JP3561754B2 - 透視部材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、像鮮明度に優れたテトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物の溶融押し出しによる透視部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来ポリクロロトリフルオロエチレン等のふっ素樹脂は耐熱性や耐薬品性の要求される貯槽等の覗き窓や液面計等の透視部材として利用されている。しかしふっ素樹脂の中で最も耐熱性、耐薬品性に優れている溶融成形性テトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体(PFAと言う略称で知られている)は成形品を通して物体を観察する時、像鮮明度が低いため物体の細部が見えにくく透視部材として適当な材料ではなかった。
【0003】
このようにPFA成形品の像鮮明度が低くなる理由は、結晶性樹脂であるPFAの結晶化時に直径20〜150ミクロンに達する粗大な球晶が形成されることにある。一般に球晶の大きさは球晶核の数を増加させることにより小さくすることができ、この目的で無機又は有機の種々の結晶核剤を結晶性樹脂に添加することが行なわれている。ふっ素樹脂においても、ポリクロロトリフルオロエチレンにおいては硫酸金属塩(特開昭49−5153)が、ポリふっ化ビニリデンにおいてはアルカリ金属塩(特公昭49−17015)等の無機物や有機環状化合物(特公昭48−33983)等が提案されている。しかし、PFAに適した結晶核剤について提案されたことはない。又前記のような種類の結晶核剤をPFAに添加することは核剤の溶出による汚染を招きPFAの利点を損なうことになるので好ましくない。一方、樹脂を溶融状態から水冷等の手段により、急激に冷却することにより球晶の成長を抑制することはできるが、これは実用上困難な方法であるし成形品の歪が大きくなる等の問題も生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、通常の成形条件で成形でき、しかも溶出物による汚染等の問題を引き起こすことのないPFA組成物からなる像鮮明度に優れた透視部材を提供することにある。
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するため研究した結果、少量の特定のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をPFAに添加して含有させることにより、球晶が微細化され、PFAの特性を損なうことなく、溶融成形品像鮮明度を著しく改善できることを見いだし本発明を完成した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に関わる透視部材は、示差走査熱量計を使用し、試料を200℃から380℃まで10℃/分で昇温し、380℃で1分間保持した後、200℃まで10℃/分で降温して得られる結晶化曲線における結晶化ピーク温度である結晶化温度が305℃以上、上記結晶化曲線において結晶化ピーク前後で曲線がベースラインから離れる点とベースラインに戻る点とを直線で結んで定められるピーク面積から求めた結晶化熱が50J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンを含有するテトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物の溶融成形品であることを特徴とする。この透視部材は、直接裸眼を物質にさらすことなく透視により物質を観察するための透明な成形品である。
【0007】
後記の実施例及び比較例に見るように、成形品の像鮮明度と、成形品(成形品の一部を切り取った試験片で良い)を溶融して、その溶融物を10℃/分の冷却速度で降温し再結晶化させた時に形成される平均球晶径(以下再結晶化平均球晶径と言う)或は最大球晶径(以下再結晶化最大球晶径と言う)との間には相関があり、同じ成形条件において再結晶化平均球晶径(或は再結晶化最大球晶径)が小さいほど成形品の像鮮明度は高くなる。本発明の透視部材は再結晶化平均球晶径が15ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下であることにより、像鮮明度に優れたものとなる。
【0008】
本発明においてテトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体(PFA)とは、テトラフルオロエチレンと式1又は式2で表されるフルオロアルコキシトリフルオロエチレンとの結晶性共重合体で、共重合体中のフルオロアルコキシトリフルオロエチレン含有量が1〜10重量%のものである。この共重合体は溶融押し出し成形、射出成形等の溶融成形が可能なものであり、372℃±1℃において0.5〜500g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する。フルオロアルコキシトリフルオロエチレンとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
本発明において、球晶微細化のため上記PFAに含有させるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー又は1重量%未満の微量のヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フルオロアルコキシトリフルオロエチレン、フルオロアルキルエチレン、クロロトリフルオロエチレン等の変性剤を含有する変性PTFEであって、後記する方法により示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化温度が305℃以上で結晶化熱が50J/g以上という二つの条件を満足させるものである。
【0012】
PFAに含有させるPTFEの結晶化温度と球晶を微細化する効果との間には相関があり、結晶化温度が高くなる程、より少量の含有で球晶を微細化できる。PTFEの結晶化温度は305℃以上であることが必要で、310℃以上であることが好ましい。
【0013】
更に、結晶化温度が305℃以上であっても結晶化熱が50J/g未満のPTFEでは、PFA粉末と平均粒径が0.05〜1ミクロンのPTFE微粒子がPTFEの溶融温度より低い温度で均一に混合された組成物を、例えば溶融圧縮成形や溶融ピストン押し出し等、溶融組成物に対するせん断作用が小さな条件下で成形する場合は微細化された球晶を得ることができる。しかし溶融混練時や押し出し成形時に溶融組成物に対してスクリュー回転等によって大きなせん断作用が働く条件下では球晶の微細化効果が失われる傾向がある。
【0014】
PTFEの結晶化温度と結晶化熱は変性剤含有量と分子量の二因子によって影響されることが知られている。圧縮予備成形/焼成法によって成形されるPTFEの「モールディングパウダー」やペースト押し出し/焼成法によって成形されるPTFEの「ファインパウダー」がいずれも数百万以上の数平均分子量を有するのに対して、本発明の目的に適した前記のPTFEはこれらに比べて分子量が低く、より高い結晶性を有するものである。このようなPTFEは連鎖移動剤の存在下におけるTFEの重合や、「モールディングパウダー」や「ファインパウダー」又はこれらの成形物の熱分解又は放射線分解等の公知の低分子量PTFEの製造方法において、上記二つの因子を考慮して条件を選択することにより得ることができる。このようなPTFEは低分子量、高結晶性であるため機械強度に欠け、「モールディングパウダー」や「ファインパウダー」と異なり、それ自身で成形目的に使用されるものではないが、本発明の目的が達成される微量の添加ではPFAの機械的特性に対する悪影響が全く見られないことがわかった。
【0015】
前記条件を満足するPTFEをPFAに含有させることにより球晶径は急激に減少する。含有量の下限に関しては前記の如く含有させるPTFEの結晶化温度が高くなる程、より少量の含有で球晶を微細化できるので数値限定は困難であるが、組成物を溶融状態から10℃/分の冷却速度で結晶化させた時、15ミクロン以下、好ましくは10ミクロン以下の再結晶化平均球晶径を与え得る有効量を含むことが望ましい。後記の実施例に示されるように、結晶化温度Tcが314℃(結晶化熱Hcは60J/g)のPTFEを含有させた場合は0.01重量%の含有で再結晶化平均球晶径は13ミクロンになるので、含有量の下限値としては0.01重量%が目安になる。
【0016】
PTFE含有量の増加と共に球晶径は減少する傾向があるが、含有量が1乃至2重量%以上になると、含有量の増加に伴う球晶径の減少度は小さく、球晶径はほぼ一定となる。PTFE含有量の上限はPFAのMFRや成形品の使用条件等によって異なるが、一般的にPTFE含有量の増加と共に組成物の結晶性が高くなる傾向が見られ、2乃至4重量%以上の含有量では像鮮明度や機械的特性が低下する傾向が現れる。このような理由から、PTFEの含有量としては通常4重量%以下、好ましくは2重量%以下の含有量が採用される。
【0017】
PFAにPTFEを含有させる方法としては、溶融混練法、PFAペレット又は粉末とPTFE粉末とのドライブレンド法、PFA分散液とPTFE粉末又はPTFE分散液との湿式ブレンド法等の公知の方法をいずれも利用することができる。本発明で使用されるPTFEは溶融状態においてPFAと極めて高い相溶性を有するため溶融混練時や溶融押し出し時に容易にPFA中に分散し、極めて均質な組成物を与える。従って、添加するPTFEの形態に特に限定はなく、作業性を考慮して数ミクロンから数十ミクロンの粉末が通常使用される。
【0018】
本発明の透視部材を得るための成形条件に関しては特に制限がなく、従来からPFAについて適用されている押し出し成形、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形等の条件をそのまま利用することができる。また特開昭62−104822や特開平2−163128に記載されたふっ素ガスを用いる方法により、得られた組成物や成形品の重合体末端基を安定化することもできる。
【0019】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、PFAとしてはテトラフルオロエチレン/パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)共重合体を使用し、PPVEの含有量;メルトフローレート(MFR);融解温度,結晶化温度,結晶化熱;再結晶化平均球晶径;再結晶化最大球晶径;引張強度,伸び;MIT曲げ寿命、透視限界距離の測定は下記の方法によった。
【0020】
PPVE含有量:試料PFAを350℃で圧縮した後水冷して得られた厚さ約50ミクロンのフィルムの赤外吸収スペクトル(窒素雰囲気)から式3により吸光度比を求め、予めPPVE含有量既知のスタンダードフィルムによって得られた検量線を使用して試料のPPVE含有量を求めた。
【0021】
【数1】
【0022】
メルトフローレート(MFR):東洋精機製メルトインデクサーを使用し、5gの試料を372℃±1℃に保持された内径9.53mmのシリンダーに充填し5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下に内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して押し出し、この時の押し出し速度(g/10分)をMFRとして求めた。
【0023】
融解温度,結晶化温度,結晶化熱:パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC7型を使用した。試料5mgを秤量して専用のアルミパンに入れ専用のクリンパーによってクリンプした後DSC本体に収納し昇温を開始する。200℃から380℃まで10℃/分で昇温し、この時得られる融解曲線から融解ピーク温度を融解温度(Tm1:℃)として求めた。試料を380℃で1分間保持した後、200℃まで10℃/分で降温し、この時得られる結晶化曲線から結晶化ピーク温度を結晶化温度(Tc、℃)として求めた。結晶化熱(Hc:J/g)は常法に従い、結晶化ピーク前後で曲線がベースラインから離れる点とベースラインに戻る点とを直線で結んで定められるピーク面積から求めた。試料を200℃で1分間保持した後、再度380℃まで10℃/分で昇温し、この時得られる融解曲線から融解ピーク温度を融解温度(Tm2:℃)として求めた。各数値は小数点以下1けたまで求めJISZ8401の方法によって丸めた。
【0024】
再結晶化平均球晶径:溶融成形物をスライスして得られた厚さ約0.2mmの切片を試料としてスライドグラスにのせメトラーFP82HT型ホットステージに取り付けた。360℃まで40℃/分で昇温して試料を融解させ360℃で3分間保持した後200℃まで10℃/分で降温して再結晶化させた。試料部温度が200℃に達した後試料をのせたスライドグラスをホットステージより取り外し、偏光により球晶構造を確認しながら光学顕微鏡倍率100及び400倍で試料表面を観察した。試料表面に観察される連続した200個の球晶の直径を測定し、その平均値を再結晶化平均球晶径とした。またその中で最大のものを再結晶化最大球晶径とした。なお、球晶は隣接して成長した球晶との衝突によりいびつな多角形として観察されるので、その長軸径を直径とした。また再結晶化平均球晶径が5ミクロン以下の試料については走査型電子顕微鏡(3000倍及び5000倍)を併用して球晶径を測定した。以下の実施例及び比較例においては、MFR測定時の押し出し物を押し出し方向と直角方向にスライスして試料として用いた。
【0025】
引張強度,伸び:試料をホットプレス上の350℃に加熱された金型中に充填し、20分間加熱した後約5kgf/cm2 の圧力で約1分間加圧し、次いで金型を室温のプレス上に移して約30kgf/cm2 に加圧し20分間放置して冷却する。このようにして作成された厚さ約1.5mmのシートよりASTMD1457−83に従って5枚の試験片を切り出し、初期つかみ間隔22.2mm、引っ張り速度50mm/分で引っ張り試験を行い、破断時の強度及び伸び(試験片5枚の平均値)を求めた。
【0026】
MIT曲げ寿命:試料をホットプレス上の350℃に加熱された金型中で15分間加熱した後、PFAのMFRによって異なるが、30〜60kgf/cm2 の圧力で約1〜4分間加圧し、次いで金型を室温のプレス上に移して約50kgf/cm2 に加圧し、15分間放置して冷却する。このようにして作成された厚さ0.19−0.21mmのフィルムから長さ約110mm、幅15mmの試験片を切り取り、ASTMD−2176の規格に準じた東洋精機製MIT耐揉疲労試験機に取り付け、1kgの荷重下に左右135度の角度で、175回/分の速度で折り曲げ、試験片が切れるまでの往復折り曲げ回数(3枚の試験片についての平均値)をMIT曲げ寿命とした。
【0027】
透視限界距離:試料4gを内径28mmの円筒金型に充填し、370℃に加熱されたホットプレス上で30分加熱した後、金型を室温のプレス上に移して50kgf/cm2 に加圧しながら20分放置して冷却する。このようにして得られた厚さ3mmの円板状の試験片を内径29mm長さ30mmの円筒の先端に取り付け、円筒の他の端から試験片を通して、巾1mmの黒線が1mm間隔で描かれた白色板を照度500ルックスのもとで肉眼観察する。黒線と黒線の間隔が判別可能な試験片から白色板までの最大距離を測定して透視限界距離とし、像鮮明度の尺度とした。
【0028】
【実施例1〜6、比較例1〜3】
PPVE含有量3.0重量%、MFR2.0g/10分、再結晶化平均球晶径44ミクロン、再結晶化最大球晶径68ミクロンのPFAの溶融押し出しペレット99重量部と表1に示す特性を有するA〜Hの8種類のPTFE粉末1重量部(平均粒径2〜20ミクロン)とをローラーミキサー(東洋精機製R−60H型、ミキサー容量約60cc、混練部材質:ハステロイC276)に投入し、混練部設定温度350℃、樹脂温度345〜352℃、ローラー回転数15rpmで10分間溶融混練してPTFEを1重量%含有するPFA組成物を得た。また比較のためPTFEを添加せずPFAのみを同一条件で溶融混練した。各組成物は溶融混練後3〜5mm角のペレット状に裁断して成形用の試料とした。各組成物及びその組成物から成形された試験片の特性を表2に示す。なお透視限界距離の測定に使用した試験片について、再結晶化平均球晶径、再結晶化最大球晶径を測定した結果は表2に示す結果と同様であった。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
PFAにPTFEを含有しない場合(比較例1)、含有PTFE(A)の結晶化熱(Hc)が50J/g未満の場合(比較例2)および含有PTFE(H)の結晶化温度(Tc)が305℃未満の場合(比較例3)はいずれも溶融成形物の再結晶化平均球晶径が24ミクロン以上(再結晶化最大球晶径は35ミクロン以上)、透視限界距離は5cmであるのに対して、305℃以上の結晶化温度(Tc)と50J/g以上の結晶化熱(Hc)を有するPTFE(B〜G)を1重量%含有する実施例1〜6ではいずれも溶融成形物の再結晶化平均球晶径が15ミクロン以下(再結晶化最大球晶径は20ミクロン以下)、透視限界距離は75cm以上となっている。また実施例1、3および5を比較すると、結晶化温度(Tc)が最も高い316℃のPTFE(D)を含有する実施例3の再結晶化平均球晶径が2ミクロン(再結晶化最大球晶径は4ミクロン)と最も小さく、結晶化温度が314℃のPTFE(B)を含有する実施例1の再結晶化平均球晶径は3ミクロン(再結晶化最大球晶径は5ミクロン)でそれに次ぎ、結晶化温度が最も低い308℃のPTFE(F)を含有する実施例5の再結晶化平均球晶径は12ミクロン(再結晶化最大球晶径は18ミクロン)で、実施例の中では最も大きく、透視限界距離は実施例中最も小さい。
【0032】
【比較例4】
PTFEの水性分散液で、それを凝集することにより得られるファインパウダーの融解ピーク温度Tm1が337℃、Tm2が327℃、結晶化温度が314℃、結晶化熱が34J/gである平均粒径約0.2ミクロンのPTFEの水性分散液を、平均粒径が約0.2ミクロン、PPVE含有量3.0重量%、融解温度(Tm2)309℃のPFAの水性分散液に、PFA樹脂分とPTFE樹脂分の重量比が99:1となるように添加し、撹拌しながら硝酸を加えてエマルジョンを破壊し、次いでトリクロロトリフルオロエタンを加えて撹拌造粒した。このようにして得られた造粒粉末を水洗した後、290℃で15時間乾燥熱処理することにより平均粒径約450ミクロンの粉末組成物を得た。この組成物のMFRは1.7g/10分、メルトインデクサー押し出し物の再結晶化平均球晶径は2ミクロン、再結晶化最大球晶径は3ミクロン、透視限界距離は50cmであった。しかしこの粉末組成物をローラーミキサーに投入し実施例1と同様に溶融混練した場合溶融混練後のMFRは1.7g/10分、メルトインデクサー押し出し物の再結晶化平均球晶径は33ミクロン、再結晶化最大球晶径は45ミクロン、透視限界距離は5cmであった。なおPTFEを添加せずに同様にして得られたPFA粉末のMFRは2.4g/10分、再結晶化平均球晶径は56ミクロン、再結晶化最大球晶径は70ミクロンで、その溶融混練後のMFRは2.3g/10分、メルトインデクサー押し出し物の再結晶化平均球晶径は35ミクロン、再結晶化最大球晶径は45ミクロン、透視限界距離は5cmであった。上記の結果は、結晶化熱が34J/gである本比較例のPTFEを添加したPFA粉末では、せん断作用の小さいメルトインデクサー押し出し物では再結晶化平均球晶径が2ミクロン、再結晶化最大球晶径が3ミクロンと極めて小さいが、溶融時せん断作用下に混練されると球晶の微細化効果が失われ、像鮮明度が低下することを示している。
【0033】
【実施例7】
PPVE含有量3.0重量%、MFR1.9g/10分、再結晶化平均球晶径55ミクロン、再結晶化最大球晶径77ミクロンのPFAの溶融押し出しペレットと実施例1で使用したPTFE粉末B(Tc=314℃、Hc=60J/g)とを表3に示す含有量で、実施例1と同様にして溶融混練した。得られた組成物及びその組成物から成形された試験片の特性を表3に示す。なおこの実施例ではMIT曲げ寿命の試験片を作成するに際して金型を室温のプレス上に移す前の加圧条件として圧力60kgf/cm2 、約4分を採用した。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示された結果では、PTFEの含有量が0.1重量%でも再結晶化平均球晶径は未含有の場合の44ミクロンから13ミクロン、再結晶化最大球晶径は未含有の場合の63ミクロンから20ミクロンまで激減し、これに伴い透視限界距離は5cmから75cmまで向上する。1重量%含有させれば再結晶化平均球晶径は4ミクロン、再結晶化最大球晶径は5ミクロン、2重量%含有させれば再結晶化平均球晶径は3ミクロン、再結晶化最大球晶径は4ミクロンまで減少し、透視限界距離は90cmまで向上する。しかし、2重量%以上含有させてもそれ以上再結晶化平均球晶径や再結晶化最大球晶径は減少せず、ほぼ一定となり、透視限界距離は低下する傾向が現れる。また4重量%以下の含有量では引っ張り強度、伸び及び曲げ寿命に対する悪影響は全くないことが分かる。
【0036】
【実施例8】
PPVE含有量3.4重量%、MFR15.0g/10分、再結晶化平均球晶径49ミクロン、再結晶化最大球晶径62ミクロンのPFAの溶融押し出しペレットと、実施例1で使用したPTFE粉末B(Tc=314℃、Hc=60J/g)とを表4に示す含有量で、実施例1と同様にして溶融混練した。得られた組成物及びその組成物から成形された試験片の特性を表4に示す。なおこの実施例ではMIT曲げ寿命の試験片を作成するに際して金型を室温のプレス上に移す前の加圧条件として圧力30kgf/cm2 、約1分を採用した。
【0037】
【表4】
【0038】
表4に示された結果では、PTFEの含有量が0.01重量%でも再結晶化平均球晶径は未含有の場合の38ミクロンから13ミクロン、再結晶化最大球晶径は未含有の場合の50ミクロンから18ミクロンまで激減し、透視限界距離は5cmから65cmまで向上する。しかし4重量%以上含有させても透視限界距離は大幅に向上しないことが分かる。
【0039】
【発明の効果】
本発明のPFA組成物からなる透視部材は従来のポリクロロトリフルオロエチレン等からなる透視部材に比べて耐熱性や耐薬品性に優れているので腐蝕性薬液の貯槽等の覗き窓や液面計あるいは高温で使用される反応容器等の監視用窓等に適している。添加剤として使用されるPTFEはPFAと同等の耐熱性や耐薬品性を有するので溶出物による汚染の問題も生じない。
Claims (5)
- 示差走査熱量計を使用し、試料を200℃から380℃まで10℃/分で昇温し、380℃で1分間保持した後、200℃まで10℃/分で降温して得られる結晶化曲線における結晶化ピーク温度である結晶化温度が305℃以上、上記結晶化曲線において結晶化ピーク前後で曲線がベースラインから離れる点とベースラインに戻る点とを直線で結んで定められるピーク面積から求めた結晶化熱が50J/g以上であるポリテトラフルオロエチレンを含有するテトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物の溶融成形品であることを特徴とする透視部材。
- テトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物に含まれるポリテトラフルオロエチレンが0.01重量%以上である請求項1に記載の透視部材。
- テトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物に含まれるポリテトラフルオロエチレンが4重量%以下である請求項2に記載の透視部材。
- 305℃以上の結晶化温度と50J/g以上の結晶化熱を有するポリテトラフルオロエチレンを含有するテトラフルオロエチレン/フルオロアルコキシトリフルオロエチレン共重合体組成物の溶融成形品で、再結晶化平均球晶径が15ミクロン以下である透視部材。
- 再結晶化平均球晶径が10ミクロン以下である請求項4に記載の透視部材。
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