JP3555657B2 - 低欠陥窒化物半導体基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子、あるいは太陽電池、光センサー等の受光素子に使用される窒化物半導体(InxAlyGa1−x−yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる窒化物半導体素子の成長方法に関し、特に基板上に低欠陥の窒化物半導体を成長させる成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、窒化物半導体素子を用いた発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)の研究が活発に行われており、高輝度の発光ダイオード(LED)や室温連続発振可能な半導体レーザー(LD)が実現されている。
このような窒化物半導体素子を形成する一般的な方法は、サファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と異なる異種基板を用い、その上にバッファ層を介して窒化物半導体が成長しないかあるいは成長しにくい材料からなるSiO2等の保護膜を成長させストライプ形状とし、この上に窒化物半導体を選択成長させる方法が知られている。
また、サファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と異なる異種基板を用い、その上に下地層となる窒化物半導体を成長させ、該窒化物半導体を部分的にストライプ形状とし、形成された下地層の側面に窒化物半導体の横方向の成長を利用しながら該下地層上に窒化物半導体を選択成長させる方法が知られている。
これらは、異種基板上に窒化物半導体素子を成長させる場合に、格子定数の違いから発生する転位を低減できる窒化物半導体の横方向の成長方法であり、エピタキシャルラテラルオーバーグロウス(Epitaxially lateral over growth:ELOG)と呼ばれている。
このような成長方法により得られた窒化物半導体基板は、従来の窒化物半導体の成長方法に比べ、低欠陥である窒化物半導体基板が期待できる。
【0003】
例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1988)pp.L309−L312には、サファイア基板上に成長させた窒化ガリウム上にSiO2等の保護膜を部分的に形成して、この上に新たな窒化ガリウムを成長させることが開示されている。SiO2上には窒化ガリウムが直接成長しないため、保護膜の窓部に露出した窒化ガリウムが成長核となり、保護膜の上の領域において窒化ガリウムが横方向に成長する。したがって、SiO2保護膜上に低転位密度の窒化ガリウムを成長させることができる。
【0004】
また、特開平11−145516号公報には、SiO2保護膜を形成する代わりに、シリコン基板上に成長したAlGaN層をストライプ状にエッチングしてシリコン基板を部分的に露出させ、この上に窒化ガリウムを成長させる方法が開示されている。窒化ガリウムはシリコン基板上にはエピタキシャル成長しないため、ストライプ状のAlGaN層を成長核として、窒化ガリウムが横方向にエピタキシャル成長する。したがって、シリコン基板の露出部分の上に低転位密度の窒化ガリウムを成長させることができる。
【0005】
これらのELOG成長法によれば、従来のバッファ層を用いて成長させた窒化物半導体層に比べて、結晶欠陥密度を2桁以上減少させることができる。したがって、これらのELOG成長法によって製造された窒化物半導体基板に、LED素子、LD素子、受光素子などの種々の窒化物半導体素子を形成することにより、窒化物半導体素子の寿命特性を飛躍的に向上させることができる。例えば、ELOG成長させた窒化ガリウム基板を用いて製造された窒化ガリウム系化合物半導体レーザは、1万時間以上の連続発振を達成することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述にある前記の成長方法では、基板上に窒化物半導体を形成すると、保護膜上の窒化物半導体層に発生する結晶欠陥は減少するものの、その上に成長させる窒化物半導体が保護膜の分解等により結晶性を低下させる問題があった。
【0007】
また、この成長方法において、酸化ケイ素等の保護膜上に窒化物半導体を成長させる場合、酸化ケイ素が分解する場合があり、酸化ケイ素が分解すると、酸化ケイ素上から窒化物半導体が異常成長したり、窒化物半導体の結晶性の低下を招くことがある。一方、酸化ケイ素の分解を抑えるために低い温度で窒化物半導体を成長させると、窒化物半導体の単結晶が得られにくく、窒化物半導体層の結晶性が低下する。
【0008】
上述にある後記の成長方法については、窒化物半導体の成長時に酸化ケイ素等の保護膜を有しないために、保護膜の分解による結晶性の低下をなくすことができる。さらに、AlGaN層をエッチングすることによりストライプ状の核を形成し、この核から窒化ガリウムを横方向に成長させることにより、低欠陥の窒化物半導体層を得ることができる。しかしながら、エッチングにより形成した核となるストライプ状AlGaNの端面は、形状が良くないため、窒化ガリウムの横方向成長時にできる接合部が拡大する可能性がある。この窒化ガリウム同士の接合部とは欠陥が集中する部分であるため、欠陥が多い接合部が拡大することにより窒化物半導体の結晶性が低下する問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記に示すELOG成長により製造された窒化物半導体基板よりも、結晶性がよく、量産性を向上させた、優れた発光素子及び受光素子を形成することのできる窒化物半導体基板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本件の発明に係る窒化物半導体基板の製造方法は、窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板上に、第1の保護膜を所望のパターン形状に形成する第1の工程と、前記第1の保護膜の窓部に窒化物半導体から成る第1のシード結晶を成長させ、前記第1の保護膜を取り除くことにより、核となる第1のシード結晶をストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状に形成する第2の工程と、第1の窒化物半導体層を前記第1のシード結晶を覆うように成長させる第3の工程と、前記第1の窒化物半導体層上であって、第1のシード結晶上部、及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部に、第2の保護膜を所望のパターン形状に形成する第4の工程と、前記第2の保護膜の窓部に窒化物半導体から成る第2のシード結晶を成長させ、前記第2の保護膜を取り除くことにより、核となる第2のシード結晶をストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状に形成する第5の工程と、第2の窒化物半導体層を前記第2のシード結晶を覆うように成長させる第6の工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記第1の窒化物半導体層、及び/又は第2の窒化物半導体層は基板全面に成長させることを特徴とする。前記第1のシード結晶、及び/又は第2のシード結晶は、周期的に形成される。
【0012】
また、本発明において第1及び第2の保護膜としては、融点1200℃以上の金属、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及びこれらの多層膜等を用いることができる。
【0013】
また、本発明において異種基板には、サファイア、スピネル又は炭化ケイ素を用いることができる。
【0014】
本発明において、第1のシード結晶の幅(Ws)と第1のシード結晶の窓部の幅(Ww)との比Ww/Wsが、1〜20である。
【0015】
本発明において、第2のシード結晶の厚さが、5μm以上である。
【0016】
本発明において、第2の窒化物半導体層は、第1のシード結晶上部及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部に空洞を有する。
【0017】
本件の発明に係る窒化物半導体基板は、窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板上に、ストライプ状、格子状又は島状、多角形を有する柱状をした窒化物半導体から成る第1のシード結晶と、前記第1のシード結晶を覆って成る第1の窒化物半導体層と、前記第1の窒化物半導体層上であって、第1のシード結晶上部、及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部を避けた位置にストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状をした窒化物半導体から成る第2のシード結晶と、前記第2のシード結晶を覆って成る第2の窒化物半導体層と、前記第2のシード結晶どうしの間には空洞とを有する窒化物半導体基板である。
【0018】
前記第1の窒化物半導体層、及び/又は第2の窒化物半導体層は基板全面に有することを特徴とする。また前記第1のシード結晶は、等間隔で形成された窒化物半導体から成る。前記第2のシード結晶は、周期的なストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状に形成された窒化物半導体から成る。
【0019】
本発明において、第1のシード結晶の幅(Ws)と第1のシード結晶の窓部の幅(Ww)との比Ww/Wsが、1〜20であり、第2のシード結晶の厚さが、5μm以上である。
【0020】
上記製造方法により得られた窒化物半導体基板は、窒化物半導体から成るシード結晶をエッチングにより形成するのではなく、窓部を有する保護膜を形成し、この保護膜の窓部にシード結晶を成長させ、その後、保護膜のみを除去することにより、核となるシード結晶を形成する。これにより、窒化物半導体から成るシード結晶の端面を劣化させることなく、シード結晶より窒化物半導体層を成長させることができる。そのため、窒化物半導体層を成長させるのに核となるシード結晶をエッチングで形成した場合よりも、端面形状がよく、横方向に成長した窒化物半導体同士の接合部にできる結晶欠陥の数及び幅を減少することができる。さらに、第2のシード結晶を形成し、第2の窒化物半導体層を成長させるため、より低欠陥の窒化物半導体基板を得ることができる。これは、第2のシード結晶を第1の窒化物半導体層の結晶性のよい範囲の窒化物半導体上に形成するためである。
第1の窒化物半導体層において、第1のシード結晶上部及び第1の窒化物半導体同士の接合部には、結晶欠陥が集中するため、この範囲を避け、第2のシード結晶を形成する。
また、第2の窒化物半導体層を成長させる時に、ストライプ状の第2のシード結晶の窓部には空洞を有するため、第2の窒化物半導体層には結晶欠陥の転位が延びず、結晶性の良い窒化物半導体基板を得ることができる。
【0021】
第2のシード結晶の厚さが、5μm以上であると、第2の窒化物半導体層の成長後に、第2のシード結晶の窓部に空洞を有することができる。このため、第2の窒化物半導体層は、結晶欠陥の多い第2のシード結晶の窓部からの転位の伝播を防ぐことができる。さらに、空洞を有することで基板の反りを緩和することもできる。
【0022】
また、保護膜に融点が1200℃以上の金属、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、又はこれらの多層膜を用いる。これらの保護膜材料は、その表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有する。そのため、保護膜上に、窒化物半導体を成長させることなく、保護膜の窓部に窒化物半導体を成長させることができる。
【0023】
第1のシード結晶の幅(Ws)と第1のシード結晶の窓部の幅(Ww)との比Ww/Wsが、1〜20となるように調整することにより、結晶欠陥の転位を減らすことができる。これは、第1のシード結晶に結晶欠陥が集中するためであり、第1のシード結晶の窓部の幅を広くすることにより、第1のシード結晶から横方向に成長する第1の窒化物半導体を結晶性よく得ることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図6は、本発明の成長方法により得られる、異種基板上に成長された窒化物半導体を模式的に示す断面図である。
異種基板1上に第1の保護膜2を成膜し、その後、シード結晶を成長させるための窓部をパターン形状に形成し、さらに、第1の保護膜2の窓部よりバッファ層(図示されていない)、第1のシード結晶3を成長させ、その後、第1の保護膜2のみ取り除き、第1のシード結晶3を核として第1の窒化物半導体層4を横方向に成長させる。
さらに、第1の窒化物半導体層4上に第1の保護膜2と同様に、第2の保護膜5をパターン形成し、第2の保護膜5の窓部より第2のシード結晶6を成長させ、その後、第2の保護膜5のみ取り除き、第2のシード結晶6を核として第2の窒化物半導体層7を横方向に成長させることにより窒化物半導体基板を得る
【0026】
ここで、第1のシード結晶3、第1の窒化物半導体層4、第2のシード結晶6、第2の窒化物半導体層7は、いずれも一般式InxAlyGa1−x−yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)によって表されることができ、これらは互いに異なる組成であってもよい。
【0027】
さらに、前記第1のシード結晶3、第1の窒化物半導体層4、第2のシード結晶6、第2の窒化物半導体層7には、アンドープ(不純物をドープしない状態、undope)、Si等のn型不純物又は、Mg等のp型不純物をドープした窒化物半導体を用いることができる。
【0028】
また、上記第1の保護膜2及び第2の保護膜5には、表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有するものを用いる。
【0029】
また、第2のシード結晶6は、第1のシード結晶上及び第1の窒化物半導体層4同士の接合部上を避けて形成されることにより、第2のシード結晶は結晶欠陥の少ない核となる。
【0030】
また、異種基板1上に第1のシード結晶3を成長する前に、バッファ層を成長させることにより、異種基板と窒化物半導体との格子定数不整を緩和し、結晶欠陥を低減することができ、さらに、表面モフォロジーが良好な窒化物半導体を得ることができる。
【0031】
図1〜図6は、実施の1形態として、窒化物半導体の成長方法を示す工程断面図である。
以下に、本発明における実施の1形態の窒化物半導体の成長方法及び好適な材料について説明する。
【0032】
まず、図1に示すように、異種基板1上に、第1の保護膜2をCVD、スパッタまたは、蒸着等の方法により成膜する。
本発明において、異種基板1には、具体例として、(0001)面[C面]、(11−02)面[R面]、及び(112−0)面[A面]のいずれかを主面とするサファイア、並びに(111)面を主面とするスピネル(MgAl2O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、その他ZnS、ZnO、Si及び窒化物半導体と格子接合する酸化物基板等、窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。
ここで基板1が、(0001)面[C面]を主面とするサファイアであるとき、前記第1の保護膜2がそのサファイアの(112−0)面[A面]に対して垂直なストライプ形状を有していること[窒化物半導体の(101−0)[M面]に垂直方向にストライプを形成すること]が好ましく、また(112−0)面[A面]を主面とするサファイアであるとき、前記第1の保護膜2はそのサファイアの(11−02)面[R面]に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましく、また(111)面を主面とするスピネルであるとき、前記第1の保護膜2はそのスピネルの(110)面に対して垂直なストライプ形状を有していることが好ましい。
また本発明の成長方法において、異種基板1となる材料の主面をオフアングルさせた基板、さらにステップ状にオフアングルさせた基板を用いることもできる。
【0033】
次に前記第1の保護膜2としては、窒化物半導体が成長しないか又は、成長しにくい材料からなるものが好ましく、具体例としては、酸化ケイ素(SiOx)、窒化ケイ素(SiNx、酸化チタン(TiOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、又はこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。
さらに第1の保護膜2の膜厚としては特に限定されないが、2μm〜5μmであれば、窓部より窒化物半導体が成長しやすくなるため好ましい。
【0034】
また、前記第1の保護膜をストライプ状に形成する場合において、第1の保護膜のストライプ幅としては、特に限定されないが、シード結晶を成長させるための第1の保護膜の窓部幅が好ましくは2μm〜10μm、より好ましくは3μm〜5μmとし、第1の保護膜の幅としては、10μm〜18μm、好ましくは15μm〜17μmである。
【0035】
前記第1の保護膜をエッチングによりパターン形成後、エッチングにより荒れた保護膜の端面をウェットエッチングをすることにより保護膜の端面の荒れをなくすことができる。これにより、第1の保護膜の窓部から成長させる第1のシード結晶の結晶特性、特に端面形状をよくすることができる。
【0036】
次に、図2に示すように第1の保護膜2の窓部上にMOCVD等の方法によりバッファ層(図示されていない)及び第1のシード結晶3を成長させ、その後、第1の保護膜のみを除去する。
まず、異種基板1上に第1の保護層2を形成させた後、バッファ層を成長させる。バッファ層としては、第1のシード結晶3よりも低温で成長させるものが好ましく、例えばAlN、GaN、AlGaN、InGaN等が用いられ、900℃以下300℃以上の温度で、膜厚0.5μm〜10オングストロームで成長される。このように異種基板1上にバッファ層を900℃以下の温度で形成すると、異種基板1と第1のシード結晶3との格子定数不整を緩和し、第1のシード結晶3の結晶欠陥が少なくなるため好ましい。
【0037】
次に、保護膜の窓部上に成長させたバッファ層上に、第1のシード結晶3を成長させる。この第1のシード結晶3としては、アンドープののGaN、n型不純物をドープしたGaN、またはp型不純物をドープしたGaNを用いることができる。また第1のシード結晶3は、バッファ層よりも高温で成長させるのが好ましく、具体的には900〜1100℃、より好ましくは1050℃で成長され、また膜厚は、特に限定されず、好ましくは1〜5μm、より好ましくは2〜3μmである。
この範囲の膜厚で第1のシード結晶を成長させることにより、基板の反り及び異常成長を抑制することができるため好ましい。
さらに、第1のシード結晶3を成長後、第1の保護膜2のみ除去し、図2に示す核を形成する。
【0038】
次に、図3に示すように、第1の窒化物半導体層4を、第1のシード結晶と同様の成長条件で前記第1のシード結晶3を核として成長させる。
第1の窒化物半導体層4としては、アンドープのGaN、n型不純物をドープしたGaN、またはp型不純物をドープしたGaNを用いることができ、前記第1のシード結晶3を核として横方向に成長させる。
第1の窒化物半導体層4の好ましい膜厚としては、5〜20μmであり、さらに好ましくは7〜15μmである。
この範囲より薄い膜厚であると、第1の窒化物半導体4の最上面が成長しきれないために空隙ができ、鏡面を得ることができない。
また、この範囲より厚い膜厚で成長させると、基板に反りが生じ、結晶欠陥が拡散する問題が生じる。
【0039】
第1の窒化物半導体4を成長後、図4に示すように、第2の保護膜5を第1の保護膜2と同様の成膜条件で成膜し、エッチングにより窓部を有するためのパターン形状を形成する。第2の保護膜5の成膜条件としては、特に限定しないが、第1の保護膜の成膜条件と
同様でよく、第2の保護膜5の膜厚としては、5〜10μm、さらに好ましくは6〜8μmである。ここで、第2の保護膜5は第1のシード結晶上部及び、第1の窒化物半導体の接合部を覆うようにパターン形成され、後に第2のシード結晶が成長する第2の保護膜の窓部幅が等間隔で形成されるのが好ましい。
第2の保護膜5も第1の保護膜と同様に、窓部をRIE等のエッチングにより形成後、ウェットエッチングにより第2の保護膜5の端面形状をよくする。
【0040】
次に、第2の保護膜5の窓部より、第2のシード結晶6を第1のシード結晶と同様の条件で成長させる。ここで、第2のシード結晶6の膜厚としては、後の工程で第2の窒化物半導体層を成長させたときに、第2のシード結晶6の窓部に空洞を有する形状とする膜厚であれば特に限定されず、好ましくは5〜10μm、より好ましくは5〜7μmとする。その後、図5に示すように第2の保護膜のみを除去するが、第2の保護膜は、完全に除去する必要はなく、1μm以下の膜厚であれば残してもよい。
【0041】
次に、図6に示すように、第2のシード結晶6を核として第2の窒化物半導体層7を成長させる。成長条件としては、特に限定されないが、第1の窒化物半導体層4と同様の条件で成長させることにより、低欠陥かつ欠陥均一であり、最上面が鏡面である窒化物半導体基板を得ることができる。
ここで、第2の窒化物半導体層7の膜厚としては、好ましくは5〜30μm、より好ましくは7〜15μmである。
【0042】
本発明の窒化物半導体の成長方法において、第1のシード結晶3、及び第1の窒化物半導体層4、第2のシード結晶6、第2の窒化物半導体等の窒化物半導体を成長させる方法としては、特に限定されないが、MOVPE(有機金属気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、MOCVD(有機金属化学気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚が100m以下ではMOCVD法を用いると成長速度をコントロールし易い。MOVPE法は、結晶をきれいに成長させることができ好ましい。しかし、MOVPE法は時間がかかるため、厚膜を成長させる場合にはHVPE法が好ましい。
【0043】
更に本発明の窒化物半導体基板は、上記に示す製造方法により得られる低欠陥及び欠陥均一であり、結晶欠陥の伝播が抑制される窒化物半導体基板であるため、この窒化物半導体基板上に、少なくともn型窒化物半導体層、活性層、及びp型窒化物半導体層を有する素子構造を有する窒化物半導体素子を製造すると、良好な寿命特性が得られると共に、歩留まりを向上させることができ好ましい。
【0044】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが本発明はこれに限定されない。
[実施例1]
実施例1における各工程を図1〜図6を用いて示す。また実施例1はMOCVD法について示すものであるが、本発明の方法は、MOCVD法に限るものではなく、例えばHVPE法、MBE法、その他、窒化物半導体を成長させる方法を適用できる。
【0045】
基板1には、2インチφ、C面を主面とし、オリフラ面をA面とするサファイア基板を用い、このサファイア基板上に、CVD装置を用い、第1の保護膜2としてSiO2を膜厚4μmで成膜し、その後、図1に示すようにドライエッチングにより第1の保護膜をストライプ幅17μm、窓部3μmのストライプ状にし、さらに、端面をウェットエッチングにより荒れをなくす。
【0046】
次に、図2に示すように、温度を510℃にして、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)とを用い、保護膜の窓部上にGaNよりなるバッファ層(図示されていない。)を200オングストロームの膜厚で成長させ、バッファ層成長後、TMGのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させ、1050℃になったら、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープGaNよりなる第1のシード結晶3をバッファ層上に3μmの膜厚で成長させる。
【0047】
次に第1のシード結晶3を成長後、ウェットエッチング法により、バッファードフッ酸(BHF)を用い第1の保護膜2のみを除去させる。第1の保護膜2を除去することにより、核となるストライプ形状の第1のシード結晶3を形成することができる。
【0048】
その後、図3に示すように1050℃の温度で、原料ガスにTMG、アンモニアを用い、アンドープGaNよりなる第1の窒化物半導体層4を10μmの膜厚で成長させる。
【0049】
次に、図4に示すように第2の保護膜5を第1の窒化物半導体層4上にCVD装置を用い、膜厚7μmで成膜後、保護膜の幅5μm、保護膜の窓部の幅5μmでストライプ形成する。
【0050】
次に、第2の保護膜5の窓部に第2のシード結晶6をMOCVD装置で第1のシード結晶と同じ条件で5μm成膜し、その後、第2の保護膜5のみを第1の窒化物半導体層4が露出するように除去する。
【0051】
次に、図6に示すように、第2のシード結晶を核として第2の窒化物半導体層7を15μmの膜厚で成長させる。
【0052】
以上のようにして得られる窒化物半導体基板は非常に結晶欠陥が低減されたものであり、高出力LD等の基板に用いることができる。
【0053】
[実施例2]
前記実施例1において、第2のシード結晶を成長後、第2の保護膜を除去する際に、第2の保護膜を膜厚0.5μm残した状態で、第2の窒化物半導体層を成長させる他は同様にして窒化物半導体基板を成長させる。
以上の方法により得られる窒化物半導体は、実施例1と同様に低欠陥かつ欠陥均一である窒化物半導体を得ることができる。
【0054】
[実施例3]
前記実施例1及び実施例2において、第2の窒化物半導体を成長させる際に、成長と同時にn型不純物であるSiを5×1017/cm3ドープして15μmの膜厚で成長させる他は同様にして窒化物半導体を成長させる。
得られた窒化物半導体は、実施例1と同様に低欠陥かつ欠陥均一の窒化物半導体を得ることができる。
【0055】
[実施例4]
前記実施例1及び実施例2において、第2の窒化物半導体を成長させる際に、成長と同時にp型不純物であるMgを5×1017/cm3ドープして15μmの膜厚で成長させる他は同様にして窒化物半導体を成長させる。
得られた窒化物半導体は、実施例1と同様に低欠陥かつ欠陥均一の窒化物半導体を得ることができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、上記の如く、基板上に成長させる窒化物半導体の核となるシード結晶の端面形状をよくすること及び2段階で横方向成長を行うことにより結晶欠陥を減少させ結晶性が良好であり、欠陥均一な窒化物半導体を得ることができる。また更に、本発明により得られた窒化物半導体を基板として素子構造を成長させると、寿命特性等の素子性能が良好な窒化物半導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の製造の一工程において得られる窒化物半導体基板を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・異種基板
2・・・第1の保護膜
3・・・第1のシード結晶
4・・・第1の窒化物半導体層
5・・・第2の保護膜
6・・・第2のシード結晶
7・・・第2の窒化物半導体層
Claims (12)
- 窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板上に、第1の保護膜を所望のパターン形状に形成する第1の工程と、
前記第1の保護膜の窓部に窒化物半導体から成る第1のシード結晶を成長させ、前記第1の保護膜を取り除くことにより、核となる第1のシード結晶をストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状に形成する第2の工程と、
第1の窒化物半導体層を前記第1のシード結晶を覆うように成長させる第3の工程と、
前記第1の窒化物半導体層上であって、第1のシード結晶上部、及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部に、第2の保護膜を所望のパターン形状に形成する第4の工程と、
前記第2の保護膜の窓部に窒化物半導体から成る第2のシード結晶を成長させ、前記第2の保護膜を取り除くことにより、核となる第2のシード結晶をストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状に形成する第5の工程と、
第2の窒化物半導体層を前記第2のシード結晶を覆うように成長させる第6の工程とを備えた窒化物半導体基板の製造方法。 - 前記保護膜が、融点1200℃以上の金属、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、及びこれらの多層膜から成る群から選択された1種から成ることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記異種基板は、サファイア、スピネル、又は炭化ケイ素であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記第1のシード結晶の幅(Ws)と第1のシード結晶の窓部の幅(Ww)との比Ww/Wsが、1〜20であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記第2のシード結晶の膜厚が、5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記第2の窒化物半導体層は、第1のシード結晶上部及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部に空洞を有することを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 前記第1の窒化物半導体層、及び/又は第2の窒化物半導体層は基板全面に成長させることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体基板の製造方法。
- 窒化物半導体と異なる材料からなる異種基板上に、ストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状をした窒化物半導体から成る第1のシード結晶と、
前記第1のシード結晶を覆って成る第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層上であって、第1のシード結晶上部、及び第1の窒化物半導体同士の接合部上部を避けた位置にストライプ状、格子状、又は島状、多角形を有する柱状をした窒化物半導体から成る第2のシード結晶と、
前記第2のシード結晶を覆って成る第2の窒化物半導体層と、前記第2のシード結晶どうしの間には空洞とを有する窒化物半導体基板。 - 前記異種基板は、サファイア、スピネル、又は炭化ケイ素であることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体基板。
- 前記第1のシード結晶の幅(Ws)と第1のシード結晶の窓部の幅(Ww)との比がWw/Wsが、1〜20であることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体基板。
- 前記第2のシード結晶の膜厚が、5μm以上であることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体基板。
- 前記第1の窒化物半導体層、及び/又は第2の窒化物半導体層は基板全面に有することを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体基板。
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