JP3558818B2 - 絶縁膜の欠陥評価方法及びその装置 - Google Patents

絶縁膜の欠陥評価方法及びその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁膜中に存在する欠陥の測定方法に関する。
【0002】
【従来技術】
表面に絶縁膜を有するシリコン基板の絶縁膜中に存在する欠陥を評価する手法は、従来より様々な原理に基づくものが提案されている。例えば[1]キャパシタを用いた電気的方法、[2]化学的選択エッチングによる方法、[3]気泡発生等の電気化学的方法、[4]Nomarski法などの化学的方法、[5]X線,電子線によるマイクロプローブ解析法、[6]機械的プローブによるプロファイル観察、などの方法がある。
【0003】
しかし、半導体素子の絶縁のために用いられる膜(SiO2 ,SiN,SiON等)やMOSトランジスタのゲート酸化膜の評価には、膜の目的に合致させるためにも、電界が印加された状態で、絶縁膜中の欠陥が示す電気的特性から直ちに欠陥を検出できる方法が好ましい。
【0004】
前記の要請を満たす第一の方法として、例えば[1]のように、「金属(M)−酸化膜(O)−半導体(S)」構造を持つMOSキャパシタの電気特性を測定する方法が挙げられる。この方法は、絶縁膜の電気特性を直接測定して欠陥の有無を測定する方法であるので、信頼性の非常に高い欠陥の評価法である。しかし、MOSキャパシタの試作には、絶縁分離された金属電極を形成するためにスパッタリング、あるいは蒸着、低圧CVDなどの真空を必要とする工程や、写真蝕刻工程など種々の工程を必要とする。このため、評価の迅速性及び簡便さが失われるという欠点があった。
【0005】
前記第一の方法の欠点を克服するためには、少数の工程によって評価を完了することのできる電気化学的方法が非常に効果的であり、このために従来は様々な方法が提案されている。たとえば、メチルアルコールを溶媒として銅陽極を用い、陰極と接続された絶縁膜を有する半導体シリコン基板の欠陥上に銅を電気泳動現象によって析出させる方法を提案している。しかし、この方法では、25℃におけるメチルアルコールの比電気伝導度が3×10−7Ω−1cm−1と極めて小さく、溶液抵抗による電圧効果の影響が大きいため、陰極である絶縁膜を有する半導体シリコン基板の表面電位を面内で均一に保つのが容易ではない。このため、銅析出の面内むらが起きやすい。また、溶液が吸湿性および蒸発性を有するため液組成が経時変化しやすく、再現性に乏しいなどの多くの問題がある。
【0006】
前記第1,第2の方法の欠点を克服する第3の方法として、銅の強酸塩を含む水溶液を電解質溶液とし、前記電解質溶液に侵されない導電性物質により構成された陽極と、被測定物である絶縁膜を有する半導体シリコン基板により構成された陰極とを、前記電解質溶液に浸漬し、前記陽極と陰極との間に、シリコン基板の表面に形成された絶縁膜の絶縁破壊電圧よりも小さな直流電圧を印加して陰極である絶縁膜を有する半導体シリコン基板の欠陥上に銅を電気化学的メッキ反応によって析出させる方法が開示されている。この方法では電解質溶液による電圧降下の影響が小さいため、シリコン基板の表面電位を面内で均一に保つことができる。このため、銅析出の面内均一性が良い。また、電解質溶液が水溶液であるため吸湿及び蒸発による液組成の経時変化はさほど問題とならない。
【0007】
しかしながら、この方法で、例えば絶縁膜中に複数の欠陥が存在し、これらの欠陥の大きさを相対評価する場合、銅の析出量によって欠陥の大きさを評価することになる。このように析出量( 析出物が付着する面積) が大きくなると、欠陥位置の特定が困難になるという問題が生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の技術では絶縁膜中の欠陥の大きさと、欠陥の正確な位置とを同時に特定することが困難であるという問題があった。
本願発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、簡便な装置で、っ絶縁膜中の欠陥の大きさと、正確な位置を確認することのできる絶縁膜の評価方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本願第1の発明は、第1の電極、及び第2の電極に電気的に接続された絶縁膜を有する試料の間に、金属イオン及び金属錯体の少なくとも1種の析出成分を含む電解質溶液を配置し、前記第1の電極が正極となるように両電極間に電圧を所定時間印加する析出工程と、前記電圧と逆電圧を印加する溶出工程とを有する絶縁膜の欠陥評価方法である。
【0010】
本願第2の発明は、前記溶出工程の後、さらに析出工程を繰り返す本願第1の発明に記載の絶縁膜の欠陥評価方法である。
本願第3の発明は、少なくとも2回目以降の析出工程時に、前記電解質中に異なる金属元素を有する析出成分を含有させる本願第2の発明に記載の絶縁膜の欠陥評価方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は本発明に係わる絶縁膜の評価装置の一具体例を示す概略図、図2(a)は析出成分を析出させた後の試料の表面を表わす図、(b)はその断面図である。
【0012】
図中、第2の電極4aは、導電性基板6表面に絶縁膜5を形成した試料に接続されており、第1の電極4bと可変直流電源9を介して接続されている。また、前記電極4a、4bの間には貯蔵容器3に収容された電解質溶液8が配置されている。なお、この電解質溶液8中には析出成分が含有されている。
【0013】
本願発明は、このような装置を以下のように操作することで実施できる。
まず、析出成分が基板側に析出するように、例えば析出成分が陽イオンとなる金属元素を用いた場合、第1の電極4bが正極、第2の電極4aが負極となるように直流電源9を起動させる( 順電圧) 。その結果、絶縁膜の欠陥部に析出成分が析出物12として形成される。引続き可変直流電源を操作し、析出物12が電解質中に溶出するように(第1の電極が負極、第2の電極が正極となるように)を印加すると( 逆電圧) 、析出物12のうち欠陥部近傍の析出物表面から選択的に電解液中に溶出し、やがて欠陥部近傍から絶縁膜が露出する。この結果、析出物の量、すなわち、析出物の外径によって欠陥の大きさを評価することが可能となると共に、溶出したことによって露出された絶縁膜の位置あるいは溶出部の中心位置によって絶縁膜の欠陥部を確認できる。
【0014】
さらに、再度順電圧を印加することで欠陥位置をより正確に知ることができ、加えて、再度順電圧を加える際に前記析出物と異なる析出成分を電解質中に加えることで欠陥位置をより明確にすることができる。例えば、予め析出させる時の析出物としてCuを用い、再度析出させる際にPtを用いる等、異なる色の析出物を析出させることで欠陥位置の確認を容易にすることが可能である。
【0015】
このような分析は半導体試料などで特に有効に用いられるが、このような場合中心位置の確認を目視で行うことは困難であり、必要に応じ光学顕微鏡や電子顕微鏡など既知のいかなる手段を使用して観察すればよい。
【0016】
さらに、析出後水洗し析出物以外の付着物を絶縁膜表面から除去した後に、前述したようにして観察することが望ましい。
前記試料は、金属板等の導電性基板、あるいは半導体材料からなる半導体基板表面に絶縁膜が形成されたものが用いられる。
【0017】
前記第2の電極は、単に前記直流電源から前記基板へ電気的に接続するものであるから常温で導電性固体であれば特に制限なく使用することができる。例えば銅、アルミニウム、銀、鉄、金、白金、パラジウムなどが挙げられるが、銅、アルミニウム、銀、鉄が価格が安く、加工性も良いので好ましい。前記基板が導電性基板の場合には、第2電極は導電性基板の任意の位置に接続して構わないが、前記基板が半導電体基板の場合、絶縁膜の全面に均一に電圧が印加させるために、半導体基板の絶縁膜と対向する部分全面に電極を配置することが望ましい。
【0018】
前記第1の電極の材料としては常温で導電性固体のものであれば特に限定されずに使用することができるが、電解質と直接接触することからイオン化傾向が水素よりも小さな金属であることが望ましい。具体例としては銅、金、白金、パラジウムなどが挙げられるが、銅が価格が安く好ましい。
【0019】
電解質溶液としては、例えば塩酸溶液、硫酸溶液、硝酸溶液などが挙げられる。しかし、硝酸溶液では、一度析出させた析出物が溶解しやすいために、析出物の溶解を低減させることを考慮すれば塩酸溶液、硫酸溶液を使用することが望ましい。また析出を終了させた後に絶縁膜表面を水洗し、その後析出物を観察するような場合に硫酸溶液を電解質として使用すると、絶縁膜表面に残存する硫酸の除去が困難なため、電解質中に含まれる析出成分も絶縁膜表面に残存し、その結果析出物分布の視認が困難になる。したがって、前記水洗を行うことを考慮すれば塩酸溶液か硝酸溶液を使用することが望ましい。
【0020】
更に析出成分として銅などのイオン化傾向の低い材料を使用した時には、電界の有無にかかわらず析出物が生成する恐れがある。このようにイオン化傾向の低い析出成分を使用する場合には、試料表面に析出物が生成され、試料の欠陥による析出物か、そうでないか分からず、欠陥位置あるいは欠陥の大きさを判断する事が出来なくなる。
【0021】
したかって、銅のようなイオン化傾向の低い析出成分を使用する時には、前記電解質溶液としては、不所望の析出成分の析出を抑えるために、析出成分と反応させて錯体化する錯体剤を含有させることが望ましい。錯化剤としては、アンモニウムイオン(NH4 ),シアン(CN )、有機酸(シュウ酸、酒石酸、クエン酸、酢酸)、キレート剤(EDTA,CyDTA,NTA,EDDHA)等が、挙げられる。いずれも析出成分の粒子を小さくするため好ましい。
【0022】
前記析出成分としては、金属元素を含むものであれば構わないが、析出速度(評価時間)短くするために、あるいは析出後の水洗い等で析出物を再度イオン化させないために、水よりもイオン化傾向の小さな元素を使用することが望まれる。例えば銅、金、白金あるいはパラジウムなどを使用すればよい。また、陽極として析出成分を含有する電極を使用すれば、陽極からこれらの成分が溶出され、これらの溶出成分を析出成分として用いることができ、別途、析出成分を電解質中に添加しなくともよい。
【0023】
また、析出成分の濃度は、無電界メッキまたは電気化学的濃度分極が起こらない濃度範囲の金属イオンもしくは金属錯体を含む水溶液として用いることが望ましい。
【0024】
シリコン基板と導電性金属薄板とを重ね合わせて固定保持するための手段は、絶縁膜中のピンホール欠陥中心部を中心に上部表面に低イオン化傾向の金属を析出するのを直接的にも間接的にも妨害するのでなければ、いかなる手段でも良く、2枚のプラスチック材料で挟み、プラスチック材料のネジで絞めるなどの手段が良い。また、電解質溶液がシリコン基板裏面と接触しないようにするためには、低イオン化傾向の金属がを析出するのを直接的にも間接的にも妨害するのでなければ、いかなる手段でも良く、ゴム製のOリングを使ってプラスチック材料とシリコン基板等との間に挟むようにしてもよい。
【0025】
前記直流電源は、絶縁膜中の欠陥中心部を中心に上部表面に低イオン化傾向の金属がを析出するのを直接的にも間接的にも妨害するのでなければ、いかなる手段でも良いが、両電極間に順電圧、逆電圧がそれぞれ印加できるものを使用する。また、順電圧、逆電圧さらに順電圧を印加するなど、順電圧を複数回印加し、複数回析出させる場合、最初の析出時には大量の析出物を短時間に析出させるために比較的大きな電圧を印加し、最後の析出時には極微量の析出物を精度よく析出させるために小電圧を印加させることが好ましい。このような条件を満たすためには、直流電圧の向きと大きさを任意に可変できる可変直流電圧発生装置を用いる方法、直流電圧の大きさを任意に可変できる可変直流電圧発生装置と接続切り替えスイッチを用いる方法などが挙げられる。簡便性の点から、直流電圧の向きと大きさを任意に可変できる可変直流電圧発生装置を用いる方法が好ましい。
【0026】
【実施例】
まず、直径150mm(6インチ)の硼素ドープSiウェハ(比抵抗:6.9Ωcm、厚さ:625μm)に熱酸化法で厚さ200Aの二酸化ケイ素膜を形成し、試料を得た。
【0027】
得られた試料を約2N−硝酸と約2N−塩酸との混酸溶液で約25°Cにて、約10分間洗浄処理した後純水で洗浄して乾燥した。
次に、図1に示すような評価装置を用いて前記試料の欠陥を評価した。その具体的な構成を以下に示す。
【0028】
貯蔵容器:縦25cm×横15cm×高さ25cm,厚さ0.4cmの透明ポリ塩化ビニル製直方体。ただし、上面開放である。
一方の電極:直径150mmφ(6インチ)×厚さ0.1cmの銅製平板。平板の表面全面をステンレスピンセットで傷付け、1〜20μmの凹凸をつくる。
【0029】
他方の電極:縦15cm×横15cm×厚さ0.05cmの銅製平板。
試料固定保持具:直径200mmφ×厚さ2.3cmのテフロン製容器。2個のゴム製Oリングとテフロン製器具とアクリル製ネジを利用して、一方の凹凸ある電極4a表面と試料6裏面を図1のように重ね合わせて固定保持する。二酸化ケイ素膜5の表面のみが電解質溶液8に接触して、一方の電極4a表面及び試料6裏面が電解質溶液8と接触しないようにした。
【0030】
電解質溶液:塩化第二銅を塩酸溶液で溶解して、約0.001モル/l銅の約0.1N−塩酸溶液に調製したものを使用。
このような評価装置に対して、両極間の印加電圧と印加時間を以下に示す5工程に分けて析出成分の析出、溶出を繰返した。
第1工程:+10V(電極4bの電位が電極4aの電位より高い)で20分間
第2工程:−9V(電極4bの電位が電極4aの電位より低い)で18分間
第3工程:+5Vで5分間
第4工程:−4.5Vで4.5分間
第5工程:+2Vで1分間
このようにして、試料表面に析出物を析出させた後に試料表面を水洗いして乾燥した後、その試料表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した。
その結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
実施例1おいて、第5工程での電解質溶液が、金塩酸溶液(硝酸を少量含む)を添加して、約0.001モル/l銅約0.00003モル/l金との混合約0.1N−塩酸溶液になるように調製した以外、実施例1と同様の操作をおこなった。
その後、試料表面観察した結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
本実施例では、直径150mm(6インチ)のリンドープSiウェハ(比抵抗:3.7Ωcm、厚さ:625μm)にCVD法で厚さ300Aの窒化ケイ素膜を形成し、試料を得た。
【0033】
その後、第1乃至第5の工程を、それぞれ+11V,−10V、+5V、−4.5Vおよび+2Vで行ったことを除けば実施例1と同様にして試料の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
実施例4
第5の工程での電解質溶液が、白金塩酸溶液( 硝酸を少量含む) を添加して、約0.001モル/l銅と約0.00003モル/l金との混合約0.1N−塩酸溶液になるように調整したことを除いて、実施例3と同様にして試料の欠陥評価を行った。
結果を表1に示す。
【0035】
比較例
第2〜5の工程を実施しないことを除き、実施例1と同様の操作を行い、試料の欠陥評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0036】
【表 1】
Figure 0003558818
【0037】
上述から明らかなように、絶縁膜中の欠陥を、電解質溶液中で直流電圧を印加し銅を析出させて検出する方法において、最初に銅の電着方向に直流電圧を印加して、次に逆向きのより小さな直流電圧を印加する操作を繰り返した後、最後に銅の電着方向に小さい直流電圧を印加することによって、絶縁膜の欠陥の面内分布と欠陥中心位置を同時に迅速、簡便かつ精度良く特定し観察できる。さらに、銅よりもイオン化傾向の小さな貴金属イオン水溶液を最後に添加して析出することによって、欠陥の中心位置をさらに迅速、簡便かつ精度良く特定し直接観察できる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の欠陥評価方法及び欠陥検出用前処理装置を用いれば、絶縁膜の欠陥の面内分布と欠陥中心を迅速、簡便かつ精度良く特定し観察できるので、その工業的価値は非常に大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の絶縁膜の欠陥検出用の前処理装置の一具体例を示す概略図である。
【図2】本発明に係わる絶縁膜中の欠陥検出法の原理を説明するための図である。
【符号の説明】
1・・・試料前処理部 2・・・前処理制御部
3・・・貯蔵容器 4a、4b・・・電極
5・・・絶縁膜(SiO2 膜) 6・・・試料基板(Si基板)
7・・・試料固定保持具 8・・・電解質溶液
9・・・可変直流電圧発生装置 10・・・電流計
11・・・電圧計 12・・・金属析出

Claims (3)

  1. 第1の電極、及び第2の電極に電気的に接続された絶縁膜を有する試料の間に、金属イオン及び金属錯体の少なくとも1種の析出成分を含む電解質溶液を配置し、前記第1の電極が正極となるように両電極間に電圧を所定時間印加する析出工程と、前記電圧と逆電圧を印加する溶出工程とを有することを特徴とする絶縁膜の欠陥評価方法。
  2. 前記溶出工程の後、さらに析出工程を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の絶縁膜の欠陥評価方法。
  3. 少なくとも2回目以降の析出工程時に、前記電解質中に異なる金属元素を有する析出成分を含有させることを特徴とする請求項2記載の絶縁膜の欠陥評価方法。
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