JP3553709B2 - 液晶表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、液晶層に印加した電圧の大きさによって液晶層の光散乱性の大きさを制御する光散乱型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来技術】
液晶表示装置における表示方式の一つに、液晶層に電圧が印加された場合と印加されない場合とで、光を透過する状態と光を散乱する状態とに変化することを利用した、いわゆる散乱型がある。この方式は偏光板を必要とするTN型やSTN型に対して偏光板が不要である。したがって偏光板による光の損失を伴わず、明るい表示が可能となる。
前記光散乱型液晶表示装置においては、両基板間に電圧が印加された場合、液晶層中の液晶分子は基板に対しほぼ垂直に配向するため透明になる。一方、両基板間に電圧が印加されない場合、液晶層中の液晶分子はランダム配向状態となり入射光はいろいろな方向に散乱され、白濁状態となる。
この散乱型LCDにおいては、後方散乱よりも前方散乱の方が強いために、電圧の非印加時においても、表側(観察者側)から入射した光が液晶層で散乱された際に、その一部は液晶層を透過してしまうので、液晶層の背面に着色体を配置しても十分なコントラストを得ることはできない。
前記欠点を解消し、表示において十分なコントラストを得るために、従来、LCD裏面に照明装置を設け、該照明装置からの光源を利用したり、あるいはLCD裏面に光反射膜を設けることが行われている。
しかしながら、前者のLCDにおいては、照明装置のぶんだけLCDが厚くなり、薄型化が困難となる。
また、後者のLCDにおいては、反射光が強すぎるために、白濁状態がぎらついてしまうという欠点があった。
【0003】
【目的】
本発明は、前記光反射膜を使用する光散乱型LCDの欠点を特定反射率の光反射膜を使用することにより前記従来技術の欠点を解消した光散乱型LCDを提供することを目的とするものである。
【0004】
【構成】
本発明の散乱型LCDは、一対の基板、該一対の基板間に設けた(a)ポリマーにより構成された三次元網状構造に取り囲まれるように液晶を分散させたポリマーネットワーク型液晶層からなる膜あるいは(b)ポリマーのマトリックス中に粒子状の液晶を分散させたポリマー分散型液晶層からなる膜、液晶駆動手段および観察者とは反対側に設けた光反射膜より基本的に構成されるものである。
本発明の散乱型LCDは、従来の散乱型LCDに用いられている70%以上の反射率を持つ鏡のような光反射膜を配置するのではなく、配置する光反射膜の反射率を70〜10%程度とすることにより、従来の散乱型LCDの白濁状態がぎらつくという欠点を解消したものである。
【0005】
前記(a)のポリマー分散型液晶層は、水滴状の液晶が高分子中に分散しているタイプであり、液晶は高分子中に不連続な状態で存在する。通常、PDLC(polymer−dispersed liquid crystals)と呼ぶ。
前記(b)のポリマーネットワーク型液晶層は、液晶層に高分子のネットワークを張り巡らせたような構造を採るタイプであり、ちょうどスポンジに液晶を含ませたような格好になる。液晶は、水適状とならず連続的に存在する。Polymer/liquid crystal penetrating film,PN−LC(polymer network liquid crystal)などと呼ぶ。
【0006】
(a)のポリマー分散型液晶は、例えばエポキシ樹脂と硬化剤を所定量混合した液に、シアノビフェニル系のネマティック液晶を重量で4:1の割合で混合し、これをホモジナイザーにて均一混合した液晶分散液を透明電極上に塗布後80℃で加熱硬化して液晶層を作成することができる。エポキシ樹脂のかわりにポリビニルアルコール、二官能型光硬化アクリル樹脂等を用いることができる。液晶としてはシアノビフェニル系以外にもエステル系、ピリミジン系などや、それらの混合物等の通常のネマティック液晶を用いることができる。液晶粒子の大きさは10μm以下程度が適当であり、その含有量は10〜50wt%程度が適当である。液晶層の厚さは2〜10μmが適当である。
【0007】
前記(b)のポリマーネットワーク型液晶の層は、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)15wt%のトルエン溶液に重量比で20:1の割合でネマティック液晶を添加し、攪拌均一化した後透明電極上に塗布後加熱し、溶媒を除去する事により、PMMA中に分散した液晶層が作成される。このポリマーネットワーク型液晶に用いられるポリマーとしては、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、シロキサン系、エステル系等の高分子液晶、エポキシ樹脂、ポリアミド等通常の高分子化合物等が例示され、液晶、色素としてはポリマー分散型と同様の物が例示される。液晶の含有量、色素添加量はポリマー分散型と同程度が適当である。
このようなポリマー分散型液晶又はポリマーネットワーク型液晶からなる膜を用いた液晶層の厚さは1〜10μm程度が適当である。
【0008】
基板としてはガラス基板や、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレートなどのような透明なプラスチックフィルム基板等を使用することもできる。
前記カラー液晶表示部に電圧を印加し、それを駆動する方式としては、液晶部の上下に電極を設けて電圧を印加する方式、あるいは、さらに各画素毎に非線形スィッチング素子(TFT、MIM素子等)を設けて電圧を印加する方式等がある。
駆動用電極はITOやIn等を用い蒸着法やスパッタリング法等により成膜し、これら導電性薄膜をエッチング等によりパターニングして形成される。該電極の大きさおよび形状は、適宜任意に決めることができる。
また、本発明の液晶表示装置は、カラーフィルターを有したものであっても良い。
【0009】
【実施の態様】
本発明で用いる光反射膜としては、基板上に光反射膜を慣用の光反射膜形成手段で形成したものであっても良いし、あるいは基板とは別途に光反射膜を設けたものであっても良く、例えば以下のようなものが挙げられる。
(1)アルミニウム薄膜
薄膜の厚さは0.5〜20nm程度、好ましくは1〜10nm程度である。該膜厚が厚すぎる場合は、膜厚が50nm程度以上の通常の鏡と同程度の反射率となってしまう。また、膜厚が0.5nmより小さいときは、充分な反射率が得られない。
ただし、膜厚が20nmを越えて反射率が高い場合であっても、アルミニウム薄膜を空気中で加熱することによって該薄膜の表面を酸化物とすることにより反射率を低下させて使用することができる。
(2)前記(1)のアルミニウム薄膜あるいは表面酸化アルミニウム薄膜以外には、ニッケル、クロム、銀、チタン、ジルコニウム等の金属の薄膜または前記金属の酸化物、窒化物等の薄膜である。
また、前記金属の薄膜または前記金属の酸化物、窒化物等の薄膜は、それらの二種以上の薄膜の積層物であっても良い。適当な膜厚はアルミニウムの場合と同様である。
前記光反射膜は図2の6で示すように下基板1bの外側表面上に直接に設けることができる。さらに図3で示すように下基板1bの内側に設けても良い。
また、前記光反射膜は、図1のように液晶セル基板とは別個に設けても良い。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
【0011】
実施例1
図1に本発明の構成例を示す。1a、1bは各々液晶駆動用電極2a、2bをそなえた上下基板である。これら基板の間には、液晶と高分子の分散構造からなる高分子分散型液晶(以下、PDLCとも云う。)層3が挾持されている。この例では、光反射膜4は液晶セル部分1〜3の部分とは間隙5を置いて配置されている。低電圧で駆動可能なPDLCにおいては、光はほとんど前方散乱されるため4のようななんらかの光反射手段を用いることが必要である。充分な電圧が印加されていない画素Aは、液晶層3が光散乱性のままであるために入射光7Aは結果として8Aの矢印で示したようにいろいろな方向に反射されていくために、観察者に視認され白く見える。一方、充分な電圧が印加されている画素Bは、液晶層3が透明となるため入射光7Bは正反射方向8Bの方向にのみ反射され、観察者には視認されず暗くなる。このように、液晶層3としてPDLCを用いた場合、OFF画素が白、ON画素が暗色となるために、白い背景に暗色の表示という自然な表示が可能となるだけでなく、OFF部分が多くなるような一般の表示時には、電力の消費も押さえられる。従来技術(特開昭49−107498)では、動的散乱モードを仮定しているために、表示の背景全てに充分な電圧と電流を供給する必要があったが、高分子分散モードを採用した場合、この点でも優れている。
前記液晶表示素子において、光反射膜は図2の6で示すように下基板1bの外側表面上に直接に設けることができる。また、図3の6で示すように下基板1bの内側表面上に直接設けても良い。
【0012】
実施例2
ガラス基板上にアルミニウムを約1μm蒸着し鏡状の光反射膜とした。反射率は約80%あった。この表面にカーボンブラックを樹脂に分散させた塗料を薄く塗り、反射率を約20%まで低下させ、図1における光反射膜4として液晶表示装置を作製した。この光反射膜の断面図を図5に示す。ガラス基板9の上にアルミニウム薄膜10が、さらにその上にカーボンブラックを含む塗膜11が形成されている。
光反射膜4を液晶セルの下に置いた場合と置かない場合を比較すると、明らかに光反射膜のある場合のほうが液晶セルは明るく視認され、光反射膜の反射率が20%程度でも著しい反射増強効果のあることが確認できた。
また、カーボンブラックのないときのようなぎらつきは感じられなかった。
【0013】
実施例3
ガラス基板上に銀を島状に蒸着した。表面形状を図6に示す。12は銀が島状に蒸着されている部分、13は蒸着されていない部分である。
このような島状の薄膜では、可視波長域に吸収帯を持つために反射率が低下する〔薄膜ハンドブック(オーム社、日本学術振興会第131委員会編、第805頁参照)〕。
この基板を図1の光反射膜4として使用したところ、液晶セルからの反射光が適度に増強され、しかもぎらつきのない表示品質のものが得られた。
【0014】
実施例4
ガラス基板上にクロムの薄膜を蒸着し、パターニングして図4の2b′の光反射膜兼液晶駆動用電極とした。この基板を用いて図4の液晶表示装置を作製した。この表示装置においても、液晶セルからの反射光が適度に増強され、しかもぎらつきのない表示品質がえられた。
前記のように液晶駆動用電極が光反射膜を兼ねており、下基板1b側に光反射膜を別途に設ける必要がなく、厚みによる視差が生じないために、表示のにじみを防ぐことができるので、図1〜3のものより、さらに好ましい。
このことを図7により説明する。図1または2のように、光反射膜が下基板の外側にある場合、OFF状態の画素Aで散乱された光15の一部は、光反射膜で反射され画素Bの部分を通って観察者16の方向へ進む。よって、この場合画素Bの一部(画素A側)は明るくみえてしまう。基板1bが充分に薄いときにはこのようなことは起きない。このためには、基板をプラスチックとするのが好ましい。
【0015】
以下、本発明の実施態様を示す。
1. 液晶駆動用電極を設けた一対の基板間に液晶層を挾持し、該液晶層に印加した電圧の大きさによって液晶層の光散乱性の大きさを制御し、かつ観察者とは反対側に光反射膜を設けた構造を有する光散乱型液晶表示装置において、光反射膜の反射率が10〜70%の範囲であることを特徴とする液晶表示装置。
2. 光反射膜がアルミニウム薄膜であり、該薄膜の膜厚が0.5〜20nm、好ましくは1〜10nmである前記1の液晶表示装置。
3. 光反射膜が表面酸化アルミニウム薄膜であり、該薄膜の膜厚が0.5〜20nm、好ましくは1〜10nmである前記1または2の液晶表示装置。
4. 光反射膜がニッケル、クロム、銀、チタン、ジルコニウム等の金属薄膜および/または前記金属の酸化物、窒化物の薄膜であり、該薄膜の膜厚が0.5〜20nmである前記1、2または3の液晶表示装置。
5. 光反射膜が反射率の高い部分と低い部分の微細なモザイク状構造、または島状構造となっている前記1〜4の液晶表示装置。
6. 光反射膜の表面に光吸収性媒体の薄膜を設けたものである前記1〜5の液晶表示装置。
7. 光吸収性媒体がカーボンブラックまたは顔料や染料の混合物である前記6の液晶表示装置。
【0016】
【効果】
本発明により、低反射率の光反射膜を使用することにより、白濁状態のぎらつきを低減し、自然な質感の白地の表示が可能な液晶表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の散乱型LCDの基本構成を模式的に示した断面図である。
【図2】図1の散乱型LCDにおいて、光反射膜を下基板1bの外側表面に設けた散乱型LCDである。
【図3】図1の散乱型LCDにおいて、光反射膜を下基板1bの内側表面に設けた散乱型LCDである。
【図4】図1の散乱型LCDにおいて、下電極が光反射膜を兼ねる散乱型LCDである。
【図5】実施例2の光反射膜の構成を模式的に示した断面図である。
【図6】実施例3のガラス基板上に銀を島状に蒸着した光反射膜を示す図である。
【図7】実施例4の散乱型LCDの基本構成を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
1a 上基板
1b 下基板
2a 液晶駆動用電極
2b 液晶駆動用電極
3 液晶
4 光反射膜
5 下電極兼光反射膜
6 光反射膜
7A 入射光
7B 入射光
8A 正反射光
8B 正反射光
9 ガラス基板
10 アルミニウム薄膜
11 カーボンブラック
12 銀
13 非蒸着部分
14 入射光
15 画素で散乱された光

Claims (1)

  1. 液晶駆動用電極を設けた一対の基板間に液晶層を挟持し、該液晶層に印加した電圧の大きさによって液晶層の光散乱性の大きさを制御し、かつ観察者とは反対側に光反射膜を設けた構造を有する光散乱型液晶表示装置(以下、散乱型LCDともいう。)において、前記光反射膜の反射率が80%以上の光反射膜の表面に光吸収性物質の薄膜を設けることによって形成され、かつ前記光吸収物質の薄膜を介した前記光反射膜からの反射率が10〜70%の範囲であることを特徴とする液晶表示装置。
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