JP3559938B2 - ガスバーナー用ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速連続プレスにより加工されるガスバーナー用ステンレス鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
SUS304に代表されるオーステナイト相が準安定なステンレス鋼は、加工時のひずみでマルテンサイト変態(加工誘起マルテンサイト変態)が生じて、ひずみ拡散が良好になるため、SUS305やSUS316等のようにオーステナイト相が比較的安定なステンレス鋼に比べて、張出し加工性,深絞り加工性に優れる。この効果を積極的に活用した高加工性ステンレス鋼として、特公昭51−29854号,特公昭59−33663号,特公昭60−5669号,特開昭54−128919号などに記載例がある。これらの鋼は、張出し加工や深絞り加工を施して、流し台や浴槽等の大型プレス品に多用されている。また、ドアーノブやガスコンロのガスバーナー,電池ケース等の比較的小型のプレス加工品にも多用されつつある。
【0003】
これらの加工品のうち、大型品のプレス加工においては、プレス圧力やポンチストロークの関係から油圧を用いた低速のプレス加工がされるため、加工時の変形熱は金型に伝熱拡散されたり潤滑油で冷却されて、材料温度はほとんど上昇しない。一方、比較的小型品のプレス加工ではメカニカルプレスが多用されている。この場合、油圧プレスに比べて加工速度が大きいため、加工時の変形熱により材料温度が上昇する。その結果、マルテンサイト変態が抑制されるため加工性が低下する。
そこで、素板から製品形状まで多数回の中間形状を経て少しずつ、段階的に加工する多段プレス加工の手法が取られる。なお、メカニカルプレスを用いた多段プレス加工の場合でも、中間製品をまとめて各段ごとに単発プレスする場合が多く、この場合は材料の温度上昇は比較的少なく、高速加工と言えども加工性の低下は小さい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年の比較的小型品のプレス加工は、大量生産やプレス加工の効率化を目的に高速の連続プレスに変更されつつある。このような加工方法や加工条件の変化に伴い、従来のSUS304や前述従来例のオーステナイト系ステンレス鋼では加工上の問題が顕在化してきた。すなわち、高速連続プレス加工に際しては、潤滑剤で材料および金型を冷却しているにもかかわらず、高速連続加工のため、変形時の発熱量の多くが材料内に連続的に蓄積されたり、金型に伝導後蓄積される。このため加工材料の温度が上昇し、マルテンサイト変態が抑制されるため加工性が低下することから、従来鋼ではプレスの高速化や多段プレス加工時の工程数削減を阻害していた。
【0005】
また、近年においては、ガスコンロのガスバーナーのコスト低減と軽量化を目的に、従来の鋳物製ガスバーナーからステンレスのプレス加工品ガスバーナーへと材質変更が急速になされつつある。この場合、鋳物製のガスバーナーは製造技術面から肉厚が厚くなっているため、ガスバーナー使用時に鍋からの煮汁噴き出しによる腐食面での耐久性は十分にある。一方、ステンレス製ガスバーナーも腐食面での耐久性から材質、板厚を十分考慮して製造されている。しかし、より低コストや軽量化を図るために板厚を減少すべく、耐久性の改善も望まれている。本発明は、このような問題点を解消し、高速連続プレスにおいてα破断を生じることなく安定して加工が可能な耐久性に優れたガスバーナー用ステンレス鋼を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、質量%で、C:0.07%以下,Si:1.0〜2.5%,Mn:5.0%以下,Ni:5.0〜9.0%,Cr:14.0〜19.0%,Cu:4.0%以下,N:0.083%以下,S:0.0030%以下Mo:1.0%以下を含有し、かつ、これらの成分の間に下記(1)式に従うa値が−0.30〜1.00の範囲に維持される関係が成立しており、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高速連続プレスにより加工されるガスバーナー用ステンレス鋼により達成される。
a値= 19.43−10.8C−0.14Si−0.54Mn−1.02Ni−0.57Cr−0.49Cu−7.53N ---------- (1)
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の要旨とするところは、高速で連続プレス加工する際に材料の温度が上昇しても、適度なマルテンサイト変態を進行させることでひずみ拡散を生じさせ、α破断を防止することと、加工品に生じたマルテンサイト相の強度を低下させて、時期割れ感受性を低下させることにある。そこでマルテンサイト変態の起こり易さと、変態したマルテンサイトの強度を制御することが極めて重要となる。マルテンサイト変態挙動はオーステナイト安定度、加工ひずみ量、加工温度の影響が極めて強い。
オーステナイト安定度は鋼中に含有される化学成分とその量に依存する。オーステナイト安定度を表す指標としては、例えば、鉄と鋼 Vol.63, No.5, p.218に紹介されている、
Figure 0003559938
が挙げられる。このMdGS30は、0.30の引張り真ひずみを与えたとき50%のマルテンサイト量を生成する温度であり、MdGS30の値が大きいほどオーステナイト相は不安定である。なお、(2)式中のνはオーステナイト相のASTM結晶粒度番号である。
【0008】
しかし、このMdGS30値で高速連続プレス加工性を評価した場合、MdGS30値と高速連続プレス加工性の相関が乏しいことが多々ある。
その理由としては、第1にMdGS30値はSUS304,301系の特定成分範囲内で回帰した式であるため、幅広い成分範囲での適用には外挿が困難である点、第2にMdGS30値は加工時の材料温度の上昇を考慮に入れていないのに対し、高速連続プレス加工では、材料温度が上昇するため、同一材料であっても加工時の材料温度によって、マルテンサイト量が変化するという点が考えられる。
そこで、本発明者らは、高速連続プレス加工性を評価できる新たなオーステナイト安定度の指標について検討した結果、加工ひずみ量とマルテンサイト量との関係に着目すべきであることを知見した。
【0009】
本発明者らによる種々の実験の結果、加工ひずみ量とマルテンサイト量の間には次の関係式が成立することを見いだした。
α’/A=a・e2.5 −−−−−− (3)
ここで、e:引張変形で付与されたひずみ量。
α’ :付与されたひずみ量で発生した加工誘起マルテンサイト相の量比。
A:そのときのオーステナイト相の量比で、1−α’に等しい。
(3)式は、加工ひずみの増加に伴う加工誘起マルテンサイト量の増加の度合いを示した関係式である。(3)式における係数aの値が、その材料のオーステナイト安定度を示す値となる。すなわち、a値が小さい場合はオーステナイト相が安定であり、大きい場合はオーステナイト相が不安定であると評価することができるのである。ここでa値は、ひずみ量e=1のときのα’/Aの値となることが(3)式からわかる。
【0010】
本発明者らによる数多くの実験の結果、a値と化学成分の間には次の関係式が成立することを見いだした。
Figure 0003559938
【0011】
加工温度は加工度、加工速度、加工開始からの経過時間の増加とともに上昇するものであるが、加工時には摩擦抵抗の低減、疵付き防止等の目的で液体潤滑が施されるため、材料温度はある温度からほとんど上昇しなくなる。実際の高速連続プレス時の温度は、多くの場合40〜70℃程度であると推定されることから、この温度域でのマルテンサイト変態を適切に制御することが必要である。詳細な調査の結果、(1)式で示されるa値が−0.30〜1.00の範囲を外れた鋼では、高速連続プレスにおいて、加工割れが生じ易いことがわかった。すなわち、(1)式によるa値は実際の高速連続プレス性を評価するためにふさわしいオーステナイト安定度の指標である。
【0012】
各成分の作用と含有量限定の理由は次の通りである。
Cは、強力なオーステナイト生成元素であり、また加工誘起マルテンサイト相の強度を高める元素で、高いほど張出し加工性の向上には好ましい。しかし、多すぎると、ガスバーナー使用時にガスバーナー温度が上昇して鋭敏化を生じ、ひいては耐食性が劣化して、耐久性が低下するため上限を0.07%とした。
【0013】
Siは、その含有量が高いほど、オーステナイト相そのものの加工硬化性を高めることができるとともに、耐応力腐食割れ性の改善に有効な元素であるが、反面、その含有量が多すぎるとδフェライト相が生成して熱間加工性を損ねるため、その適正範囲を1.0〜2.5%とした。
【0014】
Mnは、Niと同様にオーステナイト相のひずみ誘起マルテンサイト量を抑制するのに役立つ。ただし、Mnは、ひずみによって誘起されるマルテンサイト相の強度を高めることにより材料の加工硬化性および張出し成形性の向上に寄与する点で、Niとは異なる作用を有する。このような作用を十分に発揮させるためには、Mnは0.4%以上含有させることが望ましい。しかしながら、δフェライト相の抑制効果はNiほど強くなく、かつ、製鋼時のロスが多く金属Niと金属Mnとの価格差ほどのコストの低減にならないことから、その適量範囲を5.0%以下とした。
【0015】
Niは、オーステナイト相やマルテンサイト相そのものの加工硬化にはあまり寄与せず、しかも高価な金属であるので、オーステナイト相のバランスの条件を満たす範囲で低いことが望ましい。これらを考慮してその適量範囲を5.0〜9.0%とした。
【0016】
Crは、耐食性の面から高い方が望ましいが、あまり高すぎるとδフェライト相が生じ熱間加工性が損なわれるため、その適正範囲を14.0〜19.0%とした。
【0017】
Cuは、Niと同様にオーステナイト相のひずみ誘起マルテンサイト変態を制御するのに役立つと同時に、ひずみによって誘起されるマルテンサイト相の強度を高め、結果的に材料の加工硬化特性を向上せしめるので不可欠な元素である。これらの作用を十分に発揮させるためには、0.3%以上含有させることが望ましい。しかし、その含有量が高すぎると熱間加工性が阻害されるので、その含有量は4.0%以下とした。
【0018】
Sは、耐食性、特に孔食電位と相関があり、Sが増加すると孔食電位は低下して耐久性が低下するため、上限を0.0030%とした。
【0019】
Nは、Cと同様にオーステナイト生成元素であり、加工誘起マルテンサイト相の強度を高める。しかし、多すぎるとオーステナイト相自体の強度が上昇するとともに耐力も上昇して加工性が低下する。N含有量の上限は0.083%に規定する。
【0020】
Moは、耐食性の向上に有効な元素である。本発明の鋼では、ひずみ誘起マルテンサイトを積極的に利用する上から、耐食性に有効なCrの上限が決められる。このため、必ずしもMoを含有させる必要はない。使用環境によって耐食性が不十分な場合には、Moを添加することが有効である。しかし、Moは高価な元素であることから上限を1.0%とした。
【0021】
その他、成形加工部品をスポット溶接やシーム溶接等で組み立てて使用する場合、溶接熱影響部の鋭敏化による耐食性劣化を回避するためには、Ti,Nbを添加することも有効である。その場合、Tiは0.1〜1.0%、Nbは0.1〜1.0%の範囲で含有させることが望ましい。
【0022】
以上の成分に加えて、(1)式に従うa値が−0.30〜1.00の範囲にあることが必要である。この点は以後の実施例によって具体的に示す。
【0023】
【実施例】
[実施例1]
表1に示す化学組成の鋼1〜26を溶製し、スラブを1220℃に再加熱後、熱間圧延により板厚3.8mmの熱延板とし、これに1150℃で均熱1分の熱延板焼鈍を施した。この熱延焼鈍板を酸洗し、板厚1.2mmまで冷間圧延した後、1050℃で均熱1分の中間焼鈍と酸洗を施し、さらに0.6mmまで冷間圧延した。これに結晶粒度が8番になるような温度で、均熱1分の仕上げ焼鈍の後、酸洗を施した。
【0024】
これらの材料について、オーステナイト安定度の評価試験と高速連続張出し性の指標となる高速エリクセン試験を行った。また、一部の材料については高速張出し加工試験と孔食、全面腐食の耐久性試験を実施した。なお、これらの試験方法は次のとおりである。
【0025】
【表1】
Figure 0003559938
【0026】
(高速エリクセン試験方法)
高速エリクセン試験は高速連続プレス加工を想定した試験方法で、JIS Z2247に規定された2号試験片にプレス油で潤滑を施して試験した。加工方法はメカニカルプレス機にJIS B 7729に規定されたエリクセン試験治具を取付け、加工速度12.8m/分の速度で加工した。試験室の気温は20℃であった。加工時の材料温度は高速加工のため測定が不可能であるが、加工後直ちに試験片を取り出し温度測定を行なったところ、約40℃を示したことから、加工時の材料温度は40℃以上であることは容易に推察される。
なお、JIS Z 2247に規定された通常のエリクセン試験も一部実施したが、エリクセン試験時の張出し加工部での温度を測定した結果、加工時に温度上昇を生じた材料でも加工時の材料温度は25℃程度であった。
【0027】
(オーステナイト安定度評価試験方法)
幅10mm、長さ100mmの短冊試験片を作製し、試験片の中央部に15mmのけがき線を記入した。この試験片のけがき線長さを読み取り顕微鏡で正確に測定した後、インストロン型引張試験機で均一伸びを示す範囲内で種々の引張ひずみを与えた。この時の引張速度は1mm/分と100mm/分の2種類で行なった。1mm/分で引張った場合の試験片温度は高いもので25℃程度であった。一方、100mm/分で引張った場合の試験片温度は60〜90℃であった。ひずみ付与後は再びけがき線長さを正確に読み取り、ひずみ量を算出した。オーステナイト安定度の指標となる加工誘起マルテンサイト量は、引張ひずみ付与後の試験片から約5mm径の円板を加工ひずみが加わらないよう電解研磨で注意深く作製し、試料振動型磁力計で測定した。
【0028】
(高速張出し加工試験方法)
120mmx120mm角の板を表2の条件で3工程の高速連続張出し加工を行い、割れの有無を確認した。なお、加工時の材料温度は機構上測定できなかったが、1〜3工程終了後直ちに加工品の温度を測定したところ40℃以上の温度であることから、加工時の材料温度は40℃以上であったことを確認した。
【0029】
【表2】
Figure 0003559938
【0030】
(孔食試験)
ガスバーナー使用環境を想定して、600℃で5時間熱処理した試料面上に、3.5%食塩水に食酢を添加してpHを3に調整した後、酸化剤として活性炭を10g/l添化した試験液を滴下した。この試験片を恒温・恒湿槽にて温度40℃,湿度70〜95%の状態に30分づつ繰り返して300時間さらす試験を行った。試験後、温硝酸液で腐食物を除去後、孔食の深さを測り、最も深いものから10個の平均値を孔食深さとした。
【0031】
(全面腐食試験)
試験片に600℃で5時間の熱処理を施した後、JIS G 0575で規定されるステンレス鋼の硫酸・硫酸銅腐食試験液および試験方法で腐食試験を行った。その後、温硝酸液で腐食物を除去後、重量変化から腐食度を算出した。
【0032】
(試験結果)
高速エリクセン試験およびオーステナイト安定度評価試験結果を表3に示す。従来のオーステナイト安定度の指標となるMdGS30で高速エリクセン値を整理すると図1のようになった。MdGS30と高速エリクセン値の間には、ほとんど相関がないことがわかる。
【0033】
【表3】
Figure 0003559938
【0034】
また、引張ひずみによるマルテンサイト変態挙動の一例を図2、3に示す。引張り時に材料温度が上昇しないよう1mm/分でゆっくり引張った場合は、図2に示すように、加工時に生成したマルテンサイト量が多い。一方、引張時に材料温度が60〜90℃に上昇した100mm/分の場合は、図3に示すように、マルテンサイト量が少ない。これらの結果は、同一材料であっても加工時の材料温度によってマルテンサイト量が変化することを示すものである。
【0035】
図4は、前述の(3)式におけるひずみ量eの対数とα’/(1−α’)の対数の関係をいくつかの鋼についてプロットした例である。各鋼のプロットは勾配2.5の直線として近似でき、(3)式の関係が成立することがわかる。
【0036】
鋼の化学組成を前述の(1)式に代入して求めた計算a値と、マルテンサイト量を実測して(3)式から求めた実測a値を表3中に示す。計算a値と実測a値はよく一致しており、(1)式によりa値が精度よく推定できることがわかる。
【0037】
前述(1)式を用いて求めた計算a値と、高速連続プレス加工を想定した高速でのエリクセン試験値の関係を整理すると、図5のようになる。高速連続プレス加工であろうとも、張出し加工性はマルテンサイト変態によるひずみ拡散の寄与が大きく、結局、高速加工で材料温度が上昇した状態でのマルテンサイト変態挙動を十分把握すれば、図5のように、高速連続プレス加工性は、本発明者らが提案したa値によって評価することが可能となる。
【0038】
供試材の一部について高速連続張出し加工試験を実施した結果を表3中に示す。オーステナイト安定度の指標となるa値が−0.30〜1.00の鋼が加工時に適度にマルテンサイト変態し、高速連続張出し加工が可能なことがわかる。
【0039】
また、供試材の一部について耐久性を評価すべく孔食試験および全面腐食試験を行った結果を表3に示す。孔食試験後の孔食深さは鋼中のS量との関係は、図6に示すように相関があり、S量が0.0030%を越えると孔食深さが急激に増加することから、S量を0.0030%以下にすれば優れた耐久性が得られることがわかる。
【0040】
また、全面腐食試験後の腐食度とC量の関係は図7のとおりであり、C量が0.07%を越えると腐食度が急激に増加することから、C量を0.07%以下にすれば優れた耐久性が得られることがわかる。
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様に、表4に示すA〜Rの鋼を溶製した。表4の本発明鋼のA〜JはC量が0.07%以下にあり、a値は−0.30〜1.00の範囲にある。比較鋼のKはC、Sが規定の範囲内にあるものの、a値が低く、規格を外れてγ相が安定な材料である。比較鋼L、OはCが規格範囲を外れ、鋼M、QはSが規定の範囲を外れたものである。比較鋼NはC,Sが規格の範囲を外れ、比較鋼P、はC,Sが規格の範囲を外れた材料である。比較鋼RはCとa値が外れたγ相の不安定な材料である。
【0042】
【表4】
Figure 0003559938
【0043】
これらの鋼の0.6mm厚の冷延焼鈍材から、各試験片を採取し、実施例1と同様の試験条件で高速エリクセン試験、オーステナイト安定度評価試験、高速張出し加工試験、耐久性試験を実施した。その結果を、表5、図8、9、10に示す。図8でみられるように、a値と高速エリクセン値の間には良い相関が見られる。また、オーステナイト安定度評価試験のa値が−0.30〜1.00にある発明鋼A〜Jおよび比較鋼のL,M,N,O,P,Qは高速深絞り加工で割れを生じることはなかったが、a値が−0.30〜1.00を外れた比較鋼K,Rは割れを生じた。
【0044】
【表5】
Figure 0003559938
【0045】
耐久性については、図9に見られるように、Sを0.0030%以下にすることで孔食深さが浅くなり、また、図10に見られるように、Cを0.07%以下にすることで腐食度は少なくなり、耐久性の改善が可能となった。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、材料温度の上昇をも加味した新しいオーステナイト安定度の指標の値を採用して鋼の化学成分を厳密にコントロールしたので、高速連続プレス加工における加工時の割れを克服できた。その結果、従来の準安定オーステナイト系ステンレス鋼では、複数回の単発プレスで行っていた多段プレス加工が、本発明鋼では1つのラインで仕上げる高速連続プレス(トランスファープレス)により、行うことができる。特に、張出し加工量が大きいガスバーナープレス加工品が高速連続プレスラインで安定して製造でき、しかも、成分限定による耐久性の改善も図れたことから、コスト低減、軽量化を目的としたステンレス製ガスバーナーの普及に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーステナイト安定度MdGS30値と高速エリクセン試験値の関係を示したグラフである。
【図2】1mm/分で引張与ひずみした場合のひずみとマルテンサイト量の関係を示したグラフである。
【図3】100mm/分で引張与ひずみした場合のひずみとマルテンサイト量の関係を示したグラフである。
【図4】100mm/分で引張与ひずみした場合のひずみと(マルテンサイト量(α’)/オーステナイト量(γ))の関係を対数で整理したグラフである。
【図5】オーステナイト安定度評価値の計算a値と高速エリクセン試験値の関係を示したグラフである。
【図6】S量と孔食深さの関係を示したグラフである。
【図7】C量と腐食度の関係を示したグラフである。
【図8】オーステナイト安定度評価値の計算a値と高速エリクセン試験値の関係を示したグラフである。
【図9】S量と孔食深さの関係を示したグラフである。
【図10】C量と腐食度の関係を示したグラフである。

Claims (1)

  1. 質量%で、
    C:0.07%以下,
    Si:1.0〜2.5%,
    Mn:5.0%以下,
    Ni:5.0〜9.0%,
    Cr:14.0〜19.0%,
    Cu:4.0%以下、
    S:0.0030%以下,
    N:0.083%以下、
    Mo:1.0%以下を含有し、
    かつ、これらの成分の間に下記(1)式に従うa値が−0.30〜1.00の範囲に維持される関係が成立しており、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高速連続プレスにより加工されるガスバーナー用ステンレス鋼。
    a値= 19.43−10.8C−0.14Si−0.54Mn−1.02Ni−0.57Cr−0.49Cu−7.53N ---------- (1)
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