JP3557681B2 - 内燃機関のシリンダヘッド冷却装置 - Google Patents

内燃機関のシリンダヘッド冷却装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は内燃機関のシリンダヘッド冷却性を改善した冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の内燃機関にあっては、熱効率の向上、高出力化、エンジン軽量化、小型化などの要請に伴い、燃焼室壁に対する熱負荷が益々高まってきている。このため、運転状態によっては、いわゆるメカニカルオクタン価の低下によるノッキングの発生や、排気弁の弁座の熱歪による圧縮漏れ、あるいは過大な熱応力によるシリンダヘッド側燃焼室の耐久性の低下などの問題が発生するおそれがある。
【0003】
例えば特開昭61−268849号公報にある従来のシリンダヘッド部の冷却構造について、図8、図9に示すが、シリンダヘッド7の内部には、燃焼室3を画成するための燃焼室壁4と、上方のアッパデッキ壁6との間に、冷却水が導かれる冷却水通路5が形成される。
【0004】
シリンダヘッド7には各気筒に対して点火栓11を配置するためのガイド穴壁10A、10B…が上下に貫通して設けられる。このガイド穴壁10A,10B…の周囲には、冷却水を上流から下流に向けて案内するように、板状のガイドフィン13が取付けられる。
【0005】
さらにシリンダヘッド7のアッパデッキ壁6と燃焼室壁4には、それぞれ各気筒について、前記点火栓11を中心にほぼ対称位置に、各一対の吸気弁のガイド穴壁20A,20B(20C,20D…)と、排気弁のガイド穴壁21A,21B(21C,21D…)が貫通形成される(図9参照)。また、アッパデッキ壁6には各気筒間に位置して、シリンダヘッド鋳造時に用いる中子の鋳砂抜き穴9が設けられ、それぞれは穴栓8A,8B…により閉塞される。
【0006】
なお、図中1はピストン、2はシリンダブロック、12はガスケット、22は冷却水の流れに関して上流側の気筒、23は下流側の気筒を示す。
【0007】
図9によって冷却水の流れる状態を説明すると、シリンダブロック側からシリンダヘッド側へ上向きに送り込まれる冷却水は、そのままシリンダヘッド冷却水通路5の上方に向かい、多くはアッパデッキ壁6に沿って下流へと進む。
【0008】
このため、アッパデッキ壁6に近い上層の流れは、燃焼室壁4に近い下層部分よりも流速が速く、その分だけ冷却効率も良い。
【0009】
なお、冷却水通路5の断面積の小さい部分では流速が高まり、熱交換率も上昇し、冷却効率が高まる。アッパデッキ壁6に設けた鋳砂抜き穴9の穴栓8A,8B…の下方の部分で流路断面が絞られることから、燃焼室壁4に近い下層の流れは、この部分においてのみ流速が高められる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、アッパデッキ壁6に比較して燃焼室壁4に近い部分での冷却効率が低いため、もともと温度が高く、高い冷却性能が要求される燃焼室壁4の冷却が不十分になりやすい。しかも、点火栓11を中心にして吸気弁ガイド穴と排気弁ガイド穴とで囲まれた最も高温になりがちな領域については、とくに冷却水の流れが緩慢となり、冷却効率が低くなる。
【0011】
点火栓11のガイド穴10A,10B…の周囲にはガイドフィン13があり、冷却水の流れを案内しているものの、この周囲での流速は低く、いわば流れの淀みとなっているため、ガイドフィン13による効果はほとんど期待できない。
【0012】
これらの結果、燃焼室壁4の冷却が不十分になり、運転条件によっては上記したノッキングの問題や、常時高温に晒される排気弁の弁座の熱歪や燃焼室の耐久性の低下などを生じるおそれがある。
【0013】
本発明はこのような問題を解決するために提案されたもので、燃焼室壁の冷却性能を大幅に改善することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
そこで第1の発明は、シリンダヘッドのアッパデッキ壁との間に冷却水通路を形成し、この冷却水通路にシリンダブロック側からの冷却水を導入するようにした内燃機関のシリンダヘッド冷却装置において、各気筒の中央部分に位置する点火栓のガイド穴壁とこの周囲の吸気弁ガイド穴壁並びに排気弁ガイド穴壁とで囲まれた領域にわたって広がる扁平な箱状の水流制御部を、この水流制御部とこれに対向する燃焼室壁との間で冷却水の流路断面を絞るようにアッパデッキ壁に複数突設し、
前記シリンダブロック側からシリンダヘッド側へ冷却水を導入する連絡通路の開口部を、少なくともその一部分が前記水流制御部と対向するように配設した。
【0015】
第2の発明は、第1の発明における前記水流制御部が、隣接する気筒間において、一方の気筒の点火栓のガイド穴壁から他方気筒のガイド穴壁にわたって連続して形成される。
【0016】
第3の発明は、第1の発明における前記水流制御部が、冷却水の流れに対して点火栓のガイド穴壁の上流側にのみ位置して設けられる。
【0017】
第4の発明は、第1の発明における前記水流制御部が、冷却水の流れに対して点火栓のガイド穴壁の上流側と下流側に位置してそれぞれ設けられる。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4の発明における前記水流制御部が、冷却水の流れに対してその上流側に位置する点火栓ガイド穴壁、吸排気弁ガイド穴壁に対して所定の間隙をもつように形成される。
【0019】
第6の発明は、第1〜第5の発明における前記水流制御部は、偏平な箱状に形成される。
【0020】
【作用】
第1の発明では、シリンダヘッドの冷却水通路内に面してアッパデッキ壁から流路に向けて水流制御部が突出し、シリンダブロック側からアッパデッキ壁に向かう冷却水の流れを、アッパデッキ壁に到達させずに下方の燃焼室壁側へと偏向させ、また、水流制御部と、これに対峙する燃焼室壁との間で冷却水の流路が絞られ、この部部での冷却水の流速が高められる。
【0021】
冷却水の流路へと突出する水流制御部は、アッパデッキ壁の多くの部分を占めるため、結局これに対峙する燃焼室壁の大部分の領域で、その近傍を流れる冷却水の流速が高まり、また、点火栓ガイド穴壁を中心とする吸気弁、排気弁穴壁で囲まれた部分での流れも淀みがなくなり、これらの結果、燃焼室壁の冷却が効率的、かつ均一的に行われるようになる。
【0022】
したがって、メカニカルオクタン価の向上によるノッキングの回避、熱負荷の軽減に伴う燃焼室の耐久性の向上が図れる。
【0023】
第2の発明では、隣合う気筒間での冷却水通路の多くの領域が水流制御部により占められるので、これに対峙する燃焼室壁に沿っての冷却水の流速が全体的に高まり、より一層、均一的な冷却が行える。
【0024】
第3の発明では、点火栓のガイド穴壁の上流側に水流制御部を配設することにより、その下流側において燃焼室壁の近傍を流れる流速を速め、少ない面積の水流制御部で効果的に冷却効率を高められる。
【0025】
第4の発明では、点火栓のガイド穴壁の上流側と下流側に水流制御部を設けたので、燃焼室壁に沿う冷却水の流速を全域的に高められ、燃焼室の全域で均一な冷却性能が確保される。
【0026】
第5の発明では、水流制御部はその上流側の点火栓のガイド穴壁や吸排気弁ガイド穴壁と所定の間隙をもって形成されるので、アッパデッキ壁側の空気や蒸気の滞留を防ぎ、また弁間の流れを確保し、通水抵抗を減じることができる。
【0027】
第6の発明では、水流制御部は偏平な箱型に形成されるので、アッパデッキ壁面に沿っての冷却水の流通抵抗の増加を抑制し、かつ流路の全域で均一的な流速を維持できる。
【0028】
【実施例】
図1、図2は本発明の第1の実施例を示す。なお、図1は多気筒エンジンの2気筒分の冷却水通路の鋳造中子に相当するもので、図示するように、シリンダヘッド7のアッパデッキ壁6には、冷却水通路5に面して燃焼室壁4に向けて突出する水流制御部としての偏平な箱状の水流制御壁30A,30B,30C…が設けられる。
【0029】
この実施例にあって水流制御壁30Bは、隣合う気筒22と23の点火栓ガイド穴壁10Aと10Bを結ぶようにして、吸気弁ガイド穴壁20Bと20C、並びに排気弁ガイド穴壁21Bと21Cによって取り囲まれた領域のほぼ全域を埋め尽くすように形成される。
【0030】
また、この水流制御壁30Bよりも上流の水流制御壁30Aは、第1の気筒22の吸気弁ガイド穴壁20Aと排気弁ガイド穴壁21A及び点火栓のガイド穴壁10Aとで囲まれた領域に設けられ、同じようにして、下流側の水流制御壁30Cは、第2の気筒23の吸気弁ガイド穴壁20D、排気弁ガイド穴壁21D及び点火栓ガイド穴壁10Bと、第3気筒の点火栓ガイド穴壁、吸排気弁ガイド穴壁等で囲まれた領域に設けられる。
【0031】
また、水流制御壁30B,30C…は、点火栓ガイド穴壁10A、10B…、さらには吸気弁ガイド穴壁20B,20D…、また排気弁ガイド穴壁21B,21D…の下流側との間は所定の間隙Lをもつように形成される。
【0032】
シリンダブロック2を経由した冷却水をシリンダヘッド7の冷却水通路5へと導くために、シリンダブロック2にはピストン中心軸と平行に形成された連絡通路32が、開口部の少なくとも一部分が水流制御部30Aと対向するように配設される。
【0033】
以上のように構成され、次に図3の(A)(B)を参照しながら作用を説明する。図3(A)はアッパデッキ壁面の流速分布を示し、また(B)は同じく燃焼室壁面を示す。
【0034】
シリンダブロック2からの冷却水は連絡通路32を上昇し、シリンダヘッド7の冷却水通路5に流入し、この冷却水通路5を第1気筒22から下流の気筒23に向けて流れていく。
【0035】
冷却水の流れはアッパデッキ壁6に向かう成分が、水流制御部30A,30B,30C…によって下方に向きを修正され、燃焼室壁4に近い部分を多く流れるようになり、しかも燃焼室壁4からの熱を受け、上昇しようとする流れの成分も、水流制御壁30A,30B,30C…により再度下方に向けて流れの方向を修正される。
【0036】
また、これら水流制御壁30A,30B,30Cは、対峙する燃焼室壁4との間の流路面積を狭めているため、シリンダブロック2からシリンダヘッド7に流れ込んだ冷却水の流れは、これら水流制御部30A,30B,30Cの部分において流速が速められる。しかもこれら水流制御壁30A,30B,30Cは、対峙する燃焼室壁4の多くの領域を占めるので、各気筒の燃焼室壁4の大部分の領域において流速が高められる。
【0037】
これらの結果、冷却水通路5の冷却水の流れは、各気筒において点火栓11を中心に吸排気弁によって囲まれた領域にも流れの淀みを生じることなく、とくに燃焼室壁4に近い部分については、ほぼ全域で流速が高まり、燃焼室壁4に関する熱交換が飛躍的に促進され、冷却効率が全域的に向上する。
【0038】
このようにして冷却効率が改善されたため、燃焼室のメカニカルオクタン価の向上によるノッキングの回避や、熱負荷の軽減に伴う燃焼室の耐久性の向上が図れる。
【0039】
なお、水流制御壁30B,30Cは、その上流側の点火栓ガイド穴壁10A,10B等との間に所定の間隙をもつので、アッパデッキ壁側の空気や蒸気の滞留を防ぎ、また、弁間の冷却水の流通を妨げないようして、通水抵抗を減じることができる。
【0040】
次に、図4、図5の第2の実施例を説明する。
【0041】
この実施例では、水流制御壁30A,30B,30C…は、隣合う気筒間で連続せずに、分割されている。
【0042】
つまり、各気筒22,23について、それぞれ一対の水流制御壁30Aと30B、また30Cと30Dが、点火栓ガイド穴壁10A,10Bを中心にして形成されている。なお、これら水流制御壁30A,30B,30C…は、それぞれ点火栓ガイド穴壁10A,10B…とは所定の間隙をもって近接配置される。
【0043】
このようにして水流制御壁30A,30B,30C…を分割形成すると、アッパデッキ壁6の付近の流れに対する抵抗がさらに強まり、相対的に燃焼室壁4に近い部分の流速が高められる。また、各水流制御壁30A,30B,30C…は、点火栓ガイド穴壁と所定の間隙を保っているため、各ガイド穴壁の冷却水に触れる表面積が確保され、点火栓についての冷却性能を良好に維持できる。
【0044】
さらに図6、図7の第3の実施例は、点火栓ガイド穴壁10A,10Bの上流側にのみ水流制御壁30A,30B…を設けた例である。
【0045】
このようにすると、各気筒の上流側において、冷却水の流れを下向きに偏向させると共に、水流制御壁30A,30Bと対峙する燃焼室壁4との間での流速を速めることで、その下流領域を含めて燃焼室壁4の付近を通過する流速を全域的に高められる。したがってこの場合には、より少ない数の水流制御壁30A,30Bにより、効果的に冷却効率を改善できる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように第1の発明によれば、シリンダヘッドの冷却水通路内に面してアッパデッキ壁から流路に向けて水流制御部が突出し、シリンダブロック側からアッパデッキ壁に向かう冷却水の流れを、アッパデッキ壁に到達させずに下方の燃焼室壁側へと偏向させ、また水流制御部と、これに対峙する燃焼室壁との間で冷却水の流路を絞り、この部分を通過する冷却水の流速を高め、とくに水流制御部は、アッパデッキ壁の多くの部分を占めるため、これと対峙する燃焼室壁の大部分の領域で冷却水の流速が高まり、また、点火栓ガイド穴壁を中心とする吸気弁、排気弁穴壁で囲まれた部分での流れも淀みがなくなり、これらの結果、燃焼室壁の冷却が効率的、かつ均一的に行われるようになり、したがって、メカニカルオクタン価の向上によるノッキングの回避や、熱負荷の軽減に伴う燃焼室の耐久性の向上が図れる。
【0047】
第2の発明によれば、隣合う気筒間での冷却水通路の多くの領域が水流制御部により占められるので、これに対峙する燃焼室壁に沿っての冷却水の流速が全体的に高まり、より一層、均一的な冷却が行える。
【0048】
第3の発明によれば、点火栓のガイド穴壁の上流側に水流制御部を配設することで、その下流側において燃焼室壁の近傍を流れる流速を速め、少ない面積の水流制御部で効果的に冷却効率を高められる。
【0049】
第4の発明によれば、点火栓のガイド穴壁の上流側と下流側に水流制御部を設けたので、燃焼室壁に沿う冷却水の流速を全域的に高められ、燃焼室の全域で均一な冷却性能が確保される。
【0050】
第5の発明によれば、水流制御部はその上流側の点火栓のガイド穴壁、吸排気弁ガイド穴壁と所定の間隙をもって形成されるので、アッパデッキ壁側の空気や蒸気の滞留を防ぎ、また弁間の流れを確保し、通水抵抗を減じられる。
【0051】
第6の発明によれば、水流制御部は偏平な箱型に形成されるので、アッパデッキ壁面に沿っての冷却水の流通抵抗の増加を抑制し、かつ流路の全域で均一的な流速を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す斜視的説明図である。
【図2】同じくその断面図である。
【図3】同じく冷却水の流速分布を示す説明図で、(A)はアッパデッキ側壁面、(B)は燃焼室側壁面を表す。
【図4】第2の実施例を示す斜視的説明図である。
【図5】同じくその断面図である。
【図6】第3の実施例を示す斜視的説明図である。
【図7】同じくその断面図である。
【図8】従来例の断面図である。
【図9】同じく冷却水の流速分布を示す説明図で、(A)はアッパデッキ側壁面、(B)は燃焼室側壁面を表す。
【符号の説明】
2 シリンダブロック
3 燃焼室
4 燃焼室壁
5 冷却水通路
6 アッパデッキ壁
10A 点火栓ガイド穴壁
10B 点火栓ガイド穴壁
11 点火栓
20A 吸気弁ガイド穴壁
20B 吸気弁ガイド穴壁
21A 排気弁ガイド穴壁
21B 排気弁ガイド穴壁
30A 水流制御壁
30B 水流制御壁
30C 水流制御壁

Claims (6)

  1. シリンダヘッドのアッパデッキ壁と燃焼室壁との間に冷却水通路を形成し、この冷却水通路にシリンダブロック側からの冷却水を導入するようにした内燃機関のシリンダヘッド冷却装置において、各気筒の中央部分に位置する点火栓のガイド穴壁とこの周囲の吸気弁ガイド穴壁並びに排気弁ガイド穴壁とで囲まれた領域にわたって広がる扁平な箱状の水流制御部を、この水流制御部とこれに対向する燃焼室壁との間で冷却水の流路断面を絞るようにアッパデッキ壁に複数突設し、
    前記シリンダブロック側からシリンダヘッド側へ冷却水を導入する連絡通路の開口部を、少なくともその一部分が前記水流制御部と対向するよう配設したことを特徴とする内燃機関のシリンダヘッド冷却装置。
  2. 前記水流制御部が、隣接する気筒間において、一方の気筒の点火栓のガイド穴壁から他方気筒のガイド穴壁にわたって連続して形成される請求項1に記載の内燃機関のシリンダヘッド冷却装置。
  3. 前記水流制御部が、冷却水の流れに対して点火栓のガイド穴壁の上流側にのみ位置して設けられる請求項1に記載の内燃機関のシリンダヘッド冷却装置。
  4. 前記水流制御部が、冷却水の流れに対して点火栓のガイド穴壁の上流側と下流側に位置してそれぞれ設けられる請求項1に記載の内燃機関の冷却装置。
  5. 前記水流制御部が、冷却水の流れに対して上流側に位置する点火栓ガイド穴壁、吸、排気弁ガイド穴壁との間に所定の間隙をもつように形成される請求項1〜4のいずれか一つに記載の内燃機関のシリンダヘッド冷却装置。
  6. 前記水流制御部は、扁平な箱状に形成される請求項1〜5のいずれか一つに記載の内燃機関のシリンダヘッド冷却装置。
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