JP3554690B2 - 揺動ベアリング式免震装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量建築物或いは軽量構造物に対し、地震の揺れを軽減して、被害の軽減を図るための免震装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
住宅等の比較的に軽量な建築物に対する免震装置としては、積層ゴム式やベアリング式などが用いられることが多い。そのうち積層ゴム式の免震装置は、固有周期を長くしようとすると、ゴム層の径に対する長さの比を大きくする必要があり、座屈を起こしやすい欠点がある。一方ベアリング式免震装置は、復元機能を持たせるために、皿型の凹面を有する基板の上にベアリングボールを載置する形式のものが提案されており(例えば、特開平9−32345、特開平10−8571など)、また振幅が大き過ぎるときに、ベアリングボールが基板の外に逸脱することを防止するための環状壁を設けたもの(特開平10−252312)や、ボールが周壁に衝突したときにはボールの回転が阻止され、ボールの滑り摩擦による制動がかかるようにしたもの(特開平10−292671)、或いは復元機能に加えて振動の減衰機能を持たせるために、水平方向又は傾斜方向にスプリング等を設けるようにしたもの(例えば、特開平9−25737、特開平10−38022など)などが、提案されている。
【0003】
しかし、復元機能を高めるためにスプリングを併用した装置では、水平方向のスプリング弾性を強くすると、装置の固有周期が短くなって免震効果が低下し、また逆にこれを弱くすると、減衰機能と復元機能とが共に低下して、地震の衝撃を十分に吸収できなくなるという問題がある。そしてまた、粘性ダンパーを利用することも考えられるが、この場合もスプリングを用いる場合と同様な問題があり、ダンパーの取り付け方向が地震波の方向と一致しないと、ダンパーの機能が十分に発揮されないという弱点もある。その上、粘性ダンパーは比較的に高価であるので、免震構造物の建設費用が嵩む要因の一つにもなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記の事情に鑑み、軽量の建築物、或いは構造物の免震対策に利用するに適した、地盤との絶縁機能、振動の減衰機能、及び変位の復元機能を備え、製造コストが低くて施工が簡単であり、しかも耐久性のよい免震装置を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することができる本発明の揺動ベアリング式免震装置は、上側に浅い凹面を有して地面に対して略水平に設置された底盤と、該底盤上に載置され略水平方向に転動可能なベアリングボールと、該ベアリングボールに接する平坦な底面を有する支持板の中心位置から上方に支柱が延設された荷重支持体と、該支持板の外周部分に接触した状態で揺動可能に設けられた略環状の摩擦平板と、該摩擦平板の移動に抵抗する摩擦力を高める方向に該摩擦平板を押圧する付勢手段とを設けてなることを特徴とするものである。
【0006】
かかる本発明の揺動ベアリング式免震装置において、前記底盤の上側の凹面が球面乃至回転楕円体面の一部に類似した形状を有していると、振幅が小さいときは装置の水平剛性が小さいが、振幅が大きくなるに従って摩擦平板の摩擦抵抗が順次に増加し、効果的に制動されることになる。更にその凹面を囲む周縁部分にボール逸脱防止壁とを有しているものであると、装置の組み立てや分解が容易となり、装置の設置並びに保守管理のコストを抑制できる利点がある。
【0007】
また、建築物や構造物を支える荷重支持体の下部に設けた支持板が、剛性が高く且つ厚さの均一な平板で構成され、更に摩擦平板を中央部に開口部分を設けてなる一体の板状部材で構成することにより、安定に垂直荷重を支えることができるうえ、地震振動の方向の如何に係わらず、地震のエネルギーを確実に吸収することができる、信頼性の高い装置が得られる。
【0008】
そして摩擦平板の開口部分の内縁と前記支柱の外周との間隔、並びに前記底盤の周縁部の内縁と前記支持板の外周縁との間隔を、予想される地震の振幅以上とすることにより、過大な地震動による装置の破壊を防いで、効果的に支持板の水平方向の運動を制動でき、従って荷重支持体に支えられた建築物や構造物の、過度の地震揺れを効果的に制動することができる。また、付勢手段としてはスプリング等のバネ部材を利用し、更に付勢手段の摩擦平板に対する押圧力を調節する手段として、前記のボルトに螺着されたナット等を設け、或いは摩擦平板に対する移動量制限手段として、バネ変形制限部材などを設けることにより、地震の振幅が大きくなっても、建築物や構造物等の荷重の大きさに応じた制動力を発揮させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の揺動ベアリング式免震装置を説明する。
図1〜4において、1は、基礎6の上に水平に設置し、アンカーボルト7aとナット7bとによって固定された底盤であり、その上面は、その中央の殆どが球面の一部で形成された浅い凹面部1aとなっている。また凹面部1aを囲んで周縁平面部1bが形成されており、更に周縁平面部1bを囲んでボール逸脱防止壁部1cが立設されている。そして、このような底盤1の上にベアリングボール2を載置するときは、ベアリングボール2は自由に転動できるので、通常、凹面部1aの最も低い位置に向かって移動し、遂には中心位置に達して静止する。
【0010】
また3は荷重支持体であるが、この荷重支持体3は鋼などの剛性が高い材料で形成されたものである。その下部には、ベアリングボール2に接する平坦な底面を有する支持板3aが設けてあり、支持板3aの中心位置から上方に向かって垂直に支柱3bが延設され、更に支柱3bの上端には荷重支承部3cが設けられている。そしてこの荷重支承部3cは、軽量の建築物を含む構築物8を支えるH型鋼材などの、水平剛性が高い梁台9を載置し且つ結合することができるものである。
【0011】
更に、支持板3aの上側には、荷重支持体3を取り囲むようにして、鋼などの強靱な材料で形成された摩擦平板4が設けられており、摩擦平板4の下面が支持板3aの上面に接触できるように構成されている。この摩擦平板4には外方縁部に取付孔4aが設けてあり、底盤1のボール逸脱防止壁部1cに立設された支持ボルト5に、摩擦平板4の取付孔4aを遊嵌し、更に摩擦平板4を支持板3aに押圧するための付勢手段として、スプリング5aを装着して摩擦平板4を上方から押圧するようにし、ワッシャーなどを介して後退止めナット5bを螺着し、スプリング5aによる押圧力を調節できるようにしてある。
【0012】
このような摩擦平板4は、スプリング5aによって支持板3aの上面に押圧されるため、地震の発生によりベアリングボール2が転動し、支持板3aが水平方向に移動することを、その摩擦力により効果的に制動する。特にベアリングボール2が凹面部1aの中心付近に位置しているときは、支持板3aも最も低い位置にあるために、摩擦平板4による制動力は小さく、装置の水平剛性も低いから、振幅の小さい振動は効果的に遮断され、また復元機能も優れている。
【0013】
また振幅が大きくなるにつれて、ベアリングボール2は凹面部1aの周辺に向かって大きく移動し、同時に支持板3aもベアリングボール2と同じ方向に移動すると共に、より高い位置に押し上げられる。そうすると、摩擦平板4は水平方向には移動できないために、支持板3aと摩擦しながら押し上げられる。その結果、スプリング5aが圧縮されて押圧力が大きくなり、摩擦平板4の支持板3aに対する摩擦制動力も大きくなる。従って、地震の振幅が大きいほど、揺れを減衰させる機能が発揮される。
【0014】
更に本発明の揺動ベアリング式免震装置においては、スプリング5aの外側に筒状のバネ変形制限部材5cを装着して、スプリング5aが過度に収縮しないように制限することができる。このようにすると、地震の振幅が大きくて、ベアリングボール2が底盤1の周縁平面部1bに乗り上げたときなど、摩擦平板4はスプリング5aの押圧力に加えて、バネ変形制限部材5cの押圧力を受けるので、支持板3aに対する摩擦平板4の摩擦制動力を更に高めることができるものである。なお、このバネ変形制限部材5cの上端部又は下端部、或いは外側などに、保護カバーなどを装着することにより、スプリングの腐食や損傷による装置の劣化を防止することもできる。
【0015】
このような本発明の揺動ベアリング式免震装置は、例えば住宅のような、軽量の建築物或いは構造物に対して、好適に利用することができる。免震装置の使用個数は、建物等の規模、形状、或いは重量などに基づいて決まるが、例えば図5に示すように、べた基礎6を設置したのち、基礎6中に埋め込み固定したアンカーボルト7aを用いて、所定の位置に底盤1を固定する。
【0016】
次いで、前述のように本発明の揺動ベアリング式免震装置を組み立てるが、その際に、建設予定地の地盤の固有振動周期を考慮して、凹面部1aの曲率半径Rとベアリングボール2の半径rを、免震のために適切な組み合わせとなるように選択することが望ましい。また、建設予定の建築物の重量を考慮して、スプリング5aの弾性特性が適切な範囲内に入るように、スプリング5aを選定し、更に支持板3aが許容される最大変位位置に達する前に、摩擦平板4による摩擦制動力が最大となるように、スプリング5aの後退止めナット5bを調節すると同時に、必要に応じて適切な構造を有するバネ変形制限部材5cを装着し、また保護カバーなどを設けることが好ましい。このようにして免震装置を準備したのち、荷重支持体3上に梁台9を据え付け、固定する。そして梁台9の上に、建築物或いは構造物を建設する。
【0017】
また図6〜8には本発明の揺動ベアリング式免震装置の別な実施例を示すが、これらの図において、11は底盤であり、上面の中央部が回転楕円体の表面状に形成された浅い凹面部11aとなり、その周縁部がボール逸脱防止壁部11cを構成しているものである。そしてこの凹面部11aには、水平方向に自由に転動できるベアリングボール2が載置され、荷重支持体13の下部に設けられた支持板13aの平坦な底面が、ベアリングボール2に接するように水平に配置されている。この荷重支持体13の上部には補強板13bなどを介して荷重支承部13cが設けられており、建築物などを支えることができるように構成されていることは、前記の例と同様である。
【0018】
更に、支持板13aは円板状に形成されており、その外周部には、鋼板などで形成されたドーナツ状の摩擦平板14が固定されている。一方、底盤11に形成された環状のボール逸脱防止壁部11cの上端面には、図6から明らかなように、鋼製の摩擦輪15を装着するための環状溝11dが形成されており、環状溝11d内に装着された摩擦輪15を、摩擦平板14に向かって押し上げるためのスプリング15aが、環状溝11dの内部の複数位置に装着されている。そして、このスプリング15aの押圧力を調節するための調整ボルト15bが、底盤11の下方から環状溝11dの底面まで貫通したネジ孔11eを通して、螺着してある。
【0019】
このように、摩擦平板14の下面には、スプリング15aによって摩擦輪15が押圧されているので、平常時でも摩擦力が働き、一定の風速に対して建物が揺れを起こすことがない。その一方、地震の発生時にはベアリングボール2が転動して、地盤の振動を上部構造と遮断する効果が出るうえ、支持板13aが水平方向に移動することで、その摩擦力により上部の揺れを吸収する。更に振幅が大きくなって、ベアリングボール2が凹面部11aの中心から離れた位置まで動くと同時に、支持板13aが高い位置に持ち上げられ、摩擦平板14に摩擦輪15を押しつけるスプリング15aの力が緩くなり、摩擦平板14と摩擦輪15の間の摩擦力が小さくなるため、地盤の振動を上部構造に伝えなくなり、免震効果を発揮する。
【0020】
そして、この例の揺動ベアリング式免震装置においては、摩擦平板14と底盤11との間は摩擦輪15によってシールされているので、風雨のために水や砂塵等が凹面部11aの中に入り込むこともなく、万一湿気のために内部に錆などが発生することがあっても、支持板13aから摩擦平板14を取り外すことにより、容易に凹面部11aの内部を清掃することができる利点がある。
【0021】
【発明の効果】
本発明の揺動ベアリング式免震装置は、従来のベアリング式免震装置に対して、免震機能を高めるための構成、即ちボールの上に乗る支持板の揺動を抑制するための摩擦平板と、この摩擦平板と支持板又は摩擦輪との間の摩擦力を制御するための付勢手段とを付加したものであり、これによって小さな振動に対する遮断機能と復元機能とを損なうことなく、大きな振動に対する減衰機能を高めて、軽量の建築物或いは構造物に利用するに適した性能を実現することができたものであり、比較的に簡素な構造を有していて経済的に製造できるうえ、耐久性が高く、保守の負担も軽減されるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の揺動ベアリング式免震装置の例における底盤の平面図である。
【図2】本発明の揺動ベアリング式免震装置の例の構造を示す図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の揺動ベアリング式免震装置の例の構造を示す図1のB−B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の揺動ベアリング式免震装置の例の付勢手段の構造を示す部分断面図である。
【図5】本発明の揺動ベアリング式免震装置の配置例を示す説明図である。
【図6】本発明の揺動ベアリング式免震装置の別な例における底盤の平面図である。
【図7】本発明の揺動ベアリング式免震装置の別な例の構造を示す縦断面図である。
【図8】本発明の揺動ベアリング式免震装置の別な例における底盤の平面図である。
【符号の説明】
1 底盤
1a 凹面部
1b 周縁平面部
1c ボール逸脱防止壁部
2 ベアリングボール
3 荷重支持体
3a 支持板
3b 支柱
3c 荷重支承部
4 摩擦平板
4a 取付孔
5 支持ボルト
5a スプリング
5b 後退止めナット
5c バネ変形制限部材
6 基礎
7a アンカーボルト
7b ナット
8 構築物
9 梁台
11 底盤
11a 凹面部
11c ボール逸脱防止壁部
11d 環状溝
11e ネジ孔
13 荷重支持体
13a 支持板
13b 補強板
13c 荷重支承部
14 摩擦平板
15 摩擦輪
15a スプリング
15b 調整ボルト

Claims (9)

  1. 上側に浅い凹面を有して地面に対して略水平に設置された底盤と、該底盤上に載置され略水平方向に転動可能なベアリングボールと、該ベアリングボールに接する平坦な底面を有する支持板の中心位置から上方に支柱が延設された荷重支持体と、該支持板の外周部分に接触した状態で揺動可能に設けられた略環状の摩擦平板と、該摩擦平板の移動に抵抗する摩擦力を高める方向に該摩擦平板を押圧する付勢手段とを設けてなることを特徴とする揺動ベアリング式免震装置。
  2. 前記底盤の上側の凹面が球面乃至回転楕円体面の一部に類似した形状を有している、請求項1に記載の揺動ベアリング式免震装置。
  3. 前記底盤が、凹面を囲む周縁部分にボール逸脱防止壁を有している、請求項1又は2に記載の揺動ベアリング式免振装置。
  4. 前記支持板が、高い剛性を有し厚さの均一な平板で構成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
  5. 前記摩擦平板が、中央部に開口部分を設けてなる一体の板状部材で構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
  6. 前記開口部分の内縁と前記支柱の外周との間隔、並びに前記底盤の周縁部の内縁と前記支持板の外周縁との間隔が、予想される地震の振幅以上である、請求項1乃至5のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
  7. 前記付勢手段がバネ部材を含み、且つ押圧力調節手段を備えて構成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
  8. 前記付勢手段が、前記底盤に揺動可能に設けられた前記摩擦平板を前記支持板に向けて押圧するよう構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
  9. 前記付勢手段が、揺動可能な前記支持板に設けられた前記摩擦平板に環状摩擦体を押圧するよう構成されている、請求項1乃至7のいずれかに記載の揺動ベアリング式免震装置。
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