JP3555965B2 - インバータの制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明はインバータにより誘導電動機(IM)を磁束一定で速度制御するインバータの自動トルクブースト制御およびすべり補償を行う制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、汎用インバータでは、誘導電動機の速度制御を磁束一定制御で行うために、周波数と電圧の比を一定制御するV/f一定制御が採用されている。一般に、図10に示すT形等価回路における一次インピーダンスR,xによる電圧降下を無視して、端子電圧Vを周波数fに比例して制御すると、低周波数領域では一次インピーダンス降下分の影響が大きくなり、励磁電圧Eが低下して負荷が要求するトルクを発生できなくなる。そのため、従来、汎用のインバータでは図11に示すように端子電圧Vと周波数fの関係を低周波域で図示実線で示すようにパターンを設定変更して上記問題を解決していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図11のような固定化されたV/fパターンでは、負荷が変化したときの特性に合ったV/f比を誘導電動機に与えることが困難となり、特に低周波領域でトルク不足となったり、逆に過励磁になって過電流が流れたりするという欠点を有していた。
【0004】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、V/fパターンを負荷に適合するように自動的に調整するとともにすべり補償も併用してセンサレス速度制御まで行うようにしたインバータの制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の目的を達成するために、第1発明は、インバータに接続された誘導電動機を磁束一定で速度制御するものにおいて、
誘導電動機の回転数指令ω*と励磁電流指令I*および誘導電動機の1次電流を演算部に入力し、この演算部にて、1次電流から1次磁束を基準軸とするd−q軸上の各電流成分i1d,i1qを算出し、すべり角周波数ωを、モータ定数である二次抵抗R’と漏れインダクタンスLσとI*、i1d,i1qを式(35)を用いて求め、
【数35】
Figure 0003555965
一次角周波数ωをω*とωを加算することにより求め、これによりすべり補償制御を行い、
次にω,i1d,i1q,I*,一次抵抗Rおよび励磁インダクタンスMと1次漏れインダクタンスl の和から得られる1次インダクタンスLを用いて、
d軸電圧指令v1d*を、v1d*=R・i1dから求め、
q軸電圧指令v1q*を、v1q*=ωL・I*+R1qから求めて、インバータの自動トルクブースト制御を行い、
電圧成分v1d*,v1q*と1次角周波数ωによりPWM指令を発生させ、前記自動トルクブースト制御によりV/fパターンを誘導電動機に適合するように自動的に調整するとともに、前記すべり補償制御も併用するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
【作用】
回転数指令ω*と励磁電流指令I*が演算部に入力され、そして、1次電流から1次磁束を基準軸とするd,q軸上の各電流成分i1d,i1qを算出すると、次式によってすべり角周波数ωが求められる。
【0008】
ω=R’(i1d−I )/Lσ・i1q
ωが求められると、ω*とωの和から1次角周波数ωが算出される。
【0009】
一方、1次電流が演算部に入力されると、まず3相−dq変換を行って出力に各電流成分i1d,i1qを得た後、ω,i1d,I*,i1q,R,Lから次式を用いてd−q軸電圧成分v1d*,v1q*を求める。
【0010】
1d=R・i1d
1q=E+R・i1q=ωL・Io+R・i1q
上記のようにして求められた電圧成分とωをPWM回路に入力させてその出力にPWM指令を発生さてインバータを制御する。
【0014】
【実施例】
以下この発明の実施例を図面に基づいて説明するに当り、まず、汎用インバータのV/f一定制御に適した等価回路として非対称T−2形等価回路を用い、この等価回路を変形し、オートトルクブーストとすべり補償の制御方法を導出する制御原理を述べる。図1は非対称T−2形等価回路図を示すもので、図1において、IM定数は対称T形等価回路の定数で、Rは1次抵抗、Mは励磁インダクタンス、lは1次漏れインダクタンス、lは2次漏れインダクタンス、Rは2次抵抗、Sはすべりを用いると次式のような関係となる。
【0015】
xm’=ω・L
xσ=ω・Lσ=ω・{(L/M)・L−L
’=(L/M)・R
但し、L=M+l,L=M+l,ω:1次角周波数
ここで、図1の2次回路を図2に示すように直列から並列回路に変形してみる。まず、直列→並列変換の一般式を導出する。並列回路のインピーダンスZ(ベクトル)は(1)式で表わされる。
【0016】
【数1】
Figure 0003555965
【0017】
(1)式より直列回路と並列回路の関係は、(2),(3)式で表わすことができる。
【0018】
【数2】
Figure 0003555965
【0019】
【数3】
Figure 0003555965
【0020】
(2)式と(3)式を割算すると次の関係が得られる。
【0021】
【数4】
Figure 0003555965
【0022】
(4)式よりR、Xは次の(5),(6)式となる。
【0023】
【数5】
Figure 0003555965
【0024】
(6)式を(2)式に代入してRを求めると次のようになる。
【0025】
【数6】
Figure 0003555965
【0026】
(5)式を(3)式に代入してXを求めると次のようになる。
【0027】
【数7】
Figure 0003555965
【0028】
(7)式よりRは次のようになる。
【0029】
【数8】
Figure 0003555965
【0030】
(8)式よりXは次のようになる。
【0031】
【数9】
Figure 0003555965
【0032】
上述のように直列→並列変換の結果、図3の等価回路が得られる。図3の等価回路において、L ,Xで電流I ,I 01 が90°遅れるため、Rに流れる電流I2が後述する図4の破線で示すように直交する。このようにインダクタンスと抵抗の回路が並列となった等価回路を導出することにより、電流 ,I 01 と電流I が直交関係となる。これによりすべり周波数の条件を容易に導くことが可能となる。ここで、図3よりすべり角周波数ω=S・ωの条件を求める。
【0046】
図3より次の関係がある。
【0047】
=XIo1=RI、この式に(9),(11)式を代入して整理すると、(17)式のようになる。
【0048】
【数16】
Figure 0003555965
【0049】
(17)式よりωは(18)式の形で表わすこともできる。
【0050】
【数17】
Figure 0003555965
【0051】
図3よりベクトル図を描くと図4のようになる。図4のベクトル図より、1次磁束軸を基準とするd−q軸上での1次電圧を求めると、次のようになる。
【0052】
1d=R・i1d・・・(19)
1q=E+R・i1q=ωL・Io+R・i・・・(20)
1d=Io+I01・・・(21)
1q=I・・・(22)
また、すべり角周波数ωは(18)式を用いると、次の(23)式から求まる。
【0053】
【数18】
Figure 0003555965
【0054】
(19)式から(23)式を用いて、速度指令ω*、励磁電流指令I*を入力とする制御演算部のブロック図を示すと図5に示す第1実施例のようになる。
【0055】
図5において、1はω*とωを加算する加算部で、この加算部1でω*とωを加算すると出力に1次角周波数ωが得られる。このωはI*と乗算部2で乗算された後、さらにLを乗算して加算部3の1方の入力に与える。加算部3 の他方の入力にはIMの電流i,iを3φ−dq変換部4でi1d,i1qに変換したi1qとRの乗算出力が与えられる。これにより加算部3の出力にはv1q*が得られる。また、i1dとRを乗算してv1d*を得る。5は偏差部で、プラス入力にはi1dが、マイナス入力にはI*が供給され、その偏差出力は割算部6 に与えられる。割算部6にはi1qが与えられて割算され、その出力がR’/Lσと乗算されてその出力にωを得る。
【0056】
上記のように構成された制御演算部は図6に示すインバータを含めた全体構成図の符号10で示す部分に用いられる。図6において、11は制御演算部10から出力されるv1d*,v1q*およびωが供給されるPWM回路で、このPWM回路11はv1d*,v1q*およびωにより出力にPWM信号を発生し、このPWM信号によりインバータ12が制御される。これによりIM13のオートトルクブースト制御とすべり補償制御が行われる。図6中、14はコンバータ、15は電解コンデンサ、16は変流器である。
【0057】
次に第2実施例について述べる。第2実施例は1次電圧を基準軸としたときの制御方法で、この方法は現在出力している1次電圧Vを基準にして、そのとき流れている1次電流Iの1次電圧基準軸γ−δでの各成分iγ,iδを検出するもので、図7はγ−δ軸のベクトル図である。検出した1次電流を用いて、1次磁束を一定に保つために必要な電圧V =vγは次の(24)式から求められる。
【0058】
【数19】
Figure 0003555965
【0059】
次にω算出のために│Io1│,│I│(Io1,Iともベクトル)を求める。まず、γ軸とI(ベクトル)のなる角をφ,γ軸とI(ベクトル)のなす角をψとすると、ψ,φ,Iは次式のようになる。
【0060】
【数20】
Figure 0003555965
【0061】
(25)〜(27)式を用いてIo1,Iを求めると次式のようになる。
【0062】
01=Icos(ψ−φ)−Io・・・(28)
=Isin(ψ−φ)・・・(29)
(28),(29)式を用いてωを(18)式より求める。ωを求めた後、(24)〜(29)式を用いて、速度指令ω*、励磁電流指令Io*を入力とする制御演算部の構成を図8に示す。図8において、20はω*とωとを加算する加算部で、この加算部20の出力には1次角周波数ωが得られる。このωとIo*は(24)式の演算を行うV演算部21に入力される。22は(18),(25)〜(29)式の演算を行うω演算部、23は3φ−γδ変換部23である。3φ−γδ変換部23はIMの電流i,iを3φ−γδ変換して出力にiγ,iδを得るもので、この出力iγ,iδはV演算部21およびω演算部22に供給される。ω演算部22に得られたωは加算部20に供給される。
【0063】
上記のように構成された制御演算部は前記実施例と同様にインバータを含めた全体構成図として示す図9の符号30で示す部分に用いられる。前記図6と異なる点はPWM回路11に入力される値がVとωになったことだけで、残りの部分は図6と同一である。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、1次電流を検出することにより、V/fパターンを負荷に適合するように自動的に調整してトルクブースト制御を行って、トルク特性の向上を図ることができるとともに、1次電流より、容易にすべり周波数を算出することができるので、すべり補償が可能となり、これにより、センサレス速度制御容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の原理を述べるための誘導電動機の非対称T−2形等価回路である。
【図2】直列並列変換回路を説明する説明図である。
【図3】非対称T−2形等価回路の変形回路図である。
【図4】1次磁束軸を基準とするd−q軸上での1次電圧を求めるベクトル図である。
【図5】この発明の第1実施例を示す制御演算部のブロック図である。
【図6】第1実施例を適用したこの発明の全体構成図である。
【図7】1次電圧基準軸γ−δでの各成分を検出するベクトル図である。
【図8】この発明の第2実施例を示す制御演算部のブロック図である。
【図9】第2実施例を適用したこの発明の全体構成図である。
【図10】誘導電動機の対称T形等価回路図である。
【図11】誘導電動機を磁束一定制御を行うためのV/fパターン図である。
【符号の説明】
1,3,20…加算部
2…乗算部
5…偏差部
6…割算部
21…V演算部
22…ω演算部
10,30…制御演算部
11…PWM回路

Claims (1)

  1. インバータに接続された誘導電動機を磁束一定で速度制御するものにおいて、
    誘導電動機の回転数指令ω*と励磁電流指令I*および誘導電動機の1次電流を演算部に入力し、この演算部にて、1次電流から1次磁束を基準軸とするd−q軸上の各電流成分i1d,i1qを算出し、すべり角周波数ωを、モータ定数である二次抵抗R’と漏れインダクタンスLσとI*、i1d,i1qを式(30)を用いて求め、
    Figure 0003555965
    一次角周波数ωをω*とωを加算することにより求め、これによりすべり補償制御を行い、
    次にω,i1d,i1q,I*,一次抵抗Rおよび励磁インダクタンスMと1次漏れインダクタンスl の和から得られる1次インダクタンスLを用いて、
    d軸電圧指令v1d*を、v1d*=R・i1dから求め、
    q軸電圧指令v1q*を、v1q*=ωL・I*+R1qから求めて、インバータの自動トルクブースト制御を行い、
    電圧成分v1d*,v1q*と1次角周波数ωによりPWM指令を発生させ、前記自動トルクブースト制御によりV/fパターンを誘導電動機に適合するように自動的に調整するとともに、前記すべり補償制御も併用するようにしたことを特徴とするインバータの制御方法
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