JP3557328B2 - 円錐型チャンバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅あるいはオフィスビル、ホテルといった居住空間の室内換気ダクトに連結するチャンバーに関するものであり、さらに詳しくは、圧力損失を低減し、給排気グリルの換気量の調整を容易に行うことができるチャンバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ハウスダスト等によるアレルギー疾患や、住宅建材から放出されるホルムアルデヒド等の有害物質によって居住者の健康が害されるといったシックハウス症候群が問題となっている。このような問題は、省エネルギー政策に対応して住宅の気密化が急速に進んでいることにも、その一因があると推測されている。
【0003】
このような問題を解決する手段として、室内空間の換気の問題がますます重要視されてきているが、従来の給排気孔の設置による自然換気では、給排気孔の設置位置や孔径の大きさ、さらには住宅の立地条件や気温や風といった自然条件によって、給排気孔がその役目を果たさないことが明らかとなっている。そこで、住宅の気密性を高めながら、室内換気を自由に制御する計画換気が、これらの種々の問題を解決する最も良い方法であることが認識されてきた。
【0004】
このような計画換気は、新鮮な空気の流入と汚染空気の流出経路を確立して機械的に換気をすることによってのみ成立する。そして、計画換気を行うための換気システムは、配管構造面から、合流管方式とチャンバー方式とに大別される。
【0005】
合流管方式は、図5に示すように、各室に設けられた給排気孔A1〜A5に取り付けられたダクトを途中で合流させて最終的に1本のメインダクト1をファン2に取り付ける方法で、メインダクト1が長くなること、あるいはT型合流管等を使用するために圧力損失が大きくなく欠点がある。そのため、静圧の大きなファン2を用いることが必要とされ、設備コスト、ランニングコストがかかるという問題がある。
【0006】
これに対し、チャンバー方式は、図6に示されるように、各室に設けられた給排気孔B1〜B5に取り付けられたダクトC1〜C5を直接チャンバー3に接続し、チャンバー3からとファン4との間を1本のメインダクト5で接続した構造となっている。ここで、チャンバー3としては、一般的に図7に示されるように、箱型容器7の側面に複数の分岐孔8を形成し、各々の分岐孔8にダクトを取り付けるための枝分岐管9を配設したものが使用されている。また、チャンバー3の上面には、メインダクトを取り付けるための主分岐管10が設けられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示したような構造のチャンバーでは、図8の断面図に示すように、各ダクトからチャンバー3内に流入した空気Dが、お互いにチャンバー3内の中央部において衝突して乱流を発生し、これらの乱流が更にチャンバー3壁面への衝突を繰り返してチャンバー3内に無数の渦流を生じさせるので、圧力損失が大きくなる問題がある。このため、合流管方式よりもダクト内の流量を小さくすることができ、圧力損失を大幅に低減することができる。
【0008】
本発明を基に考察すれば、各ダクト長さの差を小さくすることにより排気グリルによる流量調整が極めて容易に行うことができるといったチャンバー方式の効果が、これまで十分に発揮されていなかった。
【0009】
本発明は、このような従来のチャンバーの問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、各ダクトからチャンバー内に流入する空気の流れを乱さずに主分岐管へ導くことのできる圧力損失の小さなチャンバーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、円筒部材の側面に、少なくとも複数の分岐孔が同じ高さ位置に形成され、当該分岐孔には枝分岐管が配設され、当該円筒部材の一端の開口部には、底面壁を有さない円錐型の底蓋が、円錐型の頂点が当該円筒部材の内側を向くようにして密閉して取り付けられ、当該円筒部材の他端の開口部には、底面壁を有しておらず、円錐型の頂点部が切り取られた上面開口部を有する断面略台形の上蓋が、当該上面開口部が当該円筒部材の外側を向くように取り付けられ、当該上蓋の当該上面開口部には、主分岐管が配設されてなることを特徴とする円錐型チャンバー、が提供される。
【0011】
ここで、本発明の円錐型チャンバーにおいては、底蓋と上蓋の各々の円錐頂点の角度が等しいことが好ましく、分岐孔間の距離が一定であることが好ましい。また、略円錐型の底蓋の頂点の位置が、分岐孔の最下部よりも、上蓋側の高さに位置することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の円錐型チャンバーにおいては、ダクトから流入した空気が、円錐型の底部に衝突して主分岐管へ流されるようになるので、チャンバー内での乱流の発生が抑制され、その結果、圧力損失を低減することが可能となる。
以下、本発明について図面を参照しながら説明するが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明のチャンバー20を構成する各部品を示す斜視図である。先ず、円筒部材11の側面には、少なくとも複数の分岐孔12が一定の高さの位置に設けられている。そして、この分岐孔12にはダクトを取り付けるための枝分岐管13が配設される。枝分岐管13に接続されたダクト14の他端(図示せず)は、各室に設けられた排気孔に取り付けられる。
【0014】
円筒部材11に設けられる分岐孔12の数は要求されるダクト14の接続数によって決定されるが、通常、2〜8箇所程度設けられる。そして、このときに分岐孔12が等間隔に配置されると、チャンバー20内での空気の流れが、チャンバー20内の円筒部材11の中心軸について対称となるので、乱流が発生し難くなり、圧力損失を低下させることができるので好ましい。
【0015】
また、分岐孔12の直径は必要とされる排気量と、ファンの能力に応じてダクト14の径と共に決定される。さらに、円筒部材11の直径は、形成すべき分岐孔12の直径と数、およびチャンバー20の作製工程において望まれる各分岐孔12間の最小距離とによって一義的にその最小値が決定される。一方、円筒部材11の直径を大きくしすぎると、チャンバー20の体積が大きくなるので、不要にデッドスペースを大きくして圧力損失を増大させたり、あるいはチャンバー20が大きくなることで実際の取り付け空間が制限されるといったデメリットが生ずる。したがって、円筒部材11の直径は、このような種々の要因を考慮して適度な値に設定される必要がある。
【0016】
次に、円筒部材11の一端の開口部(下面)には、底面壁を有さない円錐型の底蓋15が、円錐型の頂点が円筒部材11の内側を向くようにして密閉して取り付けられて、チャンバー20の底部を形成する。ここで、底蓋15の頂点部16は幾何学的に尖った角部である必要はなく、角部が面取りされた丸みを帯びた角部であってもかまわない。
【0017】
一方、円筒部材11の他端の開口部(上面)には、底面壁を有さない円錐型の上蓋17が、その頂点部側が円筒部材の外側を向くようにして取り付けられる。ここで、上蓋17の頂点部は、主分岐管を取り付けるために切り取られて、上面が開口した断面略台形の形状を有する。
【0018】
ここで、上蓋17と底蓋15の各々の円錐頂点の角度が等しいと、円錐型チャンバー20内のデッドスペースが低減され、チャンバー20内での乱流の発生も低減されるので、好ましい。しかしながら、底蓋15の円錐頂点の角度αが、上蓋の円錐頂点の角度βよりも極端に小さい場合には、主分岐管18への流路が底蓋15の円錐頂点部16によって遮断される形となり、圧力損失が増大するので好ましくない。反対に、上蓋17の円錐頂点部の角度βが底蓋15の円錐頂点部の角度αよりも極端に小さい場合には、結果的にデッドスペースが広くなり、圧力損失が増加する原因となりやすいために好ましくない。
【0019】
上蓋17の上面開口部には主分岐管18が配設され、主分岐管18にはメインダクト19が取り付けられ、メインダクトの他端(図示せず)は、ファンに接続されることとなる。
【0020】
上述した各部材を接合して形成した円錐形チャンバー20の断面図を図2に示す。図2において、ダクト14からチャンバー20内へ流入した空気は、主分岐管18方向へ流れるが、このとき、底蓋15の中心がチャンバー20内部に突出しているために、各ダクト14から流入する空気がお互いに衝突することが回避されて、底蓋15の斜面によって空気が主分岐管18へと流れていくように整流される。その結果、図7に示した従来のチャンバー3と比較して、乱流の発生が少なく、圧力損失を大幅に低減することが可能となる。
【0021】
このような底蓋15による整流効果を最大限に得るためには、底蓋15の頂点部16の位置が、分岐孔12の最上部の高さを示す点線Kの位置よりも上蓋17側にあることが好ましい。但し、底蓋15の頂点部16の位置が、点線Kよりも下側であっても従来のチャンバー3と比較すると、圧力損失低減の効果は認められる。これはダクト14から流入した一部の空気の流れが底蓋15の斜面により、主分岐管18方向へ整流されるためである。しかしながら、底蓋15の頂点部16の位置が、分岐孔12の最下部の高さを示す点線Lよりも下側に位置するように設定した場合には、従来のチャンバー3と比較して圧力損失の低減の顕著な効果は得られない。
以下、本発明をさらに、実施例により詳細に説明する。
【0022】
【実施例】
(実施例)作製した本発明の円錐型チャンバー20の実施例の二面図を図3に示す。内形が400mm、外形が415mm、幅(高さ)が135mmの円筒部材11に、86mmφの分岐孔12を円筒の中心軸から放射状に8ヶ所に形成した。さらに、この円筒部材11にダクト14を取り付けるための外形が86mmφ、長さが100mmの枝分岐管13を配設した。底蓋15としては裾部の直径が400mmφ、高さが125mmのものを用い、上蓋17としては、裾部の直径が400mmφで、123mmφの上部開口部を有し、高さが100mmのものを使用した。さらに、上蓋17の上部開口部に、外形123mmφ、長さ80mmの主分岐管18を設けた。
【0023】
(比較例)比較例として、先に図7に示した一辺の長さが350mmの正方平板形の底蓋と上蓋を有する直方体型のチャンバー3を使用した。チャンバー3側面には、各辺に2ヶ所、計8ヶ所に外形が86mmφ、長さが80mmの枝分岐管9が取り付けられ、チャンバー3の上蓋の中央には、直径が123mmφで長さが80mmφの主分岐管10が設けられている。
【0024】
上述した実施例と比較例とを、同一のファンに取り付けて流量を変化させたときの圧力損失の大きさを測定した結果を図4に示す。図4より、本発明の実施例の場合で、流量に対する圧力損失の増加割合が小さいことがわかる。例えば、流量を300m3/hrとした場合、従来品の比較例では約7mmAqの圧力損失があるのに対し、本発明の実施例では約2.5mmAqと、約1/3程度にまで圧力損失が低下していることがわかる。
【0025】
【発明の効果】
上述の通り、本発明の円錐型チャンバーによると、各ダクトからチャンバー内に流入する空気の流れを乱さずに主分岐管へ導くことができるので、圧力損失を低減できる効果を奏する。したがって、従来からのチャンバー方式の利点をそのままにして、使用するファンが同じ場合には、排風量を多くして換気能力を向上させることが可能であるし、一方、従来と同等の排風量が得たい場合には、ファンに排風能力の小さいものを使用することができる。したがって、従来よりも、設備費およびファンの消費電力は圧力損失と流量を乗じたものであるからランニングコストを低減することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の円錐型チャンバーの構成部品を示す斜視図である。
【図2】本発明の円錐型チャンバーの断面図である。
【図3】本発明の円錐型チャンバーの実施例の構造を示し、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示す。
【図4】圧力損失の測定結果を示すグラフである。
【図5】合流管方式の配管状態を示す説明図である。
【図6】チャンバー方式の配管状態を示す説明図である。
【図7】従来のチャンバーの構造を示し、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示す。
【図8】従来のチャンバー内での空気の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
1…メインダクト、2…ファン、3…チャンバー、4…ファン、5…メインダクト、7…箱型容器、8…分岐孔、9…枝分岐管、10…主分岐管、11…円筒部材、12…分岐孔、13…枝分岐管、14…ダクト、15…底蓋、16…底蓋の頂点部、17…上蓋、18…主分岐管、19…メインダクト、20…チャンバー、A1〜A5…給排気孔、B1〜B5…給排気孔、C1〜C5…ダクト、D…空気の流れ、α…底蓋の頂点部の角度、β…上蓋の頂点部の角度。
Claims (4)
- 円筒部材の側面に、少なくとも複数の分岐孔が同じ高さ位置に形成され、
当該分岐孔には枝分岐管が配設され、
当該円筒部材の一端の開口部には、底面壁を有さない円錐型の底蓋が、円錐型の頂点が当該円筒部材の内側を向くようにして密閉して取り付けられ、
当該円筒部材の他端の開口部には、底面壁を有しておらず、円錐型の頂点部が切り取られた上面開口部を有する断面略台形の上蓋が、当該上面開口部が当該円筒部材の外側を向くように取り付けられ、
当該上蓋の当該上面開口部には、主分岐管が配設されてなることを特徴とする円錐型チャンバー。 - 当該底蓋と当該上蓋の各々の円錐頂点の角度が等しいことを特徴とする請求項1記載の円錐形チャンバー。
- 当該分岐孔間の距離が一定であることを特徴とする請求項1または2記載の円錐型チャンバー。
- 当該円錐型の底蓋の頂点の位置が、当該分岐孔の最下部よりも当該上蓋側の高さに位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の円錐型チャンバー。
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