JP3559270B2 - 光ファイバ母材の製造方法、並びに該製造方法により製造された光ファイバ母材及び光ファイバ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスパイプ内にガラスロッドを挿入し、上記ガラスパイプ内を減圧しながら両者を加熱することで、上記ガラスパイプとガラスロッドとの一体化を行う光ファイバ母材の製造方法に関し、特に波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下であるシングルモード光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法、並びに該製造方法により製造された光ファイバ母材及び光ファイバに関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバは、光ファイバ母材を線引きすることによって製造され、この光ファイバ母材の製造方法としては、VAD(Vapor−phase Axial Deposition)法、OVD(Outside Vapor−phase Deposition)法、及びロッドインチューブ法等が知られている。
【0003】
ところで、光ファイバの生産性の観点から、光ファイバ母材を大型化することが求められており、こうした大型の光ファイバ母材を製造する方法として、コア部とクラッド部とからなるガラスロッド(一次母材)の外周囲を、さらにクラッド部で覆うようにした製造方法が知られている。
【0004】
具体的には、VAD法やOVD法(以下、これらを総称してスート法ともいう)によって作製したガラスロッド(コア部とクラッド部とを有する一次母材)の外周囲に、さらにスート法によってスート(ガラス微粒子)を堆積させ、これを透明化させることで大型の光ファイバ母材を製造する方法が知られている。
【0005】
また、これとは異なり、上記スート法によって作製したガラスロッドをガラスパイプに内挿し、このガラスパイプを縮径させてこのガラスロッドとガラスパイプとを一体化させることにより、大型の光ファイバ母材を製造する方法も知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで近年、波長の異なる複数の信号光を1本の光ファイバ(シングルモード光ファイバ)で同時に伝送する波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)伝送方式が注目されている。このWDM伝送方式で主に用いられる信号波長は1550nm帯であるが、これは、図5に示すように、この波長帯域は、光ファイバの損失値が最も小さいことが理由の1つである。
【0007】
ここで、同図に示すように、光ファイバの波長損失特性は、1385nm帯において極めて大きいピークを有する。これは、光ファイバ中に残留するOH−イオンによる吸収損失が主な原因であり、この吸収損失を無くせば、WDM伝送システムで利用可能な波長帯域の拡大が図れ、そのことにより、WDM伝送システムにおける伝送容量を大幅に増大させることができると考えられる。
【0008】
そのためには、光ファイバ中に残留するOH−イオンの濃度を低下させることが必要であり、ひいてはOH−イオンの濃度が低濃度である光ファイバ母材を製造することが必要である。
【0009】
こうしたOH−イオンの濃度が低下した光ファイバ母材を製造するには、主として、以下の2つの方法が考えられる。
【0010】
1つは、上述したように、スート法による光ファイバ母材の製造方法であり、スート法によって、OH−イオンの濃度が所定値以下の無水ガラス体(一次母材)を作製すると共に、これを延伸して無水ガラスロッドとし、この延伸した無水ガラスロッドの外周囲に、さらにスート法によってスートを堆積させる方法である。この方法では、無水ガラスロッドに堆積させたスートを透明化するときに、そのスートの収縮によって界面ずれが発生することを防止するため、スートを堆積させるときに、そのスートと無水ガラスロッドとを融着させるべく、無水ガラスロッドの表面を加熱する(例えば800℃程度)必要がある。こうした加熱は、スートの堆積と同時に行うことから酸水素火炎により行うことになるため、無水ガラスロッドの外表面にOH−イオンが混入することが避けられず、これにより、光ファイバ母材のOH−イオンの濃度が増大してしまう。
【0011】
そこで、無水ガラス体(無水ガラスロッド)として、コア部に対するクラッド部の外径比であるC/Cの大きいもの(例えばC/C≧7)を作製することにより、酸水素火炎による加熱によって、この無水ガラスロッドの外表面にOH−イオンが混入したとしても、そのOH−イオンがコア部から離れるようにし、このことにより、光ファイバ母材におけるコア部近傍のOH−イオンの濃度を低濃度に保つことが考えられる。
【0012】
しかしながらこの場合は、光ファイバ母材の生産性が低下してしまうこととなる。つまり、作製する無水ガラス体の外径は、製造装置に大きさにより制限されることから、無水ガラス体のC/Cを大きくするにはコア部の外径を小さくしなければならない。このため、無水ガラス体の製造装置で生産するコア部が著しく少なくなってコア部の生産性が低下してしまう。コア部の生産性が低下すると、相対的にクラッド部の生産が過剰になり、結果として製造装置の稼働率が低下して、光ファイバ母材の生産性が低下する。
【0013】
OH−イオンの濃度が低下した光ファイバ母材を製造する2つ目の方法は、例えば特開平11−171575号公報に記載されているように、ロッドインチューブ法による光ファイバ母材の製造方法であり、スート法によって無水ガラス体を作製すると共に、これを延伸して無水ガラスロッドとし、この延伸した無水ガラスロッドの外周囲に、ガラスパイプを被覆する方法である。この方法では、無水ガラスロッドにガラスパイプを被覆する際に、OH−イオンが混入することがなく、このため、無水ガラス体のC/Cを大きくする必要がない。従って、OH−イオンの濃度が低下した光ファイバ母材を製造するには、その生産性の観点からは、スート法よりも、ロッドインチューブ法が適している。
【0014】
ところで、ロッドインチューブ法においても、作製した無水ガラス体を加熱し延伸させて無水ガラスロッドとするが、その延伸手法として、第1に、無水ガラス体を酸水素火炎により加熱して延伸することが考えられる。ところが、このように酸水素火炎を用いた場合には、上述したように、無水ガラス体(無水ガラスロッド)の外表面にOH−イオンが混入し、これにより、光ファイバ母材のOH−イオンの濃度が増大してしまう。そこで、この場合は、延伸した無水ガラスロッドの外表面部分(OH−イオンの混入した部分)を、プラズマ火炎研磨や、機械的研削により除去した上で、その無水ガラスロッドとガラスパイプと一体化させる必要がある。こうすることで、無水ガラスロッドのOH−イオンの濃度を低下させることができるが、火炎研磨又は研削工程が新たに必要となり、工程数の増加により製造コストが増大してしまうこととなる。
【0015】
また、第2の手法として、OH−イオンの発生しないプラズマ火炎によって無水ガラス体を加熱し、これを延伸することも考えられるが、この場合は、酸水素火炎を採用した場合に比べて、製造コストが大幅に増大してしまうようになる。
【0016】
さらに、第3の手法として、無水ガラス体の加熱を電気炉を用いて行うことが考えられる。この場合は、無水ガラス体をOH−イオンを混入させることなく延伸して無水ガラスロッドにすることができると共に、プラズマ火炎を用いた場合よりも低コストとなるため、無水ガラス体の延伸手法としては最も優れている。
【0017】
ところが、延伸した無水ガラスロッドの外表面には、その製造過程において傷が生じていたり、異物が付着していたりする。電気炉としてカーボン抵抗加熱式の電気炉を用いた場合には、その加熱の際に灰等がガラスロッドの外表面に付着し易い。こうした傷や異物をそのままにしておくと、無水ガラスロッドとガラスパイプとを一体化したときに、そのロッドとパイプとの界面において気泡等が発生してしまい、その結果、光ファイバの損失増加を招いてしまう。
【0018】
また、スート法によって無水ガラス体を作製した場合は、その外表面部分のOH−イオン濃度が比較的高くなる場合があることが実験により判明した。これは、次のような理由によるものと考えられる。つまり、スート法では、堆積させたスートを、先ず、約1200℃の加熱炉により、ヘリウムガス及び塩素ガス雰囲気中で脱水処理する脱水工程を行った後に、約1500℃以上の高温加熱炉により、ヘリウムガス雰囲気中で透明ガラス化する透明化工程を行って無水ガラス体を作製する。ここで、脱水工程において温度が低いと塩素ガスが十分に活性化せず、この場合は、脱水反応が不十分となってしまう。一方で、この脱水工程では、雰囲気ガスが塩素ガスだけでなく、ガラスの透明化を目的としてヘリウムガスを混合しているため、このヘリウムガスがスート表面を冷却する。これにより、スート表面部分は、脱水が不十分になる虞があり、その結果、こうしてスート法により作製した無水ガラス体は、その外表面部分のOH−イオン濃度が高くなる場合があると考えられる。
【0019】
このように、無水ガラス体を延伸した無水ガラスロッドは、その外表面に傷や異物が存在していたり、その外表面部分のOH−イオン濃度が高かったりすることから、より低損失の光ファイバを製造するには、その無水ガラスロッドの外表面を研磨・研削する必要がある。しなしながら、酸水素火炎を用いた研磨は、OH−イオンの混入を防止する観点から採用することができず、プラズマ火炎を用いた研磨は製造コストの観点から好ましくない。
【0020】
従って、OH−イオンの濃度が低下した光ファイバ母材を製造するには、製造コストが大幅に増大してしまうという不都合が生じることとなる。
【0021】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、波長1385nm帯において低損失なシングルモード光ファイバを製造するための光ファイバ母材を安価に製造することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明は、波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下であるシングルモード光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法に係る。
【0023】
そして、第1の発明に係る光ファイバ母材の製造方法では、上記光ファイバにおいてコアとなるコア部と、該光ファイバにおいてクラッドの一部となるクラッド部とからなりかつ、その外表面部分以外の部分におけるOH−イオンの濃度が2ppb以下である無水ガラス体を作製するガラス体作製工程と、上記ガラス体作製工程において作製した無水ガラス体を加熱・延伸して無水ガラスロッドとするロッド延伸工程と、上記ロッド延伸工程において延伸した無水ガラスロッドを、ガラスパイプに内挿すると共に、該ガラスパイプ内を減圧しながら、該ガラスパイプ及び無水ガラスロッドの双方を、その一端から他端に向かって軸方向に順次加熱することで上記ガラスパイプと無水ガラスロッドとを順次一体化する一体化工程とを含み、上記ロッド延伸工程では、上記無水ガラス体を電気炉により加熱して該無水ガラス体の外表面部分を昇華させて除去しながら、上記無水ガラス体を延伸するようにする。
【0024】
この構成によると、ガラス体作製工程では、コア部とクラッド部とからなる無水ガラス体であって、その外表面部分以外の部分におけるOH−イオンの濃度が2ppb以下である無水ガラス体を作製する。例えばスート法により作製すればよい。
【0025】
そして、ロッド延伸工程では、作製した無水ガラス体を加熱して延伸する。このとき、無水ガラスロッドは電気炉により加熱する。ここで、電気炉は、高周波加熱式や抵抗加熱式の電気炉とすればよい。こうすることで、加熱の際にOH−イオンが発生せず、これにより、この無水ガラスロッドの表面にOH−イオンが混入することがない。
【0026】
また、このロッド延伸工程では、無水ガラス体の外表面部分を昇華させて除去しながら、上記無水ガラス体を延伸する。このため、無水ガラス体の外表面に発生した傷や、その外表面に付着した異物は、その外表面部分と共に除去される。さらに、スート法により作製した無水ガラス体は、その外表面部分のOH−イオン濃度が比較的高くなる場合があるが、そのOH−イオン濃度の高い外表面部分が除去される。その結果、OH−イオンの濃度が低濃度の無水ガラスロッドであって、表面が滑らかな無水ガラスロッドが得られる。
【0027】
こうして延伸した無水ガラスロッドをガラスパイプに内挿し、ガラスパイプ内を減圧しながらパイプ及びロッド加熱して、このガラスパイプと無水ガラスロッドとを一体化する一体化工程を行う。このことにより、OH−イオンの濃度が低濃度の光ファイバ母材であって、内部に気泡が発生しない光ファイバ母材が製造される。その結果、この光ファイバ母材を線引きすることによって、OH−イオンによる吸収損失の小さい、具体的には波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下である光ファイバが得られる。
【0028】
このように、本発明では、OH−イオンの濃度が低い無水ガラス体を延伸する際に、OH−イオンの発生しない電気炉を用いて、無水ガラス体の外表面部分を除去しながら延伸を行うことにより、無水ガラス体の延伸と、その表面研磨(研削)とを1つの工程で行うことができる。このため、低損失の光ファイバを製造するための光ファイバ母材を、低コストで製造することが可能になる。
【0029】
ここで、上記ロッド延伸工程では、電気炉による無水ガラスロッドの加熱温度を、2100℃以上2300℃以下に設定すればよい。
【0030】
つまり、無水ガラス体を延伸するには、その加熱温度を1800℃程度に設定すればよいが、加熱温度を2100℃以上とすることによって、無水ガラス体の外表面部分を昇華させて除去しつつ、これを延伸することが可能になる。こうして、無水ガラスロッドの外表面部分を研磨・研削したことと同様の作用が得られる。また、加熱温度を余りに高くしすぎると、電気炉の寿命が短くなることから、加熱温度は2300℃以下とすることが好ましい。尚、無水ガラス体の加熱温度は、2200℃〜2250℃とするのがさらに好ましく、こうすることで、無水ガラス体の外表面の傷や異物を確実になくすことが可能になると共に、電気炉の長寿命化も図られる。
【0031】
また、ロッド延伸工程では、無水ガラス体を加熱・延伸することにより、外表面の凹凸が0.5μmよりも小さい無水ガラスロッドとする。
【0032】
上述したように、ロッド延伸工程では、無水ガラス体の外表面が研磨・研削されることになるため、その外表面は滑らかになり、外表面に0.5μm以上の凹凸はほとんど含まれない。
【0033】
さらに、ガラス体作製工程では、コア部の外径に対するクラッド部の外径の比が3.5以上4.5以下に設定された無水ガラス体をVAD法により作製することが好ましい。
【0034】
すなわち、本発明に係る光ファイバ母材の製造方法では、いわゆるロッドインチューブ法により光ファイバ母材を製造する上に、無水ガラス体の延伸の際等に、この無水ガラス体の外表面にOH−イオンが混入しない。このため、OH−イオンが混入することを考慮して、無水ガラス体におけるコア部に対するクラッド部の外径比(C/C)を大きくする必要がない。つまり、無水ガラス体のC/Cは比較的小さいものでよい。こうして、無水ガラス体のC/Cを小さくすることにより、VAD法を採用しても光ファイバ母材の生産性は低下しない。
【0035】
また、ガラスパイプは、OH−イオンの濃度が1ppm以下に設定されたものとすればよい。
【0036】
第2の発明は光ファイバ母材に係り、この光ファイバ母材は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造されることで、コア部のOH-イオンの濃度が2ppb以下である光ファイバ母材である。この光ファイバ母材を線引きすることによって、波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下である光ファイバが製造される。
【0037】
また、上記光ファイバ母材は、軸方向長さ1m当りの気泡の数が、5以下であることが好ましい。光ファイバ母材の気泡は、光ファイバ中において、散乱損失を増大させる気泡となるためである。
【0038】
第3の発明は光ファイバに係り、この光ファイバは、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造された光ファイバ母材を線引きした光ファイバである。この光ファイバは、波長1385nm帯の損失値が低く(0.4dB/km以下)、その損失値が波長1310nm帯の損失値と同じか、又はそれよりも低くなる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、無水ガラス体を電気炉により加熱してその無水ガラス体の外表面部分を昇華させて除去しながら、無水ガラス体を延伸するため、工程数が低減し、波長1385nm帯において低損失な光ファイバを製造するための光ファイバ母材を安価に製造することができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。本発明に係る光ファイバ母材の製造方法は、ロッドインチューブ法によるものであり、コア部11aとクラッド部11bとからなる無水ガラス体11’(図1参照)を作製するガラス体作製工程と、この無水ガラス体11’を延伸して無水ガラスロッド11とするロッド延伸工程と、延伸した無水ガラスロッド11をガラスパイプ12と一体化させる一体化工程とからなる。これにより、コア部11aと、このコア部11aの周囲を覆うクラッド部13とからなる光ファイバ母材1が製造される(図4参照)。
【0041】
(ガラス体作製工程、パイプ作製工程)
ガラス体作製工程では、光ファイバにおいてコアとなるコア部11aと、光ファイバにおいてクラッドの一部となるクラッド部11bとからなり、その外表面部分以外の部分における(コア部11a近傍における)OH−イオンの濃度が所定値以下、具体的には濃度が2ppb以下である無水ガラス体11’を作製する。
【0042】
具体的には、VAD法によってガラス微粒子を堆積させたガラス微粒子堆積体を作製し、これを脱水・焼結することにより、無水ガラス体11’を作製する。この無水ガラス体11’の作製は、通常行われている方法により行えばよい。具体的には、堆積させたスートを、先ず、約1200℃の加熱炉により、ヘリウムガス及び塩素ガス雰囲気中で脱水処理する脱水工程を行った後に、約1500℃以上の高温加熱炉により、ヘリウムガス雰囲気中で透明ガラス化する透明化工程を行って無水ガラス体11’を作製する。
【0043】
但し、上述したように、無水ガラス体11’の外表面部分以外の部分におけるOH−イオンの濃度は2ppb以下となるようにする。また、上記無水ガラス体11’のC/C(コア部11aの外径dに対するクラッド部11bの外径Dの比D/d(図4参照))は、3.5〜4.5となるようにする。このC/Cは、光ファイバ母材1(無水ガラス体11’)の生産性の観点からは、4程度が好ましい。
【0044】
尚、この無水ガラス体11’は、OVD法によって作製するようにしてもよい。
【0045】
また、無水ガラスロッド11と一体化させるガラスパイプ12は、例えばOVD法等によって作製するようにすればよい。但し、このガラスパイプ12のOH−イオン濃度は、1ppm以下となるようにする。
【0046】
(ロッド延伸工程)
図1は、ガラス体作製工程において作製した無水ガラス体11’を延伸させて無水ガラスロッド11とする延伸装置Aを示している。この延伸装置Aにセットする無水ガラス体11’には、その両端部に、この無水ガラス体11’と同軸となるようにそれぞれ補助パイプ21,22が取り付けられる。
【0047】
そして、上記延伸装置Aは、それぞれチャック23a,24aを有する上側把持部23と、下側把持部24とを備えており、この上側把持部23と下側把持部24とによって、無水ガラス体11’を、Z方向(同図における上下方向)に延びて配設するように構成されている。すなわち、上側把持部23のチャック23aは、上記無水ガラス体11’の上端に取り付けられた補助パイプ21における上端部分を把持する一方、下側把持部24のチャック24aは、無水ガラス体11’の下端に取り付けられた補助パイプ22における下端部分を把持する。
【0048】
上記上側把持部23は、無水ガラス体11’(無水ガラスロッド11)を挟んだ両側位置に、Z方向に延びて配設された一対のガイド25,25に案内されて、第1移動機構31によってZ方向に移動するように構成されている。
【0049】
上記第1移動機構31は、Z方向に延びて配設されかつ、上記上側把持部23に対して螺合するボールねじ31aと、このボールねじ31aの上端部分に取り付けられた従動プーリ31bと、第1モータ31cによって駆動される駆動プーリ31dと、この従動プーリ31bと駆動プーリ31dとの間に巻き掛けられたベルト31eとから構成されている。そして、上記第1モータ31cによって駆動プーリ31dが駆動されると、ベルト31eを介して従動プーリ31bが回転し、これにより、ボールねじ31aが回転することによって、上側把持部23がガイド25,25に案内されてZ方向に移動する(無水ガラス体11’の延伸を行う場合には、下方に移動する)ようになっている。
【0050】
一方、上記下側把持部24は、上記一対のガイド25,25に案内されて第2移動機構32によってZ方向に移動可能に構成されている。
【0051】
上記第2移動機構32は、第1移動機構31と同様に、Z方向に延びて配設されかつ、この下側把持部24に対して螺合するボールねじ32aと、このボールねじ32aの下端部分に取り付けられた従動プーリ32bと、第2モータ32cによって駆動される駆動プーリ32dと、この従動プーリ32bと駆動プーリ32dとの間に巻き掛けられたベルト32eとから構成されている。そして、上記第2モータ32cによって駆動プーリ32dが駆動されることによって、ベルト32eを介して従動プーリ32b及びボールねじ32aが回転し、これにより、下側把持部24がガイド25,25に案内されてZ方向に移動する(無水ガラス体11’の延伸を行う場合には、下方に移動する)ようになっている。
【0052】
このように、延伸装置Aにおいては、上側把持部23は、第1モータ31cによって移動する一方、下側把持部24は、第2モータ32cによって移動するように構成されているため、これら第1及び第2モータ31c,32cの回転速度を互いに異ならせることによって、上側把持部23の移動速度と、下側把持部24の移動速度とを互いに異ならせることが可能である(同図の白抜きの矢印参照)。つまり、下側把持部24の移動速度を、上側把持部23の移動速度よりも高くすることによって、無水ガラス体11’を下方に引っ張るようにし、これにより、上記無水ガラス体11’を延伸するようにしている。
【0053】
また、上記上側及び下側把持部23,24のチャック23a,24aは、Z方向に延びる軸(Z軸)回りに回転可能に構成されており、これら各チャック23a,24aはそれぞれ、第1回転機構71及び第2回転機構72によってZ軸回りに回転するように構成されている(同図の矢印参照)。
【0054】
上記第1回転機構71は、上記上側把持部23のチャック23aと一体化された従動プーリ71aと、第3モータ71bによって駆動される駆動プーリ71cと、この従動プーリ71aと駆動プーリ71cとの間に巻き掛けられたベルト71dとから構成されている。これにより、上記第3モータ71bによって駆動プーリ71cが駆動されると、ベルト71d及び従動プーリ71aを介して上側把持部23のチャック23aがZ軸回りに回転するようになっている。
【0055】
一方、上記第2回転機構72も上記第1回転機構71と同様に、従動プーリ72aと、第4モータ72bと、駆動プーリ72cと、ベルト72dとから構成されており、第4モータ73bによって駆動プーリ72cが駆動されることによって、ベルト72d及び従動プーリ72aを介して下側把持部24のチャック24aがZ軸回りに回転するようになっている。
【0056】
ここで、上記第1及び第2回転機構71,72は、各チャック23a,24aを互いに同じ回転数で回転させるように構成されている。
【0057】
そして、上記延伸装置Aは、無水ガラス体11’を加熱する電気炉4を備えており、この電気炉4は、上記上側把持部23と下側把持部24との中間位置に配設されている。この電気炉4は、図2に示すように、その中心軸がZ方向に延びるような向きに配設された略リング状のカーボンヒータ41と、このカーボンヒータ41に内嵌されてZ方向に延びるカーボン炉心管42と、このカーボン炉心管42の外周囲を囲むように配設された断熱材43と、これらカーボンヒータ41、カーボン炉心管42及び断熱材43を収容するケース45とから構成されている。上記ケース45には、その上端部及び下端部に、無水ガラス体11’が通過可能な開口が形成されている。
【0058】
上記カーボン炉心管42は、Z方向に延びて配設された無水ガラス体11’と略同軸となる位置に配設されている。また、このカーボン炉心管42は、無水ガラス体11’の外径よりも大きい内径を有しており、これにより、上記無水ガラス体11’はその軸方向に上記電気炉4内を通過可能にされている。こうして、上記無水ガラス体11’は、その下端から上端に向かって順次、カーボンヒータ41によって加熱されるように構成されている。
【0059】
尚、電気炉4には、カーボンヒータ41の近傍に配設された赤外線温度計44を備えており、無水ガラス体11’の延伸の最中には、この温度計44によってカーボンヒータ41の加熱温度を検出し、これをモニタするようにしている。尚、上記電気炉4は、高周波加熱式のヒータを有するものとしてもよい。
【0060】
次に、この延伸装置1による無水ガラス体11’の延伸方法について説明すると、先ず、無水ガラス体11’の上側に取り付けられた補助パイプ21の上端部分を、電気炉4の上方位置において、上側把持部23のチャックによって把持すると共に、無水ガラス体11’の下側に取り付けられた補助パイプ22の下側部分を、電気炉4の下方位置において、下側把持部24のチャックによって把持する。これにより上記無水ガラス体11’(補助パイプ22)は、電気炉4内を貫通した状態で、Z方向に延びるように配設される。
【0061】
この状態で、上記第1及び第2移動機構31,32の第1及び第2モータ31c,32cをそれぞれ所定の回転数で駆動させ、これにより、上記無水ガラス体11’を下方に移動させる。このときには、第1及び第2回転機構71,72の第3及び第4モータ71b,72bをそれぞれ所定の回転数で駆動させることにより、無水ガラス体11’を、Z軸回りに回転させる。こうして、上記無水ガラス体11’を回転させながら、その下端から上端に向かって順次電気炉4により加熱する。このとき、下側把持部24の移動速度を、上側把持部23の移動速度よりも高く設定する。これにより、電気炉4によって加熱された無水ガラス体11’は、下方に引っ張られるようになり、これにより、上記無水ガラス体11’は、所定の外径となるまで延伸されて無水ガラスロッド11となる。
【0062】
ここで、無水ガラス体11’を延伸する際の、上記電気炉4による無水ガラス体11’の加熱温度は、この無水ガラス体11’の外表面部分が昇華する温度に設定する。具体的に加熱温度は、2100℃〜2300℃に設定する。
【0063】
こうすることで、ガラス体作製工程において作製した無水ガラス体11’の外表面に傷が生じていたり、また、上記電気炉4内を通過する際に、灰等の異物が無水ガラス体11’の外表面に付着したりしても、上記傷や異物を、無水ガラス体11’の外表面部分と共に除去することができる。また、スート法により作製した無水ガラス体11’の外表面部分は、OH−イオン濃度が比較的高い場合があるが、そのOH−イオン濃度の高い外表面部分を除去することができる。このため、延伸した無水ガラスロッド11の外表面を、改めて研磨・研削する必要がない。
【0064】
尚、上記無水ガラス体11’の加熱温度は、好ましくは2200℃〜2250℃である。こうすることで、無水ガラス体11’の外表面部分を確実に除去可能になると共に、必要以上に加熱温度を高めないことで電気炉4の長寿命化が図られる。
【0065】
このように、上記延伸装置Aは、電気炉4により無水ガラス体11’を加熱するように構成されているため、この無水ガラス体11’の外表面にOH−イオンが混入することがなく、また、OH−イオンの濃度が比較的高くなり易い無水ガラス体11’の外表面部分を除去することで、無水ガラスロッド11のOH−イオンの濃度がさらに低下する。さらに、無水ガラス体11’の外表面部分を除去することで、無水ガラスロッド11の外表面を滑らかにすることができる。具体的には、その外表面に、0.5μm以上の凹凸がほとんど含まれないようになる。
【0066】
(一体化工程)
図3は、ロッド延伸工程において延伸した無水ガラスロッド11と、パイプ作製工程において作製したガラスパイプ12とを一体化させる母材製造装置Bを示している。この母材製造装置Bは、ロッドインチューブ法により光ファイバ母材1を製造するものである。
【0067】
上記母材製造装置Bには、Z方向(同図における上下方向)に延びて配設された上記ガラスパイプ12の上端部分を把持することで、このガラスパイプ12を吊り下げ状態にする第1把持部51と、同じくZ方向に延びて配設された上記無水ガラスロッド11の上端部分を把持することで、この無水ガラスロッド11を吊り下げ状態にする第2把持部52とが設けられている。この第1及び第2把持部51,52はそれぞれ、ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11の位置を、X方向(同図における紙面横方向)及びY方向(紙面に直行する方向)に移動可能に構成されていると共に、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11のZ方向に対する傾きを調整可能に構成されている。この構成により、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11は、それぞれ鉛直にかつ、互いに同軸に位置付けられるようになる。
【0068】
また、上記各把持部51,52はそれぞれ、Z方向に移動可能に構成されており、この各把持部51,52の下方への移動に伴い、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11がそれぞれ下方に移動するようにしている。尚、上記第1及び第2把持部51,52の移動速度は、それぞれ変更可能であると共に、第1把持部51と第2把持部52とで互いに異なる速度に設定することも可能である。このため、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11の移動速度(後述するヒータ6への送り速度)が調整可能にされており、さらに、上記ガラスパイプ12の送り速度と無水ガラスロッド11の送り速度とを互いに異ならせることも可能にされている。
【0069】
上記第1把持部51の下方位置には、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11を加熱する略リング状のヒータ6が配設されている。このヒータ6は、図示省略の加熱炉内に配設されたものであって、上記ガラスパイプ12の外径よりも大きい内径を有していると共に、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11と略同軸となる位置に配設されている。これにより、上記ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11はその軸方向に上記ヒータ6内を通過可能にされている。
【0070】
この構成によって、上記第1及び第2把持部51,52によってガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11が下方に移動されると、このガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11は上記ヒータ6内をその一端(下端)から順次通過するようになる。これにより、ガラスパイプ12及び無水ガラスロッド11が、その一端から他端に向かって順次加熱されることになる。
【0071】
尚、このヒータ6を備える加熱炉としては、具体的には、カーボン抵抗加熱炉や高周波誘導加熱炉が例示される。
【0072】
上記ヒータ6の下方位置には、このヒータ6の中心軸を挟んだX方向の両側位置に、それぞれ2つのローラ53,53、…が配設されている。この各ローラ53は、Y軸回りに回転可能に構成されており、上記ヒータ6を通過することによって一体化したガラスパイプ12と無水ガラスロッド11との一体化物(光ファイバ母材1)を、X方向に相対向した二対のローラ53,53,…で挟み込んで、この一体化物を下方に引き取るように構成されている。この各ローラ53,53の回転速度は変更可能に構成されており、これにより、一体化物のヒータ6からの引き取り速度を調整することが可能にされている。こうして一体化物のヒータ6からの引き取り速度を調整することにより、この一体化物を延伸して、その外径が所定の径となった光ファイバ母材1にさせるようにしている。
【0073】
また、上記第1把持部51に把持されたガラスパイプ12の上端面には、その上端開口を閉止する閉止キャップ7が取り付けられる。この閉止キャップ7には、図示省略の真空ポンプが接続されており、この真空ポンプを駆動させることによって、上記ガラスパイプ12内を減圧することができるようになっている。
【0074】
次に、この母材製造装置Bによる光ファイバ母材1の製造方法について説明すると、先ず、ガラスパイプ12の上端部分を第1把持部51によって把持し、この第1把持部51によって、上記ガラスパイプ12がヒータ6に対して同軸となるように上記ガラスパイプ12のX,Y方向位置をそれぞれ調整すると共に、上記ガラスパイプ12が鉛直に配設されるように上記ガラスパイプ12の傾きを調整する。
【0075】
次に、無水ガラスロッド11の上端部分を第2把持部52によって把持し、この第2把持部52によって、上記無水ガラスロッド11がガラスパイプ12に対して同軸となるように上記無水ガラスロッド11のX,Y方向位置をそれぞれ調整すると共に、上記無水ガラスロッド11が鉛直に配設されるように上記無水ガラスロッド11の傾きを調整する。そして、無水ガラスロッド11をガラスパイプ12内に内挿する。
【0076】
尚、図示は省略するが、ガラスパイプ12の上端に、このガラスパイプ12と同軸となるように補助パイプを取り付け、この補助パイプの上端部分を上記第1把持部51によって把持するようにしてもよい。また、無水ガラスロッド11の上端に、この無水ガラスロッド11と同軸となるように補助ロッドを取り付け、この補助ロッドの上端部分を上記第2把持部52によって把持するようにしてもよい。
【0077】
そして、上記ガラスパイプ12の上端開口を閉止キャップ7により閉止し、真空ポンプを駆動させて上記ガラスパイプ12内を減圧する。こうしてガラスパイプ12内を減圧しながら、上記第1及び第2把持部51,52をそれぞれ所定の速度で下方に移動させることにより、上記ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11とをヒータ6内に送る。
【0078】
これにより、上記ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11とが、その軸方向に上記ヒータ6内を通過するようになって、上記ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11とが、その下端から上端に向かって上記ヒータ6により順次加熱される。このため、上記ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11とは、その下端から上端に向かって順次溶融するが、このとき、ガラスパイプ12内が減圧されているため、このガラスパイプ12内外の圧力差によって溶融したガラスパイプ12が縮径する。その結果、ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11とが、その長手方向に順次一体化する。
【0079】
こうして一体化したガラスパイプ12と無水ガラスロッド11との一体化物は、ローラ53,53,…によって引き取られることで、所定の外径になるまで延伸され、光ファイバ母材1が製造されることになる。
【0080】
こうして一体化工程において製造した光ファイバ母材1を、線引き装置(図示省略)によって線引きすることにより、光ファイバが製造されることとなる。
【0081】
このように、本実施形態に係る光ファイバ母材1の製造方法によると、無水ガラス体11’を、ロッド延伸工程において延伸するときに、この無水ガラス体11’を電気炉4により加熱するようにしている。これにより、加熱の際にOH−イオンが発生しないため、この無水ガラス体11’の表面にOH−イオンが混入することがない。
【0082】
また、無水ガラス体11’を延伸するときの、電気炉4の加熱温度を2100℃〜2300℃に設定することにより、この無水ガラス体11’の外表面部分を昇華させて除去しながら、上記無水ガラス体11’を延伸することができる。これにより、無水ガラス体11’の外表面の傷や異物を除去することもできると共に、スート法により作製された無水ガラス体11’において、OH−イオンの濃度が比較的高濃度となり易い外表面部分を除去することができる。その結果、この無水ガラスロッド11とガラスパイプ12とを一体化させることにより、OH−イオンの濃度の低い光ファイバ母材1、具体的には、コア部11a近傍のOH−イオンの濃度が2ppb以下である大型の光ファイバ母材1を製造することができる。また、ガラスロッド11の表面が滑らかであるから、その外表面部分を研磨・研削等しなくても、気泡が混入していない光ファイバ母材1(具体的には、軸方向長さ1m当りの気泡の数が5以下の光ファイバ母材1)を、容易に製造することができる。
【0083】
こうして製造した光ファイバ母材1を線引きした光ファイバは、OH−イオンの吸収損失が低いため、波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下であって、その波長1385nm帯の損失値が、波長1310nm帯の損失値以下である光ファイバとなる。
【0084】
このように、無水ガラス体11’を延伸するときに、電気炉4を用いて、無水ガラス体11’の外表面部分を除去しながらこれを延伸するため、ロッド延伸工程において、無水ガラス体の延伸とその表面研磨(研削)とが一度に行われることになり、これにより、低損失の光ファイバを製造し得る光ファイバ母材を、安価に製造することができる。
【0085】
さらに、無水ガラスロッド11とガラスパイプ12とを一体化させるときには、ロッド11とパイプ12との一体化と同時に、これらを一体化した一体化物を延伸するようにしている。これにより、一体化の最中に、上記無水ガラスロッド11には、その軸方向(Z方向)の張力が付与される。このため、例えばガラスロッド11とガラスパイプ12との一体化のみを行い、その一体化物の延伸を行わない場合には、上記無水ガラスロッド11に径方向の圧縮歪みが発生し、これにより、光ファイバ母材1を線引きした光ファイバにおいては、圧縮歪みに起因する損失(特に長波長側において損失が増大するマイクロベンドによる散乱損失)が発生してしまうが、ガラスパイプ12と無水ガラスロッド11の一体化と同時に延伸を行うことで、こうした損失の発生が防止される。すなわち、無水ガラスロッド11とガラスパイプ12とを一体化させるときに、無水ガラスロッド11に、軸方向の張力を付与することにより、この無水ガラスロッド11に対する径方向の圧縮歪みが緩和された状態で無水ガラスロッド11とガラスパイプ12とが一体化する。こうして製造された光ファイバ母材1を線引きして光ファイバとしたときには、圧縮歪みに起因する損失増加がなく、OH−イオンによる吸収損失の低下と相俟って、約1200nm〜1600nmの広い波長帯域の全域に亘って低損失の光ファイバが得られる。
【0086】
【実施例】
次に、本発明に関して具体的に実施した実施例について、表1を参照しながら説明する。
【0087】
【表1】
【0088】
先ず、実施例1,2及び比較例1,2に係る無水ガラスロッドをそれぞれ作製した。この無水ガラスロッドは、外径100mmの無水ガラス体をスート法によって作製し、これを、図1に示す延伸装置Aを用いて延伸することにより外径50mmにしたものである。
【0089】
ここで、延伸条件は、表1に示す通りであり、実施例1,2では、ヒータ温度(加熱温度)をそれぞれ2250℃、2100℃に設定した。これに対し、比較例1では、ヒータ温度を、各実施例よりも低温の2000℃に設定した。尚、比較例2は、ヒータ温度を、実施例1と同じく2250℃に設定した。
【0090】
こうして作製した無水ガラスロッドを比較すると、加熱温度を比較的高くした実施例1,2及び比較例2の無水ガラスロッドは、その外表面における0.5μm以上の凹凸の個数が、0又は約2(個/300mm)と極めて少なく、その外表面は滑らかであるのに対し、加熱温度を比較的低くした比較例1の無水ガラスロッドは、その外表面における0.5μm以上の凹凸の個数が、約50(個/300mm)と極めて多くなった。
【0091】
次に、上記各例の無水ガラスロッドを用いて、光ファイバ母材を製造した。この内、実施例1,2及び比較例1は、図3に示す母材製造装置Bを用いて、無水ガラスロッドにガラスパイプを被覆して一体化させるロッドインチューブ法により母材を製造した。ここで、ガラスパイプは、外径が182mm、内径が54mmのものである。また、無水ガラスロッドとガラスパイプとの一体化と同時に延伸することで、光ファイバ母材の外径を60mmとした。
【0092】
これに対し、比較例2は、無水ガラスロッド11の外表面にスートを堆積させるスート法により光ファイバ母材を製造した。この光ファイバ母材の外径も60mmである。
【0093】
こうして作製した各光ファイバ母材を比較すると、ロッドインチューブ法を採用した実施例1,2及び比較例1の内、無水ガラスロッドの外表面が滑らかであった実施例1,2の母材は、母材中に含まれる気泡の個数が、約1又は5(個/1m)と極めて少ないのに対し、比較例の母材は、母材中に含まれる気泡の個数が、約100(個/1m)と極めて多くなった。
【0094】
一方、スート法を採用した比較例2の母材は、母材中に含まれる気泡の個数が、約1(個/1m)と極めて少なかった。
【0095】
次に、上記各例の光ファイバ母材を線引きして光ファイバとし、1310nm帯の損失値と、1385nm帯の損失値とをそれぞれ測定した。その結果、各例の光ファイバは、1310nm帯の損失値は0.33dB/kmで同じであったが、実施例1,2の光ファイバは、1385nm帯の損失値がそれぞれ0.30,0.33dB/kmと低く、1310nm帯の損失値と同じかそれよりも低くなった。
【0096】
これに対し、比較例1の光ファイバは、1385nm帯の損失値が0.68dB/kmと高くなり、比較例2の光ファイバも同様に、1385nm帯の損失値が0.58dB/kmと高くなった。
【0097】
以上の結果から、光ファイバ母材の製造方法としてロッドインチューブ法を採用すると共に、無水ガラス体を延伸する際の加熱温度を比較的高く(2100℃以上に)設定することによって、波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下であるシングルモード光ファイバを製造するための光ファイバ母材であって、気泡の発生が防止された光ファイバ母材を製造し得ることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】無水ガラスロッドを延伸する延伸装置の概略構成を示す図である。
【図2】延伸装置における電気炉の構成を示す図である。
【図3】無水ガラスロッドとガラスパイプとを一体化させる母材製造装置の概略構成を示す図である。
【図4】光ファイバ母材の断面を示す断面図である。
【図5】通常の光ファイバの波長損失特性を示す図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ母材
11 無水ガラスロッド
11’ 無水ガラス体
11a コア部
11b クラッド部
12 ガラスパイプ
4 電気炉
A 延伸装置
B 母材製造装置
Claims (8)
- 波長1385nm帯の損失値が0.4dB/km以下であるシングルモード光ファイバを製造するための光ファイバ母材の製造方法であって、
上記光ファイバにおいてコアとなるコア部と、該光ファイバにおいてクラッドの一部となるクラッド部とからなりかつ、その外表面部分以外の部分におけるOH−イオンの濃度が2ppb以下である無水ガラス体を作製するガラス体作製工程と、
上記ガラス体作製工程において作製した無水ガラス体を加熱・延伸して無水ガラスロッドとするロッド延伸工程と、
上記ロッド延伸工程において延伸した無水ガラスロッドを、ガラスパイプに内挿すると共に、該ガラスパイプ内を減圧しながら、該ガラスパイプ及び無水ガラスロッドの双方を、その一端から他端に向かって軸方向に順次加熱することで上記ガラスパイプと無水ガラスロッドとを順次一体化する一体化工程とを含み、
上記ロッド延伸工程では、上記無水ガラス体を電気炉により加熱して該無水ガラス体の外表面部分を昇華させて除去しながら、上記無水ガラス体を延伸する
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1において、
ロッド延伸工程では、電気炉による無水ガラス体の加熱温度を、2100℃以上2300℃以下に設定する
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1において、
ロッド延伸工程では、無水ガラス体を加熱・延伸することにより、外表面の凹凸が0.5μmよりも小さい無水ガラスロッドとする
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1において、
ガラス体作製工程では、コア部の外径に対するクラッド部の外径の比が3.5以上4.5以下に設定された無水ガラス体をVAD法により作製する
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1において、
ガラスパイプは、OH−イオンの濃度が1ppm以下に設定されたものである
ことを特徴とする光ファイバ母材の製造方法。 - 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造された光ファイバ母材であって、
コア部のOH-イオンの濃度が2ppb以下である
ことを特徴とする光ファイバ母材。 - 請求項6において、
軸方向長さ1m当りの気泡の数が5以下である
ことを特徴とする光ファイバ母材。 - 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法により製造された光ファイバ母材を線引きした光ファイバであって、
波長1385nm帯の損失値が、波長1310nm帯の損失値以下である
ことを特徴とする光ファイバ。
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