JP3559729B2 - 液圧機器のエア抜き方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油圧シリンダなどの油圧機器を始めとする液圧機器のエア抜きを行うための方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、油圧シリンダは、設置時に必ずエアを抜く必要がある。また、油圧シリンダの検査時においても、内部に作動油を充満させてエアが残留しないようにエア抜きを行う必要がある。
【0003】
従来において、油圧シリンダには、エア抜きのための専用のバルブ(エア抜きバルブ)が設けられている。一般に、エア抜きバルブは、シリンダカバー又はシリンダチューブに弁座及びネジ穴が設けられ、弁座にスチールボールが装着され、ネジ穴にネジプラグがネジ込まれている。
【0004】
常時は、スチールボールがネジプラグの先端によって押されて弁座に密着しており、弁座に通じる内部管路は閉ざされている。そこで、ネジ込まれたネジプラグを六角レンチなどで回転させて緩めることにより、スチールボールと弁座との間に隙間ができ、シリンダ内のエアが作動油と一緒に内部管路から出てくる。こによってエア抜きが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上に述べた従来のエア抜きバルブでは、エア抜きを完全に行うためにはそれと一緒に出てくる作動油を垂れ流しにする必要がある。そのため、作動油を無駄にしてしまうとともに、油圧シリンダの外周部及び床面などを汚してしまう。
【0006】
そうすると、エア抜きを行う度毎に、作業者は油受け容器を準備するとともに、油圧シリンダの外周部及び床面の拭き取り作業を行い、零れた作動油を処理し、不足した作動油を補給する作業を行わなければならず、エア抜き作業に多くの時間を要している。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、作動油などを外部に零すことなく、したがって周囲を汚すことなく、容易にエア抜きを行うことのできる液圧機器のエア抜き方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係る方法は、液圧機器のエア抜きを行うための方法であって、前記液圧機器に用いられる液体と同じ液体が収納されたタンクと前記液圧機器のポートとを接続し、前記液体の液面よりも上方において、前記タンクの内部に対して負圧による減圧と圧縮エアによる加圧とを繰り返し、これによって前記液圧機器内の減圧と前記タンクから前記液圧機器内への前記液体の圧送とを繰り返す
【0009】
請求項2の発明に係る装置は、液圧機器のエア抜きを行うための装置であって、前記液圧機器に用いられる液体と同じ液体が収納されるタンクと、前記液体の液面よりも上方から前記タンク内に圧力を加えるための加圧手段と、前記液体の液面よりも上方から前記タンク内に負圧力を加えるための負圧発生手段と、前記加圧手段の作動と前記負圧発生手段の作動とを切り換える手段と、前記タンクの前記液体の液面よりも下方から前記液圧機器のポートに接続され、前記タンク内の前記負圧力を前記液圧機器に伝えるとともに、前記タンク内の前記液体を前記液圧機器に圧送する管路と、を有する。
【0010】
請求項3の発明に係る装置は、前記液圧機器のポートに、常時は液圧機器の内部から外部に向かう液体の流れを遮断するとともに、前記管路をポートに接続したときに自由流となる逆止弁を設けてなる。
【0011】
請求項4の発明に係る装置は、前記タンクに、液体の補給を行うための補給路及び開閉弁が設けられており、前記開閉弁を開いた状態で前記タンク内に負圧力を加えることによって、前記補給路から前記タンク内に液体が流入するように構成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るエア抜き装置1の構成を示す図、図2及び図3は油圧シリンダのエア抜きポートPTHに設けられた逆止弁の構造及び動作を示す図である。
【0013】
図1において、エア抜き装置1は、タンク11、真空ユニット12、切替えバルブ13、圧縮空気源に接続される供給ポート14、及び接続ホース15などから構成される。
【0014】
タンク11は、油圧シリンダ3に用いられる液体と同じ液体、ここの例では作動油HLを収納する。タンク11は、例えば、透明なアクリル樹脂からなる筒状の本体の両端面をカバーで閉塞し、各カバーをタイロッドで互いに連結した構造である。本体を透明とすることで、内部の状態を外部から容易に観察することが可能である。アクリル樹脂であることから軽量である。しかし、本体を金属などの不透明な材料によって構成してもよい。その場合に、のぞき窓を設けて内部が観察できるのが望ましい。
【0015】
タンク11には、その上部に、真空圧を接続するための真空ポートPT1、及び圧縮エアを供給するための加圧ポートPT2が設けられ、その下部に、接続ホース15を接続するための油ポートPT3が設けられる。また、その上部に、作動油HLを補給するための補給口PT4が設けられる。
【0016】
また、タンク11の底部に、作動油HLを補給するための補給口PT5が設けられる。補給口PT5には、補給管路21及び開閉弁22が設けられており、補給管路21の先端は補給タンク23に収納された作動油HLの中に挿入されている。したがって、開閉弁22を開いた状態で、タンク11内に負圧力を加えることによって、補給管路21からタンク11内に作動油HLが流入する。これによって、タンク11に作動油HLが半自動的に補給されるので、大量の作動油HLを補給する必要がある場合に便利である。なお、接続ホース15の途中にも開閉弁を設けておくと便利がよい。
【0017】
なお、開閉弁及び切替えバルブ13として電磁弁を用い、タンク11内の作動油HLの量を検出するセンサを設けておき、作動油HLの量が所定量よりも減った場合に、それらの電磁弁を制御することによって自動的に作動油HLの補給を行うようにしてもよい。
【0018】
真空ポートPT1、加圧ポートPT2、及び補給口PT4は、作動油HLの液面よりも常に上方にあり、油ポートPT3及び補給口PT5は作動油HLの液面よりも常に下方にある。
【0019】
真空ユニット12は、フィルタ41、エジェクタバルブ42、及びマフラ43からなる。圧縮エアが供給された場合には、フィルタ41によって異物が除去され、エジェクタバルブ42の内部を圧縮エアが流れる。これによってエジェクタバルブ42に真空圧が発生する。発生した真空圧は真空ポートPT1に供給され、タンク11の内部を減圧させる。
【0020】
切替えバルブ13は、オペレータの操作により機械的に動作する。つまり、オペレータの操作によって、供給ポート14に供給された圧縮エアを、真空ユニット12の側と加圧ポートPT2の側とに切り替える。圧縮エアが加圧ポートPT2に接続されると、タンク11の内部を加圧する。なお、その際にタンク11の内部の圧力がエジェクタバルブ42から抜けないようになっている。
【0021】
供給ポート14には、外部の圧縮空気源から圧縮エアが供給される。接続ホース15は、連結部16を介して油圧シリンダ3のエア抜きポートPTHに接続される。
【0022】
図2及び図3に示すように、油圧シリンダ3のカバー41には、ネジ穴42、及び弁穴43が設けられており、弁穴43は、流路44によって、図示しないシリンダ室に連通している。
【0023】
ネジ穴42には、弁座45がネジ込まれている。弁座45には、弁穴43内に装着された弁体46が圧縮バネ47によって付勢されて当接し、これにより、常時において弁穴43を外部から密封している。エア抜きを行わないときには、図2に示すように、弁座45に設けられたネジ穴45aに、キャップ48がネジ込まれて塞がれている。
【0024】
エア抜きを行うときには、図3に示すように、キャップ48を取り外し、その代わりに、ネジ穴45aに連結部16を連結する。
すなわち、連結部16は、ネジ部材51、押し部材52、及びブシュ部材53などからなっている。ネジ部材51はネジ穴45aにネジ込まれる。押し部材52は、ネジ部材51の中央部のネジ穴にネジ込まれており、且つその下端部がネジ部材51の下端面よりも下方に突出しており、下端部によって弁体46を押して流路を開放する。押し部材52には、その上端から下端に至るまで貫通穴が設けられており、弁体46が開放されることによって、接続ホース15と弁穴43及び流路44とが連通する。ブシュ部材53は接続ホース15を押し部材52に固定するためのものである。
【0025】
次に、エア抜き装置1の動作について説明する。
図4はタンク11の内部の加圧と減圧とを繰り返して行う様子を示すタイミング図である。
【0026】
図4に示すように、タンク11の内部を、一定の時間T1において減圧し、その後に一定の時間T2において加圧し、これを繰り返す。時間T1は、例えば1〜5秒程度であり、時間T2は、例えば0.5〜3秒程度である。これらの時間は、繰り返す度毎に変更してもよい。繰り返しの回数は、1〜10回、例えば3回程度である。
【0027】
タンク11内が減圧されると、油圧シリンダ3のシリンダ室内も減圧され、これによってシリンダ室内などに存在するエアの気泡が大きくなって上の方に上がってくる。その結果、作動油HLの液面から気泡が出てくる。次に、タンク11内が加圧されると、タンク11内の作動油HLが油圧シリンダ3のシリンダ室に圧送される。これを繰り返すことによってエア抜きが行われる。作動油HLの液面から気泡が出てこなくなれば、又は気泡の出る状態が落ちつけば、エア抜きは完了である。
【0028】
このように、エア抜き装置1によれば、接続ホース15を油圧シリンダ3のエア抜きポートPTHに接続し、加圧と減圧とを繰り返すことによって、従来のように作動油を垂れ流しにすることなく容易にエア抜きを行うことができる。エア抜きポートPTHからは作動油が零れないので、周囲を汚すことがない。
【0029】
上に述べた実施形態においては、オペレータが切替えバルブ13を操作することによって加圧と減圧とを切り替えたが、タイマーなどを用いて適当な時間毎に自動的に切り替わるように制御してもよい。その場合に、時間T1,2及び繰り返し回数を設定可能としておけばよい。
【0030】
また、上に述べた実施形態においては、接続ホース15をエア抜きポートPTHに接続したが、油圧シリンダ3の作動のための通常のポートに接続してもよい。その場合に、それぞれのポートに合う分岐配管材などを使用すればよい。また、油圧シリンダの回路中の配管材にティーなどの分岐配管材を設け、そこに接続ホース15を接続して油圧シリンダ及び配管中のエア抜きを行うようにしてもよい。
【0031】
上に述べた実施形態において、真空ユニット12に代えて、電動モータを用いた真空圧発生装置を用いてもよい。切替えバルブ13として、3ポジションのものを用いてもよい。圧縮エアを発生するためのコンプレッサをエア抜き装置1の内部に設置してもよい。その他、タンク11、エア抜き装置1の全体又は各部の構造、形状、寸法、材質、個数などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によると、作動油などを外部に零すことなく、したがって周囲を汚すことなく、容易にエア抜きを行うことができる。
【0033】
請求項4の発明によると、タンクへの液体の補給を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るエア抜き装置の構成を示す図である。
【図2】油圧シリンダのポートに設けられた逆止弁の構造及び動作を示す図である。
【図3】油圧シリンダのポートに設けられた逆止弁の構造及び動作を示す図である。
【図4】加圧と減圧とを繰り返して行う様子を示すタイミング図である。
【符号の説明】
1 エア抜き装置
3 油圧シリンダ(液圧機器)
11 タンク
12 真空ユニット(負圧発生手段)
14 供給ポート(加圧手段)
15 接続ホース(管路)
21 補給管路(補給路)
22 開閉弁
45 弁座(逆止弁)
46 弁体(逆止弁)
HL 作動油(液体)
PTH エア抜きポート(ポート)

Claims (4)

  1. 液圧機器のエア抜きを行うための方法であって、
    前記液圧機器に用いられる液体と同じ液体が収納されたタンクと前記液圧機器のポートとを接続し、
    前記液体の液面よりも上方において、前記タンクの内部に対して負圧による減圧と圧縮エアによる加圧とを繰り返し、これによって前記液圧機器内の減圧と前記タンクから前記液圧機器内への前記液体の圧送とを繰り返す
    ことを特徴とする液圧機器のエア抜き方法。
  2. 液圧機器のエア抜きを行うための装置であって、
    前記液圧機器に用いられる液体と同じ液体が収納されるタンクと、
    前記液体の液面よりも上方から前記タンク内に圧力を加えるための加圧手段と、
    前記液体の液面よりも上方から前記タンク内に負圧力を加えるための負圧発生手段と、
    前記加圧手段の作動と前記負圧発生手段の作動とを切り換える手段と、
    前記タンクの前記液体の液面よりも下方から前記液圧機器のポートに接続され、前記タンク内の前記負圧力を前記液圧機器に伝えるとともに、前記タンク内の前記液体を前記液圧機器に圧送する管路と、
    を有することを特徴とする液圧機器のエア抜き装置。
  3. 前記液圧機器のポートに、常時は液圧機器の内部から外部に向かう液体の流れを遮断するとともに、前記管路をポートに接続したときに自由流となる逆止弁を設けてなる、
    請求項2記載の液圧機器のエア抜き装置。
  4. 前記タンクに、液体の補給を行うための補給路及び開閉弁が設けられており、前記開閉弁を開いた状態で前記タンク内に負圧力を加えることによって、前記補給路から前記タンク内に液体が流入するように構成されている、
    請求項2又は3記載の液圧機器のエア抜き装置。
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