JP3560972B2 - 指示薬として使用するための改善された特異活性を有するアルカリホスファターゼ酵素 - Google Patents

指示薬として使用するための改善された特異活性を有するアルカリホスファターゼ酵素 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、生物学的特性を改善するための酵素の改良に関する。特に、本発明は、結合アッセイの標識として使用するためのアルカリホスファターゼを産生するための遺伝子工学処理された大腸菌の使用に関し、該酵素は高められた特異活性および高い熱安定性を有する。
発明の背景
アルカリホスファターゼは、種々の診断用の結合アッセイにおいて容易に検出可能な標識酵素として使用される。例えば、分析の型に応じて、問題の被分析物に結合する抗原、抗体または他の特異的結合物に結合することができる不均一酵素結合アッセイにおいてしばしば使用される。結合が生じた後、新たに生じた結合複合体は、反応混合物から分離され、その複合体に関与するアルカリホスファターゼの有無または量を観察することにより検出することができる。アルカリホスファターゼは、酵素基質を添加して得られる酵素/基質反応の程度を観察することにより検出される。
標識として使用するための特定の酵素の選択基準としては、高い特異活性(すなわち、高速触媒作用、即ち高速酵素反応);高温での安定性(通常は50〜60℃より高い溶融温度);特異的結合物に結合した後の酵素の安定性;酵素検出反応に使用するための容易に定量できる酵素基質の利用可能性;反応物質増幅法の利用可能性;およびその測定法での適正な性能(例えば、低いバックグランド値)が挙げられる。温度安定性は、酵素を適用する多くの産業にとっては、大きな関心事である。蛋白質はその温度安定性が様々であり、種々の酵素の溶融温度(Tm)の範囲は、40℃以下〜100℃以上までとなりうる。
子牛の腸のアルカリホスファターゼは、高い特異的活性および約55℃の溶融温度を示す酵素標識として使用されるこが多い。該酵素およびその抱合体は、結合アッセイに使用するのに都合が良く、検出反応の物質を増幅するためのいくつかの方法もある。しかし、子牛の腸のアルカリホスファターゼを標識として使用することには、まだいくつかの欠点がある。これらの欠点としては、酵素製剤の純度が不十分なものがあること、および共有的に結合した炭水化物が存在し、これが、測定結果を求める際のバックグランド値を高くしていると考えられることが挙げられる。さらに、子牛の腸のアルカリホスファターゼは、結合アッセイで使用するための特異的結合物に結合した後の温度安定性が悪い。これらの欠点のため、結合アッセイ、特に高められた温度に達する測定法により適した特異的活性および温度安定性を有する新しい形状のアルカリホスファターゼの探索および開発に関して多くの研究が行われている。
哺乳類の酵素の欠点を克服するために選択される一つの方法は、哺乳類のアルカリホスファターゼと対比して温度安定性が極めて高い大腸菌(E.coli)アルカリホスファターゼを使用するものである。大腸菌のアルカリホスファターゼは、Tmが約95℃である。また、単位細胞当たりに多数のコピーの対応する遺伝子が存在するならば、アルカリホスファターゼは、大腸菌から高められた量で発現することができる。さらに、その酵素は数段階で精製して均一にすることができる。しかし、大腸菌由来のアルカリホスファターゼは、子牛の腸のアルカリホスファターゼよりも特異的活性が低い。大腸菌アルカリホスファターゼの触媒反応速度(kcat)は、かなりバラツキがあるが、最大で60sec-1である。これに対して、子牛の腸のアルカリホスファターゼの場合は、kcatが約2,000sec-1である。このように天然の大腸菌アルカリホスファターゼは、触媒速度が子牛の腸のアルカリホスファターゼより低いので、大腸菌アルカリホスファターゼのより好ましい温度安定特性は保持したまま、その触媒活性を改善できれば有利であろう。
蛋白質工学分野の最近の進歩、例えば、部位特異的突然変異誘発、コンピューター支援分子設計、遺伝子発現技術および結晶または核磁気共鳴構造の利用性などにより、酵素の特異的活性の改善を目的とする計画の実行が可能になってきた。酵素の改善可能な特性は、一般的な二つの組に分けることができる。それは、(1)基質特異性、触媒反応速度(kcat)、ミカエリス定数(Km)など、酵素活性部位の局所的特性に依存する特性、ならびに(2)温度安定性、蛋白質分解に対する耐性および活性部位のアロステリック制御など、蛋白質構造の全体的性質に依存する特性である。酵素の活性部位は、典型的には約10個のアミノ酸残基から成る。一般に、活性部位で生じる反応は、活性部位のアミノ酸により決定される。従って、活性部位を構成するアミノ酸残基を変えることにより、酵素の触媒効果を変えることができる。
アルカリホスファターゼの特性を改善するための初期の試みは、主に、酵素の化学的改質に基づいていた。例えば、酵素を、光酸化に付するか、モノ−およびジクロロアセチル−β−グリセロホスフェート;2,3−ブタンジオン;フェニルグリオキサールおよび他の化合物による処理にかけた。典型的には、これらの処理により、酵素の触媒活性が低下または消失し、それにより、酵素の機能に関する情報が得られた〔Coleman and Gettings,Adv.Enzymol.,Volume 55,page 351(1983)〕。酵素をテトラニトロメタンで処理し(チロシル残基にニトロ化する)た後、ニトロ化残基をアミノチロシル残基に還元すると、酵素のホスホヒドロラーゼ活性が、未修飾の蛋白質の活性の130%に上昇し、ホスホトランスフェラーゼ活性は、通常の値の350%であった〔Christenら,Biochemistry,Volume 10,page 1377(1971)〕。そのような実験により、アルカリホスファターゼの酵素特性の一部は、酵素の化学的修飾により改善できることが示された。しかし、化学的修飾法は、酵素のどのアミノ酸を修飾するかに関する選択性が低く、従って、広範囲のアミノ酸残基が影響を受けるという点で制限がある。
さらに、蛋白質の活性部位または結合部位の変化は、単一のアミノ酸の変化(すなわち、点変異)よりもさらに広範囲に及ぶ。例えば、遺伝子発現を抑制する蛋白質(リプレッサー)は、いくつかの酸性残基を変えることにより、活性化物質に変換することができる〔Ma and Ptashne,Cell,Volume 48,page 847−853(1987)〕。トリプトファンシンテターゼのα−サブユニットに関する研究で示されるように、ほとんどの突然変異により、Tmが低下する〔Yutantら,Nature,Volume 267,pages 274−275(1977)〕。それにもかかわらず、Bacillus stearot hermophilusの中性プロテアーゼに関する研究で示されるように、酵素配列の2、3のアミノ酸を置き換えると、酵素のTmをかなり上昇させることができる〔Imanakaら,Nature,Volume 324,pages 695−697(1986)〕。
組換えDNA技術の進歩により、アルカリホスファターゼの生成を司る遺伝子(phoA遺伝子)を改変して、特定のアミノ酸残基を修飾または変えること(部位特異的突然変異誘発)が可能になった。大腸菌では、phoA遺伝子は、リン酸塩の結合、運搬および代謝の調節に関与する少なくとも18個の遺伝子の不連続familyの一部である。大腸菌phoA遺伝子のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当業者には周知である〔Chang,Gene,Volume 44,pages 121−125(1986)〕。
遺伝子工学により、アルカリホスファターゼ酵素の活性部位のセリン102の突然変異の結果、特異的活性が1,000分の一に低下したので、このアミノ酸残基がアルカリホスファターゼ活性に対して重要であることが示された〔J.E.Butler−Ransohoffら,Abstracts of 1989 Alkaline Phosphatase Symposium,San Diego,CA,(1989)〕。あるいは、セリンをシステインで置き換え、水酸基は保持されたままにすると、活性がわずかに低下するだけである〔Ghoshら,Science,Volume 231,page 145(1986)〕。酵素活性部位のすぐ近くの残基であるアルギニン166の役割も突然変異誘発により研究され、その結果、触媒効率が天然酵素と比較して約50分の一に低下した〔Butler−Ransohoffら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,Volume 85,page 4276(1988)及びChaidaroglouら,Biochemistry,Volume 27,page 8338(1988)〕。アルカリホスファターゼのアミノ末端から10〜40個のアミノ酸残基を蛋白質分解脱離すると、温度安定性は低下するが、酵素の特異的活性はそのままか、わずかに低下するだけであることが示された〔Chlebowskiら,J.Biol.Chem.,Volume 264,page 4523(1989)〕。phoA遺伝子のアミノ酸に変化を及ぼさない突然変異も、いくつかの野生型の大腸菌の単離物から証明されている〔DuBoseら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.Volume 85,page 7036(1988)〕。より最近、大腸菌アルカリホスファターゼの活性部位のアスパラギン酸101の機能が、そのアミノ酸をアラニンで置き換える部位特異的突然変異誘発により研究された〔Chaidaroglouら,Protein Engineering,Volume 3(2),pages 127−132(1989)〕。その突然変異酵素は、野生型酵素より約3倍高い活性を示したが、温度安定性ではかなりの低下を示した。
発明の要旨
本発明は、野生型酵素と対比して高められた触媒活性を有するアルカリホスファターゼ酵素の産生を調節する合成遺伝子の構築に関する。本新規酵素の酵素活性は、野生型酵素と対比して36倍も増加した。本新規酵素の温度安定性は、野生型酵素と対比すると低いが、その酵素を結合測定法で使用するのに適する程度の温度安定性は保持されている。すなわち、本新規酵素は、通常の測定条件下では熱により不活性化されない。新規酵素、その酵素を産生するのに使用される新規DNA配列、設計されたDNA配列(engineered DNA sequences)を含む新規プラスミド、そのプラスミドを含む新規宿主および新規酵素を指示薬の形で使用する測定法を記載する。
例えば、大腸菌で産生される合成アルカリホスファターゼ酵素を記載するが、その新規酵素は、野生型大腸菌アルカリホスファターゼと対比して少なくとも1個のアミノ酸突然変異を有し、特異的活性は、野生型大腸菌アルカリホスファターゼと対比して増加している。典型的には、アミノ酸突然変異は、酵素の活性部位の約20=内で生じる。アミノ酸変化の例としては、Thr100の箇所にVal、Thr100の箇所にIle、Lys328の箇所にArg、Val99の箇所にAla、Ala103の箇所にAsp、Ala103の箇所にCys、Thr107の箇所にVal、Asp101の箇所にSer、およびAsp153の箇所にGlyが入って置き換わるものが挙げられる。アミノ酸が2個変化したものには、Val99の箇所にAlaが入り、Lys328の箇所にArgが入るか、または、Val377の箇所にAlaが入り、Ser415の箇所にGlyが入るアミノ酸突然変異がある。
本発明は、ベクターに挿入するのに適する新規DNA配列を含む。その配列は、アルカリホスファターゼ酵素をコードする一連のコドンを含み、該アルカリホスファターゼは、野生型大腸菌アルカリホスファターゼと対比して少なくとも1個のアミノ酸突然変異を有し、また、野生型大腸菌アルカリホスファターゼと対比して高められた特異的活性を有する。該DNA配列を含むプラスミドおよび該プラスミドを含む宿主細胞も記載する。単細胞宿主を使用し、典型的には、大腸菌、Bacillus,Streptomyces,哺乳類の細胞、酵母および他の真菌類などの細胞株および真菌株から選択される。その選択は本発明では重要でないが、全ての宿主が必ずしも等しく効果的であるわけではない。
さらに、本発明は、該合成アルカリホスファターゼ酵素の結合測定法における酵素標識としての用途を含む。テスト試料中の被分析物の有無または量を測定するのに有用な指示薬は、新規酵素に特異的結合物を直接または間接的に結合することにより作ることができる。その結果得られる指示薬は、サンドイッチアッセイ、競合アッセイならびに直接および間接測定法など(これらに限定されない)の測定法で使用するのに適する。
発明の詳細な説明
本発明は、高められた特異的活性を有し、天然酵素の好ましい温度安定特性は保持されたままの新規アルカリホスファターゼ酵素を提供する。遺伝子的に改良した酵素は、子牛の腸のアルカリホスファターゼよりも熱安定性が良好であり、75℃(pH7.5)での最小半減期は5分である。さらに、測定条件に応じて、新規酵素の酵素活性は、天然酵素の1.5〜36倍に高められた。特異的活性の増加が最も大きく認められるのは、新規酵素の酵素活性を低濃度のトリス(0.05M)またはジエタノールアミン(0.05M)の存在下で測定するときである。高められた特異的活性は、分子設計、遺伝子工学および部位特異的突然変異誘発の組み合わせにより達成された。
典型的には、アルカリホスファターゼにおいて突然変異の標的となる部位を酵素の結晶構造に基づいて予め決定した〔Sowadskiら,J.Mol.Biol.,Volume 186,pages417−433(1985)〕。標的部位としてあるアミノ酸を選択する基準は、そのアミノ酸が酵素分子の活性部位、特に触媒残基Ser102に近いことであった。
酵素の一定の部位で所期のアミノ酸変化を得るために、そのアミノ酸をコードする適切なコドン配列をphoA遺伝子に挿入した。ランダムなアミノ酸変化も、コドン配列NNN(Nは4個のヌクレオチドのいずれかである。)をDNA配列に挿入することにより行った。構築された一つの突然変異体は、偶然、2個の点変異、すなわち2個のアミノ酸変化を有していた。これは、遺伝子合成に使用した合成オリゴヌクレオチドの化学的修飾の結果であると考えられる。
新規プラスミドの構築
適切に突然変異が行われたDNA分子の最初の組を得て、それから二つの蛋白質設計計画を使用して突然変異体酵素を産生した。まず、修飾された種々のDNA配列を単一の遺伝子に導入し、得られたクローンから、高い特異的活性を有する突然変異体酵素を産生するものを選択した。次に、突然変異体DNA分子を第二回めの突然変異誘発のための基礎遺伝子として使用した。
最初の計画は、アルカリホスファターゼをコードする完全合成遺伝子の設計および構築を含む。合成phoA遺伝子は、本出願人による係属中の米国特許出願No.131,973(1987年12月11日出願)およびMandecki and Bolling,Gene,Volume 68,pages 101−107(1988)(これらは参考文献として本明細書に添付する。)に記載されたFok I法を使用して合成した。21個の合成オリゴヌクレオチド(図1(a)〜(c))を設計し、このために作成したプラスミドベクター(pWM500)で個々にクローン化した。各合成オリゴヌクレオチドは、次いで、Fok I制限エンドヌクレアーゼを使用してベクターから切り取った。得られたDNA断片は、ベクターから切断した後、各フラグメントの突出末端がそれぞれ異なる配列を有して、21個の全フラグメントを一つの反応で連結して約1600塩基対の合成phoA遺伝子を産生するように設計した。
合成遺伝子は、翻訳(遺伝子の塩基配列がポリペプチド鎖のアミノ酸配列に翻訳される機構)開始のためのphoAリボソーム結合部位および転写終結部位配列(遺伝子に相補的なmRNA鎖の合成が終結する部位)を含んでいた。本合成遺伝子は、合成プラスミドベクターpWM518(構成は実施例11に記載する)でクローン化した。そのベクターは、クローン化、発現および突然変異誘発などの操作を容易にするための限られた数の制限部位を有するように設計した。合成phoA遺伝子を有するプラスミド(pMA100)からのアルカリホスファターゼ発現レベルは、550nmでの光学密度が1.5に成長した1lの細胞からの蛋白質が10mg近くとなった。染色体アルカリホスファターゼ遺伝子が欠失した大腸菌株を形質転換および続く培養に使用して本発明の新規酵素を産生した。そのような株としては、Inouyeら,J.Mol.Biol.,Volume 110,pages 75−87(1977)(参考文献として本明細書に添付する。)に記載されたMZ13b(F-lacX74,Δ(brnQR,phoA-,phoB-,proC-24 tsxR,trpam,strR,F80D(proC+,proB+xpw3,F80)大腸菌がある。
生物学的測定法を使用して、得られた突然変異体の大腸菌微生物をスクリーニングし、どのクローンが高められた特異的活性を有するアルカリホスファターゼを産生するかを測定した。クローンの増殖は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドール(BCIP)の基質を含む培地で行った。高い特異的活性を有するアルカリホスファターゼを産生するコロニーは、コロニーの周囲が酵素と基質との反応により青色を呈することにより検出した。
宿主細胞によるアルカリホスファターゼ発現レベルが高いと、指示薬プレート上のコロニーのカラースクリーニングには不都合である(発現レベルの増加が小さい場合は、青色が深くなる色変化が観察しにくい。)。従って、突然変異体酵素を天然様の酵素から区別しやすくするために、天然のlacZリボソーム結合部位を、天然リボソーム結合部位と類似しているが、翻訳開始効率の劣る配列で置き換えることによりプラスミドのアルカリホスファターゼ発現レベルを下げた。その結果得られるプラスミドをpMA101と命名した。このphoA遺伝子は、ATG開始コドンの上流にある5個のランダムなヌクレオチド群を含む。その結果、酵素の発現はかなり低下し、高い特異的活性を有する突然変異体酵素のみがBCIP基質において暗青色を示す。クローンライブラリーは、異なるレベルのアルカリホスファターゼ活性を示す約1,000個のクローンを含むように作製した。アルカリホスファターゼ活性を呈色で選別するに適するクローン(pMA101)を選択して、さらに突然変異誘発の研究を行った。
部位特異的突然変異誘発
Mandeckiら,Proc.Natl.Acad.Sci.,Volume 83,pages 7177−7181(1986)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されているように、オリゴヌクレオチド特異的二重鎖切断修復法(すなわち、架橋突然変異誘発)を使用して合成プラスミドベクターを構築した。しかし、この特定の方法を使用することは、本発明には重要でない。その方法は、コンピテント大腸菌細胞を変性線状プラスミドおよび、適切な突然変異をコードし、プラスミド切断点付近のプラスミドDNA配列に類似する二つの「アーム」を有する合成オリゴヌクレオチド配列とともに共形質転換することにより突然変異を導入することを含む。突然変異誘発には一本鎖オリゴヌクレオチド配列のみを使用するので、変性配列をプラスミドDNAに導入するのに特に有利である。
その方法では、アルカリホスファターゼ遺伝子の部分配列における突然変異をコードする合成オリゴヌクレオチド部分配列をプラスミドベクターのphoA遺伝子に入れてクローン化し、phoA遺伝子を置き換えるというよりむしろ修飾を行った。合成オリゴヌクレオチド部分配列は、典型的には20個のアミノ酸の鎖に対応するように規定した、またはランダムなコドン配列を標的部位に運ぶように設計した。部分配列を導入するために、phoA遺伝子を含む大腸菌プラスミドは、突然変異誘発の標的である部位の隣で切断する(すなわち、プラスミドを1個所のみ切断する制限エンドヌクレアーゼで切断した。そのような部位が、phoA遺伝子内に25個ある。)か、または、プラスミドを2種の酵素で切断して突然変異誘発を行うべき部位と重複する制限断片を遊離した。宿主細胞は、その細胞を切断プラスミド、合成オリゴヌクレオチドおよびDNAリガーゼにより結合することにより形質転換した。1回の形質転換で200個のコロニーが得られた。
色選別に引き続き、DNA塩基配列決定および精製蛋白質の分析を行って、高められた特異的活性を有するアルカリホスファターゼを発現する遺伝子を有する10個の大腸菌突然変異体株が得られた。これらの突然変異体は、Thr100>Val(すなわち、100位のトレオニンがバリンで置き換えれた。);Thr100>Ile;Lys328>Arg;Val99>Ala;Asp101>Ser;Ala103>Asp;Ala103>Cys;Thr107>Valであり、二重突然変異体は、Lys328>ArgおよびVal99>Alaであり、偶然の二重突然変異体は、Val377>AlaおよびSer415>Glyであった。
この種の遺伝子突然変異体を含むプラスミドクローニングベヒクルを調製する別の方法、例えば、Poliskyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Volume 73(11),pages 3900−3904(1976)、米国特許No.4,375,514および米国特許No.4,704,362(これらは、参考文献として本明細書に添付する。)に記載の方法も使用することができる。
アルカリホスファターゼ突然変異体の分析
特異的活性および温度安定性の分析を、精製度の高い蛋白質物質に対して行った。簡単に述べると、精製法は、スフェロプラストの生成によるペリプラズム蛋白質の終結、硫安沈澱およびクロマトフォーカシングクロマトグラフィーを含む。特異的活性およびミカエリス定数の測定は、酵素基質(例えば、リン酸p−ニトロフェニル)が変換されて発色性物質を生成する速度をモニターすることにより行った。温度安定性は、異なる温度での酵素失活を追跡することにより測定した。
得られた新規酵素およびその特性を表1に示す。全ての大腸菌突然変異体は、天然酵素(pMA100として表される)よりも特異的活性が高いアルカリホスファターゼ酵素を発現した。突然変異体酵素の各々は、温度安定性が天然酵素より小さかったが、哺乳類の酵素である子牛の腸のアルカリホスファターゼよりはかなり良好であった。
Figure 0003560972
アルカリホスファターゼ標識を使用する結合測定法
アルカリホスファターゼを結合測定法で標識として使用することに関してさらに記載する前に、多数の用語の定義を行う。本発明の新規標識が有利に使用される種々の測定法も記載する。
「特異的結合物質」は、特異的結合対、すなわち、一方の分子が化学的または物理的手段によりもう一方の分子に特異的に結合する二つの異なる分子の一つの物質を意味する。抗原−抗体の特異的結合対の他にも特異的結合対があり、例えば、それらに限定されないが、ビオチンとアビジン、炭水化物とレクチン、(例えば、DNAハイブリッド形成反応における)相補的ヌクレオチド配列、相補的ペプチド配列、エフェクターとレセプター分子、酵素補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素、ペプチド配列とその配列または蛋白質全体に対して特異的な抗体、ポリマー酸とポリマー塩基、色素と蛋白質バインダー、ペプチドと特異的蛋白質バインダー(例えば、リボヌクレアーゼ、S−ペプチドおよびリボヌクレアーゼ S−蛋白質)などが挙げられる。さらに、特異的結合対は、もとの特異的結合物質の類似体である物質、例えば、被分析物−類似体を含めることができる。特異的結合物質が免疫反応物質の場合は、例えば、抗体、抗原、ハプテンまたはそれらの複合体が挙げられ、抗体を使用する場合は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え蛋白質、2種以上の抗体混合物、抗体フラグメントまたはそれらの混合物、ならびに抗体と他の特異的結合物質との混合物が挙げられる。そのような抗体の作製およびそれらを特異的結合物質として使用するための適合性の詳細は当業者には周知である。
「被分析物」は、測定法で検出または測定すべき化合物または組成物を意味する。被分析物は、被分析物に特異的な天然の結合物質が存在するか、被分析物に特異的な結合物質を作製することができる物質であればどんなものでもよい。被分析物としては、それらに限定されないが、毒素、有機化合物、蛋白質、ペプチド、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬物(治療目的で投与されるものおよび不法目的で投与されるものを含む)、および上記物質の代謝物または上記物質に対する抗体が挙げられる。「被分析物」はまた、免疫定量法で重要な抗原性物質、ハプテン、抗体およびそれらの組み合わせも含む。本発明の試薬および方法はまた、問題の食品および環境上の被分析物を測定する目的で設計することもできる。
「指示薬」は、標識が接合した特異的結合物質を意味する。指示薬は、テスト試料中の被分析物の量に関する検出可能な信号を発生する。一般に、指示薬は、固相物質に固定化した後、検出または測定されるが、遊離または未結合の指示薬も検出または測定して測定結果を求めることができる。指示薬の特異的結合物は、上述したどんな特異的結合対の物質でもよい。本発明において、指示薬の標識成分は、高められた特異的活性を有する合成アルカリホスファターゼである。酵素標識は、酵素基質を検出可能な物質に変換するために使用される。その物質は、目で見て、または装置により検出することができる。また、検出可能な信号の増幅は、酵素を1種以上の基質または他の酵素と反応させて検出可能な反応物質を作ることにより行うことができる。
「捕獲結合物」は、被分析物または指示薬に直接または間接的に結合可能で、典型的には、共有、非共有、吸着または非特異的機構により固相に結合しているか、または結合可能であり、或いは析出可能である特異的結合物を意味し、その結果、捕獲結合物はテスト試料または他の測定試薬から分離可能である。
「捕獲試薬」は、直接または間接的に固相物質に接合していて、捕獲結合物およびそれに結合した被分析物または指示薬を未結合の被分析物および測定試薬から分離することができる捕獲結合物を意味する。典型的には、捕獲結合物の固相への接合は事実上不可逆的であり、共有機構を含むことができる。しかし、本発明の捕獲試薬は、不溶固相物質に結合した捕獲結合物に限定されない。凝集測定法では、捕獲試薬に、牛血清アルブミンなどの可溶担体物質に結合した捕獲結合物を含めることができる。
「固相物質」は、当業者には周知の、特異的結合物を固定化するために使用される、適するクロマトグラフ用物質、吸湿性物質、多孔性物質もしくは毛管物質、または他の常用の固体物質を意味する。本発明では、固相物質に、1個以上の分析試薬を含む1個以上の層を有する流動測定法装置で使用するためのガラス繊維、セルロースまたはナイロンパッド;浸漬計量測定法用の浸漬片;クロマトグラフィー(例えば、紙またはガラス繊維)もしくは薄層クロマトグラフィー例えば、ニトロセルロース)用の試験片(1個または全部の試薬が固相物質の1個の片の分離した各ゾーンに含まれる。);または当業者に周知の吸収物質を含めることができる。また、固相物質に、ポリアクリルアミドビーズ、ポリスチレンビーズまたはチューブ、磁気ビーズ、マイクロタイタープレートまたはガラスもしくはプラスチック試験管も含めることができるが、それらに限定されない。
天然、合成または合成により修飾された天然の物質も固相物質として使用することができ、例えば、ポリサッカライド、例えば紙などのセルロース物質ならびにジアゾベンジルオキシメチルセルロース、ニトロセルロース、2−アミノフェニルチオエーテルセルロースおよびセルロース酢酸エステルなどのセルロース誘導体;シリカ;シリコン粒子;不活化アルミナなどの無機物質、または塩化ビニル、プロピレンとの塩化ビニルポリマーおよび酢酸ビニルとの塩化ビニルポリマーなどのポリマーとの多孔性ポリマーマトリックスに均一に分散した他の無機細粒物質;天然(例えば、木綿)および合成(例えば、ナイロン)の布;シリカゲル、アガロース、デキストランおよびゼラチンなどの多孔性ゲル;ポリアクリレートなどのポリマー性フィルム;蛋白質結合膜などが挙げられる。固相物質は、適度の強度を有するべきであり、あるいは、強度を支持体により付与してもよく、検出可能な信号の発生を妨げるべきではない。
所望により、捕獲試薬の捕獲結合物は、粒子、例えば微粒子に固定することができる。これらの微粒子は、固相物質として役立ち、カラムに保持され、可溶試薬とテスト試料との混合物に懸濁し、または他の固相ベース物質によって保持・固定化することができる。「保持・固定化」は、固相ベース物質と会合した微粒子がその物質内で他の位置に実質的に移動することができないことを意味する。微粒子は、当業者であれば、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートまたは同様の物質から成る物質を含む適当な型の粒状物質から選択することができる。微粒子の大きさは重要ではないが、固相ベース物質を使用する場合は、平均直径が固相ベース物質の孔の平均サイズより小さいのが好ましい。
本発明はまた、最初は固相物質に接合していない捕獲結合物質を含む捕獲試薬も含む。測定成分間で複合体の生成が生じると、固相を分離機構として使用することができる。例えば、反応混合物を固相物質と接触させ、新たに生成した反応複合体を固相物質により保持させることができる。別の方法を用いてこの分離を行うこともできる。例えば、本出願人による係属中の米国特許出願No.150,278(1988年1月29日出願)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されているように、それ自体が捕獲結合物に結合する固相を使用する方法;捕獲結合物に対して特異的である結合物を固相に固定する方法;または固相に、捕獲結合物に結合している帯電した物質を引きつけて結合する反対電荷の帯電物質などの物質を固定する方法がある。
「特異的補助結合物」は、捕獲結合物の特異的結合物および検出可能な結合複合体の一部となる指示薬の他に使用される、特異的結合物を意味する。一つの測定法で1種以上の特異的補助結合物を使用することができる。例えば、特異的補助結合物は、指示薬がその特異的補助結合物を結合することができ、後者が被分析物を結合することができる測定法で使用することができる。
「テスト試料」は、典型的には、問題の被分析物を含むと推測される、天然または人工的に作った液体のテスト媒体を意味する。テスト試料は、一般には生物学的液体またはその希釈物である。被分析物を測定することができる生物学的液体としては、血清、全血、血漿、尿、唾液、羊水、脳脊髄液などが挙げられる。また、変形して液体テスト媒体となるようにした固体物質(例えば、髪、組織など)もテスト試料として挙げることができる。
当業者であれば理解されるように、結合物、補助結合物または固相物質の選択は本発明には重要ではない。それらの物質は、所定の被分析物またはテスト試料に対する測定結果を最適にするように選択する。
本発明の新規酵素は、競合結合測定法などの均一な結合測定法、およびサンドイッチおよび競合結合測定法などの不均一な結合測定法において有利に使用される。不均一な結合測定法は、結合反応物が結合する固相物質の使用を含む。テスト試料中の被分析物の有無または量を示す標識を検出する前に、反応混合物から固相を分離することにより、固定化された反応成分から過剰の試料および測定試薬を取り除く。
固相サンドイッチアッセイにおいて、捕獲試薬は、典型的には、固相物質に結合した捕獲結合物を含む。例えば、特異的結合物は、テスト試料中の抗原−被分析物に結合する固定化抗体にすることができ、あるいは、テスト試料中の抗体−被分析物に結合する固定化抗原にすることができる。捕獲試薬は、被分析物を含む可能性のあるテスト試料および標識化したもう一つの特異的結合物(例えば、標識化した抗−被分析物抗体)を含む指示薬に接触させる。それらの試薬は同時に混合するか、逐次(個々に、または組み合わせて)添加する。結合反応の結果、捕獲試薬/被分析物/指示薬複合体が生成する。その分析法はまた、得られた複合体を過剰の試薬およびテスト試料から分離する工程を含むことができる。固相物質に保持された複合体は、固相の指示薬を調べることにより検出される。被分析物が試料中に存在する場合は、標識物が固相物質上に存在する。固相と会合する標識物の量は、試料中の被分析物の量に正相関する。
本発明の測定法は、サンドイッチ測定法のいずれか(前方向、逆方向および同時法など)を使用して行うことができる。典型的には、前方向の測定法は、テスト試料を捕獲試薬に接触させた後、インキュベートし、指示薬を添加するものである。逆方向の測定法は、指示薬をテスト試料に添加した後、インキュベートして、捕獲試薬を添加するものである。同時測定法は、捕獲試薬と指示薬とを同時に接触させるので、ただ1回のインキュベーション工程を含む。
さらに、本発明の新規酵素は、捕獲試薬/被分析物/被分析物−特異的結合物/指示薬の複合体を生成する間接サンドイッチ測定法で使用することができる。この場合、追加の被分析物−特異的結合物が特異的補助結合物である。
競合測定法も本発明の新規酵素を使用して行うことができる。固相競合測定法では、捕獲試薬が、典型的には、やはり捕獲結合物を含む。この捕獲結合物は固相物質に固定されており、テスト試料および指示薬の両方に接触させる。しかし、指示薬は、標識が結合している被分析物または被分析物類似物から生成させることができる。結合反応が生じ、その結果、(1)固定化捕獲試薬/被分析物複合体および(2)固定化捕獲試薬/指示薬複合体の複合体が生成する。あるいは、固定化された特異的結合物が、被分析物または指示薬に対する結合をテスト試料被分析物と競合する被分析物類似物であってもよい。競合測定法では、固相と会合する標識物の量が試料中の被分析物の量と逆相関する。すなわち、陽性のテスト試料は、信号の減少を生じる。
これらの結合法では、テスト試料中の被分析物の有無または量が、通常は、固相と会合した標識物の有無または量を検出することにより求められるが、遊離または未結合の指示薬を検出することもできる。競合測定法では、テスト試料中に存在する被分析物が多いほど、固相上に存在する標識の量が少ない。サンドイッチ測定法では、テスト試料中に存在する被分析物が多いほど、固相上に存在する標識の量が多い。
下記実施例で特定的に記載するように、いくつかの新規組換え酵素を種々の免疫グロブリンと化学的に結合させることにより、酵素免疫測定法(EIA)で使用するための抱合体を形成した。例えば、プラスミドpMA110、pMA111、pMA112、pMA113およびpMA115により発現される突然変異体酵素を、ヘテロ二官能性カップリング試薬により、抗−α−フェトプロテインモノクローナル抗体(抗−AFT抗体)に結合した。これらの抗体/酵素抱合体は、後に指示薬としてEIAで使用した。例えば、AFP標準曲線を、突然変異体プラスミドpMA113由来の新規アルカリホスファターゼ酵素と結合した抗−AFT抗体を使用する測定法で作った。pMA 113酵素/抗体指示薬により標準曲線が得られた。これは、同様の測定条件下で哺乳類酵素/抗体指示薬により得られるものに相当した。ヘテロ二官能性カップリング試薬の使用は、その分野では周知であり、特定のヘテロ二官性カップリング試薬が、本発明の新規指示薬に必須ではない。
新規アルカリホスファターゼ酵素はまた、癌抗原125および抗癌胎児性抗原抗体、癌抗原19−9Fab断片およびヒト絨毛性性腺刺激ホルモン抗体などのいくつかの他の蛋白質に化学的に結合させた。これらは全て、検出可能な物質を生じ、それにより反応成分の有無または量を指示する酵素基質の添加によりアルカリホスファターゼの有無を検出する自動化EIAでうまく使用されている。多くのアルカリホスファターゼ基質は、アルカリホスファターゼ標識を使用する結合測定法での使用に利用できる。通常使用される基質は、p−ニトロフェニルリン酸エステル(pNPP)、5−クロロ−4−ブロモ−3−インドリルリン酸エステル(XP)およびメチルウンベリフェリルリン酸エステル(MUP)である。MUPおよびpNPP基質は、免疫測定法で使用されることが多い。結合測定法の別の態様として、指示薬は、酵素基質で標識した特異的結合物を含むことができ、アルカリホスファターゼ酵素を添加して検出可能な信号を生じる。
次に、本発明を下記実施例により説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
実施例1
突然変異体および合成野生型phoA遺伝子の作製
a.オリゴヌクレオチド合成
本発明に必須ではないが、アルカリホスファターゼ遺伝子の突然変異誘発およびその遺伝子の発現を可能にするために合成phoA遺伝子を構築した。合成遺伝子の構造は、Changら,Gene 44,121−125(1986)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されている野生型大腸菌アルカリホスファターゼ遺伝子の配列に基づいた。この遺伝子は、大腸菌のコドンを優先し、約50〜100塩基対の間隔でそれぞれ異なる制限部位を有するように設計した。phoA遺伝子を構築するために、Mandeckiら,Gene,68,101−107(1988)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されている、Fok I法の遺伝子合成を使用した。phoA遺伝子配列は、長さが各々73塩基対の21個のオリゴヌクレオチド部分配列に分割した。Fok Iアームに対応するさらに30個の塩基を各部分配列に付加し、切断部位の各々の側で切断したプラスミドDNAにオーバーラップさせてアニーリングした。
オリゴヌクレオチドを、5'−ジメトキシトリチルヌクレオシド β−シアノエチルホスホラミディテスを使用してApplied Biosystem 380B synthesizer(Applied Biosystems,Foster City,CA)により合成した。オリゴヌクレオチドの精製は、10%ポリアクリルアミドゲル(10%ポリアクリルアミド、7.0Mの尿素、および1×TBE〔89mMのトリス−ホウ酸塩、89mMのホウ酸、2.0mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)〕)上でゲル電気泳動を使用して行った。DNAをUVシャドウイングにより可視化し、103塩基対部分配列に対応するバンドをゲルから切り取った。オリゴヌクレオチドを、切り取ったゲルの部分から、1mlのマキサム溶離緩衝液(0.5Mの酢酸アンモニウムおよび1mMのEDTA)により37℃で16時間溶離した。残留ポリアクリルアミドを除去するために、溶離したオリゴヌクレオチドをフィルター(0.2μMのCentrexフィルター;Schleicher & Schuell,Inc.,Keene,NH)に通した。精製したオリゴヌクレオチドを5倍体積のエタノールにより析出させ、水(50μl)に再懸濁して、ベックマンDU−7分光光度計(Beckman Instruments,Palo Alto,CA)により定量した。合成オリゴヌクレオチドの配列を図1(a)〜(c)に示す。
b.DNAのクローニング
プラスミドベクターでの合成オリゴヌクレオチドのクローニングは、上述した架橋突然変異誘発により行った。クローニングのために選択したプラスミドは、上述したpWM500およびpWM501であった。
クローニングベクターをSma I制限エンドヌクレアーゼで切断した。切断したプラスミド(約50ng)を30μlの変性緩衝液(10mMのKCl、5mMのトリス−HClpH8.0、5mMのMgSO4および0.5mMのジチオトレイトール)中でオリゴヌクレオチド部分配列(20ピコモル)と混合した。試料を沸騰水浴中、100℃で3分間加熱し、5分かけて室温に冷却した。次いで、試料を、Vieiraら,Gene,Volume 19,pages 259−268(1982)(参考文献として本明細書に添付する。)に記載の冷却したコンピテントJM83宿主細胞(100μl:ara,Δ〔lac−proAB〕,strA,thi,F80d,lacZΔM15)と混合した。JM83細胞は、Mandelら,J.Mol.Biol.,Volume 53,pages 159−162(1970)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたCaCl2法により作成した。混合物を氷上で5分間冷却し、次いで37℃で3分間、熱ショックを与えた。約2mlのルリア流体培養基(LB)(1lにつき、バクト−トリプトン10g、バクト−酵母抽出物5gおよびNaCl10gを含む。pH7.5)を形質転換混合物に添加し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。次いで、形質転換された細胞をSorvall GLC−2B卓上遠心分離機(4,000rpm、5分間)で遠心分離することにより濃縮した。細胞をLB培地(100μl)に再懸濁し、アンピシリン耐性を有するコロニー、すなわちプラスミドを含む細菌細胞を選択するために5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−D−ガラクトシド(1.6mg)およびアンピシリン(LB培地/アンピシリン;100μl,25mg/ml)を含むLB培地上でプレート培養した。プレートは37℃で15時間インキュベートし、β−ガラクトシダーゼ発色分析により形質転換体に着目した。
クローニングした21個のオリゴヌクレオチドの各々に対して4個の細胞コロニーを選択した。各単一コロニーをアンピシリン(100μg/ml)を含むLB培地(0.5ml)に接種した。培養物を、5時間一定に攪拌しながら、37℃で増殖させた。次いで、21個の個々の細胞培養(すなわち、各オリゴヌクレオチド配列に対応して1個ずつ)をプールし、アンピシリンを含む1lのLB培地に添加して、600nmでの光学密度が0.65になるまで2.5時間増殖させた。プールした部分配列を4個ずつ培養したのは、オリゴヌクレオチド部分配列の合成中に生じた可能性がある別の突然変異を含むサブクローンを避ける目的である。培養物は、Frenkelら,DNA,Volume 5,pages 539−544(1986)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたように、クロラムフェニコールとともに増殖させ、37℃で16時間インキュベートした。
c.DNA断片挿入物の構築
形質転換された細胞を遠心分離(10,000×g,5分,4℃)により取り出した。細胞を溶解し、プラスミドDNAを、Birnboimら,Nucleic Acids Research,Volume 7,page 1513(1979)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたように塩化セシウム密度勾配により精製した。
プールした4個の試料の精製プラスミドDNAをFok Iで消化してDNA断片挿入物を得た。約250μgのプールした部分配列プラスミドDNAを、500μlの緩衝液(20mMのKCl、10mMのトリス−HCl pH7.5および10mMのMgCl2)中、37℃で2.5時間、200単位のFok Iで消化した。消化したものを6%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動にかけ、73塩基対のオリゴヌクレオチド部分配列に対応する断片を取り出した。断片の溶離は、実質的に、上記実施例1のa.で記載したオリゴヌクレオチド精製に使用した方法に従って行った。
精製したFok I断片は、水(15μl)に再懸濁した。4個の試料の各々のアリコート(0.5μl)を0.8%アガロースゲル上で電気泳動にかけ、得られたDNAの大体の濃度を求めた。推定した定量値に基づいて、プールした4.5μgのFok I断片を各試料から得た。
d.大腸菌突然変異株
発現力の高い、機能性アルカリホスファターゼ蛋白質を得るために、前記の21個の断片挿入物を合成プラスミドのpWM518と連結した。この発現系では、合成phoA遺伝子が、ラクトースプロモータおよび天然phoA遺伝子のリボソーム結合部位の制御下にあった。50ngの各断片を使用して、150ngのBamH I/Hind III切断ベクターと連結した。
突然変異誘発のないphoA遺伝子(pMA100と命名)を得るために、等しいアリコートの4個のプラスミド試料を合わせた。pMA100の制限地図を図2に示し、ユニークな制限部位を有する合成の野生型大腸菌アルカリホスファターゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を図3(a)〜(b)に示す。オリゴヌクレオチド部分配列とベクターとの連結は、連結混合物(10μl:60mMのトリス〔pH7.5〕;5mMのMgCl2;0.4mMのアデノシン三リン酸;および10mMのジチオトレイトール)中で行った。酵素リガーゼ(T4 DNAリガーゼ)を添加する前に、試料を42℃で15分間インキュベートした後、4℃で1.5時間放置した。リガーゼを添加した後、試料を0℃で16時間インキュベートした。連結反応は、5%アクリルアミドゲル(1/50 ビス−アクリルアミド)上で分析することにより終了を確認した。連結物質の移動により、pWM518のphoA遺伝子の全長に対応する3.5キロ塩基の断片および部分的に連結した断片と連結していない断片とのはしごであることが示された。次いで、連結混合物をSCS−1宿主細胞(F-,recA1,gyrA96,thi,hsdR17,(rk -mk +),supE44,relA1,I-:Stratagene,San Diego,CA)で形質転換した。形質転換法は、Hanahan,J.Mol.Biol.,Volume 166,pages557−580(1983)(参考文献として本明細書に添付する。)に記載の方法に従って行った。SCS−1細胞(100μl)を溶かして、予め冷却したポリプロピレンチューブ(15ml;Falcon 2059,Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)に分注した。β−メルカプトエタノール(1.4M,1.7μl)を細胞に添加し、0℃で10分間、静かにかきまぜた。1ngのプラスミドDNAを細胞に添加したとき、最高の形質転換効率が得られた。すなわち、複製プラスミドを含む宿主細胞が最大数であった。表2に示す混合物の種々の希釈物について調べた。試料を氷上で30分間インキュベートし、45℃の水浴で45秒間熱し、氷上で2分間インキュベートした。SOC培地(0.9ml)を添加し、試料をインキュベートした(225rpmで振とうしながら37℃で1時間)。(SOC培地は、1lにつき、バクト−トリプトン20g、バクト−酵母抽出物5g、10mMのNaClおよび2.5mMのKClを、2Mの濾過−滅菌Mg溶液〔1ml/100mlのSOC;1MのMgSO4を有する1MのMgCl2〕および2Mの濾過−滅菌グルコース溶液〔1ml/100mlのSOC〕と混合して含む。)インキュベーション後、細胞を、1000rpmで10分間遠心分離することにより濃縮した。得られたペレットをSOC(200μl)に再懸濁し、アンピシリン(50μg/ml)を含むLB培地上にプレーティングした。
合成アルカリホスファターゼの産生がBCIPの使用により青色を呈することにより確認されたコロニーを、各プレートに添加した水〔100μl;20mg/ml〕に懸濁した。形質転換効率を表2に示す。SCS−1細胞は、通常コントロールとして使用されるpUC9プラスミドDNA(Bethesda Research Laboratories,Gaithersberg,MD)でも形質転換を行って、形質転換効率の対比定量測定を行った。SCS−1宿主細胞の全形質転換効率は、約2×107コロニー/μg pUC9DNAであった。Stratageneが記載する効率は、1×109コロニー/μg DNAより大きい。
Figure 0003560972
6個の形質転換体(6個の青色コロニー)しか、機能性合成phoA遺伝子の存在を示さなかったので、天然配列を分析するために、形質転換プロトコルを繰り返してより多くのクローンを得た。全部で16個のコロニーを、形質転換したSCS−1細胞から拾い上げ、プラスミドDNAを、Birnboimら,Nucleic Acids Res.7,1513(1979)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたminiprep法により単離した。各試料のアリコートをEcoR IおよびHind IIIで消化し、分子量マーカー(DNA/Hind III断片、FX174RFDNA/Hae III断片および1キロ塩基のDNAのはしご;Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD)とともに0.8%アガロースゲル上で電気泳動にかけた。消化した16個の試料は全て、大きさが全長のアルカリホスファターゼ遺伝子に対応する1.4キロ塩基の挿入断片を含むと思われた。
4個のクローンを16個の試料から選び、プラスミドDNAを、Radloffら,Proc.Natl.Acad.Sci.,Volume 57,pages 1514−1521(1967)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたCsCl勾配により、個々に単離・精製した。試料の塩基配列決定を、Sangerら,Proc.Natl.Acad.Sci.,Volume 74,pages 5463−5467(1977)に開示された多重複配列プライマーを使用するサンガージデオキシ法により行った。4個の試料は全て、同じ突然変異を含み、1191のCがTに、1221のTがCに、1334のAがGになっていた。最初の突然変異はアミノ酸に変化を及ぼさないが、残りの変化は、Val377>AlaおよびSer415>Glyの突然変異になった。得られたクローンをpMA110と命名した。
e.合成の野生型大腸菌株の調製
野生型phoA遺伝子(pMA100)を、その後のDNA修飾により高められた特異的活性を有するアルカリホスファターゼをコードするためのベースとして使用した。さらに、合成野生型微生物由来のアルカリホスファターゼは、突然変異体酵素の評価および市販の大腸菌アルカリホスファターゼとの対比において有用であった。合成の野生型phoA遺伝子を得るために、pMA110プラスミドの既存の遺伝的突然変異を修復する必要があった。実質的に実施例1aに記載のプロトコルに従って作った合成オリゴヌクレオチドを使用して、突然変異配列を野生型配列で置き換えた。突然変異の位置の故に、246塩基対に対応するBgl II/Sph I断片は置き換える必要があった。
pMA110プラスミド(約10μg)を1×培地塩緩衝液(100μl;100mMのNaCl,50mMのトリス−HCl,pH7.5および10mMのMgCl2)中、37℃で16時間、Bgl II(75単位)で消化した。消化完了を調べるために、アリコートを0.8%アガロースゲル上で電気泳動にかけた。塩濃度を150mMNaClに増加し、DNAをさらに、37℃で16時間、Sph I(60単位)で消化した。得られた3.2キロ塩基のプラスミド断片を5%ポリアクリルアミドゲル(1/50ビス−アクリルアミド)上で精製し、DNAを実質的に上記1aで記載した方法に従って抽出した。
取り出した突然変異体Bgl II/Sph I断片を、天然配列のBgl II/Sph I断片に対応する3個の相補的合成オリゴヌクレオチド(各々の長さは約80塩基)で置き換えた(合計247塩基対)。約4ピコモルの各合成オリゴヌクレオチドを、Richardsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.,2,815(1971)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されているように、T4 DNAキナーゼ(3.0単位;Bethesda Research Laboratories,Gaithersburg,MD)を使用して、1×連結緩衝液(15μl;60mMのトリス−Hcl,pH7.5、5mMのMgCl2、0.4mMのATP)中、37℃で30分間、キナーゼ処理した。相補的オリゴヌクレオチドを70℃で5分間インキュベートし、1.5時間、4℃にゆっくり冷却することによりアニーリングした。次いで、アニーリングされたオリゴヌクレオチドを、精製した3.2キロ塩基の合成プラスミドに連結した。連結、形質転換およびインキュベーション法は、実質的に上記で記載した方法に従って行ったが、得られる合成プラスミドは、MZ13b宿主細胞でクローン化した。
約200個の青色のコロニーおよび120個の白色コロニーが得られた。4個の青色コロニーを選択し、miniprepDNAを実質的に上記で記載した方法に従って調製した。置換した、または修復したオリゴヌクレオチド部分配列に対応する領域は、実質的に上記で記載した方法に従って、サンガーのジデオキシ法により塩基配列の決定を行った。塩基配列の決定がなされたクローンは全て、野生型phoA配列を含んでいた。天然および突然変異体のアルカリホスファターゼから得られたコロニーの色の強度を対比すると、突然変異体コロニーの方が、天然コロニーより濃い青色であった。
実施例2
突然変異体をスクリーニングするための天然phoAの改善された発現
高められた特異的活性を有するアルカリホスファターゼ突然変異体を高感度で色選別するのは、天然アルカリホスファターゼが示す色が強烈であるために困難であった。突然変異体を天然アルカリホスファターゼと区別するためには、天然phoAの発現を低下させる必要があった(すなわち、青色の薄い天然コロニーを得る必要があった)。アルカリホスファターゼの発現レベルは、phoAのShine−Delgarno配列(GGAGA)を変性配列で置き換え、BCIP基質を用いて青色の薄いコロニーを選び低下させた。
天然リボソーム結合部位を除去するために、pMA100(15μg,実施例1e)を1×培地塩緩衝液中、37℃で16時間、75単位のBamH Iにより消化した。塩の濃度を150mMのNaClに増加させ、DNAをさらに、37℃で16時間、75単位のSal Iで消化した。リボソーム結合部位は、実施例1に記載したように、架橋突然変異誘発により、適当な位置に変性配列を有するオリゴヌクレオチドを付与することによって置き換えた。種々のレベルのアルカリホスファターゼ活性を示す約1,000個のクローンが生じた。
非常に淡い青色から中位の青色の3個のコロニーを単離し、実質的に実施例1に記載の手順に従ってプラスミドDNAを調製した。各試料で生じた突然変異のリボソーム結合部位の構造を決定するために、実質的に実施例1に記載の手順に従って、サンガージデオキシ配列決定法を再び使用した。配列結果は、配列決定された形質転換体が、1)リボソーム結合部位の全欠失、または2)ATGGCもしくはCAATAの配列を含むリボソーム結合部位のいずれかを有することを示した。ATGGCリボソーム結合部位に対応する試料は、最も淡い青色を呈し、pMA101と命名した。以後の高められた特異的活性を有するphoA遺伝子の突然変異誘発の検討は、突然変異したリボソーム結合部位を有する天然phoAを含むこのpMA101合成プラスミドベクターを使用して行なった。
実施例3
天然アルカリホスファターゼの突然変異誘発
アルカリホスファターゼの特異的活性を高めるために、酵素の突然変異誘発を、酵素の活性領域または触媒残基Ser102から約10Å〜約20Å内の範囲に対して行った。突然変異誘発の標的としたアミノ酸は、Val99、Thr100、Asp101、Ala103、Thr107およびLys328であった。アミノ酸Val99、Thr100、Asp101、Ala103およびThr107は、触媒残基Ser102に近いので、突然変異誘発として特に重要である。また、Lys328は、正の電荷を有し、酵素の活性部位のすぐ近くにあるので重要である。
Val99、Thr100およびAsp101のアミノ酸の突然変異誘発は、pMA101のSnaB I制限部位およびLys328に対するCla I制限部位での架橋突然変異誘発により行った。Ala103およびThr107に対しては、pMA101プラスミドをSnaB IおよびEcoR Vで消化した後に架橋突然変異誘発を行った。合成オリゴヌクレオチドは、実施例1に記載したように、各合成オリゴヌクレオチドが突然変異を受けるべきアミノ酸に対して変性配列を含むように作った。
突然変異を受ける各残基に対して可能な全アミノ酸置換を含むクローンライブラリーを得るために、架橋突然変異誘発の標準方法のスケールを5倍に増加させた。pMA101ベクター(250ng,実施例2)をSnaB I(99,100および101での突然変異用)、Cla I(328での突然変異用)またはSnaB IおよびEcoR V(103および107での突然変異用)のいずれかで完全に消化した。消化したベクターおよび合成オリゴヌクレオチドの一つ(100ピコモル)を混合し、100℃で3分間加熱した。試料を5分間冷却し、コンピテントJM83細胞(500μl)に添加した。形質転換混合物を氷上で5分間インキュベートし、次いで、37℃で3分間、熱した。LB培地(2.0ml)を各試料に添加し、その試料を37℃で60分間インキュベートした。細胞を遠心分離によりペレット化し、LB培地(100μl)に再懸濁し、LBプレート(100μg/mlのアンピシリンおよび1.0μg/mlのBCIPを含む)上に拡げた。プレートを37℃で16時間インキュベートした。リボソーム結合部位の突然変異によりphoAの発現が低下しているので、プレートをさらに室温で6時間インキュベートした。バックグランドと比較して濃い暗青色のコロニーを、高められた特異的活性を有するphoA突然変異体として記録した。
青色のコロニーを選択し、実質的に実施例1に記載した方法に従って、サンガーのジデオキシ塩基配列決定のために、miniprepDNAを調製した。突然変異結果を表3に示す。また、天然アルカリホスファターゼと比較して、突然変異体の特異的活性に関する正確なデータを得るためには、各試料から精製蛋白質を得る必要があった。
Figure 0003560972
表3は、特異的活性の高いアルカリホスファターゼ酵素突然変異体が得られたアミノ酸突然変異の形質転換効率を表す。濃青色のコロニーは、高められた特異的活性を有するアルカリホスファターゼ突然変異体を表し、淡青色のコロニーは、天然のアルカリホスファターゼに匹敵する特異的活性を有する突然変異体であり、白色のコロニーは、特異的活性が低下した突然変異体であった。pMA113(Lys328>Arg)は高い特異的活性を有するので、これ以後の突然変異誘発に使用した。例えば、pMA116は、pMA113プラスミドのVal99をさらにAlaに変化させて得られた。各アミノ酸置換に対して得られるコドンは、サンガーのジデオキシ塩基配列決定法により確認した。
実施例4
アルカリホスファターゼの精製
天然および突然変異体のアルカリホスファターゼ酵素の酵素活性を測定するためには、充分な量の酵素を得なければならない。各試料に対して、2l振とうフラスコ醗酵を行った。最初の培養は、20mMのグルコースを含むLB培地/アンピシリン(40ml)で単一コロニーを一夜培養した。グルコースの添加により、アルカリホスファターゼの微生物発現が抑制された。これは、本発明の発現系では、lacプロモーターにより制御される(Magasanik B,The Lactose Operon,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,189−219,1970)。培養は、フラスコ(250ml)中で一夜、激しく振とうしながら37℃で増殖させた。培養物を10分間遠心分離し(4,000×g)、上清を捨てて、ペレットをLB培地/アンピシリン(40ml)に再懸濁した。2lのLB培地/アンピシリンを含む6lフラスコに一夜培養したものを接種し、37℃で約6時間、激しく振とうしながらインキュベートした。
アルカリホスファターゼの精製は、下記方法に従って行った。600nmでの光学密度が1.3〜1.4に達すると、形質転換した細胞を遠心分離(4800rpm、20分、4℃)により取り出した。アルカリホスファターゼを抽出するために、Evans,ら,Journal of Infectious Diseases,Volume 133,pages S97−S102(1976)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたように、2lの培養ブロスから得た細胞を0.15Mの冷トリス−HCl緩衝液(pH6.6)(80ml;0.9%のNaClおよび6mg/mlのポリミキシンB)に懸濁した。37℃の水浴中で7〜10分間インキュベートした後、細胞を遠心分離(8,000×g、5分、4℃)により除去した。
ポリミキシンB抽出物を、4℃で固体の硫酸アンモニウムをゆっくり添加して85%飽和にし、次いで、4℃で24時間、ゆっくり攪拌した。得られた沈澱を遠心分離(8,000×g、5分、4℃)により取り出して、0.02Mのトリス−HCl緩衝液(pH8.0;1mMのMgCl2を含む)に再懸濁した。試料の透析を、4℃で、8〜12lの0.02Mトリス−HCl緩衝液(pH8.0;1mMのMgCl2を含む)に対して行った。次いで、試料を、限外濾過細胞(Amicon,Model 8050,Danvers,MA)を使用して5〜10倍に濃縮した。
アルカリホスファターゼの等電点クロマトグラフィーを、Mono P HR 5/5カラムおよびPolybuffer 74および96(Sigma Chemical Company,St.Louis,MO)を使用して、高速淡白液体クロマトグラフィー系(Pharmacia,Piscataway,NJ)で行った。カラムを0.025Mのビス−トリス−CH3COOH(pH6.9;1mMのMgCl2を含む)と平衡にした。蛋白質を、Polybuffer−Ch3COOH溶液(pH5.5;6%〔v/v〕のPolybuffer 96、6%〔v/v〕のPolybuffer 74および1mMのMgCl2を含む)によりカラムから溶離した。これらの条件は、pH勾配が6.5〜5.5で直線となり、活性蛋白質は、6.3〜6.1のpHで溶離した。Polybufferを、20mMのトリス(pH8.0;1mMのMgCl2を含む)中で平衡になっているセファデックスG−75上でゲル濾過クロマトグラフィーにかけることにより、試料から除去した。得られた酵素試料は次いで、Amicon Centricon−30ミクロ濃縮器を使用して3〜6倍に濃縮した。
実施例5
精製したアルカリホスファターゼの分析
精製した蛋白質の解析には、Laemmli,U.K.,Nature,Volume 277,page 680(1970)(参考文献として本明細書に添付する。)に開示されたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動がある。電気泳動により、単一の主要バンドが示された。これは、染色された全蛋白質の98%以上であり、分子量46,000ダルトンに対応し、アルカリホスファターゼのモノマーの予想される大きさである。遺伝子工学により得た各アルカリホスファターゼのこれらの条件下での電気泳動移動度は、市販の大腸菌アルカリホスファターゼ(Sigma)のそれと同一であった。
得られた突然変異体酵素の動力学定数(VmaxおよびKm)を、酵素基質pNPP(Sigma)および4−メチルウムベリフェリルリン酸(4−MUP;Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)を使用して、1Mのトリス−HCl緩衝液(pH8.0;1mMのMgCl2を含む)中、25℃で測定した。pNPP基質のp−ニトロフェノールへの変換を、ヒューレット−パッカード9153A紫外光度計を使用して410nmでの吸収の変化(e=1.62×104M-1cm-1)を追跡して監視した。4−MUP基質からのメチルウムベリフェロンの脱離は、蛍光光度計(励起波長=349nm;発光波長=465nm;e=5.9×109M-1cm-1)により監視した。初期速度を最初の5〜10%の反応(r>0.997)からグラフにより求めた。kcatおよびkmの値は、8個のデータのLineweaver−Burkプロットから得た。
酵素の各々に対して得られた結果を表4にまとめる。突然変異体酵素は全て、天然アルカリホスファターゼよりも高い特異的活性を有していた(基質としてpNPPまたはMUPのいずれを使用しても)。pNPPを用いて行った測定では、酵素の特異的活性の増加が、1.6〜3.9倍の範囲であった。Km値は、突然変異体プラスミドpMA113によって得られた酵素に対して最も劇的に増加し、他の全ては相対的に不変か、わずかに改善された。すなわち、突然変異体は、Kmについては有益な変化はないものの、高められた特異的活性の故に有用である。
Figure 0003560972
酵素の熱安定性を、下記の方法に従って測定した。各アルカリホスファターゼの不可逆的熱不活化の時間的経過を、酵素の溶液(20μg/ml、0.02Mのトリス−HCl中で調製、加熱温度でpH7.5、1mMのMgCl2を含む)を一定温度の加熱ブロック中でインキュベートし、定期的に試料を取り出して25℃で定量することにより測定した。不可逆的熱不活化の一次速度定数および半減期を、半対数座標の回帰直線により求めると、少なくとも0.97の相関計数が全ての場合に得られた。いくつかのアルカリホスファターゼの不可逆的熱不活化(85℃、pH7.5)の時間的経過の例を表5に示す。
Figure 0003560972
各突然変異体酵素に対する同様の研究結果を表6にまとめる。突然変異体酵素は全て、天然アルカリホスファターゼよりも速い速度で不可逆的熱不活化を受けた。しかし、突然変異体酵素の熱安定性は、子牛の腸のアルカリホスファターゼの熱安定性(同様の測定条件下、70℃でさえ、半減期は6分)よりも優れていた。
Figure 0003560972
実施例6
アルカリホスファターゼの動力学定数に対するpHの影響
動力学定数(KmおよびVmax)に対するpHの影響を、突然変異体pMA115(Asp101>Ser)および子牛の腸のアルカリホスファターゼ(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)の両方に対して測定した。測定は、基質として4−MUPを使用して、25℃で行った。メチルウムベリフェロンの基質からの脱離を、ヒューレット−パッカード9153A紫外光度計を使用して360nmでの吸収の増加(吸光計数は、メチルウムベリフェロンを使用して実験により測定し、表7に示す。)を追跡して監視した。50mMのトリス(pH8〜9.5)または50mMのジエタノールアミン(Sigma)(pH9〜11)およびNaCl(Sigma)を含むイオン強度の低い緩衝液(I=200)を使用した。初期速度を、最初の5〜10%の反応(r>0.995)からグラフにより求めた。VmaxおよびKmの値は、6〜7個のデータのLineweaver−Burkプロットから得た。Vmaxのkcatへの変換は、子牛の腸のアルカリホスファターゼおよびpMA115アルカリホスファターゼに対して各々150,000ダルトンおよび94,000ダルトンの分子量の値を使用し、また両方の酵素の二量体につき2個の活性部位を使用して行った。結果を表7に示す。
Figure 0003560972
調べたpH範囲のほぼ全体にわたって、両方の酵素のKmおよびkcatの値は、pHとともに増加している。突然変異体の大腸菌アルカリホスファターゼと子牛の腸のアルカリホスファターゼとの間のkcatの相違は、pH10.0で最小である。このpHでは、子牛の腸の酵素は、突然変異体の大腸菌酵素より1.65倍速いに過ぎぬ。pH10.0でKm値がたとえ増加していても、新規酵素は測定法の標識として使用するのに適している。同様の実験をこれらの酵素および天然大腸菌アルカリホスファターゼ(pMA100)に対して、基質としてpNPPを使用して行った。pNPP基質のp−ニトロフェノールへの変換を、ヒューレット−パッカード9153A紫外光度計を使用して410nmでの吸収の変化(e=1.62×104M-1cm-1)を追跡して監視した。これらの酵素のkcatに対するpHの影響を表8に示す。新規酵素pMA115のkcatは、野生型アルカリホスファターゼよりもpH10.0でほぼ36倍高かった。
Figure 0003560972
pNPPに対して認められたこの傾向は、4−MUPでも同様であった。すなわち、pH8から10までkcatは増加し、pMA115と子牛の腸のアルカリホスファターゼとのkcatの相違はpH10で最小になる(2倍の相違)。天然大腸菌(pMA100)と子牛の腸のアルカリホスファターゼとのkcatの相違はpH範囲全般にわたって大きく、たとえpH10.0であっても、kcatの相違は70倍である。データにより、pMA115は野生型の大腸菌アルカリホスファターゼよりも明らかに優れていることが示される。なぜならば、子牛の腸のアルカリホスファターゼとの比較で、pH10.0におけるkcatの相違が70倍から僅か2倍に減少するからである。
実施例7
α−フェトプロテインのサンドイッチEIAにおける突然変異体のアルカリホスファターゼの使用
酵素で標識した抗−AFP抗体を、まず突然変異体酵素(実施例3に記載したように調製した、pMA113由来のアルカリホスファターゼ)およびモノクローナル抗−AFP抗体を下記のように別々に処理して調製した。50倍モル過剰のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)/N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)をアルカリホスファターゼの0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.2;1mMのMgCl2を含み、最終DMF濃度は5%)における0.6mg/ml溶液に添加した。反応を25℃で3時間行い、その後、SMCC処理した酵素を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.2;1.0mMのMgCl2を含む)に対して、4℃で18時間透析した。
0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.2;1.0mMのMgCl2を含む)における5.8mg/mlの抗−AFP抗体溶液を、25℃で1時間、500倍モル過剰の2−イミノチオランにより処理した。次いで、チオール化試料を0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.2;1mMのMgCl2を含む)に対して、4℃で18時間透析した。
SMCC処理した酵素をそのチオール化抗−AFP抗体に2:1(各々)モル比で添加し、全蛋白質濃度を1mg/mlとした。4℃で4時間後、N−エチルマレイミド(最終濃度:0.3mM)を4℃で30分間添加し、次いで2−メルカプトエタノール(最終濃度:1.0mM)をやはり4℃で30分間添加することにより反応を停止した。次いで、その溶液を20nMのトリス−HCl緩衝液(pH8.0;1.0mMのMgCl2を含む)に対して、4℃で18時間透析した。
酵素/抗体指示薬の性能を、Abbott IMx(登録商標)−AFPアッセイ手順および試薬(本出願人)を使用して評価した。大腸菌突然変異体アルカリホスファターゼ指示薬に対する基質は、1.2mMの4−MUP/1.5Mのトリス−HCl緩衝液(pH8.0;1.0mMのMgCl2を含む)を含んでいた。酵素/抗体指示薬は、アッセイキットの指示薬希釈緩衝液により1.3μg/mlの最終濃度に希釈し、次いで、濾過した(0.2μMの膜)。指示薬を使用して、図4に示す標準曲線を得た。また、図4には、子牛の腸のアルカリホスファターゼで標識した抗−AFP抗体指示薬を使用して得た標準曲線も示す。二つの曲線間の相関により、突然変異体酵素/抗体指示薬は、約0.8μg/mlで使用される哺乳類酵素/抗体指示薬と比較して、1.3μg/mlの低い濃度でアッセイに使用することができることが示された。
実施例8
癌抗原に対するサンドイッチEIAにおける突然変異体アルカリホスファターゼの使用
抗−癌抗原抗体断片を、下記の方法に従って突然変異体アルカリホスファターゼで標識した。pMA115(0.6mg/ml;0.1Mリン酸塩緩衝液;pH7.2;1.0mMのMgCl2を含む)を、静かに回転しながら30分間、450倍モル過剰の2−イミノチオランで処理した。チオール化試料を、平衡にしたセファデックスG−25カラム(1×45cm)で脱塩し、0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0;1.0mMのMgCl2および0.1mMのZnCl2を含む)で溶離した。
抗体断片を50倍モル過剰のスクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル−1−トリカプラミド)シクロヘキサンカルボキシレート(30原子リンカー)と反応させ、静かに回転しながら25℃で30分間、DMF(最終DMF濃度:15%)中で調製した。次いで、この試料を、平衡にしたセファデックスG−25カラム(1×45cm)で脱塩し、0.1Mのリン酸塩緩衝液(pH7.0;0.1MのNaClおよび5mMのEDTAを含む)で溶離した。
チオール化した突然変異体アルカリホスファターゼを、それぞれ1.5:1のモル比で活性化抗体断片と混合した。反応混合物を2〜8℃で15時間静かに回転させ、N−エチルマレイミド(最終濃度:0.1mM)を添加することにより反応を停止した。25℃で1時間後、試料をトリス−HCl緩衝液(20mM;pH8.0;1.0mMのMgCl2を含む)に対して4℃で18時間透析した。
得られた酵素/抗体断片指示薬を、実質的に実施例7に記載の方法に従って、指示薬希釈緩衝液で3.7μg/mlの最終濃度に希釈して、濾過した。指示薬を、実質的に実施例7に記載のアッセイ方法に従ってサンドイッチアッセイに使用して癌抗原を検出し、図5に示す標準曲線を得た。図5は、同様に調製した子牛の腸のアルカリホスファターゼ/抗体断片指示薬を1.64μg/mlのアッセイ濃度で使用した標準曲線も示す。指示薬濃度の相違を考慮すると、突然変異酵素/抗体指示薬の性能は、哺乳類酵素/抗体断片指示薬に匹敵するものである。測定結果から、標識として突然変異体酵素を使用する指示薬は、EIAで良好に使用することができることが示された。
実施例9
突然変異体アルカリホスファターゼ/結合物指示薬の安定性
酵素で標識した抗AFP抗体を実質的に実施例7に記載の方法に従って調製したが、以下の2点を例外とする。(1)pMA110由来の突然変異体アルカリホスファターゼの0.6mg/ml溶液(0.1Mリン酸塩緩衝液中)を25℃で2時間、DMFに溶解した(最終DMF濃度:15%)50倍モル過剰の30原子リンカーで処理し、(2)活性化酵素およびチオール化抗体(実質的に実施例7に記載の方法に従って調製)を4℃で8時間、1:1モル比で反応させた。得られた指示薬を、指示薬希釈剤(実施例6に記載のもの)で15μg/mlに希釈し、45℃の熱を加えた。
指示薬の熱による不活化の時間的経過を追跡するために、試料を60日間、熱から遠ざけ、実施例6記載の手順により指示薬の性能を測定した。測定結果を図6に表し、子牛の腸のアルカリホスファターゼ/抗−AFP抗体指示薬の熱による不活化の時間的経過を併記する。大腸菌突然変異体アルカリホスファターゼを含む指示薬の信号は、45℃で60日後の低下が最初に比べ30%未満であったが、哺乳類酵素/抗体指示薬の信号は、45℃で、たった20日後に最初に比べ60%以上低下した。大腸菌突然変異体酵素/抗体指示薬の熱安定性は、哺乳類酵素指示薬よりはるかに優れていた。
実施例10
突然変異体アルカリホスファターゼおよび特異的結合物の部位特異的抱合
この実施例は、高い特異的活性を示し、モノマー1個あたり1個の表面システイン残基を含む突然変異体大腸菌アルカリホスファターゼの調製に関するものである。反応性システイン残基の存在は、ヘテロ二官能性試薬による突然変異体酵素の特異的結合物への部位特異的共有結合を可能にした。この連結方法により、実施例7および8に記載した2−イミノチオランによる非特異的化学修飾による酵素へのチオールの導入は必要でなくなった。得られた特異的結合物/酵素抱合体は、高められた安定性を有し、EIAでの非特異的結合の発生が低い。
実質的に実施例3に記載の方法に従って酵素を調製し、システイン残基を、実質的に実施例3に記載の方法に従って、酵素の活性部位またはモノマー界面を妨害しない位置で酵素分子に挿入した。次いで、修飾した酵素を、実質的に実施例7および8に記載の方法に従って、m−マレイミド−ベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはスクシンイミジル4−(マレイミドメチル−1−トリカルパミド シクロヘキサンカルボキシレート)などのヘテロ二官能性架橋試薬により特異的結合物に抱合した。
実施例11
ユニークな制限部位を有する合成大腸菌プラスミドの構築
a.総論
合成大腸菌を設計・構築して、これが機能性クローニングベクターであることを示した。遺伝子合成のFok I法(Mandecki and Bolling,Gene,68,101;1988)を使用して、30個のオリゴヌクレオチドからそのプラスミドを組み立てた。そのプラスミドは、β−ラクタマーゼ遺伝子、複製起点、lacZ遺伝子断片および多クローニング部位の合成モジュールを含んでおり、pUC−型プラスミドの後にパターン化する。相違としては、pUCプラスミドに存在する制限部位のほぼ50%が除去され、プラスミドの大きさが2050塩基対に減少し、β−ラクタマーゼ遺伝子およびlacZ断片の両方の下流に転写終結因子が導入されることがある。これらの変化は、クローニング、突然変異誘発、発現および制限酵素分析などの多くの方法を可能にする。
b.プラスミドの設計
大腸菌の合成プラスミドの全体の設計は、クローニング/発現ベクターに必要または望ましい特徴に基づいた。一つの要件は、ベクターから得られる制限酵素による断片の操作および精製を可能にするために、低分子量であることであった。別の好ましい特徴は、できるだけ多くの制限部位を除き、重要な位置にユニークな制限部位を導入することであった。過去の経験から、多くの種々の制限部位を有するベクターでクローニングを行うと、続くDNA断片のサブクローニングは明らかに不便を伴うことがわかっている。
合成プラスミドを、3個の別々のカセットに分けた。第一は、pUC9〔Vieira and Messing,Gene,Volume 19,pages 259−268(1982)〕の複製起点を、合成プラスミドにおけるori領域を構成するDNA配列として選択した。その配列は、RNA IおよびRNA II複製プライマー領域、ならびにそれらのそれぞれのプロモータを含む(polisky,Maximizing Gene Expression,W.S.reznikoff編,Butterworths,Boston,1986)。
第二は、pUCプラスミドのβ−ラクタマーゼ遺伝子を選択マーカーとして選択した。その遺伝子は、pUC9に見られる天然P3プロモーター〔Brosiusら,J.Biol.Chem.,Volume 257,pages 9205−9210(1982)〕および強力なファージfd遺伝子V III転写終結因子〔Beckら,Nucleic Acids Res.,Volume 5,pages 4494−4510(1978)〕を含んでいた。ori領域とは反対に、β−ラクタマーゼのヌクレオチド配列は変化しており、いくつかの制限部位が除去された。ほとんどの場合(Ile82>ValおよびVal182>Alaを除く)、アミノ酸配列は同じままであった。bla遺伝子の天然の制限部位の約60%が除去された。
第三に、pUCのa−相補lacZ遺伝子断片も、ori領域およびアンピシリン耐性遺伝子を有することの他に、クローニングマーカーとして使え、および異種融合蛋白を発現することにより好ましかった。pUC9由来のlacZ配列は変化しており、β−ラクタマーゼ遺伝子における変化と同様に制限部位の数が減少した。Sma I部位は、他の所望部位の挿入のためのユニークな制限部位として保持した。
c.遺伝子構築
pWM510を構築するため、全部で25個のオリゴヌクレオチドを遺伝子合成のFok I法を使用して合成し、それらのオリゴヌクレオチドをpWM500系のプラスミド〔Mandecki and Bolling,Gene,Volume 68,pages 101−107(1988)〕で前述のようにクローン化した。そのプラスミドを精製し、配列を確かめた後、Fok Iで切断することにより個々の断片を取り出した。25個の断片(大きさは40塩基対〜82塩基対)は全て、相補的な4個のユニークな塩基対が突き出ており、それらをアニーリングして連結すると、完全に閉じた環状ベクターが得られた。断片を連結してSCS−1コンピテント細胞〔F-,recA I,endA I,gyrA96,thi,hsdR17,(rk -,mk +),supE44,relA I-〕に形質転換した。形質転換細胞を、アンピシリンを含むLBプレート上にプレーティングした。うまく形質転換された細胞は生き残り、機能性複製起点およびβ−ラクタマーゼ遺伝子を含むそのままのプラスミドを有する場合のみ、コロニーを形成する。
連結は、25個の全Fok I断片をショットガン連結することにより行った。連結混合物10mgにつき約38個の形質転換体が得られた。SCS−1細胞の全体の形質転換効率は、5×107細胞/mg超らせんpBR322〔Bolivarら,Gene,Volume 2,pages 95−113(1977)〕より大きかった。
全部で3個のコロニーをプレートから拾い上げた。3個のクローンのうち、2個は正しいAva II制限パターンを有していた。うち1個のクローンを拾い上げ、プラスミドDNAを配列決定のためのCsCl勾配上で単離した。多重配列決定プライマーを使用して二重鎖DNA配列の確認をした。全部で1659塩基対のうち、個々のFok Iクローンにも組み立てたプラスミドにも配列誤りはなかった。ori領域および機能性β−ラクタマーゼ遺伝子を含むこの合成プラスミドをpWM510と命名した。
プラスミド設計の第二段階では、合成lacZカセット〔Yanish−perronら,Gene,Volume 33,pages 103−119(1985)に記載のもの〕を、図1に示すFok I断片を使用して、pWM510のEcoR I部位にクローン化した。このカセットは、lacプロモータ、βガラクトシダーゼのアミノ末端60アミノ酸をコードするlacZ遺伝子断片、trpA転写終結因子〔Christieら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Volume 78,pages 4180−4184(1981)〕および架橋突然変異誘発により多重クローニング部位を導入するためのSma I部位を含んでいた。クローニングによりプラスミドpWM511が得られた。lacZカセットはEcoR Iで切断したpWM510の二方向のいずれかに連結することができるが、βラクタマーゼmRNAまたはRNA IIと同じ方向でlacZ転写単位を発現するクローンのみを回収した(テストした20個のクローンから回収)。pWM511のlacZ遺伝子断片の方向は、従って、pUC型プラスミドと同じである。また、βラクタマーゼ遺伝子に位置する1個だけのFok I部位も除去し、合成遺伝子を遺伝子合成のFok I法のクローニングベクターとして使えるようにした。この特定の方法は、Fok Iによりプラスミドから小さい遺伝子断片を切り取るという原理に基づくので、プラスミドの他の場所にFok I部位があると、小さいFok I断片の精製が著しく困難となる。Fok I部位の除去は、変性オリゴヌクレオチドを使用する架橋突然変異によって行い、Trp−Metアミノ酸配列を変えた。続く配列決定により、その配列がTrp−Leuアミノ酸配列に変わっていることが示された。Trp−Met配列は1060〜1064の残基のDNA領域に対応する(図7)。突然変異に使用したオリゴヌクレオチドの配列は次の通りであった。
Figure 0003560972
pWM511プラスミドをFok Iで直線化し、架橋突然変異誘発法を使用して配列を変異させた。この保存的なアミノ酸突然変異では、アンピシリン耐性の変化は認められなかった。Fok I部位のないプラスミドの構成をpWM515と命名した。
EcoR I領域の削除は、pWM515をEcoR I/Sma Iで切り取り、必要な塩基変更を含む合成二重鎖オリゴヌクレオチドを挿入することにより行った。その合成プラスミドの構築物をpWM520と命名した。架橋突然変異誘発を使用してファージM13mp18〔Yanish−Perronら,Gene,Volume 33,pages 103−119(1985)〕の多重クローニング部位を用い、lacZ遺伝子内のSma I部位にクローニングした。これは、pUC18に対して確立された標準的クローニング手順を適用させるために行った。多重クローニング部位mp18を含む構築物を、pWM518と命名した。pWM518の多重クローニング部位は次の通りである。
Figure 0003560972
d.プラスミドの解析
合成プラスミドの解析は、これが最初の全合成像をなすので重要であった。それは、そのプロトタイプであるpUC−型のプラスミドとはかなり異なる。この合成プラスミドは、pUC−型のプラスミドと比較すると、3個の欠失(全長は636塩基)および70個の点変異を含んでいた。pUCプラスミドに存在した制限部位のほぼ50%が除去され、そのことは、DNAの制限酵素による分析または精製に有利である。特に、pWM519プラスミドには、6塩基対の非変性配列を認識する制限酵素の部位が7つしかなく、うち3つは操作上の便宜から人為的に導入されたものである。pUCプラスミドにはそのような部位が24個あるが、多重クローニング部位は含まれない。かかる部位の少なさは、クローニング用に特異的な6塩基対を有する制限酵素を自由に使用でき、また、合成DNAによる制限断片の置換または架橋突然変異誘発によるクローン化された遺伝子の突然変異誘発を容易にする。プラスミドpWM520は、75個の制限酵素の切断部位を持っていない。その合成プラスミドは、β−ラクタマーゼ遺伝子のP1プロモーターが欠けている。該プラスミドは、最短複製起点、2個の新しく導入された転写終結因子および最短設計lacプロモーターを含む。
そのプラスミドは、少なくとも120世代(プレート上で4継代)にわたって安定して増殖できることが示された。すなわち、複製起点(図7の1349〜1993)を含む構築断片は、安定した複製を完全に維持することができる。プラスミドの複製数は、アガロースゲル上のプラスミドDNAバンドの密度を走査してラージDNA標本からのDNAの収量を測定し、β−ラクタマーゼのレベルを測定することにより評価した〔JonesらJ.Clinic.Microbiol.,Volume 15,pages 677−683(1982)〕。複製数は、pUC9より3〜4倍少なく、pBR322の複製数と同等であった。この知見は、最近決定された、pBR322と対比してのpUC型プラスミドの複製起点の配列の変化と一致し〔pBR322の2990のGがpUCプラスミドの対応する領域ではAに変化した。Miltonら,Focus,BRL−Gibco Volume 10,page 56(1988)〕、pUCプラスミドに高い複製数が付与されるのはこのためであると考えられる。
合成プラスミドの配列を図7に示す。図7では、転写終結因子、−35および−10プロモーター領域およびfMetをコードするATGトリプレットに下線を付けた。横向きの矢印は、転写開始部位を示す。縦の矢印は、RNaseH切断部位を示す。アポストロフィは分割点を示し、Fok I断片の配列を与える。合成オリゴヌクレオチドの配列は、アーム1+分割点の間の配列+4個の3'末端残基の重複部分+アーム2であった。Fok I断片およびオリゴヌクレオチドは、上記で示したように配列に番号を付した。断片1の配列は、2個の不連続配列から成る。三角印は、lacZカセットを規定する。
pWM510の構築に使用したオリゴヌクレオチドは、全て5'−ジメトキシトリチルヌクレオシド β−シアノエチルホスホラミディテスを使用して、Applied Biosystems 380A Syntyhesizerにより合成した。合成は、平均孔径が1000Åである0.2μモルスケールの制御孔ガラス固体支持体上で行った。オリゴヌクレオチドは、ゲル電気泳動により精製した。
合成オリゴヌクレオチドのクローニングは、架橋突然変異誘発手順により行った。Fok I法の遺伝子合成に使用した4個のクローニングベクター(pWM500、pWM501、pWM502およびpWM507)の全てをSma Iで切断した。約50ngの線状化ベクターを、30μlの変性緩衝液(10mMのKCl,5.0mMのトリス−HCl pH8.0,5.0mMのMgSO4,0.5mMのジチオトレイトール)中で20ピコモルのオリゴヌクレオチドと混合し、混合物を沸騰水浴中で30分間、100℃に加熱した。その試料を5分間で室温に冷却し、冷却した200mlのコンピテントJM83細胞ara,D(lac−proAB),strA,thi,F80 laczDM15)に移した。コンピテント細胞は、CaCl2法により調製した。DNA/細胞混合物を氷上で5分間冷却した後、37℃で3分間、熱衝撃を加えた。約2μlのLB培地を形質転換混合物に添加し、細胞を37℃で1時間インキュベートした後、細胞をプレーティングした。
合成プラスミド用のFok I断片を含むプラスミド構築物を次のように消化した。約200ngの各プラスミドを90単位のFok I(New England BioLabs,Beverly,MA)で切断した。反応は、37℃で2.5時間、1×Fok I緩衝液(20mMのKCl,10mMのトリス−HCl pH7.5,10mMのMgCl2および10mMの2−メルカプトエタノール)を含む500μl容積中で行った。この挿入物含有Fok I断片は、次いで、ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製した。
連結工程では、全部で25個のFok I断片(各100ng)を単一反応で一緒に連結した(上記参照)。使用したクローニングベクターの型は次の通りであった。pWM500:2〜14および26〜29の断片;pWM501:15〜18、24および25の断片;pWM502:19〜23;およびpWM507:断片30。
実施例12
Asp153>Gly突然変異体の構築および特性
Asp153>Gly突然変異体の構築は、まず、プラスミドpMA101をSpe IおよびPvu II制限酵素で切断して、アミノ酸残基153の天然型コドンを有するDNA断片を脱離し、該プラスミドに突然変異を導入して行った。次いで、切断されたDNAを、所望の突然変異に対応する位置にランダムなDNA配列を有するオリゴヌクレオチドとともに、実施例1(b)で記載したように架橋突然変異誘発に使用した。ヌクレオチドの配列は次の通りであった。
Figure 0003560972
得られたコロニーは、色素産生基質の5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸を使用して、次のように、高いkcatを持つものを選別した。
1.大腸菌細胞を、上述したAsp153>Gly突然変異を含むプラスミドにより形質転換した後、アンピシリンを含むLB寒天平板上においたフィルター(Millipore No.HATF 082 25)上にプレーティングし、平板をカバーして細胞を37℃でインキュベートした。
2.工程1)のプレーティングフィルターを新しいフィルター(Millipore No.HATF 082 25)上に置き、2冊の重い本の間において押さえることにより、そのレプリカを作った。最初のフィルターおよびレプリカフィルター上の細胞を別々のLB寒天平板に置き、平板をカバーして、37℃で2〜3時間インキュベートした。
3.工程2)のプレートを、カバーしないで90℃で1時間45分インキュベートした後、室温に冷却した。
4.工程3)でインキュベートした平板のもとのフィルターおよびレプリカフィルターを寒天から注意深くはがし、予め40mlの50mMトリス(pH10.0)で湿らしてあるワットマン吸取紙上において、室温で5分間インキュベートした。
5.工程4)のもとのフィルターおよびレプリカフィルターを注意深く吸い取り、予め40mlの50mMトリス、0.2mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−リン酸(pH10.0)で湿らしてあるもう一枚の吸取紙上において、室温で5分間インキュベートした。
6.工程5)のもとのフィルターおよびレプリカフィルターを乾いたワットマンの吸取紙に注意深く移し、最初のフィルター上の最も濃い青色のコロニーをレプリカフィルター上の対応するコロニーに適合させた。
7.工程6)のもとのフィルターのコロニーを取り出し、アンピシリンを有する4.0mlのLB培地中、37℃で一夜培養した。
8.LB寒天平板を4つの部分に分け、工程7)の増殖した培養から得た試料を寒天平板上で画線培養して、37℃で一夜インキュベートした。
スクリーニング工程により、もとのフィルターおよびレプリカフィルター上に、野生型と比較してはっきりした非常に濃い青色を示すクローンを同定した。そのクローンpDG201を、DNA配列決定により解析した。その結果、コドン153に対して、GAC(野生型の配列)の代わりに配列GGCとなっていた。このコドンは、突然変異体では、153位のグリシン残基に対応する。次いで、プラスミドpDG201の突然変異体遺伝子を大腸菌で発現し、突然変異体アルカリホスファターゼを実施例4に記載したように精製した。精製した突然変異体蛋白は、実施例5に記載したように、kcat、そのpH依存性およびKmを測定して解析した。1Mトリス(pH8.2)中での突然変異体のkcatは229秒-1であり、Kmは11.8μMであった。この結果、Asp153>Gly突然変異体は、調べた全pH範囲にわたって、Asp101>Ser突然変異体とほぼ同等の触媒活性を有し、従って、本明細書に記載したようなアッセイでのリポーター酵素としての用途など、いくつかの応用に対して優れた候補であることが示された。
当業者であれば理解されるように、本発明の概念は、該酵素をコードするDNAを、野生型酵素の温度安定性を保持しながら高められた特異的活性を有する酵素を産生するか、野性型酵素の特異的活性を保持しながら高められた温度安定性を有する酵素を産生するように修飾した他の酵素にも等しく適用できる。本発明はまた、格別の実験努力を要することなく、大腸菌以外の宿主(それらに限定されないが、Bacillus,Streptomyces,哺乳類細胞ならびに酵母および他の真菌類など)の使用にも適用できるが、全ての宿主が等しく効果的であるとは限らない。
明らかなように、本明細書に記載した本発明は、本発明の精神および範囲を逸脱しないならば、多くの改変が可能であり、従って、制限は、添付の請求の範囲に示すものによってのみ行われる。
【図面の簡単な説明】
図1(a)〜(c)は、アルカリホスファターゼ遺伝子を構築するために使用する合成オリゴヌクレオチドを示す。
図2は、プラスミドpMA100の制限地図を示す。
図3(a)〜(b)は、合成した、野生型の大腸菌アルカリホスファターゼのヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
図4は、本発明の新規指示薬を使用する、α−フェトプロテインを検出するための結合アッセイの結果を示す。
図5は、本発明の新規指示薬を使用する、癌抗原を検出するための結合アッセイの結果を示す。
図6は、子牛の腸のアルカリホスファターゼおよび大腸菌突然変異体アルカリホスファターゼの不可逆的な熱不活化の時間的経過を示す。
図7は、合成プラスミドpWM520のヌクレオチド配列を示す。
塩基コードおよびアミノ酸を表すために、以下の記号および略号を使用する。
塩基コード:
記 号 ヌクレオチド
A アデノシン
C シトシン
G グアニン
T チミン
アミノ酸の3文字の略号:
略 号 アミノ酸名 略 号 アミノ酸名
Ala アラニン Leu ロイシン
Arg アルギニン Lys リジン
Asn アスパラギン Met メチオニン
Asp アスパラギン酸 Phe フェニルアラニン
Cys システイン Pro プロリン
Gln グルタミン Ser セリン
Glu グルタミン酸 Thr トレオニン
Gly グリシン Trp トリプトファン
His ヒスチジン Tyr チロシン
Ile イソロイシン Val バリン

Claims (6)

  1. 野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して少なくとも一つのアミノ酸の変異を有し、当該変異がAsp153の代わりにGlyであることで特徴づけられる変異型合成アルカリホスファターゼ酵素。
  2. 単細胞宿主での発現のための変異型アルカリホスファターゼ酵素をコードする核酸配列を含み、該変異型アルカリホスファターゼが対応する野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して少なくとも一つのアミノ酸の変異を有し、当該変異がAsp153の代わりにGlyであることで特徴づけられ、かつ野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して高められた比活性を有することを特徴とする、DNA配列。
  3. 単細胞宿主での発現のための変異型アルカリホスファターゼ酵素をコードするDNA配列を含み、該変異型アルカリホスファターゼが対応する野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して少なくとも一つのアミノ酸の変異を有し、当該変異がAsp153の代わりにGlyであることで特徴づけられ、かつ野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して高められた比活性を有することを特徴とする、プラスミド。
  4. 単細胞宿主での発現のための変異型アルカリホスファターゼ酵素をコードするDNA配列を含むプラスミドを含み、該変異型アルカリホスファターゼが対応する野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して少なくとも一つのアミノ酸の変異を有し、当該変異がAsp153の代わりにGlyであることで特徴づけられ、かつ野生型の大腸菌アルカリホスファターゼと比較して高められた比活性を有することを特徴とする、単細胞宿主。
  5. 下記工程を含む、テスト試科中の被分析物の存在または量を測定する方法;
    a.テスト試料を指示薬及び捕獲結合物と逐次または同時に接触させ、該指示薬が特異的結合物に直接又は間接的に結合した請求項1に記載のアルカリホスファターゼ酵素を含む工程;及び
    b.該指示薬を、被分析物、該捕獲結合物、及び補助の特異的結合物から成る群から選択される物質に結合させ、その結果、指示薬複合体を形成する工程;及び
    c.該指示薬複合体または遊離の指示薬を酵素基質と反応させて検出可能な信号を作り、それによってテスト試料中の被分析物の存在又は量を測定する工程。
  6. 下記の構成を含む、テスト試料中の被分析物の存在又は量を測定に有用な指示薬;
    a.請求項1に記載の変異型アルカリホスファターゼ酵素;
    b.該酵素に直接又は間接的に結合した特異的結合物。
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