JP3555902B2 - 紫外線吸収能を有する新規リン酸ジエステル類、その製造法及びこれを含有する化粧料 - Google Patents

紫外線吸収能を有する新規リン酸ジエステル類、その製造法及びこれを含有する化粧料 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は日焼け止め化粧料の有効成分として有用な紫外線(UV)吸収基を有するリン酸ジエステル化合物、その製造法及びこれを含有する化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、日焼け、老化、皮膚癌等の皮膚疾患に紫外線が深く関わっていることが明らかになり、更に近年のオゾン層の破壊による紫外線量の増加の話題と相俟って、紫外線の皮膚に対する有害性が問題となっている。
【0003】
このような状況下において、皮膚を紫外線から守ることが、近年重視され、紫外線防御物質を配合した日焼け止め製剤、スキンケア用品、ファンデーション等々の多種の化粧品が上市されている。
【0004】
紫外線は、長波長紫外線(UV−A;320〜400nm)、中波長紫外線(UV−B;290〜320nm)、短波長紫外線(UV−C;〜290nm)に区別され、中でも地表に到達するUV−A、UV−Bの皮膚に対する有害性が明らかにされ、これらの紫外線を防御するために多くの紫外線防御物質が開発されている。
【0005】
例えば、UV−A防御物質としては酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の無機化合物や、4−t−ブチル−4′−メトキシジベンゾイルメタン等の油溶性の有機化合物が知られており、またUV−B防御物質としては、パラアミノ安息香酸、サリチル酸、メトキシ桂皮酸、ベンゾフェノン誘導体等が知られている。前者は、微粒子化、超微粒子化、疎水化表面処理、他物質との複合化などの方法により、後者は金属塩などの誘導体として、それぞれUV防御効果を高めたり、目的に応じた化粧品素材として使用可能な素材とする工夫が行われている。
このような紫外線吸収剤の効果を高める工夫の際にとりわけ重要となるのは、皮膚に対する安全性と、皮膚上での残存性である。
【0006】
皮膚に紫外線吸収剤を適用する場合の安全性は、紫外線吸収剤自体の皮膚刺激性のみならず、紫外線吸収剤が光を吸収した際に生じる皮膚刺激性も考慮しなければならない。この問題に対処すべく紫外線吸収剤の紫外線防御効果を低下させずに皮膚に直接接しないようにするための工夫が行われている。例えば、特開昭62−181213号公報及び特開昭60−81124号公報には、紫外線吸収剤をモンモリロナイト等の粘土鉱物にインターカレーションさせる方法が開示されている。この方法によれば、紫外線吸収剤を粘土鉱物の層間に挿入させて皮膚への安全性を高めることができる。しかしながら、かかる紫外線吸収剤を油剤と混合したり、エマルジョン系に配合した場合に、層間に挿入された紫外線吸収剤が油剤や界面活性剤分子と交換され、紫外線吸収剤が染み出してしまい皮膚と直接接してしまうという問題点があった。
【0007】
また、皮膚上での残存性については、特に有機系の紫外線吸収剤の場合、汗や脂等で流れ落ちやすいため、紫外線吸収効果が長続きしないという問題点がある。この問題点を解決するため、紫外線吸収剤を不溶性の金属塩とし、粉体上に被覆する技術が特開昭60−130655号公報等に開示されている。しかしながらこの場合、紫外線吸収剤被覆粉体の紫外線防御効果は十分でなく、高い効果を得ようとすると、粉体の配合量を多くしなければならず、きしむとか粉っぽいといった使用感が悪くなるといった問題点がある。
【0008】
一方、紫外線吸収剤を適当なマイクロカプセル形成剤でマイクロカプセル化する技術が特開平2−251240号公報に開示されている。この場合、マイクロカプセル形成剤として化粧品用途における安全性の高い物質を使わなければいけないことや、紫外線防御効果も低下させないようにカプセルの膜厚や形状を制御しなければならないといった技術的に困難な問題を伴っていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、皮膚に対する安全性が高く、また皮膚上での残存性の高い持続性の良好な紫外線吸収剤を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、安全かつ持続力の高い紫外線吸収剤を得るべく鋭意研究を行ったところ、安全性の高いリン酸ジエステル塩に紫外線吸収基を導入することに成功し、更に、このものは各種油剤や他の有機系の油性紫外線吸収剤と良好なチキソトロピー性ゲルを形成し、その結果、安全性のみならず、皮膚上での残存性及び油性紫外線吸収剤の保留性に優れ、化粧料用紫外線吸収剤として極めて有用であることを見出し本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、次の一般式(1)
【0012】
【化5】
Figure 0003555902
【0013】
(式中、Rは少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、Rは炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Lは炭素数2〜40の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR−O−R−を示し、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、2価以上の多価金属イオン、アンモニウム基、炭素数2〜14のアルカノールアンモニウム基、炭素数1〜14のアルキルアンモニウム基を示し、nはMの原子価を示す)
で表わされるリン酸ジエステル類、これを含有する化粧料及びこのリン酸ジエステルの製造法を提供するものである。
【0014】
本発明のリン酸ジエステル類は、上記一般式(1)で表わされるものであり、式中Rは少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、このベンゼン核の存在により紫外部、例えば波長290〜320nmに紫外線吸収能を有するものであるが、特に置換基を有していてもよいシンナモイル又はベンゾイル基が好ましい。この置換基としてはアルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。これらはシンナモイル又はベンゾイル基のベンゼン核上に1〜3個置換していてもよい。ここで、アルコキシ基としては、炭素数1〜22、特に炭素数1〜10のものが好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、イソアミルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基等が挙げられる。また、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基のアルキル基は炭素数1〜22のものが好ましく、さらに炭素数1〜10のものがより好ましく、かかるアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基等が挙げられる。Rのより好ましい具体例としては、p−メトキシシンナモイル基、o−メトキシシンナモイル基、p−エトキシシンナモイル基、o−エトキシシンナモイル基、o,p−ジメトキシシンナモイル基、3−ヒドロキシ−4−メトキシシンナモイル基、ベンゾイル基、p−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾイル基、p−(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾイル基、p−ヒドロキシベンゾイル基、o−ヒドロキシベンゾイル基、p−アミノベンゾイル基、o−アミノベンゾイル基等が挙げられる。このうち、最も好ましいのはp−メトキシシンナモイル基及びベンゾイル基である。
【0015】
また、(1)式中、Rで示されるアルキレン基において、挿入される酸素原子は1〜3個が好ましい。Rの具体例としてはエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、3−メチルペンタメチレン、モノオキサペンタメチレン、トリオキサウンデカメチレン、メチルエチレン、メチルプロピレン、メチルブチレン、メチルペンタメチレン基等が挙げられる。
【0016】
(1)式中、Lで示される酸素原子が挿入されていてもよいアルキル基においては、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、その炭素数は8〜20が好ましく、挿入される酸素原子は1〜3個が好ましい。Lの具体例としてはエチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘキサエイコシル基、2−エチルヘキシル基、イソステアリル基、3,7−ジメチルオクチル基、メトキシヘキシル基、エトキシヘキシル基、6−(2−エチルヘキシロキシ)ヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
Mで示されるものとしては、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、バリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、鉄原子、エタノールアンモニウム、アンモニウム、エチルアンモニウム等が挙げられるが、特にカルシウム原子、アルミニウム原子が特に好ましい。
【0018】
一般式(1)中、Rが置換基を有していてもよいシンナモイル基又は置換基を有していてもよいベンゾイル基であり、Rが炭素数2〜12のアルキレン基であり、Lが炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、あるいはR−O−R−(ここでRは置換基を有していてもよいシンナモイル基又は置換基を有していてもよいベンゾイル基、Rは炭素数2〜12のアルキレン基)であり、Mがカルシウム原子又はアルミニウム原子である化合物がより好ましく;このうちLが炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である化合物が特に好ましい。
【0019】
本発明化合物(1)の特に好ましいものとしては、次の式(1a)〜(1w)で表わされるものが挙げられる。
【0020】
【化6】
Figure 0003555902
【0021】
【化7】
Figure 0003555902
【0022】
【化8】
Figure 0003555902
【0023】
【化9】
Figure 0003555902
【0024】
本発明化合物(1)は、例えば次の反応式A又はBにより製造することができる。
【0025】
【化10】
Figure 0003555902
【0026】
(式中、R、R、n及びMは前記と同じ意味を示し、RはRで示されるアシル基よりカルボニル基を除いた残基を示し、Xはハロゲン原子を示す)
すなわち、反応式Aに示す如くカルボン酸(2)又はその酸ハロゲン化物(2′)とジオール(3)とを反応させ、モノエステル体(4)を得、これにオキシ塩化リンを反応させてリン酸ジエステル(5)とし、塩交換又は中和により本発明化合物(1a)〜(1i)が得られる。
【0027】
カルボン酸(2)とジオール(3)との反応はベンゼン、トルエン、ヘキサン等の不活性溶媒中、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒存在下、カルボン酸に対し1〜10mol倍量、好ましくは3〜5mol倍量のジオール(3)を用いて70〜130℃で3〜50時間反応させるとよい。カルボン酸(2)の酸ハロゲン化物(2′)とジオール(3)との反応は、ピリジン、トリアルキルアミン、アルカリ金属水酸化物等の塩基性触媒存在下0〜100℃で行うとよい。得られたモノエステル体(4)とオキシ塩化リンとの反応は、テトラヒドロフラン(THF)等の不活性溶媒中、トリエチルアミン等の塩基の存在下、オキシ塩化リンに対して1.5〜2.5mol倍量、好ましくは2.0〜2.2mol倍量のモノエステル体(4)を用いて、−10〜10℃で行うとよい。こうして得られたリン酸ジエステルをメタノール、エタノール、水等の極性溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸アルミニウム等を用いて、中和又は塩交換を行うことにより容易に本発明化合物(1a)〜(1i)を得ることができる。
【0028】
【化11】
Figure 0003555902
【0029】
(式中、R、R、R、L、n、M及びXは前記と同じものを示す)
又、反応式Bに従えば、前述のようにカルボン酸(2)又はそのハロゲン化物(2′)とジオール(3)とを反応させ、モノエステル体(4)を得た後、これに低温でオキシ塩化リンを反応させて中間体(6)とし、更にアルコール(7)を反応させてリン酸ジエステル(8)とした後、塩交換により本発明化合物(1h)〜(1w)が得られる。
モノエステル体(4)とオキシ塩化リンから中間体(6)を得る反応は、THF等の不活性溶媒中、トリエチルアミン等の塩基の存在下、オキシ塩化リンに対してモノエステル体(4)を0.5〜1.5mol倍量、好ましくは1.0〜1.1mol倍量用いて−80〜10℃で行えばよいが、−50〜5℃で行うのが好ましい。中間体(6)とアルコール(7)との反応は中間体(6)に対してアルコール(7)を1.0〜1.5mol倍量、好ましくは1.0〜1.1mol倍量用いてTHF等の不活性溶媒中、−10〜10℃で行うことができる。こうして得られたジリン酸エステル(8)はメタノール、エタノール、水等の極性溶媒中、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸アルミニウム等を用いて、中和又は塩交換を行うことにより容易に本発明化合物(1h)〜(1w)を得ることができる。
【0030】
かくして得られる本発明化合物(1)は優れた紫外線吸収作用、特にUV−B吸収作用を有し、また各種油剤や有機系油性紫外線吸収剤に対して優れたゲル化能を示し、皮膚上での残存性や有機系油性紫外線吸収剤の保留性、すなわち持続性の高い化粧品とすることができる。
【0031】
ここで用いる各種油剤としては、皮膚からの水分の蒸発を抑制したり、使用感触を向上させる目的で使用される炭化水素油、エステル油、シリコーン油、動植物油等が挙げられるが、特に本発明のリン酸ジエステル塩でチキソトロピーゲルを形成しやすい芳香族系炭化水素油、脂肪族系炭化水素油、飽和又は不飽和の油脂あるいは合成エステル油が好ましい。具体的には、例えば流動パラフィン、スクアラン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、アジピン酸ジイソプロピル、イソオクタン酸ミリスチル、1−イソステアロイル−3−ミリストイルグリセリン、ラウリン酸ヘキシル、ホホバ油、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、トリオクタン酸グリセリル等が挙げられる。
【0032】
また、有機系油性紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等が挙げられ、具体的には、例えばパラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、パラ−N,N−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラメトキシサリチル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0033】
本発明の化粧料への本発明化合物(1)の配合量は特に限定されないが、少なすぎると紫外線吸収効果が少なく、多すぎると皮膚の感触が悪化するので、0.01〜80重量%、特に0.1〜30重量%が好ましい。また、上記各種油剤は0.1〜99.9重量%、特に1.0〜80重量%配合するのが好ましい。
【0034】
本発明の化粧料には、上記必須成分の他、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、固形又は半固形油脂、保湿剤、細胞間脂質(セラミド等)、他の紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料、薬効成分、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤(ポリエーテル変性シリコーンを含む)等の乳化剤、洗浄剤、無機顔料、有機粉体等を適宜配合することができる。
【0035】
本発明の化粧料は、上記成分を常法に従い混合、攪拌することにより製造し得る。本発明の化合物(1)は前記のように各種油剤や有機系油性紫外線吸収剤をゲル化できるので油性化粧料、O/W又はW/O乳化化粧料とすることができ、具体的には乳液、クリーム、ファンデーション等として用いることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の化合物(1)を用いた化粧料は、皮膚内へ浸透しにくく、また皮膚上で拡散しにくいものであることから、長時間にわたる対紫外線防御効果を示し、しかも皮膚に対する安全性が高いものである。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例により、具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
なお、実施例、試験例中の化合物(1a)〜(1w)は前記と同じものである。
【0038】
実施例1 化合物(1a)の合成:
1)パラメトキシ桂皮酸20g(0.112mol)、1,10−デカンジオール90g(0.517mol)、p−トルエンスルホン酸0.5g、トルエン300ml、ヘキサン150mlを1L四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、ディーンスタークトラップを用いて水が溜出しなくなるまで還流した。反応終了後、飽和重曹水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロマトにより精製し、38gのモノエステル体を白色結晶として得た。GLC分析により純度は98%、200MHzH−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=1.7に水酸基、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.5−1.9及び3.7,4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
【0039】
2)オキシ塩化リン0.93g(6.078mmol)をTHFに溶かし100ml四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、氷冷した。1)で合成したモノエステル体4.43g(13.3mmol)及びトリエチルアミン1.22gをTHF30mlに溶かして滴下した。この時反応温度は−5〜5℃に保った。そのまま24時間攪拌を続けた後、水0.25g、トリエチルアミン0.62gを加え再び0℃で24時間攪拌した後、析出してきた固体を濾過により除き、溶媒を留去して得られた残渣を酢酸エチルに溶かし、水洗した。溶媒を留去して得られた残渣を更に1N塩酸50mlに分散させ、50℃で7時間攪拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチルで抽出し、2.5gのリン酸ジエステル(1a)が白色結晶として得られた。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.3−1.7及び3.95−4.15及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0040】
実施例2 化合物(1b)の合成:
実施例1で得たリン酸ジエステル(1a)1.4gをエタノールに溶解し、酢酸カルシウム1.0g、水、エタノールを加え60℃で5時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、1.3gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1b)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.2−1.6及び3.75−3.95及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0041】
実施例3 化合物(1j)の合成:
1)パラメトキシ桂皮酸70g(0.393mol)、1,6−ヘキサンジオール266g(2.25mol)、p−トルエンスルホン酸2.0g、トルエン600ml、ヘキサン300mlを2L四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、ディーンスタークトラップを用いて水が溜出しなくなるまで還流した。反応終了後、飽和重曹水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去すると、92.6gのモノエステル体が白色結晶として得られた。GLC分析により純度は95%、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=1.7に水酸基、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.5−1.9及び3.7,4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
【0042】
2)オキシ塩化リン15.8g(0.103mol)をTHFに溶かし300ml四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、−60℃に冷却し、攪拌しながら1)で合成したモノエステル体30g(0.108mol)及びトリエチルアミン11gをTHF100mlに溶かして滴下した。この時反応温度は−30℃以下に保った。そのまま3時間攪拌を続けた後、0℃まで昇温しヘキサデカノール26.1g(0.108mol)及びトリエチルアミン11gをTHFに溶かして滴下した。この時反応温度は5℃以下に保った。そのまま0℃で24時間攪拌した後、水2gを加え更に6時間攪拌した。その後、析出してきた固体を濾過により除き、溶媒を留去して得られた残渣を酢酸エチルに溶かし、希塩酸で洗浄した後、水洗した。溶媒を留去して得られた固体をエーテルで洗浄し、30gのリン酸ジエステル(1j)が白色結晶として得られた。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.95−4.15及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0043】
実施例4 化合物(1k)の合成:
実施例3、2)で得られたリン酸ジエステル(1j)14gをエタノールに溶解し、酢酸カルシウム10g、水、エタノールを加え60℃で5時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、14gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1k)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.75−3.95及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0044】
実施例5 化合物(1l)の合成:
実施例3、2)で得られたリン酸ジエステル(1j)10gをエタノールに溶解し、酢酸アルミニウム10g、水、エタノールを加え50℃で1時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、10gの白色固体としてリン酸ジエステルアルミニウム塩(1l)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.9−4.1及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0045】
実施例6 化合物(1c)の合成:
1)パラヒドロキシ桂皮酸25g(0.152mol)をメタノール100mlに溶解させ、濃硫酸1gを加え8時間還流させた。室温まで放冷後、倍量の水を加え析出してきた固体を濾過により集め、水洗後、乾燥し、25gの黄白色固体を得た。これをトルエンにより再結晶し、21gのパラヒドロキシ桂皮酸メチルエステルを黄白色固体として得た。
【0046】
2)1)で得られたパラヒドロキシ桂皮酸メチルエステル10g(0.056mol)を50mlのアセトンに溶かし、炭酸カリウム7.8g(0.057mol)を加えた。これに1−臭化オクチル12g(0.062mol)を加え、50時間加熱還流した。室温まで放冷後、析出してきた固体を濾過により除き、濾過母液から溶媒を留去し、得られた残渣を酢酸エチル100mlに溶解し、水洗後更に溶媒を留去し15gの黄白色結晶を得た。これをヘキサンにより再結晶し、14gのパラオクチロキシ桂皮酸メチルエステルを白色固体として得た。
【0047】
3)2)で得られたパラオクチロキシ桂皮酸メチルエステル8.0g(0.028mol)、1,6−ヘキサンジオール40g(0.198mol)、パラトルエンスルホン酸0.35gを100mlのトルエンに加えディーンスタークトラップを用いて20時間加熱還流させた。室温まで放冷後、300mlのトルエンで希釈し、水、飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフで精製し、9.2gのヘキサンジオールモノパラオクチロキシ桂皮酸エステルを黄色オイルとして得た。GLC分析により純度は98%、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=0.9にメチル基、δ=1.4−1.9及び3.7,4.0,4.2にメチレン、δ=1.6に水酸基、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
【0048】
4)オキシ塩化リン0.956g(0.006mmol)をTHFに溶かし100ml四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、氷冷した。3)で得られたモノエステル5.0g(0.013mol)及びトリエチルアミン1.31gをTHF50mlに溶かして滴下した。この時反応温度は−5〜5℃に保った。そのまま24時間攪拌を続けた後、水1gを加え再び0℃で24時間攪拌した後、析出してきた固体を濾過により除き、溶媒を留去して得られた残渣を2N塩酸100mlに分散させ、40℃で4時間攪拌した。室温まで放冷後、酢酸エチルで抽出し、水洗後、溶媒を留去して得られた残渣をエタノールに溶解し、酢酸カルシウム5.0g、水を加え40℃で1時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、3.6gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1c)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=0.9にメチル基、δ=1.3−1.75及び3.7,3.9,4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は98%であった。
【0049】
実施例7 化合物(1p)の合成:
1)パラメトキシ桂皮酸100g(0.562mol)、1,4−ブタンジオール250g(2.78mol)、p−トルエンスルホン酸4.0g、トルエン300mlを2L四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、ディーンスタークトラップを用いて水が溜出しなくなるまで還流した。反応終了後、倍量のトルエンで希釈し、水、飽和重曹水、水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去すると、134.5gのモノエステル体が白色結晶として得られた。GLC分析により純度は95%、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=1.7に水酸基、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.55,1.6−1.9及び3.7,4.25にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
2)オキシ塩化リン17g(0.11mol)をTHFに溶かし500ml四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、−60℃に冷却し、攪拌しながら1)で合成したモノエステル体31g(0.118mol)及びトリエチルアミン11.5gをTHF100mlに溶かして滴下した。この時反応温度は−30℃以下に保った。そのまま3時間攪拌を続けた後、0℃まで昇温しヘキサデカノール30g(0.124mol)、及びトリエチルアミン11.5gをTHFに溶かして滴下した。この時反応温度は5℃以下に保った。そのまま0℃で24時間攪拌した後、水2gを加え更に6時間攪拌した。その後析出してきた固体を濾過により除き、溶媒を留去して得られた残渣を酢酸エチルに溶かし、希塩酸で洗浄した後、水洗した。溶媒を留去して得られた固体をヘキサンで再結晶し、50gのリン酸ジエステルが白色結晶として得られた。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.5,1.7,1.85及び3.85,4.1,4.25にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。2)で得られたリン酸ジエステル15gをエタノールに溶解し、酢酸アルミニウム10g、水、エタノールを加え60℃で5時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、15gの白色固体としてリン酸ジエステルアルミニウム塩(1p)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.5,1.6,1.75及び3.85,3.95,4.25にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0050】
実施例8 化合物(1w)の合成:
実施例7、2)で得られたジリン酸エステル(1p)15gをエタノールに溶解し、酢酸カルシウム10g、水、エタノールを加え60℃で5時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、15gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1w)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.6,1.75及び3.85,3.95及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0051】
実施例9 化合物(1t)の合成:
1)パラメトキシ桂皮酸41g(0.23mol)、3−メチルペンタンジオール266g(2.25mol)、p−トルエンスルホン酸1.0g、トルエン600mlを2Lの四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、ディーンスタークトラップを用いて水が溜出しなくなるまで還流した。反応終了後、飽和重曹水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去すると、53gのモノエステル体が無色粘稠液体として得られた。GLC分析により純度は95%、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)よりδ=1.7に水酸基、δ=3.8にメトキシ基、δ=1.0にメチル基、δ=1.5−1.9及び3.7,4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
【0052】
2)オキシ塩化リン15.3g(0.100mol)をTHFに溶かし300mlの四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下、−60℃に冷却し、攪拌しながら1)で合成したモノエステル体30g(0.108mol)及びトリエチルアミン11gをTHF100mlに溶かして滴下した。この時反応温度は−30℃以下に保った。そのまま3時間攪拌を続けた後、0℃まで昇温しヘキサデカノール26.1g(0.108mol)及びトリエチルアミン11gをTHFに溶かして滴下した。この時反応温度は5℃以下に保った。そのまま0℃で24時間攪拌した後、水2gを加え更に6時間攪拌した。その後、析出してきた固体を濾過により除き、溶媒を留去して得られた残渣を酢酸エチルに溶かし、希塩酸で洗浄した後、水洗した。溶媒を留去して得られた固体をエーテルで洗浄し、30gのリン酸ジエステルが白色結晶とて得られた。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9及び1.0にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.95−4.15及び4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0053】
3)2)で得られたリン酸ジエステル14gをエタノールに溶解し、酢酸カルシウム10g、水、エタノールを加え60℃で5時間攪拌した後、倍量の水を加え、室温まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水、アセトンで洗浄後、乾燥させ、14gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1t)を得た。200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)より、δ=3.8にメトキシ基、δ=0.8−0.9及び1.0にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.8−4.0,4.2にメチレン、δ=6.3,7.7にオレフィン、δ=6.9,7.5に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0054】
実施例10 化合物(1v′)の合成:
1)安息香酸64g(0.525mol)、1,4−ブタンジオール500g(5.68mol)、p−トルエンスルホン酸0.5g、トルエン500mlを2Lの四ツ口フラスコに入れ、ディーンスタークトラップを用いて水が溜出しなくなるまで還流した。反応終了後、倍量のトルエンで希釈し数回洗浄後、更に飽和重曹水、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、溶媒を留去し、80gのモノエステル体を無色オイルとして得、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)により、δ=1.55−2.0、3.68及び4.35にメチレン基、δ=8.05及び7.4−7.6に芳香環、δ=2.65に水酸基のそれぞれプロトンシグナルを確認した。
【0055】
2)オキシ塩化リン25g(0.163mol)を50mlTHFに溶かし、500mlの四ツ口フラスコに入れ、窒素導入下ドライアイス/アセトンにより−50℃以下に冷却した。次に、モノベンゾエート(4−ベンゾイルオキシ−1−ブタノール)32.3g(0.167mol)、トリエチルアミン16.5g(0.163mol)をTHF約50mlに溶解し、滴下した。このとき反応温度は−30℃以下に保った。そのまま3時間攪拌を続けた後、0℃まで昇温し1−ヘキサデカノール41.5g(0.171mol)、トリエチルアミン16.5g(0.163mol)をTHF約100mlに溶解し滴下した。このとき反応温度は5℃以下に保った。そのまま氷冷下一晩攪拌を続けた後、水10gを加えしばらく攪拌し、析出している白色固体(塩酸塩)を濾過により除いた後、溶媒を留去した。得られた残渣に2NのHCl約200mlを加え40〜50℃で2時間攪拌した。放冷後、倍量の水で希釈し、析出してきた固体を濾過により集め、水洗後、エタノールで再結晶して、リン酸ジエステルが50gの白色結晶として得られ、200MHzH−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)により、δ=0.8−0.9
にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.9−4.1,4.35にメチレン基、δ=8.05及び7.4−7.6に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0056】
3)2)で得られたリン酸ジエステル20gをエタノール100mlに溶解し、酢酸カルシウム19gを水に溶かして加え、50℃で2時間攪拌した。次に倍量の水で希釈し、0℃まで冷却した。析出してきた固体を濾過により集め、水洗、アセトン洗浄し、乾燥後20gの白色固体としてリン酸ジエステルカルシウム塩(1v′)を得、200MHz H−NMR(溶媒CDCl、TMS標準)により、δ=0.8−0.9にメチル基、δ=1.2−1.6及び3.7−3.9,4.35にメチレン基、δ=8.05及び7.4−7.6に芳香環のそれぞれプロトンシグナルを確認した。31P−NMRより純度は99%であった。
【0057】
試験例1 (各種油剤に対するゲル形成能)
各種リン酸ジエステル金属塩の油ゲル化能を評価した。評価の方法としては、各化合物1gをサンプル管にはかりとり、これに油剤19gを加えた後、超音波ミキサーで約3分間混合し、均一に分散又は溶解させた。これを一昼夜静置した後、状態を肉眼観察し、下記の基準で評価した。この結果を表2に示す。
なお、油ゲル化能は次の基準で評価した。
【表1】
◎:透明な粘稠ゲル
○:粘度の低いゲル
△:ゲルを形成するが油のしみ出しがみられる
×:不溶
【0058】
【表1】
Figure 0003555902
【0059】
上記表2から、本発明化合物は芳香環やエステル結合等を有する親水性油剤のゲル化に有効であることが判る。
【0060】
試験例2 (UV吸収能)
油剤(アジピン酸ジイソプロピル)に対して本発明化合物(1l)で油ゲルを形成した。このうち10mgを石英板に挟み込み(光路長8μm)、UVスペクトルを測定したところ、図1の如く、十分なUV−B吸収能を示した。
【0061】
実施例11
以下の組成を有する日焼け止めO/W型クリームを常法に従い調製した。
【0062】
【表3】
(組成) (重量%)
実施例2の化合物(1b) 3.0
モノセチルリン酸 0.5
スクワラン 2.0
パルミチン酸イソプロピル 2.0
オリーブ油 2.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ブチルパラベン 0.1
グリセリン 5.0
L−アルギニン 0.5
エタノール 5.0
メチルパラベン 0.3
カーボポール941(BF Goodrich 社製) 0.25
精製水 残余
【0063】
このものは、紫外線防御効果が長時間持続し、かつ皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【0064】
実施例12
以下の組成を有する日焼け止めW/O型ファンデーションを常法に従い作成した。
【0065】
【表4】
Figure 0003555902
【0066】
このものは、紫外線防御効果が長時間持続し、かつ皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【0067】
実施例13
以下の組成を有する二層型日焼け止め乳液を常法に従い調製した。
【0068】
【表5】
(組成) (重量%)
実施例4の化合物(1k) 5.0
流動パラフィン 10.0
スクワラン 5.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 5.0
パーフルオロポリエーテル 10.0
ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体 1.0
グリセリン 2.0
エタノール 5.0
精製水 残余
酸化亜鉛 7.5
メトキシ桂皮酸オクチル 2.0
香料 0.01
【0069】
このものは、紫外線防御効果を長時間にわたって示し、しかも皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【0070】
実施例14
以下の組成を有するO/W型日焼け止めクリームを常法に従い調製した。
【0071】
【表6】
(組成) (重量%)
実施例9の化合物(1t) 0.5
ジカプリン酸ネオペンチルグリコール 5.0
ホホバ油 1.0
メチルフェニルポリシロキサン 3.0
セタノール 2.0
ステアリルアルコール 1.0
自己乳化型モノステアリン酸グリセライド 2.0
モノステアリン酸ソルビタン 1.0
p−メトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5.0
ブチルパラベン 0.2
グリセリン 5.0
エタノール 1.0
精製水 残余
メチルパラベン 0.5
【0072】
このものは紫外線防御効果が長時間持続し、かつ皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【0073】
実施例15
以下の組成を有するW/O型日焼け止めクリームを常法に従い調製した。
【表7】
(組成) (重量%)
実施例7の化合物(1p) 1.0
スクワラン 2.0
ミリスチン酸オクチルドデシル 3.0
α−イソステアリルグリセリルエーテル 2.0
ジメチルポリシロキサン 3.0
微粒子酸化チタン 3.0
ブチルパラベン 0.2
グリセリン 10.0
硫酸マグネシウム 1.0
精製水 残余
メチルパラベン 0.3
【0074】
このものは、紫外線防御効果が長時間持続し、かつ皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【0075】
実施例16
以下の組成を有する二層型日焼け止め乳液を常法に従い調製した。
【0076】
(組成) (重量%)
実施例10の化合物(1v′) 5.0
流動パラフィン 10.0
スクワラン 5.0
オクタメチルシクロテトラシロキサン 5.0
パーフルオロポリエーテル 10.0
ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合体 1.0
グリセリン 2.0
エタノール 5.0
精製水 残余
酸化亜鉛 7.5
メトキシ桂皮酸オクチル 2.0
香料 0.01
【0077】
このものは、紫外線防御効果を長時間にわたって示し、しかも皮膚に対する安全性に優れるものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例2における本発明化合物(1)のUV−B吸収能を示す図である。

Claims (9)

  1. 次の一般式(1)
    Figure 0003555902
    (式中、R1 は少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、R2 は炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Lは炭素数8〜20の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、2価以上の多価金属イオン、アンモニウム基、炭素数2〜14のアルカノールアンモニウム基、炭素数1〜14のアルキルアンモニウム基を示し、nはMの原子価を示す)で表わされるリン酸ジエステル類。
  2. 一般式(1)中、R1 が置換基を有してもよいシンナモイル基又は置換基を有してもよいベンゾイル基である請求項1記載のリン酸ジエステル類。
  3. 1 がp−メトキシシンナモイル基である請求項2記載のリン酸ジエステル類。
  4. 1 がベンゾイル基である請求項2記載のリン酸ジエステル類。
  5. 一般式(1)中、Mがカルシウム原子又はアルミニウム原子である請求項1、2、3又は4記載のリン酸ジエステル類。
  6. 次の一般式(1)
    Figure 0003555902
    (式中、R 1 は少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、R 2 は炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Lは炭素数2〜40の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR 1 −O−R 2 −を示し、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、2価以上の多価金属イオン、アンモニウム基、炭素数2〜14のアルカノールアンモニウム基、炭素数1〜14のアルキルアンモニウム基を示し、nはMの原子価を示す)で表わされるリン酸ジエステル類を含有する化粧料。
  7. 上記リン酸ジエステル類を0.01〜80重量%含有する請求項6記載の化粧料。
  8. 次の一般式(1)
    Figure 0003555902
    (式中、R 1 は少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、R 2 は炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Lは炭素数2〜40の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又はR 1 −O−R 2 −を示し、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、2価以 上の多価金属イオン、アンモニウム基、炭素数2〜14のアルカノールアンモニウム基、炭素数1〜14のアルキルアンモニウム基を示し、nはMの原子価を示す)で表わされるリン酸ジエステル類と油剤及び/又は有機系油性紫外線吸収剤とを含有する化粧料。
  9. 少なくとも一つのベンゼン環を有するカルボン酸、又はその酸ハロゲン化物に、炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を有するジオールを反応させ、得られたモノエステル体にオキシ塩化リンを反応させて一般式(6)
    Figure 0003555902
    (式中、R 1 は少なくとも一つのベンゼン環を有するアシル基を示し、R 2 は炭素数2〜12の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示す)で表わされる化合物を得、当該化合物(6)に一般式L−OH(ここでLは炭素数8〜20の炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す)で表わされるアルコールを反応させ、次いで塩交換又は中和することを特徴とする一般式(1″)
    Figure 0003555902
    (式中、Mは水素原子、アルカリ金属イオン、2価以上の多価金属イオン、アンモニウム基、炭素数2〜14のアルカノールアンモニウム基、炭素数1〜14のアルキルアンモニウム基を示し、nはMの原子価を示し、R 1 、R 2 及びLは前記と同じ)で表わされるリン酸ジエステル類の製造法。
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