JP3554691B2 - 放射線取扱い施設の床ドレン設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線取り扱い施設に設置されている床ドレン設備に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放射線取り扱い施設の一例として、核燃料の再処理施設が知られている。この種の放射線取り扱い施設では、放射線の高線量ルーム(高線量区域)である核燃料処理液の貯留処理槽の直上階に作業従事者が放射線防護服を着替えるためのサブチェンジグルームが放射線の低線量ルーム(低線量区域)として配置されている。
【0003】
この種の放射線取り扱い施設では、施設内での作業従事者の安全性確保のため、さまざまな放射線遮蔽対策が設けられている。例えば、高線量区域と低線量区域とを上下に区画するために構造的強度に加えて放射線の減衰率に基づいた有効遮蔽厚さを備えるような遮蔽壁(遮蔽スラブとも言う。)が設置されており、施設内の低線量区域での空間線量率の低減を図っている。
【0004】
これらの施設における建屋内排水に用いられる床ドレン用のファンネルの構造としては、図5に示す様に、従来より床埋設を基本とする集中方式床ドレン用のファンネル50、及びディッシュ方式床ドレンファンネル構造が用いられている。これらの床ドレン方式によると、高線量区域と低線量区域間、特に、低線量区域Wの下階が高線量区域Rの場合、低線量区域に床ドレン排出用のファンネル50を設置すると、遮蔽スラブ51に埋め込まれるファンネル50自身、あるいはファンネル50に接続されて遮蔽スラブ51内に通された建屋内排水系の配管52により、高線量区域Rから低線量区域Wへの有効遮蔽厚を確保できなくなる欠損部T1が存在してしまう。
【0005】
この場合、これらの遮蔽スラブ51の欠損部T1により、高線量区域R内の放射線源となる機器,配管などからの放射線が局所的に低線量区域Wへ漏洩することになり、これを防止する対策が必要となる。そこで、接続配管の欠損部T1を補償するよう、遮蔽スラブ51下に補助的遮蔽体として欠損部T1以上の厚みT2を持たせた増し打ちコンクリート53、またこれの補強のための鋼製型枠54などを追加設置し、高線量区域R内から低線量区域Wへ到達する線量率を減衰させ、低放射線区域Wの線量当量率の上昇を防止している。
【0006】
また、ファンネル50からそれに接続される建屋内排水系の配管52の溶接継手部は、耐圧漏洩試験が実施される。上記のファンネル50の場合は、ファンネル50底部に接続される配管52にポリエチレンなどの閉止プラグをねじ込み、密閉性を保持し、耐圧漏洩試験を実施することができる。
【0007】
放射線取扱い施設以外の一般の居住用建屋では、特開平11−117409号公報に掲載されているように、建屋の逆梁を水平に横断させた排水配管で逆梁間で囲われた領域の漏水を建屋外へ排水設備が公知である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の床ドレン用のファンネルと建屋内排水系の配管52の設置方法によると、放射線遮蔽上の有効遮蔽厚さの欠損対策のための補助的遮蔽体の追加設置を行う必要があり、遮蔽評価上の建設工数が増加する。また、一般の居住用建屋では放射線取扱い施設の持つ遮蔽スラブの欠損問題が課題として存在していない上、耐圧漏洩試験も要求されていない。
【0009】
この発明の目的は、このような補助的遮蔽体の追加設置を不要とし、耐圧漏洩試験も可能とする放射線取扱い施設の床ドレン設備を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する手段は、放射線取扱い施設の低線量区域内の床ドレン設備のファンネルを低線量区域の側壁に設置して、そのファンネルに接続した建屋内排水系の配管をその側壁を横断するように装備し、高線量区域と低線量区域とを上下に区切る遮蔽スラブの有効な遮蔽スラブ厚T(図1にTと表示した厚さ)を欠損させないようにした。さらには、放射線取扱い施設で要求される耐圧漏洩試験を行う場合には、閉止板でファンネルの入口を閉鎖する。
【0011】
このように構成されたものにおいては、補助的遮蔽体の追加設置無しに、床に漏洩した機器,配管からのドレン又は床除染,床掃除水を集合させ、低線量区域外への排出が可能となる上、ドレン設備の耐圧漏洩試験が可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1のように、放射線の低線量区域Wと高線量区域Rととを上下に区画している放射線の遮蔽壁、即ち遮蔽スラブ14は、高線量区域Rから低線量区域Wへの放射線が所望の値に減衰できる有効な遮蔽スラブ厚Tを備える。この遮蔽スラブ14は、高線量区域Rの直上階の低線量区域Wにとっては床になる。
【0013】
その低線量区域Wは鉄筋コンクリート製の側壁12によって囲われている。その側壁12には床ドレン用のファンネル21が埋設設置され、そのファンネル21のドレンの入口21Cが高線量区域Rの直上階の低線量区域W内に開口している。
【0014】
そのファンネル21のドレンの出口21Dは、ドレンの入口21Cの径よりも小径であって、建屋内排水系の配管27に接続されている。このように接続された配管27は側壁12内を壁厚方向に横断するように配置され、隣接する他の低線量区域wに抜け出ている。その配管27は、図1のようにUの字状に曲げられて、そのUの字の底部に水を溜めることで配管27内を配管外からの雰囲気が通過することを防止する水封が可能な状態とされる。
【0015】
ファンネル21は、図2のように、短管21Aに偏心レジューサ21Bを接続して構成される。その偏心レジューサ21Bは、短管21Aの接続口の中心線21E(ファンネル21のドレンの入口21Cの中心線でもある。)よりも下方にドレンの出口21Dの中心線21F(配管27の中心線でもある。)が偏心している。このように、偏心レジューサ21Bを用いることによって、配管27を低い位置に接続できるように成るから、遮蔽スラブ14の上面に溜まった洗浄水等のドレン対象の水(ドレン水)をできるだけ残らずに配管27へ導入できる。
ファンネル21の入口21Cには、図2,図3,図4のように、閉止カバー25と目皿24が固定ボルト26によって固定される。この目皿24は配管27やファンネル21内への異物の混入の防止を図る。目皿24は図4のように環状のパッキン23を介して入口21Cにあてられ、閉止カバー25は環状のパッキン22を介して入口21Cと目皿24とにあてられ、閉止カバー25と目皿24とパッキン22とパッキン23とは、ファンネル21に螺合した固定ボルト26によってファンネル21側に締め付け固定される。パッキン22,23としてはクロロプレンゴムなどを使用する。
【0016】
このように各パッキン22,23を介して閉止カバー25がファンネル21の入口21Cを気密に密封する。固定ボルト26がファンネル21に螺合するための雌ネジ41の深さは、図4のように、閉止カバー25がファンネル21の入口21Cを気密に密封する状態にあっては、固定ボルト26と螺合していない領域Lが存在するように深くしてある。
【0017】
その領域Lの雌ねじの部分はファンネル21から閉止カバー25とパッキン22とを取り除いて、目皿24とパッキン23だけをファンネル21に同じ固定ボルト26で固定する際に固定ボルト26と螺合する。このように、固定ボルト26が領域Lの雌ねじに螺合することによって、固定ボルト26の六角頭部分で目皿23をファンネル21に押し付けることを可能とする。
【0018】
このように、閉止カバー25と目皿24と各パッキン22,23のファンネル21への同時固定と、目皿24とパッキン23のファンネル21への固定とを同一の固定ボルト26で達成できる。通常であれば、過剰に領域Lを設けないことから、閉止カバー25と目皿24と各パッキン22,23のファンネル21への同時固定用の長い固定ボルトと、目皿24とパッキン23のファンネル21への固定用の短いボルトを用意するが、本実施例の場合には、共通の固定ボルトで各固定作業を行うので、経済的で固定状態を変える作業も迅速に行える。
【0019】
目皿24には、目皿の目として、図3のように、円形の孔24Aと上下に長い長円形の孔24Bとが複数個貫通して設けられている。各孔24A,24Bの合計の開口面積は、配管27の流路面積よりも広くなるようにする。この事によって、配管27の口径に対して目皿24の各孔24A,24Bの合計の開口面積が少ないことによって生じる配管27へのドレンの流入効率の低下を抑制できる。
目皿24の各孔24A,24Bは、低い位置のドレン対象の水を効率良くファンネル21内に入れて配管27に導入できるように、目皿24の比較的下方に集中して設けられている。その上、目皿24に加工された孔24Bは上下に長い長円としているので、遮蔽スラブ14の上面に溜まったドレン対象の水を早く配管27に導入できる。そして早く排水できる。孔24Bまでも孔24Aと同じ円形の孔とした場合には、その孔の最低部が長円とした場合よりも高い位置に位置するから、低い位置のドレン対象の水を短時間に配管に導入できない。目皿24の製造が簡単となるように、目皿24の大部分の目は丸孔とされ、加工工数が多くなる長円孔の数はできるだけ少なくする。
【0020】
一般的に、放射線取り扱い施設に設置される建屋内排水系の配管27は、その性能保証確認のため、使用前に耐圧漏洩試験が必要である。建設現地にて側壁
12のコンクリート打設前にファンネル21や配管27を接続して設定した後にファンネル部も含めて埋設設置部の建屋内排水系の配管27の溶接継手部の漏洩試験を行うことになる。尚、短管21Aと偏心レジューサ21B及び偏心レジューサ21Bと配管27との接続は溶接接続であるので、溶接接続部の健全性を耐圧漏洩試験によって確認する。
【0021】
その耐圧漏洩試験は、閉止カバー25も目皿24も各パッキン22,23もファンネル21に固定ボルト26で図4のように取りつけて行う。このような密閉した状態で配管27とファンネル21内に圧力(空圧)を加えて耐圧漏洩試験を行う。
【0022】
耐圧漏洩試験で配管27とファンネル21の健全性が保証された後に、側壁12のコンクリートを打設して施設の建設を行う。施設が完成して遮蔽スラブ14上のドレン水を排水する状態にするには、固定ボルト26を緩めてファンネル21から閉止カバー25とパッキン22とを撤去し、目皿24が低線量区域Wに露出するようにする。目皿24とパッキン23とはファンネル21に固定ボルト26で固定される。その固定作業は、予め目皿24やパッキン23がファンネル21に組み合わされているから、簡単且つ迅速に行える。
【0023】
遮蔽スラブ14上にドレン対象の水が存在すると、その水は遮蔽スラブ14上から目皿24の各孔24A,24Bを通過してファンネル21内に入り、ファンネル21内から配管27に導入されて回収タンク等の所定の箇所に配管27で運ばれる。配管27やファンネル21は遮蔽スラブの有効な遮蔽スラブ厚Tを欠損させる様なことが無い。そのため、従来のような鋼製型枠の追加設置作業や遮蔽スラブ14へのコンクリートの増し打ち作業及び増し打ちコンクリートが不要となる。この事は、建設作業を簡略化できるので建設工程が短縮できる。
【0024】
以上説明してきたように、本実施例は、側壁に床ドレン用のファンネル21と配管27を設けて遮蔽スラブ14に欠損部を設けないようにしたものである。
【0025】
それゆえ、遮蔽スラブ14の欠損が発生せずに遮蔽上の有効遮蔽厚さの欠損対策の補助的遮蔽体の追加設置を行わなくても良い。
【0026】
さらにファンネル21には、パッキン22,23や目皿24を介し、閉止カバー25を取り付け、ファンネル21に密閉性,耐圧性を持たせる事のできる構造を備えており、現地での配管27を設定した後にファンネル21部も含めて埋設設置部の建屋内排水系の配管27の溶接継手部の漏洩試験も容易に行える。従って、この発明によれば、遮蔽評価上の建設工数の削減と共に耐圧試験が可能となる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、放射線取扱い施設の建設作業の早期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による放射線取扱い施設の床ドレン設備の縦断面図である。
【図2】図1に示したA部の詳細縦断面図である。
【図3】図2のX−X矢視図であり、(a)図は耐圧漏洩試験が行える状態を示し、(b)図は床ドレンを行える状態を示す。
【図4】図2のB詳細断面図である。
【図5】従来技術による放射線取扱い施設の床ドレン設備の縦断面図である。
【符号の説明】
12…側壁、14…遮蔽スラブ、21…ファンネル、21B…偏心レジューサ、22,23…パッキン、24…目皿、25…閉止カバー、26…固定ボルト、27…配管、R…高線量区域、W…低線量区域。
Claims (6)
- 放射線の高線量区域と、それとは相対的な観点で放射線の低線量区域と、前記高線量区域を下方に、前記低線量区域を上方に区画する放射線の遮蔽壁と、前記低線量区域の側壁に装備された床ドレン用のファンネルと、前記ファンネルに接続されて前記側壁を横断するように装備された建屋内排水系の配管と、前記ファンネルに対して着脱自在に備えられて前記低線量区域側に開かれたファンネルの開口を密閉する閉止カバーを備えた放射線取扱い施設の床ドレン設備。
- 請求項1において、ファンネルは低線量区域側の短管と、この短管に低線量区域側とは逆側に接続された偏心レジューサとから成り、前記短管の厚さを前記偏心レジューサよりも厚くして、前記短管に閉止カバーを固定する固定ボルトが螺合する雌ネジが加工されていることを特徴とした放射線取扱い施設の床ドレン設備。
- 請求項1において、低線量区域側に開かれたファンネルの開口端部分に目皿を有し、前記目皿の目となる孔の面積を建屋内排水系の配管の流路面積以上であることを特徴とした放射線取扱い施設の床ドレン設備。
- 請求項3において、目皿の最外周に位置する目皿の目となる孔の少なくとも一部分が上下に長い長孔に加工されていることを特徴とした放射線取扱い施設の床ドレン設備。
- 請求項2において、低線量区域側に開かれたファンネルの開口端部分に目皿を有し、前記目皿の目となる孔の面積を建屋内排水系の配管の流路面積以上であるとともに、前記目皿と閉止カバーとは共通の固定ボルトにより前記ファンネルに固定されることを特徴とした放射線取扱い施設の床ドレン設備。
- 請求項1から請求項5までのいずれか一項において、ファンネルは、短管と、前記短管と建屋内排水系の配管との間に介在して両管に接続される偏心レジューサとからなり、前記偏心レジューサの前記配管側の開口部の中心は下方に偏心していることを特徴とした放射線取扱い施設の床ドレン設備。
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