JP3554170B2 - 自動車の車体フレーム構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽金属材料で形成した自動車の車体フレーム構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム等の軽金属材料は、鋼材と同等の強度が鋼材より軽量で得られ、かつ高い成型性が得られる上に、変形時の衝撃エネルギ吸収特性にも優れていることから、近時、自動車のフレーム構成材としての用途に注目が集まりつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、弾性域が狭くて塑性変形による減衰力が高いとはいっても、降伏点応力が塑性域の平均応力に比して格段に高い(約1.5〜2.0倍)点は他の金属材料と何ら変わるところはなく、例えば断面形状が一定の押し出し材の座屈変形で衝突エネルギを吸収しようとする場合、減速度に顕著なピークの現れることが従来のフレーム構造では避けられなかった。つまり従来は、乗員が耐え得る減速度となるように降伏点応力を低くすると、平均応力も低くなってしまうためにエネルギ吸収が不十分なままで早期に底付きしてしまい、この逆に塑性域の減衰力を高めると、ピーク減速度が過大になってしまうといった不都合があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点を改善するべく案出されたものであり、その主な目的は、衝突時の衝撃荷重によるフレームの圧潰変形プロセスにおける塑性域の平均応力に降伏点応力を近づけてピーク減速度を下げることができるように構成された軽金属製の自動車の車体フレーム構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明においては、軽金属材料で形成した自動車の車体フレーム構造において、軸方向についての塑性変形で衝突時の衝撃吸収を行う部材を断面形状が一定の押し出し中空材で形成し、該中空材の軸方向端面における車体幅方向外側部分に、後傾する斜面からなる切除部を設けて衝突した瞬間に荷重が加わる部分の面積を小さくするものとした。このようにすれば、中空な衝撃吸収部材の軸方向端面に衝突した瞬間に発生する単位面積当たりの圧縮応力が高くなるので、圧潰開始荷重が相対的に低くなり、減速度のピーク値が低下する。そして一旦変形を開始すると、それがきっかけとなって変形を継続するので、圧潰開始荷重の低下の程度に比して平均応力が高く保たれる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0007】
図1は、本発明が適用された自動車の車体フレームのフロント部分を示している。この車体フレームは、アルミニウム合金で形成された種々の部材を互いに結合することで組み立てられており、その後端をフロントダッシュボード1の下部に結合されて前方へ伸びる一対のサイドフレーム2と、両サイドフレーム2の前端部に結合されたフロントバルクヘッド3とを備えている。
【0008】
両サイドフレーム2は、六角形の輪郭に押し出し成型された中空材からなり、前車軸との干渉を避けるために下向きに凹となるように適宜な曲率で湾曲させられると共に、その適所には、エンジンマウントブラケット4やストラットタワー5などが結合されている。またその前端には、図には示されていないがフロントバンパーが取り付けられるようになっている。
【0009】
フロントバルクヘッド3は、プレス成型されたアッパ部材6と、ダイキャスト成型された一対のサイド部材7と、押し出し成型されたロワ部材8とからなり、ロワ部材8の左右各端と両サイド部材7の各下端とを溶接結合し、両サイド部材7の各上端とアッパ部材6とを図示されていないボルトを用いて結合することにより、サブアセンブリ化されている。またアッパ部材6とロワ部材8との左右方向中間部は、プレス成型された縦部材9で連結されている。このフロントバルクヘッド3は、サイドフレーム2に対して所望に応じて反復着脱が可能なように、両サイド部材7の上下方向中間部をサイドフレーム2にボルトを用いて結合されている。
【0010】
両サイドフレーム2は、図2に示したように、フロントバルクヘッド3が結合される直線部2aと、フロントダッシュボード1に直接結合された湾曲部2bとが別部材で形成されている。これらは、直線部2aの後端と湾曲部2bの先端とが印籠嵌合で差し込み式に結合した上で、直線部2aの後端に設けられたボルト挿通孔H2から湾曲部2bの先端に設けられためねじ孔T2にボルト(図示せず)をねじ込むことで結合されており、直線部2aのみの反復着脱が可能となっている。
【0011】
さて、金属材料の一般的な圧縮応力特性は、図3に点線で示したように、降伏点応力が塑性域応力に比して格段に高いため、乗員が耐え得る減速度となるように降伏点応力を下げると、エネルギ吸収が不十分なままで早期に底付きしてしまい、この反対に十分な減衰力が得られる塑性域応力に設定すると、ピーク応力が過大になってしまう。そこで本発明においては、塑性域の減衰力を所期の値とし、かつ減速度のピーク値が過大にならないようにするために、図4に示したように両サイドフレーム2の先端に斜めの切除部10を設けて正面衝突時に初期荷重が加わる部分の面積を小さくすることにより、衝突した瞬間に中空の直線部2aの先端に発生する単位面積当たりの圧縮応力が高くなるようにした。これにより、圧潰開始荷重が相対的に低くなるために減速度のピーク値が低下する。そして一旦変形を開始すると、それが変形のきっかけとなるので降伏点応力が低くなるため、塑性域の平均応力を低下させずに所期の減衰力が得られる強度に設定できる(図3の実線を参照)。
【0012】
【発明の効果】
このように本発明によれば、塑性域の平均応力を所望の値に設定した上で降伏点応力を平均応力に近づけて減速度のピーク値を下げることができるので、衝突衝撃の緩和に大きな効果が得られる。特に車幅方向の外側部分を斜めに切除すれば、バンパーのアール形状に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された自動車の車体フレームのフロント部分を示す斜視図
【図2】サイドフレームの前端部の分解斜視図
【図3】圧縮応力特性線図
【図4】サイドフレームの前端部の平面図
【符号の説明】
1 フロントダッシュボード
2 サイドフレーム
2a 直線部
2b 湾曲部
3 フロントバルクヘッド
4 エンジンマウントブラケット
5 ストラットタワー
6 アッパ部材
7 サイド部材
7a 窪み
8 ロワ部材
9 縦部材
H2 ボルト挿通孔
T2 めねじ孔
10 切除部

Claims (1)

  1. 軽金属材料で形成した自動車の車体フレーム構造であって、
    軸方向についての塑性変形で衝突時の衝撃吸収を行う部材を断面形状が一定の押し出し中空材で形成し、
    該中空材の軸方向端面における車体幅方向外側部分に、後傾する斜面からなる切除部を設けて衝突した瞬間に荷重が加わる部分の面積を小さくしたことを特徴とする自動車の車体フレーム構造。
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