JP3556442B2 - 液晶材料および液晶表示素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶材料およびそれを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶表示素子としては、TN(Twisted Nematic )液晶を用いたTN型表示方式が最も広く用いられている。近年、このTN液晶よりも早い応答速度および広い視野角を実現するため、液晶材料として強誘電性液晶や反強誘電性液晶を用いる液晶表示方式がいくつか検討されている。
【0003】
強誘電性液晶を用いた液晶表示素子において、スイッチング方式としては、複屈折方式、二色性方式、光散乱方式が挙げられる。この中で、二色性色素を含有した液晶材料を用いた二色性方式(ゲスト・ホスト方式)は、偏光子が1枚で良いので、光利用効率を考慮すると好ましい方式である。しかしながら、ゲスト・ホスト方式に適した大きなチルト角(45°付近)は、実用上必要な温度範囲 (室温を含む)で得られにくい等の問題により、二色性方式に適しており、高コントラスト、高視野角を実現できる強誘電性液晶は未だ開発されていないのが現状である。
【0004】
また、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子においては、メモリ性(双安定性)を発揮させるために、セルギャップを強誘電性液晶のヘリカルピッチよりも薄く設定するため、耐衝撃性が低いという問題がある。
【0005】
一方、反強誘電性液晶を用いた液晶表示素子においては、焼き付きと呼ばれる電荷の偏在による画像表示不良の発生を考慮すると、1フレーム毎あるいは数フレーム毎に書き込む電圧の極性(正負)を反転させる駆動、いわゆる対称駆動を行うことが好ましい。しかしながら、対称駆動に適した大きなチルト角(約45°)が実用上必要な温度範囲(室温を含む)で得られにくい等の問題により、対称駆動に適しており、高コントラスト、高視野角を実現できる反強誘電性液晶は未だ開発されていないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、高コントラスト、高視野角を実現できる液晶材料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、高コントラスト、高視野角を実現できる液晶表示素子を提供するこいとにある。
【0008】
具体的には、本発明の目的は、二色性方式に適した強誘電性液晶および対称駆動に適した反強誘電性液晶を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、耐衝撃性に優れた液晶表示素子を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明(請求項1)は、強誘電性液晶化合物と、1ないし40重量%の下記式(I)で表されるシロキサン液晶化合物を含む液晶材料を提供する。
【0011】
【化5】
Figure 0003556442
【0012】
(式中、mは0〜20の整数であり、nは0〜8の整数であり、pは0もしくは1、qは0〜2の整数、Rはメチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれたアルキル基、または下記式(II)で表される有機残基であり、Rは光学活性中心を持つアルキル基であり、Xはハロゲンを示す)
【化6】
Figure 0003556442
【0013】
以上のように構成される本発明の液晶材料の好ましい実施の態様は、次の通りである。
【0014】
(1)反強誘電性液晶である液晶材料。
【0015】
(2)強誘電性液晶である液晶材料。
【0016】
(3)前記シロキサン液晶化合物が1ないし20重量%含まれる液晶材料。
【0017】
(4)前記式(I)におけるRが前記式(II)で表される液晶材料。
【0018】
(5)前記強誘電性液晶化合物が前記式(I)で表される液晶材料。
【0019】
また、本発明(請求項2)は、電極膜を有する一対の基板と、前記電極膜が対向するようにして配置された前記一対の基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層は強誘電性液晶化合物と、1ないし40重量%の下記式(I)で表されるシロキサン液晶化合物を含むことを特徴とする液晶表示素子を提供する。
【0020】
【化7】
Figure 0003556442
【0021】
(式中、mは0〜20の整数であり、nは0〜8の整数であり、pは0もしくは1、qは0〜2の整数、Rはメチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれたアルキル基、または下記式(II)で表される有機残基であり、Rは光学活性中心を持つアルキル基であり、Xはハロゲンを示す)
【化8】
Figure 0003556442
【0022】
以上のように構成される本発明の液晶表示素子の好ましい実施の態様は、次の通りである。
【0023】
(1)前記液晶材料が反強誘電性液晶である液晶表示素子。
【0024】
(2)前記液晶材料が強誘電性液晶である液晶表示素子。
【0025】
(3)前記一対の基板の外側に一対の偏光板が配置されており、一方の偏光板の偏光子の軸は前記反強誘電液晶の層の法線方向に対して平行であり、他方の偏光板の偏光子の軸は前記反強誘電液晶の層の法線方向に対して垂直である液晶表示素子。
【0026】
(4)単純マトリクス駆動である液晶表示素子。
【0027】
(5)アクティブマトリクス駆動である液晶表示素子。
【0028】
(9)前記電極膜上に配向膜が形成されている液晶表示素子。
【0029】
(6)前記液晶材料が強誘電性液晶および色素分子を含むゲスト・ホスト液晶である液晶表示素子。
【0030】
(7)前記電極膜上に配向膜が形成されており、前記一対の基板の一方の基板の外側に偏光板が配置されている液晶表示素子。
【0031】
(8)前記液晶材料がポリマー中に強誘電性液晶が分散されてなる高分子分散型液晶である液晶表示素子。
【0032】
(9)前記高分子分散型液晶が配向されている液晶表示素子。
【0033】
(10)前記一対の基板の外側に一対の偏光板が配置されており、一方の偏光板の偏光子の軸は前記高分子分散型液晶の配向方向に対して平行であり、他方の偏光板の偏光子の軸は前記高分子分散型液晶の配向方向に対して垂直である液晶表示素子。
【0034】
(11)前記高分子分散型液晶が色素分子を含む液晶表示素子。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
【0036】
本発明の液晶材料は、シロキサン基を有する液晶化合物を含むものである。この液晶化合物はシロキサン基を有するために、アルキル基のみを有する液晶分子を含む通常の液晶材料よりも液晶状態を示す温度範囲(特に、低温域)が広い。また、このシロキサン液晶化合物は、低粘度であり、通常の液晶材料と自由に混ざり合う。このシロキサン液晶化合物が強誘電性液晶化合物と混合されると、非常に低い飽和電圧を得ることが出来る。
【0037】
特に、シロキサン液晶化合物が1〜40重量%である場合、5Vまたはそれ以下の飽和電圧を得ることが出来る。より好ましいシロキサン液晶化合物の量は、1〜20重量%である。シロキサン液晶化合物が1重量%未満では、液晶表示素子の動作が不安定となる。
【0038】
シロキサン液晶化合物は、液晶分子のシロキサン基により強誘電性もしくは反強誘電性が決定される。すなわち、上記式(I)において、nが偶数(例えば2,4)である場合には強誘電性を示し、nが奇数(例えば3,5)である場合には反強誘電性を示す。なお、nが大きくなると強誘電性を示すようになる。
【0039】
本発明において、強誘電性を示す液晶材料は、二色性色素を含有して、いわゆるゲスト・ホスト液晶にすることにより、最適なチルト角(45°)を示す。これにより、高コントラスト、高視野角を実現でき、二色性方式のスイッチングを行うことができる液晶表示素子を得ることができる。これは、本発明の強誘電性液晶が、室温を含む広い温度範囲でゲスト・ホスト方式に適した大きなチルト角(約45°)を示し、かつ通常の強誘電性液晶材料のように低温領域での応答速度の極端な低下が見られないためである。
【0040】
この場合、液晶材料に含有する二色性色素としては、通常のゲスト・ホスト液晶用二色性色素に加えて、蛍光色素、紫外線吸収色素等を用いることができる。また、液晶材料への二色性色素の含有量は、強誘電性液晶の熱安定性を考慮して、0.1〜10重量%であることが好ましい。なお、この場合には、液晶材料内に含まれた二色性色素が1つの偏光子の役割を担うために、偏光板等の偏光子は1つで良いので、光利用効率が向上する。この場合、一対の基板の一方の基板の外側に偏光板を配置し、偏光板の偏光子の軸を配向膜の配向方向に対して垂直にすることが好ましい。これにより、最大のコントラストを得ることができる。
【0041】
本発明において、反強誘電性を示す液晶材料は、シリコーン骨格を含むことにより、室温を含む広い温度範囲において最適なチルト角(45°)を示すので、対称駆動に適している。また、反強誘電性を示す液晶材料を用いる場合、片方の極性の信号電圧で書き込むことでイオン性不純物の局在を許し、そのことにより焼き付きと呼ばれる表示不良を防止するため、対称駆動を採用することがが望ましい。
【0042】
本発明の反強誘電性を用いた液晶表示素子において、一対の基板の外側に一対の偏光板を配置し、一方の偏光板の偏光子の軸を反強誘電液晶の層の法線方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸を反強誘電液晶の層の法線方向に対して垂直とすることが好ましい。これにより、コントラストを最大にすることができる。
【0043】
本発明の液晶材料は、高分子分散型液晶として用いることにより、耐衝撃性に優れた液晶表示素子を実現することができる。この場合、高分子マトリクスが耐衝撃性の向上に寄与する。この液晶表示素子は、本発明の強誘電性液晶材料(または反強誘電性液晶)を硬化前の高分子材料中に分散させ、これを一対の基板間に介在させ、高分子材料を硬化させると共に基板面とほぼ平行な方向に剪断応力を加えて液晶分子を配向させることにより作製する。この液晶表示素子によれば、強誘電性液晶の長所である高速応答、広視野角、中間調表示可能、メモリー性を維持しながら、耐衝撃性を向上させることができる。
【0044】
本発明の液晶材料を高分子分散型液晶として用いる場合、一対の基板の外側に一対の偏光板を配置し、一方の偏光板の偏光子の軸を高分子分散型液晶の配向方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸を高分子分散型液晶の配向方向に対して垂直とすることが好ましい。これにより、最大のコントラストを得ることができる。
【0045】
本発明の液晶表示素子は、アクティブマトリクス駆動方式にも、単純マトリクス駆動方式にも適用することができる。反強誘電性液晶でアクティブマトリクス駆動する場合、ヒステリシスを持たない閾値電圧の低い反強誘電性液晶材料を用いることが好ましい。なお、本発明にかかる複数の反強誘電性液晶あるいは強誘電性液晶を組み合わせることにより、ヒステリシスを持たない、閾値電圧の低い反強誘電性液晶材料を得ることができる。
【0046】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
【0047】
(実施例1)
まず、ガラス基板の表面上にスパッタリング法により厚さ1000オングストロームのITO膜(透明電極膜)を形成した。次いで、ポリイミドオプトマーAL1051(日本合成ゴム社製、商品名)を希釈剤ACT608(日本合成ゴム社製、商品名)で1/2に希釈した溶液をスピンコータを用いてITO膜上に塗布し、このガラス基板をオーブン内に投入して180℃、30分の加熱乾燥処理を施して、ITO膜上に厚さ700オングストロームのポリイミド膜(配向膜)を形成した。
【0048】
次いで、木綿布を装着した直径15cmのステンレス製ローラを用いてポリイミド膜に通常の条件でラビング処理を施した。このようにして透明電極膜および配向膜を有するガラス基板を2枚作製した。
【0049】
上記のようにして作製されたガラス基板のうち1枚のガラス基板のポリイミド膜上に粒径2μmのシリカ製スペーサ、真シ球SW(触媒化学工業社製、商品名)を全面に散布した。次いで、ポリイミド膜同士が対面するようにして2枚のガラス基板を重ね合わせ、2枚のガラス基板をエポキシ系接着剤により貼り合わせた。 次いで、2枚のガラス基板間に、下記構造式AB3Aで表される液晶材料(反強誘電性液晶)を注入し、さらに2枚のガラス基板の外側に一対の偏光板を配置して単純マトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。なお、一方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電液晶の層の法線方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電液晶の層の法線方向に対して垂直とした。
【0050】
得られた液晶表示素子の透明電極膜に図1に示す信号電圧を印加して、液晶表示素子の表示性能、すなわちコントラストおよび視野角を評価した。また、この液晶表示素子について中間調の表示が可能であるかどうかを調べた。コントラストは、照度計BM−7(トプコン社製、商品名)を用いて、液晶表示素子への電圧印加時、電圧非印加時の基板表面の照度を測定し、その比を算出することにより求めた。また、視野角は液晶表示素子を上下左右方向に回転させ、コントラストが30:1になるときの基板表面の法線からの傾きを測定することにより求めた。また、中間調表示は印加電圧と照度との間の直線関係を確認することにより調べた。
【0051】
その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であり、しかも中間調表示が可能であった。
【0052】
(実施例2)
液晶材料として、下記構造式AB3Aで表される化合物の代わりに、下記構造式AB3Aで表される化合物を40重量%、下記構造式A´B3A´で表される化合物を40重量%、および下記構造式A´´B3A´´で表される化合物を20重量%の混合物を用いること以外は実施例1と同様にして単純マトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。
【0053】
得られた液晶表示素子について実施例1と同様にしてコントラストおよび視野角を評価し、中間調の表示が可能であるかどうかを調べた。その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であり、しかも中間調表示が可能であった。
【0054】
(実施例3)
まず、ガラス基板の表面上に240×640の画素および各画素毎に能動素子(薄膜トランジスタ、TFT)を形成した。次いで、ポリイミドオプトマーAL1051を希釈剤ACT608で1/2に希釈した溶液をスピンコータを用いて画素およびTFT上に塗布し、このガラス基板をオーブン内に投入して180℃、30分の加熱乾燥処理を施して、ITO膜上に厚さ700オングストロームのポリイミド膜(配向膜)を形成した。
【0055】
次いで、木綿布を装着した直径15cmのステンレス製ローラを用いてポリイミド膜に通常の条件でラビング処理を施した。このようにして画素、TFTおよび配向膜を有するTFT基板を作製した。
【0056】
次いで、ガラス基板の表面上にTFT基板の画素に対応させてRGBカラーフィルタを形成し、これに平坦化処理を施した。次いで、この上にスパッタリング法により厚さ1000オングストロームのITO膜(透明電極膜)を形成し、ITO膜上に上記のようにして厚さ700オングストロームのポリイミド膜(配向膜)を形成した。さらに、上記のようにしてポリイミド膜に通常の条件でラビング処理を施してカラーフィルタおよび配向膜を有する対向基板を作製した。
【0057】
上記のようにして作製された対向基板のポリイミド膜上に粒径2μmのシリカ製スペーサ、真シ球SWを全面に散布した。次いで、ポリイミド膜同士が対面するようにして2枚のガラス基板を重ね合わせ、2枚のガラス基板をエポキシ系接着剤により貼り合わせた。
【0058】
次いで、2枚のガラス基板間に下記構造式AB3Aで表される液晶材料(反強誘電性液晶)を注入し、さらに2枚のガラス基板の外側に一対の偏光板を配置してアクティブマトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。なお、一方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電液晶の層の法線方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電液晶の層の法線方向に対して垂直とした。
【0059】
得られた液晶表示素子を60Hz(1フレーム16ms)、書き込み時間60μsで駆動させた。このとき、液晶表示素子の表示性能、すなわちコントラストおよび視野角を評価した。また、この液晶表示素子について中間調の表示が可能であるかどうかを調べた。コントラストおよび視野角は実施例1と同様にして求めた。また、中間調表示はビデオレート画像を表示し、これにより中間調表示能を確認した。
【0060】
その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であり、しかも中間調表示が可能であった。
【0061】
(実施例4)
液晶材料として、下記構造式AB3Aで表される化合物の代わりに、下記構造式AB3Aで表される化合物を40重量%、下記構造式A´B3A´で表される化合物を40重量%、および下記構造式A´´B3A´´で表される化合物を20重量%の混合物を用いること以外は実施例3と同様にしてアクティブマトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。
【0062】
得られた液晶表示素子について実施例3と同様にしてコントラストおよび視野角を評価し、中間調の表示が可能であるかどうかを調べた。その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であり、しかも中間調表示が可能であった。
【0063】
(実施例5)
まず、ガラス基板の表面上にスパッタリング法により厚さ1000オングストロームのITO膜(透明電極膜)を形成した。次いで、ポリイミドオプトマーAL1051を希釈剤ACT608で1/2に希釈した溶液をスピンコータを用いてITO膜上に塗布し、このガラス基板をオーブン内に投入して180℃、30分の加熱乾燥処理を施して、ITO膜上に厚さ700オングストロームのポリイミド膜(配向膜)を形成した。
【0064】
次いで、木綿布を装着した直径15cmのステンレス製ローラを用いてポリイミド膜に通常の条件でラビング処理を施した。このようにして透明電極膜および配向膜を有するガラス基板を2枚作製した。
【0065】
上記のようにして作製されたガラス基板のうち1枚のガラス基板のポリイミド膜上に粒径2μmのシリカ製スペーサ、真シ球SW(触媒化学工業社製、商品名)を全面に散布した。次いで、ポリイミド膜同士が対面するようにして2枚のガラス基板を重ね合わせ、2枚のガラス基板をエポキシ系接着剤により貼り合わせた。 次いで、2枚のガラス基板間に下記構造式AB3で表される液晶材料(強誘電性液晶)96重量%、”mauve ”系色素4重量%の混合物を注入し、さらに一方のガラス基板の外側に偏光板を配置してゲスト・ホスト液晶表示素子を作製した。なお、偏光板の偏光子の軸はラビング処理方向に対して垂直な方向とした。
【0066】
得られた液晶表示素子の透明電極膜に図2に示す信号電圧を印加して、液晶表示素子の表示性能、すなわちコントラストおよび視野角を実施例1と同様にして評価した。
【0067】
その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であった。
(実施例6)
液晶材料として、下記構造式AB3で表される化合物の代わりに、下記構造式AB2で表される化合物を35重量%、下記構造式AB3で表される化合物を30重量%、下記構造式AB4で表される化合物を30重量%、および”mauve ”系色素5重量%の混合物を用いること以外は実施例5と同様にしてゲスト・ホスト液晶表示素子を作製した。
【0068】
得られた液晶表示素子について実施例5と同様にしてコントラストおよび視野角を評価した。その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であった。
【0069】
(実施例7)
下記構造式AB3で表される化合物40重量%、接着剤NOA65(Norland Optical 社製、商品名)60重量%を混合して液晶混合物を作製し、液晶の等方性液体への転移点(約52℃)で一昼夜保存した。
【0070】
次いで、2枚のガラス基板の表面上にそれぞれスパッタリング法により厚さ1000オングストロームのITO膜(透明電極膜)を形成した。次いで、2枚のガラス基板のうち1枚のガラス基板のITO膜上に粒径20μmのスペーサを全面に散布し、ITO膜同士が対面するようにして2枚のガラス基板を重ね合わせ、2枚のガラス基板の相対位置を移動させることができる程度に固定した。
【0071】
このようにして作製されたセルに液晶混合物を注入し、紫外線を照射すると同時に一方のガラス基板を特定方向に移動させて液晶混合物に剪断応力を加えて液晶を配向させた。さらに、2枚のガラス基板の外側に一対の偏光板を配置した。このようにして、図3に示すようなITO膜2を有するガラス基板1間に、ポリマー3中に液晶滴4が分散してなる液晶層が挟持されてなる高分子分散型強誘電性液晶表示素子を作製した。なお、一方の偏光板の偏光子の軸は加えた剪断応力の方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸は加えた剪断応力の方向に対して垂直とした。
【0072】
得られた液晶表示素子の透明電極膜に図1に示す信号電圧を印加して、液晶表示素子の表示性能、すなわちコントラストおよび視野角を実施例1と同様にして評価した。また、この液晶表示素子について耐衝撃性を調べた。なお、耐衝撃性はテンションゲージにより500gの荷重をガラス基板上のある点に加え、欠陥の発生の有無を確認することにより評価した。
【0073】
得られた液晶表示素子について実施例1と同様にしてコントラストおよび視野角を評価した。その結果、コントラストは100:1であり、視野角は60度以上であった。また、耐衝撃性については、500gの荷重を加えても欠陥がなく、非常に優れていた。
【0074】
本発明の反強誘電性液晶にうち一部のもの(例えば、下記構造式AB3A)は、通常の反強誘電性液晶に見られるようなヒステリシスを示さず、ほぼ0V付近の印加電圧から一定の傾きを持って立ち上がる現象を示す。この現象を示す反強誘電性液晶を用いた液晶表示素子は、低電圧による駆動が可能であり、しかも立ち上がりの傾斜を利用して中間調表示が容易である。このため、この液晶表示素子は、特にアクティブマトリクス駆動に適している。この特徴を明らかにするために以下のような評価を行った。
【0075】
(実施例8)
実施例1と同様の方法により単純マトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。この反強誘電性液晶表示素子を接眼レンズ部分にフォトディテクタを取り付けた顕微鏡のステージ上に固定し、電気光学応答(印加電圧−光透過率特性)を観察した。具体的には、反強誘電性液晶表示素子の基板間に−10V〜10V、1Hzの三角波を印加することにより電気光学応答を観察した。
【0076】
その結果、一般的な反強誘電性液晶表示素子に報告されるヒステリシス現象は観察されず、低電圧で一定の傾きを持って応答するV字型の応答特性が観察された。また、10%の透過率変化に相当する印加電圧は0.96Vであり、90%の透過率変化に相当する印加電圧は3.1Vであり、通常の反強誘電性液晶表示素子よりも低電圧で駆動できることが確認された。
【0077】
(実施例9)
実施例3と同様の方法によりセルを作製し、実施例8で使用した液晶材料を等方性液体状態で注入し、室温まで徐冷した。さらにセルの外側に一対の偏光板を配置してアクティブマトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。なお、偏光板の偏光子の軸方向は実施例3と同様にした。このようにしてアクティブマトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。
【0078】
得られた反強誘電性液晶表示素子を60Hz(1フレーム16ms)、書き込み時間60μsecで駆動させた。このときの表示性能、すなわちコントラストおよび視野角を実施例1と同様にして評価した。また、中間調表示が可能かどうかを調べた。中間調表示は、ビデオレート画像を表示することにより確認した。
その結果、コントラストは110:1であり、視野角は60°以上であった。また、アナログ階調の動画表示が可能であり、これにより中間調表示が可能であることが分かった。また、ビデオレート画像を表示する際に視野角が狭くなる現象も観察されなかった。さらに、実施例3においては、信号電圧の最大電圧が20Vであったのに対して、この液晶表示素子では、信号電圧の最大電圧が5Vでも上記特性を実現することが可能であった。
【0079】
(実施例10)
6枚のガラス基板上に、所定の金属マスクを通して、スパッタリング法により、厚さ100オングストロームの幅1cmの帯状の電極を有するITO電極を形成した。次いで、これらITO電極上に、ポリイミドオプトマーAL1051(日本合成ゴム社製、商品名)を希釈剤ACT608(日本合成ゴム社製、商品名)により1/2に希釈した溶液をスピンコータを用いて塗布した。
【0080】
次に、これらガラス基板をオーブン内に投入して、180℃、30分の加熱乾燥処理を施した後、ITO膜上に厚さ700オングストロームのポリイミド膜 (配向膜)を形成した。その後、木綿布を装着した直径15cmのステンレス製ローラを用いて、ポリイミド膜に通常の条件でラビング処理を施した。このようにして、表面に透明電極膜および配向膜を有する6枚のガラス基板を作製した。
【0081】
上述のように作製された6枚のガラス基板のうち、3枚のガラス基板のポリイミド膜上に粒径2μmのシリカ製スペーサである真シ球SW(触媒化学工業社製、商品名)を全面に散布した。次いで、スペーサが散布されたガラス基板と、スペーサが散布されないガラス基板とを、ポリイミド膜同士が対面するようにしてガラス基板を重ね合わせ、2枚のガラス基板同士をエポキシ系接着剤により貼り合せた。その結果、幅1cmの上下電極で挟まれた複数の領域を有する3つの液晶セルを得た。
【0082】
以上のようにして形成した3つの液晶セルに、それぞれ次の3種の液晶組成物を注入した。
【0083】
(1)下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される化合物13重量%、および下記構造式A’’’ B3で表される化合物87重量%からなる組成物
(2)下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される化合物28重量%、および下記構造式A’’’ B3で表される化合物72重量%からなる組成物
(3)下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される化合物75重量%、および下記構造式A’’’ B3で表される化合物25重量%からなる組成物
更に、2枚のガラス板の外側に一対の偏光板を配置して、単純マトリクス駆動の反強誘電性液晶表示素子を作製した。なお、一方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電性液晶層の法線方向に対して平行とし、他方の偏光板の偏光子の軸は反強誘電性液晶層の法線方向に対して垂直とした。
【0084】
上述のすべての液晶性組成物、液晶物質は反強誘電性を示した。
【0085】
得られた液晶素子の1電極部分を用いて、1Hz、±15Vの振幅を有する三角波を印加し、飽和電圧Vsat.を測定した。その結果を図4に示す。
【0086】
図4から明らかなように、下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される化合物が40wt% 以下のときに、Vsat.が5V以下となり、低電圧での駆動が可能であることがわかる。
【0087】
(実施例11)
実施例10で調製した液晶組成物(1)を用いたTFT液晶素子と、下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される液晶化合物のみを用いたTFT液晶素子と、実施例3に示すように、5Vで駆動した。その結果、液晶組成物(1)を用いたTFT液晶素子のコントラストは70:1であったが、下記構造式A’’’ B3A’’’ で表される液晶化合物のみを用いたTFT液晶素子のコントラストは10:1であり、2種の液晶の混合物からなる液晶組成物(1)を用いたTFT液晶素子のコントラストが、はるかに高いことがわかる。
【0088】
【化9】
Figure 0003556442
【0089】
【化10】
Figure 0003556442
【0090】
【化11】
Figure 0003556442
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、二色性方式のスイッチングが可能な強誘電性液晶および対称駆動に適した反強誘電性液晶を提供することができ、これらの液晶材料を用いることにより高コントラスト、高視野角の液晶表示素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶材料(反強誘電性液晶)を用いた液晶表示素子に印加する信号電圧の波形を示す図。
【図2】本発明の液晶材料(強誘電性液晶)を用いた液晶表示素子に印加する信号電圧の波形を示す図。
【図3】本発明の液晶材料を用いた液晶表示素子を示す概略図。
【図4】シロキサン液晶化合物と飽和電圧との関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…ガラス基板
2…ITO膜
3…ポリマー
4…液晶滴。

Claims (2)

  1. 強誘電性液晶化合物と、1ないし40重量%の下記式(I)で表されるシロキサン液晶化合物を含む液晶材料。
    Figure 0003556442
    (式中、mは0〜20の整数であり、nは0〜8の整数であり、pは0もしくは1、qは0〜2の整数、Rはメチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれたアルキル基、または下記式(II)で表される有機残基であり、Rは光学活性中心を持つアルキル基であり、Xはハロゲンを示す)
    Figure 0003556442
  2. 電極膜を有する一対の基板と、前記電極膜が対向するようにして配置された前記一対の基板間に挟持された液晶層とを具備し、前記液晶層は強誘電性液晶化合物と、1ないし40重量%の下記式(I)で表されるシロキサン液晶化合物を含むことを特徴とする液晶表示素子。
    Figure 0003556442
    (式中、mは0〜20の整数であり、nは0〜8の整数であり、pは0もしくは1、qは0〜2の整数、Rはメチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれたアルキル基、または下記式(II)で表される有機残基であり、Rは光学活性中心を持つアルキル基であり、Xはハロゲンを示す)
    Figure 0003556442
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