JP3561882B2 - 電気機器の劣化診断法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、設備診断に係る技術分野に属し、誘導電動機及びインバ−タを対象とした電気機器の劣化診断法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気機器を含めた設備の診断技術導入の本来目的とするところは、マクロ的には、
(1)品質の向上
(2)コストの低減
a.設備停止時間の減少(操業率の向上)
b.保全費(材料費、人件費)の削減
c.建設改修工事へのフィ−ドバックによる設備の改善
(3)安全、環境への寄与
(4)保全要員のモラルアップ
設備の状態を正確に、定量的に把握できるので、保全と管理の改善意欲がでる。
【0003】
また、保全、管理作業におけるメリットは、
(1)設備の劣化状態の把握精度が向上するので、設備及び部品を寿命いっぱいまで使用できる。
(2)整備作業実施の要・不要を決めるための判断デ−タが多くなり、決定が容易となる。
(3)新設工事、改修工事、整備作業の施工ミスがすぐにわかり、再補修を防げる。
(4)設備を傾向管理し、デ−タを蓄積することにより、設備のライフ特性をよく把握できる。
(5)設備の定量的なデ−タが蓄積できるので、改善作業にフィ−ドバックできる。
【0004】
以上が電気機器設備の診断技術導入の必要性であるが、ここでは先ず本発明に係る誘導電動機及びインバ−タの劣化診断法の従来技術について、以下1〜2の各項でそれぞれ簡単に述べる。
【0005】
1.誘導電動機の劣化診断について
誘導電動機(以下電動機と記す)の劣化診断法としては、(1)振動法、(2)音響法、(3)温度法、(4)トルク(ひずみ)法、(5)電流法、(6)波形法などがあるが、これらについて次に説明する。
【0006】
(1)振動法
振動法は電動機の機械振動を、動電型や圧電型又は変位型の振動ピックアップをできる限り振動の発生源近くに取り付け、振動のオ−バ−オ−ル値等から判定する簡易診断と各種の解析を行い原因、場所などを究明する精密診断とがあるが、異常個所の診断はいずれも軸受けや回転軸等の機械要素部に限られる。
【0007】
簡易診断は、・振動周波数による判定、・振動の現象面からの判定、・振動の大きさによる判定とがある。これらの方法により回転機構やころがり軸受けに対する異常の種類を推定することができ、正常もしくは異常の程度がISO規格(ISO−2372)に基づいて判定可能となる。
【0008】
精密診断は、前述の簡易診断により異常があると判断した場合、その原因、場所などを究明するために必要となる。一般に電動機から発生する振動信号は複雑であり、単純な振動はほとんどない。その中から有意義な情報を得て異常の有無を精密に判断するには次のような解析法をよく活用する。
【0009】
▲1▼周波数分析法
この方法は最もポピュラ−な方法で広く用いられている方法である。電動機から発生する振動は、単振動にならず複雑な波形となる。このような複雑な信号の中にどのような周波数と振幅をもった振動が混ざっているかを判別するのが、周波数分析であり、これにより異常原因、場所などを究明することができる。異常原因と発生振動数の関係は過去のデ−タの蓄積により得られた経験的なものが主で、既に種々な文献に報告されている。(例えばリオン音響振動計測機カタログ:概説周波数分析、リオン)
【0010】
▲2▼振動形態分析
発生している異常振動が電気的原因か機械的原因かを識別したり、機械的原因ならば強制力によるものか、共振かまたは自励振動によるものかなどを判別する方法である。具体的には回転数を変化させたり、停止や起動時の振幅変化パタ−ンから判定する。
【0011】
▲3▼位相分析
同周波数や整数倍の振動の位相差を調べることにより、互いの関連や各々がどのような動きをしているかなどを調べる。
【0012】
▲4▼振動方向の分析
振動方向がラジアル方向やアキシャル方向など特徴的な方向に発生しているかどうかを調べる。例えばアンバランスはラジアル方向に、カップリング偏心はアキシャル方向に大きな振動が発生する。
【0013】
▲5▼振回り方向分析
電動機が異常振動を発生した場合、回転軸が軸受中心のまわりを一定方向(軸回転と同方向か逆方向)に旋回する現象を振回りと言う。アンバランスやオイルホイップは同方向に、乾性摩擦による自励振動は逆方向となる。
【0014】
(2)音響法
音響法は電動機の異常音を騒音計にて測定し、音響のオ−バ−オ−ル値を求める絶対値判定や音響の周波数分析を行うことにより、電動機内部の異常を判定する方法である。この方法は暗騒音の影響を受けるため、環境誤差が大きく、診断対象部位は電動機の異常摩擦やうなりに起因する回転子の曲がり等のアンバランスを検出するもので電動機異常のマクロ監視に用いられる。
【0015】
(3)温度法
温度法には、▲1▼諸温度計法、▲2▼サ−モグラフィ−法、▲3▼熱流計法、▲4▼示温素子法があり、温度の絶対値判定、傾向管理、相互比較及び冷却率等の演算を行うことにより、軸受潤滑不良や巻線不良、過負荷等の異常判定ができる。この方法は最もオ−ソドックスな方法であるが、異常劣化がある程度進展した状態になっていることが多い。
【0016】
(4)トルク(ひずみ)法
応力計測法とも呼ばれる。始動中・負荷時のいずれの場合でも応用でき、固定子の任意の部分のひずみをストレ−ンゲ−ジを貼りつけ測定する。これは電動機の固定子反作用トルクを判定することにほかならず、歪分布より組立応力の異常診断ができる。また、軸にストレ−ンゲ−ジを取りつけ、トルクの絶対値を連続監視することにより突発的故障の防止には役立つが、異常原因や場所の究明はできない。
【0017】
(5)電流法
電流法は電動機の入力電流を監視することによって比較的低速回転設備の診断を行うことができる。具体的には例えば次のような処理内容である。(川鉄アドバンテック:電流診断システム MK−5220)
a.電流実効値(I)の測定 I=ΣIn/3000 (n=1〜3000)
b.電流変動幅(δI)の計算 δI=Imax−Imin (但し、Imax : 電流の最大値、Imin :電流の最小値)
c.電流変動(Iε)の計算 Iε=(δI/I)×100(%)
d.電流変動の周波数分析
により電動機の異常傾向管理を行っているが、この手法の診断対象は電動機そのものというより、ベルトコンベア等の輸送機類やコ−タ−ロ−ル、テンションリ−ル等における異物混入、異常負荷等が対象部位となる。
【0018】
(6)波形法
波形法は、電圧や電流、または電力の波形観測により電動機の異常診断を行うもので、電動機の異常傾向管理や効率診断に利用されている。特に直流機の整流診断は電圧波形によってなされる場合もある。
【0019】
2.インバ−タの劣化診断について
インバ−タの劣化診断としては、トラブルの未然防止のため、JEMA(日本電機工業会)では「汎用インバ−タ定期点検のすすめ」のガイドブックで、インバ−タの保守・点検を定めている。点検としては日常点検と定期点検に分類されるが、その内容は次のようなものである。
【0020】
(1)日常点検
日常点検は運転中に行うもので、異常振動や異常音・異常臭の有無、また異常過熱、変色の確認、更にはテスタ−を用いてインバ−タの入出力電圧のチェック等を行うが、実際には面倒なため殆ど行われておらず、異常現象が確認された時にはインバ−タ自体の故障につながる状態がかなり進んでいるか、または他の機器に悪影響を与えているか、あるいはインバ−タの機能が十分発揮されなくなっている場合が多い。
【0021】
(2)定期点検
定期点検は基本的には運転を停止し、インバ−タ内部個所を目視もしくは測定器によってチェックする。測定器を用いて行うその主な箇所は次の通りである。
【0022】
▲1▼主回路としては、(ア)インバ−タモジュ−ルやコンバ−タモジュ−ルの各端子間抵抗チェックをテスタ−を用い行う。(イ)平滑コンデンサの静電容量を静電容量計で測定し、初期静電容量の85%以上あることを確認する。
【0023】
▲2▼制御回路(制御用プリント基板)としては、(ア)インバ−タ単体運転にて、各相間出力電圧のバランスをテスタ−にてチェックする(電圧バランスは200V用 4V以内、400V用 8V以内)、(イ)シ−ケンスの動作試験を行い、場合によってはオッシロスコ−プ等で波形やシ−ケンスの確認をする。
【0024】
以上のようにインバ−タの劣化診断においては、原因や場所の特定がインバ−タを停止もしくは休止分解して専門技術者によらなければならず、現実にはインバ−タが故障するまで使用し続ける場合が多い。その間はインバ−タ機能の低下、例えば省エネ機能や保護機能等の異常、また他の機器への悪影響、例えばロボット等の誤動作が生じることが多々あった。従ってインバ−タの交換部品(例えば冷却ファンや平滑コンデンサ)は標準交換年数を定めている。その耐用年数や寿命は使用環境に大きく左右され、ほとんどの電子部品はその寿命がアルレニウスの法則(10℃二倍則:周囲温度を10℃低下させるごとに寿命が2倍に延びる)に従うのでインバ−タの設置環境には十分な注意が必要であり、その為にも簡易にしてかつ原因や場所の究明が可能なインバ−タの劣化診断法は極めて有用なものといえる。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
従来の誘導電動機や誘導電動機の回転を制御するインバ−タの劣化診断方法において、上述した1.誘導電動機の劣化診断、2.インバ−タの劣化診断の各技術については、それぞれ次のような問題がある。
【0026】
1.誘導電動機の劣化診断に関して
(1)振動法においては周波数分析法が最も広く用いられているが、ピックアップの取付が精度に関係するため、これを振動発生源の近くに固定することが必要となる。また劣化個所の診断が軸受や回転軸等の機械要素部に限られ、測定装置を含め診断費用も高くつくので、この診断法は重要度の高い比較的大型機がメインとなる。
【0027】
(2)音響法は振動法のようにピックアップを取りつける必要はないものの、騒音計を利用するため、暗騒音の影響を受けるので測定場所によっては適用できない。また、この方法も振動法と同様に機械要素部の劣化診断が主たる目的である。
【0028】
(3)温度法は劣化原因や場所の特定には適さず、更に異常劣化がある程度進展した状態での診断となる場合が多いため、他の診断法と併用して利用される。
【0029】
(4)トルク(ひずみ)法はストレ−ンゲ−ジを数箇所に貼りつけて歪分布より電動機の製造時の不具合等で発生する組立応力の異常診断や、ストレ−ンゲ−ジを軸に取りつけトルクの連続監視を行うことで突発的故障を防止することが目的となるため、劣化場所の特定は困難である。
【0030】
(5)電流法は電流変動を求め、その周波数分析によって劣化診断を行うが、振動法の周波数分析のように過去のデ−タの蓄積により得られる経験的なもの(ノウハウ)がほとんどなく、異常負荷等の診断が対象となっている。
【0031】
(6)波形法は電圧や電流、または電力の波形観測がもとになっているため、前記の電流法と同様ノウハウの蓄積がなく、現在では電動機の劣化傾向管理や効率の診断等に利用されているのが殆どである。
【0032】
2.インバ−タの劣化診断に関して
インバ−タは多数の部品で構成されており、これらの部品が正常に動作することによって本来の機能(例えば省エネ機能やトルク特性機能等)を発揮している。従って、点検・保守は欠かせないものであるが、原因や場所の特定にはインバ−タを停止もしくは休止分解して、専門技術者が測定器を使用して行わねばならず甚だ面倒であり保守に要するコストも高くついた。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る誘導電動機及びインバ−タを対象とした電気機器の劣化診断法は、上記の課題を解決するため、次のようにしている。
【0034】
この電気機器の劣化診断法を総合的にまとめると次の二つになる。
【0035】
1.誘導電動機(以下、三相誘導電動機を対象とする)の劣化診断
誘導電動機のU相、V相、W相に正弦波電流を供給すると、各相に生ずる起磁力Fu 、Fv 、Fw はそれぞれ次式で表される。
【0036】
【数1】
上式は回転子の起磁力中心を基点として円周上θ(電気角)なる距離における起磁力で、Aは定数、またIu 、Iv 、Iw はそれぞれU相、V相、W相の電流の実効値、ωは周波数をfとした時2πf(rad/s) で表される角速度、tは時間である。
【0037】
(1)式において、Iu =Iv =Iw の場合は各相の第3次空間高調波及びその整数倍の高調波起磁力は、三相巻線の場合は互いに打ち消されて合成起磁力に現れないので、一次誘起起電力には表れないため、結果的に一次電流には含まれない。
【0038】
しかし、誘導電動機の入力電圧の不平衡率は通常でも最大2%程度あるため、各相の電流不平衡率も電圧不平衡率と同程度有する。従って、(1)式より、明らかなように第3次高調波とその整数倍の高調波も含むが、その含有率は1%程度(第3高調波のみの場合)が普通である。
【0039】
ところが、固定子巻線の相間絶縁不良が一部で発生すると、各相の電流不平衡率が増加すると共に、基本波に対する第3次高調波(その整数倍の高調波を含む)の含有率も増加することが判明した。この巻線相間絶縁不良はメガによる端子と接地間の絶縁抵抗の測定では判定できないものである。従って、各相の電流の不平衡率及び第3次高調波の含有率の少なくとも一方を計測することにより巻線の相間絶縁不良が判定できる。但し、誘導電動機の入力電圧の不平衡率が通常の範囲内にあることが前提となるので、この電圧不平衡率の計測を先ず行っておく。
【0040】
一方、固定子や回転子のスロット部にオイルミスト等の異物が混入・固化するとエアギャップの磁気抵抗が回転状態で局部的に不規則に変動する結果、各相電流に第2次高調波を含む偶数次高調波が含まれる。また、固定子巻線の不平衡や電源不平衡、更に軸受部ベアリングの異常等に起因するガタ等が生じて回転子の偏心アンバランスが生じても各相電流に偶数次高調波が発生するが、この場合は特に第2次高調波の含有率が高くなる。
【0041】
かつ、上述したエアギャップの磁気抵抗の変化が広範囲にわたって生じたり、軸受部ベアリング異常が進展すると偏心高調波等の高調波磁束が発生し、偶数次高調波もさることながら奇数次高調波含有率も高くなる。
【0042】
そのために、本発明の一つである誘導電動機の劣化診断法は、三相交流電源より電力の供給を受け運転中の誘導電動機において、該誘導電動機の入力側における各相間電圧及び各相間電流を、それぞれ測定して得られる電圧不平衡率及び電流不平衡率と、前記各相電流の少なくとも一相の電流、もしくは前記各相電流によって発生する磁界に含まれる高調波成分の各次数の大きさを測定して得られる高調波含有率とでなる劣化判定値、該劣化判定値に基づき前記誘導電動機の劣化の度合いやその原因並びに場所の特定を行うもので、前記劣化判定値は少なくとも前記高調波含有率の数値を含んだものである。
【0043】
2.インバ−タ装置の劣化診断
誘導電動機を制御運転中のインバ−タは、その入力側及び出力側に高調波を発生せしめ問題となるケ−スがあるため、1994年9月に通産省から「高調波抑制対策ガイドライン」が制定された。従って、この高調波抑制の要求に対し、ACリアクトルやDCリアクトル、またはノイズフィルタがインバ−タの入力側に主として設置し、必要に応じインバ−タの出力側にもノイズフィルタを使用している。
【0044】
インバ−タはIC、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの電子部品や冷却ファン、リレ−など多数の部品によって構成されている。これらの部品は永久的に使用できるものではなく、正常な使用環境においても耐用年数を経過すると故障しやすくなる。従って、保守・点検を行い不具合の前兆を発見し故障発生を未然に防止し予防保全を行う必要があるが、前述したように従来のインバ−タの保守・点検においては、異常原因並びに場所の究明の為にはインバ−タを停止もしくは休止分解して測定器でチェックする必要があるため、面倒なばかりでなく保守・点検費用が高くつくので、殆どの場合インバ−タが故障するとインバ−タ全体を交換していた。インバ−タが故障に至るまでにはインバ−タ機能(例えば省エネ機能)が正常に動作していないので、その間の損失も計り知れないものがある。
【0045】
そのため、本発明のインバ−タの劣化診断法は、三相交流電源より電力の供給を受けて、誘導電動機を制御運転中のインバ−タにおいて、該インバ−タの出力側における各相間電圧及び各相電流を、それぞれ測定して得られる電圧不平衡率及び電流不平衡率と、前記インバ−タの入力側及び出力側における各相電流の少なくとも一相の電流、もしくは前記各相電流によって発生する磁界に含まれる高調波成分の各次数の大きさを測定して得られる入力側高調波含有率及び出力側高調波含有率とでなる劣化判定値、該劣化判定値に基づき前記誘導電動機及び前記インバ−タの劣化の度合いやその原因並びに場所の特定を行うもので、前記劣化判定値は少なくとも前記入力側高調波含有率もしくは出力側高調波含有率のどちらかの数値を含んだものである。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0047】
図1は、インバ−タに係るブロック図である。1は三相交流電源、3は誘導電動機2を制御するインバ−タであって、コンバ−タ部4と平滑コンデンサ5、及びインバ−タ部6を制御するコントロ−ル部7で構成されている。コントロ−ル部7はIC、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの電子部品を搭載したコントロ−ル基板である。また、インバ−タ3が現在主流となっている正弦波PWMインバ−タの場合の入力電流と電動機電流(出力電流)は図1にて示したような波形となる。
【0048】
インバ−タ3の入力電流が図1で示したようになるのは、コンバ−タ部4で全波整流した後、平滑コンデンサ5を有している為であり、この現象について次に述べる。
【0049】
図2は高調波発生の説明図である。三相交流電源を直流電源に変換するのに、図1で示した平滑コンデンサ5を使用するので、このコンデンサ5には充電時だけ図2のようなパルス状の電流が流れる。ここでτはパルス幅、Hはその高さである。このとき、交流電源と直流電源の流れ方が異なるため、高調波が発生する。
【0050】
図2の電流波形を方形パルス波と仮定すると、このひずみ波f(x)はフ−リエ級数で表わせ次式のようになる。
【0051】
【数2】
ここで、x=ωt(ω:角速度、t:時間)、nは高調波の次数である
【0052】
(2)式にて明らかなように、平滑コンデンサ5が理想的な場合は充電電流に起因するパルス状電流が流れないためf(x)=0となる。この平滑コンデンサ5が劣化してくると、その静電容量が低減し、(2)式中でn=5、7といった低次数の高調波成分が増加してくる。尚、n=3すなわち第3高調波は前述した(1)式からも分かるように非常に小さい。
【0053】
ところで、図1で示したようなコンバ−タ部4を有する交流入力側における高調波電流の理論値In は、基本波電流をI1 とすると周知のように次式のようになる。
【0054】
【数3】
しかし、(3)式は電源電圧のアンバランス、電源インピ−ダンス、負荷率、図1のインバ−タ部6を構成する電力素子デバイスのデッドタイムや、運転周波数に関係する制御角、及び高調波対策の有無等を無視した理想的な場合である。
【0055】
従って、上述した諸要素を全て考慮した高調波電流を理論的に算出することは難しく、本発明者は実験的解析手法により、高調波電流In が次式に従うことを見い出し本発明が完成した。
【0056】
【数4】
【0057】
(4)式においてMa 、Mb 及びMc は電動機単独運転かインバ−タ運転かによって定まる機器定数で、それぞれ次のような値となる。
(1)電動機単独運転の場合
Ma =0.02、 Mb =0.01、 Mc =0
(2)インバ−タ運転の場合
Ma =0.2、 Mb =0.1、 Mc =1.0
【0058】
また、(4)式中のKv は次式で示される電圧係数で、式中Xの数値は電動機もしくはインバ−タの入力電圧が200V系の場合は200、400V系及び3300V系の場合は、それぞれ400及び3300となる。
【0059】
【数5】
【0060】
更に、(4)式のKh はインバ−タ運転時の高調波対策係数で下記に示すような値をとる。
(1)高調波対策が無い場合はKh =1
(2)高調波対策が有る場合は、その対策部品により異なるが、平均的には次のようになる。但し、数値は第5次及び第7次高調波に対するものであり、第11次高調波以上の場合は( )内の数値となる。
a.ラインフィルタ設置時はKh =0.90(0.95)
b.ACリアクトル設置時はKh =0.60(0.85)
c.DCリアクトル設置時はKh =0.55(0.95)
d.AC・DCリアクトル併用設置時はKh =0.40(0.90)
e.EMIフィルタ設置時はKh =0.60(0.80)
【0061】
尚、(4)式のKs は電源インピ−ダンスZ(%)を、Kw は負荷率(%)であり、数値としてはそれぞれ100で除した値となる。
【0062】
ところで、インバ−タ運転において(4)式では表されないが考慮すべきは第6次高調波成分である。この第6次高調波成分はインバ−タの運転周波数が電源周波数の1/2、即ち60Hz地区では30Hz運転とした時、電動機の回転軸に少しでもベアリングやカップリング等に起因するアンバランスがあると第6次高調波含有率は1/n(nは高調波次数)、即ち約16%にも達する場合があるので注意が必要である。
【0063】
以上で高調波電流In が求まるので、各次数の高調波含有率が算出できる。ここで、電動機単独運転の場合は、高調波次数を第10次迄、またインバ−タ運転の場合でも第19次迄を(4)式にて演算すれば充分である。
【0064】
次に、図1のコンバ−タ部4の出力電圧、即ち直流側の高調波電圧について述べる。
【0065】
直流側にはコンバ−タ部4の変換器相数pの整数倍の高調波が含まれ、この高調波電圧の実効値En はインバ−タ部6を構成する電力素子デバイスのデッドタイムがゼロのときは次式で表せる。
【0066】
【数6】
但し、n=mp(m=1、2、3…)、Ed =無負荷無制御直流電圧、α:電力素子デバイスの電圧制御角(インバ−タの運転周波数に比例)、n:高調波の次数
【0067】
(9)式のEn は図1の平滑コンデンサ5の劣化がない場合は、インバ−タ3の出力側に与える影響は無視してよいが、平滑コンデンサ5が劣化してくると無視し得なくなる。また、電流形インバ−タ(図示しない)の場合は平滑コンデンサ5を用いないので(9)式をもとに高調波出力電流の計算を別途すればよい。
【0068】
ところで、本発明の対象としたインバ−タは、汎用品として広く用いられている電圧形インバ−タであり、正弦波PWM方式を採用しているため比較的正弦波形に近いが、それでも多数の高調波成分を含有している。この出力側電流波形をフ−リエ級数f(x)で示すと次式となる。
【0069】
【数7】
但し、x=ωt、an 及びbn はフ−リエ係数でnは奇数となり、n=2m+1 (m=0、1、2、……)とすると各フ−リエ係数は次のようになる。
【0070】
【数8】
【0071】
このようなひずみ波の実効値Ie と(11)式の係数の波高値Aはそれぞれ次式で表せる。
【0072】
【数9】
(12)式中のTは基本周期(1/周波数)であり、(13)式のKは定数である。
【0073】
従って、図1に示した電動機電流の高調波成分の大きさは、高調波次数の2乗に反比例するので、高調波の次数が高くなればなるほど、その含有率は大幅に低くなる。
【0074】
図1のコントロ−ル部7のコントロ−ル基板に搭載したアルミコンデンサ等の部品に劣化等の不都合が生じると制御回路が正常機能を発揮しなくなる。その結果、電動機電流に比較的高次数の高調波成分の含有率が高くなり、(13)式の波高値Aとは大きく異なる。特に、第11次、第13次、第17次、第19次、第23次、第25次、第38次調波の基本波に対する含有率に注目すべきことが本発明者は見い出した。
【0075】
即ち、コントロ−ル基板7が正常な場合の高調波含有率Hn (n=11、13、17、19、23、25、38)は、ほぼ次式に従う。
H11>H13>H17>H19>H23>H25>H38 (14)
【0076】
しかし、電動機電流の高調波含有率が(14)式より大きく異なる場合はコントロ−ル基板の劣化であり、その交換が必要である。
【0077】
特に第38次調波は図1のインバ−タ部6を構成する電力素子デバイスのデッドタイム異常が濃厚であるため、早急にコントロ−ル基板7を交換しておくのが安全である。デッドタイム異常を放置するとデバイスの破壊につながる危険性を有し、デバイス価格も高価なものである。その判定基準はH38>1%であり、正常時は0.1%以下が普通である。尚、第38次調波に限らず第36次調波や第40次調波が現れることもある。
【0078】
なお、図1においてインバ−タが無い場合、すなわち三相交流電源1によって直接誘導電動機2を運転している場合は、回転子導体(巻線)の不平衡や回転子軸受部ベアリング異常等に起因する回転軸のアンバランス成分により(10)式のフ−リエ係数でnが偶数、特にn=2となる第2次高調波が顕著となる。また、n=3の第3次高調波も巻線間の絶縁劣化等で現れる。
【0079】
上述したように出力側における高調波電流の理論値In は(13)式をもとに求めればよいが、この(13)式は入力側における高調波電流を表した(3)式と同様に理想的な場合であって、実際には電圧のアンバランス、図1のインバ−タ部6を構成する電力素子デバイスのデッドタイムや運転周波数に関係する制御角などを考慮すると次式で表せることを、本発明者は多くのデ−タを解析した結果初めて見い出すに至った。次式中I1 は基本波電流である。
【0080】
【数10】
ここで、hは高調波定数で、一般的には問題となる高調波、例えば第5次、第7次、第11次、第13次、等についてはh=2が採用されている。しかし発明者は、この数値が現実的なものでないことを蓄積したデ−タより見い出した。
尚、Km は電動機定数である。
【0081】
(15)式中のKm は次のような数値となる。
(1)Km =0.05 (ただし、n=2)
(2)Km =0.15 (ただし、n=3)
(3)Km =1.0 (ただし、n=2、3以外)
上記(1)、(2)のみKm が異なっているのは、元々三相交流電源によって供給される電圧、電流波形は対称波であるためn=2とその整数倍の高調波は発生せず(Km =0となる)、更に三相交流電源の電圧、電流が平衡していて不平衡率がゼロの場合はn=3とその整数倍の高調波も生じない(Km =0となる)。しかし、実際には他の電気機器(例えばインバ−タ)や誘導電磁界の影響によりKm ≠0となる。
【0082】
また、(15)式中のhは高調波係数で次のような二つの領域により異なった値になる。
(1)11>n≧5の場合はh=1
(2)n≧11の場合はh=1.6
【0083】
以上述べたように、正弦波PWMインバ−タよのうな電圧形インバ−タの場合は出力インピ−ダンスが小さく、負荷である誘導電動機に対しては電圧源として作用するため、出力側電流に含まれる高調波含有率は小さい。尚、(15)式中のKv 、Ks 、及びKw は(4)式にて表したものと同じ意味のものであるが、Ks についてはゼロと見なしてもよく(インバ−タが電圧源と考えた場合)、電圧係数Kv は(8)式で示されるから式中のXは運転周波数に比例すると考えてよい(電圧/周波数が一定制御の時)。従って、例えば商用周波数60Hz地域の200V系で30Hz運転の場合は、出力電圧が100Vであって、Kv は約1.4となる。
【0084】
以上の劣化診断法のフロ−チャ−トを図3に示す。なお本発明は、発明者が長期間にわたって多くの工場での電気機器の測定・分析に加え、実験で得たデ−タの蓄積による経験値や実験値をもとに、劣化診断を実験的研究により完成させたものである。また、経験的デ−タ分析による電気機器の診断については、発明者は「電気機器の異常診断方法」(特願2000−386603)として既に特許出願をしている。
【0085】
先ず、誘導電動機をインバ−タ制御しているか否かをステップS0で判断する。インバ−タ制御している場合は出力符号をYES、インバ−タ制御していない場合は出力符号をNOで記している。インバ−タ制御していない場合は誘導電動機(以下、電動機と記す)単独運転時の診断となるが、その手順は次の通りである。
【0086】
ステップS1で入力側電圧の測定が可能かどうか判定する。一般に低圧電動機(200V用、400V用)の場合は汎用テスタ−で簡単にできるが、高圧電動機(例えば3300V用)の場合はPTを設けたパネルメ−タ等で確認することになるが、各相間(図示しないがR相−S相、S相−T相、T相−R相)電圧は一般的には表示されておらず、不平衡率の計測演算に手間がかかったり、低圧電動機の場合でも汎用テスタ−のテストリ−ドを直接電源端子に接触させる必要があるため、ショ−ト(短絡)の危険性もあるので、専門家による場合を除きできる限り避けるのが望ましい。しかし通常、電圧不平衡率は2%以内と考えてよいが一度は確認しておく必要がある。
【0087】
計測演算1Mで示すステップS2では、ステップS1がYES、即ち入力電圧が測定できた場合、各相間電圧より電圧不平衡率を次式により計算する。
電圧不平衡率={(Vmax −Vmin )/Vmin }×100(%) (16)
ここで、Vmax 及びVmin は、それぞれ各相間電圧(実効値)の最大値及び最小値である。
【0088】
計測演算2Mでは、各相(R相、S相、T相)電流の実効値を測定するが、この電流の測定にはクランプ式電流計が非接触で行えるので好ましい。測定から得られた各相電流より、電流不平衡率は次式で求める。
電流不平衡率={(Imax −Imin )/Imin }×100(%) (17)
ここで、Imax 及びImin は、それぞれ各相電流の最大値及び最小値である。(ステップS3)
【0089】
ステップ4では計測演算3Mにて示すように、ステップS3で計測された電流に含まれる高調波含有率を求める。この高調波含有率の演算にはディジタル演算が可能な高速フ−リエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)による手法を用いればよい。FFTとはディジタル・フ−リエ変換(DFT)に必要な乗算回数をできるだけ少なくするように工夫した手法であり、この手法を次に述べる。
【0090】
これによるとDFTの乗算回数N2 に対してFFTでは乗算回数を1/2Nlog2 Nに減少させることができる。例えば、N=210のときN2 =1048576で1/2Nlog2 N=5120となる。またサンプル数N、サンプリング周波数fs 、サンプリング時間T、分析最大周波数fm の間には次の関係がある。
N=2fmT=fST (18)
これはサンプリング定理と言われるもので、サンプルする信号のうち信号の最高周波数成分の1/2以下の一定時間毎にサンプルすれば、得られたサンプル値から時間tの関数信号f(t)が復元されると言うものである。
【0091】
ここで、各相電流のうち、少なくとも一相の電流を測定して高調波含有率を求める。この場合の電流測定にはクランプ式が非接触で便利であるが、それ以外の方法でもよい。また、各相電流によって発生する磁界をホ−ルセンサや磁気抵抗センサ等を用いて測定し、高調波含有率を求めてもよい。この電流磁界の測定による方法は完全なる非接触方式のため、安全性も高く簡便な方法と言える。いずれの方法にせよ、電流の高調波含有率はマイコンのCPUを用いたディジタル方式(例えば512ポイント)によって、前述した高速フ−リエ変換から容易に求められる。
【0092】
次に、誘導電動機(以下、電動機と記す)がインバ−タ制御されている時は(ステップS0でYESの場合)、インバ−タの診断(電動機の診断を含む)のフロ−に移るが、この時のステップを以下に記す。
【0093】
ステップS5はインバ−タの出力側電圧の測定が可能か否かを判定する。この場合はインバ−タの劣化診断に必要な要素となるため、できれば測定しておくのが好ましい。
【0094】
計測演算1Nで示すステップS6では、ステップS2と同様な方法で電圧不平衡率を算出する。インバ−タが正常時はこの電圧不平衡率は2%以内、好ましくは1%以内である。
【0095】
計測演算2Nでは、インバ−タの出力側各相電流を測定し、得られた各相電流より電流不平衡率を算出するが、その方法はステップS3に準じたものである。(ステップS7)
【0096】
ステップS8は計測演算3Nで、ここではインバ−タ出力側の各相電流のうち少なくとも一相の電流を測定するか、もしくは各相電流によって発生する磁界を測定して高調波含有率を演算するが、その手法については前述した電動機の診断フロ−のステップS4以下に記述した事項に準ずればよい。
【0097】
ステップS9は計測演算4Nで、インバ−タ入力側(ACリアクトルなどの高調波対策部品が有る場合は、対策部品の入力側)の各相電流のうち少なくとも一相の電流を測定するか、もしくは各相電流によって発生する磁界を測定して高調波含有率を演算するが、その手順は計測演算3N(ステップS8)と同様である。
【0098】
上記ステップS8及びS9で、それぞれ出力側高調波含有率及び入力側高調波含有率を求めているが、どちらか一方、即ち出力側もしくは入力側のみでもよいが、精度を高めた診断を行うには出力側と入力側両方の高調波含有率を求めるのが好ましい。
【0099】
次にステップS10では電動機単独運転の場合は、電動機のみの診断となり、計測演算1M、計測演算2M及び計測演算3Mでそれぞれ求まった電圧不平衡率、電流不平衡率及び高調波含有率が、また電動機をインバ−タ制御による運転の場合はインバ−タと電動機の診断になり、計測演算1N、計測演算2Nと計測演算3N及び計測演算4Nでそれぞれ求まった電圧不平衡率、電流不平衡率と出力側高調波含有率及び入力側高調波含有率が、電動機及びインバ−タの劣化判定値以下か否かを判定する。
【0100】
劣化判定値以下のときには電動機もしくはインバ−タが正常であり(ステップS20)、劣化判定値を越える場合はステップS11に移る。従って、インバ−タは正常で電動機が劣化している場合、また電動機は正常でインバ−タが劣化している場合もあり、このような場合は劣化機器(電動機、インバ−タ)のみステップS11に移る。尚、劣化判定値については基本的には次のような数値となるが、必ずしもこの数値に限定されるものではない。
(1)電圧不平衡率:2%
(2)電流不平衡率:5%
(3)入力側高調波含有率:(4)式による
(4)出力側高調波含有率:(15)式による
特に上記(3)、(4)については、低圧母線に他の高調波源が有るか無いかや、有る場合はその大きさも影響要素になる。従って、(3)、(4)式は現実的なデ−タ分析による平均値であるため若干の幅(±20%程度)を有している。
【0101】
ステップS11では、電動機及びインバ−タの劣化度合いの決定や劣化原因、場所の特定を行うが、これら劣化度合いの数値はステップS10の(3)、(4)にて記した劣化判定値に基づいて決定するが、機器の劣化度合いは次の2段階に区分する。尚、数値については後述の実施例にて説明する
【0102】
(1)「要注意」段階。(ステップS30)
この段階は機器が危険な異常レベルに達している程ではないが、ステップS31にて示した傾向管理状態にあるため、測定間隔(例えば1ヵ月)を定め継続して測定・診断する必要がある。その結果、劣化数値が徐々に大きくなっていくことが確認されれば、部品交換もしくは修理の準備をしておく。(ステップ32)但し、ステップ32の後は劣化診断が終了となっているが、これは部品交換もしくは修理が完了した場合である。この時の診断フロ−としてはステップ41に相当すると考えてステップS0へ戻り再チェックを行う。
【0103】
(2)「不良」段階。(ステップS40)
この段階になると危険な異常レベルに達しているため、電動機の焼損やインバ−タの故障がいつ生じても不思議ではない。従って、早急に必要な部品の交換もしくは修理を行い、該当する電気機器(電動機、インバ−タ)の故障により波及する「設備」の全面停止故障に至るのを未然に防ぐ。(ステップS41)
【0104】
ステップS41が完了すればステップS0へ戻り再チェックを行う。
【0105】
【実施例】
本発明の実施例として電気機器(誘導電動機及びインバ−タ)の劣化判定値と、この判定値に基づき「正常」、「要注意」及び「不良」を区分し、劣化原因や場所の特定に関して説明すれば次の通りである。尚、本発明の劣化判定値の「正常」、「要注意」及び「不良」についての、高調波含有率の数値は実施例に限定されることはない。
【0106】
(1)誘導電動機(以下、電動機と記す)の診断
電動機単独運転時の場合は電動機の診断となるが、この診断においては電動機の負荷(例えば、ポンプやファン等)も含んでいる。この時の診断判定表の一例を表1に示す。ここで、劣化判定値の基準は(4)式の計算をもとにしており、また電圧不平衡率及び電流不平衡率の判定結果はそれぞれ次の数値(%)を採用する。
ア.電圧不平衡率
正常:2未満、要注意:2〜3.5、不良:3.5以上
イ.電流不平衡率
正常:5未満、要注意:5〜7.5、不良:7.5以上
尚、電動機の診断の場合、高調波は第10次迄考慮しておけば現実的に充分である。
【0107】
【表1】
【0108】
(2)インバ−タの診断
インバ−タ制御による電動機運転時の場合は、電動機及びインバ−タの診断となるが、この場合の劣化判定値の基準は、入力側が(4)式を、出力側は(15)式をもとに算出している。また、電圧不平衡率及び電流不平衡率の判定結果は、電動機及びインバ−タともそれぞれ次の数値(%)を採用する。
ア.電圧不平衡率
正常:1.2未満、要注意:1.2〜2.0、不良:2.0以上
イ.電流不平衡率
正常:4.8未満、要注意:4.8〜7.2、不良:7.2以上
一例として電動機及びインバ−タの診断判定表を表2及び表3に示す。表2は入力電流に含まれる第7次高調波含有率を、また表3は出力電流に含まれる第7次高調波含有率をもとにした判定結果である。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
以上が図3におけるステップS10の劣化判定値をもとにした機器(電動機、モ−タ)診断の判定結果であるが、特に注意を要する高調波次数はインバ−タ出力側の第19次及び第38次高調波である。これは図1のインバ−タ部6の各相のON/OFF切替時に、上段/下段の電力素子デバイスがスイッチング時間の関係で同時ONの状態になるとア−ム間短絡が発生し、デバイスが破壊するのを防止するため、スイッチが切替わる時、強制的に同時OFFにするデッドタイムが変化するために起因して発生する高調波である場合が多い。即ち、第19次高調波の含有量が多いとデッドタイムが長く、また第38次高調波の含有量が多いとデッドタイムは短く(デバイスの破壊につながる危険性が高い)なる傾向がある。このデッドタイム異常の判定には上述の第19次と第38次高調波の含有率H19及びH38を見ればよい。これらは次式がおおよその異常判定基準になる。
Kd ・H19+Ke ・H38>1.0(%):異常 (19)
ここで、Kd 及びKe はデッドタイム定数であり、それぞれKd =0.1、Ke =1.0となる。
【0112】
次に図3のステップS11で特定する劣化原因並びに劣化場所と、ステップS10の劣化判定値より定まる高調波次数との関係を表4、表5に示す。ここで、表4は電動機単独運転時のものであり(負荷を含む)、表5はインバ−タ制御による電動機運転時の結果である。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
【発明の効果】
本発明の電気機器の劣化診断法は、誘導電動機及びインバ−タを対象としたもので次のような効果を奏する。
【0116】
(1)誘導電動機及びインバ−タを停止もしくは休止分解することなく運転状態のもとで行えるので、停止時間の減少、保全費(材料費、人件費)の削減等によりコストの低減につながる。
(2)基本的に非接触診断法であるため安全性が高い。
(3)劣化の度合いや、劣化原因、劣化場所の特定が可能なため、精度や信頼性の向上、更には無駄な機器全体の交換が避けられ、かつ修理や部品交換費用等を含めコストメリットが大きい予知保全となる。
(4)事故が事前に防止できるので、生産性並びに品質が向上する。
(5)各次数の高調波含有率によって診断が可能なため市販の「高調波モニタ」等が使用できるので、この種の測定器では従来になかった用途拡大となり、技術的波及効果が大きい。
(6)専門技術者によることなく行えるので簡便性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】インバ−タに係るブロック図である。
【図2】高調波発生の説明図である。
【図3】劣化診断のフロ−チャ−トである。
【符号の説明】
1 三相交流電源
2 誘導電動機
3 インバ−タ
4 コンバ−タ部
5 平滑コンデンサ
6 インバ−タ部
7 コントロ−ル部
Claims (2)
- 三相交流電源より電力の供給を受けて運転中の誘導電動機において、該誘導電動機の入力側における各相間電圧及び各相電流を、それぞれ測定して得られる電圧不平衡率及び電流不平衡率と、前記各相電流の少なくとも一相の電流、もしくは前記各相電流によって発生する磁界に含まれる高調波成分の各次数の大きさを測定して得られる高調波含有率とでなる劣化判定値、該劣化判定値に基づき前記誘導電動機の劣化の度合いや、その原因並びに場所の特定を行うもので、前記劣化判定値は少なくとも前記高調波含有率の数値を含んだものであることを特徴とする電気機器の劣化診断法。
- 三相交流電源より電力の供給を受けて誘導電動機を制御運転中のインバ−タにおいて、該インバ−タの出力側における各相間電圧及び各相電流を、それぞれ測定して得られる電圧不平衡率及び電流不平衡率と、前記インバ−タの入力側及び出力側における各相電流の少なくとも一相の電流、もしくは前記各相電流によって発生する磁界に含まれる高調波成分の各次数の大きさを測定して得られる入力側高調波含有率及び出力側高調波含有率とでなる劣化判定値、該劣化判定値に基づき前記誘導電動機及び前記インバ−タの劣化の度合いや、その原因並びに場所の特定を行うもので、前記劣化判定値は少なくとも前記入力側高調波含有率もしくは出力側高調波含有率のどちらかの数値を含んだものであることを特徴とする電気機器の劣化診断法。
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