JP3560406B2 - ミル特性計測装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭焚ボイラに微粉炭を供給するミルの特性変化予測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来火力発電用ボイラには微粉炭が燃料として多量に使用されている。この微粉炭は、原炭を粉砕しローラにより微粉炭とするミルにより供給される。ミルにより供給される微粉炭は通常サービスタンクに一時貯蔵され、その後ボイラへ供給されるが、サービスタンクの容量は大きくないので、ボイラの燃料消費量に合わせた微粉炭の供給が必要となる。このためミルの入炭量などの入力データに対する出炭量などの出力データを正確に予測する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため、ミルのシミュレータを作成し、出炭量等の予測が行われている。「火力発電Vol.46,No1.頁47−頁58、能代火力発電所1号機における最新の制御技術」にはその頁55にミルシミュレータによる出炭の予測方法が開示されている。石炭の場合、産地によって炭種が異なり、この炭種が異なるとミルへ供給する原炭量が同じでも炭量が変化する。このため、上記ミルシミュレータの場合、炭種が変わるごとにシミュレータ係数変化を予め求めておく必要があるが、入力するデータは入炭量の外にも多数あり、これらに対応した係数変化を全て求めることは困難である。また、このシミュレータは学習機能がないため、予め設定した条件と異なると予測精度が低下する。特に過渡状態の予測精度は良くない場合が多い。
【0004】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、ミル稼働中にシミュレーションモデルのパラメータを学習可能とし、さらに定常状態の変化から過渡状態の出力を推定することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、原炭を粉砕しローラにより微粉炭にするミルの特性計測装置であって、ミルの入力データと出力データとを入力し、定常状態と過渡状態のデータを分別するデータ分別手段と、このデータ分別手段から定常状態の入出力データを入力して、定常状態の入出力の特徴量を算出する定常状態特徴量演算手段と、前記データ分別手段から過渡状態の入出力データを入力して、過渡状態の入出力の特徴量を算出する過渡状態特徴量演算手段と、学習時には前記定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量と前記過渡状態特徴量演算手段から過渡状態の出力特徴量とを入力し両特徴量の関係を学習し、過渡状態出力再現時には前記定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量を入力し学習結果に基づく過渡状態出力特徴量を出力する特徴量学習推論手段と、前記データ分別手段から過渡状態入力データを入力し、前記特徴量学習推論手段から入力した過渡状態出力特徴量に基づいて過渡状態の出力を出力する過渡状態再現シミュレータと、この過渡状態再現シミュレータの出力と前記データ分別手段の過渡状態出力データとの出力誤差をとり、その出力誤差が所定値より大きいとき、前記特徴量学習推論手段に学習を指示する誤差判定手段とを備える。
【0006】
かかる構成により、特徴量学習推論手段は、学習時には、定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量と、過渡状態特徴量演算手段から過渡状態の出力特徴量とを入力して両特徴量の関係を学習する。過渡状態出力再現時には、定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量を入力し学習結果に基づく過渡状態出力特徴量を出力する。過渡状態再現シミュレータはこの過渡状態出力特徴量をシミュレーションモデルのパラメータとし、データ分別手段からの過渡状態入力データよりシミュレーションを行い過渡状態出力データを出力する。誤差判定手段はこの過渡状態出力とデータ分別手段からの過渡状態出力データとの差である出力誤差が所定値より大きいとき、特徴量学習推論手段に学習を指示する。これによりシミュレーションモデルのパラメータとなる過渡状態出力特徴量を学習可能とし、この特徴量を用いて定常状態の変化から過渡状態の出力をシミュレーションすることが可能となる。このような学習およびシミュレーションはミル稼働中に行うことができ、現状に適した出力をすることができる。
【0007】
請求項2の発明では、前記特徴量学習推論手段は、入力を前記定常状態特徴量演算手段の出力する定常状態の入力特徴量とし、出力を過渡状態の出力特徴量とし、教師信号を前記過渡状態特徴量演算手段の出力する過渡状態の出力特徴量としたニューラルネットとする。
【0008】
定常状態の入力特徴量を入力し過渡状態の出力特徴量を出力させ、実際の過渡状態の出力特徴量を教師データとして、両出力特徴量の差を少なくするように学習するので、過渡状態再現シミュレータが動作するとき、定常状態の入力特徴量を入力すると過渡状態の出力特徴量を精度よく過渡状態再現シミュレータへ出力することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態を示すブロック図である。本実施の形態のミル特性計測装置は、原炭より微粉炭を生成するミルの特性を計測すると共に出力を予測する。ミルは原炭を破砕しローラにより微粉炭にする装置であり、本ミル特性計測装置はミルへの入力データとミルの出力データを計測すると共に入力データから、出力データを予測する。定常状態における入力データから定常状態の出力データの予測は試験や同種プラントの実績から精度よく行われるので、本実施の形態では定常状態の入力データの変化に対する過渡状態の出力の予測を精度よく行う。
【0010】
入力データとしては原炭供給量、ローラレベル、ミル圧力損失などがあり、出力データとしては出炭量、粒度分布などがある。図2はこのような入出力データの一例を示す。横軸は時間をとり、縦軸はそれぞれの項目の値を示す。a〜cは入力データを示し、dは出力データを示す。また、実線部分が定常状態のデータを示し破線部分が過渡状態のデータを示す。aは原炭供給量である。炭種変化はこの時点で石炭の産地が変化したことを示す。炭種が変化しても原炭供給量は一定であるが、他のデータに変化が生じるものもあり、これにより炭種切り換えを自動的に判別できる。bはローラレベルでこれは破砕した石炭を微粉化するローラのレベルを表す。この場合、定常特性値は炭種変化により変化している。これにより炭種切り換えを判定できる。cはミル圧力損失を示し、変化の少ないデータとなっている。dは出炭量を示す。この出炭量の過渡状態における動特性変化をシミュレーションモデルが正しく予測できるようなパラメータ(過渡状態の出力特徴量)をニューラルネットが出力できるようにするため、特徴量の実績データと予測データの誤差を零とするように学習が行われる。
【0011】
図3は、図1に示したブロックを実現するコンピュータの構成を示すブロック図である。ROM1はプログラムなどの基本データを格納する不揮発性メモリである。CPU2はROM1に格納されたプログラムに従い全体を制御する。RAM3はROM1より読み出されたプログラムを格納すると共に、このプログラムに従い動作するCPU2の作業エリアとなる。パネル操作部4はオペレータが指示やデータを入力するもので、テンキーやファンクションキーなどを有する。表示部5はオペレータの入力値やCPU2による演算結果などを画面表示する。入出力インターフェース6は外部とのデータ取り合いを行う。
【0012】
図1において、データ分別手段10は図2で示したような入力データと出力データを入力し、定常状態入出力データ、過渡状態入力データおよび過渡状態出力データに分別する。定常状態特徴量演算手段11は定常状態入出力データを入力し定常状態の入出力特徴量を出力する。過渡状態特徴量演算手段12は過渡状態入出力データを入力し過渡状態の入出力特徴量を出力する。なお、特徴量の一例をあげると、定常状態では平均値などが用いられ、過渡状態では、原炭供給量と出炭量の誤差積分、むだ時間、時定数などが用いられる。
【0013】
特徴量学習推論手段13はニューラルネットにより構成され、後述する過渡状態再現シミュレータ14のパラメータとなる過渡状態の出力特徴量を出力する。動作は学習時と過渡状態再現シミュレータ14動作時に行われ、学習時、定常状態の入力特徴量XIを入力し、過渡状態の出力特徴量XTを教師信号として学習を行う。過渡状態再現シミュレータ14動作時には、定常状態の入力特徴量XIを入力し、学習結果に基づく過渡状態の出力特徴量XOを出力する。図1において破線の矢印は学習時のデータの流れを示し、実線の矢印は過渡状態再現シミュレータ14動作時のデータの流れを示す。
【0014】
過渡状態再現シミュレータ14はミルの数学的モデルで、特徴量学習推論手段13から出力される過渡状態の出力特徴量XOをパラメータとし、データ分別手段10からの過渡状態入力データを入力してシミュレーションを行い、過渡状態の出力データYSを予測して出力する。出力データとしては出炭量や粒度分布などである。誤差判定手段15は過渡状態再現シミュレータ14からの過渡状態の出力データYSと、データ分別手段10からの実績データである過渡状態の出力データYTとの差を求め、その差が所定の値より大きくなったとき、特徴量学習推論手段13に学習開始指令を出し、過渡状態の出力特徴量XOの推論精度を向上させ、シミュレーションの精度を向上させる。
【0015】
図4は特徴量学習推論手段13として用いられるニューラルネットの一例を示す。ニューラルネットは一般に用いられる3層のバックプロパゲーションモデルを使用する。図4はこのようなバックプロパゲーションモデルを示し、入力層、中間層、出力層の3層から構成されている。また、図5はニューラルネットを構成するニューロ演算素子の構成を示す。ニューロ演算素子は各入力iに対し、重み係数Wiにより重み付けをし内部に取り込んでその和を取り、その和がしきい値(シグモイド関数)を越えたとき1を出力する。このようなニューロ演算素子を3層にし、各層間のニューロ演算素子を接続する。
【0016】
図4において重み修正回路はニューラルネットの出力XOと教師信号XTとの誤差を零にするように一定の方法により中間層と出力層の各ニューロ演算素子の重み係数Wijを変化させる。この一定の方法とは誤差が零に近づけば、そのとき信号を伝えている結合の重みを少し増やし、零より遠ざかると、その時信号を伝えている結合の重みを少し減少させるといった操作を繰り返し、誤差を零にしてゆく方法である。図1で説明したように、入力信号XIは定常状態の入力特徴量であり、教師信号XTは過渡状態の出力特徴量である。学習時、入力信号XIにより出力信号XOが教師信号XTになるように学習し、過渡状態再現シミュレータ14動作時、入力信号XIによる出力信号XOを過渡状態再現シミュレータ14へ出力する。また誤差判定手段15から学習開始指令を受けたときは、学習を開始する。
【0017】
図6は実施の形態の動作を示す動作フロー図である。まずニューラルネット13に定常状態の特徴量XIを入力し、過渡状態の出力特徴量XTを教師信号として学習を行わせる(S1)。このようにして学習が終了すると過渡状態再現シミュレータ14を動作させる。ニューラルネット13には定常状態の特徴量XIを入力し、出力の推定過渡状態出力特徴量XOを過渡状態再現シミュレータ14に出力する(S2)。過渡状態再現シミュレータ14はデータ分別手段10からの過渡状態入力データを入力し、過渡状態出力特徴量XOをパラメータとしてシミュレーションを行い、過渡状態の出力YSを求め出力する(S3)。誤差判断手段15はこの過渡状態の出力YSと、データ分別手段10からの実績値である過渡状態出力データYTとの誤差を評価し、所定の基準値より大きいときはニューラルネット13に学習を指示する(S4)。これによりステップS1に戻り学習が再開される。このように状況の変化に対応して学習が行われ、過渡状態再現シミュレータ14より精度の高い過渡状態の出力が出力される。なお、学習はミル稼働中に行われる。
【0018】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明は、過渡状態再現シミュレータのパラメータを特徴量学習推論手段より出力し、過渡状態再現シミュレータの出力とミルの出力との誤差が所定値を越えると特徴量学習推論手段の学習を行い、常に現状に適合した過渡状態の出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のミル特性計測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】入出力データの一例を示す図である。
【図3】図1に示したブロックを実現するコンピュータの構成を示す図である。
【図4】ニューラルネットのバックプロパゲーションモデルを示す図である。
【図5】ニューロ演算素子の構成を示す図である。
【図6】実施の形態の学習動作を示す動作フロー図である。
【符号の説明】
10 データ分別手段
11 定常状態特徴量演算手段
12 過渡状態特徴量演算手段
13 特徴量学習推論手段(ニューラルネット)
14 過渡状態再現シミュレータ
15 誤差判別手段

Claims (2)

  1. 原炭を粉砕しローラにより微粉炭にするミルの特性計測装置であって、ミルの入力データと出力データとを入力し、定常状態と過渡状態のデータを分別するデータ分別手段と、このデータ分別手段から定常状態の入出力データを入力して、定常状態の入出力の特徴量を算出する定常状態特徴量演算手段と、前記データ分別手段から過渡状態の入出力データを入力して、過渡状態の入出力の特徴量を算出する過渡状態特徴量演算手段と、学習時には前記定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量と前記過渡状態特徴量演算手段から過渡状態の出力特徴量とを入力し両特徴量の関係を学習し、過渡状態出力再現時には前記定常状態特徴量演算手段から定常状態の入力特徴量を入力し学習結果に基づく過渡状態出力特徴量を出力する特徴量学習推論手段と、前記データ分別手段から過渡状態入力データを入力し、前記特徴量学習推論手段から入力した過渡状態出力特徴量に基づいて過渡状態の出力を出力する過渡状態再現シミュレータと、この過渡状態再現シミュレータの出力と前記データ分別手段の過渡状態出力データとの出力誤差をとり、その出力誤差が所定値より大きいとき前記特徴量学習推論手段に学習を指示する誤差判定手段とを備えたミルの特性計測装置。
  2. 前記特徴量学習推論手段は、入力を前記定常状態特徴量演算手段の出力する定常状態の入力特徴量とし、出力を過渡状態の出力特徴量とし、教師信号を前記過渡状態特徴量演算手段の出力する過渡状態の出力特徴量とするニューラルネットであることを特徴とする請求項1記載のミル特性計測装置。
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