示しないモータ等の駆動手段により所定の角速度で回転される。そして、回転多面鏡12の回転に伴い、回転多面鏡12にレーザダイオード16側から入射されたレーザ光束が、反射面12Aで反射されることによって、等角速度で偏向されて走査される。
【0033】
尚、回転多面鏡12によるレーザ光束の偏向方向を主走査方向、主走査方向に直交する方向を副走査方向と、以下称する。
【0034】
また、以上のように、レーザダイオード16と回転多面鏡12との間に、コリメータレンズ18、エキスパンドレンズ20が配置されているので、レーザダイオード16から出射されたレーザ光束は、コリメータレンズ18、エキスパンドレンズ20により、主走査方向に沿ったビーム幅が回転多面鏡12の反射面12Aの面幅より広くて主走査方向を長手方向とする略ガウシアンプロファイルのレーザ光束とされて、回転多面鏡12に入射される。従って、これらコリメータレンズ18、エキスパンドレンズ20が、光学部材を構成する。
【0035】
一方、回転多面鏡12のレーザ光束の出射側には、2個のレンズ14A、14Bから成るfθレンズ14が配置されており、回転多面鏡12で偏向されたレーザ光束はfθレンズ14を透過する。
【0036】
従って、回転多面鏡12で偏向して走査されたレーザ光束は、2枚組のFθレンズ14を通過し、反射ミラー26で一旦反射された後、回転多面鏡12の各反射面12Aの主走査方向と直交する副走査方向の傾きのばらつきによって生じる走査位置のずれ( 通常、面倒れ誤差と呼ぶ) を補正するためのシリンドリカルミラー28で反射されて、ドラム状の感光体32の外周面を形成する被走査面32A上を走査露光する。
【0037】
また、回転多面鏡12の複数の反射面12Aのうち入射されるレーザ光束をfθレンズ14へ向けて反射する状態となっている反射面12Aを、以下「主反射面12A」といい、この主反射面12A、回転多面鏡12の基準位置Pに向けて入射する入射光軸L1、走査光軸L2及び、走査角の関係を、図2に示す。
【0038】
アンダーフィルドタイプ、オーバーフィルドタイプに拘わらず光学走査装置においては、回転多面鏡12の主反射面12Aがレーザ光束を偏向して走査するものの、この内のアンダーフィルドタイプの光学走査装置ではこの基準位置Pに向けて、入射光軸L1は入射される。
【0039】
そして、この主反射面12Aの端部Aは主走査方向の反入射側の端部であり、主反射面12Aの端部Bは主走査方向の入射側の端部である。つまり、反入射側とはレーザ光束が入射される側と逆の側をいうことになる。
【0040】
ここで入射光軸L1と走査光軸L2のなす角をβ、走査光軸L2を中心として最大限走査される有効走査角を±α、回転多面鏡12の内接径をφ、回転多面鏡12の面数をN、回転多面鏡12の中心をOとして、まず回転多面鏡12の中心Oを原点とした仮座標(X’,Y’)を作る。
【0041】
また、回転多面鏡12の内接径φと回転多面鏡12の面数Nから、回転多面鏡12の外接半径rは、▲1▼式のようになる。
【0042】
r=0.5 φ÷cos(180/N) …▲1▼
よって、回転多面鏡12の中心Oを原点とした主反射面12Aの端部A,B、基準位置Pの仮座標(X’,Y’)は、
A’=(r×sin(0.5 β−180/N) , r ×cos(0.5 β−180/N))
B’=(r×sin(0.5 β+180/N) , r ×cos(0.5 β+180/N))
P’=( 0.5 φ×sin(0.5 β) , 0.5 φ×cos(0.5 β) )
とそれぞれ表すことができる。
【0043】
尚、ここでA’は主反射面12Aの端部Aの仮座標であり、B’は主反射面12Aの端部Bの仮座標であり、P’は基準位置Pの仮座標である。
【0044】
次に、回転多面鏡12の主反射面12Aが走査角αへ反射する時の主反射面12Aの端部A、Bの座標を求める。
【0045】
但し、基準位置Pを原点と置き直した方が積分区間算出時に合理的なので、回転多面鏡12の主反射面12A上の基準位置Pを原点とした座標(X,Y)を作る。このときの主反射面12Aの端部A、Bの座標(X,Y)は、
A=( r×sin(0.5 β−180/N+0.5α)−0.5 φ×sin(0.5 β),r×cos(0.5 β−180/N+0.5α)−0.5 φ×cos(0.5 β))
B=( r×sin(0.5 β+180/N+0.5α)−0.5 φ×sin(0.5 β),r×cos(0.5 β+180/N+0.5α)−0.5 φ×cos(0.5 β))
と表すことができる。
【0046】
以上より、端部A、Bの上記座標(X,Y)によって、回転多面鏡12の主反射面12Aがレーザ光束を反射するときに切り取られる範囲が求められたが、座標(X,Y)上にて、主反射面12Aに入射されるレーザ光束の入射光軸L1を0とし、この端部A、Bの座標(X,Y)を入射光軸L1と直交する方向の位置に置き換える。
【0047】
まず、入射光軸L1は、▲2▼式で表すことができる。
Y=tanβ×X …▲2▼
入射光軸L1と同じ傾きを持つ▲3▼式に、端部A、Bの座標(X,Y)を代入し、それぞれのY切片を求める。
【0048】
Y切片=Y−tanβ×X …▲3▼
求められたそれぞれのY切片を、▲4▼式により入射光軸L1と直交する方向の位置に置き換える。
【0049】
位置=sinβ×Y切片=sinβ×(Y−tanβ×X) …▲4▼
以上によって、座標(X,Y)上にて、主反射面12Aに入射されるレーザ光束の入射光軸L1を0としたときの主反射面12Aが切り取る範囲(積分区間)が求められる。
【0050】
入射されるレーザ光束は略ガウシアンプロファイルなので、正規分布式を積分区間(B,A)で積分することで、走査角αで切り取られる光量を算出することができる。
【0051】
つまり、走査角αで切り取られる光量は、▲5▼式で表すことができる。
S1dx …▲5▼
但し、S1は−X/2 σである。
【0052】
また、▲5▼式中のσを、60.7%の強度の半分とすると合理的であることが確認されている。
【0053】
さらに、図3及び図4に示すように、反射面12Aの中心点である基準位置Pより主走査方向に沿って、反入射側に移動量Mだけ入射光軸L1を移動した場合、上記積分式は▲6▼式のようになる。
【0054】
S2dx …▲6▼
但し、S2は−(X−M)/2 σである。
【0055】
従って、移動量Mは、有効走査角±αでの光量が相互に出来るだけ近い値となるように、設定するのが望ましく、有効走査角±αでの光量が相互に等しいのが理想である。つまり、下式が成立する移動量Mのとき、光量の変動範囲は最小となる。
【0056】
B+ A+S2dx= ∫B− A−S2dx …▲7▼
ここで、B+は、走査角が+α(図2に示す)のときの主反射面12Aの端部Bの入射光軸L1と直交する方向の位置であり、A+は、走査角が+αのときの主反射面12Aの端部Aの入射光軸L1と直交する方向の位置であり、B−は、走査角が−α(図2に示す)のときの主反射面12Aの端部Bの入射光軸L1と直交する方向の位置であり、A−は、走査角が−αのときの主反射面12Aの端部Aの入射光軸L1と直交する方向の位置である。
【0057】
尚、オーバーフィルドタイプの光学走査装置10では、入射光軸L1側の最大有効走査時の主反射面12Aの端部Bが、基準位置Pから最も離れており、入射光軸L1側の最大有効走査時の主反射面12Aの端部Bを含む必要がある。このため、ビーム幅Dは下式の条件が必要である。このビーム幅Dについても60.7%の強度を有した幅とすると、合理的である。
【0058】
≧ 2×sin β×{(0.5φ÷cos(180/N)×cos(0.5 β+180/N+0.5α) −0.5φ×cos(0.5 β))−tanβ×(0.5φ÷cos(180/N)×sin(0.5 β+180/N+0.5α)−0.5 φ×sin(0.5 β))}
【0059】
【実施例】
以下、具体的な実施例に即して説明する。
【0060】
半導体レーザ波長を780nm、φ=22mm、N=15、α=±21.6°、β=45°、f=286.48mmのオーバーフィルドタイプ光学走査装置において、基準位置Pに向けて入射するとき、積分区間A、Bおよび感光体32上の光量を▲5▼式により計算すると、光量分布は表1の通りである。
【0061】
但し、α=0°を100%とする。この時のレーザ光束のビーム幅Dは、10.3mmとした。
【0062】
【表1】
Figure 0003562190
【0063】
表1より、光量比の範囲は83.7%から101.1%までの17.4%である。このため、走査角の−側で光量降下が大きいため、印字される画像の走査角の−側の濃度が低下が予想される。
【0064】
▲7▼式に、φ=22mm、N=15、α=±21.6°、β=45°の数値を代入し、移動量Mを求めると、移動量Mは0.8445mmとなる。この時の感光体32上の光量を▲6▼式で計算すると、分布は表2の通りである。
【0065】
【表2】
Figure 0003562190
【0066】
表2より、光量比の範囲は89.3%から100%までの10.7%であり、回転多面鏡12の主反射面12Aの基準位置Pに向けてレーザ光束を入射するときと比べ、6.7%の改善となる。
【0067】
そして、基準位置Pに向けて入射する場合、移動量Mを0.8445mmとして入射する場合及び、従来技術である図7(B)に示す先行技術の場合で、比較したものを図5のグラフに示す。つまり、このグラフに示すように、移動量Mを0.8445mmとすると、感光体32上の光量分布の範囲を狭めることができることがわかる。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、オーバーフィルドタイプ光学走査装置を使用したレーザプリンタやディジタル複写機などの画像記録装置において、部品を追加することなく感光体上の光量の一様性を改善することができる。
【0069】
また、これに伴って、一つの走査線を複数ビームに分割して走査するオーバーフィルドタイプ光学走査装置を使用したレーザプリンタやディジタル複写機などの画像記録装置において、走査線つなぎ目部の光量の改善に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係る光走査装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本実施例に係る式のための説明図である。
【図3】本実施例に係る光走査装置を示す斜視図である。
【図4】本実施例に係る移動量Mの範囲を入射光軸方向から見て示した図である。
【図5】表1及び表2の光量分布と従来技術の光量分布とを比較して表す図である。
【図6】特開昭50−93719号公報記載のオーバーフィルドタイプの光走査装置を示す斜視図である。
【図7】従来技術の光走査装置を示す斜視図である。
【図8】従来技術の入射光軸方向から見たビームプロファイルを示す図である。
【図9】アンダーフィルドタイプの光走査装置を示す概略図である。
【図10】オーバーフィルドタイプの光走査装置を示す概略図である。
【図11】アンダーフィルドタイプの光走査装置における入射光軸方向から見たビームプロファイルを示す図である。
【図12】オーバーフィルドタイプの光走査装置における入射光軸方向から見たビームプロファイルを示す図である。
【符号の説明】
16 レーザダイオード
12 回転多面鏡
12A 反射面
12A主反射面
18 コリメータレンズ
20 エキスパンドレンズ
L1 入射光軸
P 基準位置

Claims (2)

  1. レーザ光束を発生する光源と、偏向面を有しかつ光源から入射されたレーザ光束を前記偏向面により主走査方向に沿って偏向させる偏向器と、
    前記光源からのレーザ光束を前記偏向面へ入射させる光学部材と、を有し、
    前記偏向面に入射するレーザ光束は前記偏向面の主走査方向に沿った幅を越え且つ略ガウシアンプロファイルとなるような光学走査装置において、
    前記偏向面で反射される前記レーザ光束が有効走査角の中央である走査光軸方向に向かって反射されるとき前記偏向面の幾何学的中心を基準位置とし、
    このとき前記偏向面へ入射されるレーザ光束の光軸を主走査方向に沿って前記基準位置より反入射側寄りに移動させたことを特徴とする光学走査装置。
  2. 偏向器が複数の反射面を有する回転多面鏡とされ、偏向面がこれら複数の反射面とされ、走査角をα、入射角をβ、回転多面鏡の内接径をφ、回転多面鏡の面数をN としたときに、
    レーザ光束の光軸の反入射側への移動量Mが、
    0<M ≦sin β×{(0.5φ÷cos(180/N)×cos(0.5 β-180/N-0.5α) -0.5φ×cos(0.5 β))-tanβ×(0.5φ÷cos(180/N)×sin(0.5 β-180/N-0.5α)-0.5 φ×sin(0.5 β))}
    の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の光学走査装置。
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