JP3559461B2 - 骨修復材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、老齢、疾病、事故などによって失われた骨欠損部を再建するために充填される骨修復材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記骨修復材として、リン酸カルシウム系材料の顆粒が用いられてきた。この顆粒は骨欠損部に顆粒状態のまま充填されるもので、顆粒周囲に新生骨が早期に増生し、この新生骨が各顆粒を包含して、上記骨欠損部を充填修復することを期待するものであった。
【0003】
【従来技術の課題】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。すなわち、顆粒状態のまま充填されるのでポケット形状をなす骨欠損部以外には使用が極めて困難である。また、欠損部への固定が困難で、充填、縫合後に湿潤する血液、生体液による流出が起こり易く、この流出により、欠損部が軟組織に充満されてしまったり、流出した顆粒により、二次的な炎症を励起する恐れがある。さらに、骨形成が進行したとしても、顆粒が多量に存在することにより新生骨の占有密度が小さく構造的に脆弱な状態である。また骨修復後のインプラント埋入を考える場合、ハイドロキシアパタイト(以下、HAPと略称する)の存在や骨質の脆弱性の為、ドリル等による後加工は実質上不可能であるという不具合があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の骨修復材は、CMキチンとリン酸カルシウム系材料顆粒とを混合した多孔性ブロック体からなり、表面の平均孔径が3〜150μmであるとともに、前記多孔性ブロック体のXYZ3軸平面について撮影されたSEM写真における前記XYZ3軸それぞれの線と重なる単位長さあたりの孔の数をNcとしたときに、Y軸、Z軸の1.5/Ncに対するX軸の1.5/Ncの比が1.1未満であることを特徴とする。
【0005】
また、上記多孔性ブロック体は、一方向プレスによって1/2の体積に圧縮した時の初期圧縮強度が0.2〜8.0MPaであることが好ましい。さらに、表面と中心部の上記初期強度の差が20%以内であること、すなわち表面の初期圧縮強度値に対する中心部の初期圧縮強度値の比が80〜100%であることが好ましい。
【0006】
このような本発明の骨修復材は以下のような手順で作製することができる。
【0007】
まず、CMキチン水溶液を調整しこれを凍結し粉砕して得た顆粒と、別途分級しておいたHAP顆粒とを混合して金型に充填し、プレス成形する。その後、一定の成形圧で保持し、CMキチン凍結体顆粒同士を溶着させる。さらに、凍結乾燥し、真空中で熱処理を行う。このようにして得た成形体に対し、低い濃度のCMキチン水溶液で表面をコーティングする。そして、再度の凍結乾燥と真空中での熱処理を行う。
【0008】
以上のような方法で本発明の骨修復材を作製することができ、本発明では、特に低い濃度のCMキチン水溶液で表面にコーティングした後、再度の凍結乾燥と真空中での熱処理を行うことを特徴とする。
【0009】
【作用】
上記本発明の骨修復材は、成形体中のCMキチン繊維に配向が見られない為、どの方向でも一定の強度、を有する。そして配向がないので、欠損部への充填時に方向を気にせず欠損部にフィットさせても構わない。
【0010】
また、ほぼ一様な孔サイズによる多孔体なので、体液の浸潤、細胞の進入がどの面からも均等に起こる。
【0011】
また、HAP顆粒が均一に分散しているため、CMキチンの繊維を足場にして成長してきた骨芽細胞により欠損部のあらゆる部位からHAPを核として骨形成を促進する。さらに、CMキチンの繊維に配向がないので、成形体をはさみやメスで容易に加工できる。
【0012】
また、本発明の骨修復材によれば、付加的に行うコーティング処理により、メス等によるトリミングを行っても型くずれやHAPの脱落が生じにくい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0014】
本発明の骨修復材は、CMキチンとリン酸カルシウム系材料顆粒とを混合した多孔性ブロック体からなり、表面の平均孔径が3〜150μm であるとともに、中心部位における孔の平均短径と平均長径の差が20μm 以下であることを特徴とする。さらに、このように構成される多孔性ブロック体は表面と中心部の平均孔径の差が20μm 以下であることが好ましい。
【0015】
また、上記多孔性ブロック体は、一方向プレスによって1/2の体積に圧縮した時の初期強度が0.2〜8.0MPaであることが好ましい。さらに、表面と中心部の上記初期強度の差が20%以内であることが好ましい。
【0016】
このような本発明の骨修復材の製造方法を説明するに、まず、3〜20wt%の濃度でCMキチン水溶液を調整しこれを−40℃以下で凍結する。また別途、HAP顆粒を50〜300μm に分級しておく。これら凍結したものを粉砕して得た顆粒と分級したHAP顆粒を1/1〜1/20=HAP重量/CMキチン重量で混合し、混合物を金型に充填し、プレス成形する。その後、一定の成形圧で60分以内保持し、CMキチン凍結体顆粒同士を溶着させる。さらに、−100〜−20℃で凍結乾燥し、真空中で例えば120〜160℃×24hの熱処理を行う。
【0017】
このようにして得た成形体に対し、1〜5wt%の低い濃度のCMキチン水溶液で表面をコーティングする。そして、再度−100〜−20℃で凍結乾燥し、最後に、真空中で120〜160℃×24hの熱処理を行う。
【0018】
なお、上記製造方法において各条件を上記の範囲内とするのが好ましい理由は以下のとおりである。
【0019】
最初に調整するCMキチンの濃度が3wt%未満の場合、成形体の強度が著しく小さくなり取り扱い困難となり、他方20wt%を越えると水溶液になり難くなってしまう。
【0020】
HAP顆粒の分級範囲の下限が50μm 未満の場合、マクロファージ等の細胞に呑食さやすく、他方、300μm を越えるとHAPの分布が不均一となる傾向がある。
【0021】
前記HAP重量/CMキチン重量が1/1未満の場合、HAP顆粒の密度が大きくなり過ぎ、骨新生のためのスペースが不十分となり、他方、1/20より大きくなるとHAP顆粒が少なすぎて、HAPの石灰化の核としての効果が得られない。
【0022】
金型のプレス成形圧が0.1kgf/ mm 2 未満の場合、成形体の強度が著しく小さくなり取り扱い困難となり、他方8.0kgf/ mm 2 より大きい場合、成形時の圧力伝達が悪く、クラックやHAPの破折が起こり易くなる恐れがある。
【0023】
成形体の凍結温度が−20℃より高い場合、CMキチンの繊維に配向が発生する恐れがあり、他方−100℃より低い場合、熱膨張差によるクラック発生の恐れがある。
【0024】
コーティング用のCMキチンの濃度が1wt%未満の場合、コーティングの効果が現れ難く、他方5wt%より高くても内部までの含浸が少なくなるのでコーティングの効果が現れ難い傾向となる。
【0025】
真空熱処理温度が120℃未満の場合、骨が再生される前の早期に分解吸収されるため、軟組織の介入等により良好な骨修復が得られない恐れがある。
【0026】
他方、160℃より高温の場合、溶解が遅延され、分解吸収が遅すぎるので、骨再生の妨げとなる恐れがある。
【0027】
また、成形体の孔径に関して上記のように限定した理由は以下の通りである。
【0028】
すなわち、表面の平均孔径が3μm 未満の場合、内部への細胞の進入が遅れ、骨再生の妨げとなり、他方、150μm を越える場合、強度的に脆く、欠損部への挿入時に崩壊する可能性が高くなる恐れがある。
【0029】
次に、中心部位の孔の平均短径と平均長径の差が20μm より大きい場合、成形体の異方性が強すぎるため、メスでのトリミング時等に切断方向より型くずれを引き起こしてしまう恐れがある。
【0030】
そして、表面と中心部の平均孔径の差が20μm より大きい場合、細胞の進入が不均一となり、骨修復が不完全になる部分が発生してしまう恐れがある。
【0031】
次に、成形体の孔径の測定方法について説明する。
【0032】
まず、成形体内の任意平面をSEMにて撮影し、そのSEM写真を市販のパーソナルコンピューターを用い、画像修正、回析を行うソフトにより、平均孔径を自動的に求める。また、中心部の孔の平均長径と平均短径についても同様に求める。
【0033】
また、成形体の特性として孔の方向性の偏り(異方性)を次のような方法で測定することができる。
【0034】
まず成形体のXYZ3軸平面について上記の如くSEM写真を撮影する。3軸それぞれの線と重なる単位長さあたりの孔の数Ncを算出し、平均セル直径1.5/Ncを求める。この平均セル直径につき、Y軸、Z軸に対するX軸の平均直径の比を求め、この比が1に近づくほど前記異方性が小さく、1から離れるほど異方性が大きいと判断することができる。因みに、上記比が1.2の場合、2つの軸方向での剛性(ヤング率)の比が2以上になる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。まず、各実施例品と比較例品を以下の方法で作製した。
【0036】
作製方法
(実施例品1)5wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0037】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0038】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−78℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施す。
【0039】
得られた成形体を減圧下で3wt%CMキチン水溶液で含浸コーティングを行い、再度−78℃で凍結後、凍結乾燥し、140℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0040】
(実施例品2)10wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0041】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0042】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−78℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施す。
【0043】
得られた成形体を減圧下で1wt%CMキチン水溶液で含浸コーティングを行い、再度−78℃で凍結後、凍結乾燥し、140℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0044】
(実施例品3)3wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0045】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0046】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−40℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施す。
【0047】
得られた成形体を減圧下で1wt%CMキチン水溶液で含浸コーティングを行い、再度−40℃で凍結後、凍結乾燥し、140℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0048】
(比較例品1)10wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0049】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0050】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−78℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施す。
【0051】
得られた成形体を減圧下で5wt%CMキチン水溶液で含浸コーティングを行い、再度−78℃で凍結後、凍結乾燥し、140℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0052】
(比較例品2)1wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0053】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0054】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−20℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0055】
(比較例品3)1wt%CMキチン水溶液を調整し、液体窒素中に滴下し、液体窒素中の凍結顆粒体を冷却下で粉砕して細粉にする。
【0056】
この細粉にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填し、プレスする。
【0057】
その後、4kg/mm2 の成形圧で保持して成形し、−78℃で凍結後、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施す。
【0058】
得られた成形体を減圧下で3wt%CMキチン水溶液で含浸コーティングを行い、再度−78℃で凍結後、凍結乾燥し、140℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0059】
(比較例品4)5wt%CMキチン水溶液を調整し、その溶液にHAP(粒径63〜150μm )を1/5の重量比で混合し、混合物を金型に充填した状態で液体窒素中に入れて瞬間凍結した。そして、凍結乾燥し、160℃×24hrの熱処理を施し多孔性ブロック体を得た。
【0060】
特性評価
これら実施例品と比較例品について表面と中心部の各平均孔径、および中心部の孔の平均長径と平均短径の差、前記構造異方性、前記成形体の圧縮強度(X軸、Y軸、Z軸)、中心部分のみの圧縮強度(X軸、Y軸、Z軸の平均)を計測した。また、メスによるトリミングの際の操作性についても評価した。
【0061】
次に、実施例品と比較例品の成形体をテナガザル脛骨の欠損部に埋入した。4週間後に埋入部の標本を作製し、生物学的評価を行った。
【0062】
これらの特性評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1から明らかなように、実施例品はいずれも表面の平均孔径が5〜150μm の範囲にあり、中心部の孔の平均長径と平均短径の差が20μm 未満、且つ構造異方性が1.1未満であるとともに、成形体の全体としての圧縮強度(1/2体積に圧縮した時の初期圧縮強度)の各X軸、Y軸、Z軸の差が20%以下であった。さらに、多孔性ブロック体表面の初期圧縮強度値に対する中心部の初期圧縮強度値の比が80〜100%であった。そして、これら実施例品はトリミングの操作性が良好で、また、生物学的評価では、成形体が吸収されるのとHAPの周りに骨形成が起こるのが同期的に進み、新生骨形成の足場として有効に機能していることが確認された。
【0065】
これに対して、比較例1は表面の平均孔径が2μm と小さく、前記構造異方性が1.5と大きく、成形体の圧縮強度(1/2体積に圧縮した時の初期圧縮強度)の各X軸、Y軸、Z軸の差が20%より大きく、さらに多孔性ブロック体表面の初期圧縮強度値に対する中心部の初期圧縮強度値の比が80〜100%の範囲外であった。そして、トリミングの操作性は良かったが、生体内吸収性が悪く、骨形成が不十分となってしまった。
【0066】
比較例2は、表面の平均孔径が150μm より大きく、トリミングの際に型くずれが起こりやすかった。
比較例3は、表面と中心部の各平均孔径の差が50μm もあって且つ、前記構造異方性が1.5と大きく、成形体の圧縮強度の各X軸、Y軸、Z軸の差が20%より大きかった。また、多孔性ブロック体表面の初期圧縮強度値に対する中心部の初期圧縮強度値の比が80〜100%の範囲外であった。さらに、強度が小さくメスによるトリミングが困難であった。
【0067】
比較例4は、表面と中心部の各平均孔径の差が80μm 以上もあって且つ、前記構造異方性が3.6よりも大きく、成形体の圧縮強度の各X軸、Y軸、Z軸の差が20%より大きかった。また、多孔性ブロック体表面の初期圧縮強度値に対する中心部の初期圧縮強度値の比が80〜100%の範囲外であった。そして、強度は良好であったが、メスによるトリミングが困難であり、また、生物学的評価においても、HAPの集積という不具合があった。
【0068】
【発明の効果】
叙上のように本発明によれば、上記本発明の骨修復材は、成形体中のCMキチン繊維に配向が見られず、HAP顆粒が均一に分散し、また、孔の方向性もほぼ一様であり、どの方向でも一定の強度を有する。また、体液の浸潤、細胞の進入がどの面からも均等に起こる。したがって、欠損部への充填時に方向を気にせず欠損部にフィットさせることができるとともに、理想的な骨増生により良好な骨修復が可能となった。
【0069】
なお、本発明によれば、付加的に行うコーティング処理により、メス等によるトリミングを行っても型くずれやHAPの脱落が生じにくい。
Claims (1)
- CMキチンとリン酸カルシウム系材料顆粒とを混合した多孔性ブロック体からなり、表面の平均孔径が3〜150μmであるとともに、前記多孔性ブロック体のXYZ3軸平面について撮影されたSEM写真における前記XYZ3軸それぞれの線と重なる単位長さあたりの孔の数をNcとしたときに、Y軸、Z軸の1.5/Ncに対するX軸の1.5/Ncの比が1.1未満であることを特徴とする骨修復材。
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