JP3561127B2 - 骨修復材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、老齢、疾病、事故などによって失われた骨欠損部を再建するために充填される骨修復材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記骨修復材として、リン酸カルシウム系材料の顆粒が用いられてきた。この顆粒は骨欠損部に顆粒状態のまま充填されるもので、顆粒周囲に新生骨が早期に増生し、この新生骨が各顆粒を包含して、上記骨欠損部を充填修復することを期待するものであった。
【0003】
【従来技術の課題】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。すなわち、顆粒状態のまま充填されるのでポケット形状をなす骨欠損部以外には使用が極めて困難である。また、欠損部への固定が困難で、充填、縫合後に湿潤する血液、生体液による流出が起こり易く、この流出により、欠損部が軟組織に充満されてしまったり、流出した顆粒により、二次的な炎症を励起する恐れがある。さらに、骨形成が進行したとしても、顆粒が多量に存在することにより新生骨の占有密度が小さく構造的に脆弱な状態である。また骨修復後のインプラント埋入を考える場合、ハイドロキシアパタイト(以下、HAPと略称する)の存在や骨質の脆弱性の為、ドリル等による後加工は実質上不可能であるという不具合があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するため、本発明はカルボキシルメチルキチンのスポンジ体中にリン酸カルシウム系材料の顆粒を担持し、且つ、凹状箇所などを補綴するべく、10mm角の立方体状として蒸留水に10分間浸漬した後の吸水体積膨張率吸水を1.3〜2.2倍とし、また、髄腔内などの入り口の狭く内部欠損の大きな箇所を補綴するべく上記吸水体積膨張率を4〜11倍としてなる骨修復材を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の骨修復材は、カルボキシルメチルキチンからなるスポンジ体にリン酸カルシウム系材料の顆粒を分散せしめてなり、且つ、入り口が狭く、内部欠損が大きな箇所などを補綴するべく、蒸留水に10分間浸漬した後の吸水体積膨張率が4〜11倍であることを特徴とする。
【0006】
このような本発明の骨修復材を次のような方法で作製することが可能である。
【0007】
まず、カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、水溶液を調製し、上記水溶液の重量にHAP顆粒あるいはTCP顆粒を混入した後、溶液中にHAP顆粒あるいはTCP顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌する。
【0008】
または、CMキチン水溶液を液体窒素にて急速に冷凍後、ブレンダーにて粉砕し、微粉末にする。この微粉末とHAPあるいはTCP顆粒を重量比20:1〜1:1の範囲で混合する。混合物を室温の下、金型(サイズ:径10mm〜30mm)に詰め、100〜500kgf/cm2 の範囲の圧力で5〜10分間の範囲で加圧する。
【0009】
加圧成形体を取り出し、20℃一定に保持したデシケータ内に5分間〜10分間放置する。その後、成形体を再度液体窒素にて急速冷凍し、12時間〜24時間の範囲で凍結乾燥し、さらに、140℃〜160℃の範囲で12時間〜14時間の真空熱架橋を施す。最後に、架橋済みの成形体に対し、0〜10kgf/cm2 の範囲で圧縮加工を施し、所望の体積膨張性を付与する。
【0010】
なお、上記製造方法における諸条件としては以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
【0012】
【作用】
本発明の骨修復材は、図1および図2に示すようにカルボキシメルキチン(以下、CMキチンと略称する)のスポンジ体中に、HAP,TCP,AWGCなどのリン酸カルシウムの顆粒を分散せしめたものであり、全体としてスポンジのような素材であることから充填する骨欠損部の形状に合わせて、はさみ等により切り出し、所定箇所に詰め込む。なお、この時、凹状箇所などを補綴する場合には、10mm角の立方体状として蒸留水に10分間浸漬した後の吸水体積膨張率吸水が1.3〜2.2倍となるようにした骨修復材を用い、他方、髄腔内などの入り口の狭い箇所を補綴するべく上記吸水体積膨張率が4〜11倍となるようにプレスした骨修復材を用いる。補綴した骨修復材は、補綴箇所に充満するように膨張し、壁面から受ける反作用によって、補綴箇所に密着する。
【0013】
なお、凹状箇所などを補綴する場合に骨修復材の上記吸水体積膨張率が1.3倍未満および2.2倍超過の場合、いずれも骨修復材が補綴箇所から脱落してしまう恐れがある。また、髄腔内などの入り口の狭い箇所を補綴する場合、上記吸水体積膨張率が4倍未満では、補綴箇所を充満するに十分な膨張が得られず、他方、11倍超過では、リン酸カルシウム材料の存在率が小さくなり、密なる骨増生が期待できない恐れがある。
【0014】
この骨修復材は顆粒ではなく、生体内で極めて安全で生体内分解性のCMキチンにリン酸カルシウムの顆粒が分散せしめてあり且つブロック状であって、上記詰め込みによって充填されるので、充填箇所から脱落する恐れがない。従って、充填後、本格的な骨新生反応が起こるまでの不安定な期間、CMキチンのスポンジ体中によりリン酸カルシウム系材料の顆粒が保持された状態で、CMキチンの透過吸収が可能で各種細胞が貯留される環境を提供する。そして、この環境の下、リン酸カルシウム系材料の顆粒が新生骨形成の起因となり、CMキチンの分解吸収窩に経時的に新生骨が形成されていく。
【0015】
以上から、新生骨増生のスペース、占有率が大きく、効率的で天然骨の割合の多い骨修復が保証される。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
【0017】
次のような順序で、前記骨修復材を作製した:
1)カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、水溶液を調製した。
【0018】
2)上記水溶液の重量に対して1/5量のHAP顆粒を混入し、溶液中にHAP顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌した。なお、HAPの粒径サイズ範囲は60〜150μm、CMキチン分子量分布範囲は10〜200万とした。
【0019】
3) 上記2)の混合溶液を金属製、硬質ガラス製あるいはポリプロプレン製の容器中に適量を注入し、ドライアイスエタノール浴中(約マイナス40℃)でHAP顆粒が均一に分散している間に冷凍させ、10mm角の立方体をした骨修復材を得た。
【0020】
4) 上記3)の容器ごと、凍結乾燥処理した。
【0021】
5) 上記4)の乾燥物を140℃〜160℃の温度で、24時間、真空熱処理し、CMキチンを水難溶化(熱固定)熱架橋させた。
【0022】
6) 熱架橋した骨修復材のあるものに表1のように一方向圧縮のプレス加工を施した。そして、それぞれのものについて吸水体積膨張率を測定した。その測定方法は、まず、骨修復材を10mm角の立方体状とし、これを蒸留水に10分間浸漬する。そして、浸漬後の成型体の三辺の長さをそれぞれ測定し、膨張した体積の体積を求める。この数値を基に体積膨張率を算出する。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、比較例として、次のような方法で作製した試料を得た。
【0025】
まず、カルボキシメチル化度50〜80%でCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、濃度5重量%の水溶液を調製し、この上記水溶液の重量に対して等倍量のHAP顆粒を混入し、溶液中にHAP顆粒が均一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌した。なお、HAPの粒径サイズ範囲は60〜150μm、CMキチン分子量分布範囲は10〜200万とした。この後の方法は、前記実施例の試料と同一とした。
【0026】
実験例1
次に、これらの骨修復材の固定性および骨修復能を観察するべく、以下の動物実験を行った。まず、図3に示すように家兎R(雌)の頭蓋骨の骨膜2を剥離し、その状態で歯科用バーを用いて約4mm径、深さ3mmの貫通孔を正中の左右両側対称に各4つ形成し、これらの貫通孔に円柱体に切り出した前記試料1〜4および比較例の骨修復材のブロック体Nを埋入した後、上記、骨膜2を縫合封鎖した。図4は、この埋入状態を示し、同図に示すように脳硬膜3は損傷させずに既存骨4とともに残しておく。
【0027】
この状態で、2週、4週、8週経過させ、それぞれの時点で上記家兎を屠殺して頭蓋骨から骨修復材及び周囲組織を同時に採取した。そして、これらをエタノール固定、脱水した後に樹脂包理し、薄切した切片をドレイジンブルー染色を施して組織標本を作製した。
【0028】
次に、この組織標本の顕微鏡写真を撮影し、得られた写真から骨修復材の固定性および骨修復能を観察した。
【0029】
この実験の結果は次の通りであった。
【0030】
試料1〜3は骨修復材の離脱や位置ずれも一切なく、新生骨の密なる増生が確認できた。これに対して、試料4は新生骨の増生がやや疎であった。また、比較例の場合、骨修復材の離脱や位置ずれが発生する場合があった。
【0031】
実験例2
次に、実験例と補綴箇所、形態を変えた場合の骨修復材の固定性および骨修復能を観察するべく、以下の動物実験を行った。
【0032】
まず、家兎脛骨内則面に径4mmのドリルにて骨欠損孔を形成した後、径約3mm、長さ約6mmの円柱状に成形した前記試料4〜7を上記形成孔から内部に埋入し、骨膜、筋膜、上皮の順に縫合した。
【0033】
オペから2週、4週、8週経過させ、それぞれの時点で上記家兎を屠殺して試料埋入部の骨修復材及び周囲組織を同時に採取した。そして、これらをエタノール固定、脱水した後に樹脂包理し、薄切した切片をドレイジンブルー染色を施して組織標本を作製した。
【0034】
次に、この組織標本の顕微鏡写真を撮影し、得られた写真から骨修復材の固定性および骨修復能を観察した。
【0035】
この実験の結果は次の通りであった。
【0036】
試料5〜7については、4週目から骨欠損部の骨性封鎖が観察され、HAP顆粒は、新生骨領内に取り込まれていた。
【0037】
また、材料埋入箇所の中央部の幅は周囲既存骨の厚みとほぼ同等に回復していた。
【0038】
これに対して、試料4では骨欠損部の骨性封鎖が観察されず、また、材料埋入箇所の中央部の幅は周囲既存骨の厚みよりかなり小さいところまでしか回復していなかった。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明の骨修復材は、カルボキシルメチルキチンからなるスポンジ体にリン酸カルシウム系材料の顆粒を分散せしめてなり、且つ、入り口が狭く、内部欠損が大きな箇所などを補綴するべく、蒸留水に10分間浸漬した後の吸水体積膨張率が4〜11倍であるので、補綴箇所に充満するように膨張し、壁面から受ける反作用によって補綴箇所に密着し、密なる新生骨の増成を保障するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の骨修復材の斜視図である。
【図2】図1における領域Aの拡大図である。
【図3】実施例における動物実験の態様を示すもので家兎の切開した頭部の上面図である。
【図4】図4のB−B線図である。
【符号の説明】
R 家兎
N ブロック体
2 骨膜
3 脳硬膜
4 既存骨
5 新生骨
Claims (1)
- カルボキシルメチルキチンからなるスポンジ体にリン酸カルシウム系材料の顆粒を分散せしめてなり、且つ、入り口が狭く、内部欠損が大きな箇所などを補綴するべく、蒸留水に10分間浸漬した後の吸水体積膨張率が4〜11倍であることを特徴とする骨修復材。
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---|---|---|---|
JP29580297A JP3561127B2 (ja) | 1997-10-28 | 1997-10-28 | 骨修復材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29580297A JP3561127B2 (ja) | 1997-10-28 | 1997-10-28 | 骨修復材 |
Publications (2)
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JPH11128336A JPH11128336A (ja) | 1999-05-18 |
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ID=17825363
Family Applications (1)
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JP29580297A Expired - Fee Related JP3561127B2 (ja) | 1997-10-28 | 1997-10-28 | 骨修復材 |
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Families Citing this family (2)
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JP2002325831A (ja) * | 2001-05-02 | 2002-11-12 | Asahi Optical Co Ltd | 生体用充填材、および生体用充填材の製造方法 |
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1997
- 1997-10-28 JP JP29580297A patent/JP3561127B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH11128336A (ja) | 1999-05-18 |
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